(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155060
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】X線CT装置、プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
A61B6/03 373
A61B6/03 360D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069454
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】西出 明彦
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA18
4C093CA31
4C093EA07
4C093FD09
4C093FE30
4C093FF19
4C093FF28
4C093FG14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】断層画像に含まれる関心領域に対する物質弁別を効率的に行うことができるX線CT装置等を提供する。
【解決手段】X線CT装置は、記X線検出器にて検出されたX線投影データに基づき、少なくとも2種類の密度画像を再構成する画像再構成部と、前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像に含まれる関心領域の物質弁別に関する処理を行う物質弁別部を備え、前記物質弁別部は、前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも1種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される前記関心領域を取得し、水密度断層像において前記関心領域に対応する領域の水密度値を抽出し、ヨウ素密度断層像において前記関心領域に対応する領域のヨウ素密度値を抽出し、抽出した前記水密度値及び前記ヨウ素密度値を用いた二次元分布データを出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生装置と、前記X線発生装置から照射され、被検査物を通過したX線を検出するX線検出器とを含み、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを収集しデュアルエナジー画像を再構成するX線CT装置であって、
前記X線検出器にて検出されたX線投影データに基づき、少なくとも2種類の密度画像を再構成する画像再構成部と、
前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像に含まれる関心領域の物質弁別に関する処理を行う物質弁別部を備え、
前記物質弁別部は、
前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも1種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される前記関心領域を取得し、
水密度断層像において前記関心領域に対応する領域の水密度値を抽出し、
ヨウ素密度断層像において前記関心領域に対応する領域のヨウ素密度値を抽出し、
抽出した前記水密度値及び前記ヨウ素密度値を用いた二次元分布データを出力する
ことを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記物質弁別部は、
前記水密度値及び前記ヨウ素密度値を軸項目とするグラフ上にて前記二次元分布データを出力し、
前記グラフ上にて重畳表示する分離線を用いてクラスタリングすることにより、前記関心領域の物質弁別に関する処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記物質弁別部は、
抽出した前記水密度値及び前記ヨウ素密度値を用いて前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像上にて前記二次元分布データに基づき、重心点を算出し、
前記グラフにおける原点から前記重心点までの距離及び角度を示す極座標を出力する
ことを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記物質弁別部は、抽出した前記水密度値及び前記ヨウ素密度値が所定値以上となる範囲に基づきクラスタリングすることにより、前記関心領域の物質弁別に関する処理を行う
ことを特徴とする請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
モノクロマチック断層像に対する画像処理を行う画像処理部を備え、
前記画像処理部は、
前記物質弁別部による物質弁別に関する処理結果に基づき、前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像上にて、特定された前記関心領域の彩色を行い、
前記関心領域が彩色された前記モノクロマチック断層像を出力する
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、物質弁別に関する処理が行われた前記関心領域を別々に分けて表示する前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像を出力する
ことを特徴とする請求項5に記載のX線CT装置。
【請求項7】
コンピュータに、
X線発生装置から照射され被検査物を通過したX線を検出するX線検出器にて検出され、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを収集して再構成されたデュアルエナジー画像に含まれるモノクロマチック断層像と、前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも1種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される関心領域とを取得し、
水密度断層像において前記関心領域に対応する領域の水密度値を抽出し、
ヨウ素密度断層像において前記関心領域に対応する領域のヨウ素密度値を抽出し、
抽出した前記水密度値及び前記ヨウ素密度値を用いた二次元分布データを出力する
処理を実行させるプログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
X線発生装置から照射され被検査物を通過したX線を検出するX線検出器にて検出され、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを収集して再構成されたデュアルエナジー画像に含まれるモノクロマチック断層像と、前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも1種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される関心領域とを取得し、
水密度断層像において前記関心領域に対応する領域の水密度値を抽出し、
ヨウ素密度断層像において前記関心領域に対応する領域のヨウ素密度値を抽出し、
抽出した前記水密度値及び前記ヨウ素密度値を用いた二次元分布データを出力する
処理を実行させる情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、X線CT装置、プログラム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャン中に1つのX線管でX線管電圧を低い電圧(たとえば80kVなど)と高い電圧(たとえば140kVなど)とで切り替えつつ撮影するデュアルエネルギー撮影、2つのX線管でX線管電圧を低い電圧(たとえば80kVなど)と高い電圧(たとえば140kVなど)で同時に撮影するデュアルエネルギー撮影、2層のX線検出器で低いX線エネルギー成分と高いX線エネルギー成分を収集するデュアルエネルギー撮影、半導体X線検出器で低いX線エネルギー成分と高いX線エネルギー成分を弁別して収集するデュアルエネルギー撮影ができるように構成されたX線CT装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたX線CT装置は、X線検出器にて検出されたX線投影データに基づき再構成された断層画像において、当該断層画像に含まれる関心領域に対する物質弁別を効率的に行う点については、考慮されていない。
【0005】
一つの側面では、X線検出器にて検出されたX線投影データに基づき再構成された断層画像において、当該断層画像に含まれる関心領域に対する物質弁別を効率的に行うことができるX線CT装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様におけるX線CT装置は、X線発生装置と、前記X線発生装置から照射され、被検査物を通過したX線を検出するX線検出器とを含み、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを収集しデュアルエナジー画像を再構成するX線CT装置であって、前記X線検出器にて検出されたX線投影データに基づき、少なくとも2種類の密度画像を再構成する画像再構成部と、前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像に含まれる関心領域の物質弁別に関する処理を行う物質弁別部を備え、前記物質弁別部は、前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも1種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される前記関心領域を取得し、水密度断層像において前記関心領域に対応する領域の水密度値を抽出し、ヨウ素密度断層像において前記関心領域に対応する領域のヨウ素密度値を抽出し、抽出した前記水密度値及び前記ヨウ素密度値を用いた二次元分布データを出力する。
【0007】
本開示の一態様におけるプログラムは、コンピュータに、X線発生装置から照射され被検査物を通過したX線を検出するX線検出器にて検出され、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを収集して再構成されたデュアルエナジー画像に含まれるモノクロマチック断層像と、前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも1種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される関心領域とを取得し、水密度断層像において前記関心領域に対応する領域の水密度値を抽出し、ヨウ素密度断層像において前記関心領域に対応する領域のヨウ素密度値を抽出し、抽出した前記水密度値及び前記ヨウ素密度値を用いた二次元分布データを出力する処理を実行させる。
【0008】
本開示の一態様における情報処理方法は、コンピュータに、X線発生装置から照射され被検査物を通過したX線を検出するX線検出器にて検出され、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを収集して再構成されたデュアルエナジー画像に含まれるモノクロマチック断層像と、前記少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも1種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される関心領域とを取得し、水密度断層像において前記関心領域に対応する領域の水密度値を抽出し、ヨウ素密度断層像において前記関心領域に対応する領域のヨウ素密度値を抽出し、抽出した前記水密度値及び前記ヨウ素密度値を用いた二次元分布データを出力する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、X線検出器にて検出されたX線投影データに基づき再構成された断層画像において、当該断層画像に含まれる関心領域に対する物質弁別を効率的に行うX線CT装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係るX線CT装置の概要を示す模式図である。
【
図2】X線発生装置及び2次元X線検出器の回転を示す説明図である。
【
図3】X線CT装置の概略動作を示すフロー図である。
【
図4】X線CT装置の概略動作における前処理の詳細を示すフロー図である。
【
図5】X線CT装置の概略動作における三次元逆投影処理を示すフロー図である。
【
図6】デュアルエネルギー撮影による画面再構成において処理されるデータの流れを示す説明図である。
【
図7】X線CT装置の物質弁別に関する処理を示すフロー図である。
【
図8】関心領域の物質弁別に関する処理結果に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、実施形態1に係るX線CT装置1の概要を示す模式図である。X線CT装置1は、操作コンソール2及び、X線検査室Rに配置される撮影テーブル4、X線発生装置5、制御コントローラ6、2次元X線検出器7、昇降機構8及びデータ収集装置9(DAS:Data Acquisition System)を含む。更に、X線検査室Rには、撮像部10が設けられており、当該撮像部10は、操作コンソール2と通信可能に接続されており、X線CT装置1の一部位として構成されるものであってもよい。
【0012】
操作コンソール2は、入力装置21、データ収集バッファ22、モニタ23、記憶装置24及び中央処理装置3を含む。
【0013】
入力装置21は、例えば、キーボート、マウス等のユーザ操作系の入力デバイス又は、他のコンピュータから送信されるデータが入力される通信系の入出力I/Fであってもよい。
【0014】
データ収集バッファ22は、中央処理装置3と、X線検査室Rに配置されるデータ収集装置9とに通信可能に接続され、データ収集装置9から取得したX線検出器データを中央処理装置3に出力する。
【0015】
モニタ23は、ディスプレイ等の表示装置である。X線検出器データは中央処理装置3によって処理され、当該X線検出器データから断層像に再構成された画像(デュアルエナジー画像、X線デュアルエナジー断層画像)が、モニタ23上に表示される。中央処理装置3は、記憶装置24に記憶されているプログラムを実行することにより、2次元X線検出器7(X線検出器)にて検出されたX線投影データに基づき、X線デュアルエナジー断層画像を再構成する画像再構成部として機能する。
【0016】
記憶装置24は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の揮発性記憶領域及び、EEPROM又はハードディスク等の不揮発性記憶領域を含む。記憶装置24には、中央処理装置3が実行するプログラム及び処理時に参照するデータが予め記憶してある。記憶装置24に記憶されたプログラムは、操作コンソール2が読み取り可能な記録媒体Mから読み出されたプログラムP(プログラム製品)を記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラムP(プログラム製品)をダウンロードし、記憶装置24に記憶させたものであってもよい。
【0017】
中央処理装置3は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の計時機能を備えた演算処理装置を有し、記憶装置24に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、断層像の再構成に関する処理等を含め、X線CT装置1に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。
【0018】
X線発生装置5は、X線管コントローラ54、X線管51、X線フィルタ53、ボータイフィルタ531及びコリメータ52を含み、少なくとも2種類のX線エネルギーを用いることにより、高エネルギー及び低エネルギーによるデュアルエネルギー撮影が可能なように構成されている。
【0019】
X線管コントローラ54は、制御コントローラ6と通信可能に接続され、制御コントローラ6から出力される制御信号、高電圧に基づき、X線管51の管電圧を変更し、X線管51からのX線の照射の開始及び停止を制御する。X線管コントローラ54は、例えば、CPU等の制御部及び記憶部がパッケージ化されたマイコン等により構成されるものであってもよい。
【0020】
X線管51は、例えば、高エネルギーのX線及び、低エネルギーのX線を照射する。高エネルギー及び低エネルギーに対応するそれぞれX線管51は、X線管コントローラ54からの制御信号、高電圧に基づき当該X線管51の管電圧が決定される。
【0021】
X線フィルタ53は、高エネルギー及び低エネルギーのX線管51それぞれに対応して設けられ、高エネルギーのX線が通過するX線フィルタ53と、低エネルギーのX線が通過するX線フィルタ53とを含む。又は、高エネルギー及び低エネルギー共通のX線フィルタ53でも構わない。X線フィルタ53には、フィルタ特性を可変させるフィルタ特性可変機構が設けられており、制御コントローラ6又はX線管コントローラ54から出力される制御信号に基づき、当該フィルタ特性を変更することができる。フィルタ特性(X線フィルタ特性)は、例えば、当該フィルタの材質、及びフィルタの厚み(X線の通過距離)に基づき決定される特性である。X線フィルタ53は、制御コントローラ6等からの制御信号に基づき、X線フィルタ53に設けられるフィルタ特性可変機構によって、材質の異なるフィルタ、例えば、アルミニウムのフィルタを銅のフィルタに交換、又は同一の材質のフィルタにおいて厚みの異なるフィルタに交換することができる。ボータイフィルタ531は撮影視野のチャネル方向にX線吸収係数を変化させてチャネル方向の照射X線線質分布を制御する。
【0022】
X線の線質は、X線管51の管電圧値又は、X線フィルタ53のフィルタ特性に応じて変化するところ、X線発生装置5は、当該管電圧値及びX線フィルタ特性を可変する構成としていることにより、被検査物Hに対し適切な線質となる高エネルギー及び低エネルギーのX線を照射するため、効率的にデュアルエネルギー撮影を行うことができる。
【0023】
コリメータ52は、例えば、スライス厚方向コリメータ及びチャネル方向コリメータを含み、X線管51から発生したX線をコリメートして整形する。
【0024】
撮影テーブル4には、被検査物Hが載置され、制御コントローラ6から出力される制御信号に応じて、所定の回転数で回転する。撮影テーブル4が回転することにより、撮影テーブル4に載置される被検査物Hの全周にわたって、X線が照射される。本実施形態においては、撮影テーブル4が回転する場合に限定されず、撮影テーブル4は固定されており、X線発生装置5、2次元X線検出器7及びデータ収集装置9が、撮影テーブル4に対し回転するものであってもよい。すなわち、撮影テーブル4と、X線発生装置5、2次元X線検出器7及びデータ収集装置9とが、相対的に回転することにより、回転方向における被検査物Hの全周にわたって、当該被検査物Hに対しX線が照射されるものであってもよい。
【0025】
昇降機構8は、被検査物の載った撮影テーブル4又は、X線発生装置5、2次元X線検出器7及びデータ収集装置9を、どちらかを昇降させることにより、撮影テーブル4と、X線発生装置5、2次元X線検出器7及びデータ収集装置9とが、上下方向に相対的に移動するように構成されている。昇降機構8は、制御コントローラ6から出力される制御信号に基づき、撮影テーブル4と、X線発生装置5等とを上下方向に相対的に移動する。これにより、被検査物Hの上下方向(高さ方向)の全域にわたって、X線を照射させることができる。
【0026】
制御コントローラ6は、操作コンソール2の中央処理装置3と通信可能に接続され、中央処理装置3から出力される指示情報に基づき、X線発生装置5、撮影テーブル4、昇降機構8、2次元X線検出器7及びデータ収集装置9を制御又は駆動する。制御コントローラ6は、例えば、CPU等の制御部及び記憶部がパッケージ化されたマイコン等により構成されるものであってもよい。
【0027】
2次元X線検出器7は、例えば複数列の検出器列(X線検出器チャネル)を有する。2次元X線検出器7は、被検査物Hを透過したX線を検出してX線検出器データを収集する複数のチャネルが、被検査物Hが相対的に回転される方向に沿ったチャネル方向と、回転される際の回転軸に沿った列方向とのそれぞれに配列されている。
【0028】
データ収集装置9は、2次元X線検出器7からX線検出器データを収集し、データ収集バッファ22を介して、そのX線検出器データを中央処理装置3に出力する。
【0029】
撮像部10は、例えばカメラであり、撮影テーブル4に載置される被検査物Hの全体が撮像範囲となるように、撮影テーブル4の上方等、X線検査室Rの中に設けられている。撮像部10は、撮像した被検査物Hの画像データを、操作コンソール2(中央処理装置3)に出力する。撮像部10は、被検査物Hの形状、大きさ等の物理量、又は被検査物Hの材質等の物性情報を取得するための被検査物情報取得装置に相当する。被検査物情報取得装置は、カメラ等の撮像部10に限定されず、3Dスキャナー装置又は三次元寸法測定装置であってもよい。X線CT装置1に含まれるこれら装置等は、例えば、特許5220374号公報、特許5213016号公報、特開2007-20906号公報に記載されているX線CT装置1の各装置等と同様の構成、作用及び機能を発揮するものであってもよい。
【0030】
図2は、X線発生装置5及び2次元X線検出器7の回転を示す説明図である。X線管51と2次元X線検出器7は、撮影テーブル中心である回転中心の回りを撮影テーブルに対して相対的に回転する。鉛直方向をY方向とし、水平方向をX方向とし、これらに垂直なテーブル進行方向をZ方向とするとき、X線管51及び2次元X線検出器7の回転平面は、XY面である。
【0031】
X線管51は、コーンビームと呼ばれるX線ビームを発生する。コーンビームの中心軸方向がY方向に平行なときを、ビュー角度0°とする。2次元X線検出器7は、例えば300チャネル×3000列の検出器列を有する。2次元X線検出器7には、被検体を透過したX線を検出してX線検出器データを収集する複数のチャネルが、撮影テーブル4等によって被検査物Hが相対的に回転される方向に沿ったチャネル方向と、回転される際の回転軸に沿った列方向とのそれぞれに配列されている。
【0032】
X線が照射されて、収集されたX線検出器データは、2次元X線検出器7からデータ収集装置9でA/D変換され、データ収集バッファ22に出力される。データ収集バッファ22に入力されたデータは、中央処理装置3で処理され、断層像に画像再構成されてモニタ23に表示される。
【0033】
X線CT装置1の中央処理装置3は、記憶装置24に記憶されているプログラムP(プログラム製品)を実行することにより、画像再構成部、及びBH補正部として機能する。画像再構成部は、2次元X線検出器7にて検出されたX線投影データに基づき、モノクロマチック断層像を含むX線デュアルエナジー断層画像を再構成する。BH補正部は、X線投影データに対し、ビームハードニング補正を行う。
【0034】
図3は、X線CT装置1の概略動作を示すフロー図である。
図4は、X線CT装置1の概略動作における前処理の詳細を示すフロー図である。
図5は、X線CT装置1の概略動作における三次元逆投影処理を示すフロー図である。X線CT装置1は、例えば、操作コンソール2にて入力された操作指示を含む指示データに基づき、当該フローチャートの処理又は動作を開始する。
【0035】
X線CT装置1は、データ収集を行う(S11)。X線CT装置1は、例えば、撮像部10から出力された被検査物Hの画像データ、入力装置21から入力された被検査物Hの情報を取得する。X線CT装置1の中央処理装置は、取得したこれらデータを記憶装置24に記憶する。
【0036】
X線CT装置1は、取得したこれらデータに基づき、撮影テーブル4の回転速度等を含むX線撮影条件に応じた制御パラメータを導出するものであってもよい。X線CT装置1は、制御パラメータに含まれる回転速度にて撮影テーブル4を回転させ、X線の照射を行う。X線CT装置1は、制御パラメータに基づき、撮影テーブル4及び昇降機構8の駆動を制御すると共に、低エネルギーX線及び高エネルギーX線の照射を行う。X線CT装置1は、2次元X線検出器7によって検出されるデータ(X線検出器データ)を収集する。
【0037】
X線CT装置1は、前処理を行う(S12)。当該前処理に係る処理は、例えば、サブルーチン化された処理として、
図4にて示される以下のフローにより行われる。X線CT装置1は、オフセット補正を行う(S121)。X線CT装置1は、対数変換を行う(S122)。X線CT装置1は、X線線量補正を行う(S123)。X線CT装置1は、感度補正を行う(S124)。前処理は、これらオフセット補正、対数変換、X線線量補正及び感度補正を含む。当該感度補正は、例えば、複数の断層画像をそれぞれ再構成しうる各ローデータに対してオフセット補正及び感度補正を施す手段が開示されている特開2002-85397号公報に記載されている処理を用いて行われるものであってもよい。X線CT装置1は、高エネルギー及び低エネルギーのX線検出器データに対して前処理を行い、投影データ(低X線管電圧投影データ、高X線管電圧投影データ)に変換する。
【0038】
X線CT装置1は、ビームハードニング補正を行う(S13)。X線CT装置1は、前処理された投影データ(低X線管電圧投影データ、高X線管電圧投影データ)に対して、ビームハードニング補正を行う。X線CT装置1の中央処理装置3は、多項式を用いてビームハードニング補正を行うものであってもよい。当該多項式は、例えば、Dout(view,j,i)=Din(view,j,i)*{Bo(j,i)+B1(j,i)*Din(view,j,i)+B2(j,i)*Din(view,j,i)^2}にて示される「Dout(view,j,i):ビームハードニング補正後のデータ、Din(view,j,i):感度補正が行われた投影データ」。多項式を用いたビームハードニング補正については、例えば特開2007-20906にて開示される多項式補正を行うものであってもよい。
【0039】
X線CT装置1は、Zフィルタ重畳処理を行う(S14)。X線CT装置1は、ビームハードニング補正された投影データに対して、列方向(Z方向)のフィルタをかけるZフィルタ重畳処理を行う。
【0040】
X線CT装置1は、画像再構成重畳処理を行う(S15)。X線CT装置1は、例えば、フーリエ変換し、再構成関数を掛け、逆フーリエ変換することにより、再構成関数重畳処理を行う。
【0041】
X線CT装置1は、三次元逆投影処理を行う(S16)。X線CT装置1は、再構成関数重畳処理した投影データに対して、三次元逆投影処理を行い、逆投影データを求める。本実施形態においては、ヘリカルスキャンを行うものとしており、画像再構成される画像はZ軸に垂直な面、XY平面に三次元画像再構成される。以下の再構成領域はXY平面に平行なものとする。当該三次元逆投影処理に係る処理は、例えば、サブルーチン化された処理として、
図5にて示される以下のフローにより行われる。
【0042】
X線CT装置1は、再構成領域の各画素に対応する投影データを抽出する(S161)。X線CT装置1は、断層像の画像再構成に必要な全ビュー(即ち、360度分のビュー又は「180度分+ファン角度分」のビュー)中の一つのビューに着目し、再構成領域の各画素に対応する投影データを抽出する。
【0043】
X線CT装置1は、コーンビーム再構成加重係数を各投影データに乗算し、逆投影データを作成する(S162)。X線CT装置1は、投影データにコーンビーム再構成加重係数を乗算し、逆投影データを作成する。
【0044】
X線CT装置1は、投影データに逆投影データを画素対応に加算する(S163)。X線CT装置1は、予めクリアしておいた逆投影データに、投影データを画素対応に加算する。
【0045】
X線CT装置1は、画像再構成に必要な全ビューの逆投影データを加算したか否かを判定する(S164)。X線CT装置1は、断層像の画像再構成に必要な全ビュー(即ち、360度分のビュー又は「180度分+ファン角度分」のビュー)に対し、逆投影データの加算処理が行われたか否かを判定する。全ビューに対し処理が行われていない場合(S164:NO)、再度S161の処理を実行すべくループ処理を行う。当該ループ処理を行うことにより、X線CT装置1は、全ビューに対するS161からS163の処理を繰り返す。全ビューに対し処理が行われた場合(S164:YES)、X線CT装置1は、S17の処理を実行する。
【0046】
X線CT装置1は、後処理を行う(S17)。X線CT装置1は、逆投影データに対して画像フィルタ重畳、CT値変換などの後処理を行い、断層像を得る。
【0047】
X線CT装置1は、画像表示を行う(S18)。X線CT装置1は、後処理を行うことにより得た断層像をモニタ23に表示する。これら一連のフローにて示されるX線CT装置1の概略動作は、例えば、特許5220374号公報、特許5213016号公報、特開2007-20906号公報に記載されている処理を用いて行われるものであってもよい。
【0048】
図6は、デュアルエネルギー撮影による画面再構成において処理されるデータの流れを示す説明図である。本説明図における各処理は、X線CT装置1の中央処理装置3によって行われる。
【0049】
X線CT装置1は、デュアルエネルギー撮影を行うことにより、モノクロマチック断層像を画像再構成する処理を行う。高いX線管電圧値及び低いX線管電圧値の異なる2種類のX線を照射することにより得られる高いX線管電圧による投影データ(高いX線管電圧投影データ)及び、低いX線管電圧による投影データ(低いX線管電圧投影データ)のデータ夫々に対し、ビームハードニング補正(BH補正)が行われる。
【0050】
ビームハードニング補正における入力データは、感度補正がされた低X線管電圧投影データ及び高X線管電圧投影データであり、これら投影データそれぞれに対しビームハードニング補正をすることにより、ビームハードニング補正がされた低X線管電圧投影データ及び高X線管電圧投影データを補正することができる。ビームハードニング補正がされた低X線管電圧投影データ及び高X線管電圧投影データそれぞれに対し、フィルタ補正逆投影法(filtered back projection)を用いた処理を行うことにより、低X線管電圧断層像及び高X線管電圧断層像それぞれが画像再構成される。
【0051】
密度データの変換処理は、以下の式にて行われるものであってもよい。
Gwd(x,y) = G80(x,y) - k1・G140(x,y)
Gid(x,y) = G80(x,y) - k2・G140(x,y)
ただし、
k1: ヨウ素DE(dual energy)比
k2: 水DE比
DE比: 80kVpと140kVpのCT値比
本実施形態における図示において、例えば、低X線管電圧を80kVpとし、高X線管電圧を140kVpとする。フィルタ補正逆投影法(filtered back projection)され、CT値変換された高X線管電圧断層像は、G140(x,y)と示される。フィルタ補正逆投影法(filtered back projection)され、CT値変換された低X線管電圧断層像は、G80(x,y)と示される。高X線管電圧断層像及び低X線管電圧断層像を用いて密度データ変換された水密度断層像は、Gwd(x,y)と示される。高X線管電圧断層像及び低X線管電圧断層像を用いて密度データ変換されたIodine密度断層像は、Gid(x,y)と示される。水密度断層像Gwd(x,y)と、Iodine密度断層像Gid(x,y)とのX線吸収係数の線型結合は、水とヨウ素の各keVのX線吸収係数をGwd(x,y), Gid(x,y)の各画素値である密度比で線型加算し、水、空気のX線吸収係数を考慮してCT値変換を行う。これにより各keVのモノクロマチック(Monochromatic)断層像を再構成することができ、画像再構成された各keVの断層像のうち、適切な画像を選択、表示すれば金属アーチファクト(artifact)が低減された画像を得られる。
【0052】
画像再構成された水密度断層像及びIodine密度断層像の各画素の密度値に基づき、X線吸収係数を線型結合することにより、モノクロマチック断層像が画像再構成される。従って、複数の物質密度断層像及びモノクロマチック断層像の少なくとも一つを含むデュアルエネルギーX線画像を再構成することができる。これらデュアルエネルギー撮影による画像再構成において処理されるデータの流れに関しては、例えば、特許5220374号公報、特許5213016号公報、特開2012-245235号公報に記載されている処理を用いて行われるものであってもよい。又はモノクロマチック断層像の画像再構成するにあたり、少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき水密度投影データ及びヨウ素密度投影データを求め、画像再構成した水密度断層像及びヨウ素密度断層像の各画素の水、ヨウ素密度値からX線吸収係数を線型結合させて、水と空気のX線吸収係数を用いて、CT値に変換しモノクロマチック断層像を画像再構成するものであってもよい。
【0053】
中央処理装置3は、記憶装置24に記憶されているプログラムを実行することにより、ビームハードニング補正されたX線投影データ(低X線投影データ、高X線投影データ)に対し、フィルタ補正逆投影法(Back Projection)を用いた処理を行い、CT値変換されたX線管電圧断層像(低X線管電圧断層像、高X線管電圧断層像)を再構成するBP処理部として機能する。中央処理装置3は、記憶装置24に記憶されているプログラムを実行することにより、CT値変換されたX線管電圧断層像(低X線管電圧断層像、高X線管電圧断層像)に対し、密度データの変換処理を行い、水密度断層像とIodine密度断層像とを再構成する密度データ変換部として機能する。中央処理装置3は、記憶装置24に記憶されているプログラムを実行することにより、再構成された水密度断層像とIodine密度断層像のX線吸収係数を線型結合し、水、空気のX線吸収係数によりCT値として正規化し、モノクロマチック断層像を再構成する線型結合部として機能する。
【0054】
図7は、X線CT装置1の物質弁別に関する処理を示すフロー図である。X線CT装置1は、例えば、操作コンソール2にて入力された操作指示を含む指示データに基づき、当該フローチャートの処理又は動作を開始する。又は、X線CT装置1は、X線CT装置1の概略動作を示すフロー図におけるS18以降に行われる後処理(物質弁別に関する処理)として、以下の処理を実行するものであってもよい。X線CT装置1の中央処理装置3は、プログラムを実行することにより、物質弁別部及び画像処理部として機能する。なお、物質弁別部及び画像処理部は、X線CT装置1の中央処理装置3である場合に限定されず、当該中央処理装置3とオンライン又はオフラインにて通信する外部サーバ(情報処理装置)であってもよい。又は、中央処理装置3と外部サーバ(情報処理装置)とが連関して、以下の処理を実行するものであってもよい。
【0055】
X線CT装置1の中央処理装置3は、モノクロマチック断層像又は少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される関心領域(ROI)を取得する(S101)。関心領域(ROI:Region of Interest)は、例えば病変等を示す体内部位における領域であり、医師等のX線CT装置1の操作者により選択されることにより、特定される。すなわち、関心領域(ROI)は、X線CT装置1の操作者の操作により任意に特定される体内部位を示す領域である。X線CT装置1の操作者による、モノクロマチック断層像又は少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像上での関心領域(ROI)の特定は、例えば、モニタ23等に表示されるモノクロマチック断層像におけるカーソル操作等により行われるものであってもよい。中央処理装置3は、モノクロマチック断層像又は少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される関心領域を取得するにあたり、当該関心領域の画素座標を取得するものであってもよい。又は、中央処理装置3は、モノクロマチック断層像又は少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像上における画像座標系における座標領域を取得するものであってもよい。
【0056】
X線CT装置1の中央処理装置3は、モノクロマチック断層像を再構成する際、線形結合された水密度断層像とヨウ素密度断層像とを取得する(S102)。中央処理装置3は、モノクロマチック断層像を再構成する際、X線吸収係数を線型結合するにあたり元データとして用いた水密度断層像とヨウ素密度断層像とを取得する。これら水密度断層像とヨウ素密度断層像は、記憶装置24等、中央処理装置3がアクセス可能な記憶領域に記憶されており、中央処理装置3は、記憶装置24等を参照することにより、水密度断層像及びヨウ素密度断層像を取得する。
【0057】
X線CT装置1の中央処理装置3は、水密度断層像において関心領域に対応する領域の水密度値を抽出する(S103)。中央処理装置3は、モノクロマチック断層像又は少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される関心領域に対応する、水密度断層像の領域の水密度値を抽出する。モノクロマチック断層像と、当該モノクロマチック断層像を再構成する際に線形結合を行った水密度断層像とにおいては、これら画像における画像座標系は同一となっている。従って、中央処理装置3は、モノクロマチック断層像にて特定された関心領域の座標範囲を抽出し、当該座標範囲に基づき、水密度断層像における領域(関心領域:ROI)を特定する。
【0058】
又は、モノクロマチック断層像の画素位置(各画素を一意に特定する座標)と、水密度断層像の画素位置とは、同じX,Y座標位置となっており、当該画素位置に基づき、中央処理装置3は、水密度断層像における領域(関心領域:ROI)を特定するものであってもよい。すなわち、モノクロマチック断層像又は少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される関心領域に含まれる画素位置と、水密度断層像にて対応する領域(関心領域:ROI)に含まれる画素位置とは、同じであり、中央処理装置3は、当該画素位置を用いて、水密度断層像における領域(関心領域:ROI)を特定するものであってもよい。
【0059】
中央処理装置3は、水密度断層像における領域(関心領域:ROI)の水密度値を抽出する。水密度断層像における画素値、すなわち濃淡は、水密度値との相関を有する。従って、中央処理装置3は、領域(関心領域:ROI)に含まれる画素それぞれの画素値に基づき、各画素の水密度値それぞれを抽出する。当該水密度値は、対応する画素にて示される体内部位の水密度値を示すものである。中央処理装置3は、このように関心領域(ROI)に含まれる画素それぞれの水密度値それぞれを抽出し、各関心領域(ROI)にて、画素番号それぞれと、水密度値それぞれとを関連付けて、記憶装置24に記憶する。
【0060】
X線CT装置1の中央処理装置3は、ヨウ素密度断層像において関心領域に対応する領域のヨウ素密度値を抽出する(S104)。中央処理装置3は、モノクロマチック断層像又は少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される関心領域に対応する、ヨウ素密度断層像の領域の水密度値を抽出する。モノクロマチック断層像と、当該モノクロマチック断層像を再構成する際、X線吸収係数の線型結合を行ったヨウ素密度断層像とにおいては、これら画像における画像位置は同一となっている。従って、中央処理装置3は、モノクロマチック断層像又は少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像上にて特定された関心領域の座標範囲を抽出し、当該座標範囲に基づき、ヨウ素密度断層像における領域(関心領域:ROI)を特定する。
【0061】
又は、モノクロマチック断層像の画素位置と、ヨウ素密度断層像の画素位置とは、同じX,Y座標位置となっており、当該画素位置に基づき、中央処理装置3は、ヨウ素密度断層像における領域(関心領域:ROI)を特定するものであってもよい。すなわち、モノクロマチック断層像又は少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像上にて特定される関心領域に含まれる画素位置と、ヨウ素密度断層像にて対応する領域(関心領域:ROI)に含まれる画素位置とは、同じであり、中央処理装置3は、当該画素位置を用いて、ヨウ素密度断層像における領域(関心領域:ROI)を特定するものであってもよい。
【0062】
中央処理装置3は、ヨウ素密度断層像における領域(関心領域:ROI)のヨウ素密度値を抽出する。ヨウ素密度断層像における画素値、すなわち濃淡は、ヨウ素密度値との相関を有する。従って、中央処理装置3は、領域(関心領域:ROI)に含まれる画素それぞれの画素値に基づき、各画素のヨウ素密度値それぞれを抽出する。当該ヨウ素密度値は、対応する画素にて示される体内部位のヨウ素密度値を示すものである。中央処理装置3は、このように関心領域(ROI)に含まれる画素それぞれのヨウ素密度値それぞれを抽出し、各関心領域(ROI)にて、画素位置それぞれと、ヨウ素密度値それぞれとを関連付けて、記憶装置24に記憶する。
【0063】
これにより、各関心領域(ROI)にて、画素位置それぞれと、水密度値及びヨウ素密度値それぞれとが、関連付けられて、記憶装置24に記憶される。各関心領域(ROI)において、当該関心領域(ROI)に含まれる画素それぞれの水密度値及びヨウ素密度値が関連付けられることにより、画素それぞれ、すなわち画素に示される体内部位を、水密度値と、ヨウ素密度値とによる二次元ベクトル値として定義することができる。
【0064】
X線CT装置1の中央処理装置3は、抽出した水密度値及びヨウ素密度値を用いた二次元分布データを出力する(S105)。中央処理装置3は、各関心領域(ROI)において、当該関心領域(ROI)に含まれる画素それぞれの水密度値及びヨウ素密度値を、二次元分布データとして出力する。各画素は、水密度値及びヨウ素密度値から成る二次元ベクトル値として定義されるため、水密度値及びヨウ素密度値を軸(次元)とした平面において、各画素は、二次元ベクトル値に応じて、当該平面にマッピングすることができる。これにより、二次元分布データは、二次元ベクトル分布図として出力されるものとなる。
【0065】
水密度値及びヨウ素密度値を軸(次元)とした平面(二次元ベクトル分布図)は、例えば、ヨウ素密度値(Iodine密度値)を縦軸とし、水密度値を横軸として定義されるものであってもい。又は、ヨウ素密度値(Iodine密度値)を横軸とし、水密度値を縦軸とするものであってもよい。水密度値及びヨウ素密度値を軸(次元)とした平面(二次元ベクトル分布図)において、モノクロマチック断層像にて特定される関心領域(ROI)それぞれが、別個に示される。この際、各関心領域(ROI)それぞれに含まれる画素群によって、二次元ベクトル分布図において関心領域(ROI)それぞれに対応する領域(マッピング領域)が形成される。すなわち、関心領域(ROI)に含まれる各画素は、水密度値及びヨウ素密度値を軸(次元)とした平面(二次元ベクトル分布図)において、水密度値及びヨウ素密度値の値に対応する座標に配置(マッピング)される。当該座標は、水密度値及びヨウ素密度値の値自体を用いた直交座標(X:水密度値,Y:ヨウ素密度値)であってもよく、又は当該直交座標を極座標(R、Θ)に変換したものであってもよい。水密度値及びヨウ素密度値の値を用いて極座標(R、Θ)に変換することにより、水密度値及びヨウ素密度値の大きさ(R)、及び水密度値及びヨウ素密度値の比率(Θ)を効率的に認識することができる。
【0066】
X線CT装置1の中央処理装置3は、出力した二次元分布データを用いて、関心領域の物質弁別に関する処理(クラスタリング)を実行する(S106)。中央処理装置3は、出力した二次元分布データ、すなわち二次元ベクトル分布図においてマッピングされている各関心領域(ROI)に対し、水密度値及びヨウ素密度値からなる二次元ベクトル値に基づき、例えばクラスタリングを行うことにより、当該関心領域の物質弁別に関する処理を行う。
【0067】
水密度値及びヨウ素密度値からなる二次元ベクトル値を用いたクラスタリングによって、これら関心領域(ROI)を各クラスに分けるにあたり、中央処理装置3は、水密度値及びヨウ素密度値の比率に基づきクラスタリング(クラス分け)を行うものであってもよい。水密度値及びヨウ素密度値の比率によるクラスタリングは、例えば、線型の分離線を用いた線型分離を行うものであってもよい。この場合、分離線は、一次方程式で定義され、当該一次方程式における係数が、水密度値とヨウ素密度値との比率を示す。水密度値とヨウ素密度値との比率による線型分離を用いたクラスタリングを行うことにより、当該比率に基づく物質弁別を効率的に行うことができる。
【0068】
又は、中央処理装置3は、水密度値及びヨウ素密度値の密度値が所定値以上であるか否かによるクラスタリングを行うものであってもよい。水密度値及びヨウ素密度値の密度値が所定値以上となる範囲に基づくクラスタリングは、例えば、線型の分離線を用いた線型分離を行うものであってもよい。密度値が所定値以上であるか否かによるクラスタリングを行うことにより、当該所定値を物質弁別における判断閾値(弁別閾値)として用いることができ、物質弁別を効率的に行うことができる。
【0069】
X線CT装置1の中央処理装置3は、関心領域が彩色されたモノクロマチック断層像を出力する(S107)。中央処理装置3は、二次元ベクトル分布図上でのクラスタリングによって物質弁別された関心領域に対し、当該物質弁別の結果に応じて彩色(カラー表示)したモノクロマチック断層像を生成し、モニタ23等に出力する。
【0070】
彩色、すなわちカラー表示を行うにあたり、三原色からなるRGB出力を行う際、中央処理装置3は、例えば、水密度値とR出力のパラメータ値とを対応させ、ヨウ素密度値とG出力のパラメータ値とを対応させるものであってもよい。この場合、水密度値が大きいほど、R(赤)彩色が濃くなり、ヨウ素密度値が大きいほど、G(緑)彩色が濃くなるものとなる。このように水密度値及びヨウ素密度値の大小に応じて、関心領域(ROI)の彩色を変化させることにより、モノクロマチック断層像における関心領域(ROI)については、コンタ図として出力することができる。
【0071】
モノクロマチック断層像において、各関心領域(ROI)を物質弁別の結果に応じて彩色(カラー表示)することにより、関心領域(ROI)それぞれを、より明確化して別々に分けて表示することができる。コンタ図化された関心領域(ROI)を含むモノクロマチック断層像をモニタ23等に出力することにより、X線CT装置1の操作者に対する視認性を向上させることができる。
【0072】
関心領域が彩色されたモノクロマチック断層像は、三次元画像にて再構成されて、出力及び表示されるものであってもよい。中央処理装置3は、複数のモノクロマチック断層像に基づき、例えば3Dサーフェスレンダリング処理を行うことにより、これら複数のモノクロマチック断層像が積層された三次元画像を再構成するものであってもよい。この場合、彩色された関心領域については、色彩情報を三次元画像に継承させることにより、関心領域が彩色された三次元画像を再構成するものであってもよい。
【0073】
図8は、関心領域の物質弁別に関する処理結果に関する説明図である。画像処理部として機能する中央処理装置3は、関心領域の物質弁別に関する処理結果の一例として、本実施形態にて図示する弁別結果画面を生成及び出力する。弁別結果画面は、例えば、彩色されたモノクロマチック断層像を表示する領域、密度比率によるクラスタリング結果を表示するグラフ領域、密度所定値によるクラスタリング結果を表示するグラフ領域、及びROI(重心点)の極座標を表示する表領域を含む。
【0074】
彩色されたモノクロマチック断層像を表示する領域には、モノクロマチック断層像の対象となる被検体と、当該被検体において特定された関心領域(ROI)が、矩形等の選択枠体等にてアノテーション表示されて、示されている。これら関心領域(ROI)は、水密度値及びヨウ素密度値に基づくクラスタリングによる物質弁別の結果に応じて、彩色されている。彩色されたモノクロマチック断層像を表示する領域には、複数のモノクロマチック断層像を用いて3Dサーフェスレンダリング処理を行うことにより再構成された三次元画像が、表示されるものであってもよい。
【0075】
密度比率によるクラスタリング結果を表示するグラフ領域には、モノクロマチック断層像にて特定された関心領域に含まれる画素それぞれの水密度値及びヨウ素密度値に応じて、これら画素がマッピングされた二次元ベクトル分布図が示されている。本実施形態において、当該二次元ベクトル分布図は、ヨウ素密度値(Iodine密度値)を縦軸とし、水密度値を横軸として定義されている。当該二次元ベクトル分布図にて示される関心領域(ROI)は、水密度値及びヨウ素密度値の比率に基づき、クラスタリング(クラスによる分類)が行われる。当該比率によるクラスタリングは、一次方程式による分離線を用いた線型分離によるものであってもよい。当該分離線は、記憶装置24に予め記憶されているものであってもよい。又は、中央処理装置3は、例えば線形カーネル法を用いて、マッピングされた関心領域(ROI)を線型分離し、当該分離結果に基づき関心領域の物質弁別を行うものであってもよい。
【0076】
密度所定値によるクラスタリング結果を表示するグラフ領域には、上述した密度比率によるクラスタリング結果を表示するグラフ領域と同様に画素がマッピングされた二次元ベクトル分布図が示されている。当該二次元ベクトル分布図にて示される関心領域(ROI)は、水密度値及びヨウ素密度値の密度値が所定値以上であるか否かに基づき、クラスタリング(クラスによる分類)が行われる。当該密度値によるクラスタリングは、一次方程式による分離線を用いた線型分離によるものであってもよい。当該分離線は、記憶装置24に予め記憶されているものであってもよい。又は、中央処理装置3は、例えば線形カーネル法を用いて、マッピングされた関心領域(ROI)を線型分離し、当該分離結果に基づき関心領域の物質弁別を行うものであってもよい。
【0077】
水密度値及びヨウ素密度値を軸項目とする二次元ベクトル分布図において、各関心領域(ROI)に含まれる画素群による領域(各画素によるマッピング領域)の重心点に対し、原点から重心点までのベクトル線、及び、当該重心点を極座標にて示した際の角度(Θ)が重畳表示されるものであってもよい。
【0078】
ROI(重心点)の極座標を表示する表領域には、関心領域(ROI)が水密度値及びヨウ素密度値を軸項目とする二次元ベクトル分布図にマッピングされた際、各関心領域の重心点の直交座標(X:水密度値,Y:ヨウ素密度値)、及び当該直交座標を変換した極座標(R、Θ)が、表形式にて表示される。又、関心領域(ROI)の水密度値及びヨウ素密度値に応じた物質弁別の結果に関する事項が、表示されるものであってもよい。
【0079】
本実施形態によれば、X線CT装置1の中央処理装置3(物質弁別部)は、モノクロマチック断層像を再構成する際、線形結合された水密度断層像とヨウ素密度断層像から、関心領域に対応する領域の水密度値と、ヨウ素密度値を抽出する。中央処理装置3(物質弁別部)は、抽出した水密度値及びヨウ素密度値を用いた二次元分布データを出力するため、デュアルエナジー撮影時に、水密度断層像とヨウ素密度断層像より、各画素の水密度値のヨウ素密度値を二次元ベクトルとして物質弁別することができる。例えば、デュアルエナジー撮影において、実効質量数(effective-Z:低管電圧のX線CT値と高管電圧のX線CT値の比)、基底物質の成分比を用いて物質弁別を行う場合と比較し、これら実効質量数(effective-Z)又は基底物質の成分比は共に一次元の情報であり弁別に限界が生じることが懸念される。これに対し、本実施形態のX線CT装置1の中央処理装置3(物質弁別部)は、抽出した水密度値及びヨウ素密度値による二次元ベクトルとなる二次元分布データ(二次元ベクトル分布)を出力するため、効率的に物質弁別することができる。
【0080】
本実施形態によれば、X線CT装置1の中央処理装置3(物質弁別部)は、水密度値及びヨウ素密度値を軸項目とするグラフ(二次元ベクトル分布図)上にて、二次元分布データ(二次元ベクトル分布)を出力する。中央処理装置3(物質弁別部)は、当該グラフ(二次元ベクトル分布図)上にて、例えば線型分離等を用いたクラスタリングを行うことにより、モノクロマチック断層像にて特定された複数の関心領域(ROI)に対する物質弁別に関する処理を行う。線型分離等によるクラスタリングを行う際、グラフ(二次元ベクトル分布図)上にて線型分離の分離線を重畳表示することにより、物質弁別された関心領域が、いずれのクラスに属するかを明確化することができる。
【0081】
本実施形態によれば、X線CT装置1の中央処理装置3(物質弁別部)は、モノクロマチック断層像にて特定された複数の関心領域(ROI)に対するクラス分け(クラスタリング)を行うにあたり、抽出した水密度値及びヨウ素密度値が所定値以上となるか否かに基づき、これら関心領域の物質弁別に関する処理を行う。これにより、密度値に応じた物質弁別を効率的に行うことができる。又、X線CT装置1の中央処理装置3(物質弁別部)は、モノクロマチック断層像にて特定された複数の関心領域(ROI)に対するクラス分け(クラスタリング)を行うにあたり、抽出した水密度値及びヨウ素密度値が所定値以上となるか否かに基づき、これら関心領域の物質弁別に関する処理を行う。これにより、密度値に応じた物質弁別を効率的に行うことができる。
【0082】
本実施形態によれば、X線CT装置1の中央処理装置3(画像処理部)は、物質弁別部による物質弁別に基づき、モノクロマチック断層像又は少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像上にて、特定された関心領域の彩色を行い、関心領域が彩色されたモノクロマチック断層像又は少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データに基づき求められた少なくとも2種類のX線エネルギーの断層像を出力する。このように出力されたモノクロマチック断層像において、関心領域は、物質弁別に応じた彩色が施されているため、個々に別個に表示されるものとなる。関心領域に対する物質弁別は、当該関心領域における密度値及びヨウ素密度値を用いた二次元分布データに対するクラスタリングの結果に基づくもであり、個々のクラスにクラスタリングされた関心領域の画素を、別々に分けて表示することができる。これにより、物質弁別がされた関心領域が彩色されたモノクロマチック断層像を、X線CT装置1の操作者に提供することができ、当該操作者による関心領域に対する視認性を向上させることができる。
【0083】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
R X線検査室
1 X線CT装置
2 操作コンソール
21 入力装置
22 データ収集バッファ
23 モニタ
24 記憶装置
M 記録媒体
P プログラム(プログラム製品)
3 中央処理装置(画像再構成部、物質弁別部、画像処理部)
4 撮影テーブル
5 X線発生装置
51 X線管
52 コリメータ
53 X線フィルタ
531 ボータイフィルタ
54 X線管コントローラ
6 制御コントローラ
7 2次元X線検出器
8 昇降機構
9 データ収集装置
10 撮像部