(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155062
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20241024BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20241024BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20241024BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241024BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241024BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20241024BHJP
H01M 10/6569 20140101ALI20241024BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241024BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20241024BHJP
【FI】
H01M10/633
B60H1/22 651C
B60K1/04
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/6569
B60L50/60
B60L58/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069456
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】来村 智樹
(72)【発明者】
【氏名】深渡瀬 康平
(72)【発明者】
【氏名】重中 祐昭
(72)【発明者】
【氏名】松浦 孝爾
(72)【発明者】
【氏名】西田 孝則
【テーマコード(参考)】
3D235
3L211
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235CC12
3D235CC14
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA03
3L211EA32
3L211EA45
3L211EA50
3L211GA26
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
5H125AA01
5H125AC12
5H125CD06
5H125CD08
5H125EE25
5H125EE64
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】環境条件に左右されることなく、バッテリを適切に冷却できるようにする。
【解決手段】冷凍サイクル装置100は、圧縮機101から吐出された冷媒を外気と熱交換させて凝縮させる室外熱交換器102と、室外熱交換器102から流出した冷媒を膨張させる膨張弁103と、車室内に配設されるとともに膨張弁103により膨張した冷媒が導入され、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器16と、膨張弁103により減圧された冷媒が導入され、バッテリBTを冷却するバッテリ冷却部104と、蒸発器16の冷却要求量とバッテリ冷却部104の冷却要求量とに基づいて、圧縮機101の冷媒吐出量を決定する吐出量決定部と、吐出量決定部で決定された冷媒吐出量となるように圧縮機101を制御する制御部とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータ及び当該走行用モータに電力を供給するバッテリを備えた自動車に搭載される冷凍サイクル装置であって、
冷媒を圧縮し吐出する圧縮機と、
前記圧縮機から吐出された冷媒を外気と熱交換させて凝縮させる室外熱交換器と、
前記室外熱交換器から流出した冷媒を膨張させる膨張弁と、
車室内に配設されるとともに前記膨張弁により膨張した冷媒が導入され、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器と、
前記膨張弁により減圧された冷媒が導入され、前記バッテリを冷却するバッテリ冷却部と、
前記蒸発器の冷却要求量と前記バッテリ冷却部の冷却要求量を取得する冷却要求量取得部と、
前記冷却要求量取得部で取得された前記蒸発器の冷却要求量と前記バッテリ冷却部の冷却要求量とに基づいて、前記圧縮機の冷媒吐出量を決定する吐出量決定部と、
前記吐出量決定部で決定された冷媒吐出量となるように前記圧縮機を制御する制御部とを備える、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、
前記室外熱交換器から流出した冷媒流れを前記蒸発器と前記バッテリ冷却部とに分岐させる分岐部と、
前記分岐部から分岐する冷媒流路の一方あるいは両方を開閉する電磁弁とを備え、
前記制御部は、前記冷却要求量取得部で取得された前記蒸発器の冷却要求量と前記バッテリ冷却部の冷却要求量とに基づいて前記電磁弁を制御する、冷凍サイクル装置。
【請求項3】
請求項2に記載の冷凍サイクル装置において、
前記制御部は、前記蒸発器の冷却要求量が0よりも大きく、かつ、前記バッテリ冷却部の冷却要求量が0である場合には前記蒸発器にのみ冷媒が導入されるように前記電磁弁を制御し、前記蒸発器の冷却要求量が0であり、かつ、前記バッテリ冷却部の冷却要求量が0よりも大きい場合には前記バッテリ冷却部にのみ冷媒が導入されるように前記電磁弁を制御し、前記蒸発器の冷却要求量及び前記バッテリ冷却部の冷却要求量の両方が0よりも大きい場合には前記蒸発器及び前記バッテリ冷却部の両方に冷媒が導入されるように前記電磁弁を制御する、冷凍サイクル装置。
【請求項4】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、
前記蒸発器の温度を測定する蒸発器温度センサと、
環境条件から目標蒸発器温度を演算する目標蒸発器温度演算部とを備え、
前記冷却要求量取得部は、前記目標蒸発器温度演算部で演算された前記目標蒸発器温度と、前記蒸発器温度センサで測定された前記蒸発器の温度との偏差に基づいたP制御、PI制御、PD制御、またはPID制御によって、前記蒸発器の冷却要求量を演算し、取得するように構成されている、冷凍サイクル装置。
【請求項5】
請求項1に記載の冷凍サイクル装置において、
前記バッテリの温度、前記バッテリ冷却部の温度及び前記バッテリ冷却部を流通する冷媒温度の少なくとも1つを測定するバッテリ関連温度センサと、
環境条件から目標バッテリ温度を演算する目標バッテリ温度演算部とを備え、
前記冷却要求量取得部は、前記目標バッテリ温度演算部で演算された前記目標バッテリ温度と、前記バッテリ関連温度センサで測定された温度との偏差に基づいたP制御、PI制御、PD制御、またはPID制御によって、前記バッテリ冷却部の冷却要求量を演算し、取得するように構成されている、冷凍サイクル装置。
【請求項6】
請求項5に記載の冷凍サイクル装置において、
前記バッテリ冷却部が有する複数の冷媒流路の冷媒温度をそれぞれ測定する複数のバッテリ冷却部冷媒温度センサにより前記バッテリ関連温度センサが構成され、
前記冷却要求量取得部は、複数の前記バッテリ冷却部冷媒温度センサで測定された複数の冷媒温度のうちのいずれか1つ、または複数の冷媒温度の平均値を用いて、前記バッテリ冷却部の冷却要求量を演算する、冷凍サイクル装置。
【請求項7】
請求項1、5、6のいずれか1つに記載の冷凍サイクル装置において、
前記自動車の外部の空気温度を測定する外気温度センサを備え、
前記制御部は、前記外気温度センサで測定された前記空気温度と、バッテリの温度とに基づいて、前記バッテリ冷却部の冷却要求量の上限または下限を決定する、冷凍サイクル装置。
【請求項8】
請求項2に記載の冷凍サイクル装置において、
前記蒸発器の表面温度を測定する蒸発器温度センサを備え、
前記蒸発器へ流入する冷媒流路が前記電磁弁により開放されている状態で、前記蒸発器温度センサで測定された前記蒸発器の表面温度が第1の所定温度より低い場合、前記制御部は、前記電磁弁を制御して前記蒸発器へ流入する冷媒流路を閉じるとともに、前記冷却要求量取得部で取得する前記蒸発器の冷却要求量を減少させ、一方、前記蒸発器へ流入する冷媒流路が前記電磁弁により閉じられている状態で、前記蒸発器温度センサで測定された前記蒸発器の表面温度が前記第1の所定温度より高く設定された第2の所定温度よりも高い場合、前記制御部は、前記電磁弁を制御して前記蒸発器へ流入する冷媒流路を開放するとともに、前記冷却要求量取得部で取得する前記蒸発器の冷却要求量を増加させるように構成されている、冷凍サイクル装置。
【請求項9】
請求項2に記載の冷凍サイクル装置において、
前記バッテリの温度、前記バッテリ冷却部の温度及び前記バッテリ冷却部を流通する冷媒温度の少なくとも1つを測定するバッテリ関連温度センサを備え、
前記バッテリ冷却部へ流入する冷媒流路が前記電磁弁により開放されている状態で、前記バッテリ関連温度センサで測定された温度が第3の所定温度より低い場合、前記制御部は、前記電磁弁を制御して前記バッテリ冷却部へ流入する冷媒流路を閉じるとともに、前記冷却要求量取得部で取得する前記バッテリ冷却部の冷却要求量を減少させ、一方、前記バッテリ冷却部へ流入する冷媒流路が前記電磁弁により閉じられている状態で、前記バッテリ関連温度センサで測定された温度が前記第3の所定温度よりも高く設定された第4の所定温度よりも高い場合、前記制御部は、前記電磁弁を制御して前記バッテリ冷却部へ流入する冷媒流路を開放するとともに、前記冷却要求量取得部で取得する前記蒸発器の冷却要求量を増加させるように構成されている、冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載される冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、電気自動車に搭載される冷凍サイクル装置が開示されている。この冷凍サイクル装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、室外熱交換器と、室内熱交換器と、走行用モータに電力を供給するバッテリを冷却するための冷却器とを備えており、バッテリの目標冷却量と、室内蒸発器での目標冷却量とを個別に取得可能に構成されている。特許文献1の制御部は、バッテリの目標冷却量が室内蒸発器での目標冷却量よりも小さい場合、室内蒸発器での目標冷却量に関連する物理量に基づいて圧縮機の冷媒吐出量を制御し、一方、バッテリの目標冷却量が室内蒸発器での目標冷却量よりも大きい場合、バッテリの目標冷却量に関連する物理量に基づいて圧縮機の冷媒吐出量を制御するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばハイブリッド自動車では、車室内のみを冷却する車室内単独冷却モード、バッテリのみを冷却するバッテリ単独冷却モード、車室内の冷却とバッテリの冷却を同時に実行する協調制御モードの3種類のモードが考えられる。自動車の運転状況などに応じて、これら3種類のモードの中から適したモードに切り替えて車室内の冷却とバッテリの冷却を最適なタイミングで行う必要があるが、協調制御モードにおいては、車室内の乗員の快適性に関わる車室内冷却性能と、バッテリの寿命に係るバッテリ冷却性能が共に所定の要求を満足するように圧縮機を作動させなければならない。
【0005】
例えば、協調制御モード時に、車室内の冷却要求量のみによって圧縮機の目標冷媒吐出量を決定してしまうと、外気温度等の環境条件次第でバッテリの冷却不足が発生するおそれがあった。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、環境条件に左右されることなく、バッテリを適切に冷却できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、走行用モータ及び当該走行用モータに電力を供給するバッテリを備えた自動車に搭載される冷凍サイクル装置を前提とすることができる。冷凍サイクル装置は、冷媒を圧縮し吐出する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された冷媒を外気と熱交換させて凝縮させる室外熱交換器と、前記室外熱交換器から流出した冷媒を膨張させる膨張弁と、車室内に配設されるとともに前記膨張弁により膨張した冷媒が導入され、車室内へ送風される空気を冷却する蒸発器と、前記膨張弁により減圧された冷媒が導入され、前記バッテリを冷却するバッテリ冷却部とを備えているので、蒸発器によって車室内の冷房が可能になるとともに、バッテリ冷却部によってバッテリの冷却も可能になる。車室内の冷房とバッテリの冷却は同時に行うこともできるし、一方のみ行うこともできる。
【0008】
さらに、冷凍サイクル装置は、前記蒸発器の冷却要求量と前記バッテリ冷却部の冷却要求量を取得する冷却要求量取得部と、前記冷却要求量取得部で取得された前記蒸発器の冷却要求量と前記バッテリ冷却部の冷却要求量とに基づいて、前記圧縮機の冷媒吐出量を決定する吐出量決定部と、前記吐出量決定部で決定された冷媒吐出量となるように前記圧縮機を制御する制御部とを備えている。冷却要求量取得部は、蒸発器の冷却要求量を取得する部分と、バッテリ冷却部の冷却要求量を取得する部分とで構成されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、圧縮機から吐出された高温高圧の冷媒が室外熱交換器によって凝縮された後、膨張弁を介して膨張してから蒸発器に導入されると、蒸発器内で蒸発する。これにより、車室内へ送風される空気が蒸発器によって冷却される。一方、膨張弁を介して膨張したバッテリ冷却部に導入されると、走行用モータに電力を供給するためのバッテリが冷却されるので、バッテリの温度上昇を抑制できる。
【0010】
例えば、蒸発器の冷却要求量が高く、バッテリの冷却が不要な場合には、車室内単独冷却モードとなり、車室内単独冷却モードに適した冷媒吐出量となるように圧縮機が制御される。また、バッテリの冷却要求量が高く、車室内の冷却が不要な場合には、バッテリ単独冷却モードとなり、バッテリ単独冷却モードに適した冷媒吐出量となるように圧縮機が制御される。一方、車室内の冷却とバッテリの冷却を同時に実行する必要がある時には、協調制御モードとなる。このとき、蒸発器の冷却要求量とバッテリ冷却部の冷却要求量とに基づいて決定された冷媒吐出量となるように圧縮機が制御されるので、車室内の冷却要求量のみによって決定された冷媒吐出量とはならず、バッテリの冷却要求量も考慮された冷媒吐出量になるので、協調制御モード時に、環境条件に左右されることなく、バッテリを適切に冷却することが可能になる。
【0011】
冷凍サイクル装置は、前記室外熱交換器から流出した冷媒流れを前記蒸発器と前記バッテリ冷却部とに分岐させる分岐部と、前記分岐部から分岐する冷媒流路の一方あるいは両方を開閉する電磁弁とを備えていてもよい。この場合、前記制御部は、前記冷却要求量取得部で取得された前記蒸発器の冷却要求量と前記バッテリ冷却部の冷却要求量とに基づいて前記電磁弁を制御することができる。
【0012】
例えば、前記制御部は、前記蒸発器の冷却要求量が0よりも大きく、かつ、前記バッテリ冷却部の冷却要求量が0である場合には前記蒸発器にのみ冷媒が導入されるように前記電磁弁を制御し、前記蒸発器の冷却要求量が0であり、かつ、前記バッテリ冷却部の冷却要求量が0よりも大きい場合には前記バッテリ冷却部にのみ冷媒が導入されるように前記電磁弁を制御し、前記蒸発器の冷却要求量及び前記バッテリ冷却部の冷却要求量の両方が0よりも大きい場合には前記蒸発器及び前記バッテリ冷却部の両方に冷媒が導入されるように前記電磁弁を制御することで、車室内単独冷却モード、バッテリ単独冷却モード及び協調制御モードの各モードに適した冷媒吐出量となるように圧縮機を制御できる。
【0013】
冷凍サイクル装置は、前記蒸発器の温度を測定する蒸発器温度センサと、環境条件から目標蒸発器温度を演算する目標蒸発器温度演算部とを備えていてもよい。この場合、前記冷却要求量取得部は、前記目標蒸発器温度演算部で演算された前記目標蒸発器温度と、前記蒸発器温度センサで測定された前記蒸発器の温度との偏差に基づいたP制御、PI制御、PD制御、またはPID制御によって、前記蒸発器の冷却要求量を演算し、取得するように構成することができる。これにより、目標蒸発器温度と蒸発器の温度とが考慮された冷却要求量を取得できるので、車室内を適切に冷房できる。
【0014】
冷凍サイクル装置は、前記バッテリの温度、前記バッテリ冷却部の温度及び前記バッテリ冷却部を流通する冷媒温度の少なくとも1つを測定するバッテリ関連温度センサと、環境条件から目標バッテリ温度を演算する目標バッテリ温度演算部とを備えていてもよい。この場合、前記冷却要求量取得部は、前記目標バッテリ温度演算部で演算された前記目標バッテリ温度と、前記バッテリ関連温度センサで測定された温度との偏差に基づいたP制御、PI制御、PD制御、またはPID制御によって、前記バッテリ冷却部の冷却要求量を演算し、取得するように構成することができる。これにより、目標バッテリ温度とバッテリ関連温度が考慮された冷却要求量を取得できるので、バッテリを適切に冷却できる。
【0015】
また、冷凍サイクル装置は、前記バッテリ冷却部が有する複数の冷媒流路の冷媒温度をそれぞれ測定する複数のバッテリ冷却部冷媒温度センサを備えていてもよい。バッテリ冷却部冷媒温度センサの数は、例えば2以上とすることができる。バッテリ冷却部冷媒温度センサは、冷媒流路ごとに配設されており、配設されている冷媒流路を流通する冷媒温度を測定可能に構成されている。この場合、前記冷却要求量取得部は、複数の前記バッテリ冷却部冷媒温度センサで測定された複数の冷媒温度のうちのいずれか1つ、または複数の冷媒温度の平均値を用いて、前記バッテリ冷却部の冷却要求量を演算することができる。
【0016】
冷凍サイクル装置は、前記自動車の外部の空気温度を測定する外気温度センサを備えていてもよい。外気温度センサは、自動車の車室外の空気温度、即ち外気温度を測定するためのセンサであってもよく、自動車の外部に配設されている。この外気温度センサを設ける場合、前記制御部は、前記外気温度センサで測定された前記空気温度と、バッテリの温度とに基づいて、前記バッテリ冷却部の冷却要求量の上限または下限を決定することができるので、バッテリ冷却部の冷却要求量の上限及び下限を適切な量にすることができる。
【0017】
冷凍サイクル装置は、前記蒸発器の表面温度を測定する蒸発器温度センサを備えていてもよい。蒸発器温度センサは蒸発器の表面ないし空気通過方向下流において蒸発器の表面に近接した箇所に配設することができる。この蒸発器温度センサを配設する場合、前記蒸発器へ流入する冷媒流路が前記電磁弁により開放されている状態で、前記蒸発器温度センサで測定された前記蒸発器の表面温度が第1の所定温度より低い場合、前記制御部は、前記電磁弁を制御して前記蒸発器へ流入する冷媒流路を閉じるとともに、前記冷却要求量取得部で取得する前記蒸発器の冷却要求量を減少させることができる。
【0018】
一方、前記蒸発器へ流入する冷媒流路を前記電磁弁により閉じられている状態で、前記蒸発器温度センサで測定された前記蒸発器の表面温度が前記第1の所定温度より高く設定された第2の所定温度よりも高い場合、前記制御部は、前記電磁弁を制御して前記蒸発器へ流入する冷媒流路を開放するとともに、前記冷却要求量取得部で取得する前記蒸発器の冷却要求量を増加させることができる。すなわち、蒸発器の表面温度を考慮した冷却要求量にすることができる。
【0019】
冷凍サイクル装置は、前記バッテリの温度、前記バッテリ冷却部の温度及び前記バッテリ冷却部を流通する冷媒温度の少なくとも1つを測定するバッテリ関連温度センサを備えていてもよい。バッテリ関連温度センサを複数設けて、バッテリの温度、バッテリ冷却部の温度及びバッテリ冷却部を流通する冷媒温度の全てを測定してもよいし、これらのうちの任意の1つまたは2つを測定してもよい。このバッテリ関連温度センサを設ける場合、前記バッテリ冷却部へ流入する冷媒流路が前記電磁弁により開放されている状態で、前記バッテリ関連温度センサで測定された温度が第3の所定温度より低い場合、前記制御部は、前記電磁弁を制御して前記バッテリ冷却部へ流入する冷媒流路を閉じるとともに、前記冷却要求量取得部で取得する前記バッテリ冷却部の冷却要求量を減少させることができる。
【0020】
一方、前記バッテリ冷却部へ流入する冷媒流路が前記電磁弁により閉じられている状態で、前記バッテリ関連温度センサで測定された温度が前記第3の所定温度よりも高く設定された第4の所定温度よりも高い場合、前記制御部は、前記電磁弁を制御して前記バッテリ冷却部へ流入する冷媒流路を開放するとともに、前記冷却要求量取得部で取得する前記蒸発器の冷却要求量を増加させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、蒸発器の冷却要求量とバッテリ冷却部の冷却要求量とに基づいて決定された冷媒吐出量となるように圧縮機が制御されるので、車室内の冷却とバッテリの冷却を同時に実行する協調制御モード時に環境条件に左右されることなく、バッテリを適切に冷却でき、その結果、充放電性能の極端な低下やバッテリ寿命の低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置を備えた車両用空調装置の概略構成図である。
【
図2】
図2は、冷凍サイクル装置のブロック図である。
【
図3】
図3は、目標バッテリ温度を演算するためのグラフの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、圧縮機の最大回転数を決定するためのテーブルの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、圧縮機の最小回転数を決定するためのテーブルの一例を示す図である。
【
図6】
図6は、蒸発器がフロスト状態にある場合と通常状態にある場合の温度の関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、バッテリがフロスト状態にある場合と通常状態にある場合の温度の関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、冷凍サイクル装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置100を備えた車両用空調装置1の概略構成図である。車両用空調装置1は、走行用モータM及び当該走行用モータMに電力を供給するバッテリBTを備えた自動車に搭載される。車両用空調装置1が搭載される自動車は、走行用モータMのみが駆動力の全てを発生する電気自動車であってもよいし、走行用モータMと内燃機関(図示せず)とが駆動力を発生するハイブリッド自動車であってもよい。ハイブリッド自動車の場合、外部電源(商用電源等)からバッテリBTへの充電が可能なプラグインハイブリッド自動車であってもよい。バッテリBTは、特に限定されるものではないが、例えばリチウムイオン二次電池等である。このバッテリBTは、高温になると寿命が低下するおそれがあるとともに、充放電性能が低下するので、充電中及び放電中、所定の温度以下となるように冷却する必要がある。
【0025】
車両用空調装置1は、空調対象空間である自動車の車室内の空調を行うことができるのに加えて、冷却対象物であるバッテリBTの冷却も可能に構成されているので、例えば車両用冷却システム等と呼ぶこともできる。車両用空調装置1は、自動車の車室内の空調を行う必要が無く、かつ、バッテリBTの冷却が必要なときには、バッテリBTの冷却のみ行うが、自動車の車室内の空調を行う必要があり、かつ、バッテリBTの冷却が不要なときには、自動車の車室内の空調のみ行う。また、車両用空調装置1は、自動車の車室内の空調を行う必要があり、かつ、バッテリBTの冷却が必要なときには、自動車の車室内の空調と、バッテリBTの冷却の両方を行う。
【0026】
本実施形態の説明では、はじめに、自動車の車室内の空調を行う部分について説明する。車両用空調装置1は、自動車の車室内の空気(内気)と、自動車の車室外の空気(外気)との一方または両方を導入して温度調節した後、車室の各部に供給するように構成されている。車両の車室内には、図示しないが、運転席及び助手席からなる前席と、前席の後方に配設される後席とが設けられている。尚、この実施形態の説明では、自動車の前側を単に「前側」といい、自動車の後側を単に「後側」というものとする。
【0027】
車両用空調装置1は、空調ケーシング10と制御装置(
図2に示す)30とを備えている。空調ケーシング10は、例えば車室の前端部に配設されたインストルメントパネル(図示せず)の内部に収容されている。空調ケーシング10は、空気流れ方向上流側から下流側に向かって順に、送風ケーシング11と、温度調節部12と、吹出方向切替部13とを備えている。送風ケーシング11には、外気導入口11aと内気導入口11bとが形成されている。外気導入口11aは、例えば図示しないインテークダクトを介して車室外と連通しており、車室外の空気(外気)を導入するようになっている。内気導入口11bは、インストルメントパネルの内部で開口しており、車室内の空気(内気)を導入して車室内に循環させるようになっている。外気導入口11aから導入する外気の量が外気導入量となる。内気導入口11bから導入する内気の量が内気循環量となる。
【0028】
送風ケーシング11の内部には、外気導入口11a及び内気導入口11bを開閉する内外気切替ダンパ11cが配設されている。内外気切替ダンパ11cは、例えば板状の部材で構成することができ、送風ケーシング11の側壁に対して回動可能に支持されている。内外気切替ダンパ11cは、内外気切替アクチュエータ(内外気切替ダンパ駆動手段)11dによって任意の回動角度となるように駆動される。これによりインテークモードが切り替えられる。内外気切替アクチュエータ11dは、制御装置30によって制御される。
【0029】
例えば、
図1に実線で示すように外気導入口11aを全閉にし、かつ、内気導入口11bを全開にするまで内外気切替ダンパ11cを回動させると、インテークモードが内気循環モードとなる。このときの内外気切替ダンパ11cの開度は100%とする。一方、
図1に仮想線で示すように外気導入口11aを全開にし、かつ、内気導入口11bを全閉にするまで内外気切替ダンパ11cを回動させると、インテークモードが外気導入モードとなる。このときの内外気切替ダンパ11cの開度は0%とする。そして、内外気切替ダンパ11cの開度が1%~99%の間にあるときには、外気導入口11aと内気導入口11bの両方が開状態となり、内気と外気の両方が温度調節部12に導入される。このインテークモードが内外気混入モードである。内外気混入モード時には、内外気切替ダンパ11cの開度によって内気と外気の導入比率が変更され、これにより、外気導入量及び内気循環量が変化する。
【0030】
図1に示すように、送風ケーシング11には、送風機15が設けられている。送風機15は、ファン15aと、ファン15aを駆動するブロアモータ15bとを備えている。ファン15aが回転することによって内気及び外気の少なくとも一方が送風ケーシング11に導入された後、送風ケーシング11の下流側に設けられている温度調節部12に送風される。ブロアモータ15bは、印加される電圧を変更することで単位時間当たりの回転数を調整することができるように構成されている。このブロアモータ15bの回転数によって送風量が変化するようになっている。ブロアモータ15bは、制御装置30によって制御される。
【0031】
温度調節部12は、送風ケーシング11から導入された空調用空気の温度調節を行うための部分である。温度調節部12の内部には、冷却用熱交換器である蒸発器16と、加熱用熱交換器17と、エアミックスドア18とが配設されている。すなわち、温度調節部12の内部には、空気流れ方向上流側に冷風通路R1が形成され、この冷風通路R1に蒸発器16が収容されている。また、冷風通路R1の下流側は温風通路R2とバイパス通路R3とに分岐しており、温風通路R2に加熱用熱交換器17が収容されている。
【0032】
蒸発器16は、詳細は後述するが、冷凍サイクル装置100の蒸発器で構成されている。また、加熱用熱交換器17は、例えば自動車の車室外に搭載されている走行用モータMやエンジン(図示せず)を冷却するための冷却水が供給されるヒータコア等で構成することができるが、これに限られるものではなく、例えば電気式ヒータ等、空気を加熱することができるものではあればよい。また、電気式ヒータを補助熱源として付加することもできる。また、冷凍サイクル装置100の凝縮器で加熱用熱交換器17が構成されていてもよい。
【0033】
エアミックスドア18は、蒸発器16と加熱用熱交換器17の間に配設されており、温風通路R2の上流端とバイパス通路R3の上流端とを開閉するものである。エアミックスドア18は、例えば板状の部材で構成することができ、温度調節部12の側壁に対して回動可能に支持されている。エアミックスドア18は、エアミックスアクチュエータ18aによって任意の回動角度となるように駆動される。エアミックスアクチュエータ18aは、制御装置30によって制御される。
【0034】
エアミックスドア18が温風通路R2の上流端を全開にし、かつ、バイパス通路R3の上流端を全閉にすると、冷風通路R1で生成された冷風の全量が温風通路R2に流入して加熱されるので、吹出方向切替部13には温風が流入する。一方、エアミックスドア18が温風通路R2の上流端を全閉にし、かつ、バイパス通路R3の上流端を全開にすると、冷風通路R1で生成された冷風の全量がバイパス通路R3に流入するので、吹出方向切替部13には冷風が流入する。エアミックスドア18が温風通路R2の上流端及びバイパス通路R3の上流端を開く回動位置にあるときには、冷風及び温風が混合した状態で吹出方向切替部13に流入することになる。エアミックスドア18の回動位置によって吹出方向切替部13に流入する冷風量と温風量とが変更されて所望温度の調和空気が生成される。尚、エアミックスドア18は、上記した板状のドアに限られるものではなく、冷風量と温風量とを変更することができる構成であればその構成はどのような構成であってもよい。例えばロータリドアやフィルムドア、ルーバーダンパ等であってもよい。また、温度調節の構成は上記した構成でなくてもよく、冷風量と温風量とを変更することができる構成であればよい。
【0035】
吹出方向切替部13は、温度調節部12で温度調節された調和空気を車室の各部に供給するための部分である。吹出方向切替部13には、デフロスタ吹出口21と、ベント吹出口22と、ヒート吹出口23とが形成されている。デフロスタ吹出口21は、インストルメントパネルに形成されたデフロスタノズル24に接続されている。このデフロスタ吹出口21は、フロントウインドガラス(窓ガラス)Gの車室内面に調和空気を供給するためのものである。デフロスタ吹出口21の内部には、デフロスタ吹出口21を開閉するためのデフロスタドア21aが設けられている。
【0036】
ベント吹出口22は、インストルメントパネルに形成されたベントノズル25に接続されている。ベントノズル25は、前席の乗員の上半身に調和空気を供給するためのものであり、インストルメントパネルの車幅方向中央部と、左右両側にそれぞれ設けられている。ベント吹出口22の内部には、ベント吹出口22を開閉するためのベントドア22aが設けられている。
【0037】
ヒート吹出口23は、乗員の足元近傍まで延びるヒートダクト26に接続されている。ヒートダクト26は、乗員の足元に調和空気を供給するためのものである。ヒート吹出口23の内部には、ヒート吹出口23を開閉するためのヒートドア23aが設けられている。
【0038】
デフロスタドア21a、ベントドア22a及びヒートドア23aは吹出方向切替アクチュエータ27によって駆動されて開閉動作する。吹出方向切替アクチュエータ27は、制御装置30によって制御される。デフロスタドア21a、ベントドア22a及びヒートドア23aは、図示しないがリンクを介して連動するようになっており、例えば、デフロスタドア21aが開状態で、ベントドア22a及びヒートドア23aが閉状態となるデフロスタモード、デフロスタドア21a及びヒートドア23aが閉状態で、ベントドア22aが開状態となるベントモード、デフロスタドア21a及びベントドア22aが閉状態で、ヒートドア23aが開状態となるヒートモード、デフロスタドア21a及びベントドア22aが開状態で、ヒートドア23aが閉状態となるデフベントモード、デフロスタドア21a及びヒートドア23aが開状態で、ベントドア22aが閉状態となるバイレベルモード等の複数の吹出モードの内、任意の吹出モードに切り替えられる。車室内の空調を行う部分の制御は全てが自動制御でなくてもよく、たとえば内外気の切替、吹出方向の切替は乗員が操作可能であってもよい。
【0039】
冷凍サイクル装置100は、車両用空調装置1の一部を構成している。従って、冷凍サイクル装置100は、走行用モータM及び当該走行用モータMに電力を供給するバッテリBTを備えた自動車に搭載されるものである。尚、車室内の空調を行う部分の構造は、上述した例に限定されるものではなく、どのような構造であってよい。
【0040】
冷凍サイクル装置100は、圧縮機101と、室外熱交換器102と、膨張弁103と、上記蒸発器16と、バッテリ冷却部104と、第1~第6冷媒配管111~116とを備えている。圧縮機101は、モータを有する電動式の圧縮機で構成されており、冷媒を吸入した後、圧縮し吐出するように構成されている。圧縮機101は、制御装置30に接続されており、制御装置30によって回転数が制御される。回転数を高めれば高めるほど冷媒吐出量(単位時間当たりの冷媒の吐出量)が増加し、回転数を低くすればするほど冷媒吐出量が減少する。尚、圧縮機101は、可変容量型の圧縮機であってもよく、この可変容量型の圧縮機も制御装置30によって冷媒吐出量を増減できる。
【0041】
室外熱交換器102は、圧縮機101から吐出された冷媒を外気と熱交換させて凝縮させるための部材であり、車室外に配設されている。室外熱交換器102の外部を外気が通過可能になっている。室外熱交換器102の冷媒流入側は、第1冷媒配管111を介して圧縮機101の吐出口(図示せず)と接続されている。室外熱交換器102の冷媒流出側は、第2冷媒配管112を介して膨張弁103の冷媒流入側と接続されている。
【0042】
膨張弁103は、室外熱交換器102から流出した冷媒を膨張させるための部材である。この実施形態の冷凍サイクル装置100は、室外熱交換器102から流出した冷媒流れを蒸発器16とバッテリ冷却部104とに分岐させるための分岐部105を備えている。分岐部105は、ブロック状の接続部材で構成することができる。分岐部105には、第2冷媒配管112の下流側と、第3冷媒配管113の上流側と、第4冷媒配管114の上流側とが互いに連通可能に接続されている。
【0043】
また、冷凍サイクル装置100は、分岐部105から分岐する冷媒流路の一方あるいは両方を開閉する電磁弁106も備えている。すなわち、電磁弁106は、第3冷媒配管113を開閉するとともに、第4冷媒配管114を開閉するように構成されている。電磁弁106が第3冷媒配管113を開いて第4冷媒配管114を閉じることで、膨張弁103で膨張した冷媒が第3冷媒配管113にのみ流入して第4冷媒配管114には流入しなくなる。一方、電磁弁106が第3冷媒配管113を閉じて第4冷媒配管114を開くことで、膨張弁103で膨張した冷媒が第3冷媒配管113には流入せず、第4冷媒配管114にのみ流入する。また、電磁弁106が第3冷媒配管113及び第4冷媒配管114の両方を開くことで、膨張弁103で膨張した冷媒が第3冷媒配管113及び第4冷媒配管114の両方に流入する。電磁弁106は、制御装置30によって制御される。
【0044】
第3冷媒配管113の下流側は蒸発器16の冷媒流入側に接続されている。よって、第3冷媒配管113を流通した冷媒は、蒸発器16に流入する。蒸発器16は、上述したように車室内に配設されるとともに膨張弁103により膨張した冷媒が導入可能に構成されており、ファン15aによって車室内へ送風される空気を冷却するための部材である。蒸発器16は、図示しないが、例えば複数のチューブとフィンとを積層したチューブアンドフィンタイプの熱交換器で構成されている。
【0045】
第4冷媒配管114の下流側はバッテリ冷却部104の冷媒流入側に接続されている。よって、第4冷媒配管114を流通した冷媒は、バッテリ冷却部104に流入する。バッテリ冷却部104は、膨張弁103により減圧された冷媒が導入されるように構成されており、バッテリBTを冷却する部分である。バッテリ冷却部104の構造は特に限定されるものではないが、例えばバッテリBTの外面に沿って延びる複数のチューブ(図示せず)を備えており、各チューブを流通する冷媒がバッテリBTと熱交換することで、当該バッテリBTの冷却が可能になる。複数のチューブ内には、それぞれ冷媒が流通する冷媒流路が形成されており、各冷媒流路に、膨張弁103により減圧された冷媒が導入される。
【0046】
第5冷媒配管115は、バッテリ冷却部104の流出側と圧縮機101の吸入口(図示せず)とを接続する部材である。バッテリ冷却部104から流出した冷媒は第5冷媒配管115と経て圧縮機101に吸入される。
【0047】
第6冷媒配管116は、蒸発器16の流出側と第5冷媒配管115とを接続する部材である。蒸発器16から流出した冷媒は第6冷媒配管116と経て圧縮機101に吸入される。尚、第6冷媒配管116の下流側が圧縮機101の吸入口に直接接続されていてもよい。
【0048】
図2に示すように、冷凍サイクル装置100は、バッテリ温度センサ121と、バッテリ冷却部温度センサ122と、バッテリ冷却部冷媒温度センサ123と、外気温度センサ124と、蒸発器温度センサ125とを備えている。バッテリ温度センサ121、バッテリ冷却部温度センサ122及びバッテリ冷却部冷媒温度センサ123は、バッテリBTの温度またはバッテリBTの温度を推定するのに必要な温度情報を取得するためのバッテリ関連温度センサである。バッテリ温度センサ121、バッテリ冷却部温度センサ122及びバッテリ冷却部冷媒温度センサ123のうち、任意の1つのみまたは任意の2つのみ設けられていてもよい。
【0049】
バッテリ温度センサ121、バッテリ冷却部温度センサ122、バッテリ冷却部冷媒温度センサ123、外気温度センサ124及び蒸発器温度センサ125は、制御装置30に接続されており、所定の短いタイミング(例えば数百ミリ秒)で測定結果を制御装置30へ出力する。
【0050】
バッテリ温度センサ121は、バッテリBTの温度を測定するためのセンサであり、バッテリBTを構成しているセル(図示せず)近傍またはセルを収容しているケース(図示せず)近傍に配設されている。バッテリ冷却部温度センサ122は、バッテリ冷却部104の温度を測定するためのセンサであり、バッテリ冷却部104の表面またはその近傍に配設されている。バッテリ冷却部冷媒温度センサ123は、バッテリ冷却部を流通する冷媒温度を測定するためのセンサである。バッテリ冷却部冷媒温度センサ123は、バッテリ冷却部104が有する冷媒流路の冷媒温度の測定が可能となるように、例えば冷媒流路等に配設される。バッテリ冷却部104が複数の冷媒流路を有している場合には、複数の冷媒流路の冷媒温度をそれぞれ測定する複数のバッテリ冷却部冷媒温度センサ123を設けることができる。この場合、複数のバッテリ冷却部冷媒温度センサ123によりバッテリ関連温度センサが構成されることになる。
【0051】
外気温度センサ124は、自動車の外部の空気温度を測定するためのセンサであり、車室外の所定位置に配設されている。外気温度センサ124は、制御装置30に接続されており、所定の短いタイミング(例えば数百ミリ秒)で測定結果を制御装置30へ出力する。
【0052】
蒸発器温度センサ125は、蒸発器16の表面温度を測定するためのセンサである。蒸発器温度センサ125は蒸発器16の表面ないし空気通過方向下流において蒸発器16の表面に近接した箇所に配設することができる。
【0053】
制御装置30は、例えばマイクロコンピュータ、ROM、RAM等によって構成されており、予め記憶されているプログラムにしたがって動作する。制御装置30が所定のプログラムにしたがって動作することで、目標蒸発器温度演算部30a、目標バッテリ温度演算部30b、冷却要求量取得部30c、吐出量決定部30d及び制御部30eが構成される。
【0054】
目標蒸発器温度演算部30aは、環境条件から目標蒸発器温度を演算する部分である。目標蒸発器温度は、蒸発器16の表面の目標温度ということができる。例えば、図示しないが、車室内の空気温度を測定する内気温度センサ、日射量を測定する日射量センサ、温度設定スイッチ等を冷凍サイクル装置100が備えている。オートエアコン制御が実行されている場合には、外気温度センサ124で測定された外気温度、内気温度センサで測定された内気温度、日射量センサで測定された日射量、蒸発器温度センサ125で測定された蒸発器16の表面温度、温度設定スイッチで設定された設定温度等に基づいて、車室内に供給する調和空気の目標吹出温度を決定するとともに、この目標吹出温度となるようにエアミックスドア18の開度を演算し、エアミックスドア18がこの開度となるようにエアミックスアクチュエータ18aを制御してエアミックスドア18を回動させる。このとき、目標蒸発器温度演算部30aは、車室内に供給する調和空気の温度が目標吹出温度となるようにするための目標蒸発器温度を演算する。具体的に、目標蒸発器温度演算部30aは、目標吹出温度が低くなればなるほど、目標蒸発器温度が低くなるように当該目標蒸発器温度を演算し、例えば、設定温度が低い場合や、日射量が多くかつ外気温度が高い場合には目標蒸発器温度が低くなる。外気温度、内気温度、日射量、設定温度等は、環境条件である。
【0055】
目標バッテリ温度演算部30bは、環境条件から目標バッテリ温度を演算する部分である。目標バッテリ温度は、例えば外気温度を用いたグラフまたはテーブルに基づいて目標バッテリ温度演算部30bが演算する。例えば外気温度が高ければ高いほど目標バッテリ温度を低く演算する。具体例を
図3に挙げており、この
図3は、横軸が外気温度センサ124で測定された外気温度(℃)、縦軸が目標バッテリ温度(℃)のグラフを示している。目標バッテリ温度演算部30bは、外気温度センサ124で測定された外気温度を取得した後、取得した外気温度に対応した横軸の温度を目標バッテリ温度とする。尚、このグラフは一例であり、グラフを生成するためのテーブルに基づいて目標バッテリ温度を演算することもできる。
【0056】
図2に示す冷却要求量取得部30cは、蒸発器16の冷却要求量と、バッテリ冷却部104の冷却要求量とを取得する部分である。この例では、蒸発器16の冷却要求量を取得する部分と、バッテリ冷却部104の冷却要求量を取得する部分とが1つの冷却要求量取得部30cで構成されている場合について説明するが、これに限らず、蒸発器16の冷却要求量を取得する部分と、バッテリ冷却部104の冷却要求量を取得する部分とが別であってもよい。
【0057】
冷却要求量取得部30cは、目標蒸発器温度演算部30aで演算された目標蒸発器温度と、蒸発器温度センサ125で測定された蒸発器16の温度とを取得する。冷却要求量取得部30cは、目標蒸発器温度演算部30aで演算された目標蒸発器温度と、蒸発器温度センサ125で測定された蒸発器16の温度とを取得した後、目標蒸発器温度演算部30aで演算された目標蒸発器温度と、蒸発器温度センサ125で測定された蒸発器16の温度との偏差を演算する。冷却要求量取得部30cは、演算した偏差に基づいたP制御、PI制御、PD制御、またはPID制御によって、蒸発器16の冷却要求量を演算し、取得するように構成されている。蒸発器16の冷却要求量Aは、式(1)に基づいて演算することが可能である。
【0058】
A=Kp×ΔTe+Ki×∫(ΔTe)dt+Kd×dΔTe/dt …(1)
Te:蒸発器の温度
Kp、Ki、Kd:係数
ΔTe=目標蒸発器温度-蒸発器の温度
【0059】
尚、蒸発器16の冷却要求量の演算手法は、上述した式(1)を用いる方法以外であってもよく、P制御、PI制御、PD制御、PID制御のいずれであってもよい。例えば外気温度が低く、車室内の冷房が不要な条件では、蒸発器16の冷却要求量が0になることもある。
【0060】
冷却要求量取得部30cは、バッテリ冷却部104の冷却要求量を取得することができる。具体的には、冷却要求量取得部30cは、目標バッテリ温度演算部30bで演算された目標バッテリ温度と、バッテリ関連温度センサ(バッテリ温度センサ121、バッテリ冷却部温度センサ122及びバッテリ冷却部冷媒温度センサ123)で測定された温度(バッテリ温度)とを取得する。このとき、バッテリ温度センサ121、バッテリ冷却部温度センサ122及びバッテリ冷却部冷媒温度センサ123の任意の1つで測定された温度のみを取得してもよいし、任意の2つで測定された温度のみを取得してもよい。バッテリ温度センサ121、バッテリ冷却部温度センサ122及びバッテリ冷却部冷媒温度センサ123の測定結果は、ほぼ同じ温度になる場合がある。
【0061】
冷却要求量取得部30cは、目標バッテリ温度演算部30bで演算された目標バッテリ温度と、バッテリ関連温度センサで測定された温度とを取得した後、目標バッテリ温度と、バッテリ関連温度センサで測定された温度との偏差を演算する。冷却要求量取得部30cは、演算した偏差に基づいたP制御、PI制御、PD制御、またはPID制御によって、バッテリ冷却部104の冷却要求量を演算し、取得するように構成されている。バッテリ冷却部104の冷却要求量Bは、式(2)に基づいて演算することが可能である。
【0062】
B=Kp’×ΔTb+Ki’×∫(ΔTb)dt+Kd’×dΔTb/dt …(2)
Tb:バッテリ温度
Kp’、Ki’、Kd’:係数
ΔTb=目標バッテリ温度-バッテリ温度
【0063】
尚、バッテリBTの冷却要求量の演算手法は、上述した式(2)を用いる方法以外であってもよく、P制御、PI制御、PD制御、PID制御のいずれであってもよい。例えばバッテリBTの温度が低く、バッテリBTの冷却が不要な条件では、バッテリBTの冷却要求量が0になることもある。
【0064】
バッテリ冷却部冷媒温度センサ123が複数配設されている場合には、バッテリ冷却部104が有する複数の冷媒流路の冷媒温度がそれぞれ測定されることになり、冷却要求量取得部30cが複数の冷媒温度を取得する。この場合、冷却要求量取得部30cは、複数のバッテリ冷却部冷媒温度センサ123で測定された複数の冷媒温度のうちのいずれか1つ、または複数の冷媒温度の平均値をバッテリ温度として用いて、バッテリ冷却部104の冷却要求量を演算する。例えば、複数の冷媒温度のうち、最も高い温度をバッテリ温度として用いてもよいし、最も低い温度をバッテリ温度として用いてもよいし、中央値をバッテリ温度として用いてもよい。冷媒温度の平均値を算出する際には、中央値から大きく外れた値を無視して算出してもよい。
【0065】
吐出量決定部30dは、冷却要求量取得部30cで取得された蒸発器16の冷却要求量と、バッテリ冷却部104の冷却要求量とに基づいて、圧縮機101の冷媒吐出量を決定する部分である。
【0066】
制御部30eは、吐出量決定部30dで決定された冷媒吐出量となるように圧縮機101を制御する部分である。冷媒吐出量が多ければ多いほど、圧縮機101の回転数(単位時間当たりの回転数)を高め、反対に冷媒吐出量が少なければ少ないほど、圧縮機101の回転数を低くするように、制御部30eが圧縮機101を制御する。
【0067】
また、制御部30eは、冷却要求量取得部30cで取得された蒸発器16の冷却要求量と、バッテリ冷却部104の冷却要求量とを取得する。制御部30eは、蒸発器16の冷却要求量と、バッテリ冷却部104の冷却要求量とを取得した後、蒸発器16の冷却要求量と、バッテリ冷却部104の冷却要求量とに基づいて電磁弁106を制御する。
【0068】
電磁弁106の制御の具体例について説明する。制御部30eは、蒸発器16の冷却要求量が0よりも大きく、かつ、バッテリ冷却部104の冷却要求量が0である場合には、蒸発器16にのみ冷媒が導入されるように電磁弁106を制御する。つまり、第3冷媒配管113を開いて第4冷媒配管114を閉じるように制御部30eが電磁弁106を制御する。これにより、車室内単独冷却モードとなる。
【0069】
制御部30eは、蒸発器16の冷却要求量が0であり、かつ、バッテリ冷却部104の冷却要求量が0よりも大きい場合にはバッテリ冷却部104にのみ冷媒が導入されるように電磁弁106を制御する。つまり、第3冷媒配管113を閉じて第4冷媒配管114を開くように制御部30eが電磁弁106を制御する。これにより、バッテリ単独冷却モードとなる。
【0070】
制御部30eは、蒸発器16の冷却要求量及びバッテリ冷却部104の冷却要求量の両方が0よりも大きい場合には、蒸発器16及びバッテリ冷却部104の両方に冷媒が導入されるように電磁弁106を制御する。つまり、第3冷媒配管113及び第4冷媒配管114の両方を開くように制御部30eが電磁弁106を制御する。これにより、車室内の冷却とバッテリBTの冷却とが同時に行われる協調制御モードとなる。
【0071】
制御部30eは、外気温度センサ124で測定された外気温度と、バッテリ関連温度センサで測定されたバッテリBTの温度とを取得する。制御部30eは、外気温度センサ124で測定された外気温度と、バッテリ関連温度センサで測定されたバッテリBTの温度とに基づいて、バッテリ冷却部104の冷却要求量の上限または下限を決定する。つまり、圧縮機101の冷媒吐出量、即ち回転数の上限と下限とを設定することができる。
【0072】
図4は、外気温度センサ124で測定された外気温度と、バッテリ関連温度センサで測定されたバッテリBTの温度に基づいて、圧縮機101の回転数の上限(最大回転数)を決定するためのテーブルである。この図に示すように、外気温度が低くなるほど圧縮機101の最大回転数が高くなり、バッテリBTの温度が高くなるほど圧縮機101の最大回転数が高くなる。
【0073】
図5は、外気温度センサ124で測定された外気温度と、バッテリ関連温度センサで測定されたバッテリBTの温度に基づいて、圧縮機101の回転数の下限(最小回転数)を決定するためのテーブルである。この図に示すように、外気温度とバッテリBTの温度とが低くなればなるほど圧縮機101の最小回転数が低くなる。バッテリ冷却部104の冷却要求量は、例えば外気温度が0℃でバッテリBTの温度が40℃の時には0となる。
【0074】
蒸発器16へ流入する冷媒流路が電磁弁106により開放されている状態で、蒸発器温度センサ125で測定された蒸発器16の表面温度が第1の所定温度より低い場合、制御部30eは、電磁弁106を制御して蒸発器16へ流入する冷媒流路を閉じる(第3冷媒配管113を閉じる)。このとき、冷却要求量取得部30cは、取得する蒸発器16の冷却要求量を減少させる。
【0075】
一方、蒸発器16へ流入する冷媒流路が電磁弁106により閉じられている状態で、蒸発器温度センサ125で測定された蒸発器16の表面温度が第1の所定温度より高く設定された第2の所定温度よりも高い場合、制御部30eは、電磁弁106を制御して蒸発器16へ流入する冷媒流路を開放する(第3冷媒配管113を開く)。このとき、冷却要求量取得部30cは、取得する蒸発器16の冷却要求量を増加させる。
【0076】
第1の所定温度は、蒸発器16にフロストが発生している状態(フロスト状態)の温度である。第2の所定温度は、蒸発器16のフロストが解消している状態(通常状態)の温度である。
図6に示すように、制御部30eは、蒸発器16がフロスト状態であるときには、蒸発器16に冷媒が流入しないように電磁弁106を制御し、かつ、圧縮機101の回転数を0にする。その後、蒸発器温度センサ125で測定された蒸発器16の表面温度が上昇して第2の所定温度よりも高くなると、蒸発器16が通常状態に移行したと推定されるので、制御部30eは、蒸発器16に冷媒が流入するように電磁弁106を制御し、かつ、PID制御によって決定された回転数となるように圧縮機101を制御する。
【0077】
また、バッテリ冷却部104へ流入する冷媒流路が電磁弁106により開放されている状態で、バッテリ関連温度センサで測定された温度が第3の所定温度より低い場合、制御部30eは、電磁弁106を制御してバッテリ冷却部104へ流入する冷媒流路を閉じる(第4冷媒配管114を閉じる)。このとき、冷却要求量取得部30cは、取得するバッテリ冷却部104の冷却要求量を減少させる。
【0078】
一方、バッテリ冷却部104へ流入する冷媒流路が電磁弁106により閉じられている状態で、バッテリ関連温度センサで測定された温度が第3の所定温度よりも高く設定された第4の所定温度よりも高い場合、制御部30eは、電磁弁106を制御してバッテリ冷却部104へ流入する冷媒流路を開放する(第4冷媒配管114を開く)。このとき、冷却要求量取得部30cは、取得する蒸発器16の冷却要求量を増加させる。
【0079】
第3の所定温度は、バッテリBTにフロストが発生している状態(フロスト状態)の温度である。第4の所定温度は、バッテリBTのフロストが解消している状態(通常状態)の温度である。
図7に示すように、制御部30eは、バッテリBTがフロスト状態であるときには、バッテリ冷却部104に冷媒が流入しないように電磁弁106を制御し、かつ、圧縮機101の回転数を0にする。その後、バッテリBTの温度が上昇して第4の所定温度よりも高くなると、バッテリBTが通常状態に移行したと推定されるので、制御部30eは、バッテリ冷却部104に冷媒が流入するように電磁弁106を制御し、かつ、PID制御によって決定された回転数となるように圧縮機101を制御する。尚、圧縮機101の最小回転数を決定している場合、バッテリBTにフロストが発生している状態では、決定した最小回転数は無視して圧縮機101の回転数を0にする。
【0080】
図8は、冷凍サイクル装置100の動作を説明する図である。ステップS1では、目標蒸発器温度演算部30aで演算された目標蒸発器温度と、蒸発器温度センサ125で測定された蒸発器16の表面温度に基づいて、冷却要求量取得部30cが蒸発器16の冷却要求量を演算する。ステップS2では、蒸発器温度センサ125で測定された蒸発器16の表面温度に基づいて、
図6に示すように制御部30eが蒸発器16のフロスト判定を行う。
【0081】
一方、ステップS3では、外気温度センサ124で測定された外気温度に基づいて、目標バッテリ温度演算部30bが目標バッテリ温度を演算する。また、ステップS4では、バッテリ関連温度センサで測定された複数のバッテリBTの温度に基づいて、1つのバッテリBTの温度を演算する。
【0082】
ステップS5では、ステップS3で演算された目標バッテリ温度と、ステップS4で演算されたバッテリBTの温度とに基づいて、冷却要求量取得部30cがバッテリBTの冷却要求量を演算する。ステップS6では、外気温度センサ124で測定された外気温度と、バッテリ関連温度センサで測定されたバッテリBTの温度と、
図5に示すテーブルとに基づいて、圧縮機101の最大回転数と最小回転数を決定する。ステップS7では、バッテリ関連温度センサで測定されたバッテリBTに基づいて、
図7に示すように制御部30eがバッテリBTのフロスト判定を行う。
【0083】
ステップS8では、ステップS1で演算した蒸発器16の冷却要求量と、ステップS5で演算したバッテリBTの冷却要求量とに基づいて、吐出量決定部30dが圧縮機101の冷媒吐出量を決定する。協調制御モードの時には、蒸発器16の冷却要求量とバッテリBTの冷却要求量とを合わせた冷却要求量となるように、吐出量決定部30dが圧縮機101の冷媒吐出量を決定する。一方、車室内単独冷却モードの場合には、蒸発器16の冷却要求量となるように、吐出量決定部30dが圧縮機101の冷媒吐出量を決定し、またバッテリ単独冷却モードの場合には、バッテリBTの冷却要求量となるように、吐出量決定部30dが圧縮機101の冷媒吐出量を決定する。そして、決定された吐出量が得られるように、圧縮機101の回転数も決定される。圧縮機101の回転数を決定する際には、ステップS6で決定された最大回転数と最小回転数の制約が反映される。ステップS9では、制御部30eが、吐出量決定部30dで決定された冷媒吐出量となるように圧縮機101を制御する。
【0084】
ステップS2で蒸発器16がフロスト状態であると判定された場合、及びステップS7でバッテリBTがフロスト状態であると判定された場合には、ステップS10に進む。ステップS10では、蒸発器16のフロスト、バッテリBTのフロストが解消するように、電磁弁106を制御するための開閉信号を生成する。ステップS11では、ステップS10で生成された開閉信号を電磁弁106に送信し、電磁弁106を制御する。また、蒸発器16のフロスト、バッテリBTのフロストが解消するように圧縮機101も制御する。
【0085】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、圧縮機101から吐出された高温高圧の冷媒が室外熱交換器102に流入すると、室外熱交換器102によって凝縮された後、膨張弁103を介して膨張してから蒸発器16に導入される。蒸発器16内では冷媒が蒸発し、これにより、車室内へ送風される空気が蒸発器16によって冷却される。一方、膨張弁103を介して膨張したバッテリ冷却部104に導入されると、走行用モータMに電力を供給するためのバッテリBTが冷却されるので、バッテリBTの温度上昇を抑制できる。
【0086】
蒸発器16の冷却要求量が高く、バッテリBTの冷却が不要な場合には、車室内単独冷却モードとなり、車室内単独冷却モードに適した冷媒吐出量となるように圧縮機101が制御される。また、バッテリBTの冷却要求量が高く、車室内の冷却が不要な場合には、バッテリ単独冷却モードとなり、バッテリ単独冷却モードに適した冷媒吐出量となるように圧縮機101が制御される。一方、車室内の冷却とバッテリBTの冷却を同時に実行する必要がある時には、協調制御モードとなる。このとき、蒸発器16の冷却要求量とバッテリ冷却部104の冷却要求量とに基づいて決定された冷媒吐出量となるように圧縮機101が制御される。具体的には、蒸発器16の冷却要求量とバッテリ冷却部104の冷却要求量とを合わせた冷却要求量となるように圧縮機101が制御される。これにより、車室内の冷却要求量のみによって決定された冷媒吐出量とはならず、バッテリBTの冷却要求量も考慮された冷媒吐出量になるので、協調制御モード時に、環境条件に左右されることなく、バッテリBTを適切に冷却することが可能になる。
【0087】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本開示に係る冷凍サイクル装置は、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載されるバッテリを冷却して温度調整する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 冷凍サイクル装置
16 蒸発器
30a 目標蒸発器温度演算部
30b 目標バッテリ温度演算部
30c 冷却要求量取得部
30d 吐出量決定部
30e 制御部
101 圧縮機
102 室外熱交換器
103 膨張弁
104 バッテリ冷却部
105 分岐部
106 電磁弁
121 バッテリ温度センサ
122 バッテリ冷却部温度センサ
123 バッテリ冷却部冷媒温度センサ
124 外気温度センサ
125 蒸発器温度センサ
BT バッテリ
M モータ