▶ 竹本油脂株式会社の特許一覧
特開2024-155064炭素繊維含有不織布製造用の処理剤、炭素繊維含有不織布、及び炭素繊維含有不織布の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155064
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】炭素繊維含有不織布製造用の処理剤、炭素繊維含有不織布、及び炭素繊維含有不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 13/11 20060101AFI20241024BHJP
D06M 15/55 20060101ALI20241024BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20241024BHJP
D06M 13/17 20060101ALI20241024BHJP
D06M 13/224 20060101ALI20241024BHJP
D06M 101/40 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
D06M13/11
D06M15/55
D06M15/53
D06M13/17
D06M13/224
D06M101:40
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069461
(22)【出願日】2023-04-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松永 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼島 暁
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA09
4L033AB07
4L033AC15
4L033BA08
4L033BA14
4L033BA21
4L033CA48
4L033CA49
(57)【要約】
【課題】炭素繊維の折れを低減できる炭素繊維含有不織布製造用の処理剤、炭素繊維含有不織布、及び炭素繊維含有不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤は、エポキシ化合物(A)を含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)を含有することを特徴とする炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
【請求項2】
前記エポキシ化合物(A)が、ビスフェノールA骨格、及びビスフェノールF骨格から選ばれる少なくとも1つを有する請求項1に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
【請求項3】
前記処理剤の不揮発分における前記エポキシ化合物(A)の含有割合が5~90質量%である請求項1に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
【請求項4】
更に、ノニオン界面活性剤(B)を含有し、
前記処理剤の不揮発分における前記ノニオン界面活性剤(B)の含有割合が5~60質量%である請求項1に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
【請求項5】
更に、下記のエステル化合物(C)を含有し、
前記処理剤の不揮発分における前記エステル化合物(C)の含有割合が5~50質量%である請求項1に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
エステル化合物(C):1価脂肪族アルコールと1価カルボン酸とからなるエステル化合物。
【請求項6】
更に、ノニオン界面活性剤(B)、及びエステル化合物(C)を含有し、
前記エポキシ化合物(A)、前記ノニオン界面活性剤(B)、及び前記エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記エポキシ化合物(A)を5~90質量%、前記ノニオン界面活性剤(B)を5~60質量%、及び前記エステル化合物(C)を5~50質量%の割合で含有する請求項1に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の処理剤が付着していることを特徴とする炭素繊維含有不織布。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の処理剤を、炭素繊維の短繊維に付着させる工程を含むことを特徴とする炭素繊維含有不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維含有不織布製造用の処理剤、かかる処理剤が付着している炭素繊維含有不織布、及びかかる処理剤を用いた炭素繊維含有不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭素繊維は、例えばエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂と組み合わせた炭素繊維複合材料又は難燃・防炎素材として、建材、輸送機器等の各分野において広く利用されている。例えば、炭素繊維は、炭素繊維前駆体として、例えばアクリル繊維を紡糸する工程、繊維を延伸する工程、耐炎化工程、及び炭素化工程を経て製造される。
【0003】
炭素繊維は、織物の他、ローラーカード(カード機)を使用して得られる不織布等に成形して用いられることがある。不織布を製造する際、原料繊維に対してカード通過性等の各種特性を付与する観点から、繊維の表面に不織布用処理剤を付着させる処理が行われることがある。従来、特許文献1に開示される処理剤が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、処理剤が付与された炭素繊維がカード機を通過する際、炭素繊維の折れが生ずることがあった。炭素繊維含有不織布製造用の処理剤について、炭素繊維の折れの低減効果の更なる向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、エポキシ化合物(A)を配合した構成が好適であることを見出した。
上記課題を解決する各態様を記載する。
【0007】
態様1の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤は、エポキシ化合物(A)を含有することを特徴とする。
態様2は、態様1に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、前記エポキシ化合物(A)が、ビスフェノールA骨格、及びビスフェノールF骨格から選ばれる少なくとも1つを有する。
【0008】
態様3は、態様1又は2に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、前記処理剤の不揮発分における前記エポキシ化合物(A)の含有割合が5~90質量%である。
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、更に、ノニオン界面活性剤(B)を含有し、前記処理剤の不揮発分における前記ノニオン界面活性剤(B)の含有割合が5~60質量%である。
【0009】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、更に、下記のエステル化合物(C)を含有し、前記処理剤の不揮発分における前記エステル化合物(C)の含有割合が5~50質量%である。
【0010】
エステル化合物(C):1価脂肪族アルコールと1価カルボン酸とからなるエステル化合物。
態様6は、態様1~3のいずれか一態様に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、更に、ノニオン界面活性剤(B)、及びエステル化合物(C)を含有し、前記エポキシ化合物(A)、前記ノニオン界面活性剤(B)、及び前記エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記エポキシ化合物(A)を5~90質量%、前記ノニオン界面活性剤(B)を5~60質量%、及び前記エステル化合物(C)を5~50質量%の割合で含有する。
【0011】
態様7の炭素繊維含有不織布は、態様1~6のいずれか一態様に記載の処理剤が付着していることを特徴とする。
態様8の炭素繊維含有不織布の製造方法は、態様1~6のいずれか一態様に記載の処理剤を、炭素繊維の短繊維に付着させる工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炭素繊維含有不織布製造用の処理剤が付与された炭素繊維の折れを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤(以下、処理剤という)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、下記のエポキシ化合物(A)を含有し、さらにノニオン界面活性剤(B)及びエステル化合物(C)を含有してもよい。
【0014】
(エポキシ化合物(A))
エポキシ化合物(A)は、分子中にエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物(A)は、分子中にエポキシ基を1つ有するモノエポキシ化合物、又は2以上有する多官能エポキシ化合物のいずれであってもよい。
【0015】
また、主鎖としては、例えばジフェニルメタンが挙げられ、より具体的にはビスフェノールが挙げられる。ビスフェノールの具体例としては、例えばビスフェノールA,AP,AF,B,BP,C,E,F,G,M,S,P,PH,TMC,Z等が挙げられる。これら中で、炭素繊維の折れをより低減できる観点から、エポキシ化合物(A)は、ビスフェノールA骨格、及びビスフェノールF骨格を有するものが好ましい。
【0016】
エポキシ化合物(A)の具体例としては、例えばポリオキシアルキレン付加p-tert-ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレン付加アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレン付加フェニルグリシジルエーテル、トリグリシジルアミン、テトラグリシジルアミン等の重合体等のアミン型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0017】
また、エポキシ化合物(A)として、市販品を使用してもよい。市販品の具体例としては、例えばjER828(三菱ケミカル株式会社製), jER834(三菱ケミカル株式会社製), jER1001(三菱ケミカル株式会社製), jER1002(三菱ケミカル株式会社製), エポトートYD-128(日鉄ケミカル&マテリアル製), エポトートYD-011(日鉄ケミカル&マテリアル製), エポトートYD-012(日鉄ケミカル&マテリアル製), スミエポキシELM-434(住友化学株式会社製), EPICRON N-660(DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
これらのエポキシ化合物(A)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤の不揮発分中におけるエポキシ化合物(A)の含有割合は、好ましくは3~100質量%、より好ましくは5~90質量%である。かかる範囲に規定することにより本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。また、不揮発分とは、処理剤を105℃で2時間熱処理して揮発性成分を十分に除去したものをいう。以下、不揮発分の定義は、同じ条件を採用するものとする。
【0019】
(ノニオン界面活性剤(B))
処理剤は、さらにノニオン界面活性剤(B)を含有してもよい。処理剤中にノニオン界面活性剤(B)が含まれることにより、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さが向上する。
【0020】
ノニオン界面活性剤(B)としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、天然油脂にアルキレンオキサイドを付加させた化合物又はその化合物とカルボン酸類とをエステル化させた化合物、アミン化合物として例えば一級有機アミンにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、アミン化合物とカルボン酸類とを縮合されたアミド化合物、カルボン酸類と多価アルコール等との部分エステル化合物等が挙げられる。
【0021】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0022】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0023】
ノニオン界面活性剤(B)の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上150モル以下、より好ましくは1モル以上100モル以下、さらに好ましくは2モル以上50モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0024】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0025】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる脂肪族アミン又は一級有機アミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
【0026】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、脂肪酸とジエタノールアミンとのアミド、脂肪酸とエチレンアミンとのアミド等が挙げられる。
【0027】
これらのノニオン界面活性剤(B)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤の不揮発分中において、ノニオン界面活性剤(B)の含有割合は、好ましくは3~70質量%で、より好ましくは5~60質量%である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さが向上する。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0028】
(エステル化合物(C))
本実施形態の処理剤に供するエステル化合物(C)は、1価脂肪族アルコールと1価カルボン酸とからなるエステル化合物が適用される。このエステル化合物(C)を適用することにより、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さが向上する。
【0029】
エステル化合物(C)を構成する1価カルボン酸としては、飽和脂肪族カルボン酸であっても、不飽和脂肪族カルボン酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0030】
飽和脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、イソオクタデカン酸(イソステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等が挙げられる。
【0031】
不飽和脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えばクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
【0032】
1価脂肪族アルコールの具体例としては、上述したノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられるアルコール類のうち1価脂肪族アルコールの具体例が挙げられる。
これらのエステル化合物(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
処理剤の不揮発分中において、エステル化合物(C)の含有割合は、好ましくは3~60質量%、より好ましくは5~50質量%である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さが向上する。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0034】
処理剤中において、エポキシ化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及びエステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、エポキシ化合物(A)を5~90質量%、ノニオン界面活性剤(B)を5~60質量%、及びエステル化合物(C)を5~50質量%の割合で含有することが好ましい。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0035】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る炭素繊維含有不織布(以下、単に不織布という)を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の不織布は、不織布に第1実施形態の処理剤が付着している。本実施形態の不織布は、まず第1実施形態の処理剤を炭素繊維に付着させる工程が行われ、次にカーディングによるウェブ形成工程を行うことにより製造される。不織布に対する処理剤の付着量については特に制限はないが、不織布に処理剤(溶媒を含まない)が好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~2質量%となるよう付着している。
【0036】
不織布を構成する炭素繊維の種類としては、特に制限はないが、例えば、アクリル繊維を原料として得られたPAN系繊維、ピッチを原料として得られたピッチ系繊維の他、化学分解・熱分解法等によって、炭素繊維複合材料から取り出されたリサイクル炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、リグニン樹脂等を原料として得られる炭素繊維等が挙げられる。例えばアクリル繊維が用いられる場合、アクリル繊維としては、少なくとも90モル%以上のアクリロニトリルと、10モル%以下の耐炎化促進成分とを共重合させて得られるポリアクリロニトリルを主成分とする繊維から構成されることが好ましい。耐炎化促進成分としては、例えばアクリロニトリルに対して共重合性を有するビニル基含有化合物が好適に使用できる。原料繊維の単繊維繊度については、特に限定はないが、性能及び製造コストのバランスの観点から、好ましくは0.1~2.0dTexである。また、原料繊維の繊維束を構成する単繊維の本数についても特に限定はないが、性能及び製造コストのバランスの観点から、好ましくは1,000~96,000本である。
【0037】
本実施形態の炭素繊維の製造方法は、まず上述した原料繊維を得た後、製糸する製糸工程が行われる。次に、その製糸工程で製造された繊維束を200~300℃、好ましくは230~270℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程が行われる。さらに炭素繊維を得る場合、前記耐炎化繊維をさらに300~2000℃、好ましくは300~1300℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程が行われる。炭素化処理工程は、耐炎化処理工程に続けて行ってもよい。
【0038】
本実施形態の不織布の製造方法は、上述したようにまず第1実施形態の処理剤を炭素繊維に付着させる工程が行われる。炭素繊維に処理剤を付着させる方法は、公知の方法を適宜採用できる。例えば、浸漬給油法、ローラー浸漬法、ローラー接触法、スプレー法、抄紙法、計量ポンプを用いたガイド給油法等、一般に工業的に用いられている方法を適用できる。
【0039】
第1実施形態の処理剤を繊維に付着させる際の形態としては、例えば有機溶媒溶液、水性液等が挙げられる。処理剤は、好ましくは水性のエマルション液の状態で炭素繊維に付着される。処理剤が適用される繊維の長さは、特に限定されず、一般にステープルと呼ばれる短繊維、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維のものが挙げられる。また、2種類以上の異なったステープルを混ぜ合わせて混紡した炭素繊維を使用してもよい。混紡する合成繊維としては、例えば6ナイロン、66ナイロン、ポリアミド9T、ポリアミド10等のポリアミド繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。混紡する際の合成繊維と炭素繊維の比率としては、特に限定されないが、好ましくは10:90~90:10、より好ましくは20:80~80:20である。混紡する場合において、処理剤は、炭素繊維と合成繊維を混紡させる前後どちらで付着させてもよい。
【0040】
続いて、乾燥処理し、処理剤の溶液に含まれている水等の溶媒の除去を行うことにより、処理剤が付着した炭素繊維を得ることができる。ここでの乾燥処理は、例えば、熱風、熱板、ローラー、各種赤外線ヒーター等を熱媒として利用した方法を採用できる。
【0041】
次に、ウェブ形成工程が行われる。ウェブ形成工程は、上記処理剤が付着した炭素繊維にカーディングを行い、不織布からなるウェブを製造する工程である。カーディングは、公知のカード機を用いて行うことができる。例えばフラットカード、コンビネーションカード、ローラーカード等が挙げられる。
【0042】
本実施形態の処理剤及び不織布の効果について説明する。
(1)本実施形態の処理剤では、エポキシ化合物(A)を配合して構成した。したがって、カード機を通過する際、処理剤が付与された炭素繊維の折れを低減することができる。また、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さを向上できる。
【0043】
(2)処理剤が、所定量のノニオン界面活性剤(B)又はエステル化合物(C)を含有する場合、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さをより向上できる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0044】
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例0045】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0046】
試験区分1(処理剤の調製)
表1に示すように、エポキシ化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、エステル化合物(C)、その他成分(D)を、固形分濃度が30%となるように撹拌しながら水又は有機溶媒を徐々に加えることにより各例の処理剤を調製した。
【0047】
【0048】
【0049】
【表3】
試験区分2(炭素繊維不織布の製造)
試験区分1で調製した処理剤を用いて、炭素繊維不織布を製造した。
【0050】
調製した各処理剤の水性液又は有機溶媒溶液を更に水希釈し、各処理剤の1~4%水性液とした。この水性液を繊維長45mmの炭素短繊維にスプレー給油法で付着させた。その後、105℃の熱風乾燥機に60分間入れて乾燥し、処理剤を付着させた処理済み炭素短繊維を得た。得られた処理済み炭素短繊維を25℃で65%RHの雰囲気に一夜調湿して評価に供した。なお、実施例47等は、表に記載の合成繊維を所定の割合で混紡した。
【0051】
上記で得られた処理済み炭素短繊維10kgを、2山コンデンサー付きカードに供した。カード工程は、25℃×65%RHの雰囲気下、紡出スピード=18.0m/分、紡出ゲレン=1g/m、揉み回数=30回/インチの条件で運転した。それによりウェブとして炭素繊維不織布を得た。
【0052】
試験区分3(炭素繊維の折れ抑制)
カード前後で炭素繊維の長さが何%になったかを測定することにより炭素繊維の折れ具合を評価した。50mmに揃えた短繊維を、カードを通した後に、短繊維の長さをn=50で測定し、平均値を求めた。(カード後の長さ平均/カード前の長さ平均)×100を値とし、下記の基準で評価した。
【0053】
・炭素繊維の折れ抑制の評価基準
◎(良好):90%以上
○(可):70%以上、90%未満
×(不可):70%未満
試験区分4(製造したウェブの強さ)
得られたウェブを把持して引っ張り、切れた時の倍率を測定することにより、製造したウェブの強さを評価した。作製したウェブを用い、引っ張り強伸度試験機を用いて把持長10cm、引張速度10cm/minで1分間延伸し、その間にウェブの切断が発生するか否かを確認した。下記の基準で評価した。
【0054】
・製造したウェブの強さの評価基準
◎◎(優れる):延伸中にウェブが切断しない場合
◎(良好):延伸中、50秒以上60秒未満の間に、ウェブが切断する場合
○(可):延伸中、40秒以上50秒未満の間に、ウェブが切断する場合
×(不可):延伸中、40秒未満でウェブが切断する場合
上記表の各比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤によると、処理剤が付与された炭素繊維がカード通過する際の折れを低減できる。また、処理剤が付与された炭素繊維から得られたウェブの強さを向上できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)及びノニオン界面活性剤(B)を含有する炭素繊維含有不織布製造用の処理剤であって、前記処理剤の不揮発分における前記エポキシ化合物(A)の含有割合が60質量%以下であり、前記エポキシ化合物(A)は、主骨格としてジフェニルメタン骨格を含む化合物であることを特徴とする炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
【請求項2】
エポキシ化合物(A)及びノニオン界面活性剤(B)を含有する炭素繊維含有不織布製造用の処理剤であって、前記処理剤の不揮発分における前記ノニオン界面活性剤(B)の含有割合が30質量%以上であり、前記エポキシ化合物(A)は、主骨格としてジフェニルメタン骨格を含む化合物であることを特徴とする炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
【請求項3】
前記エポキシ化合物(A)が、ビスフェノールA骨格、及びビスフェノールF骨格から選ばれる少なくとも1つを有する請求項1に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
【請求項4】
前記エポキシ化合物(A)が、ビスフェノールA骨格、及びビスフェノールF骨格から選ばれる少なくとも1つを有する請求項2に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
【請求項5】
前記処理剤の不揮発分における前記エポキシ化合物(A)の含有割合が5~60質量%である請求項2に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
【請求項6】
前記処理剤の不揮発分における前記ノニオン界面活性剤(B)の含有割合が5~60質量%である請求項1に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
【請求項7】
更に、下記のエステル化合物(C)を含有し、
前記処理剤の不揮発分における前記エステル化合物(C)の含有割合が5~50質量%である請求項1に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
エステル化合物(C):1価脂肪族アルコールと1価カルボン酸とからなるエステル化合物。
【請求項8】
更に、下記のエステル化合物(C)を含有し、
前記エポキシ化合物(A)、前記ノニオン界面活性剤(B)、及び前記エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記エポキシ化合物(A)を5~90質量%、前記ノニオン界面活性剤(B)を5~60質量%、及び前記エステル化合物(C)を5~50質量%の割合で含有する請求項1に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
エステル化合物(C):1価脂肪族アルコールと1価カルボン酸とからなるエステル化合物。
【請求項9】
更に、下記のエステル化合物(C)を含有し、
前記処理剤の不揮発分における前記エステル化合物(C)の含有割合が5~50質量%である請求項2に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
エステル化合物(C):1価脂肪族アルコールと1価カルボン酸とからなるエステル化合物。
【請求項10】
更に、下記のエステル化合物(C)を含有し、
前記エポキシ化合物(A)、前記ノニオン界面活性剤(B)、及び前記エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記エポキシ化合物(A)を5~60質量%、前記ノニオン界面活性剤(B)を30~60質量%、及び前記エステル化合物(C)を5~50質量%の割合で含有する請求項2に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
エステル化合物(C):1価脂肪族アルコールと1価カルボン酸とからなるエステル化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の処理剤が付着していることを特徴とする炭素繊維含有不織布。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の処理剤を、炭素繊維の短繊維に付着させる工程を含むことを特徴とする炭素繊維含有不織布の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維含有不織布製造用の処理剤、かかる処理剤が付着している炭素繊維含有不織布、及びかかる処理剤を用いた炭素繊維含有不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、炭素繊維は、例えばエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂と組み合わせた炭素繊維複合材料又は難燃・防炎素材として、建材、輸送機器等の各分野において広く利用されている。例えば、炭素繊維は、炭素繊維前駆体として、例えばアクリル繊維を紡糸する工程、繊維を延伸する工程、耐炎化工程、及び炭素化工程を経て製造される。
【0003】
炭素繊維は、織物の他、ローラーカード(カード機)を使用して得られる不織布等に成形して用いられることがある。不織布を製造する際、原料繊維に対してカード通過性等の各種特性を付与する観点から、繊維の表面に不織布用処理剤を付着させる処理が行われることがある。従来、特許文献1に開示される処理剤が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、処理剤が付与された炭素繊維がカード機を通過する際、炭素繊維の折れが生ずることがあった。炭素繊維含有不織布製造用の処理剤について、炭素繊維の折れの低減効果の更なる向上が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、エポキシ化合物(A)を配合した構成が好適であることを見出した。
上記課題を解決する各態様を記載する。
【0007】
態様1の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤は、エポキシ化合物(A)及びノニオン界面活性剤(B)を含有する炭素繊維含有不織布製造用の処理剤であって、前記処理剤の不揮発分におけるエポキシ化合物(A)の含有割合が60質量%以下であり、前記エポキシ化合物(A)は、主骨格としてジフェニルメタン骨格を含む化合物であることを特徴とする。
態様2の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤は、エポキシ化合物(A)及びノニオン界面活性剤(B)を含有する炭素繊維含有不織布製造用の処理剤であって、前記処理剤の不揮発分におけるノニオン界面活性剤(B)の含有割合が30質量%以上であり、前記エポキシ化合物(A)は、主骨格としてジフェニルメタン骨格を含む化合物であることを特徴とする。
態様3は、態様1に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、前記エポキシ化合物(A)が、ビスフェノールA骨格、及びビスフェノールF骨格から選ばれる少なくとも1つを有する。
態様4は、態様2に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、前記エポキシ化合物(A)が、ビスフェノールA骨格、及びビスフェノールF骨格から選ばれる少なくとも1つを有する。
【0008】
態様5は、態様2又は4に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、前記処理剤の不揮発分における前記エポキシ化合物(A)の含有割合が5~60質量%である。
態様6は、態様1又は3に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、前記処理剤の不揮発分における前記ノニオン界面活性剤(B)の含有割合が5~60質量%である。
【0009】
態様7は、態様1,3,及び6のいずれか一態様に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、更に、下記のエステル化合物(C)を含有し、前記処理剤の不揮発分における前記エステル化合物(C)の含有割合が5~50質量%である。
【0010】
エステル化合物(C):1価脂肪族アルコールと1価カルボン酸とからなるエステル化合物。
態様8は、態様1,3,及び6のいずれか一態様に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、更に、下記のエステル化合物(C)を含有し、前記エポキシ化合物(A)、前記ノニオン界面活性剤(B)、及び前記エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記エポキシ化合物(A)を5~90質量%、前記ノニオン界面活性剤(B)を5~60質量%、及び前記エステル化合物(C)を5~50質量%の割合で含有する。
エステル化合物(C):1価脂肪族アルコールと1価カルボン酸とからなるエステル化合物。
態様9は、態様2,4,及び5のいずれか一態様に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、更に、下記のエステル化合物(C)を含有し、前記処理剤の不揮発分における前記エステル化合物(C)の含有割合が5~50質量%である。
エステル化合物(C):1価脂肪族アルコールと1価カルボン酸とからなるエステル化合物。
態様10は、態様2,4,及び5のいずれか一態様に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、更に、下記のエステル化合物(C)を含有し、前記エポキシ化合物(A)、前記ノニオン界面活性剤(B)、及び前記エステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、前記エポキシ化合物(A)を5~60質量%、前記ノニオン界面活性剤(B)を30~60質量%、及び前記エステル化合物(C)を5~50質量%の割合で含有する。
エステル化合物(C):1価脂肪族アルコールと1価カルボン酸とからなるエステル化合物。
【0011】
態様11の炭素繊維含有不織布は、態様1~10のいずれか一態様に記載の処理剤が付着していることを特徴とする。
態様12の炭素繊維含有不織布の製造方法は、態様1~10のいずれか一態様に記載の処理剤を、炭素繊維の短繊維に付着させる工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炭素繊維含有不織布製造用の処理剤が付与された炭素繊維の折れを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤(以下、処理剤という)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、下記のエポキシ化合物(A)及びノニオン界面活性剤(B)を含有し、さらにエステル化合物(C)を含有してもよい。
【0014】
(エポキシ化合物(A))
エポキシ化合物(A)は、分子中にエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物(A)は、分子中にエポキシ基を1つ有するモノエポキシ化合物、又は2以上有する多官能エポキシ化合物のいずれであってもよい。
【0015】
また、主鎖としては、例えばジフェニルメタンが挙げられ、より具体的にはビスフェノールが挙げられる。ビスフェノールの具体例としては、例えばビスフェノールA,AP,AF,B,BP,C,E,F,G,M,S,P,PH,TMC,Z等が挙げられる。これら中で、炭素繊維の折れをより低減できる観点から、エポキシ化合物(A)は、ビスフェノールA骨格、及びビスフェノールF骨格を有するものが好ましい。
本発明においては、エポキシ化合物(A)は、主骨格としてジフェニルメタン骨格を含む化合物が用いられる。主骨格としてジフェニルメタン骨格を含む化合物としては、例えばビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ジアミノジフェニルメタン骨格、及クレゾールノボラック骨格から選ばれる少なくとも1つを含む化合物等が挙げられる。以下、本発明のエポキシ化合物(A)以外の化合物は、参考例とする。
【0016】
エポキシ化合物(A)の具体例としては、例えばポリオキシアルキレン付加p-tert-ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレン付加アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレン付加フェニルグリシジルエーテル、トリグリシジルアミン、テトラグリシジルアミン等の重合体等のアミン型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0017】
また、エポキシ化合物(A)として、市販品を使用してもよい。市販品の具体例としては、例えばjER828(三菱ケミカル株式会社製), jER834(三菱ケミカル株式会社製), jER1001(三菱ケミカル株式会社製), jER1002(三菱ケミカル株式会社製), エポトートYD-128(日鉄ケミカル&マテリアル製), エポトートYD-011(日鉄ケミカル&マテリアル製), エポトートYD-012(日鉄ケミカル&マテリアル製), スミエポキシELM-434(住友化学株式会社製), EPICRON N-660(DIC株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
これらのエポキシ化合物(A)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤の不揮発分中におけるエポキシ化合物(A)の含有割合は、例えば3~100質量%、好ましくは5~90質量%である。かかる範囲に規定することにより本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。また、不揮発分とは、処理剤を105℃で2時間熱処理して揮発性成分を十分に除去したものをいう。以下、不揮発分の定義は、同じ条件を採用するものとする。
【0019】
(ノニオン界面活性剤(B))
処理剤は、さらにノニオン界面活性剤(B)を含有してもよい。処理剤中にノニオン界面活性剤(B)が含まれることにより、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さが向上する。
【0020】
ノニオン界面活性剤(B)としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、天然油脂にアルキレンオキサイドを付加させた化合物又はその化合物とカルボン酸類とをエステル化させた化合物、アミン化合物として例えば一級有機アミンにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、アミン化合物とカルボン酸類とを縮合されたアミド化合物、カルボン酸類と多価アルコール等との部分エステル化合物等が挙げられる。
【0021】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0022】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0023】
ノニオン界面活性剤(B)の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上150モル以下、より好ましくは1モル以上100モル以下、さらに好ましくは2モル以上50モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0024】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0025】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる脂肪族アミン又は一級有機アミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
【0026】
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、脂肪酸とジエタノールアミンとのアミド、脂肪酸とエチレンアミンとのアミド等が挙げられる。
【0027】
これらのノニオン界面活性剤(B)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤の不揮発分中において、ノニオン界面活性剤(B)の含有割合は、好ましくは3~70質量%で、より好ましくは5~60質量%である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さが向上する。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0028】
(エステル化合物(C))
本実施形態の処理剤に供するエステル化合物(C)は、1価脂肪族アルコールと1価カルボン酸とからなるエステル化合物が適用される。このエステル化合物(C)を適用することにより、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さが向上する。
【0029】
エステル化合物(C)を構成する1価カルボン酸としては、飽和脂肪族カルボン酸であっても、不飽和脂肪族カルボン酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0030】
飽和脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、イソオクタデカン酸(イソステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等が挙げられる。
【0031】
不飽和脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えばクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
【0032】
1価脂肪族アルコールの具体例としては、上述したノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられるアルコール類のうち1価脂肪族アルコールの具体例が挙げられる。
これらのエステル化合物(C)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
処理剤の不揮発分中において、エステル化合物(C)の含有割合は、好ましくは3~60質量%、より好ましくは5~50質量%である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さが向上する。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0034】
処理剤中において、エポキシ化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及びエステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、エポキシ化合物(A)を5~90質量%、ノニオン界面活性剤(B)を5~60質量%、及びエステル化合物(C)を5~50質量%の割合で含有することが好ましい。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0035】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る炭素繊維含有不織布(以下、単に不織布という)を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の不織布は、不織布に第1実施形態の処理剤が付着している。本実施形態の不織布は、まず第1実施形態の処理剤を炭素繊維に付着させる工程が行われ、次にカーディングによるウェブ形成工程を行うことにより製造される。不織布に対する処理剤の付着量については特に制限はないが、不織布に処理剤(溶媒を含まない)が好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~2質量%となるよう付着している。
【0036】
不織布を構成する炭素繊維の種類としては、特に制限はないが、例えば、アクリル繊維を原料として得られたPAN系繊維、ピッチを原料として得られたピッチ系繊維の他、化学分解・熱分解法等によって、炭素繊維複合材料から取り出されたリサイクル炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、リグニン樹脂等を原料として得られる炭素繊維等が挙げられる。例えばアクリル繊維が用いられる場合、アクリル繊維としては、少なくとも90モル%以上のアクリロニトリルと、10モル%以下の耐炎化促進成分とを共重合させて得られるポリアクリロニトリルを主成分とする繊維から構成されることが好ましい。耐炎化促進成分としては、例えばアクリロニトリルに対して共重合性を有するビニル基含有化合物が好適に使用できる。原料繊維の単繊維繊度については、特に限定はないが、性能及び製造コストのバランスの観点から、好ましくは0.1~2.0dTexである。また、原料繊維の繊維束を構成する単繊維の本数についても特に限定はないが、性能及び製造コストのバランスの観点から、好ましくは1,000~96,000本である。
【0037】
本実施形態の炭素繊維の製造方法は、まず上述した原料繊維を得た後、製糸する製糸工程が行われる。次に、その製糸工程で製造された繊維束を200~300℃、好ましくは230~270℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程が行われる。さらに炭素繊維を得る場合、前記耐炎化繊維をさらに300~2000℃、好ましくは300~1300℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程が行われる。炭素化処理工程は、耐炎化処理工程に続けて行ってもよい。
【0038】
本実施形態の不織布の製造方法は、上述したようにまず第1実施形態の処理剤を炭素繊維に付着させる工程が行われる。炭素繊維に処理剤を付着させる方法は、公知の方法を適宜採用できる。例えば、浸漬給油法、ローラー浸漬法、ローラー接触法、スプレー法、抄紙法、計量ポンプを用いたガイド給油法等、一般に工業的に用いられている方法を適用できる。
【0039】
第1実施形態の処理剤を繊維に付着させる際の形態としては、例えば有機溶媒溶液、水性液等が挙げられる。処理剤は、好ましくは水性のエマルション液の状態で炭素繊維に付着される。処理剤が適用される繊維の長さは、特に限定されず、一般にステープルと呼ばれる短繊維、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維のものが挙げられる。また、2種類以上の異なったステープルを混ぜ合わせて混紡した炭素繊維を使用してもよい。混紡する合成繊維としては、例えば6ナイロン、66ナイロン、ポリアミド9T、ポリアミド10等のポリアミド繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。混紡する際の合成繊維と炭素繊維の比率としては、特に限定されないが、好ましくは10:90~90:10、より好ましくは20:80~80:20である。混紡する場合において、処理剤は、炭素繊維と合成繊維を混紡させる前後どちらで付着させてもよい。
【0040】
続いて、乾燥処理し、処理剤の溶液に含まれている水等の溶媒の除去を行うことにより、処理剤が付着した炭素繊維を得ることができる。ここでの乾燥処理は、例えば、熱風、熱板、ローラー、各種赤外線ヒーター等を熱媒として利用した方法を採用できる。
【0041】
次に、ウェブ形成工程が行われる。ウェブ形成工程は、上記処理剤が付着した炭素繊維にカーディングを行い、不織布からなるウェブを製造する工程である。カーディングは、公知のカード機を用いて行うことができる。例えばフラットカード、コンビネーションカード、ローラーカード等が挙げられる。
【0042】
本実施形態の処理剤及び不織布の効果について説明する。
(1)本実施形態の処理剤では、エポキシ化合物(A)を配合して構成した。したがって、カード機を通過する際、処理剤が付与された炭素繊維の折れを低減することができる。また、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さを向上できる。
【0043】
(2)処理剤が、所定量のノニオン界面活性剤(B)又はエステル化合物(C)を含有する場合、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さをより向上できる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0044】
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例0045】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0046】
試験区分1(処理剤の調製)
表1に示すように、エポキシ化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、エステル化合物(C)、その他成分(D)を、固形分濃度が30%となるように撹拌しながら水又は有機溶媒を徐々に加えることにより各例の処理剤を調製した。
【0047】
【0048】
【0049】
【表3】
試験区分2(炭素繊維不織布の製造)
試験区分1で調製した処理剤を用いて、炭素繊維不織布を製造した。
【0050】
調製した各処理剤の水性液又は有機溶媒溶液を更に水希釈し、各処理剤の1~4%水性液とした。この水性液を繊維長45mmの炭素短繊維にスプレー給油法で付着させた。その後、105℃の熱風乾燥機に60分間入れて乾燥し、処理剤を付着させた処理済み炭素短繊維を得た。得られた処理済み炭素短繊維を25℃で65%RHの雰囲気に一夜調湿して評価に供した。なお、実施例47等は、表に記載の合成繊維を所定の割合で混紡した。
【0051】
上記で得られた処理済み炭素短繊維10kgを、2山コンデンサー付きカードに供した。カード工程は、25℃×65%RHの雰囲気下、紡出スピード=18.0m/分、紡出ゲレン=1g/m、揉み回数=30回/インチの条件で運転した。それによりウェブとして炭素繊維不織布を得た。
【0052】
試験区分3(炭素繊維の折れ抑制)
カード前後で炭素繊維の長さが何%になったかを測定することにより炭素繊維の折れ具合を評価した。50mmに揃えた短繊維を、カードを通した後に、短繊維の長さをn=50で測定し、平均値を求めた。(カード後の長さ平均/カード前の長さ平均)×100を値とし、下記の基準で評価した。
【0053】
・炭素繊維の折れ抑制の評価基準
◎(良好):90%以上
○(可):70%以上、90%未満
×(不可):70%未満
試験区分4(製造したウェブの強さ)
得られたウェブを把持して引っ張り、切れた時の倍率を測定することにより、製造したウェブの強さを評価した。作製したウェブを用い、引っ張り強伸度試験機を用いて把持長10cm、引張速度10cm/minで1分間延伸し、その間にウェブの切断が発生するか否かを確認した。下記の基準で評価した。
【0054】
・製造したウェブの強さの評価基準
◎◎(優れる):延伸中にウェブが切断しない場合
◎(良好):延伸中、50秒以上60秒未満の間に、ウェブが切断する場合
○(可):延伸中、40秒以上50秒未満の間に、ウェブが切断する場合
×(不可):延伸中、40秒未満でウェブが切断する場合
上記表の各比較例に対する各実施例の評価結果からも明らかなように、本発明の処理剤によると、処理剤が付与された炭素繊維がカード通過する際の折れを低減できる。また、処理剤が付与された炭素繊維から得られたウェブの強さを向上できる。
前記エポキシ化合物(A)が、ビスフェノールA骨格、及びビスフェノールF骨格から選ばれる少なくとも1つを有する請求項1に記載の炭素繊維含有不織布製造用の処理剤。
一般に、炭素繊維は、例えばエポキシ樹脂等のマトリクス樹脂と組み合わせた炭素繊維複合材料又は難燃・防炎素材として、建材、輸送機器等の各分野において広く利用されている。例えば、炭素繊維は、炭素繊維前駆体として、例えばアクリル繊維を紡糸する工程、繊維を延伸する工程、耐炎化工程、及び炭素化工程を経て製造される。
炭素繊維は、織物の他、ローラーカード(カード機)を使用して得られる不織布等に成形して用いられることがある。不織布を製造する際、原料繊維に対してカード通過性等の各種特性を付与する観点から、繊維の表面に不織布用処理剤を付着させる処理が行われることがある。従来、特許文献1に開示される処理剤が知られている。
しかし、処理剤が付与された炭素繊維がカード機を通過する際、炭素繊維の折れが生ずることがあった。炭素繊維含有不織布製造用の処理剤について、炭素繊維の折れの低減効果の更なる向上が求められていた。
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、炭素繊維含有不織布製造用の処理剤において、エポキシ化合物(A)を配合した構成が好適であることを見出した。
上記課題を解決する各態様を記載する。
また、主鎖としては、例えばジフェニルメタンが挙げられ、より具体的にはビスフェノールが挙げられる。ビスフェノールの具体例としては、例えばビスフェノールA,AP,AF,B,BP,C,E,F,G,M,S,P,PH,TMC,Z等が挙げられる。これら中で、炭素繊維の折れをより低減できる観点から、エポキシ化合物(A)は、ビスフェノールA骨格、及びビスフェノールF骨格を有するものが好ましい。
本発明においては、エポキシ化合物(A)は、主骨格としてジフェニルメタン骨格を含む化合物が用いられる。主骨格としてジフェニルメタン骨格を含む化合物としては、例えばビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ジアミノジフェニルメタン骨格、及クレゾールノボラック骨格から選ばれる少なくとも1つを含む化合物等が挙げられる。以下、本発明のエポキシ化合物(A)以外の化合物は、参考例とする。
エポキシ化合物(A)の具体例としては、例えばポリオキシアルキレン付加p-tert-ブチルフェノールモノグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレン付加アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリオキシアルキレン付加フェニルグリシジルエーテル、トリグリシジルアミン、テトラグリシジルアミン等の重合体等のアミン型エポキシ化合物等が挙げられる。
また、エポキシ化合物(A)として、市販品を使用してもよい。市販品の具体例としては、例えばjER828(三菱ケミカル株式会社製), jER834(三菱ケミカル株式会社製), jER1001(三菱ケミカル株式会社製), jER1002(三菱ケミカル株式会社製), エポトートYD-128(日鉄ケミカル&マテリアル製), エポトートYD-011(日鉄ケミカル&マテリアル製), エポトートYD-012(日鉄ケミカル&マテリアル製), スミエポキシELM-434(住友化学株式会社製), EPICRON N-660(DIC株式会社製)等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤(B)としては、例えばアルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、天然油脂にアルキレンオキサイドを付加させた化合物又はその化合物とカルボン酸類とをエステル化させた化合物、アミン化合物として例えば一級有機アミンにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、アミン化合物とカルボン酸類とを縮合されたアミド化合物、カルボン酸類と多価アルコール等との部分エステル化合物等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤(B)の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上150モル以下、より好ましくは1モル以上100モル以下、さらに好ましくは2モル以上50モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる脂肪族アミン又は一級有機アミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
ノニオン界面活性剤(B)の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、脂肪酸とジエタノールアミンとのアミド、脂肪酸とエチレンアミンとのアミド等が挙げられる。
エステル化合物(C)を構成する1価カルボン酸としては、飽和脂肪族カルボン酸であっても、不飽和脂肪族カルボン酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
飽和脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、イソオクタデカン酸(イソステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等が挙げられる。
不飽和脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えばクロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
処理剤中において、エポキシ化合物(A)、ノニオン界面活性剤(B)、及びエステル化合物(C)の含有割合の合計を100質量%とすると、エポキシ化合物(A)を5~90質量%、ノニオン界面活性剤(B)を5~60質量%、及びエステル化合物(C)を5~50質量%の割合で含有することが好ましい。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
不織布を構成する炭素繊維の種類としては、特に制限はないが、例えば、アクリル繊維を原料として得られたPAN系繊維、ピッチを原料として得られたピッチ系繊維の他、化学分解・熱分解法等によって、炭素繊維複合材料から取り出されたリサイクル炭素繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、リグニン樹脂等を原料として得られる炭素繊維等が挙げられる。例えばアクリル繊維が用いられる場合、アクリル繊維としては、少なくとも90モル%以上のアクリロニトリルと、10モル%以下の耐炎化促進成分とを共重合させて得られるポリアクリロニトリルを主成分とする繊維から構成されることが好ましい。耐炎化促進成分としては、例えばアクリロニトリルに対して共重合性を有するビニル基含有化合物が好適に使用できる。原料繊維の単繊維繊度については、特に限定はないが、性能及び製造コストのバランスの観点から、好ましくは0.1~2.0dTexである。また、原料繊維の繊維束を構成する単繊維の本数についても特に限定はないが、性能及び製造コストのバランスの観点から、好ましくは1,000~96,000本である。
本実施形態の炭素繊維の製造方法は、まず上述した原料繊維を得た後、製糸する製糸工程が行われる。次に、その製糸工程で製造された繊維束を200~300℃、好ましくは230~270℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程が行われる。さらに炭素繊維を得る場合、前記耐炎化繊維をさらに300~2000℃、好ましくは300~1300℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程が行われる。炭素化処理工程は、耐炎化処理工程に続けて行ってもよい。
本実施形態の不織布の製造方法は、上述したようにまず第1実施形態の処理剤を炭素繊維に付着させる工程が行われる。炭素繊維に処理剤を付着させる方法は、公知の方法を適宜採用できる。例えば、浸漬給油法、ローラー浸漬法、ローラー接触法、スプレー法、抄紙法、計量ポンプを用いたガイド給油法等、一般に工業的に用いられている方法を適用できる。
第1実施形態の処理剤を繊維に付着させる際の形態としては、例えば有機溶媒溶液、水性液等が挙げられる。処理剤は、好ましくは水性のエマルション液の状態で炭素繊維に付着される。処理剤が適用される繊維の長さは、特に限定されず、一般にステープルと呼ばれる短繊維、一般にフィラメントと呼ばれる長繊維のものが挙げられる。また、2種類以上の異なったステープルを混ぜ合わせて混紡した炭素繊維を使用してもよい。混紡する合成繊維としては、例えば6ナイロン、66ナイロン、ポリアミド9T、ポリアミド10等のポリアミド繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。混紡する際の合成繊維と炭素繊維の比率としては、特に限定されないが、好ましくは10:90~90:10、より好ましくは20:80~80:20である。混紡する場合において、処理剤は、炭素繊維と合成繊維を混紡させる前後どちらで付着させてもよい。
続いて、乾燥処理し、処理剤の溶液に含まれている水等の溶媒の除去を行うことにより、処理剤が付着した炭素繊維を得ることができる。ここでの乾燥処理は、例えば、熱風、熱板、ローラー、各種赤外線ヒーター等を熱媒として利用した方法を採用できる。
次に、ウェブ形成工程が行われる。ウェブ形成工程は、上記処理剤が付着した炭素繊維にカーディングを行い、不織布からなるウェブを製造する工程である。カーディングは、公知のカード機を用いて行うことができる。例えばフラットカード、コンビネーションカード、ローラーカード等が挙げられる。
(2)処理剤が、所定量のノニオン界面活性剤(B)又はエステル化合物(C)を含有する場合、処理剤が付与された炭素繊維から得られた不織布の強さをより向上できる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
上記で得られた処理済み炭素短繊維10kgを、2山コンデンサー付きカードに供した。カード工程は、25℃×65%RHの雰囲気下、紡出スピード=18.0m/分、紡出ゲレン=1g/m、揉み回数=30回/インチの条件で運転した。それによりウェブとして炭素繊維不織布を得た。