(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155075
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20241024BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H05B6/12 304
A47J27/00 103A
H05B6/12 308
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069481
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】三崎 純
【テーマコード(参考)】
3K151
4B055
【Fターム(参考)】
3K151BA14
3K151BA44
4B055AA09
4B055BA28
4B055CC01
4B055DB14
4B055GD01
(57)【要約】
【課題】調理器の加熱回路の構成を簡素化しつつ局所加熱のパターンを多様化する。
【解決手段】加熱回路10が、単一のIGBT16で構成されたインバータ回路15と、ダイオードブリッジ11とインバータ回路15とに並列接続された通電線32A,32B,32Cと、通電線32A,32B,32Cに介設された電源側コイル26A,26B,26C及びインバータ側コイル27A,27B,27Cと、電源側コイル26A,26B,26Cとインバータ側コイル27A,27B,27Cとの間の節点34A,34B,34C同士を接続する接続線35と、節点34A,34B,34Cと電源側コイル26A,26B,26Cとの間に配置される電源側開閉器41A,41B,41Cと、節点34A,34B,34Cとインバータ側コイル27A,27B,27Cとの間に配置されるインバータ側開閉器42A,42B,42Cとを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋を収容する収容部と、
前記収容部の外面側に互いに間隔をあけて配置された複数のコイルを有し、前記鍋に誘導加熱を生じさせるべく前記複数のコイルに通電する加熱回路と、
を備え、前記加熱回路が、
単一のスイッチング素子で構成され、前記複数のコイルに通電される電流を制御するインバータ回路と、
電源と前記インバータ回路とに並列接続される複数の通電線と、
前記複数の通電線同士を接続する接続線と、
前記通電線の各々に介設され、前記接続線との節点よりも前記電源側に位置する電源側コイルと、
前記通電線の各々に介設され、前記接続線との節点よりも前記インバータ回路側に位置するインバータ側コイルと、
前記通電線の各々に介設され、前記節点よりも前記電源側に位置する電源側開閉器と、
前記通電線の各々に介設され、前記節点よりも前記インバータ回路側に位置するインバータ側開閉器と、を更に有する、
調理器。
【請求項2】
前記複数のコイルが、前記鍋の軸線側に配置された複数の内側コイルと、前記軸線に対して前記内側コイルよりも離れて配置された複数の外側コイルとを含み、
前記電源側コイルが、前記内側コイル及び前記外側コイルの一方で揃えられ、前記インバータ側コイルが、前記内側コイル及び前記外側コイルの他方で揃えられる、
請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記複数の通電線が、第1通電線、第2通電線、及び第3通電線の3本の通電線であり、
前記複数のコイルが、前記第1通電線上の第1電源側コイル及び第1インバータ側コイル、前記第2通電線上の第2電源側コイル及び第2インバータ側コイル、並びに前記第3通電線上の第3電源側コイル及び第3インバータ側コイルの6個のコイルである、
請求項2に記載の調理器。
【請求項4】
前記加熱回路が、前記インバータ回路に接続される枝線を更に有し、前記複数の通電線のうち2つの通電線が、前記枝線を介して前記インバータ回路に接続され、
前記加熱回路が、
前記2つの通電線のうちの一方に設定され、前記インバータ側コイルよりも前記枝線側に設定されるバイパス節点と、
前記電源を前記バイパス節点に接続するバイパス線と、
前記バイパス線に介設されるバイパス開閉器と、
前記バイパス節点が設定された通電線に介設され、前記バイパス節点よりも前記枝線側に位置する下流開閉器と、
前記枝線に介設される枝線開閉器と、
を更に有する、
請求項3に記載の調理器。
【請求項5】
前記インバータ側コイルが、前記内側コイルで揃えられ、前記電源側コイルが、前記外側コイルで揃えられる、
請求項4に記載の調理器。
【請求項6】
前記電源側開閉器及び前記インバータ側開閉器が、2個のMOSFETを有する交流スイッチである、
請求項1から5のいずれか1項に記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鍋を収容する収容部の外面側に配置された6個のコイルを備える調理器を開示している。調理器には、これらコイルに通電し、鍋を電磁誘導により加熱する加熱回路が設けられている。
【0003】
加熱回路は、3個のIGBT(Insulated-Gate Bipolar Transistor)及び3個の共振コンデンサを備える。第1~第3コイルが電源に接続され、第4~第6コイルが3個のIGBTそれぞれに接続される。第4~第6コイルの各々は、第1~第3コイルのうちの2個と接続される。第1~第3コイルの群と第4~第6コイルの群との間の6本の接続線の各々に、開閉器が1個ずつ介設されている。
【0004】
6個の開閉器のうちいずれか1つが閉じると、第1~第3コイルのいずれか1つが通電され、且つ第4~第6コイルのいずれか1つが通電される。6個のコイルのうち2個が通電され、鍋が局所的に加熱される。閉じる開閉器を順次切り換えていくことにより、局所加熱される部位が順次変更されていく。6個のコイルから選択される2個のコイルの組合せの数、すなわち局所加熱のパターンの数は、開閉器の個数と同じ6である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の加熱回路の場合、回路を構成する素子が多く、配線が複雑である。また、実践可能な局所加熱のパターン数が、理論値の6C2よりも少ない。回路構成の簡潔性、及び局所加熱のパターンの多様性に、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、調理器の加熱回路の構成を簡素化しつつ、局所加熱のパターンを多様化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、鍋を収容する収容部と、前記収容部の外面側に互いに間隔をあけて配置された複数のコイルを有し、前記鍋に誘導加熱を生じさせるべく前記複数のコイルに通電する加熱回路と、を備え、前記加熱回路が、単一のスイッチング素子で構成され、前記複数のコイルに通電される電流を制御するインバータ回路と、電源と前記インバータ回路とに並列接続される複数の通電線と、前記複数の通電線同士を接続する接続線と、前記通電線の各々に介設され、前記接続線との節点よりも前記電源側に位置する電源側コイルと、前記通電線の各々に介設され、前記接続線との節点よりも前記インバータ回路側に位置するインバータ側コイルと、前記通電線の各々に介設され、前記節点よりも前記電源側位置する電源側開閉器と、前記通電線の各々に介設され、前記節点よりも前記インバータ回路側に位置するインバータ側開閉器と、を更に有する、調理器を提供する。
【0009】
上記構成によれば、各通電線に2個のコイルが介設される。通電線がn本の場合、2n個のコイル、n個の電源側開閉器、及びn個のインバータ側開閉器が、通電線上に介在する。例えば、電源側開閉器のいずれか1つが閉となり、インバータ側開閉器のいずれか1つが閉となった場合、閉じた電源側開閉器と隣接する1つの電源側コイル、及び閉じたインバータ側開閉器と隣接する1つのインバータ側コイルの2個のコイルが通電される。2n個のコイルの中から2個に通電するパターン数が、電源側開閉器の個数とインバータ側開閉器の個数との積、すなわちnの2乗となる。例えば、コイルの個数が6であれば、パターン数は9となる。このように、局所加熱のパターンが多様化される。
【0010】
コイルの半数の通電線と、通電線同士を接続する1本の接続線とにより、このような作用を奏する加熱回路が実現されており、加熱回路の配線が簡略化される。開閉器の個数をコイルと同数としたまま、複数本の通電線が単一のスイッチング素子に並列に接続されており、加熱回路を構成する素子数が削減される。よって、加熱回路の構成が簡素化される。なお、いずれのパターンが選択された場合でも、通電対象の2個のコイルは、電源とインバータ回路との間で直列に接続される。これら2個のコイルには、単一のスイッチング素子によって制御された電流が通電される。
【0011】
前記複数のコイルが、前記鍋の軸線側に配置された複数の内側コイルと、前記軸線に対して前記内側コイルよりも離れて配置された複数の外側コイルとを含み、前記電源側コイルが、前記内側コイル及び前記外側コイルの一方で揃えられ、前記インバータ側コイルが、前記内側コイル及び前記外側コイルの他方で揃えられてもよい。
【0012】
上記構成によれば、複数のコイルから2個を通電対象として選択する場合に、内側コイルから1個、外側コイルから1個を選択できる。内側1個と外側1個とで2個のコイルを選択するにあたり、その全てのパターンを実現できる。
【0013】
前記複数の通電線が、第1通電線、第2通電線、及び第3通電線の3本の通電線であり、前記複数のコイルが、前記第1通電線上の第1電源側コイル及び第1インバータ側コイル、前記第2通電線上の第2電源側コイル及び第2インバータ側コイル、並びに前記第3通電線上の第3電源側コイル及び第3インバータ側コイルの6個のコイルであってもよい。
【0014】
上記構成によれば、内側3個と外側3個の6個のコイルから2個のコイルを通電対象として選択する場合に、3個の内側コイルから通電対象を1つ選択でき、3個の外側コイルから通電対象を1つ選択できる。内側1個と外側1個とで2個のコイルを選択するにあたり、9つのパターンの全てを実現できる。
【0015】
前記加熱回路が、前記インバータ回路に接続される枝線を更に有し、前記複数の通電線のうち2つの通電線が、前記枝線を介して前記インバータ回路に接続され、前記加熱回路が、前記2つの通電線のうちの一方に設定され、前記インバータ側コイルよりも前記枝線側に設定されるバイパス節点と、前記電源を前記バイパス節点に接続するバイパス線と、前記バイパス線に介設されるバイパス開閉器と、前記バイパス節点が設定されている通電線に介設され、前記バイパス節点よりも前記枝線側に位置する下流開閉器と、前記枝線に介設される枝線開閉器と、を更に有してもよい。
【0016】
ここで、枝線と接続された2つの通電線のうち、バイパス節点が設定されている通電線を「一方の通電線」、バイパス節点が設定されていない通電線を「他方の通電線」とする。
【0017】
上記構成によれば、バイパス開閉器が開であるときに、電源側開閉器のいずれか1つ、及び一方の通電線のインバータ側開閉器と共に、下流開閉器及び枝線開閉器を閉じると、電源側コイルのいずれか1つと、一方の通電線のインバータ側コイルとの2つのコイルに通電できる。バイパス開閉器が開であるときに、電源側開閉器のいずれか1つ、及び他方の通電線のインバータ側開閉器と共に枝線開閉器を閉じ、且つ下流開閉器を開くと、電源側コイルのいずれか1つと、一方の通電線のインバータ側コイルとの2つのコイルに通電できる。すなわち、複数(2n)個のコイルの中から2個に通電するパターン数として、上記同様に、電源側開閉器の個数とインバータ側開閉器の個数との積(nの2乗)を確保できる。
【0018】
更に、電源側開閉器が全て開であり且つバイパス開閉器が閉であるときに、n個のインバータ側コイルの中から2個のコイルを通電対象として選択し、2個のインバータ側コイルに通電できるようになる。したがって、2n個のコイルの中から2個のコイルに通電するパターン数が更に増え、局所加熱のパターンが更に多様化する。
【0019】
前記インバータ側コイルが、前記内側コイルで揃えられ、前記電源側コイルが、前記外側コイルで揃えられてもよい。
【0020】
上記構成によれば、複数のコイルから2個を通電対象として選択するにあたり、内側1個と外側1個とで2個のコイルを選択する場合の全てのパターンを実現できるようにしたうえで、内側コイルから2個を選択することも許容される。そのため、鍋内の調理対象(例えば、飯米)が少量であっても、調理対象を充分に加熱できる。
【0021】
前記電源側開閉器及び前記インバータ側開閉器が、2個のMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を有する交流スイッチであってもよい。
【0022】
上記構成によれば、高周波電流及び大電流をコイルに通電できる。なお、このMOSFET交流スイッチが無接点リレーであれば、接点寿命が長くなり、高速切替可能となり、且つ切替動作が静粛となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、調理器の加熱回路の構成を簡素化でき、局所加熱のパターンを多様化できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係る調理器の一例として示す炊飯器の側断面図。
【
図2】第1実施形態に係るコイルの配置と制御系の構成を示すブロック図。
【
図5A】第1実施形態に係る局所加熱のパターンを示す図。
【
図5B】第1実施形態に係る局所加熱のパターンを示す図。
【
図5C】第1実施形態に係る局所加熱のパターンを示す図。
【
図7A】第2実施形態に係る局所加熱のパターンを示す図。
【
図7B】第2実施形態に係る局所加熱のパターンを示す図。
【
図7C】第2実施形態に係る局所加熱のパターンを示す図。
【
図7D】第2実施形態に係る局所加熱のパターンを示す図。
【
図10】変形例に係るコイルの配置と制御系の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。同一の又は対応する要素には全図を通じて同一の符号を付し、詳細説明の重複を省略する。
【0026】
図1は、第1実施形態に係る調理器の一例として炊飯器1を示す。炊飯器1は、鍋2、本体3、及び蓋体4を備える。鍋2は、有底筒状であり、円板状の底部2a、及び円筒状の外周部2bを有する。底部2aが水平に支持されると、鍋2の軸線Aが上下方向に延び、鍋2が上端で開放される。底部2aの周縁部は、上側ほど拡径するよう湾曲された湾曲部2cを介し、外周部2bの下端部に連なる。本体3は、箱状であり、その上面に開口3aを有する。蓋体4は、本体3に回動可能に取り付けられ、開口3aを開閉する。
【0027】
本体3には、鍋2を収容する収容部5が設けられている。収容部5は、上端で開放された有底筒状であり、開口3aの下に配置される。蓋体4が開口3aを開放する状態で、鍋2が、炊飯器1外から開口3aを介して収容部5内に収容され、又は収容部5から開口3aを介して炊飯器1外に取り出される。鍋2が収容部5に収容され且つ蓋体4が開口3aを閉鎖する状態で、鍋2は、蓋体4の裏面に設けられた内蓋6で密閉され、収容部5と実質的に同軸になる。本書では、軸線Aを、鍋2及び収容部5に共通の軸線とする。
【0028】
この炊飯器1は、IH炊飯器である。鍋2は、鉄等の磁性材料製であり、複数のコイル20が、収容部5の外面側に互いに間隔をあけて配置されている。収容部5は、円筒状の内胴5a、及び内胴5aの下端に連なる皿状の保護枠5bを有する。保護枠5bは、樹脂製であり、導電性を有さない。保護枠5bは、鍋2の底部2a、湾曲部2c、及び外周部2bの下部に沿った形状を有し、鍋2のこれらの部分を覆う。コイル20は、保護枠5bに沿った形状を有し、保護枠5bを介して鍋2を覆う。
【0029】
本体3内では、加熱回路10(
図2及び
図3参照)の構成部品の一部を実装した基板7が保持されている。加熱回路10は、コイル20に高周波電流(約20~40kHz)且つ大電流(実効値約23A相当、ピーク値約100A)を通電する。これにより、磁束が生成され、鍋2に渦電流が生じ、鍋2に誘導加熱が生じる。
【0030】
図2を参照して、基板7には制御器8が設けられている。制御器8は、例えば、ソフトウェアと協働して所定の機能を実現するCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御器8は、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路または再構成可能な電子回路等のハードウェア回路で構成されてもよいし、種々の半導体集積回路で構成されてもよい。種々の半導体集積回路としては、例えば、CPU、MPUの他に、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が挙げられる。また、制御器8は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等の記憶装置を含んでもよい。
【0031】
記憶装置は、炊飯処理及び保温処理を実行するためのプログラム、及びプログラムに用いられる情報を記憶している。制御器8は、炊飯処理又は保温処理の実行中、インバータ回路15及び開閉器40の動作を制御する。インバータ回路15及び開閉器40は、基板7に実装され、加熱回路10を構成する。インバータ回路15は、コイル20に通電される電流を制御し、電流の周波数及び電流量を調整する。開閉器40は、加熱回路10の配線上に介設される。制御器8は、インバータ回路15で制御された電流が複数のコイル20のうちいずれか2個のコイルに通電されるように、開閉器40を制御する。
【0032】
図2は、鍋2及びこれを覆うコイル20を下から見て示す。本実施形態に係る炊飯器1には、合計6個のコイル20が設けられている。幾何的なレイアウトの観点から、6個のコイル20は、3個の内側コイル21A,21B,21Cと、3個の外側コイル22A,22B,22Cとの2種類に分類される。
【0033】
内側コイル21A,21B,21Cは、軸線A側に配置される。内側コイル21A,21B,21Cは、鍋2の底部2aから湾曲部2cに跨るようにして配置される。内側コイル21A,21B,21Cは、軸線Aを中心として周方向に互いに間隔をあけて配置される。内側コイル21A,21B,21Cは、互いに同一の曲面状であり、概ねn回対称(n:内側コイル数、本例は3)に配置される。
【0034】
外側コイル22A,22B,22Cは、軸線Aに対して内側コイル21A,21B,21Cよりも離れて配置される。外側コイル22A,22B,22Cは、鍋2の湾曲部2cから外周部2bの下部に跨るようにして配置される。外側コイル22A,22B,22Cも、軸線Aを中心として周方向に互いに間隔をあけて配置される。外側コイル22A,22B,22Cは、互いに同一の曲面状であり、概ねn回対称(n:外側コイル数、本例は3)に配置される。
【0035】
いずれのコイル20の中央部にも、巻線がない空洞がある。底面視において、内側コイル21A,21B,21Cの空洞の中心を結ぶ正三角形を仮想し、外側コイル22A,22B,22Cの空洞の中心を結ぶ正三角形を仮想すると、2つの正三角形の姿勢が軸線A周りに180度ずれている。第1外側コイル22Aは、第2内側コイル21B及び第3内側コイル21Cと径方向に隣接し、第1内側コイル21Aと径方向に離れて対向する。第2外側コイル22Bは、第3内側コイル21C及び第1内側コイル21Aと径方向に隣接し、第2内側コイル21Bと径方向に離れて対向する。第3外側コイル22Cは、第1内側コイル21A及び第2内側コイル21Bと径方向に隣接し、第3内側コイル21Cと径方向に離れて対向する。
【0036】
内側コイル21A,21B,21Cは、外側コイル22A,22B,22Cよりも小さい。内側コイル21A,21B,21Cの巻線のターン数は、外側コイル22A,22B,22Cのそれよりも多い。内側コイル21A,21B,21Cは、外側コイル22A,22B,22Cよりも、大きいインダクタンスを有する。周波数及び電流量が同一の条件下で、内側コイル21A,21B,21Cへの通電による加熱量は、外側コイル22A,22B,22Cへの通電による加熱量よりも大きい。
【0037】
図3を参照して、加熱回路10は、前述のコイル20、インバータ回路15、及び開閉器40の他、ダイオードブリッジ11、平滑コンデンサ12、及び共振コンデンサ13を更に有する。
【0038】
ダイオードブリッジ11は、不図示のプラグを介し、商用電源等の交流電源90(例えば、100V、15A、50又は60Hz)に接続される。ダイオードブリッジ11は、交流電源90から供給される交流を直流に変換する。平滑コンデンサ12は、ダイオードブリッジ11の正極端子11aと負極端子11bとの間に介設され、ダイオードブリッジ11の出力を平滑する。
【0039】
インバータ回路15は、単一のスイッチング素子によって構成される。本実施形態では、スイッチング素子がIGBT16である。IGBT16のゲート16gは、制御器8(
図2参照)と接続される。ダイオードブリッジ11の正極端子11aは、電源線31、複数本(本例では3本)の通電線32A,32B,32C、及び出力線33を介し、IGBT16のコレクタ16cと接続される。IGBT16のエミッタ16eは、ダイオードブリッジ11の負極端子11bに接続され且つ接地される。コイル20は通電線32A,32B,32C上に設けられている。IGBT16は、制御器8により制御され、コイル20に通電される電流の電流量及び周波数を調整する。なお、電源線31と出力線33との間には、IGBT16の個数と同様に、単一の共振コンデンサ13が介設される。
【0040】
3本の通電線32A,32B,32Cが、電源(より詳しくは、ダイオードブリッジ11の正極端子11a)に並列に接続され、且つインバータ回路15(より詳しくは、IGBT16のコレクタ16c)に並列に接続されている。
【0041】
各通電線32A,32B,32C上には、2個のコイル20が直列に接続されている。2個のコイル20のうち、電源側を「電源側コイル」と称し、インバータ回路15側を「インバータ側コイル」と称する。第1通電線32A上には、第1電源側コイル26Aと第1インバータ側コイル27Aとが介設される。第2通電線32B上には、第2電源側コイル26Bと第2インバータ側コイル27Bとが介設される。第3通電線32C上には、第3電源側コイル26Cと第3インバータ側コイル27Cとが介設される。
【0042】
このように、回路レイアウトの観点から、6個のコイル20は、3個の電源側コイル26A,26B,26Cと、3個のインバータ側コイル27A,27B,27Cとの2種類に半分ずつ分かれる。本実施形態では、3個の電源側コイル26A,26B,26Cが全て、外側コイル22A,22B,22Cである。3個のインバータ側コイル27A,27B,27Cが全て、内側コイル21A,21B,21Cである。
【0043】
3本の通電線32A,32B,32Cは、接続線35で接続される。電源側コイル26A,26B,26Cは、接続線35との節点34A,34B,34Cよりも電源側に位置する。インバータ側コイル27A,27B,27Cは、節点34A,34B,34Cよりもインバータ回路15側に位置する。
【0044】
本実施形態では、開閉器40がコイル20と同じ6個設けられている。6個の開閉器40は、3つの電源側開閉器41A,41B,41Cと、3つのインバータ側開閉器42A,42B,42Cとの2種類に分類される。
【0045】
3つの電源側開閉器41A,41B,41Cは、3つの通電線32A,32B,32Cそれぞれに介設される。各電源側開閉器41A,41B,41Cは、対応する通電線32A,32B,32C上において、対応する節点34A,34B,34Cよりも電源側に位置する。電源側開閉器41A,41B,41Cは、図示のように、節点34A,34B,34Cと電源側コイル26A,26B,26Cとの間に配置されていてもよく、電源側コイル26A,26B,26Cよりも電源側に配置されていてもよい。
【0046】
3つのインバータ側開閉器42A,42B,42Cは、3つの通電線32A,32B,32Cそれぞれに介設される。各インバータ側開閉器42A,42B,42Cは、対応する通電線32A,32B,32C上において、対応する節点34A,34B,34Cよりもインバータ回路15側に位置する。インバータ側開閉器42A,42B,42Cは、図示のように、節点34A,34B,34Cとインバータ側コイル27A,27B,27Cとの間に配置されていてもよく、インバータ側コイル27A,27B,27Cよりもインバータ回路15側に配置されていてもよい。
【0047】
各開閉器40は、対応する通電線32A,32B,32Cを開閉する。開閉器40は、導通可否を切り換える機能を有していればどのように構成されていてもよい。本実施形態では、開閉器40は、2個のMOSFET58(
図4参照)で構成された交流スイッチである。開閉器40は、SSR(Solid State Relay)とも呼ばれる無接点リレーである。
【0048】
図4を参照して、開閉器40は、電気的に互いに絶縁された入力部50及び出力部55を有する。入力部50は、2個の入力端子51、及び発光素子52を有する。発光素子52は、例えばLED(Light Emitting Diode)であり、通電されると発光する。出力部55は、光起電力素子56、制御回路57、2個のMOSFET58、及び2個の出力端子59を有する。光起電力素子56は、発光素子52からの光を受光して発電する。この電圧が、制御回路57を通ってゲート電圧となり、MOSFET58のゲート58gに入力され、MOSFET58が駆動される。2個のMOSFET58は、ソース58s同士が接続されるようにして直列に並ぶ。2つのドレイン58dが、出力端子59にそれぞれ接続される。出力端子59は、当該開閉器40と対応する通電線32A,32B,32Cに接続される。
【0049】
MOSFET58は常開型である。発光素子52が発光していなければ、開閉器40は開となる。発光素子52が通電されて発光すると、開閉器40が閉となる。出力部55は、双方向導通特性を有する。開閉器40が閉のとき、交流電流が、正電圧時も負電圧時も出力部55内、すなわち出力端子59間を導通可能である。制御器8は、入力端子51と接続され、発光素子52の通電ひいては開閉器40の動作を制御する。
【0050】
図3に戻り、制御器8(
図2参照)は、複数のコイル20のうち2個に通電するように開閉器40を制御する。これにより、鍋2が、通電対象の2個のコイル20の近傍で局所的に加熱される。更に、制御器8は、通電対象の2個のコイル20を順次変更するように開閉器40を制御する。これにより、局所的に加熱される個所が順次変更される。
【0051】
制御器8は、3つの電源側開閉器のいずれか1個を閉じ、且つ残余の2個の電源側開閉器を開のままとする。同時に、3つのインバータ側開閉器のいずれか1個を閉じ、且つ残余の2個のインバータ側開閉器を開のままとする。これにより、ダイオードブリッジ11が、電源線31、閉じた電源側開閉器、必要に応じて接続線35、閉じたインバータ側開閉器、及び出力線33を介し、インバータ回路15と導通される。閉じた電源側開閉器とインバータ側開閉器とが同一の通電線上にあれば、接続線35が用いられず、そうでなければ、接続線35が用いられる。
【0052】
このように、閉じた電源側開閉器と隣接する1個の電源側コイルと、閉じたインバータ側開閉器と隣接する1個のインバータ側コイルとの、2つのコイルが通電される。6個のコイル20から選択された通電対象の2個のコイルの組合せの数、言い換えると局所加熱のパターン数は、電源側開閉器の個数とインバータ側開閉器の個数との積、すなわち9である。いずれのパターンにおいても、単一のIGBT16により電流の制御が行われ、単一の共振コンデンサ13の作用が得られる。
【0053】
具体的には、
図5Aに示すように、第1電源側開閉器41Aが閉じ、第2及び第3電源側開閉器41B,41Cが開のままであれば、第1通電線32A上で第1電源側開閉器41Aと隣接している第1電源側コイル26Aが通電される。
【0054】
このとき、第1インバータ側開閉器42Aが閉じると、第1通電線32A上でこれと隣接している第1インバータ側コイル27Aが通電される(第1パターン)。第2インバータ側開閉器42Bが閉じると、第2通電線32B上でこれと隣接している第2インバータ側コイル27Bが通電される(第2パターン)。第3インバータ側開閉器42Cが閉じると、第3通電線32C上でこれと隣接している第3インバータ側コイル27Cが通電される(第3パターン)。
【0055】
第1電源側コイル26Aは、第1外側コイル22Aと対応し、第1~第3インバータ側開閉器42A,42B,42Cは、第1~第3内側コイル21A,21B,21Cとそれぞれ対応する。第1~第3パターンにおいては、第1外側コイル22Aと、3個の内側コイル21A~21Cのいずれか1個との、2個のコイルが通電対象である。
【0056】
図5Bに示すように、第2電源側開閉器41Bが閉じると、第2通電線32B上で第2電源側開閉器41Bと隣接している第2電源側コイル26Bが通電される。第2電源側コイル26Bは、第2外側コイル22Bと対応する。このとき、第1インバータ側開閉器42Aが閉じると、第1内側コイル21Aが通電される(第4パターン)。第2インバータ側開閉器42Bが閉じると、第2内側コイル21Bが通電される(第5パターン)。第3インバータ側開閉器42Cが閉じると、第3内側コイル21Cが通電される(第6パターン)。第4~第6パターンにおいては、第2外側コイル22Bと、3個の内側コイル21A~21Cのいずれか1個との、2個のコイルが通電対象である。
【0057】
図5Cに示すように、第3電源側開閉器41Cが閉じ、第1及び第2電源側開閉器41A,41Bが開のままであれば、第3通電線32C上で第3電源側開閉器41Cと隣接している第3電源側コイル26Cが通電される。第3電源側コイル26Cは、第3外側コイル22Cと対応する。このとき、第1インバータ側開閉器42Aが閉じると、第1内側コイル21Aが通電される(第7パターン)。第2インバータ側開閉器42Bが閉じると、第2内側コイル21Bが通電される(第8パターン)。第3インバータ側開閉器42Cが閉じると、第3内側コイル21Cが通電される(第9パターン)。第7~第9パターンにおいては、第3外側コイル22Cと、3個の内側コイル21A~21Cのいずれか1個との、2個のコイルが通電対象である。
【0058】
第1~第9パターンのいずれにおいても、通電対象として選択された2個のコイルは、電源とインバータ回路15との間で直列に接続される。そのため、インバータ回路15により制御された電流量の電流が、2個のコイルのどちらにも流れる。
【0059】
このように、本実施形態に係る炊飯器1は、鍋2を収容する収容部5と、収容部5の外面側に互いに間隔をあけて配置された複数のコイル20を有し、鍋2に誘導加熱を生じさせるべく複数のコイル20に通電する加熱回路10とを備える。加熱回路10は、単一のスイッチング素子(IGBT16)で構成され、複数のコイル20に通電される電流を制御するインバータ回路15と、電源(交流電源90又はダイオードブリッジ11)とインバータ回路15とに並列接続される複数の通電線32A,32B,32Cと、複数の通電線32A,32B,32C同士を接続する接続線35と、通電線32A,32B,32Cの各々に介設され、接続線35との節点34A,34B,34Cよりも電源側に位置する電源側コイル26A,26B,26Cと、通電線32A,32B,32Cの各々に介設され、接続線35との節点34A,34B,34Cよりもインバータ回路15側に位置するインバータ側コイル27A,27B,27Cと、通電線32A,32B,32Cの各々に介設され、節点34A,34B,34Cよりも電源側に位置する電源側開閉器41A,41B,41Cと、通電線32A,32B,32Cの各々に介設され、節点34A,34B,34Cよりもインバータ回路15側に位置するインバータ側開閉器42A,42B,42Cと、を更に有する。
【0060】
上記構成によれば、各通電線32A,32B,32Cに2個のコイル20が介設される。コイル20の個数の半数の通電線32A,32B,32Cと、通電線32A,32B,32C同士を接続する1本の接続線35とにより、多様な局所加熱のパターンが実現され、加熱回路10の配線が簡略化される。開閉器40の個数はコイル20と同数のまま、通電線32A,32B,32Cが単一のIGBT16に並列に接続され、共振コンデンサ13も単一である。加熱回路10を構成する素子数が少ない。これらのことから、加熱回路10の構成が簡素化される。
【0061】
通電線が3本であり、複数のコイル20が、鍋2の軸線A側に配置された3個の内側コイル21A,21B,21Cと、軸線Aに対して内側コイル21A,21B,21Cよりも離れて配置された3個の外側コイル22A,22B,22Cとに分類される。3個の電源側コイル26A,26B,26Cが、外側コイル22A,22B,22Cで揃えられている。3個のインバータ側コイル27A,27B,27Cが、内側コイル21A,21B,21Cで揃えられている。
【0062】
これにより、内側3個及び外側3個の合計6個のコイル20から2個を通電対象として選択する場合に、3個の内側コイル21A,21B,21Cから通電対象を1つ選択でき、3個の外側コイル22A,22B,22Cから通電対象を1つ選択できる。内側1個と外側1個とで2個のコイルを通電対象として選択するにあたり、想定される全パターンを網羅できる。
【0063】
開閉器40が、2個のMOSFET58で構成された交流スイッチである。そのため、高周波電流及び大電流をコイル20に通電できる。開閉器40は、無接点リレーである。そのため、機械式の有接点リレーと対比して、接点寿命が長く、高速切替可能であり、且つ切替動作が静粛となる。
【0064】
次に、第1実施形態との相違を中心に、第2実施形態について説明する。
【0065】
図6を参照して、本実施形態に係る加熱回路10は、出力線33に接続された枝線36を有する。複数の通電線32A,32B,32Cのうちの2つの通電線が、枝線36の端の節点37aに接続される。本実施形態では、単なる一例として、第2通電線32B及び第3通電線32Cが、枝線36に節点37aで接続され、それにより、枝線36(及び出力線33)を介してインバータ回路15のIGBT16のコレクタ16cに接続されている。
【0066】
加熱回路10は、バイパス節点37b、バイパス線38、バイパス開閉器43、下流開閉器44、及び枝線開閉器45を有する。
【0067】
バイパス節点37bは、枝線36に接続された2つの通電線(第2通電線32B及び第3通電線32C)のうちの一方に設定される。本実施形態では、単なる一例として、バイパス節点37bが第2通電線32Bに設定されている。バイパス節点37bは、第2インバータ側コイル27Bよりも枝線36側に位置する。バイパス線38は、電源線31から延びており、電源(ダイオードブリッジ11の正極端子11a)をバイパス節点37bに接続する。バイパス線38は、接続線35とは直接的に接続されていない。
【0068】
バイパス開閉器43は、バイパス線38に介設されている。下流開閉器44は、第2通電線32Bに介設され、バイパス節点37bよりも枝線36側に位置する。枝線開閉器45は、枝線36に介設されている。本実施形態に係る加熱回路10においては、第1実施形態に対し、3つの開閉器40(43~45)が追加されている。
【0069】
本実施形態においても、3個の電源側コイル26A,26B,26Cが全て、外側コイル22A,22B,22Cである。3個のインバータ側コイル27A,27B,27Cが全て、内側コイル21A,21B,21Cである。
【0070】
制御器8(
図2参照)は、インバータ回路15で制御された電流が複数のコイル20のうち2個に通電されるように、開閉器40を制御する。
図7A~
図7Cは、第1実施形態と同様、外側コイル1個と内側コイル1個との2個のコイルを通電対象とする第1~第9パターンを示す。通電対象の2個のコイルは、電源とインバータ回路15との間で直列に接続される。第1~第9パターンのいずれも、電源側への逆流を防ぐため、バイパス開閉器43は開のままである。
【0071】
図7Aは、
図5A相当図である。第1~第3パターンのいずれも、第1電源側コイル26Aとしての第1外側コイル22Aへの通電のため、第1電源側コイル26Aと隣接する第1電源側開閉器41Aが閉じる一方、第2及び第3電源側開閉器41B,41Cは開く。
【0072】
第1パターンでは、第1インバータ側コイル27Aとしての第1内側コイル21Aが通電対象である。この場合、第1インバータ側コイル27Aと隣接する第1インバータ側開閉器42Aが閉じる一方、第2及び第3インバータ側開閉器42B,42Cが開く。バイパス開閉器43と併せて、下流開閉器44及び枝線開閉器45も開く。それにより、電流が出力線33から第2及び第3インバータ側コイル27B,27Cへ逆流するのを防ぐ。
【0073】
第2パターンでは、第2インバータ側コイル27Bとしての第2内側コイル21Bが通電対象である。この場合、第2インバータ側コイル27Bと隣接する第2インバータ側開閉器42Bが閉じる一方、第3及び第1インバータ側開閉器42C,42Aが開く。第2インバータ側コイル27Bのインバータ側端子をインバータ回路15と導通させるため、下流開閉器44及び枝線開閉器45が閉じる。
【0074】
第3パターンでは、第3インバータ側コイル27Cとしての第3内側コイル21Cが通電対象である。この場合、第3インバータ側コイル27Cと隣接する第3インバータ側開閉器42Cが閉じる一方、第1及び第2インバータ側開閉器42A,42Bが開く。第3インバータ側コイル27Cのインバータ側端子をインバータ回路15と導通させるため、枝線開閉器45が閉じる。節点37aから第2インバータ側コイル27Bへの逆流を防ぐため、バイパス開閉器43と併せて、下流開閉器44も開く。
【0075】
図7Bは、
図5B相当図である。第4~第6パターンのいずれも、第2電源側コイル26Bとしての第2外側コイル22Bへの通電のため、第2電源側コイル26Bと隣接する第2電源側開閉器41Bが閉じる一方、第3及び第1電源側開閉器41C,41Aは開く。インバータ側開閉器42A,42B,42C、バイパス開閉器43、下流開閉器44、及び枝線開閉器45の挙動に関し、第4パターンは第1パターンと同じである。第5パターンは第2パターンと同じである。第6パターンは第3パターンと同じである。
【0076】
図7Cは、
図5C相当図である。第7~第9パターンのいずれも、第3電源側コイル26Cとしての第3外側コイル22Cへの通電のため、第3電源側コイル26Cと隣接する第3電源側開閉器41Cが閉じる一方、第1及び第2電源側開閉器41A,41Bは開く。インバータ側開閉器42A,42B,42C、バイパス開閉器43、下流開閉器44、及び枝線開閉器45の挙動に関し、第7パターンは第1パターンと同じである。第8パターンは第2パターンと同じである。第9パターンは第3パターンと同じである。
【0077】
このように、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、内側3個及び外側3個の6個のコイル20から2個のコイルを通電対象として選択するにあたり、3個の内側コイルから通電対象を1つ選択でき、3個の外側コイルから通電対象を1つ選択できる。内側1個と外側1個とで2個のコイルを選択するにあたり、9つのパターンを全て実現できる。回路構成の簡素化と、局所加熱のパターンの多様化とを両立できる。
【0078】
そして、
図7Dに示すように、本実施形態に係る加熱回路10においては、実現可能な局所加熱のパターンが、第1実施形態に対して3つ多い。追加される第10~第12パターンにおいては、3個のインバータ側コイル27A~27Cから選択された2個のコイルが通電対象である。
【0079】
第10~第12パターンのいずれにおいても、電源側コイル26A,26B,26Cが通電対象ではないため、電源側開閉器41A,41B,41Cが全て開いたままである。代わりに、第10~第12パターンにおいては、第2インバータ側コイル27B又は第3インバータ側コイル27Cのインバータ側端子が電源に導通する。そのために、バイパス線38が設けられており、バイパス開閉器43が閉じられる。
【0080】
第10パターンにおいては、第1インバータ側コイル27Aとしての第1内側コイル21Aと、第2インバータ側コイル27Bとしての第2内側コイル21Bとの、2個のコイルが通電対象である。第1及び第2インバータ側開閉器42A,42Bが閉じる一方、第3インバータ側開閉器42Cが開く。バイパス節点37bが枝線36を介してインバータ回路15と導通するのを防ぐため、下流開閉器44及び枝線開閉器45が開く。
【0081】
これにより、電源が、バイパス線38、バイパス節点37b、第2インバータ側コイル27B、節点34B、接続線35、節点34A、及び第1インバータ側コイル27Aを介し、インバータ回路15と導通される。2つのインバータ側コイル27A,27B(すなわち、2つの内側コイル21A,21B)が、電源とインバータ回路15との間で直列に接続された状態で、通電される。
【0082】
第11パターンにおいては、第2インバータ側コイル27Bとしての第2内側コイル21Bと、第3インバータ側コイル27Cとしての第3内側コイル21Cとの、2個のコイルが通電対象である。第2及び第3インバータ側開閉器42B,42Cが閉じる一方、第1インバータ側開閉器42Aが開く。
【0083】
第2インバータ側コイル27Bのインバータ側端子は、第3インバータ側開閉器42Cのインバータ側端子に優先して、電源と接続される。第3インバータ側コイル27Cのインバータ側端子がバイパス節点37bと短絡するのを防ぐため、下流開閉器44が開く。逆に、第3インバータ側コイル27Cのインバータ側端子は、インバータ回路15と接続される必要がある。そのため、枝線開閉器45が閉じる。
【0084】
これにより、電源が、バイパス線38、バイパス節点37b、第2インバータ側コイル27B、節点34B、接続線35、節点34C、第1インバータ側コイル27A、及び枝線36を介し、インバータ回路15と導通される。2つのインバータ側コイル27B,27C(すなわち、2つの内側コイル21B,21C)が、電源とインバータ回路15との間で直列に接続された状態で、通電される。
【0085】
第12パターンにおいては、第1インバータ側コイル27Aとしての第1内側コイル21Aと、第3インバータ側コイル27Cとしての第3内側コイル21Cとの、2個のコイルが通電対象である。第1及び第3インバータ側開閉器42A,42Cが閉じる一方、第2インバータ側開閉器42Bが開く。第3インバータ側コイル27Cのインバータ側端子を電源と導通させる一方、インバータ回路15と短絡するのを防ぐため、下流開閉器44は閉じ、枝線開閉器45は閉じる。
【0086】
これにより、電源が、バイパス線38、バイパス節点37b、第2通電線32Bの下流部、節点37a、第3インバータ側コイル27C、節点34C、接続線35、節点34A、及び第1インバータ側コイル27Aを介し、インバータ回路15と導通される。2つのインバータ側コイル27A,27C(すなわち、2つの内側コイル21A,21C)が、電源とインバータ回路15との間で直列に接続された状態で、通電される。
【0087】
このように、3個のインバータ側コイル27A~27Cから選択された2個のコイルを通電対象とすることができる。本実施形態では、インバータ側コイル27A~27Cが全て、内側コイルである。3個の内側コイル21A,21B,21Cから2個の内側コイルを通電対象として選択するにあたり、3つのパターンを全て実現できる。鍋2の底部2aの中央部を局所的に加熱可能となり、鍋内の調理対象(例えば、飯米)が少量であっても、調理対象を充分に加熱できる。
【0088】
これまで実施形態について説明したが、上記構成は、単なる一例であり、本発明の範囲内で変更、追加、又は削除可能である。
【0089】
コイルの個数は6に限定されない。例えば、
図8に示すように、コイルの個数が8の場合には、通電線32Dを1本追加し、追加された通電線32Dに電源側コイル26D及びインバータ側コイル27D並びに電源側開閉器41D及びインバータ側開閉器42Dを介設し、追加された通電線32Dにも接続線35を節点34Dで接続すればよい。この場合にも、局所加熱のパターンが、少なくとも、電源側コイルの個数とインバータ側コイルの個数の積(4×4=16)となり、パターンの多様化が実現される。
【0090】
コイルの個数は偶数に限定されない。例えば、
図9に示すように、複数の通電線32A,32Bとは独立して接続線35を電源線31又は出力線33に接続する通電半線39を追加し、通電半線39にコイル20及び開閉器40を1個ずつ介設してもよい。これにより、奇数個のコイル20を有した加熱回路10を実現できる。
図9の例では、通電半線39が出力線33に接続され、インバータ側コイル及びインバータ開閉器が追加されている。通電半線39は、電源線31に接続されてもよく、その場合、電源側コイル及び電源側開閉器が追加される。
【0091】
図9に示す構成について別の言い方で説明すると、接続線35が、複数本(n本)の電源側通電線を介して電源と接続され、且つ複数本(m本)のインバータ側通電線を介してインバータ回路と接続され、各電源側通電線に電源側コイルと電源側開閉器とを1つずつ介設し、各インバータ側通電線にインバータ側コイルとインバータ側開閉器とを1つずつ介設してもよい。nとmは、等しくても異なっていてもよく、nとmが異なる場合、nとmとの和は偶数でも奇数でもよい。n+m個のコイルから2個を通電対象として選択する場合に、そのパターン数はnとmの積となる。
図9に示す例では、電源側通電線が2本、インバータ側通電線が3本であるから、パターン数が6となる。局所加熱のパターンが多様化する。
【0092】
第1実施形態では、3個の電源側コイル26A,26B,26Cが外側コイル22A,22B,22Cで揃えられ、3個のインバータ側コイル27A,27B,27Cが内側コイル21A,21B,21Cで揃えられているが、逆でもよい。電源側コイルが内側コイルで揃えられ、インバータ側コイルが外側コイルで揃えられていてもよい。なお、コイルの個数が6以外の偶数である場合には、内側コイルと外側コイルとの個数を同数とすればよい。電源側コイルに内側コイル及び外側コイルの一方を宛がって、インバータ側コイルに内側コイル及び外側コイルの他方を宛がうことができる。
【0093】
第2実施形態では、内側1個と外側1個とで2個のコイルを通電対象として選択する9つのパターンと、内側2個から2個のコイルを通電対象として選択する3つのパターンとが実現されているが、外側2個から2個のコイルを通電対象として選択してもよい。換言すると、電源側コイルを全て内側コイルとし、インバータ側コイルを全て外側コイルとしてもよい。
【0094】
複数のコイルは、内側コイルと外側コイルとに分かれていなくてもよい。例えば、
図10に示すように、複数のコイル20が、軸線Aを中心に放射状に配列されていてもよい。
【0095】
インバータ回路15のスイッチング素子は、IGBTに限定されない。開閉器40は、MOSFET以外のリレー機構によって構成されてもよい。
【0096】
本発明に係る調理器は、炊飯器以外の調理器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 炊飯器
2 鍋
2a 底部
2b 外周部
2c 湾曲部
3 本体
3a 開口
4 蓋体
5 収容部
5a 内胴
5b 保護枠
6 内蓋
7 基板
8 制御器
10 加熱回路
11 ダイオードブリッジ
11a 正極端子
11b 負極端子
12 平滑コンデンサ
13 共振コンデンサ
15 インバータ回路
16 IGBT
16c コレクタ
16e エミッタ
16g ゲート
20 コイル
21A,21B,21C 内側コイル
22A,22B,22C 外側コイル
26A,26B,26C,27D 電源側コイル
27A,27B,27C,27D インバータ側コイル
31 電源線
32A,32B,32C,32D 通電線
33 出力線
34A,34B,34C,34D 節点
35 接続線
36 枝線
37a 節点
37b バイパス節点
38 バイパス線
39 通電半線
40 開閉器
41A,41B,41C,41D 電源側開閉器
42A,42B,42C,42D インバータ側開閉器
43 バイパス開閉器
44 下流開閉器
45 枝線開閉器
50 入力部
51 入力端子
52 発光素子
55 出力部
56 光起電力素子
57 制御回路
58 MOSFET
58d ドレイン
58g ゲート
58s ソース
59 出力端子
90 交流電源