(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155080
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】消火体
(51)【国際特許分類】
A62C 35/10 20060101AFI20241024BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20241024BHJP
A62D 1/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A62C35/10
B32B7/022
A62D1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069487
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】磯和 愛実
(72)【発明者】
【氏名】椎根 康晴
(72)【発明者】
【氏名】黒川 真登
(72)【発明者】
【氏名】掛川 駿太
(72)【発明者】
【氏名】本庄 悠朔
【テーマコード(参考)】
2E189
2E191
4F100
【Fターム(参考)】
2E189BA01
2E189BB01
2E191AA01
2E191AA06
2E191AB32
2E191AB52
2E191AB54
2E191AC08
4F100AK23B
4F100AK51B
4F100AK53B
4F100AT00A
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4F100EJ86
4F100GB90
4F100JJ07B
4F100JK01
4F100JK01A
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】生産性よく製造可能であって、消火性能を良好に発揮可能な消火体を提供すること。
【解決手段】互いに積層される基材層及び消火層を有するシート状の消火体であって、消火体のループステフネス値が50mN以上であり、基材層の厚さに対する消火層の厚さの割合が80%以上である、消火体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層される基材層及び消火層を有するシート状の消火体であって、
前記消火体のループステフネス値が50mN以上であり、
前記基材層の厚さに対する前記消火層の厚さの割合が80%以上である、消火体。
【請求項2】
前記消火体のループステフネス値から、前記基材層のループステフネス値を引いた値が、125mN以下である、請求項1に記載の消火体。
【請求項3】
前記消火層が、消火剤及びバインダを含み、
前記バインダが、ウレタン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の消火体。
【請求項4】
前記消火層が、消火剤及びバインダを含み、
前記バインダが、ポリビニルブチラール樹脂及びエポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載の消火体。
【請求項5】
前記ポリビニルブチラール樹脂は、前記バインダの主成分であり、
前記エポキシ樹脂の含有量が、前記バインダの全量を基準として、5質量%以上45質量%以下である、請求項4に記載の消火体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、消火体に関する。
【背景技術】
【0002】
発火及び火災の問題に対し、特許文献1では、消火液及び消火器を用いることが提案されている。特許文献2では、ヘリコプターから投下する自動消火装置が提案されている。特許文献3では、エアロゾル消火装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-276440号公報
【特許文献2】特開2015-6302号公報
【特許文献3】特開2017-080023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献3に例示されているような消火体は、粉末状の消火材と異なり、所定の形状を有する成形体である。このような成形体である消火体の大量製造においては、消火体の消火性能だけでなく、消火体の加工適性(量産性)も考慮する必要がある。
【0005】
本開示の一側面は、生産性よく製造可能であって、消火性能を良好に発揮可能な消火体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の発明者らは、消火体のループステフネス値が小さすぎると、消火体の加工に不具合が生じる傾向があることを見出した。例えば、シート状の消火体をロールtоロール方式で製造するとき、消火体のループステフネス値によっては、消火体のたわみが発生する不具合が見出された。上述したような不具合の対策として、消火体のループステフネス値を向上させるために、基材層を厚くすることが挙げられる。この場合、消火体の消火性能に悪影響が生じ得ることも見出された。以上の知見に基づいてなされた本開示の一側面に係る消火体は、互いに積層される基材層及び消火層を有するシート状の消火体であって、消火体のループステフネス値が50mN以上であり、基材層の厚さに対する消火層の厚さの割合が80%以上である。
【0007】
消火体のループステフネス値から、基材層のループステフネス値を引いた値は、125mN以下であってもよい。この場合、消火層にクラックが発生しにくくなる。
【0008】
消火層は、消火剤及びバインダを含んでいてもよく、バインダは、ウレタン樹脂を含んでいてもよい。この場合、消火層にクラックが良好に発生しにくくなる。
【0009】
消火層は、消火剤及びバインダを含んでいてもよく、バインダは、ポリビニルブチラール樹脂及びエポキシ樹脂を含んでいてもよい。この場合、バインダにおけるポリビニルブチラール樹脂とエポキシ樹脂との比率を調整することによって、消火層のコシの強さなどを容易に調整できる。
【0010】
ポリビニルブチラール樹脂は、バインダの主成分であり、エポキシ樹脂の含有量は、バインダの全量を基準として、5質量%以上45質量%以下であってもよい。この場合、消火層にクラックが発生しにくくなる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、生産性よく製造可能であって、消火性能を良好に発揮可能な消火体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る消火装置の模式外観図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る消火装置の模式断面図であり、
図1におけるII-II線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<消火体>
図1は、一実施形態に係る消火装置の模式外観図である。
図2は、一実施形態に係る消火装置の模式断面図であり、
図1におけるII-II線断面図である。
図1及び
図2に示される消火装置10は、例えば火災の発生及び拡大の防止を図るためのシート状部材である。消火装置10は、例えば、発火するおそれのある対象物上、対象物近辺などに予め設けられる。対象物から発火した場合、後述した作用機序にしたがって消火装置10が初期消火を実施する。なお、発火するおそれのある対象物は、例えば、電線、配電盤、分電盤、制御盤、蓄電池(リチウムイオン電池等)、建材用壁紙、天井材等の建材、リチウムイオン電池回収用箱、ごみ箱、自動車関連部材、コンセント、コンセントカバーなどである。例えば、消火装置10を有する上記対象物では、当該対象物における発火に対し自動的に初期消火が行われる。このため、消火装置10を有する対象物は、自動消火機能を有する装置ということができる。
【0015】
消火装置10は、消火体11と、包装袋12とを備える。
【0016】
消火体11は、消火装置10における主要部として機能するシート状部材であり、互いに積層される基材層1及び消火層2を有する。消火体11の厚さは、例えば50μm以上500μm以下である。消火体11の厚さは、例えば80μm以上でもよいし、110μm以上でもよいし、135μm以上でもよいし、170μm以上でもよいし、195μm以上でもよいし、220μm以上でもよいし、250μm以上でもよいし、450μm以下でもよいし、400μm以下でもよいし、350μm以下でもよいし、300μm以下でもよいし、280μm以下でもよいし、250μm以下でもよい。消火体11のループステフネス値は、例えば50mN以上350mN以下である。この場合、消火体11(特に、後述する消火層2)にクラックが発生しにくくなる。当該ループステフネス値は、60mN以上でもよいし、75mN以上でもよいし、100mN以上でもよいし、125mN以上でもよいし、150mN以上でもよいし、300mN以下でもよいし、250mN以下でもよいし、200mN以下でもよいし、175mN以下でもよいし、。なお、消火体11のループステフネス値は、消火体11をループ状に折り曲げて、ループの直径方向に圧縮したときの応力に相当する。一般に、ループステフネス値が大きいフィルムほど、当該フィルムのコシが強くなる。消火体11のループステフネス値は、例えば、後述する実施例にて記載されるループステフネステスタなどにて得られる。
【0017】
(基材層)
基材層1は、消火層2の土台となるシート状部材であり、例えばフィルムの断裁物である。基材層1の厚さは、消火装置10の性能、消火装置10の許容される大きさ等に応じて適宜選択できる。例えば、基材層1が厚ければ、消火装置10の高い強度及びループステフネス値が得られやすいだけでなく、平面性の高い形態をとりやすい。このため、基材層1が厚いほど、消火装置10のハンドリングが容易となる。また、基材層1が薄ければ、狭いスペースに消火装置10を設けやすくなる。加えて、短時間で基材層1に穴が開きやすくなるため、消火開始時間を短縮し得る。上記観点から、基材層1の厚さは、30μm以上150μm以下でもよく、30μm以上100μm以下でもよく、30μm以上75μm以下でもよく、50μm以上150μm以下でもよく、50μm以上100μm以下でもよく、50μm以上75μm以下でもよい。
【0018】
消火体11のループステフネス値を50mN以上にする観点から、基材層1のループステフネス値は、ある程度大きくする必要がある。一方、消火層2のクラック発生低減の観点から、基材層1のループステフネス値は、適度に抑える必要がある。以上の観点から、消火体11のループステフネス値から、基材層1のループステフネス値を引いた値は、例えば125mN以下である。当該値は、124mN以下、100mN以下、80mN以下、60mN以下、40mN以下、34mN以下、22mN以下、20mN以下又は18mN以下であってもよい。また、消火体11のループステフネス値から、基材層1のループステフネス値を引いた値の下限は、特に制限されず、0mN以上であればよい。なお、基材層1のループステフネス値は、例えば30mN以上300mN以下である。
【0019】
基材層1として、例えば樹脂層が選択される。当該樹脂層に含まれる材質としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、無延伸ポリプロピレン樹脂(CPP)等)、ポリエステル系樹脂(PET等)、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE、EFEP、PFA、FEP、PCTFE等)、PVC、PVA、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド、ポリイミドなどが挙げられる。この場合、炎の温度が一般的に700℃以上900℃以下程度であることから、消火装置10による消火時に、基材層1に穴を開けることができる。基材層1には、後述する消火剤が含まれていてもよい。基材層1は、上述した材質からなる一つの樹脂層から構成されていてよく、複数の樹脂層から構成されていてもよい。複数の樹脂層は、それぞれ異なる材質からなるものであってよい。基材層1が複数の樹脂層から構成される場合、当該樹脂層同士は接着剤(接着層)により接着されていてよい。接着剤としては、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、ウレタン系接着剤又はポリビニルエーテル系接着剤又はそれら合成系接着剤、等が挙げられる。消火層2の消火性能発揮の観点から、基材層1において消火層2から遠い樹脂層ほど、融点が低くてもよい。当該樹脂層の材質は、例えばポリオレフィン系樹脂である。
【0020】
上述した樹脂層は、熱溶融性(熱融着性)を有してよい。熱溶融性を有する樹脂層を熱溶融層と言うことができる。熱溶融層は、例えば、基材層1において消火層2に近い樹脂層に設けられる。基材層1が熱溶融層を備える場合、包装袋12の封止部をヒートシール部ということができる。熱溶融性を有する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。すなわち、樹脂層はポリオレフィン系樹脂を含んでよい。ポリオレフィン系樹脂としては、上述したポリオレフィン系樹脂だけでなく、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体等のポリエチレン系樹脂、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体等のポリプロピレン系樹脂なども挙げられる。これらのうち、ヒートシール性、水蒸気透過度などの観点から、ポリオレフィン系樹脂は、LDPE、LLDPE、又は無延伸ポリプロピレン樹脂(CPP)を含んでよい。これらの樹脂は、透明性を有している。そのため、基材層1を介した消火層2の外観検査が可能になる。よって、消火装置10の交換時期の確認等も容易になる。
【0021】
熱溶融層を設けない場合、基材層1に含まれる樹脂層同士の接合には接着剤を用いることができる。接着剤としては、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、ウレタン系接着剤又はポリビニルエーテル系接着剤又はそれら合成系接着剤などが挙げられる。これらのうち、85℃-85%RH高温高湿時における密着性、低コストなどの観点から、接着剤は、エポキシ-ウレタン合成系接着剤でもよい。
【0022】
基材層1は、水蒸気バリア層を含んでよい。水蒸気バリア層は、例えば、基材層1の中間層として設けられていてよい。基材層1が水蒸気バリア層を備える場合、消火装置10の設置場所、使用環境に依らず、消火層2の性状が大きく変化しない程度の水蒸気バリア性を維持しやすくなる。水蒸気バリア層の水蒸気透過度(JIS K 7129準拠 40℃/90%RH条件下)は、消火層2に含まれる消火剤の種類に応じ設計できるため特に制限されないが、10g/m2/day以下とすることができ、1g/m2/day以下であってよい。水蒸気透過度の調整の観点から、水蒸気バリア層としてはアルミナ蒸着層、シリカ蒸着層等の金属酸化物蒸着層を備えるポリエステル樹脂層(例えばPET層)、アルミ箔等の金属箔が挙げられる。水蒸気バリア層が金属酸化物蒸着層を備える場合、金属酸化物蒸着層は、例えば、消火層2の近傍に設けられてもよい。
【0023】
(消火層)
消火層2は、消火剤とバインダとを含む組成物(消火層形成用組成物)のシート状成形体であり、基材層1上に設けられる。バインダを用いて消火剤を成形することで消火剤の性状が維持されやすくなる。これにより、消火装置10の交換頻度を低減できる。消火層2の厚さが大きいほど、消火装置10の消火性能が向上する傾向がある。消火層2によって発揮される消火能力は、炎などの熱源だけでなく、当該熱源によって加熱される基材層1にも発揮される。このため、一実施形態では、消火体11における基材層1の厚さと消火層2の厚さとのバランスも考慮される。基材層1の厚さに対する消火層2の厚さの割合は、例えば、80%以上、120%以上、160%以上又は180%以上であり、400%以下、350%以下、300%以下又は240%以下である。また、消火層2の厚さは、例えば40μm以上、60μm以上、90μm以上、120μm以上又は150μm以上であって、250μm以下、220μm以下、200μm以下又は180μm以下である。上記消火層形成用組成物は、消火剤及びバインダに加え、液状媒体を含んでいてもよい。
【0024】
消火剤は、燃焼によりエアロゾルを発生することで消火を行うことができる。消火剤は、有機塩及び無機塩の少なくとも一方の塩を含むことができる。有機塩及び無機塩は、吸湿性を有する塩であってもよい。
【0025】
消火剤として機能する有機塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。有機塩としてはカリウム塩を用いることができる。有機カリウム塩としては、酢酸カリウム、クエン酸カリウム(クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム又はクエン酸三カリウム)、酒石酸カリウム、乳酸カリウム、シュウ酸カリウム、マレイン酸カリウム等のカルボン酸カリウム塩が挙げられる。燃焼の負触媒効果に対する有用性の観点から、有機カリウム塩は、酢酸カリウム又はクエン酸カリウムでもよい。
【0026】
消火剤として機能する無機塩としては、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられる。無機カリウム塩としては、四硼酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、燐酸二水素カリウム、燐酸水素二カリウム等が挙げられる。このうち燃焼の負触媒効果に対する有用性の観点から、無機塩は、炭酸水素カリウムでもよい。
【0027】
有機塩及び無機塩は粒状であってよい。有機塩及び無機塩の平均粒子径D50は1μm以上100μm以下であってもよく、3μm以上40μm以下であってもよい。平均粒子径D50が上記下限以上であることで系中で分散しやすく、また平均粒子径D50が上記上限以下であることで、塗液としたときの安定性が向上して塗工面の平滑性が向上する傾向がある。平均粒子径D50は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定により算出することができる。
【0028】
熱エネルギーの供給に伴う上記塩からエアロゾルの発生を促進する観点から、消火剤は、酸化作用を有する化合物を含んでもよい。酸化作用を有する化合物としては、塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸ストロンチウム、塩素酸アンモニウム、塩素酸マグネシウムなどの塩素酸塩が挙げられる。エアロゾル発生の促進の観点から、塩素酸カリウムが利用されてもよい。
【0029】
消火層2に含まれる消火剤の含有量は、消火層2に含まれる固形分重量を基準として、70質量%以上97質量%以下であってよく、85質量%以上92質量%以下であってもよい。消火剤の含有量が97質量%以下であることで、塩の潮解が発生しにくくなる。加えて、消火体形成用組成物の製膜性を向上できる。消火剤の含有量が70質量%以上であることで、消火層2が十分な消火能力を発揮しやすい。消火層2に含まれる固形分重量は、例えば、消火剤及びバインダの全量に相当する。
【0030】
バインダは、消火剤を成形する為に用いられる材料である。消火層2に含まれるバインダの含有量は、消火層2に含まれる固形分重量を基準として、2質量%以上20質量%以下であってよく、4質量%以上15質量%以下であってもよい。バインダの含有量が20質量%以下であることで、乾燥後塗膜の表面平滑性が向上する傾向がある。バインダの含有量が2質量%以上であることで、消火層2を塗布する際のロールtоロール塗工適性が向上しやすい。
【0031】
バインダとしては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、エチレン-プロピレン樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンコム(BR)、1,2-ポリブタジエンゴム(1,2-BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPR、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等のゴム類、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル(PMVE)-無水マレイン樹脂等が挙げられる。バインダは、上記樹脂のうち一種を含んでもよいし、複数種を含んでもよい。バインダは、硬化剤成分を含んでいてもよい。性状安定性の観点から、バインダは、界面活性剤、シランカップリング剤、アンチブロッキング剤等の任意の添加剤を含んでいてもよい。
【0032】
消火装置10の柔軟性などの観点から、バインダは、ウレタン樹脂を含んでもよいし、ポリビニルブチラール樹脂及びエポキシ樹脂を含んでもよい。消火層2におけるクラック発生低減などの観点から、バインダの主成分は、ウレタン樹脂でもよい。バインダがウレタン樹脂を含む場合、ウレタン樹脂の含有量は、バインダの全量を基準として、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上又は100質量%であってよい。バインダがポリビニルブチラール樹脂及びエポキシ樹脂を含む場合、消火体11の加工性などの観点から、ポリビニルブチラール樹脂がバインダの主成分でもよい。この場合、エポキシ樹脂の含有量は、例えば、バインダの全量を基準として、5質量%以上45質量%以下である。エポキシ樹脂の含有量は、例えば、バインダの全量を基準として、8質量%以上でもよいし、15質量%以上でもよいし、20質量%以上でもよいし、40質量%以下でもよいし、30質量%以下でもよいし、25質量%以下でもよい。
【0033】
液状媒体としては、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、水溶性の溶媒が挙げられ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル類等が挙げられる。液状媒体は、上記溶媒のうち一種を含んでもよいし、複数種を含んでもよい。塩と共に用いられる観点から、液状媒体はエタノール等のアルコール系溶媒であってもよい。液状媒体の量は、特に制限されないが、消火層2の全量を基準として、30質量%以上70質量%以下とすることができる。
【0034】
消火層2は、界面活性剤、シランカップリング剤、アンチブロッキング剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤、無機充填材、流動性付与剤、防湿剤、分散剤、UV吸収剤、柔軟性付与剤、及び、触媒の少なくとも一を含むその他の成分を含んでもよい。これらの他の成分は、消火剤、バインダ、又は、液状媒体の種類等により適宜選択することができる。消火層2に含まれるその他の成分の含有量は、消火層2の全量を基準として、例えば10質量%以下である。
【0035】
消火体11の製造方法の一例は、以下の通りである。まず、基材層1の被処理面上に消火剤、バインダ及び液状媒体を含む消火体形成用組成物の塗液を塗布する。続いて、当該塗液を乾燥する。これにより、基材層1上に消火層2が形成される。消火体形成用組成物の塗布は、例えばウェットコーティング法にて行うことができる。ウェットコーティング法としては、グラビアコーティング法、コンマコーティング法、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコート法、スピンコート法、スポンジロール法、ダイコート法、刷毛による塗装等が挙げられる。
【0036】
(包装袋)
包装袋12は、長期間における消火層2の性能維持を図るために用いられる袋状の部材である。包装袋12は、例えば2枚の樹脂フィルムの4辺をヒートシールすることにより形成される。上記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂(LLDPE、PP、COP、CPP等)、ポリエステル系樹脂(PET等)、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE、EFEP、PFA、FEP、PCTFE等)、PVC、PVA、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。樹脂フィルムは、上記樹脂のうち1種から構成されてもよく、2種以上の組み合わせから構成されてもよい。これらの樹脂であれば炎の熱(一般的に700℃から900℃程度)により融解し、内部の基材層1及び消火層2を露出させやすい。また、樹脂フィルムには、上記消火剤が含まれていてもよい。樹脂として透明性のある材質を選択することで、基材層1及び消火層2を包装袋12を介して視認できる。また、包装袋12の少なくとも一部には図、模様、文字、色などが印刷されてもよい。包装袋12の美観維持の観点から、消火体11の消火層2は、バインダとしてウレタン樹脂を含んでもよい。もしくは、消火層2がポリビニルブチラール樹脂及びエポキシ樹脂を含む場合、バインダの全量に対するエポキシ樹脂の含有量の割合は、例えば20質量%以上でもよい。
【0037】
樹脂フィルムの水蒸気透過度(JIS K 7129準拠 40℃/90%RH条件下)は、消火体20の種類に応じ設計される。例えば、樹脂フィルムの水蒸気透過度は、10.0g/m2/day以下又は1.0g/m2/day以下である。水蒸気透過度の調整の観点から、樹脂フィルムには水蒸気バリア性を有する蒸着層(アルミナ蒸着層又はシリカ蒸着層)が設けられていてもよい。
【0038】
以下では、上述した一実施形態に係る消火装置10によって奏される作用効果について、説明する。まず、量産性の観点から、一実施形態に係る消火装置10に含まれる消火体11は、例えば、ロールtoロール方式にて製造されることが考慮される。このような場合、ロールから巻き出されるフィルム上に消火体形成用組成物の乾燥物が形成された後、当該フィルムに対して断裁加工が実施される。これにより、所定の寸法に切り出された基材層1及び消火層2を有する消火体11が形成される。ここで、ロールtoロール方式による消火体11の製造中、消火体11のループステフネス値によっては、上記乾燥物が形成されたフィルムのたわみが発生し得る。このようなたわみが発生した場合、上記フィルムが不適切に断裁されることがある。これにより、断裁後における消火体11の寸法精度がばらつく懸念がある。
【0039】
このような懸念に対して、一実施形態に係る消火体11のループステフネス値は、50mN以上である。これにより、例えばロールtoロール方式などのフィルムの断裁加工が実施される製造方法にて消火体11が製造される場合であっても、上記フィルムのたわみが発生しにくくなる。このため、断裁後における消火体11の寸法精度のばらつきを抑制できる。よって、量産性が高い方法にて消火体11を製造可能になる。例えば、基材層1が厚いほど基材層1自体が加熱されやすくなり、基材層1自体の溶解、基材層1自体の燃焼などが発生することがある。前者の場合、基材層1の溶解に伴う吸熱が、消火剤の熱エネルギーの伝播を阻害し、消火層2の消火性能が良好に発揮されないことがある。後者の場合、消火層2は、火元だけでなく基材層1の消火も実施し、火元の消火が不十分になる不具合が発生し得る。このような不具合の発生を抑制する観点から、基材層1の厚さに対する消火層2の厚さの割合が80%以上である。これにより、基材層1による消火層2の消火性能への悪影響を抑制できる。したがって、一実施形態によれば、消火性能を良好に発揮可能な消火体11を生産性よく製造可能である。
【0040】
一実施形態では、消火体11のループステフネス値から、基材層1のループステフネス値を引いた値は、125mN以下である。この場合、消火層2にクラックが発生しにくくなる。これにより、当該クラックの発生に伴う消火体11の美観の損失などを抑制できる。
【0041】
一実施形態では、消火層2は、消火剤及びバインダを含んでいてもよく、バインダは、ウレタン樹脂を含んでいてもよい。この場合、消火層2のクラックの発生を良好に抑制できる。よって、消火層2の厚膜化に伴う消火体11の消火性能の向上を実現できる。
【0042】
一実施形態では、消火層2は、消火剤及びバインダを含んでいてもよく、バインダは、ポリビニルブチラール樹脂及びエポキシ樹脂を含んでいてもよい。この場合、バインダにおけるポリビニルブチラール樹脂とエポキシ樹脂との比率を調整することによって、消火層2のコシの強さなどを容易に調整できる。
【0043】
一実施形態では、エポキシ樹脂の含有量は、バインダの全量を基準として、5質量%以上45質量%以下であってもよい。この場合、消火層2にクラックが発生しにくくなる。
【0044】
一実施形態では、消火装置10は、消火体11と、消火体11を封入する包装袋12を備える。この場合、消火体11が包装袋12に封入されることで、消火剤が潮解性を有する場合であっても、上記消火剤の劣化を抑制できる。このため、消火体11は、長期間にわたって消火性能を発揮可能になる。
【0045】
本開示の一側面に係る消火体は、以下の[1]~[5]に記載するとおりである。以下では、上記実施形態に基づいてこれらを詳細に説明した。
[1] 互いに積層される基材層及び消火層を有するシート状の消火体であって、当該消火体のループステフネス値が50mN以上であり、上記基材層の厚さに対する上記消火層の厚さが80%以上である、消火体。
[2] 上記消火体のループステフネス値から、上記基材層のループステフネス値を引いた値が、125mN以下である、[1]に記載の消火体。
[3] 上記消火層が、消火剤及びバインダを含み、当該バインダが、ウレタン樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の消火体。
[4] 上記消火層が、消火剤及びバインダを含み、当該バインダが、ポリビニルブチラール樹脂及びエポキシ樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の消火体。
[5] 上記ポリビニルブチラール樹脂は、上記バインダの主成分であり、上記エポキシ樹脂の含有量が、上記バインダの全量を基準として、5質量%以上45質量%以下である、[4]に記載の消火体。
【0046】
しかし、本開示の一側面は、上記実施形態、及び上記[1]~[5]に限定されない。本開示の一側面は、その要旨を逸脱しない範囲でさらなる変形が可能である。例えば、上記実施形態では、消火体は、1つの消火層を有するが、これに限られない。例えば、消火体は、2つ以上の消火層を有してもよい。この場合、例えば、基材層の両面のそれぞれに消火層が設けられてもよい。
【実施例0047】
以下、実施例に基づいて本開示を更に具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
<消火体の形成>
(実施例1)
消火剤として、まず、以下の配合比で下記材料を混合した消火体形成用組成物を調製した。
・消化剤成分:塩素酸カリウム及びクエン酸三カリウムの混合物 87質量部
・第一のバインダ:ポリビニルブチラール樹脂溶液(ポリビニルブチラール樹脂11質量部をエタノール80質量部、イソプロピルアルコール9質量部に溶解させた溶液) 73質量部
・第二のバインダ:エポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX-991L) 5質量部
・エタノール 87質量部
なお、塩素酸カリウムと、潮解性を有する塩であるクエン酸三カリウムとの混合物は、メノウ乳鉢ですり潰したのち、800番手のメッシュでフィルタリングすることで粒子径D50=12μmに調整後に混合したものである。
【0049】
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材層(商品名:E7002、東洋紡(株)製)の一方の面上に、アプリケーターを用いて、乾燥後の消火層の厚さが120μmとなるように上記消火体形成用組成物を塗布した後、75℃のオーブンにて7分間乾燥させた。これにより、基材層の面上にシート状の消火層を作製し、消火体を得た。
【0050】
(実施例2)
各種材料を以下のとおり準備したこと、並びに、乾燥後の消火層の厚さが90μmとなるように当該消火体形成用組成物を基材層の面上に塗布したこと以外は、実施例1と同様にして消火材を得た。
・消化剤成分:塩素酸カリウム及びクエン酸三カリウムの混合物 87質量部
・バインダ:エーテル系ポリウレタン樹脂溶液(エーテル系ポリウレタン樹脂100質量部をイソプロピルアルコール210質量部に溶解させた溶液) 41質量部
・エタノール 87質量部
【0051】
(実施例3)
乾燥後の消火層の厚さが120μmとなるように消火体形成用組成物を基材層の面上に塗布したこと以外は、実施例2と同様にして消火体を作製した。
【0052】
(実施例4)
乾燥後の消火層の厚さが200μmとなるように消火体形成用組成物を基材層の面上に塗布したこと以外は、実施例2と同様にして消火体を作製した。
【0053】
(実施例5)
各種材料を以下のとおり準備したこと以外は、実施例1と同様にして消火材を得た。
・消化剤成分:塩素酸カリウム及びクエン酸三カリウムの混合物 87質量部
・バインダ:ポリビニルブチラール樹脂溶液(ポリビニルブチラール樹脂11質量部をエタノール80質量部、イソプロピルアルコール9質量部に溶解させた溶液) 118質量部
・エタノール 87質量部
【0054】
(実施例6)
各種材料を以下のとおり準備したこと以外は、実施例1と同様にして消火材を得た。
・消化剤成分:塩素酸カリウム及びクエン酸三カリウムの混合物 87質量部
・第一のバインダ:ポリビニルブチラール樹脂溶液(ポリビニルブチラール樹脂11質量部をエタノール80質量部、イソプロピルアルコール9質量部に溶解させた溶液) 109質量部
・第二のバインダ:エポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX-991L) 1質量部
・エタノール 87質量部
【0055】
(実施例7)
基材層の厚さを75μmとしたこと、及び、乾燥後の消火層の厚さが60μmとなるように消火体形成用組成物を基材層の面上に塗布したこと以外は、実施例1と同様にして消火体を作製した。
【0056】
(実施例8)
基材層の厚さを75μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして消火体を作製した。
【0057】
(実施例9)
基材層の厚さを100μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして消火体を作製した。
【0058】
(比較例1)
乾燥後の消火層の厚さが60μmとなるように消火体形成用組成物を基材層の面上に塗布したこと以外は、実施例2と同様にして消火体を作製した。
【0059】
(比較例2)
各種材料を以下のとおり準備したこと以外は、実施例1と同様にして消火材を得た。
・消化剤成分:塩素酸カリウム及びクエン酸三カリウムの混合物 87質量部
・第一のバインダ:ポリビニルブチラール樹脂溶液(ポリビニルブチラール樹脂11質量部をエタノール80質量部、イソプロピルアルコール9質量部に溶解させた溶液) 36質量部
・第二のバインダ:エポキシ樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX-991L) 9質量部
・エタノール 87質量部
【0060】
(比較例3)
基材層の厚さを25μmとしたこと、及び、乾燥後の消火層の厚さが60μmとなるように消火体形成用組成物を基材層の面上に塗布したこと以外は、実施例1と同様にして消火体を作製した。
【0061】
(比較例4)
基材層の厚さを25μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして消火体を作製した。
【0062】
(比較例5)
基材層の厚さを100μmとしたこと、及び、乾燥後の消火層の厚さが60μmとなるように消火体形成用組成物を基材層の面上に塗布したこと以外は、実施例1と同様にして消火体を作製した。
【0063】
(比較例6)
基材層の厚さを250μmとしたこと、及び、乾燥後の消火層の厚さが30μmとなるように消火体形成用組成物を基材層の面上に塗布したこと以外は、実施例1と同様にして消火体を作製した。
【0064】
<ループステフネス値の測定方法>
ループステフネス値は、株式会社東洋精機製作所製のループステフネステスタDA-Sを用いて測定した。ループステフネス値は、具体的には以下のようにして測定した。まず、幅15mm×長さ200mmの試験フィルムを用意した。次に、試験フィルムの両端をチャックで固定することでループ長85mmのループを形成し、このループを圧子により圧縮速度3.3mm/分、圧縮時間3秒、圧縮距離20mmの条件で圧縮し、その時の圧子の荷重を測定した。ループステフネス値としては、この試験で測定される荷重の最大値を採用した。なお、圧縮距離とは、圧子とチャックが最も近づいた時の距離を表す。実施例1~9及び比較例1~6における基材層及び消火体について測定したループステフネス値を表1及び表2に示す。
【0065】
<消火体の封入>
シーラント層(L-LDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)樹脂、厚さ30μm)及び基材層(シリカ蒸着膜を有するPET樹脂、厚さ12μm)を備えるバリアフィルムを準備した。バリアフィルムの水蒸気透過率は0.2~0.6g/m2/day(40℃/90%RH条件下)であった。このバリアフィルムを2枚用いて、シート状の消火体を覆い、バリアフィルムの4辺をヒートシールすることで、評価サンプルである消火装置を作製した。ヒートシール条件は140℃、2秒間とした。
【0066】
上記の方法により得られた実施例1~9及び比較例1~6における評価サンプルについて、以下の評価を行った。
【0067】
<消火性試験>
縦20cm、横30cm、高さ40cmの鉄製の容器を準備した。容器の各側面には、高さ方向において天面から5cm離れた位置に、直径8.5mmの円形通気口を設けた。同様に、高さ方向において天面から12.5cm離れた位置、高さ方向において天面から20.0cm離れた位置、高さ方向において天面から27.5cm離れた位置、及び高さ方向において天面から35.0cm離れた位置のそれぞれにも、直径8.5mmの円形の通気口を容器の各側面に設けた。容器天面の中央に、面積が50mm×50mmの消火体を両面テープで貼り付けた。高さ方向における消火体との距離が8cmになるように、縦15mm、横15mm、高さ10mmの固形燃料(キャプテンスタッグ株式会社製固形燃料ファイアブロック着火剤)を1.5g分、容器内に載置した。このとき、消火体と固形燃料とが、高さ方向に重なるようにした。固形燃料に着火させた際に、消火材が固形燃料の着火後180秒以内に消火できるかについて評価をした。評価は、以下の基準に基づいて行った。評価結果を表1及び表2に示す。
A:固形燃料の着火後180秒以内に、消火体が固形燃料を消火した。
B:固形燃料の着火後180秒以内に、消火体が固形燃料を消火できなかった。
【0068】
<加工適性の評価>
任意の断裁機を用いて、5m/minの速さで送り量190mm毎に断裁を行った。評価は、以下の基準に基づいて行った。評価結果を表1及び表2に示す。
A:シート状の消火体がたわまずに搬送された。
B:断裁されたシート状の消火体がたわみ、断裁後の消火体の寸法精度にバラツキが生じた。
【0069】
<クラックの評価>
消火体を形成後、目視にて消火層表面にクラックが発生するか確認した。評価は、以下の基準に基づいて行った。評価結果を表1及び表2に示す。
A:消火層表面にクラックが未発生である。
B:消火層表面に発生したクラックの最大幅が3mm未満である。
C:消火層表面に発生したクラックの最大幅が3mm以上である。
【0070】
【0071】
【0072】
実施例1~9における消火体は、消火体のループステフネス値が50mN以上であり、かつ基材層の厚さに対する消火層の厚さの割合が80%以上であるため、消火性能及び加工適性が優れていた。実施例7において、消火体のループステフネス値から、基材層のループステフネス値を引いた値が0mNであると算出されているが、消火体のループステフネス値において基材層のループステフネス値が支配的である場合に、このような算出結果(測定誤差)が得られる。したがって、基材層を除く消火体のループステフネス値が実際に0mNであるとは限られない。また、実施例5における消火体は、消火層表面にクラックが生じているが、当該クラックが消火体の消火性能及び加工適性に及ぼす影響はほとんどなかった。
【0073】
一方で、比較例1~4における消火体は、消火体のループステフネス値が50mN未満であるため加工適性が優れず、比較例5~6における消火体は、基材層の厚さに対する消火層の厚さの割合が80%未満であるため、消火性能が優れなかった。