(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155083
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】液状有機化合物を吸収する吸液性樹脂を使用した組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08L 101/14 20060101AFI20241024BHJP
C08B 31/12 20060101ALI20241024BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20241024BHJP
B01J 20/24 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08L101/14
C08B31/12
C08K5/05
B01J20/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069496
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397077760
【氏名又は名称】ナガセヴィータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】野崎 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳
(72)【発明者】
【氏名】西本 友之
(72)【発明者】
【氏名】細見 哲也
【テーマコード(参考)】
4C090
4G066
4J002
【Fターム(参考)】
4C090AA04
4C090AA05
4C090BA16
4C090BB12
4C090BB52
4C090BB65
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4C090DA26
4C090DA27
4G066AB07D
4G066AB21D
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4G066EA05
4J002AA001
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4J002EC036
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4J002GA00
4J002GB00
4J002GC00
4J002GL00
4J002HA04
(57)【要約】
【課題】液状有機化合物を吸収する吸液性樹脂を用いた新規な組成物およびその用途を提供する。
【解決手段】本発明は、水、液状有機化合物、吸液性樹脂を含有する組成物であって、前記吸液性樹脂は、多糖類またはその部分分解物に酸性基および/またはその塩が導入された水溶性ポリマーからなるものであることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、液状有機化合物、吸液性樹脂を含有する組成物であって、前記吸液性樹脂は、多糖類またはその部分分解物に酸性基および/またはその塩が導入された水溶性ポリマーからなるものであることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記水溶性ポリマーは、酸性基と酸性基の塩とを有するものである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酸性基は、カルボキシアルキル基である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記吸液性樹脂は、前記水溶性ポリマーが架橋してなるものである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記液状有機化合物は、抗菌性、保湿性、または芳香性を有する化合物であって、吸液性樹脂に吸収されている請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
吸液性樹脂1gに対して、前記液状有機化合物が1g以上~300g以下吸収されている請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記液状有機化合物が、アルコール性化合物である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記液状有機化合物の水への溶解度が0.1g/mL以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
シート状支持体に、請求項5に記載の組成物が、塗布、担持、積層、または含浸されていることを特徴とする機能性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状有機化合物を吸収する吸液性樹脂の新規な用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙おむつ、生理用ナプキンなどにおいて、例えば、ポリアクリル酸の架橋物である吸水性樹脂が使用されている。これらの吸水性樹脂は、水を吸水するが、液状有機化合物、あるいは、液状有機化合物と水との混合物の吸水性が低い。
【0003】
例えば、液状有機化合物として、アルコールを吸収する吸収性樹脂の検討がされている。特許文献1には、アルコール吸収性樹脂形成モノマーを含む水溶液を、有機溶媒中で懸濁重合又は乳化重合により共重合させてアルコール吸収性樹脂を製造するにあたり、重合開始剤として水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤とを用いることを特徴とするアルコール吸収性樹脂の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、第三級アミノ基及び(又は)第四級アンモニウム基を有するカチオン性(メタ)アクリル系単量体とスルホン酸基を有するアニオン性(メタ)アクリル系単量体とからなり、それらのモル比が95:5~10:90の範囲にある重合性単量体を、該重合性単量体を30重量%以上飽和濃度までの濃度で含有する水性溶液中で、一分子内に重合性エチレン性不飽和結合を二個以上有する架橋剤の存在下、水溶性ないし水混和性ラジカル重合開始剤によって重合させることを特徴とする高アルコール吸収性樹脂の製造法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、第三級アミノ基及び(又は)第四級アンモニウム基を有するカチオン性(メタ)アクリル系単量体を90モル%以上含有してなる重合性単量体を、該重合性単量体を30重量%以上飽和濃度までの濃度で含有する水性溶液中で、一分子内に重合性エチレン性不飽和結合を二個以上有する架橋剤の存在下、水溶性ないし水混和性ラジカル重合開始剤によって重合させることを特徴とする高アルコール吸収性樹脂の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62-151406号公報
【特許文献2】特開平2-215815号公報
【特許文献3】特開平2-215816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、液状有機化合物を吸収する吸液性樹脂を用いた新規な組成物およびその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の組成物は、水、液状有機化合物、吸液性樹脂を含有する組成物であって、前記吸液性樹脂は、多糖類またはその部分分解物に酸性基および/またはその塩が導入された水溶性ポリマーからなるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、液状有機化合物を吸収する吸液性樹脂を用いた新規な組成物を提供できる。本発明の組成物は、液状有機化合物を含有した抗菌シート、保湿性シート、食品ドリップシートとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の組成物は、水、液状有機化合物、吸液性樹脂を含有する組成物であって、前記吸液性樹脂は、多糖類またはその部分分解物に酸性基および/またはその塩が導入された水溶性ポリマーからなるものであることを特徴とする。
【0011】
本発明で使用する吸液性樹脂は、水と液状有機化合物とを吸収するものであることが好ましい。前記吸液性樹脂は、多糖類またはその部分分解物に酸性基および/またはその塩が導入された水溶性ポリマーからなることが好ましく、澱粉またはその部分分解物に酸性基および/またはその塩が導入された水溶性ポリマーからなることが好ましい。
【0012】
以下、本発明で使用する吸液性樹脂について説明する。
【0013】
本発明で使用する吸液性樹脂は、多糖類またはその部分分解物を出発原料とする。前記多糖類は、単糖が複数結合してなる高分子化合物であり、単糖が10以上結合してなる高分子化合物であることが好ましい。前記単糖としては、例えば、キシロース、リボソース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、グルコサミンなどを挙げることができる。
【0014】
前記多糖類としては、酸性基(例えば、カルボキシル基、硫酸基またはこれらの塩)を有する酸性多糖類、塩基性基を有する塩基性多糖類、電気的に中性の中性多糖類を挙げることができる。中性多糖類としては、例えば、セルロース、タマリンドシードガム、グァーガム、ローカストビーンガム、澱粉、プルランなどを挙げることができる。酸性多糖類としては、例えば、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、ジェランガム、寒天、トラガントガムなどを挙げることができる。塩基性多糖類としては、例えば、キトサンを挙げることができる。
【0015】
本発明では、多糖類に酸性基および/またはその塩を導入する観点から、中性多糖類を使用することが好ましい。中性多糖類の構造としては、例えば、セルロース、アミロース、アミロペクチン、デキストラン、プルラン、イヌリン、ガラクタン、マンナン、キシラン、アラビナン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどを挙げることができる。
【0016】
多糖類には、1種類の単糖から構成される単純多糖、2種以上の単糖から構成される複合多糖、アミノ糖を構成糖として含むムコ多糖、ウロン酸(D-グルクロン酸)を構成糖として含むポリウロニドなどを挙げることができる。本発明で使用する吸液性樹脂は、多糖類として、単純多糖を使用したものであることが好ましい。
【0017】
前記単純多糖としては、澱粉、デキストリン、グリコーゲン、セルロース、イヌリン、キシラン、マンナン、ガラクタンなどを挙げることができる。
【0018】
本発明では、多糖類として、単純多糖であって中性多糖類に属するものを使用することが好ましく、澱粉、デキストリン、グリコーゲン、セルロース、イヌリン、キシラン、マンナン、ガラクタンを使用することがより好ましく、澱粉またはその部分分解物を使用することがさらに好ましい。澱粉は、アミロースおよびアミロペクチンを含む単純多糖である。
【0019】
<澱粉またはその部分分解物>
本発明では、多糖類として、澱粉または澱粉部分分解物を使用することが好ましい。澱粉を使用することにより、人体に安全性が高く、吸液性に優れ、さらに廃棄時の環境負荷の小さい吸液性樹脂を得ることができる。澱粉の原料は特に限定されず、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、ワキシーコーンスターチやハイアミローススターチなどのコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉などが挙げられる。澱粉部分分解物は、澱粉、即ち多数のα-グルコース分子がグルコシド結合を介して連結してなるポリマーの、一部のグルコシド結合が分解されたものであるが、分解の生じる位置や分解の態様は限定されない。吸液性樹脂の製造方法については後述するが、吸液性樹脂の製造には澱粉と澱粉部分分解物を併用してもよい。
【0020】
澱粉部分分解物を用いる場合、澱粉部分分解物の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、750万以下が好ましく、500万以下がより好ましく、450万以下がさらに好ましく、400万以下がさらにより好ましい。澱粉部分分解物の重量平均分子量の下限は特に限定されないが、5万以上が好ましく、10万以上がより好ましく、20万以上がさらに好ましい。重量平均分子量が5万未満では吸液性樹脂の吸液量が低下する傾向がある。澱粉の粘度が製造上の操作性に影響を与える場合には、用途やコストに応じ、重量平均分子量の異なる2種以上の澱粉および/または澱粉部分分解物、あるいはその他の添加剤等を併用して用いることも可能である。なお、重量平均分子量の測定法は特に限定されないが、例えば、水系サイズ排除クロマトグラフィーにより、分子量が既知のプルランにより作成した分子量と溶出時間の較正曲線に基づいて求めることができる。
【0021】
澱粉部分分解物の分散度(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に限定されないが、一般的には5以上であり、5未満では吸液性樹脂の吸液量が低下する傾向がある。分散度の上限は特に限定されない。数平均分子量の測定法は特に限定されないが、例えば、水系サイズ排除クロマトグラフィーにより、分子量が既知のプルランにより作成した分子量と溶出時間の較正曲線に基づいて求めることができる。
【0022】
澱粉またはその部分分解物の重量平均分子量と分散度は上述した通りであるが、澱粉を単独で用いる場合、ワキシーコーン、タピオカ、コーン、馬鈴薯由来の澱粉が好ましく、ワキシーコーン、タピオカ、コーン由来の澱粉がより好ましい。澱粉部分分解物を単独で用いる場合、その重量平均分子量は5万~750万が好ましく、5万~500万がより好ましく、10万~400万がさらに好ましい。また、分散度は5以上が好ましく、7以上がより好ましい。
【0023】
<水溶性ポリマー、酸性基>
本明細書でいう「水溶性ポリマー」とは、多糖類またはその部分分解物に、酸性基および/またはその塩が導入されたものを意味する。具体的には、多糖類またはその部分分解物に酸性基のみが導入されたもの、多糖類またはその部分分解物に酸性基およびその塩が導入されたもの、および、多糖類またはその部分分解物に酸性基の塩のみが導入されたものを挙げることができる。本発明の水溶性ポリマーは、多糖類またはその部分分解物に酸性基およびその塩が導入されたものであることが好ましい。なお、「酸性基および/またはその塩の導入」は、後述するように、多糖類またはその部分分解物に酸性基の塩を形成し、その塩の少なくとも一部を酸で処理することにより遊離の酸性基に変換することにより行われることが好ましい。
【0024】
酸性基としては、カルボキシアルキル基、カルボキシアルケニル基などのカルボキシ基を有する酸性基;スルホアルキル基、スルホアルケニル基などのスルホ基を有する酸性基;ホスホアルキル基、ホスホアルケニル基などのホスホ基を有する酸性基であって、それら酸性基および/またはその塩が挙げられる。
【0025】
カルボキシアルキル基はカルボキシ基で置換されたアルキル基である。カルボキシ基で置換されるアルキル基の炭素数は、1~8が好ましく、1~5がより好ましい。アルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれでもよい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基などが挙げられる。
【0026】
カルボキシアルキル基の具体例としては、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基などが挙げられる。
【0027】
カルボキシアルケニル基は、カルボキシ基で置換されたアルケニル基である。カルボキシ基で置換されるアルケニル基の炭素数は、2~8が好ましく、2~4がより好ましい。アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。アルケニル基の具体例としては、エテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基等が挙げられる。
【0028】
カルボキシアルケニル基の具体例としては、カルボキシエテニル基、カルボキシプロペニル基、カルボキシブテニル基などが挙げられる。
【0029】
スルホアルキル基は、スルホ基で置換されたアルキル基である。スルホ基で置換されるアルキル基としては、カルボキシアルキル基に関して述べたアルキル基が挙げられる。スルホアルキル基の具体例としては、スルホメチル基、スルホエチル基、スルホプロピル基などが挙げられる。
【0030】
スルホアルケニル基は、スルホ基で置換されたアルケニル基である。スルホ基で置換されるアルケニル基としては、カルボキシアルケニル基に関して述べたアルケニル基を用いることができる。スルホアルケニル基の具体例としては、スルホエテニル基、スルホプロペニル基などが挙げられる。
【0031】
ホスホアルキル基は、ホスホ基で置換されたアルキル基である。ホスホ基で置換されるアルキル基としては、カルボキシアルキル基に関して述べたアルキル基を用いることができる。ホスホアルキル基の具体例としては、ホスホメチル基、ホスホエチル基、ホスホプロピル基などが挙げられる。
【0032】
ホスホアルケニル基は、ホスホ基で置換されたアルケニル基である。ホスホ基で置換されるアルケニル基としては、カルボキシアルケニル基に関して述べたアルケニル基を用いることができる。ホスホアルケニル基の具体例としては、ホスホエテニル基、ホスホプロペニル基などが挙げられる。
【0033】
酸性基の中でも、多糖類またはその部分分解物への導入の簡便さの観点からカルボキシ基、スルホ基を有する酸性基が好ましく、カルボキシアルキル基、カルボキシアルケニル基、スルホアルキル基がより好ましく、炭素数1~5のカルボキシアルキル基がさらに好ましい。
【0034】
酸性基の塩を形成する陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオンなどを挙げることができる。これらの中でも、酸性基の塩を形成する陽イオンは、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンであることが好ましい。
【0035】
水溶性ポリマーは、多糖類またはその部分分解物に酸性基および/またはその塩が導入されていることに加えて、主鎖を構成する単糖の水酸基の水素原子が酸性基以外の官能基により置換されていてもよい。酸性基以外の官能基としては、例えばメチル基、エチル基等の炭化水素基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシエチル基等の水酸基を有する置換基などが挙げられる。酸性基以外の官能基により置換される水酸基の位置は、特に限定されないが、例えば、グルコースの場合、グルコース単位の1位、2位、3位、4位、6位のいずれであってもよいが、2位、3位、6位が好ましい。
【0036】
<水溶性ポリマーの物性>
水溶性ポリマーの分子量は特に限定されないが、水系サイズ排除クロマトグラフィー分析によるプルラン換算の重量平均分子量が、10万以上であることが好ましく、100万以上であることがより好ましく、500万以上であることがさらに好ましく、5000万以下であることが好ましく、3000万以下であることがより好ましく、2500万以下であることがさらに好ましい。前記重量平均分子量が10万未満では吸液性樹脂の吸液性能が低下する傾向があり、3000万を超えると粘度が高く製造上のハンドリング性が低下する傾向がある。なお、水系サイズ排除クロマトグラフィー分析によるプルラン換算の重量平均分子量は、水系サイズ排除クロマトグラフィーにおいて分子量が既知のプルランにより作成した分子量と溶出時間の較正曲線に基づいて求めることができる。
【0037】
水溶性ポリマーは、全酸価が50mgKOH/g以上であることが好ましく、60mgKOH/g以上であることがより好ましく、100mgKOH/g以上であることがさらに好ましく、350mgKOH/g以下であることが好ましく、300mgKOH/g以下であることがより好ましく、250mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。後述するように、水溶性ポリマーの全酸価は、水溶性ポリマーが酸性基の塩を有する場合は、これを遊離の酸へと変換して、すべての酸性基が遊離の酸性基の状態として測定した酸価を意味し、水溶性ポリマーが有する全ての酸性基の量を示す。全酸価が50mgKOH/g以上、350mgKOH/g以下であれば、水溶性ポリマーを架橋した後の吸液性樹脂において、化粧品などの液状有機化合物を含む水溶液の吸液性能が一層良好になる。
【0038】
酸性基および/またはその塩を、酸性基を有するハロアルキル基により澱粉の水酸基と反応させて導入し、水溶性ポリマーとした場合、酸性基および/またはその塩の導入量はエーテル化度によって表すこともできる。エーテル化度は、0.1~2.0であることが好ましく、0.2~1.5であることがより好ましい。エーテル化度は、灰化滴定法などにより求めることができる。また、全酸価は酸性基の導入により検出されるものであり、原料となる多糖類または多糖類の部分分解物に酸性基が含まれていない場合には、全酸価の測定により検出された酸性基は、エーテル化反応より導入されたものと等しいと考えられる。このため、原料の多糖類または多糖類の部分分解物に酸性基が存在しない場合には、簡易的に上記全酸価の数値から計算により算出してもよい。例えば、酸性基がカルボキシメチル基であり、そのすべてがナトリウム塩として中和されている場合、エーテル化度=(162×全酸価)÷(56100-80×全酸価)で算出できる。なお、この時の全酸価の単位は、mgKOH/gである。
【0039】
前記水溶性ポリマーは、酸性基と酸性基の塩とを有することが好ましい。前記酸性基は、酸性基の塩の一部を酸で処理することにより、酸性基の塩が遊離の酸性基に変換されたものであることが好ましい。酸性基の塩を形成する陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属イオンなどを挙げることができる。これらの中でも、酸性基の塩を形成する陽イオンは、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンであることが好ましい。
【0040】
前記水溶性ポリマーが酸性基と酸性基の塩とを有する場合、酸性基/酸性基の塩(モル比)は、0.02以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましく、0.04以上であることがさらに好ましく、0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.6以下であることがさらに好ましい。前記酸性基/酸性基の塩(モル比)が前記範囲内であれば、吸液性樹脂として好ましいゲル強度となるからである。
【0041】
水溶性ポリマーのフリー酸価は4mgKOH/g以上が好ましく、7mgKOH/g以上がより好ましく、60mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下がより好ましく、25mgKOH/g以下がさらに好ましい。水溶性ポリマーのフリー酸価は、水溶性ポリマーが有する遊離の酸性基のみについて測定した酸価を意味し、塩を形成している酸性基を含まない。フリー酸価が4mgKOH/g以上、60mgKOH/g以下であれば、吸液性樹脂の吸液性能が一層良好になる。
【0042】
水溶性ポリマーの分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は特に限定されないが、5~110が好ましく、7~70がより好ましい。分散度が、5以上、110以下であれば、吸液性樹脂の吸液性能が一層良好になる。水溶性ポリマーの数平均分子量は水系サイズ排除クロマトグラフィーにおいて分子量が既知のプルランにより作成した分子量と溶出時間の較正曲線に基づいて求めることができる。
【0043】
<吸液性樹脂の架橋構造>
一般的に、ポリアクリル酸を主要な構成単位とする吸水性樹脂は、共有結合によるネットワーク構造を有しており、吸水により化学ゲルを形成する。これに対し、本発明で使用する吸液性樹脂は吸水により物理ゲルを形成することを特徴とする。物理ゲルは、分子鎖の熱運動や、pHやイオン強度の変化などにより架橋点が比較的容易に消失し、流動性を有するゾルに転換できるため、アルカリや酸の添加、加熱、振とうなどにより分解しやすく、廃棄時の環境負荷の低減につながる。
【0044】
物理ゲルの形成は、上記架橋点の消失によるゾルゲル転移を確認することにより確かめられる。例えば、イオン結合および/または水素結合により架橋している場合、アルカリまたは酸処理後の流動化により確かめられる。具体的には、吸液性樹脂を1%水酸化ナトリウム水溶液に終濃度5重量%となるように懸濁し60分間撹拌した後、目開き500μmの篩で篩い分けしたときに、篩上に残留する吸液性樹脂の乾燥重量が、前記水溶液に含まれる吸液性樹脂の乾燥重量の2重量%未満であるときに、吸水してなる物理ゲルがゾルに転移したと判断できる。
【0045】
より具体的には、吸液性樹脂0.5gを、1%水酸化ナトリウム水溶液9.5gに懸濁し60分間撹拌した後、約50mm×50mm角の30メッシュ金網(目開き500μm)で自然ろ過し、メッシュ上をイオン交換水で洗浄する。洗浄後、金網を120℃の送風乾燥機で2時間乾燥させる。ろ過前の金網の重量をWm1、ろ過および乾燥後の金網重量をWm2としたときに、下記式で求められる30メッシュパス残渣が2重量%未満であるときに、吸水してなる物理ゲルがゾルに転移したと判断できる。なお、目開き500μmの篩は、JISで規定された30メッシュの篩である。
30メッシュパス残渣(%)=(Wm2-Wm1)/0.5×100
30メッシュパス残渣は2重量未満が好ましく、1.5重量%未満がより好ましく、1.0重量%未満がさらに好ましく、0.5重量%未満がさらにより好ましい。
【0046】
吸液性樹脂は、前述した水溶性ポリマーの架橋物である。前記架橋は内部架橋と、任意で表面架橋からなる。ただし、吸液性樹脂は、エーテル結合またはエステル結合を介した内部架橋構造を有しないことが好ましい。さらに、吸液性樹脂は、共有結合を介した内部架橋構造を有しないことが好ましい。前記共有結合としては、エステル結合、エーテル結合の他に、炭素―炭素の共有結合や二重結合などが挙げられる。吸液性樹脂を構成する内部架橋構造として、例えば水溶性ポリマー上の酸性基と中和された酸性基とのイオン結合、水溶性ポリマーと反対の電荷を有する化合物(水溶性ポリマーの酸性基がカルボン酸の場合、カチオン基やアミノ基などの塩基性基を含む化合物)とのイオン結合、二価のアルカリ金属イオンによるイオン結合、金属イオンを介した配位結合、酸性基がカルボン酸基である場合はカルボン酸の二量化などの水素結合などが挙げられる。表面架橋の形成方法は後述する。
【0047】
吸液性樹脂は、任意で、前述した水溶性ポリマー以外の構成単位を含んでいてもよい。水溶性ポリマー以外の構成単位としては、例えば、キトサン、ポリエチレンイミン、ビニルピロリドン-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体などのアミノ基を有するポリマーまたはその塩、ジメチルアミン-エピクロロヒドリン共重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するポリマーなどの、水溶性ポリマーと反対の電荷を有する化合物が挙げられる。吸液性樹脂が水溶性ポリマー以外の構成単位を含む場合、その含有量は、主成分として用いる水溶性ポリマーとの合計量に対して90重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。
【0048】
<吸液性樹脂の物性>
以下、本発明で使用する吸液性樹脂の物性について説明する。
【0049】
<無加圧下イオン交換水の吸水率>
本発明で使用する吸液性樹脂の無加圧下の吸水倍率は、吸液性樹脂に荷重をかけないときの生理食塩水またはイオン交換水の吸収性を、実施例に記載の方法で測定して求められる。本発明で使用する吸液性樹脂は、固形物の状態で、イオン交換水の無加圧下吸水倍率が、20g/g以上であることが好ましく、50g/g以上であることがよりに好ましく、100g/g以上であることがさらに好ましく、1000g/g以下であることが好ましく、800g/g以下であることがより好ましく、500g/g以下であることがさらに好ましい。
【0050】
<無加圧下生理食塩水の吸収倍率>
また、本発明で使用する吸液性樹脂は、生理食塩水の無加圧下吸収倍率が、10g/g以上であることが好ましく、20g/g以上であることがより好ましく、70g/g以下であることが好ましく、65g/g以下であることがより好ましい。
【0051】
本発明で使用する吸液性樹脂の、イオン交換水の無加圧下吸水倍率(A)と生理食塩水の無加圧下吸収倍率(B)の比(A/B)は、7以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
【0052】
<イオン交換水の保水率>
本発明で使用する吸液性樹脂の保水率は、吸液性樹脂に150Gの荷重をかけたときの生理食塩水またはイオン交換水の吸収性を、実施例に記載の方法で測定して求められる。
本発明で使用する吸液性樹脂は、固形物の状態で、イオン交換水の保水率が、15g/g以上であることが好ましく、25g/g以上であることがより好ましく、50g/g以上であることがさらに好ましく、900g/g以下であることが好ましく、700g/g以下であることがより好ましく、450g/g以下であることがさらに好ましい。
【0053】
<生理食塩水の保水率>
また、本発明で使用する吸液性樹脂は、生理食塩水の保水量が5g/g以上であることが好ましく、10g/g以上であることがより好ましく、15g/g以上であることがさらに好ましく、60g/g以下であることが好ましい。
【0054】
<50質量%イソプロピルアルコール水溶液の吸収量>
本発明で使用する吸液性樹脂の50質量%イソプロピルアルコール水溶液の吸収量は、20g/g以上であることが好ましく、50g/g以上であることがより好ましく、100g/g以上であることがさらに好ましく、1000g/g以下であることが好ましく、750g/g以下であることがより好ましく、500g/g以下であることがさらに好ましい。前記吸液性樹脂の50質量%イソプロピルアルコール水溶液の吸収量が、前記範囲内であれば、種々の液状有機化合物を吸収可能であり、本発明の組成物が含有する液状有機化合物による機能が発揮されやすくなるからである。
【0055】
<50質量%イソプロピルアルコール水溶液の保水率>
本発明で使用する吸液性樹脂の50質量%イソプロピルアルコール水溶液の保水率は、15g/g以上であることが好ましく、40g/g以上であることがより好ましく、80g/g以上であることがさらに好ましく、900g/g以下であることが好ましく、600g/g以下であることがより好ましく、350g/g以下であることがさらに好ましい。前記吸液性樹脂の50質量%イソプロピルアルコール水溶液の保水率が、前記範囲内であれば、種々の液状有機化合物を吸収可能であり、本発明の組成物が含有する液状有機化合物による機能が発揮されやすくなるからである。
【0056】
<吸液性樹脂の製造方法>
本発明で使用する吸液性樹脂の製造方法は、例えば、
多糖類またはその部分分解物に酸性基の塩を形成する第1工程、
前記酸性基の塩の少なくとも一部を酸で処理して酸性基に変換し、酸性基および/またはその塩が導入された水溶性ポリマーを作製する第2工程、酸性基および/またはその塩が導入された水溶性ポリマーを架橋させて、吸液性樹脂を作製する第3工程とを有することが好ましい。
【0057】
多糖類またはその部分分解物に酸性基の塩のみを導入する場合は、酸性基の塩を酸に変換する前記第2工程を省略することができる。また、前記第2工程において、酸性基の塩のすべて又は一部を酸で処理して遊離の酸性基に変換し、その後、酸性基のすべて又は一部をアルカリで中和して塩にしてもよい。この工程は、酸性基の塩のカチオン種を別のカチオン種に変換する場合に有用であり、例えば、酸性基の塩がカルボン酸ナトリウム塩の場合、酸処理により酸性基の塩のすべて又は一部を遊離の酸性基に変換後、水酸化カリウムで中和することで酸性基のすべて又は一部をカリウム塩に変換することが出来る。多糖類またはその部分分解物に酸性基のみを導入する場合は、第2工程において、酸性基の塩のすべてを酸で処理して遊離の酸性基に変換することが好ましい。
【0058】
本発明で使用する吸液性樹脂の別の製造方法としては、例えば、
多糖類またはその部分分解物に酸性基を形成する第1工程、
前記酸性基の少なくとも一部をアルカリで処理して酸性基の塩に変換し、酸性基および/または酸性基の塩が導入された水溶性ポリマーを作製する第2工程、酸性基および/またはその塩が導入された水溶性ポリマーを架橋させて、吸液性樹脂を作製する第3工程とを有することが好ましい。
【0059】
多糖類またはその部分分解物に酸性基のみを導入する場合は、酸性基をその塩に変換する前記第2工程を省略することができる。多糖類またはその部分分解物に酸性基の塩のみを導入する場合は、第2工程において、酸性基のすべてをアルカリで処理して酸性基の塩に変換することが好ましい。
【0060】
多糖類またはその部分分解物に酸性基の塩を形成する工程は、塩基性条件下で、多糖類またはその部分分解物と酸性基含有化合物またはその前駆体とを反応させることにより行うことが好ましい。
【0061】
以下、本発明の吸液性樹脂の製造方法について、多糖類またはその部分分解物として、澱粉またはその部分分解物を用いた態様に基づいて説明する。
【0062】
本発明で使用する吸液性樹脂の製造方法は、さらに多糖類を部分分解する工程含むことが好ましい。澱粉を部分分解する工程では、多くの場合、澱粉を構成するα-グルコース分子のα-1,4-グルコシド結合が分解されるが、分解される位置や態様は限定されない。分解方法は特に限定されないが、酵素処理、酸処理、物理的破砕等を行う方法が挙げられる。これらの手法を組み合わせてもよい。酵素処理は、澱粉の糊化後に行ってもよいし、糊化と同時に行ってもよい。酵素処理を澱粉の糊化後に行う方法としては、まず、澱粉を水に懸濁し加熱することで糊化し、その後に酵素を添加して酵素反応を行う方法が挙げられる。また、酵素処理を澱粉の糊化と同時に行う方法としては、澱粉を水に懸濁し、さらに酵素を添加した混合液を、酵素が完全には失活しない温度の範囲で加熱する方法が挙げられる。この中でも、澱粉を70℃~110℃で加熱混練して糊化しながら行うことが好ましい。
【0063】
澱粉の部分分解を酵素処理により行う場合、使用する酵素は澱粉を分解できれば特に限定されず、エキソ型酵素、エンド型酵素のいずれであってもよい。酵素の具体例としては、α-アミラーゼ、アミロマルターゼ、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ、4-α-グルカノトランスフェラーゼ、4,6-α-グルカノトランスフェラーゼ、ネオプルラナーゼ、アミロプルラナーゼなどが挙げられる。これらの酵素を組み合わせて使用してもよい。酵素処理時のpHは特に限定されないが、pH5.0~pH7.0が好ましい。pHの調整は塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の添加により行うことができる。
【0064】
澱粉の部分分解を酸処理により行う場合、使用する酸は、澱粉を分解できれば特に限定されないが、具体例としては、塩酸、硫酸、シュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。酸処理時の温度は150℃~160℃が好ましい。
【0065】
澱粉の部分分解を物理的破砕により行う場合、具体的な手段としては、放射線照射、せん断、摩砕、高圧処理、超音波、熱分解、光分解、それらの組み合わせが挙げられる。
【0066】
澱粉またはその部分分解物は、グルコース単位の水酸基の水素原子が官能基により置換された誘導体(加工澱粉または化工澱粉ともいう)や漂白澱粉であってもよい。水素原子が置換される水酸基の位置はグルコース単位の1位、2位、3位、4位、6位のいずれであってもよいが、2位、3位、6位が好ましい。官能基としては、例えばメチル基、エチル基等の炭化水素基;ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシエチル基等の水酸基を有する置換基;カルボキシメチル基等のカルボキシル基を有する置換基などが挙げられる。澱粉またはその部分分解物の誘導体の例としては、食品や工業用に用いられ、いわゆる加工澱粉として知られる、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸化架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸架橋デンプン、カチオン化デンプン、尿素燐酸エステル化デンプンなどが挙げられる。また、2以上の官能基で置換されたメチルエチル化澱粉、ヒドロキシプロピルメチル化澱粉なども使用できる。これらの中でも、吸液性樹脂の特性の制御のしやすさから、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムが好ましい。
【0067】
澱粉またはその部分分解物が、グルコース単位の水酸基の水素原子が酸性基により置換された誘導体である場合は、さらに酸性基および/またはその塩を導入する工程を行うことが好ましい。
【0068】
酸性基および/またはその塩を導入する工程では、澱粉または澱粉部分分解物と酸性基含有化合物またはその前駆体とを反応させる。この反応により、澱粉または澱粉部分分解物の水酸基に酸性基および/またはその塩が導入される。酸性基含有化合物は、前述の酸性基および/またはその塩を導入できるものであれば特に限定されないが、例えば酸性基を有するハロアルキル化合物、酸性基を有するハロアルケニル化合物、酸無水物、および、これらの塩が挙げられる。ハロアルキル化合物、ハロアルケニル化合物を構成するハロゲンとしては、塩素、臭素が挙げられる。
【0069】
酸性基含有化合物の具体例としては、モノクロロ酢酸、モノブロモ酢酸、3-ブロモプロピオン酸、6-ブロモヘキサン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸、オキシ塩化リン、モノクロロ酢酸エチル、および、これらのナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。塩の具体例としては、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸カリウム、ビニルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0070】
酸性基含有化合物の前駆体としては、アクリロニトリルなどが挙げられる。アクリロニトリルを用いる方法としては、例えば、まず、塩基性条件下でアクリロニトリルを澱粉またはその部分分解物と反応させ、シアノエチル基を導入し、該シアノエチル基をアミド基へ誘導後(Synthesis;1989(12):949-950)、得られたアミドをアルカリ加水分解する方法が挙げられる。
【0071】
澱粉または澱粉部分分解物とモノクロロ酢酸との反応により、水溶性ポリマーを生成する反応の概要を式(I)に示す。
【化1】
【0072】
澱粉または澱粉部分分解物と3-ブロモプロピオン酸との反応により、水溶性ポリマーを生成する反応の概要を式(II)に示す。
【化2】
【0073】
澱粉または澱粉部分分解物と6-ブロモヘキサン酸との反応により、水溶性ポリマーを生成する反応の概要を式(III)に示す。
【化3】
【0074】
澱粉または澱粉部分分解物と無水コハク酸との反応により、水溶性ポリマーを生成する反応の概要を式(IV)に示す。
【化4】
【0075】
澱粉または澱粉部分分解物と無水マレイン酸との反応により、水溶性ポリマーを生成する反応の概要を式(V)に示す。
【化5】
【0076】
澱粉または澱粉部分分解物とビニルスルホン酸ナトリウムとの反応により、水溶性ポリマーを生成する反応の概要を式(VI)に示す。
【化6】
【0077】
式(I)~(VI)ではグルコース単位の6位の水酸基の全てに酸性基のナトリウム塩が導入された水溶性ポリマーを示しているが、酸性基が導入されない水酸基が残存していてもよい。また、塩により中和されない酸性基が存在してもよい。酸性基の導入位置は、澱粉または澱粉部分分解物に存在する水酸基であれば限定されず、1位、2位、3位、4位、6位の水酸基のいずれであってもよい。
【0078】
酸性基含有化合物としてハロアルキル化合物、ハロアルケニル化合物を用いる場合、ハロアルキル化合物、ハロアルケニル化合物1モルに対して、1モル当量~1.5モル当量のアルカリ剤を使用することが好ましい。アルカリ剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。澱粉または澱粉部分分解物に導入された酸性基は、アルカリ剤に由来するナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニアなどと塩を形成することが好ましく、このために、アルカリ剤は、ハロアルキル化合物、ハロアルケニル化合物と澱粉またはその部分分解物との反応と、ハロアルキル化合物、ハロアルケニル化合物の酸性基の中和の両方に必要となる量を使用することが好ましい。例えば、酸性基含有化合物としてクロロ酢酸を用いる場合は、アルカリ剤は、理論的には、クロロ酢酸1モルに対して2モル当量以上使用することが好ましい。クロロ酢酸ナトリウムを用いる場合は、酸性基は予め中和されているため、アルカリ剤はクロロ酢酸ナトリウム1モルに対して、1モル当量以上使用することが好ましい。
【0079】
酸性基含有化合物の使用量は、水溶性ポリマーについて目的の全酸価(エーテル化度)に応じて、任意に設定できる。通常は、澱粉または澱粉部分分解物の水酸基1モルに対して0.5モル当量~5.0モル当量が好ましく、0.5モル当量~2モル当量がより好ましい。クロロ酢酸などのハロアルキル化合物を用いて、水溶液として反応させる場合は、酸性基の導入反応とハロアルキル化合物の加水分解反応が競合するため、ハロアルキル化合物は理論上よりも過剰に必要となる。水溶液反応におけるハロアルキル化合物の使用量は理論値に対して5モル当量以下で設定することが好ましい。
【0080】
澱粉または澱粉部分分解物と酸性基含有化合物との反応温度は特に限定されないが、0℃~120℃が好ましい。反応時間は特に限定されないが、1時間~24時間が好ましい。反応は水中で行ってもよいが、水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルテール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などとの混合溶媒中で行ってもよいし、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などの親水性溶媒中に乾燥させた澱粉部分分解物の粉末を分散して行うこともできる。混合溶媒を用いる場合、水以外の溶媒の占める割合は、混合溶媒中50体積%以下であることが好ましい。反応装置としては反応釜や押出機等を用いることができる。
【0081】
酸性基含有化合物として、クロロ酢酸などのハロアルキル化合物またはその塩を用いる場合、澱粉または澱粉部分分解物との反応温度は特に限定されないが、0℃~100℃が好ましい。
【0082】
特に、ハロアルキル化合物としてクロロ酢酸またはその塩を用いる場合は、反応溶液中の水による加水分解を防ぐために、25℃~90℃で行うことが好ましい。反応時間は、原料となるハロアルキル化合物が消費されるまでの時間が好ましく、ハロアルキル化合物の安定性やプロセスの効率化のために1時間~12時間がより好ましい。反応は水中で行ってもよいが、水と、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などとの混合溶媒中で行ってもよいし、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などの親水性溶媒中に乾燥させた澱粉部分分解物の粉末を分散して行うこともできる。混合溶媒を用いる場合、水以外の溶媒の占める割合は、混合溶媒中50体積%以下であることが好ましい。反応装置としては反応釜や押出機等を用いることができる。
【0083】
また、酸性基含有化合物として酸無水物を用いる場合は、澱粉部分分解物と酸無水物を混合し、加熱するだけで反応が進行するが、反応を促進させるため、触媒として、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムやトリエチルアミン等の3級アミン類、2-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、テトラブチルアンモニウムブロマイドなどの4級アンモニウム塩、テトラブチルホスホニウムブロミドなどのホスホニウム塩を使用しても良い。これら触媒の添加量は、酸性基含有化合物1モルに対して、0.1モル当量以下が好ましい。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
反応時間は、原料となる酸無水物が消費されるまでの時間が好ましく、1時間~12時間がより好ましい。反応の終点は、酸価測定やIR測定にて判断することが出来る。反応は水中で行ってもよいが、酸無水物の加水分解や加アルコール分解を防ぐため、反応溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性溶媒が好ましい。混合溶媒を用いる場合、水以外の溶媒の占める割合は、混合溶媒中50体積%以上であることが好ましい。反応を無溶媒で行う場合は、酸無水物が溶媒の役割を果たすことが出来るため、反応温度は酸無水物の融点以上で行うのが好ましい。反応に溶媒を使用する場合は、反応温度は50℃~100℃が好ましく、70℃~90℃がさらに好ましい。反応装置としては反応釜や押出機等を用いることができる。
【0085】
澱粉または澱粉部分分解物に付加される酸性基の塩は、その一部を中和することが好ましい。中和により、塩を形成していた酸性基の一部が遊離の酸性基に変換される。例えば、上述した酸性基含有化合物としてモノクロロ酢酸を用い、アルカリ剤として水酸化ナトリウムを用いた場合、澱粉または澱粉部分分解物にカルボキシル基のナトリウム塩が付加される。これに酸を添加することにより、一部のカルボキシル基が遊離のカルボン酸に変換される。
【0086】
酸性基の塩を中和(酸処理)して、遊離の酸性基に変換する割合としては、例えば、酸性基の塩100モル%中、2モル%以上が好ましく、3モル%以上がより好ましく、80モル%以下が好ましく、70モル%以下がさらに好ましい。酸性基の塩を遊離の酸性基に変換する割合が前記範囲内であれば、好ましいゲル強度を有する吸液性樹脂が得られるからである。
【0087】
中和に使用する酸は特に限定されないが、酸性基がカルボキシル基である場合、カルボキシル基と同等以下のpKaを持つ酸が好ましく、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、ギ酸、トリクロロ酢酸などが挙げられる。スルホ基、またはホスホ基の中和には、強酸を使用することが好ましく、塩酸、硫酸などの鉱酸や強酸性イオン交換樹脂などを使用する。中和は、反応釜、押出機等の公知の装置を用いて行うことができる。酸の添加後は、中和反応のために0℃~50℃で0.2~1時間、攪拌することが好ましい。中和反応はpH6.8~7.2の条件で行うことが好ましい。
【0088】
酸性基の塩を導入する工程や、その後の中和反応(酸処理)では、酸性基含有化合物に由来するハロゲンと、アルカリ剤に由来する金属やアンモニアとの間で塩が形成されることがあるため、脱塩を行うことが好ましい。脱塩方法としては、水溶性ポリマーを水に溶解させ水溶液としたものをメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル等の親水性溶媒中へ滴下し、水溶性ポリマーを再沈殿させ、ろ過して回収し、その後、ろ過回収した水溶性ポリマーを含水メタノール(含水率70~90%程度)中に再度分散させ、撹拌後、水溶性ポリマーの粒子をろ過回収するプロセスにより洗浄する方法が挙げられる。また、脱塩方法として、親水性ポリマーの水溶液を、限外ろ過膜を有する濾過器で処理する方法が挙げられる。脱塩時の洗浄液としては、水や、水とメタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリル等の親水性有機溶媒との混合液を使用できる。脱塩は、水溶性ポリマー中の塩濃度が、1%以下となるまで実施することが好ましい。
【0089】
内部架橋構造を形成する工程では、水溶性ポリマー同士を架橋させる。架橋は、架橋剤を用いることなく、例えば酸性基の一部が遊離の酸基である水溶性ポリマーを、含水条件で加熱乾燥する方法により形成できる。加熱乾燥時の温度は50℃~150℃が好ましく、60℃~130℃がより好ましい。加熱乾燥時の気圧は特に限定されず、常圧で行うことができ、具体的には0.9気圧~1.1気圧で行うことが好ましい。乾燥方法は特に限定されず、ドラムドライヤー、スプレードライヤー、ナウターミキサー等を用いて行うことができる。
【0090】
加熱乾燥時には、水溶性ポリマーは、水に加えて親水性溶媒を含んでいてもよい。親水性溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノールおよびイソプロパノールなどの低級脂肪族アルコール類;アセトンなどのケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフランおよびメトキシ(ポリ)エチレングリコールなどのエーテル類;ε-カプロラクタムおよびN,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。全溶媒中、水以外の親水性溶媒の占める割合は溶媒の沸点により調整することが好ましく、溶媒の沸点が100℃以下の場合は、70体積%以上が好ましく、100℃を超える場合は、30体積%以下が好ましい。また、加熱乾燥を開始する時点での水溶性ポリマーは、水溶液であっても良いし、水分が1重量%以上である含水溶媒を含んだ粉末であっても良い。含水溶媒を含んだ粉末を乾燥させる場合、その乾燥開始時の粉末中のウェット率は、1質量%~85質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、55質量%~75質量%がさらに好ましい。なお、ここでいうウェット率とは、水と親水性溶媒との合計量の、粉末中の割合のことである。
【0091】
加熱乾燥により水溶性ポリマーが架橋してなる吸液性樹脂が得られる。吸液性樹脂中に水溶性ポリマーを調製する際に使用した水と親水性溶媒の残存率は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0092】
得られた吸液性樹脂は、粉砕して粒子状にすることが好ましい。粒子状にすることにより、加工性が良好になる。
【0093】
吸液性樹脂の製造時には、内部架橋に加えて表面架橋を行ってもよい。表面架橋により、吸液性樹脂の強度を向上できる。表面架橋に用いる架橋剤としては、エポキシ化合物、多価アルコール化合物、多価アミン化合物、ポリイソシアネート化合物、アルキレンカーボネート化合物、ハロエポキシ化合物、ハロヒドリン化合物、多価オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、シランカップリング剤、多価金属化合物等を挙げることができる。
【0094】
上記エポキシ化合物としては、例えば、コハク酸グリシジルエステル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等が挙げられる。
【0095】
上記多価アルコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2-ブテン-1,4-ジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等を挙げることができる。
【0096】
上記多価アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、これら多価アミン化合物の無機塩または有機塩(アジチニウム塩等)等を挙げることができる。
【0097】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等を、上記多価オキサゾリン化合物としては、例えば、1,2-エチレンビスオキサゾリン等を挙げることができる。
【0098】
上記アルキレンカーボネート化合物としては、例えば、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン等を挙げることができる。
【0099】
上記ハロエポキシ化合物としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリンやその多価アミン付加物(例、ハーキュレス社製カイメン(登録商標))等を挙げることができる。
【0100】
また、その他公知の架橋剤として、水系のカルボジイミド化合物(例えば日清紡ケミカル株式会社製カルボジライト)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤や、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物や塩化物等の多価金属化合物等も用いることができる。
【0101】
これらの中でも、エポキシ化合物が好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、コハク酸グリシジルエステルがより好ましい。
【0102】
表面架橋は、表面架橋剤を吸液性樹脂に噴霧し、円筒型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型混合機、粉砕型ニーダー等を用いて公知の方法で混合した後、架橋させることにより形成できる。噴霧、混合時には、必要に応じて界面活性剤を添加することができる。
【0103】
吸液性樹脂は、アルカリ処理により分解可能である。アルカリ処理の際には、吸液性樹脂を、好ましくはpH9.0以上、より好ましくはpH10.0以上の条件に置く。アルカリ処理により、吸液性樹脂の架橋構造やグルコシド結合が開裂して水溶性ポリマーに分解され、廃棄時の環境負荷を低減できる。
【0104】
アルカリ処理に用いるアルカリ剤は特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。アルカリ処理時の温度は特に限定されないが、例えば5~50℃の条件で行うことができる。
【0105】
<水、液状有機化合物>
本発明の組成物は、前記吸液性樹脂に加えて、水および液状有機化合物を含有する。
【0106】
前記液状有機化合物としては、ヒドロキシ基を有するアルコール性化合物が好ましい。
【0107】
前記液状有機化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコールなどの1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価のアルコール;乳酸などを挙げることができる。
【0108】
本発明の組成物は、水および液状有機化合物が、吸液性樹脂に吸収されていることが好ましく、液状有機化合物と水との混合溶媒として、吸液性樹脂に吸収されていることがより好ましい。本発明で使用する吸液性樹脂は、液状有機化合物のみを多量に吸収することは難しい。従って、例えば、吸液性樹脂に最初に水を吸収させて、次いで多量の液状有機化合物のみを吸収させる、あるいは、最初に多量の液状有機化合物のみを吸収させて、次いで水を吸収させるということは難しい。
【0109】
前記液状有機化合物は、極性溶媒であることが好ましい。水への混和性が高くなるからである。前記液状有機化合物は、任意の割合で水と混和するものであることが好ましいが、任意の割合で混和しないものも使用でき、この場合の水への溶解度(25℃)は、0.1g/mL以上であることが好ましく、0.5g/mL以上であることがより好ましく、1g/mL以上であることがさらに好ましい。
【0110】
前記液状有機化合物と水との混合溶媒中における液状有機化合物の含有率は、10質量%以上が好ましく、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましく、60質量%以下が特に好ましい。
【0111】
本発明の組成物は、前記吸液性樹脂1gに対して、前記液状有機化合物が吸収されている量は、1g以上が好ましく、3g以上がより好ましく、5g以上がさらに好ましく、300g以下が好ましく、250g以下がより好ましく、200g以下がさらに好ましい。吸液性樹脂中における液状有機化合物の含有率が前記範囲であれば、本発明の組成物が含有する液状有機化合物による機能が発揮されやすくなる。
【0112】
<本発明の組成物の用途>
本発明の組成物は、化粧品用途、衛生用品、医療用品、土木用品、食品保存用品、農業園芸用品などとして用いることができる。
【0113】
本発明の組成物は、タンパク質を含む液体の吸収および保持が可能であるため、衛生・医療用途では、尿の他、タンパク質を含む血液、経血、母乳などの吸収保持に利用できる。具体的な衛生用品としては、紙おむつ、生理用品、失禁用パッド、母乳パッド、パック用マスク、携帯トイレ、ペット用トイレ、ねこ砂などが挙げられる。医療用品としては、止血用スポンジ(医療用パット)、創傷保護材、創傷治癒材、医療廃棄物固化剤、保冷剤、ドラッグデリバリーシステム用キャリア、人工関節、湿布材などが挙げられる。
【0114】
食品保存用品としては、保冷剤、冷却ゲル、保水材、結露防止シート、ドリップ吸収剤、鮮度保持剤などが挙げられる。
【0115】
土木用品としては、止水材、廃液固化剤、残土固化剤、結露防止用建築資材などが挙げられる。
【0116】
農業園芸用品としては、土壌改良剤、土壌保水材、種苗ポット、苗床、水耕栽培支持体、保肥材、肥料の徐放剤などが挙げられる。
【0117】
その他の用途としては、芳香剤、使い捨てカイロ、簡易トイレ、化粧品用途等の増粘剤等が挙げられる。
【0118】
本発明の組成物は、前記液状有機化合物として、例えば、抗菌性、保湿性、芳香性などを有する化合物を使用することにより、本発明の組成物に抗菌性、保湿性、芳香性などの機能を付与することができる。
【0119】
抗菌性のある液状有機化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、3級ブタノール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、べンジルアルコール、フェニルエタノール、フェニルプロパノール、フェニルブタノール、フェニルペンタノール、フェニルヘキサノール、フェノキシエタノールなどを挙げることができる。
【0120】
保湿性のある液状有機化合物としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、3-メチル-1,3-ブタンジオール(イソプロピレングリコール)、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコールなどを挙げることができる。
【0121】
本発明の組成物は、化粧品用途に好適に使用できる。化粧品には、抗菌性、保湿効果を高めるために上記のような化合物が配合される。本発明の組成物は、このような化合物と水とを吸収させて、化粧品に配合しておくことができる。
【0122】
本発明の組成物を含有する化粧品を肌に施術すると、保湿効果の高い液状有機化合物を保持することができ、保湿効果を高めることができる。
【0123】
前記化粧品の具体例としては、乳液、クリーム、化粧水(ローション)、パック、洗浄剤、メーキャップ化粧料、頭皮・毛髪用品、分散液、軟膏、液剤、エアゾール、貼付剤、パップ剤、リニメント剤、オイル、リップ、口紅、ファンデーション、アイライナー、頬紅、マスカラ、アイシャドー、石けん(ハンドソープ、ボディソープ、洗顔料)等のいずれの剤形であってもよい。
【0124】
本発明の組成物は、例えば、支持体に塗布し、支持体に積層し、支持体に担持させ、あるいは、支持体に含浸させて使用することができる。
【0125】
前記支持体としては、例えば、紙、織物または編物などの布帛、不織布、シート、フィルム、多孔質体などを挙げることができる。前記支持体の形状は、特に限定されないが、シート状であることが好ましい。シート状支持体としては、例えば、紙、織物または編物などの布帛、不織布、シート、フィルム、多孔質シートなどを挙げることができる。
【0126】
なお、一般的に「フィルム」とは、長さおよび幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JIS K6900)。例えば、厚さに関して言えば、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称することがある。本発明では、特段に定義をしない限り、「シート」には、「フィルム」を含むものとする。
【0127】
前記シート状支持体の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜厚みを設定して良い。例えば、0.1mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましく、50mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましい。
【0128】
シートまたはフィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリ(メタ)アクリレート;ポリスチレン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン等のポリオレフィン;ポリフェニレンサルファイド;ポリイミド;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリウレタン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0129】
紙からなる支持体としては、クレープ紙、吸収紙、薄葉紙、衛生用紙などで、植物繊維(例えば、パルプ)を主原料とした紙が挙げられる。具体的にはティッシュが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0130】
前記織物や編物を構成する繊維としては、天然繊維、合成繊維のいずれであってもよい。前記天然繊維としては、例えば、綿、麻などの植物性繊維、絹、羊毛その他の獣毛などの動物性繊維などを挙げることができる。合成繊維としては、例えば、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などが挙げられる。
【0131】
前記不織布としては、例えば、ポイントボンド不織布やエアスルー不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布を挙げることができる。これらの不織布を形成する繊維としては、例えば、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等の疎水性繊維;表面を界面活性剤により親水化処理した疎水性繊維が挙げられる。
【0132】
多孔質体としては、例えば、多孔質シートや多孔質無機材料などを挙げることができる。
【0133】
多孔質シートとしては、細孔を有するシートであれば特に限定されず、細孔が連続して形成されたシート、細孔が非連続に形成されたシートなどを挙げることができる。多孔質シートを形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリ(メタ)アクリレート;ポリスチレン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン等のポリオレフィン;ポリフェニレンサルファイド;ポリイミド;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリウレタンを挙げることができる。
【0134】
多孔質シートを作製する方法としては、バルーン発泡法、化学発泡法、超臨界二酸化炭素射出成型法、塩抽出法、溶剤除去法などが挙げられる。前記バルーン発泡法では、樹脂組成物にマイクロバルーンを含有させ、加熱によりマイクロバルーンを膨張させて、発泡させる。前記化学発泡法では、樹脂組成物に発泡剤(例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p-トルエンスルホニルヒドラジン、p-オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)など)や発泡助剤を含有させ、化学反応により気体(炭酸ガス、窒素ガスなど)を発生させて発泡させる。前記超臨界二酸化炭素射出成型では、高圧力下で超臨界状態にある二酸化炭素を樹脂組成物に含侵させ、この樹脂組成物を常圧下に射出し、二酸化炭素を気化させて発泡させる。前記塩抽出法では、樹脂組成物に易溶解性塩(ホウ酸、塩化カルシウムなど)を含有させ、成形後に塩を溶解抽出して細孔を形成する。前記溶剤除去法では、樹脂組成物に溶剤を含有させ、成形後に溶剤を除去し細孔を形成する。
【0135】
多孔質シートとしては、発泡シートが好ましい。発泡シートとしては、樹脂を発泡させて形成したシートであれば、特に限定されず、ポリオレフィン発泡シート、ポリエチレン発泡シート、ポリウレタン発泡シートなどを挙げることができる。
【0136】
前記多孔質無機材料としては、珪藻土、ゼオライト、及び、パーライトなどの無機材料を挙げることができる。珪藻土は、プランクトンの一種である珪藻の遺骸が海底や湖底に体積し化石化した泥土である。珪藻土は、シリカを主成分とし、各粒子には微細気孔が多数存在する。パーライトは、黒曜石、真珠岩、松脂岩などのガラス質火山石を高熱処理することにより、火山石に含まれる水分が蒸発してできる多孔質体である。ゼオライトは、結晶性多孔質アルミノケイ酸塩である。
【0137】
本発明には、シート状支持体に本発明の組成物が塗布、担持、積層、または含浸されている機能性シートが含まれる。本発明の機能性シートは、例えば、抗菌性シート、化粧パック、食品用ドリップシートなどとして好適に使用できる。
【0138】
例えば、抗菌性のある液状有機化合物などを吸収した吸液性樹脂を含有する組成物をシート支持体に塗布、担持、積層、または含浸させた抗菌性シートは、吸液性樹脂が吸収している液状有機化合物が、汚れをふき取ることを容易にし、さらに拭き取ったあとに抗菌性を付与することができる。
【0139】
保湿効果のある液状有機化合物と水とを吸収した吸液性樹脂を含有する組成物をシート状支持体に塗布、担持、積層、または含浸させた化粧パックは、吸液性樹脂が吸収している保湿性液状有機化合物と水とが、肌への保湿効果を高める。
【0140】
抗菌性のある液状有機化合物と水とを吸収した吸液性樹脂を含有する組成物をシート支持体に担持させた食品用ドリップシートは、吸液性樹脂が吸収している液状有機化合物が、食品を長持ちさせる効果を奏する。
【実施例0141】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」または「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」または「重量%」を意味する。
【0142】
<評価方法>
(1)水溶性ポリマーの全酸価
ここでは、酸性基としてカルボキシメチル基を有する水溶性ポリマーの全酸価測定方法を説明する。100mlビーカーに、水溶性ポリマー約0.3gを精秤し、40mlのイオン交換水で溶解させた。この水溶液を、ガラス電極(京都電子工業株式会社製C-171)を備えた電位差滴定装置(京都電子工業株式会社製AT-610)にセットした。試料が全てナトリウム塩の場合は、この段階で、電位は概ね30mV以下を示すので、電位が320mV以上となるまで、1N塩酸を添加し、水溶性ポリマー中のカルボン酸基を全てフリー酸の状態とする(塩酸過剰の状態となる)。電位が320mV以上になっていることを確認し、0.1N NaOH水溶液で中和滴定を行った。本滴定では、変曲点が2つ検出され、第一の変曲点が220mV付近に、第二の変曲点が0mV~-30mV付近に検出される。前者は試料中の過剰の塩酸の中和点であり、後者は水溶性ポリマー中のカルボン酸の中和点である。従って、全酸価は下記式1により算出される。
全酸価(mgKOH/g)=[{(Vb-Va)×0.1×fa×56.11}÷Sa]/(1-wr) (式1)
ここで、Vaは第一変曲点までに消費された0.1N NaOHの容量(ml)、Vbは第二変曲点までに消費された0.1N NaOHの容量(ml)、faは、0.1N NaOHの力価、Saは試料採取量である。wrは、後述する方法で測定した水溶性ポリマーのウェット率である。
【0143】
(2)水溶性ポリマーのエーテル化度
上記全酸価の値を用いて、下記式2で算出する。
エーテル化度=(162×TAV)÷(56100-80×TAV)(式2)
ここで、TAVは水溶性ポリマーの全酸価(単位 mgKOH/g)である。
【0144】
(3)水溶性ポリマーのフリー酸価
フリー酸価は、水溶性ポリマーの架橋を酸処理によって行った場合に定義する酸価である。実施例では酸処理後に引き続いて架橋ポリマーを製造しているため、滴定による直接的な定量は困難であるため、次の計算で算出される値をフリー酸価として定義する。酸処理では、水溶性ポリマーのカルボン酸よりも低いpKaを有する酸で処理するため、実質的には、酸処理時に添加した酸の量がフリー酸価に等しい。このため、フリー酸価を下記式3で算出する。
フリー酸価(mgKOH/g)=(Vc×N×fb×56.11)÷Sb (式3)
ここで、Vcは酸処理に使用した酸水溶液の容量(ml)、Nは酸水溶液の規定度、fbは酸水溶液の力価、Sbは、酸処理に仕込んだ水溶性ポリマーの重量(純分)である。
【0145】
(4)水溶性ポリマーのウェット率
ウェット率とは、ハロゲン水分計を用いて、乾燥温度130℃で試料を乾燥させた時の試料初期重量に対する、重量減少の割合(%)のことを言う。本実施例においては、水溶性ポリマー0.5~1.0gをメトラー・トレド株式会社製ハロゲン水分計 HC103にセットし、乾燥温度130℃、スイッチオフ基準 1mg/50秒、%MCモード(MC値=(試料初期重量―乾燥重量)÷試料初期重量×100が表示されるモード)にて測定した。表示されたMC値をウェット率とした。
【0146】
(5)吸液性樹脂の無加圧下吸水倍率(生理食塩水)
目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.0gを入れ、生理食塩水(食塩濃度0.9重量%)1,000ml中に無撹拌下で、3時間浸漬した後、10分間吊るして水切りした。ティーバッグを含めた重量(h1)を測定し次式から保水量を求めた。なお、使用した生理食塩水、及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
FSC(g/g)=(h1)-(h2)
なお、(h2)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。ここで、FSCとは、Free Swell Capacityの略称であり、自由膨潤倍率を意味するもので、無加圧下吸水倍率を指す。
【0147】
(6)吸液性樹脂の無加圧下吸水倍率(イオン交換水)
ティーバッグに測定試料0.2gを入れ、生理食塩水に代えてイオン交換水を用いた以外は、無加圧下吸水倍率(生理食塩水)と同様にして浸漬後のティーバッグを含めた重量(h1´)を測定し次式から保水量を求めた。なお、(h2´)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。
FSC(g/g)={(h1´)-(h2´)}/0.2
【0148】
(7)吸液性樹脂の保水率(生理食塩水)
上述した無加圧下吸水倍率の測定後、ティーバッグごと、遠心分離器に設置し、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の液体成分を取り除き、ティーバックを含めた重量(h3)を測定し次式から保水量を求めた。
CRC(g/g)=(h3)-(h4)
なお、(h4)は、測定試料のない場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。ここでCRCとは、Centrifuge Retention Capacityの略称であり、遠心分離保持容量を意味し、保水率を指す。
【0149】
(8)吸液性樹脂の保水率(イオン交換水)
上述した無加圧下吸水倍率の測定後、ティーバッグごと、遠心分離器に設置し、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の液体成分を取り除き、ティーバックを含めた重量(h3´)を測定し次式から保水量を求めた。
CRC(g/g)={(h3´)-(h4´)}/0.2
なお、(h4´)は、測定試料のない場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。
【0150】
(5)吸液性樹脂の無加圧下吸水倍率(混合溶媒)
目開き63μm(JIS Z8801-1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料0.2gを入れ、混合溶媒1,000ml中に無撹拌下で、1時間浸漬した後、10分間吊るして水切りした。ティーバッグを含めた重量(h1)を測定し次式から吸収率を求めた。なお、使用した混合溶媒、及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
FSC(g/g)=(h1)-(h2)
なお、(h2)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。ここで、FSCとは、Free Swell Capacityの略称であり、自由膨潤倍率を意味するもので、無加圧下吸水倍率を指す。
【0151】
(9)吸液性樹脂の保水率(混合溶媒)
上述した無加圧下吸水倍率の測定後、ティーバッグごと、遠心分離器に設置し、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の液体成分を取り除き、ティーバックを含めた重量(h3)を測定し次式から保水率を求めた。
CRC(g/g)=(h3)-(h4)
なお、(h4)は、測定試料のない場合について上記と同様の操作により計測したティーバッグの重量である。ここでCRCとは、Centrifuge Retention Capacityの略称であり、遠心分離保持容量を意味し、保水率を指す。
【0152】
<製造例>
(1)使用材料
(1-1)澱粉原料
コーンスターチ
ワキシーコーンスターチ
タピオカ
【0153】
(1-2)加水分解酵素
α-アミラーゼ(ナガセケムテックス(株)製スピターゼ(登録商標)HK/R)、12、200単位/gアミロマルターゼ:Thermus thermophilusを好気的に培養し、回収した菌体の破砕抽出液を遠心分離し、その上清を粗酵素液として用いた。粗酵素液を常法通りカラムクロマトグラフィーに供して、電気泳動的に単一にまで精製した標品を精製酵素液として用いた。
【0154】
なお、アミロマルターゼの活性は、以下の方法で測定した。10重量%マルトトリオース、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)、および酵素を含む反応液を、60℃で20分間インキュベートした。その後、100℃で10分間加熱して反応を停止した。グルコースオキシダーゼ法により反応液中のグルコース量を測定した。アミロマルターゼの単位量は、1分間に1μmolのグルコースを生成するアミロマルターゼ活性を1単位とした。
【0155】
(2)澱粉部分分解物の製造
以下の方法で、澱粉部分分解物を製造した。なお、得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は、水系サイズ排除クロマトグラフィーにおいて、分子量が既知のプルランにより作成した分子量と溶出時間の較正曲線に基づいて求めた。澱粉部分分解物の重量平均分子量と分散度を表1に示す。
【0156】
(製造例1)タピオカ澱粉由来の澱粉部分分解物
タピオカ澱粉を濃度40重量%となるように市水に懸濁後、1N水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH6.0に調整し澱粉乳を得た。この澱粉乳に、アミロマルターゼ粗酵素液を澱粉固形物1グラム当たり8.0単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下80℃で6時間反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は282万、分散度は9.82であった。
【0157】
(製造例2)タピオカ澱粉由来の澱粉部分分解物
タピオカ澱粉を濃度45重量%となるように市水に懸濁後、1N水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH6.0に調整し澱粉乳を得た。この澱粉乳に、アミロマルターゼ粗酵素液を澱粉固形物1グラム当たり8.0単位になるように添加し、室温で30分間攪拌した後、攪拌下80℃で6時間反応させ、液化澱粉を調製した。得られた澱粉部分分解物の重量平均分子量は223万、分散度は7.63であった。
【0158】
(3)水溶性ポリマーの製造(製造例3)
製造例1で製造した澱粉部分分解物の40重量%水溶液100g(澱粉部分分解物の水酸基0.74mol)を、撹拌機、温度計、冷却管を備えた500mlのセパラブルフラスコに仕込んだ。次に、48.8%の水酸化ナトリウム水溶液30.3g(0.37mol、澱粉部分分解物の水酸基1モルに対して0.50モル当量)を仕込み、60℃以下で溶液が完全に均一となるまで攪拌した。溶液が均一となったことを確認後、モノクロロ酢酸18.0g(0.19mol、澱粉部分分解物の水酸基1モルに対して0.3モル当量)をイオン交換水50gに溶解した水溶液を50~60℃で30分かけて滴下仕込みした。モノクロロ酢酸水溶液を仕込み後、温度を45~50℃に調節し、12時間攪拌した。反応の終点は、反応液をサンプリングし、0.01N硝酸銀水溶液を用いて、反応液中の塩素イオン含量を、電位差滴定にて測定し、すべてのモノクロロ酢酸が反応した際の塩素イオン含量の計算値3.4%の98%以上に到達していることを条件とした。本製造例では塩素含有量は3.4%であった。
【0159】
反応終了後、反応液をイオン交換水600gで希釈した。希釈した反応液を室温まで冷却し、5000mlのメタノール中に約30分かけて添加し、水溶性ポリマーを析出、再沈殿させた。すべての反応液を添加した後、30分攪拌を行い、メタノール中に分散している水溶性ポリマーを減圧濾過にて固液分離した。
【0160】
続いて、水溶性ポリマー中に含まれる塩化ナトリウムを除去するために、回収した水溶性ポリマーをメタノール/水が80/20(体積比)の含水メタノール850ml中に再分散させ、室温で30分攪拌、洗浄後、減圧濾過で固液分離し、水溶性ポリマーを再度回収した。回収した水溶性ポリマーの塩素含有量を0.01N硝酸銀水溶液を用いた電位差滴定で測定し、塩素含有量が1%未満となるまで、洗浄のプロセスを繰り返した。得られた水溶性ポリマーの全酸価は137mgKOH/g、全酸価から算出したエーテル化度は0.47、重量平均分子量は1,028万、分散度は12.3であった。
【0161】
(4)水溶性ポリマーの製造(製造例4)
製造例2で製造した澱粉部分分解物の45重量%水溶液100g(澱粉部分分解物の水酸基0.83mol)を、撹拌機、温度計、冷却管を備えた500mlのセパラブルフラスコに仕込んだ。次に、48.8%の水酸化ナトリウム水溶液34.0g(0.42mol、澱粉部分分解物の水酸基1モルに対して0.50モル当量)を仕込み、60℃以下で溶液が完全に均一となるまで攪拌した。溶液が均一となったことを確認後、モノクロロ酢酸19.8g(0.21mol、澱粉部分分解物の水酸基1モルに対して0.3モル当量)をイオン交換水50gに溶解した水溶液を50~60℃で30分かけて滴下仕込みした。モノクロロ酢酸水溶液を仕込み後、温度を45~50℃に調節し、12時間攪拌した。反応の終点は、反応液をサンプリングし、0.01N硝酸銀水溶液を用いて、反応液中の塩素イオン含量を、電位差滴定にて測定し、すべてのモノクロロ酢酸が反応した際の塩素イオン含量の計算値3.7%の98%以上に到達していることを条件とした。本製造例では塩素含有量は3.7%であった。
【0162】
反応終了後、反応液をイオン交換水600gで希釈した。希釈した反応液を室温まで冷却し、5000mlのメタノール中に約30分かけて添加し、水溶性ポリマーを析出、再沈殿させた。すべての反応液を添加した後、30分攪拌を行い、メタノール中に分散している水溶性ポリマーを減圧濾過にて固液分離した。
【0163】
続いて、水溶性ポリマー中に含まれる塩化ナトリウムを除去するために、回収した水溶性ポリマーをメタノール/水が80/20(体積比)の含水メタノール850ml中に再分散させ、室温で30分攪拌、洗浄後、減圧濾過で固液分離し、水溶性ポリマーを再度回収した。回収した水溶性ポリマーの塩素含有量を0.01N硝酸銀水溶液を用いた電位差滴定で測定し、塩素含有量が1%未満となるまで、洗浄のプロセスを繰り返した。得られた水溶性ポリマーの全酸価は147mgKOH/g、全酸価から算出したエーテル化度は0.54、重量平均分子量は1,041万、分散度は12.1であった。
【0164】
(5)吸液性樹脂の製造(製造例5)
製造例3で得られた水溶性ポリマー(含水メタノールのウェット品、ウェット率65%)350gを3000mlのビーカーに投入し、更にメタノール/水=80/20(体積比)の含水メタノール1500mlを加え、水溶性ポリマーを分散させた。これに、マグネティックスターラーで攪拌しながら、1N塩酸水溶液24mlをメスシリンダーで計量し、徐々に添加した。塩酸を添加した後、5分間攪拌し、減圧吸引ろ過を行い、部分的にフリー酸に中和された水溶性ポリマーを回収した。回収した水溶性ポリマーは、含水アルコールを含んだウェット結晶であった。当該ウェット結晶をバットに移し、70℃に設定した送風乾燥機に投入し、20時間乾燥して、架橋処理を行った。処理後得られた固体を乳鉢で粉砕し、目開き150μmと850μmの篩を使用して篩掛けを行い、粒径150~850μmの、吸液性樹脂の粒子を回収した。
【0165】
(6)吸液性樹脂の製造(製造例6)
製造例3で得られた水溶性ポリマー(含水メタノールのウェット品、ウェット率65%)350gを3000mlのビーカーに投入し、更にメタノール/水=80/20(体積比)の含水メタノール1500mlを加え、水溶性ポリマーを分散させた。これに、マグネティックスターラーで攪拌しながら、1N塩酸水溶液120mlをメスシリンダーで計量し、徐々に添加した。塩酸を添加した後、1時間攪拌し、減圧吸引ろ過を行い、部分的にフリー酸に中和された水溶性ポリマーを回収した。回収した水溶性ポリマーは、含水アルコールを含んだウェット結晶であった。当該ウェット結晶をバットに移し、100℃に設定した送風乾燥機に投入し、7時間乾燥して、架橋処理を行った。処理後得られた固体を乳鉢で粉砕し、目開き150μmと850μmの篩を使用して篩掛けを行い、粒径150~850μmの、吸液性樹脂の粒子を回収した。
【0166】
(7)吸液性樹脂の製造(製造例7)
水溶性ポリマーを製造例4で得られた水溶性ポリマー(含水メタノールのウェット品、ウェット率63%)350gに変更し、1N塩酸水溶液を26mlに変更した以外は製造例5と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子を回収した。
【0167】
(8)吸液性樹脂の製造(製造例8)
水溶性ポリマーを製造例4で得られた水溶性ポリマー(含水メタノールのウェット品、ウェット率63%)350gに変更し、1N塩酸水溶液を128mlに変更した以外は製造例6と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子を回収した。
【0168】
(比較製造例1)
ポリアクリル酸ナトリウムからなる吸水性樹脂の製造
アクリル酸155質量部(2.15モル部)、内部架橋剤としてペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.62質量部(0.0024モル部)、および脱イオン水340.27質量部を撹拌・混合しながら1℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を0.1ppm以下とした後、1質量%過酸化水素水溶液0.31質量部、1質量%アスコルビン酸水溶液1.16質量部および0.5質量%の2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]水溶液2.325質量部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が85℃に達した後、85±2℃で約10時間重合することにより含水ゲルを得た。次に、この含水ゲル502.27質量部をミンチ機(ROYAL社製、「12VR-400K」)で細断しながら48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液128.42質量部を添加して混合し、さらにエチレングリコールジグリシジルエーテルの1質量%水溶液3質量部を添加して混合して細断ゲルを得た。さらに細断ゲルを通気型バンド乾燥機{200℃、風速5m/秒}で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製、「OSTERIZERBLENDER」)にて粉砕した後、目開き150μmおよび710μmのふるいを用いて150μm~710μmの粒度に調整することにより、乾燥体粒子を得た。
【0169】
得られた吸液性樹脂1~4の物性について、表1に示した。
【0170】
【0171】
<液状有機化合物と水との混合溶媒の吸収試験>
液状有機化合物として抗菌性のあるイソプロピルアルコール(IPA)を用いて水との混合溶媒を調整した。また、液状有機化合物として保湿性のあるグリセリンを用いて水との混合溶媒を調整した。表1に、液状有機化合物と水との混合比率(質量比)を示した。上記で得られた吸液性樹脂1~4、および、ポリアクリル酸ナトリウムからなる吸水性樹脂(比較製造例1)について、混合溶媒の吸水率および保水率を測定した。結果を表2に併せて示した。
【0172】
【0173】
表2の結果から、本発明で使用する吸液性樹脂は、液状有機化合物と水との混合溶媒を吸液量が高いことが分かる。
【0174】
<機能性シート1>
水に、イソプロパノール50質量%を溶解させたイソプロパノール水溶液からなる抗菌性を有す水溶液(1)を調製した。パルプ40質量%と、吸液性樹脂No.1の粉末60質量%とを含有する吸水性材料3gをティッシュペーパで被覆し、吸収体を作製した。得られた吸収体を、トップシート(エアスルー不織布(目付け25g/m2・100mm×100mm))とバックシート(エアスルー不織布(目付け25g/m2・100mm×100mm))とで挟持して吸収性物品を作製した。この吸収性物品に、前記薬剤含有水溶液(1)の希釈液を70g吹き付け、乾燥機(設定温度45℃)で5分乾燥させることで抗菌性を有する機能性シート1を得た。
【0175】
機能性シート1が備える吸液性樹脂は、抗菌性を付与するイソプロパノールを含有している。例えば、テーブルの上を機能性シート1で拭き取ることにより、テーブルの上に抗菌性を付与することができる。
【0176】
<機能性シート2>
水に、グリセリン20重量%、尿素20重量%を溶解させたグリセリン・尿素水溶液からなる保湿性を有す水溶液(2)を調製した。パルプ40質量%と、吸液性樹脂No.1の粉末60質量%とを含有する吸水性材料3gをティッシュペーパで被覆し、吸収体を作製した。得られた吸収体を、トップシート(エアスルー不織布(目付け25g/m2・100mm×100mm))とバックシート(エアスルー不織布(目付け25g/m2・100mm×100mm))とで挟持して吸収性物品を作製した。この吸収性物品に、前記薬剤含有水溶液(2)の希釈液を90g吹き付け、乾燥機(設定温度45℃)で5分乾燥させることで保湿性を有する機能性シート2を得た。
【0177】
機能性シート2が備える吸液性樹脂は、保湿性を付与するグリセリンを含有している。例えば、肌に機能性シート2を貼り付けることにより、保湿して肌の乾燥を防ぐことができる。