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  • 特開-車両用制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155090
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/14 20160101AFI20241024BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20241024BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20241024BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20241024BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20241024BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60W20/14
B60K6/48 ZHV
B60K6/52
B60W10/08 900
B60L50/16
B60L7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069505
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 健二
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB15
3D202CC15
3D202CC16
3D202CC17
3D202CC52
3D202DD24
3D202FF01
3D202FF04
3D202FF13
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125CA01
5H125CB02
5H125DD15
5H125DD18
5H125DD19
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】モータジェネレータが回生トルクにより発電しながら、ドライバ要求トルクを満たしつつ、車両の挙動を適切に保つことができる車両用制御装置を提供すること。
【解決手段】HCUは、モータジェネレータで回生トルクを付与しながらエンジンのエンジントルクを付与して走行する場合に、車両の走行状況に応じて(ステップS1)、モータジェネレータの回生トルクを設定する(ステップS2、S3)。HCUは、車両の走行状況が旋回走行中である場合、モータジェネレータの回生トルクを制限する。HCUは、車両の旋回度合いが大きいほどモータジェネレータの回生トルクを小さな値に制限する。HCUは、車両の走行状況が降坂路走行中である場合、平坦路走行中と比較してモータジェネレータの回生トルクを大きくする。HCUは、車両の走行状況が登坂路走行中である場合、平坦路走行中と比較してモータジェネレータの回生トルクを小さくする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪または後輪の一方に力行トルクまたは回生トルクを付与するモータジェネレータと、
前記前輪または前記後輪の他方にエンジントルクを付与するエンジンと、を備える車両に搭載される車両用制御装置であって、
前記モータジェネレータを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記モータジェネレータで回生トルクを付与しながら、前記エンジンのエンジントルクを付与して走行する場合に、前記車両の走行状況に応じて前記モータジェネレータの回生トルクを設定することを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両の走行状況が旋回走行中である場合、前記モータジェネレータの回生トルクを制限することを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記車両の旋回度合いが大きいほど前記モータジェネレータの回生トルクを小さな値に制限することを特徴とする請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記車両の走行状況が降坂路走行中である場合、平坦路走行中と比較して前記モータジェネレータの回生トルクを大きくすることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記車両の走行状況が登坂路走行中である場合、平坦路走行中と比較して前記モータジェネレータの回生トルクを小さくすることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、後輪をエンジンで駆動し、前輪をモータジェネレータで駆動する四輪駆動可能な車両において、四輪駆動が必要となるか否かを予測する予測手段と、この予測手段によって四輪駆動が必要となると予測されたときに、四輪駆動の機能を確実に機能させるために必要なSOCを確保すべく、モータジェネレータによる回生トルクを付与してバッテリの充電を促進させる充電促進手段と、を備えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-312961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものは、車両の旋回中にモータジェネレータの回生発電を行う場合、前輪には旋回度合いに応じた横力と回生トルクの大きさに応じた前後方向力との合力が作用し、この合力が前輪のグリップの限界を超えてしまうおそれがある。このような場合、車両の挙動を適切に保つことができず、ドライバの意図通りに車両が旋回できない。
【0005】
本発明は、モータジェネレータが回生トルクにより発電しながら、ドライバ要求トルクを満たしつつ、車両の挙動を適切に保つことができる車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用制御装置は、前輪または後輪の一方に力行トルクまたは回生トルクを付与するモータジェネレータと、前記前輪または前記後輪の他方にエンジントルクを付与するエンジンと、を備える車両に搭載される車両用制御装置であって、前記モータジェネレータを制御する制御部を備え、前記制御部は、前記モータジェネレータで回生トルクを付与しながら、前記エンジンのエンジントルクを付与して走行する場合に、前記車両の走行状況に応じて前記モータジェネレータの回生トルクを設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、モータジェネレータが回生トルクにより発電しながら、ドライバ要求トルクを満たしつつ、車両の挙動を適切に保つことができる車両用制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両用制御装置を搭載する車両の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両用制御装置のトルク制限処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施例に係る車両用制御装置がトルク制限処理において参照するトルク制限値マップである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る車両用制御装置は、前輪または後輪の一方に力行トルクまたは回生トルクを付与するモータジェネレータと、前輪または後輪の他方にエンジントルクを付与するエンジンと、を備える車両に搭載される車両用制御装置であって、モータジェネレータを制御する制御部を備え、制御部は、モータジェネレータで回生トルクを付与しながら、エンジンのエンジントルクを付与して走行する場合に、車両の走行状況に応じてモータジェネレータの回生トルクを設定することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用制御装置は、モータジェネレータが回生トルクにより発電しながら、ドライバ要求トルクを満たしつつ、車両の挙動を適切に保つことができる。
【実施例0010】
以下、本発明の一実施例に係る車両用制御装置を備える車両について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、車両1は、駆動力源としてのエンジン2及びモータジェネレータ(図中、「MG」と記す)3と、トランスミッション(図中、「T/M」と記す)4と、トランスファ5と、左右の前輪6と、左右の後輪7と、を含んで構成されている。
【0012】
車両1は、エンジン2のエンジントルクを後輪7に付与するとともに、モータジェネレータ3の力行トルクまたは回生トルクを前輪6に付与して走行可能なハイブリッド車両である、いわゆる電動式四輪駆動車両である。
【0013】
エンジン2は、複数の気筒を有し、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。エンジン2には、スタータ(図中、STと記す)10と、ISG(Integrated Starter Generator)8とが連結されている。
【0014】
スタータ10は、エンジン2の図示しないフライホイールに連結されており、バッテリ81(図中、Pbバッテリと記す)およびバッテリ82(図中、Li-ionバッテリと記す)から電力が供給されることにより駆動し、エンジン2を始動する。バッテリ81は、鉛蓄電池によって構成されている。バッテリ82は、リチウムイオン蓄電池によって構成されている。
【0015】
ISG8は、図示しないベルト等の動力伝達部材を介してエンジン2のクランクシャフト2Aに連結されている。ISG8は、バッテリ81、82に接続されており、バッテリ81、82から電力が供給されることにより駆動するようになっている。
【0016】
ISG8は、エンジン2を回転駆動させる電動機の機能と、エンジン2の駆動によってクランクシャフト2Aから入力された回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。ISG8により発電された電力はバッテリ81、82に充電される。
【0017】
車両1は、電気負荷である一般負荷83および被保護負荷84を備えており、一般負荷83および被保護負荷84にはバッテリ81、82から電力が供給される。
【0018】
モータジェネレータ3は、インバータ(図1中、「INV」と記す)30を介して高電圧バッテリ31に接続されている。高電圧バッテリ31は、例えばリチウムイン電池によって構成されており、バッテリ81、82よりも高電圧のバッテリで構成される。高電圧バッテリ31には、過充電等を防止するためのBMS(Battery Management System)31Aが設けられている。
【0019】
モータジェネレータ3は、トランスファ5に接続されている。モータジェネレータ3は、高電圧バッテリ31から供給される電力によって駆動する電動機としての機能と、トランスファ5から入力される逆駆動力によって発電を行う発電機としての機能とを有する。モータジェネレータ3は、トランスファ5に限らず、前輪6に動力伝達可能に連結されていればよい。モータジェネレータ3が発電した電力は高電圧バッテリ31に充電される。
【0020】
トランスミッション4は、エンジン2から出力された回転を複数の変速段のいずれかに応じた変速比で変速してトランスファ5に出力する自動変速機によって構成されている。エンジン2とトランスミッション4との間の動力伝達経路には、クラッチ9が設けられている。クラッチ9は、エンジン2とトランスミッション4との間で動力を伝達する係合状態と、動力を遮断する解放状態とを切り替えるようになっている。
【0021】
トランスミッション4としては、変速段の切替操作とクラッチ操作とを自動で行う、AMT(Automated Manual Transmission)を用いることができる。トランスミッション4としては、AMTに限らず、多段のAT(Automatic Transmission)やCVT(Continuously Variable Transmission)、又はマニュアルトランスミッションを用いてもよい。
【0022】
トランスミッション4で成立可能な変速段としては、例えば1速段から4速段までの走行用の変速段と、後進段とがある。走行用の変速段の段数は、車両1の諸元により異なり、上述の1速段から4速段に限られるものではない。
【0023】
トランスファ5は、エンジン2の動力及びモータジェネレータ3の動力の合成トルクである駆動トルクを前輪6と後輪7とに分配するものである。この駆動トルクは、トランスミッション4を介して伝達されるエンジン2の動力と、モータジェネレータ3の動力を合成して構成されるトルクである。
【0024】
トランスファ5から前輪6に分配される駆動トルクは、フロントデファレンシャル60を介して前輪6に伝達される。トランスファ5から後輪7に分配される駆動トルクは、リヤデファレンシャル70を介して後輪7に伝達される。
【0025】
トランスファ5は、トランスミッション4の出力軸とモータジェネレータ3の出力軸とを接続する機能と、トランスミッション4の出力軸とモータジェネレータ3の出力軸とを切り離す機能とを有する。
【0026】
本実施例では、トランスファ5においてトランスミッション4の出力軸とモータジェネレータ3の出力軸とが切り離された状態で、エンジン2のエンジントルクがリヤプロペラシャフト11を介して後輪7に付与され、モータジェネレータ3のモータトルク(力行トルクまたは回生トルク)がフロントプロペラシャフト12を介して前輪6に付与され、車両1が走行する。
【0027】
車両1は、モータジェネレータ3の制御を含む車両全体の制御を担う制御部としてのHCU(Hybrid Control Unit)85と、車両1の横滑りを防止する制御を担う横滑り防止装置86と、を備えている。
【0028】
HCU85及び横滑り防止装置86は、それぞれCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0029】
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをHCU85及び横滑り防止装置86としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。
【0030】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例におけるHCU85及び横滑り防止装置86としてそれぞれ機能する。
【0031】
横滑り防止装置86には、図示しないヨーレートセンサが内蔵されている。ヨーレートセンサは、車両1のヨーレートを検出する。横滑り防止装置86は、ヨーレートおよび他の情報に基づいて左右の前輪6および後輪7に個別に制動力を付与したり、左右の前輪6および後輪7のトラクションを制御したりすることで、車両1の横滑りを防止する。
【0032】
HCU85には、横滑り防止装置86およびステアリング蛇角センサ87が接続されている。ステアリング蛇角センサ87は、ドライバが操作する操舵輪88の基部(ステアリングコラム)に設けられており、操舵輪88の蛇角を検出する。
【0033】
HCU85は、エンジン2から後輪7に付与されるエンジントルクを制御して、モータジェネレータ3が前輪6から回生トルクとして回収して発電を行っている状態で、ドライバが車両1に要求するトルク(以下、ドライバ要求トルクという)を満たしながら車両1を走行させることができる。
【0034】
この走行状況において、HCU85は、エンジン2のエンジントルクとモータジェネレータ3のモータトルク(回生トルク)との合成トルクがドライバ要求トルクを満たすように、エンジントルクおよび回生トルクを制御する。言い換えれば、HCU85は、エンジントルクから回生トルクを減算したトルクがドライバ要求トルクを満たすように、エンジントルクおよび回生トルクを制御する。
【0035】
ここで、車両1の旋回中にモータジェネレータ3の回生トルクが前輪6に作用している状況において、前輪6に作用する横力と前後方向力(回生トルクによる制動方向の力)との合力が前輪6のグリップ力の限界を超えてしまうと、車両1の旋回挙動の安定性が損なわれてしまう。したがって、車両1の走行状況に応じて回生トルクを制限することが望ましい。
【0036】
本実施例では、HCU85は、車両1の走行状況に応じてモータジェネレータ3の回生トルクを設定する。言い換えれば、HCU85は、ある走行状況の場合と他の走行状況の場合とで、回生トルクを変更する。
【0037】
HCU85は、車両1の走行状況が旋回走行中である場合、モータジェネレータ3の回生トルクを制限する。詳しくは、HCU85は、旋回走行中であるか否かを車両1のヨーレートに基づいて判定する。また、HCU85は、図3に示すトルク制限値マップを参照し、車両1のヨーレートに応じて設定されたトルク制限値に回生トルクを制限する。
【0038】
図3に示すトルク制限値マップにおいて、モータジェネレータ3のトルクの制限値であるトルク制限値が、ヨーレートに応じて定められている。トルク制限値は、正の値のトルクである力行トルクのトルク制限値と、負の値のトルクである回生トルクのトルク制限値とが、ヨーレートに応じて定められている。
【0039】
HCU85は、車両1の旋回度合いが大きいほどモータジェネレータ3の回生トルクを小さな値に制限する。HCU85は、車両1の旋回度合いをヨーレートに基づいて演算する。トルク制限値は、ヨーレートが大きいほど小さな値となるように設定されている。このため、車両1の旋回度合いが大きいほどトルク制限値が小さな値に設定され、モータジェネレータ3の回生トルクが小さな値に制限される。なお、負の値のトルクである回生トルクにおける大小は、絶対値の大小をいう。
【0040】
なお、HCU85は、車両1が旋回中か否かの判定および旋回度合いの演算を、ステアリング蛇角センサ87により検出された蛇角、または車両1の角速度または角加速度に基づいて行ってもよい。
【0041】
HCU85は、車両1の走行状況が降坂路走行中である場合、平坦路走行中と比較してモータジェネレータ3の回生トルクを大きくする。降坂路走行中におけるトルク制限値は、平坦路走行中におけるトルク制限値と比較して、大きな値に設定されている。
【0042】
HCU85は、車両1の走行状況が登坂路走行中である場合、平坦路走行中と比較してモータジェネレータ3の回生トルクを小さくする。登坂路走行中におけるトルク制限値は、平坦路走行中におけるトルク制限値と比較して、小さな値に設定されている。
【0043】
なお、HCU85は、路面摩擦が低いほど、回生トルクを小さくすることが好ましい。つまり、トルク制限値は、路面摩擦が低いほど小さな値に設定されることが好ましい。
【0044】
HCU85は、降坂路走行中は、回生トルクを大きくする代わりに、エンジントルクを低下させたり、エンジンブレーキを発生させたりしてもよい。このようにすることで、燃費を向上させることができる。
【0045】
HCU85は、降坂路走行中は、下り勾配の度合いに比例して回生トルクを大きくしてもよい。このようにすることで、モータジェネレータ3の発電量が不足することを防止できる。
【0046】
HCU85は、降坂路走行中かつ旋回走行中の場合、旋回走行中でない場合と比較して回生トルクを小さくしてもよい。このようにすることで、旋回挙動の安定性を確保することができる。
【0047】
HCU85は、登坂路走行中は、回生トルクを小さくする代わりに、エンジントルクを増加させてもよい。このようにすることで、モータジェネレータ3の発電量を維持することができる。
【0048】
HCU85は、登坂路走行中は、上り勾配の度合いに比例して回生トルクを小さくしてもよい。このようにすることで、駆動力が不足することを防止できる。
【0049】
次に、図2を参照して、トルク制限処理の流れについて説明する。図2に示す処理は、HCU85によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0050】
図2に示すように、HCU85は、横滑り防止装置86からヨーレートを取得する(ステップS1)。
【0051】
次いで、HCU85は、トルク制限値を決定する(ステップS2)。ここでは、HCU85は、図3に示すトルク制限値マップを参照し、ヨーレートに応じたトルク制限値を決定する。このトルク制限値には、力行側のトルク制限値と回生側のトルク制限値とがある。
【0052】
次いで、HCU85は、現在のモータジェネレータ3のトルクがトルク制限値以上の場合、トルクを制限し(ステップS3)、今回の動作を終了する。ステップS3では、モータジェネレータ3が力行中の場合は、力行側のトルク制限値にトルクが制限され、モータジェネレータ3が回生中の場合は、回生側のトルク制限値にトルクが制限される。
【0053】
なお、本実施例の車両1は、前輪6をモータジェネレータ3により駆動し、後輪7をエンジン2により駆動するように構成されているが、後輪7をモータジェネレータ3により駆動し、前輪6をエンジン2により駆動するように構成されていてもよい。
【0054】
また、本実施例の車両1は、前輪6が操舵輪となるように構成されているが、後輪7が操舵輪となるように構成されていてもよい。
【0055】
以上のように、本実施例に係る車両用制御装置において、HCU85は、車両1の走行状況に応じてモータジェネレータ3の回生トルクを設定する。
【0056】
これにより、車両1の走行状況に応じてモータジェネレータ3の回生トルクが設定された状態で、モータジェネレータ3が回生トルクにより発電することができる。また、エンジン2のエンジントルクとモータジェネレータ3のモータトルク(回生トルク)との合成トルクによりドライバ要求トルクを満たすことができる。また、車両1の走行状況に応じてモータジェネレータ3の回生トルクが設定されることで、前輪6が回生トルクの影響によりグリップ力の限界を超えることが抑制され、車両1の挙動を適切に保つことができる。したがって、モータジェネレータ3が回生トルクにより発電しながら、ドライバ要求トルクを満たしつつ、車両1の挙動を適切に保つことができる。
【0057】
また、本実施例に係る車両用制御装置において、HCU85は、車両1の走行状況が旋回走行中である場合、モータジェネレータ3の回生トルクを制限する。
【0058】
これにより、車両1の旋回中に前輪6の横力と前後方向力(回生トルクによる制動力)との合力がグリップ力の限界を超えないように、車両1の旋回中は回生トルクが制限されることで、モータジェネレータ3が回生トルクにより発電しながら、ドライバ要求トルクを満たしつつ、車両1の旋回挙動の安定性を適切に保つことができる。
【0059】
また、本実施例に係る車両用制御装置において、HCU85は、車両1の旋回度合いが大きいほどモータジェネレータ3の回生トルクを小さな値に制限する。
【0060】
これにより、車両1の挙動が不安定にならない程度に最大限発電可能な回生トルクによりモータジェネレータ3が発電しながら、ドライバ要求トルクを満たしつつ、車両1の旋回挙動の安定性を適切に保つことができる。また、前輪6がスリップしない最大回生トルクをモータジェネレータ3が発生することが可能となり、その上で、発電効率を高めることができる。
【0061】
また、本実施例に係る車両用制御装置において、HCU85は、車両1の走行状況が降坂路走行中である場合、平坦路走行中と比較してモータジェネレータ3の回生トルクを大きくする。
【0062】
これにより、車両1の降坂路走行中は、回生トルクによる制動力によって車両1の速度上昇を抑制した状態でモータジェネレータ3が発電しながら、ドライバ要求トルクを満たしつつ、車両挙動を適切に保つことができる。また、回生トルクが大きくされることにより発電効率を高めることができる。
【0063】
また、本実施例に係る車両用制御装置において、HCU85は、車両1の走行状況が登坂路走行中である場合、平坦路走行中と比較してモータジェネレータ3の回生トルクを小さくする。
【0064】
これにより、車両1の登坂路走行中は、平坦路よりも大きな駆動トルクが必要なため、平坦路に比べて小さい回生トルクによりモータジェネレータ3が発電することで、車両1の駆動力不足を回避でき、ドライバ要求トルクを満たすことができる。このため、車両1の駆動力不足を回避できる程度に最大限発電可能な回生トルクによりモータジェネレータ3が発電しながら、ドライバ要求トルクを満たしつつ、車両1の旋回挙動の安定性を適切に保つことができる。
【0065】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0066】
1 車両
2 エンジン
3 モータジェネレータ
6 前輪
7 後輪
85 HCU(制御部)
図1
図2
図3