(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155100
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ハルバッハ界磁子の組み立て装置及びハルバッハ界磁子の組み立て方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20241024BHJP
H02K 1/2783 20220101ALI20241024BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K1/2783
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069525
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】500567690
【氏名又は名称】三基エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519315578
【氏名又は名称】株式会社マグネイチャー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】栗原 勝広
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615PP02
5H615SS09
5H615SS10
5H615SS20
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA05
5H622CB03
(57)【要約】
【課題】ハルバッハ界磁子の組み立て効率を向上させ得るハルバッハ界磁子の組み立て装置及びハルバッハ界磁子の組み立て方法を提供する。
【解決手段】第一組み立てプッシュロッド116が+X軸方向に移動し、単位永久磁石5を界磁子ホルダ15に押し込んでいく。同時に、第二組み立てプッシュロッド216も、第一組み立てプッシュロッド116と同じ速度で-X軸方向に動作する。即ち、単位永久磁石5を界磁子ホルダ15に組み込む工程において、単位永久磁石5は長さ方向の両端が挟み込まれるように挿し込まれる。単位永久磁石5は、第一組み立てプッシュロッド116によって、駆動保持盤223に接触するまで押し込まれる。このとき、第二組み立てプッシュロッド216は、初期位置まで移動し、界磁子ホルダ15の外部に出る。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒及び内筒の間に収容空間が形成された界磁子ホルダの該収容空間内に、複数の単位永久磁石がハルバッハ配列に従って筒状に配列された界磁子を組み立てるハルバッハ界磁子の組み立て装置であって、
前記界磁子ホルダを保持するためのホルダ保持部と、
前記ホルダ保持部に保持された状態の前記界磁子ホルダを、当該界磁子ホルダの軸方向に沿って両側から挟み込むように配設された第一組み立てプッシャ及び第二組み立てプッシャと、
前記単位永久磁石を前記収容空間に配列するときに、前記単位永久磁石を挿し込み方向以外から保持するガイド部と、を備え、
前記第一組み立てプッシャの先端は、前記収容空間における前記単位永久磁石の挿入側開口部から離れた位置に位置させ、前記第二組み立てプッシャの先端は、前記収容空間の前記挿入側開口部とは反対側の端部から挿し込まれて当該収容空間を貫通し、前記第一組み立てプッシャと同軸に且つ距離を空けて対向する位置に位置させた状態で、前記ガイド部に保持された一の前記単位永久磁石を軸方向から挟み込む挿入準備動作と、
一の前記単位永久磁石を挟み込んだ状態を維持したまま、前記第一組み立てプッシャは前記収容空間に近づく方向に、前記第二組み立てプッシャは前記収容空間を抜けて前記反対側の端部側に至る方向に移動する挿入動作と、
を繰り返し行うことで、前記界磁子を組み立てるようになっていることを特徴とするハルバッハ界磁子の組み立て装置。
【請求項2】
前記第二組み立てプッシャにおける少なくとも一部は、前記単位永久磁石のうち一つを代替して前記収容空間内に配列可能且つ前記単位永久磁石の筒状の配列を維持可能な形状であることを特徴とする請求項1に記載のハルバッハ界磁子の組み立て装置。
【請求項3】
前記界磁子ホルダの内部には、あらかじめ、非磁性体で形成され、前記界磁子の前記単位永久磁石と同様に前記収容空間に配列可能な形状の複数のダミーが配列されており、
前記第二組み立てプッシャは、前記挿入準備動作によって一の前記単位永久磁石を挟み込む前に、前記挿入側開口部とは反対側の端部から前記挿入側開口部に向けて移動し、一の前記ダミーを前記界磁子ホルダから離脱させ、且つ前記第二組み立てプッシャの一部が、離脱した一の前記ダミーを代替することを特徴とする請求項2に記載のハルバッハ界磁子の組み立て装置。
【請求項4】
前記挿入準備動作において、前記第一組み立てプッシャの先端部と前記第二組み立てプッシャの先端部とは、いずれか一方の端部のみが前記単位永久磁石の端部に接触する間隔で前記単位永久磁石を挟み込み、
前記挿入動作においても、前記間隔を維持したまま前記第一組み立てプッシャ及び前記第二組み立てプッシャが移動することを特徴とする請求項1に記載のハルバッハ界磁子の組み立て装置。
【請求項5】
前記第二組み立てプッシャの先端部には、基端部側から先端部側に向かって幅が狭くなる勾配が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハルバッハ界磁子の組み立て装置。
【請求項6】
前記挿入準備動作において、前記第一組み立てプッシャと前記第二組み立てプッシャとは、前記単位永久磁石を同時に複数個挟み込み、
前記単位永久磁石を複数個挟み込んだ状態で、前記挿入動作を行うことを特徴とする請求項1に記載のハルバッハ界磁子の組み立て装置。
【請求項7】
前記第一組み立てプッシャと、前記第二組み立てプッシャと、が挟み込む複数の前記単位永久磁石は、それぞれの単位永久磁石の磁性方向が等しいことを特徴とする請求項6に記載のハルバッハ界磁子の組み立て装置。
【請求項8】
前記単位永久磁石は、非磁性体製の壁によって区画され、前記単位永久磁石の取り出し方向に沿って、一方の側に前記単位永久磁石が離脱しない幅の押し込み開口部が形成され、該押し込み開口部の反対側に前記単位永久磁石が離脱可能な幅の取り出し開口部が形成されている複数の収容室を有する磁石収容器に収容されており、
前記磁石収容器を保持するための収容器保持部と、
前記単位永久磁石の取り出し方向に沿って、前記取り出し開口部側に配設された第一収容器プッシャと、前記押し込み側開口部側に配設された第二収容器プッシャと、を備えており、
前記第二収容器プッシャの先端は、前記収容室の前記押し込み開口部に位置させ、
前記第一収容器プッシャの先端は、前記収容室における前記単位永久磁石の取り出し側開口部付近に位置させ、前記第一収容器プッシャと同軸に且つ距離を空けて対向する位置に位置させた状態で、一の前記単位永久磁石を押し出し方向の端部から挟み込む取り出し準備動作と、
一の前記単位永久磁石を挟み込んだ状態を維持したまま、前記第一収容器プッシャは前記収容室から離れる方向に、前記第二収容器プッシャは前記収容室を貫通し、前記取り出し開口部から前記第一収容器プッシャ側に移動する取り出し動作と、
を繰り返して、前記磁石収容器から前記単位永久磁石を取り出すようになっていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のハルバッハ界磁子の組み立て装置。
【請求項9】
前記取り出し動作によって、磁石収容器から取り出された前記単位永久磁石を保持し、保持した該単位永久磁石を、前記第一組み立てプッシャが前記界磁子ホルダの配列位置に押し込む位置まで移動させる磁石移載部を備えることを特徴とする請求項8に記載のハルバッハ界磁子の組み立て装置。
【請求項10】
外筒及び内筒の間に収容空間が形成された界磁子ホルダの該収容空間内に、複数の単位永久磁石がハルバッハ配列に従って筒状に配列された界磁子を組み立てるハルバッハ界磁子の組み立て方法であって、
初期状態において、前記界磁子ホルダはホルダ保持部に保持されており、
前記ホルダ保持部に保持された状態の前記界磁子ホルダを、当該界磁子ホルダの軸方向に沿って両側から第一組み立てプッシャ及び第二組み立てプッシャで挟み込み、
前記第一組み立てプッシャの先端を、前記収容空間における前記単位永久磁石の挿入側開口部から離れた位置に位置させ、前記第二組み立てプッシャの先端は、前記収容空間の前記挿入側開口部とは反対側の端部から挿し込まれて当該収容空間を貫通し、前記第一組み立てプッシャと同軸に且つ距離を空けて対向する位置に位置させた状態で、ガイド部に保持された一の前記単位永久磁石を軸方向から挟み込む挿入準備工程と、
一の前記単位永久磁石を挟み込んだ状態を維持したまま、前記第一組み立てプッシャは前記収容空間に近づく方向に、前記第二組み立てプッシャは前記収容空間を抜けて前記反対側の端部側に至る方向に移動する挿入工程と、
を繰り返し行うことで、前記界磁子を組み立てることを特徴とするハルバッハ界磁子の組み立て方法。
【請求項11】
初期状態において、前記界磁子ホルダの内部には、非磁性体で形成され、前記単位永久磁石と同様に配列可能な形状のダミーが配列されており、
前記挿入準備工程において、前記第二組み立てプッシャは、一の前記単位永久磁石を挟み込む前に、一の前記ダミーを前記界磁子ホルダから離脱させ、且つ前記第二組み立てプッシャの一部が離脱した前記一のダミーを代替することを特徴とする請求項10に記載のハルバッハ界磁子の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着磁されている単位永久磁石をハルバッハ配列に従って配列して、ハルバッハ界磁子を組み立てるための組み立て装置及び着磁されている永久磁石をハルバッハ配列に従って配列するハルバッハ界磁子の組み立て方法に係る。
【背景技術】
【0002】
回転電機(電動機(モータ)または発電機)において、磁場を高めるために、複数の単位永久磁石をハルバッハ配列という磁石配列に従って界磁子を構成する配置手法が知られている。
例えば、従来から界磁子に用いられているような、永久磁石のN極とS極とが交互に配置される構造だと、磁場が磁石配列の表側と裏側の両方に発生してしまい、磁場を有効に利用できない。これに対して、ハルバッハ配列では、永久磁石の磁極を所定角度で(例えば90°ずつ)回転させながら配列しているので、磁石配列の一方の側の磁場が弱まり、その磁石配列の他方の側では、その分磁場が強くなって、永久磁石の配列の片側に強い磁場を発生させることができる。
【0003】
また、ハルバッハ配列されている複数の単位永久磁石を有するハルバッハ界磁子には、ネオジム磁石など、極めて強い磁力を持った単位永久磁石が使われる。そのため、隣接する単位永久磁石の間に極めて強い反発力、吸引力が発生する。
【0004】
ここで、従来の回転電機に用いられているような、N極とS極とが交互に配置される界磁子であれば、着磁されていない材料を界磁子ホルダに取り付け、界磁子を組み立てた後で着磁を行うことで、磁力の影響を受けずに磁石を配列し、容易に界磁子を組み立てることができる。
【0005】
しかし、ハルバッハ界磁子は、単位永久磁石の磁極を所定角度ずつ回転させながら順に配列しなければならないため、界磁子を組み立てる前に着磁し単位永久磁石を製造する「組み立て前着磁」が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1には、磁石収容器を用いてハルバッハ界磁子を組み立てる方法が開示されている。
具体的には、上記磁石収容器は、隣り合う単位永久磁石同士の間に発生する磁力を低減させるために、単位永久磁石を収容する収容室が区画化されており、この収容室に単位永久磁石をハルバッハ配列に従った順番で収容している。
そして、単位永久磁石を収容している区画の壁(スロット)をガイドとして単位永久磁石を界磁子ホルダに挿し込むことで、ハルバッハ界磁子を組み立てる。
【0008】
しかし、上記磁石収容器は、区画を隔てる壁が形成されていることによって、単位永久磁石が、界磁子に配列されているときよりも広がって収容されている。そのため、上記の方法でハルバッハ界磁子を組み立てるときには、単位永久磁石を一つずつ配列箇所に配置し、界磁子ホルダに押し込まなければならない。
【0009】
ここで、ハルバッハ界磁子における単位永久磁石は、隙間なく、且つ円形に配置される必要がある。
しかし、単位永久磁石を押し込むときに、単位永久磁石同士の間には強い反発力及び吸引力が生じるため、単位永久磁石が自然と移動し、押し込もうとしている単位永久磁石の位置を適切な個所に合わせる工程が困難であった。また、強力な反発力を受けるため、単位永久磁石を界磁子ホルダの適切な位置まで押し込む工程も困難であった。
【0010】
以上の原因によって、人力や既存のプレス機等を用いてハルバッハ界磁子を組み立てる作業には長い時間が必要であり、組み立ての効率は極めて低くなっていた。
【0011】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、ハルバッハ界磁子の組み立て効率を向上させ得るハルバッハ界磁子の組み立て装置及びハルバッハ界磁子の組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るハルバッハ界磁子の組み立て装置は、外筒と内筒との間に円筒形の収容空間が形成されたホルダ保持部と、当該ホルダ保持部を軸方向の両端から挟み込むように配設された第一組み立てプッシャ及び第二組み立てプッシャとを備えている。
第一組み立てプッシャと、第二組み立てプッシャとは、挿入準備動作と、挿入動作とを行うことができるようになっている。
挿入準備動作とは、単位永久磁石を収容空間に配列するとき、第一組み立てプッシャの先端を収容空間における単位永久磁石の挿入側開口部から離れた位置に位置させ、第二組み立てプッシャの先端を、挿入側開口部の反対側の端部から挿し込み、収容空間を貫通して第一組み立てプッシャと同軸に、且つ距離を空けて対向する位置に移動させた状態で、一の単位永久磁石を軸方向から挟み込む動作である。
挿入動作とは、挿入準備動作によって挟み込んだ単位永久磁石を挟み込んだ状態を維持しながら、第一組み立てプッシャが収容空間に近づく方向に移動し、第二組み立てプッシャが収容空間を抜けて挿入開口部とは反対側の端部に至る方向に移動する動作である。
【0013】
また、本発明に係るハルバッハ界磁子の組み立て方法は、上記挿入準備動作を行う挿入準備工程と、上記挿入動作を行う挿入工程を繰り返すことでハルバッハ界磁子を組み立てる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハルバッハ界磁子を製造するときの生産効率を向上可能な、ハルバッハ界磁子の組み立て装置及びハルバッハ界磁子の組み立て方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】(a)は本実施形態に係る組み立て装置が組み立てる界磁子の磁性方向の一例を示す図であり、(b)は界磁子の内部構造を示す断面図である。
【
図3】本実施形態に係る単位永久磁石が収容されている界磁子ホルダを示す(a)正面図、(b)断面図及び(c)背面図である。
【
図4】本実施形態に係る組み立て装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る組み立て装置の上面図である。
【
図6】本実施形態に係る組み立て装置の第一組み立てプッシャを示す正面図である。
【
図7】(a)は、本実施形態に係る組み立て装置の第二組み立てプッシャを示す正面図であり、(b)は、第二組み立てプッシュロッドの形状を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る組み立て装置の第一収容器プッシャを示す正面図である。
【
図9】本実施形態に係る組み立て装置の第二収容器プッシャを示す正面図である。
【
図10】(a)は、本実施形態に係る組み立て装置の磁石移載部を示す正面図であり、(b)は、ハンド部の左側面図であり、(c)は磁石保持部の左側面図である。
【
図11】本実施形態に係る組み立て装置が、単位永久磁石を配列する工程において行う一回分の動作を示すフローチャートである。
【
図12】本実施形態に係る組み立て装置が行う取り出し準備動作を示す図である。
【
図13】本実施形態に係る組み立て装置が行う取り出し動作を示す図である。
【
図14】本実施形態に係る組み立て装置が行う単位永久磁石の引き抜き及びダミーの離脱動作を示す図である。
【
図15】本実施形態に係る組み立て装置が行う、単位永久磁石の受け渡し動作を示す図である。
【
図16】本実施形態に係る組み立て装置が、挿入動作を開始するときの状態を示す図である。
【
図17】本実施形態に係る組み立て装置が、挿入動作を完了したときの状態を示す図である。
【
図18】本実施形態に係る組み立て装置が行う、初期位置移動動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0017】
<回転電機の構造>
まず、本実施形態に係るハルバッハ界磁子の組み立て装置が製造するハルバッハ界磁子を備えている回転電機の一例について、三相同期電動機として構成されているハルバッハモータを例に説明する。
【0018】
図1に示すように、ハルバッハモータ1は、複数(本実施形態では32個)の単位永久磁石5を円筒状に配列した構造を含んで界磁子10が構成されるロータ2と、ロータ2の外周面に径方向で対向する6つの電機子巻線COを有するステータ3と、
ロータ2およびステータ3を収容するハウジングHOと、を備える。複数(本実施形態では6個)の電機子巻線COは、ロータ2の径方向外周面側に所定の間隔を空けて周方向に均等な間隔で配置され、電機子として構成されている。
【0019】
ロータ2の中心には、回転電機の入力軸又は出力軸となるシャフトSが同軸に固定され、シャフトSの軸方向前後に離隔して配置された図示しないシャフトフランジがロータ2の端面に固定されてハルバッハ界磁子10(以降において、単に界磁子10と呼ぶ)と一体化される。
ハウジングHOは、ハルバッハモータ1の軸方向において前側に配置されるフロントハウジングHOFと、後側に配置されるリアハウジングHORと、フロントハウジングHOFとリアハウジングHORの間に配置されるセンタハウジングHOCと、を備える。
シャフトSは、フロントハウジングHOFおよびリアハウジングHORの中心部に設けられた組み合わせ軸受4によって回転自在に支持される。シャフトSの後端部は、不図示のC型止め輪によってリアハウジングHORに保持されることで軸方向の位置が規定される。
【0020】
<界磁子の構造>
次に、
図2を参照して界磁子10について説明する。
本実施形態の界磁子10は、組み合わせたとき、内側に収容空間11が形成されるような内筒12及び外筒13を有する界磁子ホルダ15に、単位永久磁石5を円筒状に組み合わせてハルバッハ配列することで構成されており、4極のN・S磁界構造を有している。
なお、
図2において、各単位永久磁石5の端面に示す矢印は、それぞれのもつ磁性方向のイメージを示しており、矢印基端側がS極、先端側がN極である。
【0021】
ハルバッハ配列は、3の倍数に2を加えた数の何れか一つが電気角1周期の分割数とされ、電気角1周期を分割数で除した角度ずつ磁性方向が順に変更されてなる単位永久磁石5が配列されることが好ましい。この場合、すべての単位永久磁石5の磁性方向に平行な断面積形状が同一である。
【0022】
本実施形態の界磁子10では、
図2に示すように、4種類32個(P1~P32)の単位永久磁石5を、円筒状のハルバッハ配列に配置した並び状態にし、且つ界磁子での全ての磁極が、隣接する単位永久磁石5相互の境界に位置するように配列している。
【0023】
図2(b)は界磁子10を、対向するN極の単位永久磁石5を結ぶ線で切断したときの断面図である。
以下において、内筒12、及び外筒13をまとめて、界磁子ホルダ15として説明する場合がある。
なお、界磁子10を組み立てるときには、あらかじめ非磁性体で形成された、単位永久磁石と同形状のダミー5Dが配列された状態にする。
【0024】
内筒12には、軸方向と平行な向きに、円形孔12Sが形成されている。
円形孔12Sは、界磁子10の組み立てを行うときに、後述するホルダ保持部230に取り付けた界磁子ホルダ15が、意図せず回転することを防止するためのピンが挿し込まれる。
【0025】
界磁子ホルダ15の収容空間11における軸方向の端部には、単位永久磁石5が長さ方向に沿って移動可能な大きさの空間が形成される。この空間の一方は、界磁子ホルダ15が、後述するホルダ保持部230に取り付けられたときに、挿入側開口部16となる。
【0026】
単位永久磁石5は、収容空間11内に配列されたとき、隣り合う単位永久磁石5同士の軸方向の両端面が同一の平面に位置しないように、軸方向にずらして配置される。そして、図示していないが、この軸方向のずれによって単位永久磁石5同士の間に形成される凹凸に噛み合うような形状のフランジを、界磁子ホルダ15の両端に取り付けることで、界磁子10として組み立てられる。
【0027】
<磁石収容器の構造>
次に、
図3を参照して磁石収容器20について説明する。
磁石収容器20は、一の界磁子10に必要な32個の単位永久磁石5をひとまとめの「セット」にして収容する。
本実施形態に係る磁石収容器20では、単位永久磁石5を収容する二重円筒状の収容筒21と、収容筒21をその軸まわりに回転可能に載置する円形のモータ基台22と、を備えている。
【0028】
収容筒21は、単位永久磁石5を収容可能に非磁性体製の面によって区画されている複数の収容室23を有する。各収容室23の軸方向の長さは、単位永久磁石5の軸方向長さよりも長く形成されている。
また、収容筒21は、円筒状の外周壁24と、外周壁24と同軸に形成されている円筒状の内周壁25と、外周壁24と内周壁25とが対向する空間を周方向で複数の区画に分けるように径方向に沿って放射状に形成されている複数の区画壁26と、を有する。
【0029】
複数の収容室23は、界磁子10の配列に対して、拡大された相似形状の配置を有し、隣接する収容室23相互は、区画壁26によって仕切られることで離隔して配置されるようになっている。
【0030】
モータ基台22は、磁石収容器20に固定されたとき、収容室23のそれぞれに一か所ずつ開口部が配置されるように、押し込み開口部27が形成されている。なお、モータ基台22が備えられていない側には、単位永久磁石5が通過可能な大きさの取り出し側開口部28が形成されている。押し込み開口部27及び取り出し側開口部28は、本実施形態に係るハルバッハ界磁子の組み立て装置40を用いて界磁子10を組み立てるときに、磁石収容器20から単位永久磁石5を取り出すために形成されている。
【0031】
<ハルバッハ界磁子の組み立て装置の構造>
以下において、本実施形態に係るハルバッハ界磁子の組み立て装置40(以降においては、単に組み立て装置40と呼ぶ)の構造について説明する。
初めに、
図4を参照し、組み立て装置40の大まかな構造について説明する。
組み立て装置40は、動作速度等の設定や動作を開始及び停止させる信号を入力する入力部50、入力された信号に基づいて各部を動作させるための制御を行うコントロールユニット60、界磁子ホルダに単位永久磁石5を嵌め込み界磁子10を組み立てる組み立てプッシャ70、磁石収容器20から単位永久磁石5を取り出す収容器プッシャ80、収容器プッシャ80が取り出した単位永久磁石5を組み立てプッシャ70まで移動させる磁石移載部90及び組み立て装置40に異常が発生した場合などに警報を発する報知部ARを備えている。
【0032】
入力部50は、例えば通常の産業用機械に搭載されるような操作盤を備えている。
コントロールユニット60は、入力部50から送信された信号に基づき、他の構成要素の動作を制御する制御部61及びアクチュエータ等の動作に係る設定を記憶する設定記憶部62を備えている。
報知部ARは、例えば警告音を発するブザーや、警告灯を備えている。
【0033】
次に、
図5を参照して、組み立て装置40の各構成要素の配置について説明する。なお、以下の説明において、図をわかりやすくするために配管類及びダミーストレージ240は図示を省略する。
なお、以下の説明において、水平方向に平行であり、且つ組み立て装置40の左側面から右側面に向かう軸を「X軸」とし、水平方向に平行であり、且つ組み立て装置40の正面から背面に向かう軸を「Y軸」とする。また、鉛直方向に平行な軸を「Z軸」とする。
そして、X軸と平行な直線に沿い、右側面及び左側面から界磁子ホルダ15の軸方向の中央を通る仮想の直線WSに向かう場合を「+X軸方向」、仮想の直線WSから右側面及び左側面に向かう場合を「-X軸方向」、Y軸と平行な直線に沿い、組み立て装置40の背面から正面に向かう場合を「+Y軸方向」、反対に、組み立て装置40の正面から背面に向かう場合を「-Y軸方向」とする。ただし、第二組み立てプッシャ200及び第二収容器プッシャ400の説明においては、説明をわかりやすくするために、仮想の直線WSから見て左側面側に備えられている構成を基準として方向を説明する。そのため、左側面側から右側面側に向かう場合を「+X軸方向」とし、右側面側から左側面側に向かう場合を「-X軸方向」とする。
【0034】
組み立て装置40の、各構成要素が配置される基台Bの上面には、Y軸方向の中央を挟んで正面側に組み立てプッシャ70が、背面側に収容器プッシャ80が配設されている。
組み立てプッシャ70は、X軸方向の中央を挟んで右側面側に第一組み立てプッシャ100が配置され、左側面側に第二組み立てプッシャ200が配設されている。
収容器プッシャ80はX軸方向の中央を挟んで右側面側に第一収容器プッシャ300が、左側面側に第二収容器プッシャ400が配設されている。
第二組み立てプッシャ200と、第一組み立てプッシャ100との間及び第一収容器プッシャ300と、第二収容器プッシャ400との間には、磁石移載部90が配設されている。
【0035】
<第一組み立てプッシャ>
図4に示したように、第一組み立てプッシャ100は、主な構成要素として、第一プッシュロッド動作部110及びこれが取り付けられるフレームF1を備えている。
以下において、
図5及び
図6を参照して、第一組み立てプッシャ100の具体的な構造について説明する。
【0036】
図4で示した、第一プッシュロッド動作部110は、主な構成要素として、第一組み立てプッシュロッドモータ111、送りネジ112、押し板113、接続棒114(
図5にのみ図示している)、第一組み立てプッシュロッド固定板115及び第一組み立てプッシュロッド116を備えている。
第一組み立てプッシュロッドモータ111は、フレームF1の-X軸側の下部に、出力軸が-X軸方向を向き、且つフレームF1から突出するように取り付けられている。そして、第一組み立てプッシュロッドモータ111の出力軸には、モータ側プーリ111Pが固定されている。
送りネジ112は、フレームF1の上部にZ軸に沿って架け渡されX軸に平行な軸回りに回転可能に取り付けられており、-X軸側の端部がフレームF1の-X軸側の端から突出している。この突出部にはネジ側プーリ112Pが固定されている。
モータ側プーリ111Pと、ネジ側プーリ112Pとは、タイミングベルトTB1によって接続されているため、第一組み立てプッシュロッドモータ111の回転に合わせて、送りネジ112が回転する。
【0037】
送りネジ112は、ボールネジであり、ナット112Nには、その回転軸の中心を挟んで+Y軸方向及び-Y軸方向に延びる押し板113が固定されている。押し板113には、接続棒114の-X軸側の端部が、ナット112Nを挟んだ+Y軸側と-Y軸側とに、一本ずつ固定されている。接続棒114の+X軸側の端部は、第一組み立てプッシュロッド固定板115に固定されている。第一組み立てプッシュロッド固定板115には、第一組み立てプッシュロッド116が、後述するホルダ回転軸222の軸心から等距離等角度に4本固定されている。なお、第一組み立てプッシュロッド116は、界磁子ホルダ15に単位永久磁石5が配列されたときに形成される円筒とZ軸方向から見て重なる位置に配置されている。
【0038】
第一組み立てプッシュロッドモータ111が回転し、送りネジ112が回転することで、ナット112Nが+X軸方向に移動する。同時にナット112Nに固定されている押し板113も+X軸方向に移動し、接続棒114及び第一組み立てプッシュロッド固定板115が+X軸方向に移動する。そのため、第一組み立てプッシュロッド116も+X軸方向に移動する。
【0039】
第一組み立てプッシュロッド116は、+X軸方向に延びる丸棒材であるが、その先端部には、後述するガイド部231の-X軸側の端部から界磁子ホルダ15内に配列されている単位永久磁石5及びダミー5Dの第一組み立てプッシュロッド116を向く側の端部までの長さの範囲に、進入部116Aが形成されている。進入部116AはX軸に垂直な断面が、単位永久磁石5の長さ方向に垂直な断面よりも小さくなるように形成されており、界磁子ホルダ15に単位永久磁石5を押し込み配列するときに、後述するガイド部231に形成されているスリット231Aの内部に進入可能である。
【0040】
第一組み立てプッシュロッド116の-X軸側の端部には、ロードセル117が固定されている。ロードセル117は第一組み立てプッシュロッド116が単位永久磁石5を界磁子ホルダ15に押し込み配列しているときの圧力を測定する。ロードセル117が測定した圧力は、コントロールユニット60に送信され、コントロールユニット60は、受信した圧力の数値に基づき、組み立て工程における異常を検知する。
例えば、制御部61は、単位永久磁石5が組み立て途中で固着し移動しなくなった場合等に、第一組み立てプッシュロッド116に掛かる圧力が、設定記憶部62が記憶している閾値を超えたとき、報知部ARに警報を発させ、第一組み立てプッシュロッドモータ111を停止させる。
【0041】
<第二組み立てプッシャ>
図4で示したように、第二組み立てプッシャ200は、第二組み立てプッシュロッド動作部210、ホルダ回転動作部220、ホルダ保持部230、ダミーストレージ240、フレームF2及びフレームF3を備えている。
なお、フレームF2とは、界磁子ホルダ15を挟んで-X軸側の支持構造体であり、フレームF3とは、界磁子ホルダ15を挟んで+X軸側の支持構造体である。
以下において、
図5及び
図7を参照して第二組み立てプッシャの具体的な構造を説明する。
【0042】
《第二組み立てプッシュロッド動作部》
初めに、
図4で示した、第二組み立てプッシュロッド動作部210について説明する。
第二組み立てプッシュロッド動作部210は、主な構成要素として、第二組み立てプッシュロッドモータ211、送りネジ212、押し板213、接続棒214、第二組み立てプッシュロッド固定板215、第二組み立てプッシュロッド216及びこれらが取り付けられるフレームF2を備えている。
【0043】
第二組み立てプッシュロッドモータ211は、出力軸がフレームF2の-X軸側の下部から突出するように固定されている。そして、この出力軸には、モータ側プーリ211Pが固定されている。
フレームF2の上部にはX軸と平行な直線に沿って支持棒217が架け渡されており、支持棒217には、吊り固定部218が吊り下げられるように固定されている。そして、吊り固定部218には、送りネジ212の+X軸側の端部がX軸と平行な直線に沿う軸回りに回転可能に支持されている。送りネジ212の+X軸側の端部はフレームF2の+X軸側から突出しており、その端部には送りネジ側プーリ212Pが固定されている。
モータ側プーリ211Pと送りネジ側プーリ212Pとは、タイミングベルトTB2によって接続されているため、第二組み立てプッシュロッドモータ211の回転に合わせて、送りネジ212が回転する。
【0044】
送りネジ212は、ボールネジであり、ナット212Nには、その回転軸の中心を挟んで+Y軸方向及び-Y軸方向に延びる押し板213が固定されている。押し板213には、接続棒214の-X軸側の端部が、ナット212Nを挟んだ+Y軸側と-Y軸側とに、一本ずつ固定されている。接続棒214の-X軸側の端部は、第二組み立てプッシュロッド固定板215に固定されている。第二組み立てプッシュロッド固定板215には+X軸方向に突出する円筒形状のプッシュロッド固定部215Aが固定されており、プッシュロッド固定部215Aには、4本の第二組み立てプッシュロッド216が、後述するホルダ回転軸222の軸心から等距離等角度に固定されている。なお、第二組み立てプッシュロッド216は、界磁子ホルダ15に配列されている単位永久磁石5及びダミー5DとZ軸方向から見て重なるように配設されている。
【0045】
第二組み立てプッシュロッド216は+X軸方向に延びる棒状の部材であり、基端部216A(
図7(b)における左側)が、プッシュロッド固定部215Aに固定されている。また、第二組み立てプッシュロッド216の先端側は、フレームF2に固定されたプッシュロッドサポートガイド219(
図5にのみ図示している)に支持されている。プッシュロッドサポートガイド219には、第二組み立てプッシュロッド216が貫通してZ軸方向に移動可能な大きさであり、且つX軸に沿った方向から見て第二組み立てプッシュロッド216のX軸に垂直な断面形状と略等しい形状の貫通孔が形成されている。第二組み立てプッシュロッド216は、プッシュロッドサポートガイド219の貫通孔に挿し込まれることで、X軸に沿った方向にのみ移動可能になっている。
【0046】
第二組み立てプッシュロッド216における、プッシュロッド固定部215Aから+X軸側には、押し出し部216Bが形成されている。押し出し部216BはX軸に垂直な断面が、単位永久磁石5の長さ方向に垂直な断面と略同じ形状であるが、円筒状に配列されたときに、単位永久磁石5が形成する円筒よりも内周面の径が大きくなるように、径方向の幅が短く形成されている。また、押し出し部216Bの先端における外周側には、プッシュロッド固定部215Aの側から先端側に向けて、径方向の幅が狭くなる勾配216Cがつけられている。
【0047】
第二組み立てプッシュロッドモータ211が回転し、送りネジ212が回転することで、ナット212Nが+X軸方向に移動する。同時にナット212Nに固定されている押し吊り固定部218も+X軸方向に移動し、接続棒214及び第二組み立てプッシュロッド固定板215が+X軸方向に移動する。第二組み立てプッシュロッド固定板215が+X軸方向に移動することによって、第二組み立てプッシュロッド216も+X軸方向に移動する。このとき、第二組み立てプッシュロッド216は、プッシュロッドサポートガイド219によって+X軸側を支持されているため、移動方向に対するブレが軽減される。そのため、後述する挿入準備動作において、第二組み立てプッシュロッド216が、ダミー5Dの位置からずれにくくなっている。
【0048】
《ホルダ回転動作部》
ホルダ回転動作部220は、主な構成要素として、ホルダ回転用モータ221、ホルダ回転軸222、駆動保持盤223、ホルダ回転固定板224、回転固定ピン225及びこれらが取り付けられるフレームF2を備えている。
【0049】
ホルダ回転用モータ221は、フレームF2におけるX軸中央の下部に固定されており、その出力軸にはモータ側プーリ221Pが固定されている。
ホルダ回転用モータ221の上部にはフレームF2の+X軸側の端部から中央部まで架け渡されるようにホルダ回転軸222が取り付けられている。ホルダ回転軸222の一端は、フレームF2の中央から-X軸方向に突出しており、この突出部には回転軸側プーリ222Pが固定されている。
モータ側プーリ221Pと回転軸側プーリ222Pとは、タイミングベルトTB3によって接続されているため、ホルダ回転用モータ221の回転に合わせて、ホルダ回転軸222が回転する。
【0050】
ホルダ回転軸222の+X軸側の端部には、駆動保持盤223が固定されている。駆動保持盤223は、フレームF2の+X軸側の端部にX軸に平行な軸回りに回転可能に支持されており、ホルダ回転軸222の回転に合わせて回転する。
駆動保持盤223は、後述する従動保持盤232側に、単位永久磁石5の配列と等しい間隔で突き出し長さが異なる突起が備えられている。この突起は、単位永久磁石が配列されるときの、押し込み方向のストッパであり、隣り合う突起同士は、単位永久磁石5の軸方向のずれと等しい分、突き出す長さが異なる。
【0051】
回転軸側プーリ222Pの、ホルダ回転軸222に面していない側の面には、円盤形のホルダ回転固定板224が固定されており、ホルダ回転軸222の回転に合わせて回転する。ホルダ回転固定板224は、その回転中心から等距離等角度に32個の貫通穴が形成されている。
【0052】
フレームF2の中央部には回転固定ピン225が取り付けられている。回転固定ピン225はX軸と平行な直線に沿って伸縮するエアシリンダであり、ロッドが伸長したときに、ロッドの先端部がホルダ回転固定板224の貫通孔に嵌まり込む。そのため、回転固定ピン225が伸長したとき、ホルダ回転固定板224の角度が固定され、ホルダ回転軸222及び駆動保持盤223は回転しなくなる。なお、回転固定ピン225が伸長したときには、ホルダ回転用モータ221の回転にも電気的にブレーキが掛けられる。
【0053】
《ホルダ保持部》
ホルダ保持部230は、主な構成要素として、ガイド部231、従動保持盤232、界磁子台233、保持部開閉シリンダ234及びこれらが取り付けられるフレームF3を備えている。
【0054】
フレームF3は、下部に4基のキャリッジCRを備えており、キャリッジCRは、基台Bの上面に固定された2本のレールR1に嵌め込まれている。
フレームF3の上部には、ホルダ回転軸を中心として等距離等角度となる4か所にX軸と平行な直線に沿う貫通孔が形成されている。この貫通孔部分には、+X軸側に突出するようにガイド部231が4個固定されている。
ガイド部231には、単位永久磁石5をX軸と平行な直線に沿って抜き差し可能な、単位永久磁石5の長さ方向に垂直な断面形状と略同形のスリット231Aが形成されており、さらに、スリット231Aの内部に向かう方向にロッドが伸長する保持シリンダ231Sが備えられている。そのため、スリット231A内に単位永久磁石5が位置しているとき、保持シリンダ231Sが伸長すると、単位永久磁石5は押し込み方向であるX軸以外の方向から保持される。
【0055】
フレームF3の上部には、駆動保持盤223と向かい合うように従動保持盤232が備えられている。従動保持盤232は、駆動保持盤223と同形であるが、突起が形成されておらず、また、駆動部に接続されていないため外力によって駆動保持盤223と同じ軸回りに回転する。
【0056】
界磁子台233は、フレームF2とフレームF3との間に備えられているX軸に垂直な断面が皿型の部材であり、界磁子ホルダ15が駆動保持盤223及び従動保持盤232から脱落した場合に、界磁子ホルダ15が基台Bまで落下することを防止する。なお、界磁子第233は、界磁子ホルダ15の大きさに合わせて高さを変更可能である。
【0057】
保持部開閉シリンダ234は、フレームF2のX軸方向の中央下部に備えられている、+X軸方向に向かってロッドが伸長するエアシリンダであり、ロッドの先端部が連結棒235を介してフレームF3に接続されている。
保持部開閉シリンダ234が伸長するとき、同時にフレームF2の下部に固定されているキャリッジCRに圧縮空気が送られ、キャリッジCRとレールR1との間を潤滑する。そして、保持部開閉シリンダ234が伸長することでフレームF2及び従動保持盤232は駆動保持盤223から離れる。このとき、駆動保持盤223と従動保持盤232との間に、界磁子ホルダ15を配置し又は取り出すための空間が形成される。
【0058】
フレームF2の+X軸側の端部には、駆動保持盤223の外周を第二組み立てプッシュロッド216が移動可能な幅を空けて囲うように、円環状の駆動側ホルダ角度規制板236が固定されている。また、フレームF3の-X軸側の端部には、従動保持盤232の外周を囲うように円環状の従動側ホルダ角度規制板237が固定されている。駆動側ホルダ角度規制板236は+X軸側の面が、フレームF2の+X軸側端面よりも-X軸側に位置するような厚さに形成されており、従動側ホルダ角度規制板237は、-X軸側の面がフレームF3の-X軸側の端面よりも+X軸側に位置するような厚さに形成されている。
界磁子ホルダ15の軸心が、ホルダ回転軸222の軸心に沿って駆動保持盤223及び従動保持盤232によって保持されたとき、駆動側ホルダ角度規制板236及び従動側ホルダ角度規制板237は、界磁子ホルダ15と接触しない。ここで、界磁子ホルダ15の軸心が、ホルダ回転軸222と傾いて保持されようとした場合には、外筒13と駆動側ホルダ角度規制板236及び従動側ホルダ角度規制板237とが接触し、界磁子ホルダ15の角度を自動的に調整する。また、外筒13の軸心がホルダ回転軸222と傾いた場合にも、同様に角度が調整される。
【0059】
図5及び
図6においては記載を省略しているが、ダミーストレージ240は、フレームF3の-X軸側に取り付けられており、界磁子ホルダ15から離脱したダミー5Dを収容する箱である。また、例えば重量センサ等の、ダミー5Dの収容量を測定するセンサを備えている。
ダミーストレージ240が、限界までダミー5Dを収容した場合、制御部61は、組み立てプッシャ70、収容器プッシャ80及び磁石移載部90の動作を停止させ、報知部ARに警報を発させる。
【0060】
<第一収容器プッシャ>
図4及び
図5に示すように、第一収容器プッシャ300は、主な構成要素として、第一収容器プッシュロッド動作部310及びこれが取り付けられるフレームF4を備えている。
以下において、
図5及び
図8を参照して、第一収容器プッシャ300の具体的な構造について説明する。
【0061】
第一収容器プッシュロッド動作部310は、主な構成要素として、第一収容器プッシュロッドモータ311、送りネジ312、押し板313、接続棒314、第一収容器プッシュロッド固定板315及び第一収容器プッシュロッド316を備えている。
第一収容器プッシュロッドモータ311は、フレームF4の-X軸側の下部に、出力軸が-X軸方向を向くように取り付けられている。そして、第一収容器プッシュロッドモータ311の出力軸にはモータ側プーリ311Pが固定されている。
送りネジ312は、フレームF4の上部をX軸に平行な直線に沿って掛け渡すように、X軸に平行な軸回りに回転可能に取り付けられており、-X軸側の端部がフレームF4の-X軸側の端から突出している。この突出部にはネジ側プーリ312Pが固定されている。
モータ側プーリ311Pと、ネジ側プーリ312Pとは、タイミングベルトTB4によって接続されているため、第一収容器プッシュロッドモータ311の回転に合わせて、送りネジ312が回転する。
【0062】
送りネジ312は、ボールネジであり、ナット312Nには、ナット312Nを挟んで+Y軸方向及び-Y軸方向に延びる押し板313が固定されている。押し板313には、接続棒314の-X軸側の端部が、ナット312Nを挟んだ+Y軸側と-Y軸側とに、一本ずつ固定されている。接続棒314の+X軸側の端部は、第一収容器プッシュロッド固定板315に固定されており、第一収容器プッシュロッド固定板315には、第一収容器プッシュロッド316が、後述する磁石収容器回転軸422の軸心から等距離等角度に4本固定されている。
【0063】
第一収容器プッシュロッドモータ311が回転し、送りネジ312が回転することで、ナット312Nが+X軸方向に移動する。同時にナット312Nに固定されている押し板313も+X軸方向に移動し、接続棒314及び第一収容器プッシュロッド固定板315が+X軸方向に移動する。そのため、第一収容器プッシュロッド316も+X軸方向に移動する。
【0064】
第一収容器プッシュロッド316は、+X軸方向に延びる丸棒材であり、次に説明する第二収容器プッシャ400が界磁子ホルダ15から単位永久磁石5を押し出すときに、単位永久磁石5を押し込み方向の反対側から抑える。
【0065】
<第二収容器プッシャ>
図4及び
図5に示す通り、第二収容器プッシャ400は、第二収容器プッシュロッド動作部410、磁石収容器回転動作部420、磁石収容器保持部430及びこれらが取り付けられるフレームF5、F6を備えている。
なお、フレームF5とは、磁石収容器20を挟んで-X軸側の支持構造体であり、フレームF6とは、磁石収容器20挟んで+X軸側の支持構造体である。
以下において、
図5及び
図9を参照して第二収容器プッシャ400の具体的な構造を説明する。
【0066】
《第二収容器プッシュロッド動作部》
第二収容器プッシュロッド動作部410は、主な構成要素として、第二収容器プッシュロッドモータ411、送りネジ412、押し板413、接続棒414、第二収容器プッシュロッド固定板415及び第二収容器プッシュロッド416を備えている。
【0067】
第二収容器プッシュロッドモータ411は、出力軸がフレームF5の-X軸側下部から突出するように固定されている。そして、この出力軸には、モータ側プーリ411Pが固定されている。
フレームF5の上部には、支持棒417がX軸と平行な向きに架け渡されており、支持棒417には、吊り固定部418が吊り下げられるように固定されている。そして、吊り固定部418には、送りネジ412の+X軸側の端部がX軸に平行な軸回りに回転可能に支持されている。また、送りネジ412の-X軸側の端部はフレームF5の-X軸側の端から突出しており、この端部には、送りネジ側プーリ412Pが固定されている。
モータ側プーリ411Pと送りネジ側プーリ412Pとは、タイミングベルトTB5によって接続されているため、第二収容器プッシュロッドモータ411の回転に合わせて、送りネジ412が回転する。
【0068】
送りネジ412は、ボールネジであり、ナット412Nには、送りネジを挟んで+Y軸方向及び-Y軸方向に延びる押し板413が固定されている。押し板413には、接続棒414の-X軸側の端部が、ナット412Nを挟んだ+Y軸側と-Y軸側とに、一本ずつ固定されている。接続棒414の+X軸側の端部は、第二収容器プッシュロッド固定板415に固定されている。第二収容器プッシュロッド固定板415には、4本の第二収容器プッシュロッド416が、後述する磁石収容器回転軸422の軸心から等距離等角度に配設されている。
【0069】
第二収容器プッシュロッドモータ411が回転し、送りネジ412が回転することで、ナット412Nが+X軸方向に移動する。同時にナット412Nに固定されている押し板413も+X軸方向に移動し、接続棒414及び第二収容器プッシュロッド固定板415が+X軸方向に移動する。そのため、第二収容器プッシュロッド416も+X軸方向に移動する。
【0070】
第二収容器プッシュロッド416は、界磁子ホルダ15に形成されている押し込み開口部27を介して磁石収容器20の収容室23内部に進入可能な大きさの丸棒材であり、界磁子ホルダ15に収容された単位永久磁石5を+X軸方向に押し出す。
【0071】
《磁石収容器回転動作部》
磁石収容器回転動作部420は、主な構成要素として、磁石収容器回転用モータ421、磁石収容器回転軸422、駆動保持盤423、磁石収容器回転固定板424及び回転固定ピン425を備えている。
【0072】
磁石収容器回転用モータ421は、フレームF5におけるX軸中央の下部に固定されており、その出力軸にはモータ側プーリ421Pが固定されている。
磁石収容器回転用モータ421の上部には、磁石収容器回転軸422が、フレームF5の+X軸側の端部からX軸方向の幅における中央部まで架け渡され、X軸に平行な軸回りに回転可能に取り付けられている。磁石収容器回転軸422の-X軸側の端部は、フレームF5の中央から-X軸方向に突出しており、この突出部には回転軸側プーリ422Pが固定されている。
モータ側プーリ421Pと回転軸側プーリ422Pとは、タイミングベルトTB6によって接続されているため、磁石収容器回転用モータ421の回転に合わせて、磁石収容器回転軸422が回転する。
【0073】
磁石収容器回転軸422の+X軸側の端部には、駆動保持盤423が固定されている。駆動保持盤423はフレームF5の+X軸側の端部にX軸に平行な軸回りに回転可能に支持されており、磁石収容器回転軸422の回転に合わせて回転する。
回転軸側プーリ422Pの、-X軸側の端部には、円盤形の磁石収容器回転固定板424が固定されており、磁石収容器回転軸422の回転に合わせて回転する。磁石収容器回転固定板424は、その回転中心から等距離等角度に32個の貫通穴が形成されている。
フレームF5のX軸方向中央部には回転固定ピン425が取り付けられている。回転固定ピン425はX軸と平行な直線に沿って伸縮するエアシリンダであり、ロッドが伸長したときに、ロッドの先端部が磁石収容器回転固定板424の貫通孔に嵌まり込む。そのため、回転固定ピン425が伸長したとき、磁石収容器回転固定板424の角度が固定され、磁石収容器回転軸422及び駆動保持盤423は回転しなくなる。なお、回転固定ピン425が伸長したとき、磁石収容器回転用モータ421には、電気的にブレーキが掛けられる。
【0074】
《磁石収容器保持部》
磁石収容器保持部430は、フレームF5の+X軸側に備えられており、主な構成要素として、フレームF6、ガイド部材431、従動保持盤432、磁石収容器台433、保持部開閉シリンダ434を備えている。
【0075】
フレームF6は、下部に4基のキャリッジCRを備えており、キャリッジCRは、基台Bの上面に固定された2本のレールR2に嵌め込まれている。
フレームF6の+X軸側上部にはX軸に沿う方向から見て、それぞれの第二収容器プッシュロッド416と重なる位置に単位永久磁石5が通過可能な開口部が形成されており、X軸に沿う方向から見て、この開口部と重なる位置にガイド部材431が備えられている。ガイド部材431はX軸に沿って単位永久磁石5が通過可能なスリット431Aが形成されている。
【0076】
また、フレームF6の上部には、駆動保持盤423と向かい合うように従動保持盤432が備えられている。従動保持盤432は、駆動保持盤423と同形だが、駆動部に接続されていないため外力によって駆動保持盤423と同じ軸回りに回転する。
【0077】
磁石収容器台433は、フレームF5とフレームF6との間に備えられているX軸に垂直な断面が皿型の部材であり、磁石収容器20が駆動保持盤423及び従動保持盤432から脱落した場合に、磁石収容器20が基台Bまで落下することを防止する。なお、磁石収容器台433は、磁石収容器20の大きさに合わせて高さを変更可能である。
【0078】
保持部開閉シリンダ434は、フレームF5のX軸方向の中央下部に備えられておりX軸と平行な直線に沿ってロッドが伸長するエアシリンダである。保持部開閉シリンダ434のロッドは、連結棒435を介してフレームF6に接続されている。
保持部開閉シリンダ434が伸長するとき、同時にフレームF6の下部に固定されているキャリッジCRに圧縮空気が送られ、キャリッジCRとレールR2との間を潤滑する。そして、保持部開閉シリンダ434が伸長することでフレームF6及び従動保持盤432は駆動保持盤423から離れる。このとき、駆動保持盤423と従動保持盤432との間に、磁石収容器20を配置し又は取り出すための空間が形成される。
【0079】
<磁石移載部>
次に、
図5及び
図10を参照して、磁石移載部90の具体的な構造について説明する。
磁石移載部90は、主な構成要素としてX軸スライダSX、Y軸スライダSY及びハンド部91、を備えている。
Y軸スライダSYは、第一組み立てプッシャ100と第二組み立てプッシャ200との間から、第一収容器プッシャ300と第二収容器プッシャ400との間まで、-Y軸方向に延びたレール上を、Y軸に平行な直線に沿って移動可能な空気圧式のリニアガイドである。
X軸スライダSXは、Y軸スライダSYの上部にX軸に沿って伸縮するように配置されているエアシリンダである。
X軸スライダSXの上部における+X軸方向端部には、ハンド部91が、+X軸方向に突き出るように+Y軸に垂直な断面がL字形状のハンドフレームHFによって固定されている。
【0080】
ハンド部91は、拡幅シリンダ92、拡幅リンク93、磁石保持部94によって構成されている。本実施形態に係る組み立て装置40では、一本の拡幅シリンダ92を中心に、4組の拡幅リンク93と磁石保持部94とが等角度に備えられている。
拡幅シリンダ92は+X軸方向に沿って伸長するエアシリンダであり、拡幅リンク93は、拡幅シリンダ92のシリンダロッド92Rと、磁石保持部94とを接続する平行リンクである。この平行リンクは、揺動節のうち一つの中間部分と、シリンダロッド92Rの根本部分とが、規制節93Aによって接続されている。そのため、拡幅シリンダ92が伸長したとき、磁石保持部94がシリンダロッド92Rに対する角度を変化させずに近づき、拡幅シリンダ92が収縮したとき、磁石保持部94がシリンダロッド92Rから、その角度を変化させずに遠ざかる。
磁石収容器20の収容室23と、界磁子ホルダ15の収容空間11とは、配置されている位置の径が異なっているため、磁石収容器20から取り出した単位永久磁石5を、界磁子ホルダ15に配列するために、拡幅リンク93が備えられている。
【0081】
磁石保持部94は、拡幅リンク93に接続されている保持ブロック95と保持シリンダ96とを備えている。
保持ブロック95には、単位永久磁石5の長さ方向に垂直な断面形状と、略同形状のスリット95Sが形成されている。
保持シリンダ96は、スリット95Sの内部にシリンダロッドが伸長する向きに取り付けられたエアシリンダである。
単位永久磁石5が、スリット95Sの内部に挿し込まれているときに、保持シリンダ96が伸長することで、単位永久磁石5はスリット95Sの内面に押し付けられ、磁石保持部94に保持される。
【0082】
なお、拡幅リンク93は、水平な平面から45度傾けられた状態で拡幅シリンダ92に取り付けられているため、拡幅リンク93が鉛直方向及び水平方向と平行に取り付けられている場合と比較して、Z軸方向の幅及びY軸方向の幅を広くさせにくい。
【0083】
<組み立て装置の動作>
次に、
図4及び簡略化した組み立て装置40を上面視した
図11から
図18を参照して、界磁子10を組み立てるときの組み立て装置40の動作について説明する。
なお、
図11から
図18に記載している記号ORは、界磁子ホルダ15の軸方向の中央を示しており、X軸に沿って記号ORに近づく方向を+X軸方向、離れる方向を-X軸方向とする。また、太矢印は組み立て装置40の動作を表している。
【0084】
以後の説明では、次の状態を本実施形態に係る組み立て装置40の初期状態とする。
第二組み立てプッシャ200には、ダミー5Dが円筒状に配列された界磁子ホルダ15が固定されており、第二収容器プッシャ400には、すべての収容室23に単位永久磁石5が収められた磁石収容器20が固定されている。また、第一組み立てプッシュロッド116、第二組み立てプッシュロッド216、第一収容器プッシュロッド316及び第二収容器プッシュロッド416は、それぞれが-X軸方向の限界に位置しており、磁石移載部90は収容器プッシャ80側に位置している。
【0085】
初めに、操作者が、入力部50を用いて動作開始指示を行う。動作開始指示によって、動作開始信号が制御部61に送信される。その後、制御部61は、設定記憶部62から各モータの動作速度の設定や、異常判定を行うロードセル117の閾値の設定などを読み込み、組み立て装置40を動作させる。
【0086】
組み立て装置40が動作するとき、まず
図12に示すように、磁石移載部90のスリット95Sが、磁石収容器20の収容室23と、X軸に沿う方向から見たときに重なる位置に移動し、単位永久磁石受け取り姿勢をとる(SH1)。
【0087】
次に、取り出し準備動作(取り出し準備工程)を行う。具体的には、第一収容器プッシュロッド316が+X軸方向に移動する。そして、第一収容器プッシュロッド316と第二収容器プッシュロッド416とで、単位永久磁石5を挟み込む。なお、このとき、第一収容器プッシャ300は、第一収容器プッシュロッド316の先端と、単位永久磁石5の第一収容器プッシャ300を向く側の端部とが接触せず、わずかに隙間が形成される位置まで移動する(SG1)。
【0088】
次に、取り出し動作を行う。具体的には、
図13に示すように、第二収容器プッシュロッド416が+X軸方向に移動し、単位永久磁石5を磁石収容器20から押し出す。このとき、第一収容器プッシュロッド316は、第二収容器プッシュロッド416が+X軸方向に移動するのにあわせて、プッシュロッド先端同士の間の距離が保たれるように移動する(SG2)。
単位永久磁石5は、磁石収容器20から取り出されるのに合わせて磁石保持部94のスリット95Sに挿し込まれる。
【0089】
磁石収容器20から単位永久磁石5が押し出されるのと同時に、第二組み立てプッシュロッド216も+X軸方向に移動し、界磁子ホルダ15からダミー5Dを押し出す(SA1)。このとき、第二組み立てプッシュロッド216は、駆動保持盤223側から界磁子ホルダ15の収容空間11内に進入するが、押し出し部216Bの先端の勾配が外筒13と接触し、進入位置が自動的に調節される。
【0090】
次に、
図14に示すように、単位永久磁石5が、磁石収容器20から離脱するまで押し出される。そして、保持シリンダ96が伸長し、単位永久磁石5をスリット95Sに押し付けることで、押し出された単位永久磁石5を磁石保持部94が保持する。
その状態で、磁石移載部90が-X軸方向に移動し、第二収容器プッシャ400から単位永久磁石5を引き抜く(SG3、SH2)。
【0091】
同時に、第一組み立てプッシャ100及び第二組み立てプッシャ200は、挿入準備動作を行う(挿入準備工程)。具体的には、第二組み立てプッシュロッド216がダミー5Dを界磁子ホルダ15から押し出し、離脱させる(SA2)。このとき、ダミー5Dが配列されていた箇所に第二組み立てプッシュロッド216の押し出し部216Bが収容され、離脱したダミー5Dを代替するため、界磁子ホルダ15内のダミー5Dの配列は維持される。
【0092】
次に、
図15に示すように、磁石移載部90が+Y軸方向に移動する(SH3)。
同時に、拡幅リンク93が折りたたまれ、磁石保持部94は、保持している単位永久磁石5がガイド部231のスリット231AとX軸に沿う方向から見て重なる位置に移動し、拡幅リンク93を折りたたむことで単位永久磁石挿入姿勢をとる(SH4)。磁石保持部94が挿入姿勢をとった後、+X軸方向に移動し、保持している単位永久磁石5をガイド部231に受け渡す。このとき、まずガイド部231側の保持シリンダ231Sが伸長して、単位永久磁石5をガイド部231側で保持し、保持シリンダ96が収縮して、単位永久磁石5を磁石保持部94側から引き出せるようにする(SA4)。
【0093】
単位永久磁石5をガイド部231が保持した後、
図16に示すように、磁石移載部90は-X軸方向に移動し、単位永久磁石5を磁石保持部94から引き抜く。その後、磁石移載部90は-Y軸方向に移動し第一組み立てプッシャ100及び第二組み立てプッシャ200の間から出る。その後、第一組み立てプッシュロッド116が+X軸方向に移動することで、ガイド部231が保持している単位永久磁石5を挟み込む。
そして、第二収容器プッシュロッド416が初期位置まで-X軸方向に移動する(SG4)。なお、第二収容器プッシュロッド416の動作は、後述する磁石収容器20が回転する(SG5)ときまでに行われればよい。
【0094】
次に、
図16に示す位置から
図17に示す位置まで単位永久磁石5を押し込む挿入動作を行う(挿入工程)。具体的には、第一組み立てプッシュロッド116が+X軸方向に移動し、単位永久磁石5を界磁子ホルダ15に押し込んでいく(SA4)。同時に、第二組み立てプッシュロッド216も、第一組み立てプッシュロッド116と同じ速度で-X軸方向に動作する。即ち、単位永久磁石5を界磁子ホルダ15に組み込む工程において、単位永久磁石5は長さ方向の両端が挟み込まれながら挿し込まれる。
【0095】
なお、挿入動作において、第一組み立てプッシュロッド116の先端と、第二組み立てプッシュロッド216の先端との間は、単位永久磁石5の長さよりも、数ミリメートル程度長い間隔を維持して移動する。
仮に、このような隙間がなく、第一組み立てプッシュロッド116及び第二組み立てプッシュロッド216が共に単位永久磁石5に接触しながら動作する場合であって、単位永久磁石5が加工誤差等によって規定の大きさよりも大きい場合には、常に第一組み立てプッシャ100が単位永久磁石5を圧縮するため、第一組み立てプッシュロッド116に掛かる反力が大きくなり、制御部61が誤って異常判定をする可能性が高まる。また、挿入動作の途中において、第一組み立てプッシュロッド116と第二組み立てプッシュロッド216とは、完全に同期して移動せず、速度に差が生じる。このような、動作速度の誤差によって第一組み立てプッシュロッド116と第二組み立てプッシュロッド216との間の距離が短くなろうとした場合にも、第一組み立てプッシュロッド116にかかる反力が大きくなり、制御部61が異常判定をする可能性が高まる。
上記の場合ように、誤った異常判定がされると、組み立て装置40の動作が停止し、界磁子10の生産性が低下する。そのため、単位永久磁石5及び組み立て装置40の加工及び組み立てによって生ずる寸法誤差や、第一組み立てプッシュロッドモータ111と第二組み立てプッシュロッドモータ211との同期誤差を吸収するために、第一組み立てプッシュロッド116と第二組み立てプッシュロッド216とは、単位永久磁石5よりもわずかに長い間隔を維持して動作するように設定されている。
【0096】
次に、
図17に示すように、単位永久磁石5は、第一組み立てプッシュロッド116によって、駆動保持盤223の突起に接触するまで押し込まれる。このとき、第二組み立てプッシュロッド216は、初期位置まで移動し、界磁子ホルダ15の外部に出る。
【0097】
最後に、
図18に示すように、初期位置移動動作を行う。具体的には、第一組み立てプッシュロッド116が初期位置まで移動する(SA5)。その後、界磁子ホルダ15は、X軸に沿う方向から見てダミー5Dがガイド部231のスリット231Aと重なる位置に来るまで回転し(SG5)、磁石収容器20は、X軸に沿う方向から見て単位永久磁石5が、ガイド部材431のスリット431Sと重なる位置に移動するまで回転する(SA6)。
このとき、磁石移載部90が-Y軸方向に移動し、且つ拡幅リンク93が展開することで、磁石保持部94は、再度磁石収容器20内の単位永久磁石5を保持する姿勢になる。
【0098】
その後、界磁子ホルダ15内に、すべての単位永久磁石5が配列されるまで、上記工程を繰り返す。単位永久磁石5が配列された後は、ホルダ保持部230から界磁子ホルダ15を取り外す。界磁子ホルダ15に配列された単位永久磁石5は、自身の磁力によって強力に押さえつけられており、収容空間11から離脱しない。
図示していないが、取り出された界磁子ホルダ15の軸方向の両端に、軸方向にずれた状態の単位永久磁石5と嵌り合い、単位永久磁石5に発生した回転駆動力を、シャフトSまで伝達するフランジを固定することで界磁子ホルダ15が組み立てられる。
【0099】
なお、本実施形態に係る組み立て装置40は、挿入動作を2回行うごとに、収容空間11内の単位永久磁石5を、第一組み立てプッシュロッド116で押し込み、単位永久磁石5が駆動保持盤223の突起と接触する位置まで挿入されているか確認する、確認工程を行う。確認工程を行うことで、収容空間11に単位永久磁石5を挿入した後に、磁力によって単位永久磁石5が第一プッシャ側に移動していた場合に、再度単位永久磁石を押し込むことができるため、組み立て不良の発生を抑止することができる。
【0100】
<効果>
本実施形態に係るダミー5D及び第二組み立てプッシュロッド216を用いることで、界磁子10内の単位永久磁石5の配列を乱すことなくハルバッハ界磁子を組み立てることができる。そのため、単位永久磁石5を押し込み配列するときに、既に配列されている単位永久磁石5の位置を調整する必要がなく、ハルバッハ界磁子を組み立てるための工程を削減できる。
【0101】
本実施形態に示した、第二組み立てプッシャ200及び第一組み立てプッシャ100を複数備えている組み立て装置40を用いることで、同時に複数の単位永久磁石5を界磁子ホルダに押し込み配列することができ、ハルバッハ界磁子10を組み立てるのに必要な時間を減少させることができる。
【0102】
磁石移載部90を用いることで、磁石収容器20から取り出した単位永久磁石5の向きを変えずに界磁子ホルダ15まで移動させることができる。そのため、単位永久磁石5の磁性方向を確認する手間を軽減できる。
また、X軸スライダSX及びY軸スライダSYの形状を変更するか、レール等を用いることで、組み立てプッシャ70と収容器プッシャ80との配置の自由度を向上させることができる。そのため、生産ライン等に本実施形態に係るハルバッハ界磁子の組み立て装置を設置する場合に、柔軟なライン設計が可能になる。
【0103】
本実施形態に係るハルバッハ界磁子の組み立て装置40は、磁石収容器20から同時に、向かい合う単位永久磁石5同士を結んだ仮想の直線が、円環状配列の軸心を通り且つ直交する配列位置に位置している4本の単位永久磁石5を取り出し、さらに、取り出した4本の単位永久磁石5を同時に界磁子ホルダ15に挿入する。そのため、単位永久磁石5は、磁性方向が同じものが4本ずつ配列されるため、磁性方向が同じすべての単位永久磁石5が、一度に界磁子ホルダ15に挿入される。
このように、磁性方向が同じ単位永久磁石5を同時に挿入することで、複数の単位永久磁石5を同時に挿入するときに、第一組み立てプッシュロッド116及び第二組み立てプッシュロッド216に掛かる負荷を均質化しやすくなる。そのため、一度の挿入動作で単位永久磁石5を確実に配列することが容易になる。
【0104】
本実施形態に係るハルバッハ界磁子の組み立て方法を用いることで、磁石収容器20から単位永久磁石5を取り出すとき及び界磁子ホルダ15に単位永久磁石5を押し込み配列するときに、磁力によって作業者が意図せず単位永久磁石5が大きく動くことが防止される。そのため、上記の作業を行う際に単位永久磁石5が落下し、磁性方向を再確認しなければならないような事態を防止できる。
【0105】
以上の効果から、本発明に係るハルバッハ界磁子の組み立て装置及びハルバッハ界磁子の組み立て方法を用いることで、着磁された単位永久磁石5を用いて界磁子ホルダ15を製造するために必要な時間を短縮させることができ、生産効率を向上させることができる。さらに、界磁子ホルダ15の組み立て工程において、人力で作業を行う必要もないため、単位永久磁石5の磁力によって発生し得る事故のリスクから、作業者を保護することもできる。
【0106】
<変形例>
上記実施形態では、単位永久磁石5と同形のダミー5Dを用いて組み立てを行うハルバッハ界磁子の組み立て装置について説明したが、ダミー5Dは必ずしも単位永久磁石5と同形である必要はない。例えば、長さ方向に貫通穴が形成された形状のダミーや、長さ方向に垂直な断面が8字形のダミーであってもよい。このような形状のダミーであっても、単位永久磁石5と同様の円筒形が形成されるのであれば、本発明の効果を奏し得る。
【0107】
また、ダミー5Dは必ずしも離脱する部材を用いる必要はない。例えば、第二組み立てプッシュロッド216を単位永久磁石5と同数備える構造であれば、界磁子ホルダ15を第二組み立てプッシュロッド216に取り付け、単位永久磁石5を配列する箇所の第二組み立てプッシュロッド216のみを、単位永久磁石5の押し込みと同期して動作させることで、本発明の効果を奏し得る。
また、このような構造の場合、第二組み立てプッシュロッド216の数は、配列される単位永久磁石5の総数よりも少なくすることもできる。これは、一回目の挿入動作を行うときには、界磁子ホルダ15の収容空間11内に単位永久磁石5が配列されていないため、磁力の影響を受けずに単位永久磁石5を挿入することができるためである。
【0108】
上記実施形態では、第二組み立てプッシュロッド216は、押し出し部216BのX軸に垂直な断面が、単位永久磁石5の長さ方向に垂直な断面と略同じであったが、第二組み立てプッシュロッド216の形状は、必ずしも単位永久磁石5に近い形状である必要はなく、また、必ずしもX軸方向に連続した形状をしていなくてもよい。
例えば、第二組み立てプッシュロッド216は、押し出し部の先端部、中央部及び基端部に、単位永久磁石5と同様に配列可能な突出部が形成され、他の部分は単位永久磁石5よりも小径の丸棒材であってもよい。
【0109】
上記実施形態では、32個の単位永久磁石を、一度に4個配列する構造であったが、単位永久磁石5の個数はこれに限られない。そのため、組み立てを行おうとする界磁子の大きさに合わせて単位永久磁石5の数を増減させることができ、また、一度に配列する単位永久磁石5の個数を増減させてもよい。
【0110】
本実施形態では、長さ方向に垂直な断面が、上辺と底辺とが円弧状になっている台形の単位永久磁石5を界磁子ホルダ15に配列する構造であったが、単位永久磁石5の形状は必ずしもこれに限られない。単位永久磁石5の長さ方向に垂直な断面は、例えば、上辺と底辺とが直線になっている台形や、上辺又は底辺の一方が円弧状になっている台形でもよい。
【0111】
本実施形態に係る組み立て装置40は、組み立てプッシャ70の他に、収容器プッシャ80及び磁石移載部90を備えていたが、これらは必ずしも備えられている必要はなく、例えば、人力で磁石収容器20から単位永久磁石5を取り出し、ガイド部231に嵌め込んでもよい。
【符号の説明】
【0112】
ハルバッハモータ…1、単位永久磁石…5、ダミー…5D、ハルバッハ界磁子…10、収容空間…11、内筒…12、外筒…13、界磁子ホルダ…15、挿入側開口部…16、磁石収容器20、収容室…23、押し込み開口部…27、取り出し側開口部28、ハルバッハ界磁子の組み立て装置…40、磁石移載部…90第一組み立てプッシャ…100、第一組み立てプッシュロッド…116、第二組み立てプッシャ…200、第二組み立てプッシュロッド…216、押し出し部…216B、勾配…216C、ホルダ保持部…230、ガイド部…231、第一収容器プッシャ…300、第一収容器プッシュロッド316、収容器保持部…230、第二収容器プッシャ…400、第二収容器プッシュロッド416