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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015512
(43)【公開日】2024-02-02
(54)【発明の名称】作業機械用監視装置
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20240126BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240126BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210777
(22)【出願日】2023-12-14
(62)【分割の表示】P 2022103581の分割
【原出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 裕樹
(57)【要約】
【課題】対象物の検知に応じた対応処理を適切に行うことができる作業機械用監視装置を提供する。
【解決手段】作業機械用監視装置は、監視領域での対象物の検知に応じて所定の対応処理を実行する対応処理部32を備える。対応処理部32は、対象物が検知される状態から検知されない状態に変化しとき、又は、検知された対象物の位置が作業機械1から離れる方向に変化したと判断されたとき、当該変化の発生の直後において、作業機械1に対する対象物の位置、又は作業機械1と対象物との間の距離が当該変化の発生の直前の位置又は距離に保持されているとみなして所定の対応処理を実行する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と該走行体上に旋回可能に搭載された旋回体とを備える作業機械の周囲の監視領域に存在する対象物を検知する処理を逐次実行する対象物検知部と、該対象物検知部により前記監視領域に対象物が検知された場合に、所定の対応処理を実行する対応処理部とを備える作業機械用監視装置であって、
前記対応処理部は、前記対象物検知部による検知結果が前記監視領域に対象物が検知されたという結果から該対象物が検知されないという結果に変化したとき、又は、前記対象物検知部による検知結果に基づいて前記監視領域に検知された対象物の位置が前記作業機械から離れる方向に変化したと判断されたとき、少なくとも当該変化の発生の直後において、前記作業機械に対する前記対象物の位置又は前記作業機械と前記対象物との間の距離が当該変化の発生の直前の位置又は距離に保持されているとみなして前記所定の対応処理を実行するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械用監視装置において、
前記監視領域は、停止制御領域と減速制御領域とを含み、前記対応処理部は、前記監視領域に存在する対象物の位置が前記停止制御領域内の位置であるときには、前記走行体及び前記旋回体のうちの少なくとも一方の動作を停止させる制御処理を前記対応処理として実行し、前記監視領域に存在する対象物の位置が前記減速制御領域内の位置であるときには、前記走行体及び前記旋回体のうちの少なくとも一方の動作速度の減速度合が、該対象物が前記作業機械に近いほど大きくなるように該動作速度を減速させる制御処理を前記対応処理として実行するように構成されており、
前記対応処理部が、前記変化の発生の直後において、前記対象物の位置又は前記対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離が前記変化の直前の位置又は距離に保持されているとみなして実行する対応処理である保持・対応処理は、前記停止制御領域と前記減速制御領域とのうち、少なくとも前記減速制御領域での対応処理を含むことを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項3】
請求項2記載の作業機械用監視装置において、
前記対応処理部は、前記監視領域のうちの前記減速制御領域内で対象物が検知されたとき、該対象物に関する前記対象物距離が所定量以上増加した場合に前記保持・対応処理を実行するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項4】
請求項3記載の作業機械用監視装置において、
前記対応処理部は、前記変化の発生の直前に前記減速制御領域で検知された対象物に関する前記対象物距離が、前記変化の発生後、前記変化の発生の直前における距離よりも前記所定量以上大きい距離に維持される状態において、前記保持・対応処理を所定回数、連続して実行し、該保持・対応処理の実行回数が該所定回数に達した後は、前記対象物検知部の検知結果から得られる前記対象物距離の最新値に応じて前記対応処理を実行するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項5】
請求項1記載の作業機械用監視装置において、
前記対応処理部は、前記所定の対応処理として、前記走行体及び前記旋回体のうちの少なくとも一方の動作速度を減速させる制御処理を実行するとき、該動作速度の減速度合を所定値以下に制限するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項6】
請求項1記載の作業機械用監視装置において、
前記対応処理部は、前記対象物の位置又は前記対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離が前記変化の直前の位置又は距離に保持されているとみなして実行する対応処理である保持・対応処理を実行しているときに、所定の解除操作が行われたとき、該保持・対応処理を中止するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項7】
請求項1記載の作業機械用監視装置において、
前記対応処理部は、前記変化が発生したとき、前記走行体又は前記旋回体が検知された対象物に接近するよう操作されているか、該対象物から離れるように操作されているかを判定し、前記対象物の位置又は前記対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離が前記変化の直前の位置又は距離に保持されているとみなして実行する対応処理である保持・対応処理を、前記走行体又は前記旋回体が検知された対象物に接近するように操作されていると判定された場合に実行し、前記走行体又は前記旋回体が検知された対象物から離れるように操作されていると判定された場合には、前記対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離を移動平均してなる距離値を用いて前記対応処理を実行するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項8】
請求項1記載の作業機械用監視装置において、
前記対応処理部は、前記対象物の位置又は前記対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離が前記変化の直前の位置又は距離に保持されているとみなして実行する対応処理である保持・対応処理を、前記変化の発生前に、前記対象物検知部により、所定回数、連続して対象物が検知されたことを必要条件として、実行するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械の周囲を監視する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に見られるように、油圧ショベル等の作業機械の周囲に設定した監視領域に存在する人等の対象物を検知し、その検知に応じて、走行体や旋回体の作動停止もしくは減速、あるいは、警報発生等の対応処理を実行する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-128925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に見られる如き技術では、監視領域で検知されていた対象物が外乱等の影響で一時的に検知されなくなったり、あるいは、対象物が作業機械から離れていくように誤検知されてしまう場合があり得る。そして、このような場合には、作業機械と対象物との接触が生じる虞があるのに、走行体や旋回体の動作速度の減速や制限が解除もしくは緩和されてしまう虞がある。
【0005】
また、外乱等の影響で一時的に対象物が検知されなくなったり、あるいは、対象物が作業機械から離れていくように誤検知されてしまうことが頻繁に生じると、対応処理が過度に変化して、作業機械の作動の安定性が損なわれる虞がある。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、対象物の検知に応じた対応処理を適切に行うことができる作業機械用監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業機械用監視装置は、上記の目的を達成するために、走行体と該走行体上に旋回可能に搭載された旋回体とを備える作業機械の周囲の監視領域に存在する対象物を検知する処理を逐次実行する対象物検知部と、該対象物検知部により前記監視領域に対象物が検知された場合に、所定の対応処理を実行する対応処理部とを備える作業機械用監視装置であって、
前記対応処理部は、前記対象物検知部による検知結果が前記監視領域に対象物が検知されたという結果から該対象物が検知されないという結果に変化したとき、又は、前記対象物検知部による検知結果に基づいて前記監視領域に検知された対象物の位置が前記作業機械から離れる方向に変化したと判断されたとき、少なくとも当該変化の発生の直後において、前記作業機械に対する前記対象物の位置又は前記作業機械と前記対象物との間の距離が当該変化の発生の直前の位置又は距離に保持されているとみなして前記所定の対応処理を実行するように構成されていることを特徴とする(第1発明)。
【0008】
かかる第1発明によれば、対象物検知部による対象物の一時的な誤検知や該対象物の検出誤差、外乱等の影響で、前記変化が一時的に発生した場合に、当該変化の発生の直後において、作業機械に対する対象物の位置又は作業機械と対象物との間の距離が当該変化の発生の直前の位置又は距離に保持されているとみなして所定の対応処理が実行される。
【0009】
このため、前記変化が一時的なものである場合に、対象物と作業機械との接触を回避するための対応処理が実行されなくなることや、該接触を回避するための作業機械の動作制限が緩和されこと、あるいは作業機械の動作の安定性が損なわれることを防止することが可能となる。よって、第1発明によれば、対象物の検知に応じた対応処理を適切に行うことができる。
【0010】
上記第1発明では、前記監視領域は、停止制御領域と減速制御領域とを含み、前記対応処理部は、前記監視領域に存在する対象物の位置が前記停止制御領域内の位置であるときには、前記走行体及び前記旋回体のうちの少なくとも一方の動作を停止させる制御処理を前記対応処理として実行し、前記監視領域に存在する対象物の位置が前記減速制御領域内の位置であるときには、前記走行体及び前記旋回体のうちの少なくとも一方の動作速度の減速度合が、該対象物が前記作業機械に近いほど大きくなるように該動作速度を減速させる制御処理を前記対応処理として実行するように構成され得る。この場合、前記対応処理部が、前記変化の発生の直後において、前記対象物の位置又は前記対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離が前記変化の直前の位置又は距離に保持されているとみなして実行する対応処理である保持・対応処理は、前記停止制御領域と前記減速制御領域とのうち、少なくとも前記減速制御領域での対応処理を含むことが好ましい(第2発明)。
【0011】
これによれば、前記変化が一時的に発生した場合に走行体又は旋回体の動作速度の急激な加速が生じるのが防止される。また、対象物が作業機械に接近することが対象物検知部により検知される状況では、走行体又は旋回体の動作速度を速やかに減速させることができる。
【0012】
上記第2発明では、前記対応処理部は、前記監視領域のうちの前記減速制御領域内で対象物が検知されたとき、該対象物に関する前記対象物距離が所定量以上増加した場合に前記保持・対応処理を実行するように構成され得る(第3発明)。
【0013】
これによれば、対象物が作業機械から実際に離れていく際の対象物距離の増加量よりも大きな増加量で大勝物距離が作業機械から離れる方向に変化した判断し得る状況で、走行体や旋回体の減速制御が過剰にはたらくのを防止しつつ、走行体や旋回体の動作速度を安定に復帰させていくことが可能となる。なお、実際に離れていく際の対象物距離の増加量よりも大きな増加量で大勝物距離が作業機械から離れる方向に変化した判断し得る状況というのは、例えば監視領域内の対象物が瞬間的に検知できない状況となり、より遠くの対象物が検知される状況等が想定される。
【0014】
上記第3発明では、前記対応処理部は、前記変化の発生の直前に前記減速制御領域で検知された対象物に関する前記対象物距離が、前記変化の発生後、前記変化の発生の直前における距離よりも前記所定量以上大きい距離に維持される状態において、前記保持・対応処理を所定回数、連続して実行し、該保持・対応処理の実行回数が該所定回数に達した後は、前記対象物検知部の検知結果から得られる前記対象物距離の最新値に応じて前記対応処理を実行するように構成され得る(第4発明)。
【0015】
前記変化が一時的に発生した場合に、走行体及び前記旋回体のうちの少なくとも一方の動作速度を減速させる制御処理に用いる対象物距離を安定化させ、該動作速度が過剰に加速してしまうのを効果的に防止できる。また、対象物が作業機械から実際に離れていく状況では、保持・対応処理の実行回数が所定回数に達した後に、走行体や旋回体の動作速度を復帰させることができる。
【0016】
上記第1~第4発明のいずれかの発明では、前記対応処理部は、前記所定の対応処理として、前記走行体及び前記旋回体のうちの少なくとも一方の動作速度を減速させる制御処理を実行するとき、該動作速度の減速度合を所定値以下に制限するように構成され得る(第5発明)。
【0017】
これによれば、走行体又は旋回体の動作速度を減速させている状態で、対象物が作業機械から実際に離れていく状況では、走行体又は旋回体の動作速度が急激に復帰するのを防止し、走行体又は旋回体の動作の安定性を高めることができる。また、対象物が作業機械から実際に接近する状況では、走行体又は旋回体の動作速度を速やかに減速させることが可能となる。
【0018】
上記第1~第5発明のいずれかの発明では、前記対応処理部は、前記対象物の位置又は前記対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離が前記変化の直前の位置又は距離に保持されているとみなして実行する対応処理である保持・対応処理を実行しているときに、所定の解除操作が行われたとき、該保持・対応処理を中止するように構成され得る(第6発明)。
【0019】
これによれば、保持・対応処理を所定の解除操作によって、中止することができるので、作業機械の操縦の利便性を高めることができる。なお、前記所定の解除操作としては、作業装置用監視装置による監視機能をOFF状態にする操作、操作レバーによる操作をロック状態とロック解除状態に切り替えることができるロックレバーをロック状態にする操作、作業機械の操作レバーの中立位置への操作等を採用し得る。
【0020】
上記第1~第6発明のいずれかの発明では、前記対応処理部は、前記変化が発生したとき、前記走行体又は前記旋回体が検知された対象物に接近するよう操作されているか、該対象物から離れるように操作されているかを判定し、前記対象物の位置又は前記対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離が前記変化の直前の位置又は距離に保持されているとみなして実行する対応処理である保持・対応処理を、前記走行体又は前記旋回体が検知された対象物に接近するように操作されていると判定された場合に実行し、前記走行体又は前記旋回体が検知された対象物から離れるように操作されていると判定された場合には、前記対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離を移動平均してなる距離値を用いて前記対応処理を実行するように構成されているという態様を採用し得る(第8発明)。
【0021】
これによれば、対象物が作業機械に実際に接近することが明らかとみなし得る状況で、保持・対応処理を実行するので、該保持・対応処理を適切に行うことが可能となる。また、対象物が作業機械から実際に離れていくことが明らかとみなし得る状況では、対象物距離を移動平均してなる距離値を用いて前記対応処理を実行するので、滑らかに変化す対象物距離を用いて対応処理を実行することができる。特に、対応処理が、前記第2発明における減速制御領域での対応処理である場合、走行体又は旋回体の動作速度を滑らかに復帰させることができる。
【0022】
上記第1~第7発明のいずれかの発明では、前記対応処理部は、前記対象物の位置又は前記対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離が前記変化の直前の位置又は距離に保持されているとみなして実行する対応処理である保持・対応処理を、前記変化の発生前に、前記対象物検知部により、所定回数、連続して対象物が検知されたことを必要条件として、実行するように構成され得る(第8発明)。
これによれば、対象物検知部による対象物の検知の信頼性が高い状況でのみ、保持・対
応処理を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態の作業機械である油圧ショベルの概略構成と監視領域とを示す図。
図2】実施形態の油圧ショベルに備えた監視装置のシステム構成を示す図。
図3】実施形態の油圧ショベルに備えた油圧回路を示す図。
図4図2に示す対象物検知部及び対応処理部の処理を示すフローチャート。
図5図4のSTEP6で実行する対応処理の内容を示すフローチャート。
図6図5のSTEP12又はSTEP16で実行される減速制御処理の詳細を示すフローチャート。
図7図3に示す油圧回路に備えた逆比例弁の制御に関するグラフ。
図8図8A図8B図8Cは、それぞれ、対象物距離の経時変化、逆比例弁の指示電流値の経時変化、方向切換弁の駆動するパイロット圧の経時変化を例示するグラフ。
図9図9A図9Bは、それぞれ、対象物距離の経時変化、逆比例弁の指示電流値の経時変化を例示するグラフ。
図10】本発明の他の実施形態での逆比例弁の指示電流値の経時変化を例示するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態を図1図9Bを参照して以下に説明する。図1を参照して、本実施形態における作業機械は、例えば油圧ショベル1である。
この油圧ショベル1は、クローラ式の走行体2と、走行体2上に搭載された旋回体3と、旋回体3に取り付けられた作業装置4とを備える公知の構造のものである。なお、図1では、上方から見た油圧ショベル1の基本構造を概略的に示している。
【0025】
走行体2は、左右一対のクローラ2L,2Rを有し、それぞれのクローラ2L,2Rを各別の走行用油圧モータ51(図2に括弧付きの参照符号で示す)により駆動することが可能である。なお、走行体2は、クローラ式のものに限らず、車輪型の走行体であってもよい。
【0026】
旋回体3は、上下方向の旋回軸Cz周りの方向(ヨー方向)に走行体2に対して旋回し得るように、旋回装置7を介して走行体2に取り付けられている。該旋回装置7は、旋回用油圧モータ41(図2に括弧無の参照符号で示す)や図示しない旋回ギヤを有する公知の構造の装置であり、旋回用油圧モータ41の駆動力により旋回体3を旋回させるように動作する。旋回体3の前部には、作業者が搭乗する運転室5が備えられ、後部には、エンジン、油圧機器等が収容された機械室6が備えられている。
【0027】
作業装置4は、旋回体3の前部から延設されたブーム11と、ブーム11の先端部から延設されたアーム12と、アーム12の先端部に組付けられたバケット等のアタッチメント13とを備える。ブーム11、アーム12及びアタッチメント13のそれぞれは、図示を省略する油圧シリンダにより、旋回体3、ブーム11及びアーム12のそれぞれに対してピッチ方向(旋回体3の左右方向の軸周り方向)に揺動可能である。
【0028】
なお、図1では、基本的な構成の油圧ショベル1を例示したが、本発明を適用し得る油圧ショベルは、上記した構成のものに限られない。例えばブーム11は、旋回体3に対してピッチ方向に揺動し得るだけでなく、旋回体3に対してヨー方向に揺動したり、あるいは、旋回体3の左右方向に移動し得るようになっていてもよい。
【0029】
また、走行体2は、クローラ式のものに限らず、車輪型のものであってもよい。また、油圧ショベル1は、油圧式のアクチュエータに限らず、電動式のアクチュエータを含んでいてもよい。
【0030】
本実施形態の油圧ショベル1には、図2に示すように、油圧ショベル1との接触を回避すべき対象物を検知するためのセンサとしてのカメラ20と、種々の制御処理及び演算処理を実行する機能を有するコントローラ30とが搭載されている。
【0031】
カメラ20は、本実施形態では、旋回体3の右側、左側、後方をそれぞれ撮影し得るように旋回体3に搭載された3つの単眼カメラ20L,20R,20Bにより構成される。
コントローラ30は、詳細な図示は省略するが、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、RAM、ROM等のメモリ、インターフェース回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成され、油圧ショベル1に搭載されたカメラ20等のセンサの検出データが入力される。このコントローラ30は、本実施形態の作業機械用監視装置としての機能を有するものであり、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)により実現される機能として、油圧ショベル1の周囲に設定した監視領域で、対象物を検知する処理を逐次実行する対象物検知部31と、対象物検知部31による対象物の検知結果に応じて所定の対応処理を実行する対応処理部32としての機能とを有する。
【0032】
ここで、対象物検知部31の検知対象の対象物は、油圧ショベル1との接触を避けるべき所定種類の物体、例えば人である。また、対象物検知部31が対象物の検知を行う監視領域は、例えば、図1に2点鎖線で示すように、旋回体3の左右の両側部及び後部を囲む領域ARとして設定される。そして、監視領域ARは、本実施形態では、停止制御領域AR1及び減速制御領域AR2から構成される。
【0033】
停止制御領域AR1は、該停止制御領域AR1に対象物が存在することが検知されたとき、該対象物と油圧ショベル1との接触を回避するために油圧ショベル1の走行体2の走行動作及び旋回体3の旋回動作を停止させることを対応処理として実行すべき領域であり、旋回体3に近接した領域である。
【0034】
また、減速制御領域AR2は、該減速制御領域AR2に対象物が存在することが検知されたとき、該対象物と油圧ショベル1との接触を回避するために走行体2の走行動作及び旋回体3の旋回動作を減速させることを対応処理として実行すべき領域であり、停止制御領域AR1の外側の領域である。
【0035】
そして、本実施形態の油圧ショベル1では、走行体2の走行動作や旋回体3の旋回動作を強制的に減速もしくは停止させ得るように、走行用油圧モータ51及び旋回用油圧モータ41の作動用の油圧回路が構成されている。これらの油圧回路は、例えば図3に示す如く構成され得る。ここで、走行体2のクローラ2L,2Rのそれぞれ毎の走行用油圧モータ51の作動用の油圧回路と、旋回用油圧モータ41の作動用の油圧回路とは、基本構成が同じ油圧回路であるので、図3では、旋回用油圧モータ41の作動用の油圧回路の構成要素に括弧無の参照符号を付し、走行用油圧モータ51の作動用の油圧回路の構成要素に括弧付きの参照符号を付している。なお、作動油タンク43は、両方の油圧回路で共通なので、括弧付きの参照符号を付していない。
【0036】
旋回用油圧モータ41の作動用の油圧回路の構成を以下に、代表的に説明する。図示の如く、油圧ポンプ42及び作動油タンク43と、旋回用油圧モータ41とが旋回用方向切換弁44を介して接続されている。旋回用方向切換弁44は、2つのパイロットポート44a,44bを有するパイロット駆動方式の方向切換弁であり、その2つのパイロットポート44a,44bにパイロット圧が付与されていない状態では、中立位置であるA位置に保持される。このA位置では、旋回用方向切換弁44は、油圧ポンプ42及び作動油タンク43と、旋回用油圧モータ41との間の油通路を遮断する。
【0037】
また、旋回用方向切換弁44は、パイロットポート44aにパイロット圧が付与された場合に、A位置(中立位置)からB位置側に動作し、パイロットポート44bにパイロット圧が付与された場合に、A位置(中立位置)からC位置側に動作する。B位置は、旋回体3の右旋回(時計周り方向の旋回)を行わせるように旋回用油圧モータ41に作動油を供給する動作位置、C位置は、旋回体3の左旋回(反時計周り方向の旋回)を行わせるように旋回用油圧モータ41に作動油を供給する動作位置である。なお、旋回用方向切換弁44は、旋回用油圧モータ41の負荷が一定である場合、パイロットポート44a又は44bに付与されるパイロット圧が大きくなるに伴い、旋回用油圧モータ41に供給される作動油の流量が増加するようにB位置側又はC位置側に動作する。
【0038】
旋回用方向切換弁44のパイロットポート44a,44bのそれぞれは、旋回体3の旋回用操作レバー45aが付設された操作装置45にパイロット油通路46a,46bを介して接続されている。そして、本実施形態では、パイロット油通路46a,46bのそれぞれに、逆比例弁47が介装されている。
【0039】
操作装置45は、図示しないパイロットポンプから付与される一次圧から、旋回用操作レバー45aの操作量に応じた二次圧(旋回用操作レバー45aの操作量が大きいほど、大きくなる二次圧)を生成し、その二次圧をパイロット油通路46a,46bのうちの旋回用操作レバー45aの操作方向に応じたパイロット油通路に出力する。
【0040】
各逆比例弁47は、その上流側の操作装置45から付与されるパイロット圧を、通電量(電流値)に応じた減圧度合で減圧して下流側のパイロットポート44a又は44bに出力可能な電磁駆動方式の減圧弁であり、その通電量が大きいほど、出力するパイロット圧の減圧度合(操作装置45から入力されるパイロット圧に対する減圧度合)が大きくなるように動作する。この場合、各逆比例弁47は、その通電量を下限値から上限値まで変化させたとき、操作装置45から入力されるパイロット圧をそのまま(減圧せずに)出力する動作状態から、出力するパイロット圧がゼロになる動作状態まで動作することが可能である。そして、各逆比例弁47は、その通電量を、前記コントローラ30により制御し得るように該コントローラ30に電気的に接続されている。
【0041】
旋回用油圧モータ41を作動させる油圧回路は、上記のように構成されているので、旋回体3の旋回時にその旋回方向に対応するパイロット油通路46a又は46bの逆比例弁47の通電量を制御することで、旋回体3の動作速度(旋回速度)を、旋回用操作レバー45aの操作量に応じた動作速度よりも低速の動作速度に減速させることができる。この場合、旋回体3の動作速度の減速度合(旋回用操作レバー45aの操作量に応じた動作速度に対する減速度合)は、逆比例弁47の通電量が大きいほど、大きくなる。
【0042】
また、旋回体3の旋回方向に対応するパイロット油通路46a又は46bの逆比例弁47に、上限値の通電量で通電することで、旋回用方向切換弁44のパイロットポート44a,44bのうち、旋回体3の旋回方向に対応するパイロットポート44a又は44bに付与されるパイロット圧がゼロになるので、旋回用方向切換弁44をA位置(中立位置)に復帰させることができる。これにより、旋回用油圧モータ41への作動油の供給を遮断して、旋回体3の旋回動作を停止させることができる。
【0043】
本実施形態では、走行用油圧モータ(左右のクローラ2L,2Rのそれぞれ毎の走行用油圧モータ)の作動用の油圧回路も、上記した旋回用油圧モータ41の作動用の油圧回路と同様に構成されている。すなわち、クローラ2L,2Rのそれぞれに対応する走行用油圧モータ51の作動用の油圧回路は、図3の旋回用油圧モータ41、旋回用方向切換弁44、操作装置45のそれぞれを、走行用油圧モータ51、走行用方向切換弁54、走行用操作レバー55aを有する操作装置55で置き換えた形態の油圧回路である。
【0044】
従って、左右のクローラ2L,2Rのそれぞれの走行時に、左右のクローラ2L,2Rのそれぞれ毎に、走行用油圧モータ51の作動用の油圧回路のパイロット油通路56a又は56b(パイロット油通路56a,56bのうち、走行用油圧モータ51の作動方向に対応するパイロット油通路)に設けられた逆比例弁57の通電量をコントローラ30により制御することで、クローラ2L,2Rのそれぞれの動作速度(走行速度)を減速させ、あるいは、クローラ2L,2Rのそれぞれを停止させることができる。
【0045】
次に、コントローラ30による処理を詳細に説明する。コントローラ30は、油圧ショベル1の始動後、対象物監視機能がON状態(有効状態)に設定されている場合に、図4のフローチャートに示す処理を実行する。
【0046】
この場合、コントローラ30は、まず、STEP1~STEP5において、対象物検知部31の処理の実行する。STEP1では、対象物検知部31は、監視領域AR(停止制御領域AR1及び減速制御領域AR2の組)を設定する。本実施形態では、監視領域ARは、走行体2及び旋回体3のそれぞれの動作速度に応じて設定される。
【0047】
具体的には、対象物検知部31は、旋回体3の動作速度(旋回速度)が所定値以下であり、且つ、走行体2の動作速度(走行速度)が所定値以下である場合には、停止制御領域AR1とその外側の減速制御領域AR2として、それぞれあらかじめ定められたサイズの基準領域を設定する。
【0048】
また、対象物検知部31は、旋回体3の動作速度(旋回速度)が所定値以よりも大きく、あるいは、走行体2の動作速度(走行速度)が所定値よりも大きい場合には、停止制御領域AR1とその外側の減速制御領域AR2として、基準領域よりも大きいサイズであらかじめ定められた拡張領域を設定する。この拡張領域は、停止制御領域および減速制御領域にそれぞれについて、外側の境界と旋回体3と間の距離が、基準領域よりも大きい領域(基準領域を内部に包含する領域)である。
【0049】
なお、走行体2又は旋回体3の動作速度に応じた監視領域ARの切替は、ヒステリシステ特性を持たせて行うようにしてもよい。例えば、監視領域ARを基準領域から拡張領域に切り替えることを、走行体2又は旋回体3の動作速度が第1の所定値よりも小さい速度から第1の所定値よりも大きい速度に増加したときに行い、その後、走行体2又は旋回体3の動作速度が第1の所定値よりも小さい第2の所定値以下の速度に低下したときに、監視領域ARを拡張領域から基準領域に切り替えるようにしてもよい。
また、監視領域ARの切替を、走行体2又は旋回体3の動作速度だけでなく、例えば油圧ショベル1のエンジンの回転数に応じて行うようにしてもよい。
次いで、STEP2において、対象物検知部31は、カメラ20(20L、20R、20B)の撮影映像を取得する。
【0050】
次いで、STEP3において、対象物検知部31は、各カメラ20L、20R、20Bの撮影映像から対象物(本実施形態では人)を検知する処理を実行する。この場合、対象物検知部31は、例えば、撮影映像から公知の画像認識処理により対象物の画像を探索する。そして、対象物検知部31は、いずれかのカメラ20L、20R、20Bの撮影画像から対象物の画像を特定できた場合には、該撮影映像における対象物の頭部のサイズや、
足部(地面との接触部)の位置等に基づいて、旋回体3から見た対象物の相対位置(対象物と旋回体3との間の距離を含む)を特定する。
【0051】
次いで、STEP4において、対象物検知部31は、STEP3の検知処理の結果に基づいて、監視領域AR内で対象物が検知されたか否かを判断する。この場合、カメラ20L、20R、20Bの撮影画像から対象物の画像を特定できなかった場合、あるいは、撮影画像から特定した対象物の位置が監視領域ARの外側の位置である場合には、STEP4の判断結果が否定的になる。この場合には、対象物検知部31は、STEP1からの処理を繰り返す。
【0052】
また、いずれかのカメラ20L、20R、20Bの撮影画像から対象物の画像が特定され、且つ、該対象物の位置が監視領域AR内の位置である場合に、STEP4の判断結果が肯定的になる。この場合には、対象物検知部31は、STEP5において、対象物の検知回数(詳しくは、STEP4の判断結果が肯定的になることが連続した回数)が所定の必要回数に達したか否かを判断する。
【0053】
ここで、本実施形態では、対象物検知部31は、上記必要回数を、走行体2又は旋回体3の動作速度や、監視領域ARで検知された対象物と旋回体3との間の距離(カメラ20L、20R、20Bのうち、対象物が撮影されたカメラの光軸方向での距離)に応じて可変的に設定する。具体的には、走行体2の走行動作時又は旋回体3の旋回動作時には、には、走行体2の走行速度又は旋回体3の旋回速度が速いほど、必要回数が少なくなるように設定される。例えば、走行体2の走行速度又は旋回体3の旋回速度が所定速度以下の低速である場合には、監視領域AR内での対象物の検知の信頼性を極力高めるために、必要回数として、所定回数以上の複数回数(例えば3回、4回、5回等)が設定される。
【0054】
また、走行体2の走行速度又は旋回体3の旋回速度が所定速度よりも高い高速である場合には、油圧ショベル1と対象物との接触を回避するための対応処理を速やかに行う必要性が高いことから、必要回数として、所定回数よりも少ない回数(例えば1回、2回等)が設定される。
【0055】
また、監視領域ARで検知された対象物と旋回体3との間の距離(以降、単に対象物距離という)が遠いほど、対象物距離の誤差が生じやすくなることから、対象物距離が大きいほど、必要回数が多くなるように設定される。例えば、対象物距離が停止制御領域AR1内の距離である場合には、必要回数として、所定回数よりも少ない回数(例えば1回、2回等)が設定される。また、対象物距離が減速制御領域AR2内の距離である場合には、必要回数は、所定回数以上の複数回数(例えば3回、4回、5回等)が設定される。なお、この場合、減速制御領域AR2での必要回数は、対象物距離が大きいほど、大きい回数となるように設定されてもよい。
【0056】
上記のように、対象物の検知の必要回数を設定することは、走行体2又は旋回体3の動作速度と、監視領域ARで検知された対象物の対象物距離とから、例えばマップや、演算式を用いて行うことができる。
【0057】
なお、対象物の検知の必要回数を、走行体2又は旋回体3の動作速度と、対象物距離とに応じて変化させることをヒステリシス特性を持たせて行うようにしてもよい。例えば、走行体2又は旋回体3の動作速度が第1の所定値よりも低い速度から高い速度に増加したときに、対象物の検知の必要回数を減少させ、その後、走行体2又は旋回体3の動作速度が第1の所定値よりも小さい第2の所定値以下の速度に低下したときに、対象物の検知の必要回数を増加させるようにしてもよい。
【0058】
また、対象物の検知の必要回数の変更を、走行体2又は旋回体3の動作速度や、対象物距離だけでなく、例えば油圧ショベル1のエンジンの回転数に応じて行うようにしてもよい。
【0059】
STEP5の判断結果が否定的である場合(検知回数<必要回数である場合)には、対象物検知部31は、STEP1からの処理を繰り返す。また、STEP5の判断結果が肯定的である場合(検知回数≧必要回数である場合)には、対象物検知部31は、STEP6からの処理を対応処理部32により実行する。なお、必要回数が1回に設定されている場合には、STEP3の判断結果が肯定的になった時点で直ちにSTEP4の判断結果が肯定的になって、STEP6からの処理が開始される。
【0060】
対応処理部32は、STEP6において、監視領域ARでの対象物の検知に応じて、対象物と油圧ショベル1との接触を回避するための対応処理を開始する。この場合、対応処理部32は、走行体2又は旋回体3の動作状態や、対象物と油圧ショベル1との位置関係等に応じて、図5のフローチャートに示す如く対応処理を実行する。なお、対応処理では、対象物検知部31の処理も並行して行われる。
【0061】
図5を参照して、対応処理部32は、STEP11において、走行操作(走行用油圧モータ51に対応する操作装置55の走行用操作レバー55aの操作)が行われているか否かを判断する。このSTEP11の判断結果が肯定的である場合には、対応処理部32は、STEP12において所定の対応処理を実行する。具体的には、STEP12の対応処理では、対応処理部32は、油圧ショベル1に対する対象物の位置を示す表示情報を運転室5内に備えられた表示器(図示省略)に表示させると共に、対象物が監視領域ARに存在することを運転者に報知するための警報出力(例えばブザー音、音声情報等)を運転室5内で図示しない発音部から発生させる。
【0062】
この場合、油圧ショベル1に対する対象物の位置を示す表示情報としては、例えば、油圧ショベル1の鳥瞰図に対して、対象物検知部31により検知された位置関係で対象物を示す画像を付加してなる表示情報等を採用し得る。なお、油圧ショベル1の外部に対して警報を発生し得る警報装置(警報ランプや発音装置等)が油圧ショベル1に搭載されている場合には、運転室5内での警報出力の発生に加えて、該警報装置を作動させるようにしてもよい。このことは、後述のSTEP16,17の対応処理でも同様である。
【0063】
STEP12ではさらに、対応処理部32は、上記の対応処理に加えて、走行体2を減速又は停止させる処理を対応処理として実行する。この場合、対応処理部32は、検知された対象物の位置が監視領域ARのうちの停止制御領域である場合には、走行体2を停止させる停止制御処理を実行する。
【0064】
この停止制御処理では、対応処理部32は、左右のクローラ2L,2Rのそれぞれの走行用油圧モータ51の作動用の油圧回路において、パイロット圧が付与されている側のパイロット油通路56a又は56bの逆比例弁57に上限値の電流を通電することで、該パイロット油通路56a又は56bから走行用方向切換弁54に付与されるパイロット圧をゼロにする。これにより、左右のクローラ2L,2Rのそれぞれの走行用油圧モータへの作動油の供給が中立位置(A位置)に復帰する走行用方向切換弁54により遮断されることで、該走行用油圧モータの作動が停止し、ひいては、走行体2が停止する。
【0065】
また、STEP12において、対応処理部32は、検知された対象物の位置が監視領域ARのうちの減速制御領域である場合には、走行体2を減速させる減速制御処理を実行する。この減速制御処理では、対応処理部32は、左右のクローラ2L,2Rのそれぞれの走行用油圧モータ51の作動用の油圧回路において、パイロット圧が付与されている側のパイロット油通路56a又は56bの逆比例弁57の通電量を対象物距離に応じて制御することで、走行体2を減速させる。この減速制御処理の具体的な内容は後述する。
STEP12では、以上の如く対応処理が行われる。
【0066】
STEP11の判断結果が否定的である場合(走行操作が行われていない場合)には、対応処理部32は、STEP13において旋回操作(旋回用油圧モータ41に対応する操作装置45の旋回用操作レバー45aの操作)が行われているか否かを判断する。このSTEP13の判断結果が否定的である場合(=STEP11,13の両方の判断結果が否定的である場合)は、走行操作及び旋回操作の両方が行われていない場合である。なお、走行操作及び旋回操作の両方が行われていない状況には、走行体2の走行動作及び旋回体3の旋回動作が停止していることに加えて、作業装置4の動作も停止している状況と、作業装置4だけの動作が行われている状況も含まれる。
【0067】
そして、STEP13の判断結果が否定的である場合には、対応処理部32は、STEP14において所定の対応処理を実行する。具体的には、STEP14の対応処理では、対応処理部32は、油圧ショベル1に対する対象物の位置を示す表示情報を運転室5内に備えられた表示器(図示省略)に表示させる。かかる表示情報の表示はSTEP12と同様に行われる。
【0068】
STEP13の判断結果が肯定的である場合(旋回操作が行われている場合)には、対応処理部32は、さらにSTEP15において、監視領域AR内で検知された対象物が旋回体3の旋回方向に存在しているか否かを判断する。ここで、旋回体3の旋回方向に存在しているというのは、旋回方向を現在の状態に維持して旋回体3の旋回動作を継続した場合に、旋回体3の前部の作業装置4が近づいていく位置に対象物が存在することを意味する。例えば、旋回体3が右方向(時計周り方向)に旋回している状況では、監視領域ARのうち、旋回体3の右側の領域に対象物が存在する場合に、旋回体3の旋回方向に対象物が存在していると判断される。同様に、旋回体3が左方向(反時計周り方向)に旋回している状況では、監視領域ARのうち、旋回体3の左側の領域に対象物が存在する場合に、旋回体3の旋回方向に対象物が存在していると判断される。
【0069】
STEP15の判断結果が肯定的である場合(検知された対象物が旋回体3の旋回方向に存在している場合)には、対応処理部32は、STEP16において、所定の対応処理を実行する。具体的には、STEP16の対応処理では、対応処理部32は、油圧ショベル1に対する対象物の位置を示す表示情報を運転室5内に備えられた表示器(図示省略)に表示させると共に、対象物が監視領域ARに存在することを運転者に報知するための警報出力(例えばブザー音、音声情報等)を運転室5内で図示しない発音部から発生させる。かかる表示情報の表示と警報出力の発生とは、STEP12と同様に行われる。
【0070】
STEP16ではさらに、対応処理部32は、上記の対応処理に加えて、旋回体3を減速又は停止させる処理を対応処理として実行する。この場合、対応処理部32は、検知された対象物の位置が監視領域ARのうちの停止制御領域である場合には、走行体2を停止させる停止制御処理を実行する。
【0071】
この停止制御処理では、対応処理部32は、旋回用油圧モータ41の作動用の油圧回路において、パイロット圧が付与されている側のパイロット油通路46a又は46bの逆比例弁47に上限値の電流を通電することで、該パイロット油通路46a又は46bから旋回用方向切換弁44に付与されるパイロット圧をゼロにする。これにより、旋回用油圧モータ41への作動油の供給が中立位置(A位置)に復帰する旋回用方向切換弁44により遮断されることで、該旋回用油圧モータ41の作動が停止し、ひいては、旋回体3が停止する。
【0072】
また、STEP16において、対応処理部32は、検知された対象物の位置が監視領域ARのうちの減速制御領域である場合には、旋回体3を減速させる減速制御処理を実行する。この減速制御処理では、対応処理部32は、旋回用油圧モータ41の作動用の油圧回路において、パイロット圧が付与されている側のパイロット油通路46a又は46bの逆比例弁47の通電量を対象物距離に応じて制御することで、旋回体3を減速させる。この減速制御処理の具体的な内容は後述する。
STEP16では、以上の如く対応処理が行われる。
【0073】
STEP15の判断結果が否定的である場合(検知された対象物が旋回体3の旋回方向に存在していない場合)には、対応処理部32は、STEP17において、所定の対応処理を実行する。具体的には、STEP17の対応処理では、対応処理部32は、油圧ショベル1に対する対象物の位置を示す表示情報を運転室5内に備えられた表示器(図示省略)に表示させると共に、対象物が監視領域ARに存在することを運転者に報知するための警報出力(例えばブザー音、音声情報等)を運転室5内で図示しない発音部から発生させる。かかる表示情報の表示と警報出力の発生とは、STEP12と同様に行われる。なお、STEP17では、旋回体3を減速又は停止させる処理は実行されない。
対応処理部32は、以上説明した如く、走行体2又は旋回体3の動作状態や、対象物と油圧ショベル1との位置関係等に応じて対応処理を実行する。
【0074】
図4に戻って、対応処理部32は、上記のように対応処理を実行しながら、STEP7において、対応処理の終了条件が成立したか否かを判断する処理をその判断結果が肯定的になるまで繰り返す。この場合、例えば、対象物検知部31により監視領域AR内に対象物が検知されなくなった場合に、STEP7の判断結果が肯定的になる。そして、STEP7の判断結果が肯定的になると、対応処理部32は、前記した対応処理(STEP12又はSTEP14又はSTEP16又はSTEP17での対応処理)を終了する。
【0075】
次に、対応処理としての走行体2又は旋回体3の動作速度の減速制御処理についてさらに詳細に説明する。ここで、走行体2の動作速度の減速制御処理と、旋回体3の動作速度の減速制御処理とは、同様に行われる制御処理であるので、以下では旋回体3の動作速度の減速制御処理について代表的に説明する。
【0076】
対応処理部32は、旋回体3の動作速度の減速制御処理を、所定の制御処理周期で図6のフローチャートに示す如く実行する。STEP21において、対応処理部32は、油圧ショベル1の旋回体3と、対象物検知部31により検知された対象物との間の現在の距離値(対象物距離の計測値)を対象物検知部31から取得する。以降、現在の(今回の)制御処理周期で得られた距離値を今回距離値、前回の制御処理周期(一つ前の制御処理周期)で得られた距離値を前回距離と称する。なお、ある制御処理周期において、対象物検部31により対象物を検知できなかった場合には、その制御処理周期における距離値は、便宜上、監視領域AR内の最大の距離値よりも大きい距離値として取得される。
【0077】
次いで、STEP22において、距離値保持モードがON状態(有効状態)になっているか否かを判断する。該距離値保持モードは、旋回体3の減速制御のために使用する距離値を一定に保持する処理モードであり、後述のSTEP25でON状態に設定されるまではOFF状態(無効状態)に設定されている。
【0078】
そして、STEP22の判断結果が否定的である場合(距離値保持モードがOFF状態である場合)には、対応処理部32は、STEP23において、前回距離値>今回距離値という条件(以降、第1条件という)が成立するか否か、あるいは、前回距離値≦今回距離値であり、且つ、前回距離値と今回距離値の距離差(=|前回距離値-今回距離値|)が所定値Dth以下の微小な距離差であるという条件(以降、第2条件という)が成立するか否かを判断する。
【0079】
このSTEP23の判断結果が肯定的になる状況は対象物が旋回体3に接近している状況(対象物距離が減少する状況)、あるいは、対象物距離の時間的変化率(単位時間当たりの変化量)が微小なものとなっている状況(対象物距離の変化が十分に小さい状況)である。なお、前回距離値と今回距離値の距離差(=|前回距離値-今回距離値|)が所定値Dth以下の微小な距離差であるという条件だけを第2条件として用いてもよい。
【0080】
STEP23の判断結果が肯定的である場合には、対応処理部32は、STEP24において、今回距離値に応じて減速制御処理を実行し、STEP21からの処理を繰り返す。ここで、本実施形態では、対象物距離と、旋回用方向切換弁44にパイロイット圧を付与する側のパイロット油通路46a又は46bの逆比例弁47の通電量の指令値としての指示電流値との関係が、図7のグラフで示す如くあらかじめ設定されている。
【0081】
この場合、減速制御領域AR2での対象物距離と、逆比例弁47の指示電流値との関係は、図7のグラフで示されるように、対象物距離が小さいほど、逆比例弁47の指示電流値が大きくなる(ひいては、逆比例弁47によるパイロット圧の減圧度合が大きくなる)という関係である。そして、当該関係を表すデータ(以降、指示電流値設定用データという)がマップあるいは演算式等の形態でコントローラ30にあらかじめ記憶されている。
【0082】
そして、STEP24では、対応処理部32は、今回距離値から指示電流値設定用データにより逆比例弁47の指示電流値を決定し、その指示電流値の電流を逆比例弁47(旋回用方向切換弁44にパイロイット圧を付与する側のパイロット油通路46a又は46bの逆比例弁47)に通電する。
【0083】
これにより、旋回用方向切換弁44には、旋回用操作レバー45aの操作量に応じたパイロット圧よりも減圧されたパイロット圧が付与される。このため、旋回用油圧モータ41に供給される作動油の流量が減少し、ひいては、旋回体3の動作速度(旋回速度)が強制的に減速される。この場合、今回距離値が小さいほど(対象物が旋回体3に近づくほど)、旋回体3の動作速度(旋回速度)の減速度合が大きくなる。
【0084】
STEP23の判断結果が否定的になる状況は、上記第1条件及び第2条件が両方とも成立しない状況であるから、前回距離値≦今回距離値であり、且つ、前回距離値と今回距離値の距離差(=|前回距離値-今回距離値|)が所定値Dth以よりも大きくなる状である。この状況は、換言すれば、対象物検知部31で検知された対象物距離が所定値Dth以上、増加するように対象物が旋回体3から離れる方向に移動した状況である。
【0085】
なお、本実施形態では、対応処理部32は、前回の制御処理周期で対象物検知部31により対象物が監視領域AR内で検知された後、今回の制御処理周期で、対象物検知部31が対象物を検知できなくなった場合には、STEP23の判断結果が否定的になったものとみなす。
【0086】
そして、STEP23の判断結果が否定的になった場合には、対象物検知部31は、STEP25において、距離値保持モードをON状態(有効状態)にすると共に、前回距離値を対象物距離の保持値として記憶保持する。さらに、STEP26において、対応処理部32は、対象物距離の現在の保持値に応じて減速制御処理を実行すると共に、保持値を用いて減速制御処理を連続的に実行した回数である保持回数の値として「1」を設定する。
【0087】
この場合、STEP26では、対応処理部32は、対象物距離の保持値から指示電流値設定用データにより逆比例弁47の指示電流値を決定し、その指示電流値の電流を逆比例弁47(旋回用方向切換弁44にパイロイット圧を付与する側のパイロット油通路46a又は46bの逆比例弁47)に通電する。この場合、逆比例弁47の指示電流値は、前回の制御処理周期での指示電流値と同じ電流値に維持される。
【0088】
これにより、旋回用方向切換弁44には、旋回用操作レバー45aの操作量に応じたパイロット圧よりも減圧されたパイロット圧が、前回の制御処理周期での減圧度合と同じ減圧度合で付与される。このため、旋回体3の動作速度(旋回速度)が、前回の制御処理周期と同様の減速度合で減速される。
【0089】
STEP25,26の処理を実行した後の制御処理周期では、距離値保持モードがON状態になっているので、STEP22の判断結果が肯定的になる。この場合には、対応処理部32は、STEP27において、現在の保持値>今回距離値という条件(以降、第1’条件という)が成立するか否か、あるいは、現在の保持値≦今回距離値であり、且つ、現在の保持値と今回距離値の距離差(=|現在の保持値-今回距離値|)が所定値Dth以下の微小な距離差であるという条件(以降、第2’条件という)が成立するか否かを判断する。すなわち、STEP27では、対応処理部32は、前回距離値の代わりに現在の保持値を用いて、前記STEP23と同様の判断処理を実行する。なお、現在の保持値と今回距離値の距離差が所定値Dth以下の微小な距離差であるという条件だけを第2’条件として用いてもよい。
【0090】
STEP27の判断結果が肯定的になる状況は対象物が保持値の位置(STEP23の判断結果が肯定的から否定的に変化した直前の位置)よりも旋回体3に接近した状況、あるいは、今回距離値が(STEP23の判断結果が肯定的から否定的に変化した直前の距離値)と同程度の距離値になった状況である。
【0091】
そして、STEP27の判断結果が肯定的である場合には、対応処理部32は、STEP28において、距離値保持モードをOFF状態にリセットし、さらに、前記したSTEP24において、今回距離値に応じて減速制御処理を実行する。
【0092】
また、STEP28の判断結果が否定的となる状況は、上記第1’条件及び第2’条件が両方とも成立しない状況であるから、現在の保持値≦今回距離値であり、且つ、現在の保持値と今回距離値との距離差(=|保持値-今回距離値|)が所定値Dth以よりも大きくなる状況である。この状況は、換言すれば、対象物検知部31で検知された対象物の対象物距離(今回距離値)が現在の保持値よりも所定値Dth以上増加するように対象物が旋回体3から離れる方向に移動した状況である。
【0093】
なお、本実施形態では、対応処理部32は、今回の制御処理周期で、対象物検知部31が対象物を検知できなくなった場合にも、STEP28の判断結果が否定的になったものとみなす。
【0094】
そして、STEP28の判断結果が否定的になった場合には、対応処理部32は、STEP29において、現在の保持回数が所定回数Nthに達したか否かを判断する。この場合、所定回数Nthは、STEP5で用いる対象物検知の必要回数と同様に設定される。例えば、所定回数Nthは、STEP23の判断結果が肯定的から否定的に変化する直前の走行体2の動作速度(走行速度)又は旋回体3の動作速度(旋回速度)と、当該直前の対象物距離(=保持値)とに応じて設定される。
【0095】
STEP29判断結果が肯定的である場合(保持回数≧Nthである場合)には、対応処理部32は前記したSTEP28からの処理を実行する。従って、距離値保持モードがOFF状態にリセットされ、さらに、今回距離値に応じて減速制御処理が実行される。
【0096】
また、STEP29の判断結果が否定的である場合(保持回数<Nthである場合)には、対応処理部32は、STEP30において、対応処理部32は、対象物距離の現在の保持値に応じて減速制御処理を実行すると共に、保持回数の値を「1」だけ増加させる。この場合、保持値に応じて減速制御処理は、前記したSTEP26と同様に行われる。
【0097】
本実施形態では、旋回体3の減速制御処理は以上説明した如く実行される。この場合、本実施形態では、距離値保持モードでの減速制御処理が本発明における保持・対応処理に相当する。走行体2の減速制御処理も旋回体3の減速制御処理と同様に行わる。この場合、旋回体3の減速制御処理における上記の説明において、旋回体3、旋回用油圧モータ41、旋回用方向切換弁44、パイロット油通路46a,46b、逆比例弁47をそれぞれ、走行体2、走行用油圧モータ51、走行用方向切換弁54、パイロット油通路56a,56b、逆比例弁57に読み替えることで、走行体2の減速制御処理が説明され得る。
【0098】
なお、以上説明した処理では、距離値保持モードは、対象物距離の保持値に応じて減速制御処理を実行する距離値指示モードは、前記条件1’又は条件2’が成立する状況で、保持回数が所定回数Nthに達した場合に解除される(OFF状態に切り替わる)になっているが、条件1’又は条件2’が成立する状況で、保持回数が所定回数Nthに達する以外の状況でも距離値保持モードが解除される。
【0099】
具体的には、対象物検知部31で対象物が減速制御領域AR2から停止制御領域AR1に進入したことが検知された場合、あるいは、走行体2の走行動作の減速制御処理の実行中に、左右のクローラ2L,2Rに対応する走行用操作レバー55aが中立位置(A位置)に操作された場合、あるいは、旋回体3の旋回動作の減速制御処理の実行中に、旋回用操作レバー45aが中立位置(A位置)に操作された場合、あるいは、旋回用操作レバー45a及び走行用操作レバー55aを含むすべての操作レバーの操作による油圧ショベル1の動作(走行体2の走行動作、旋回体3の旋回動作、作業装置4の動作)を無効するための操作部(例えばロックレバー)がロック状態に操作された場合、あるいは、油圧ショベル1の対象物監視機能をOFF状態にする操作がなされた場合に、距離値保持モードが自動的に解除される。
【0100】
以上説明した実施形態によれば、走行体2又は旋回体3の動作速度を減速させる減速制御処理の実行中に、前記条件1又は前記条件2が成立せずに、STEP23の判断結果が否定的になった場合に、対象物距離が、STEP23の判断結果が肯定的から否定的に変化する直前の距離値(前回距離値)に保持されるとみなして(当該直前の距離値を保持値として記憶し)、当該保持値に応じて減速制御処理が実行される。
【0101】
このため、減速制御領域AR2内で対象物検知部31により検知された対象物の位置が誤検知あるいは検知誤差により、一時的に旋回体3から離れる方向に変化しても、あるいは、対象物を一時的に検知できなくなっても、走行体2又は旋回体3の動作速度が一時的に加速方向に変化してしまうのを防止できる。
【0102】
このため、減速制御処理の実行時に走行体2や旋回体3の動作が不安定になるのを防止できると共に、油圧ショベル1と対象物との接触の可能性が高まるのを防止できる。
【0103】
例えば、走行体2(又は旋回体3)の動作速度の減速制御処理の実行中に、図8Aの白丸のグラフで示すように、対象物距離の計測値が変化した場合、対象物距離の計測値が誤検知や計測誤差に起因して一時的に増加側に大きく変化する期間において、距離値保持モードがON状態となり、黒丸で示す如く、当該期間の開始直前の対象物距離の計測値が保持値として設定される。
【0104】
ここで、距離値保持モードが無く、対象物距離の計測値だけに応じて減速制御処理を実行すると、図8Bに破線のグラフで示すように、対象物距離の計測値が一時的に増加側に大きく変化する期間において、逆比例弁57(又は47)の指示電流値が大きく低下する。ひいては、走行体2(又は旋回体3)の動作速度の減速盛業処理の実行中に該動作速度の加速が発生してしまう。
【0105】
これに対して、本実施形態では、図8Bの実線のグラフで示すように逆比例弁57(又は47)の指示電流値が設定されるので、対象物距離の計測値が一時的に増加側に大きく変化する期間において、指示電流値が大きく低下することがない。このため、走行体2の走行時(又は旋回体3の旋回時)、走行用方向切換弁54(又は旋回用方向切換弁44)に付与されるパイロット圧は、図8Cに示すように、対象物距離の計測値が一時的に増加側に大きく変化する期間において、大きく減少することなく安定した圧力に保たれる。従って。走行体2(又は旋回体3)の安定した操作性を確保できる。
【0106】
また、走行体2(又は旋回体3)の動作速度の減速制御処理の実行中に、例えば図9に示すように、ある期間TAにおいて、監視領域AR内に対象物を検知することができなくなった場合に、当該期間TAにおいて、距離値保持モードがON状態となり、黒丸で示す如く、当該期間TAの開始直前の対象物距離の計測値が保持値として設定される。
【0107】
ここで、距離値保持モードが無く、対象物距離の計測値だけに応じて減速制御処理を実行すると、図9Bに破線のグラフで示すように、対象物を検知できない期間TAにおいて、逆比例弁57(又は47)の指示電流値が大きく低下する。ひいては、走行体2(又は旋回体3)の動作速度の減速盛業処理の実行中に該動作速度の加速が発生してしまう。
【0108】
これに対して、本実施形態では、図9Bの実線のグラフで示すように逆比例弁57(又は47)の指示電流値が設定されるので、対象物を検知できない期間TAにおいて、指示電流値が大きく低下することがない。このため、当該期間TAにおいて、走行体2の走行時(又は旋回体3の旋回時)、走行用方向切換弁54(又は旋回用方向切換弁44)に付与されるパイロット圧が増加側に大きく変化することなく安定した圧力に保たれる。従って、走行体2(又は旋回体3)の安定した操作性を確保できる。
【0109】
また、本実施形態では、走行体2(又は旋回体3)の動作速度の減速制御処理の実行中
に、距離値保持モードのON状態で保持回数が所定値Nthに達すると、距離値保持モードが解除される(OFF状態になる)ので、対象物検知部31により検知される対象物距離が継続的に増加する(対象物が実際に旋回体3から離れていく)場合には、逆比例弁57(又は47)の指示電流値が検知される対象物距離(今回距離値)に応じて減少する。このため、走行体2(又は旋回体3)の動作速度を、走行用操作レバー55a(又は旋回用操作レバー45a)の操作量に応じた速度に向かって加速させることができる。
【0110】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。以下に他の実施形態を例示する。前記実施形態では、対象物検知部31により検知される対象物距離が継続的に増加する(対象物が実際に旋回体3から離れていく)場合に、距離値保持モードでの保持回数が所定値Nthに達した後は、逆比例57(又は47)の指示電流値が検知される対象物距離(今回距離値)に応じて減少する。
【0111】
この場合、保持回数が所定値Nthに達した直後の対象物距離(今回距離値)と、距離値保持モードでの対象物距離の保持値との差が比較的大きいと、図10の破線のグラフで示すように、逆比例弁57(又は47)の指示電流値が急激に低下する。そこで、逆比例弁57(又は47)の指示電流値を対象物距離の増加に応じて低下させるときに、該指示電流値の低下速度(単位時間当たりの低下量)を制限するレートリミッタの処理を実行するようにしてもよい。このようにすることで、図10の実線のグラフで示すように、逆比例弁57(又は47)の指示電流値が急激に低下するのを防止することができる。ひいては、走行体2(又は旋回体3)の動作速度が、走行用操作レバー55a(又は旋回用操作レバー45a)の操作量に応じた動作速度に向かって急激に加速するのを防止することができる。
【0112】
また、逆比例弁57(又は47)の指示電流値を対象物距離の現象に応じて増加させるときには、レートリミッタの処理を実行しないことで、対象物が減速制御領域AR2内で旋回体3に接近する場合に、速やかに走行体2(又は旋回体3)の動作速度を減速させることができる。
【0113】
また、前記実施形態において、前記STEP23の判断結果が否定的になった場合に、走行用操作レバー55a又は旋回用操作レバー45aが、油圧ショベル1を対象物に接近させる方向に操作されているか、あるいは、油圧ショベル1を対象物から離す方向に操作されているのかを判定してもよい。当該判定は例えば、対象物検知部31で検知された対象物と油圧ショベル1との位置関係の履歴に基づいて行い得る。あるいは、当該判定を、対象物検知部31で検知され対象物と油圧ショベル1との現在の位置関係と走行体2又は旋回体3の動作方向とに基づいて行い得る。
【0114】
そして、走行用操作レバー55a又は旋回用操作レバー45aが、油圧ショベル1を対象物に接近させる方向に操作されていると判定された場合にだけ、距離値保持モートをON状態にして、該距離値保持モードでの減速制御処理を実行してもよい。また、対象物検知部31で検知された対象物距離の移動平均により得られた値(移動平均値)を逐次算出しておき、油圧ショベル1を対象物から離す方向に操作されていると判定された場合には、距離値保持モードをON状態にせずに、対象物距離の移動平均値の最新値に応じて(今回距離値の代わりに移動平均値の最新値を用いて)減速制御処理を実行してもよい。
【0115】
このようにすることで、対象物が油圧ショベル1に実際に接近することが明らかとみなし得る状況で、距離値保持モードでの減速制御処理を実行するので、該減速制御処理を好適に行うことが可能となる。また、対象物が油圧ショベル1から実際に離れていくことが明らかとみなし得る状況では、対象物距離の移動平均値を用いて減速制御処理を実行することで、走行体2又は旋回体3の動作速度を、走行用操作レバー55a又は旋回用操作レバー45aの操作量に応じた動作速度に滑らかに復帰させることができる。
【0116】
また、前記STEP23の判断結果が否定的になった場合に、距離値保持モードをON状態にすることを、STEP23の判断結果が否定的になる前に、対象物検知部31により所定回数、連続して対象物が検知されることを必要条件として実行してもよい。これにより、対象物検知部31による対象物の検知の信頼性が高い状況で、距離値保持モードでの減速制御処理を実行できるので、該減速制御処理を好適に実施できる。
【0117】
そして、対象物検知部31により所定回数、連続して対象物が検知されていない状況でSTEP23の判断結果が否定的になった場合には、例えば、減速制御処理を中止したり、対象物距離の移動平均値に応じて減速制御処理を実行してもよい。
【0118】
また、前記実施形態では、対象物が検知された場合の対応処理として、停止制御処理や減速制御処理を行うようにしたが、いずれか一方の制御処理を省略したり、あるいは、警報出力を発生することだけを対応処理として実行するようにしてもよい。また、対象物が油圧ショベル1に近づくほど、警報出力が強調されるような形態で警報出力を発生させるようにしてもよい。例えば、対象物が油圧ショベル1に近づくほど警報音を大きくするようにしてもよい。
また、前記実施形態では、作業機械として油圧ショベル1を例示したが、本発明の作業機械は、油圧ショベル1以外の作業機械であってもよい。
【0119】
また、前記実施形態では、対象物の検知のためのセンサとして単眼のカメラ20を用いたが、例えばステレオカメラを使用してもよい。あるいは、例えばミリ波レーダ、レーザレーダ等を用いて対象物を検知するように対象物検知部を構成してもよい。
【符号の説明】
【0120】
1…油圧ショベル(作業機械)、
2…走行体、
3…旋回体、
30…コントローラ(作業機械用監視装置)、
31…対象物検知部、
32…対応処理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の周囲の監視領域に存在する対象物を検知する処理を逐次実行する対象物検知部と、該対象物検知部により前記監視領域に対象物が検知された場合に、所定の対応処理を実行する対応処理部とを備える作業機械用監視装置であって、
前記対応処理部は、前記対象物検知部による対象物の誤検知もしくは当該対象物の検出誤差または外乱の影響により、前記対象物検知部による検知結果に変化が発生した場合、前記変化の前の前記検知結果に基づく前記所定の対応処理を実行するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械用監視装置において、
前記監視領域は、停止制御領域と減速制御領域とを含み、前記対応処理部は、前記監視領域に存在する対象物の位置が前記停止制御領域内の位置であるときには、前記作業機械の動作を停止させる制御処理を前記対応処理として実行し、前記監視領域に存在する対象物の位置が前記減速制御領域内の位置であるときには、前記作業機械の動作速度の減速度合が、該対象物が前記作業機械に近いほど大きくなるように該動作速度を減速させる制御処理を前記対応処理として実行するように構成されており、
前記対応処理部が、前記変化が発生した場合、前記所定の対応処理は、前記停止制御領域と前記減速制御領域とのうち、少なくとも前記減速制御領域での対応処理を含むことを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項3】
請求項2記載の作業機械用監視装置において、
前記対応処理部は、前記監視領域のうちの前記減速制御領域内で対象物が検知されたとき、該対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離が所定量以上増加した場合に前記所定の対応処理を実行するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項4】
請求項3記載の作業機械用監視装置において、
前記対応処理部は、前記変化の発生の直前に前記減速制御領域で検知された対象物に関する前記対象物距離が、前記変化の発生後、前記変化の発生の直前における距離よりも前記所定量以上大きい距離に維持される状態において、前記所定の対応処理を所定回数、連続して実行し、該所定の対応処理の実行回数が該所定回数に達した後は、前記対象物検知部の検知結果から得られる前記対象物距離の最新値に応じて前記対応処理を実行するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項5】
請求項1記載の作業機械用監視装置において、
前記対応処理部は、前記所定の対応処理として、前記作業機械の動作速度を減速させる制御処理を実行するとき、該動作速度の減速度合を所定値以下に制限するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項6】
請求項1記載の作業機械用監視装置において、
前記対応処理部は、前記所定の対応処理を実行しているときに、所定の解除操作が行われたとき、該所定の対応処理を中止するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項7】
請求項1記載の作業機械用監視装置において、
前記対応処理部は、前記変化が発生したとき、前記作業機械が検知された対象物に接近するよう操作されているか、該対象物から離れるように操作されているかを判定し、前記所定の対応処理を、前記作業機械が検知された対象物に接近するように操作されていると判定された場合に実行し、前記作業機械が検知された対象物から離れるように操作されていると判定された場合には、前記対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離を移動平均してなる距離値を用いて前記対応処理を実行するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【請求項8】
請求項1記載の作業機械用監視装置において、
前記対応処理部は、前記所定の対応処理を、前記変化の発生前に、前記対象物検知部により、所定回数、連続して対象物が検知されたことを必要条件として、実行するように構成されていることを特徴とする作業機械用監視装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の作業機械用監視装置は、上記の目的を達成するために、
作業機械の周囲の監視領域に存在する対象物を検知する処理を逐次実行する対象物検知部と、該対象物検知部により前記監視領域に対象物が検知された場合に、所定の対応処理を実行する対応処理部とを備える作業機械用監視装置であって、
前記対応処理部は、前記対象物検知部による対象物の誤検知もしくは当該対象物の検出誤差または外乱の影響により、前記対象物検知部による検知結果に変化が発生した場合、前記変化の前の前記検知結果に基づく前記所定の対応処理を実行するように構成されていることを特徴とする(第1発明)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記第1発明では、前記監視領域は、停止制御領域と減速制御領域とを含み、前記対応処理部は、前記監視領域に存在する対象物の位置が前記停止制御領域内の位置であるときには、前記作業機械の動作を停止させる制御処理を前記対応処理として実行し、前記監視領域に存在する対象物の位置が前記減速制御領域内の位置であるときには、前記作業機械の動作速度の減速度合が、該対象物が前記作業機械に近いほど大きくなるように該動作速度を減速させる制御処理を前記対応処理として実行するように構成され得る。この場合、前記対応処理部が、前記変化が発生した場合、前記所定の対応処理は、前記停止制御領域と前記減速制御領域とのうち、少なくとも前記減速制御領域での対応処理を含むことが好ましい(第2発明)。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
これによれば、前記変化が一時的に発生した場合に作業機械の動作速度の急激な加速が生じるのが防止される。また、対象物が作業機械に接近することが対象物検知部により検知される状況では、作業機械の動作速度を速やかに減速させることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
上記第2発明では、前記対応処理部は、前記監視領域のうちの前記減速制御領域内で対象物が検知されたとき、該対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離が所定量以上増加した場合に前記所定の対応処理を実行するように構成され得る(第3発明)。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
これによれば、対象物が作業機械から実際に離れていく際の対象物距離の増加量よりも大きな増加量で対象物距離が作業機械から離れる方向に変化した判断し得る状況で、作業機械の減速制御が過剰にはたらくのを防止しつつ、作業機械の動作速度を安定に復帰させていくことが可能となる。なお、実際に離れていく際の対象物距離の増加量よりも大きな増加量で対象物距離が作業機械から離れる方向に変化した判断し得る状況というのは、例えば監視領域内の対象物が瞬間的に検知できない状況となり、より遠くの対象物が検知される状況等が想定される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
上記第3発明では、前記対応処理部は、前記変化の発生の直前に前記減速制御領域で検知された対象物に関する前記対象物距離が、前記変化の発生後、前記変化の発生の直前における距離よりも前記所定量以上大きい距離に維持される状態において、前記所定の対応処理を所定回数、連続して実行し、該所定の対応処理の実行回数が該所定回数に達した後は、前記対象物検知部の検知結果から得られる前記対象物距離の最新値に応じて前記対応処理を実行するように構成され得る(第4発明)。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
前記変化が一時的に発生した場合に、作業機械の動作速度を減速させる制御処理に用いる対象物距離を安定化させ、該動作速度が過剰に加速してしまうのを効果的に防止できる。また、対象物が作業機械から実際に離れていく状況では、保持・対応処理の実行回数が所定回数に達した後に、作業機械の動作速度を復帰させることができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
上記第1~第4発明のいずれかの発明では、前記対応処理部は、前記所定の対応処理として、前記作業機械の動作速度を減速させる制御処理を実行するとき、該動作速度の減速度合を所定値以下に制限するように構成され得る(第5発明)。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
これによれば、作業機械の動作速度を減速させている状態で、対象物が作業機械から実際に離れていく状況では、当該作業機械の動作速度が急激に復帰するのを防止し、作業機械の動作の安定性を高めることができる。また、対象物が作業機械から実際に接近する状況では、当該作業機械の動作速度を速やかに減速させることが可能となる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
上記第1~第5発明のいずれかの発明では、前記対応処理部は、前記所定の対応処理を実行しているときに、所定の解除操作が行われたとき、該所定の対応処理を中止するように構成され得る(第6発明)。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
これによれば、所定の対応処理を所定の解除操作によって、中止することができるので、作業機械の操縦の利便性を高めることができる。なお、前記所定の解除操作としては、作業装置用監視装置による監視機能をOFF状態にする操作、操作レバーによる操作をロック状態とロック解除状態に切り替えることができるロックレバーをロック状態にする操作、作業機械の操作レバーの中立位置への操作等を採用し得る。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
上記第1~第6発明のいずれかの発明では、前記対応処理部は、前記変化が発生したとき、前記作業機械が検知された対象物に接近するよう操作されているか、該対象物から離れるように操作されているかを判定し、前記所定の対応処理を、前記作業機械が検知された対象物に接近するように操作されていると判定された場合に実行し、前記作業機械が検知された対象物から離れるように操作されていると判定された場合には、前記対象物と前記作業機械との間の距離である対象物距離を移動平均してなる距離値を用いて前記対応処理を実行するように構成されているという態様を採用し得る(第発明)。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
これによれば、対象物が作業機械に実際に接近することが明らかとみなし得る状況で、所定の対応処理を実行するので、当該所定の対応処理を適切に行うことが可能となる。また、対象物が作業機械から実際に離れていくことが明らかとみなし得る状況では、対象物距離を移動平均してなる距離値を用いて前記対応処理を実行するので、滑らかに変化す対象物距離を用いて対応処理を実行することができる。特に、対応処理が、前記第2発明における減速制御領域での対応処理である場合、作業機械の動作速度を滑らかに復帰させることができる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
上記第1~第7発明のいずれかの発明では、前記対応処理部は、前記所定の対応処理を、前記変化の発生前に、前記対象物検知部により、所定回数、連続して対象物が検知されたことを必要条件として、実行するように構成され得る(第8発明)。
これによれば、対象物検知部による対象物の検知の信頼性が高い状況でのみ、所定の対応処理を実行できる。