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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155120
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04014 20160101AFI20241024BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241024BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20241024BHJP
【FI】
H01M8/04014
H01M8/04 J
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069551
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 大河
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秀貴
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB22
5H127AB27
5H127BA01
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA37
5H127BA45
5H127BA47
5H127BA57
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB12
5H127BB14
5H127BB24
5H127BB27
5H127BB37
5H127EE03
(57)【要約】
【課題】高い還流率で残余燃料ガスを還流させても、燃料電池モジュールの温度を適正温度に保つ。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池と、燃焼部と、これらを収容する断熱性のケースと、ケース外へ排出された残余燃料ガスの一部を燃料ガス供給路に還流させる還流路と、ケース外へ排出された残余燃料ガスの残りを燃焼部に供給する燃焼用残余燃料ガス供給路と、ケース内に設けられ酸化剤ガス供給路を流れる酸化剤ガスと燃焼部からの燃焼排ガスとの熱交換を行なう第1酸化剤ガス熱交換部と、ケース内に設けられ酸化剤ガス供給路を流れる酸化剤ガスと燃料電池からの残余燃料ガスとの熱交換を行なう第2酸化剤ガス熱交換部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスとの反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池からの残余燃料ガスと残余酸化剤ガスとの混合ガスを燃焼させる燃焼部と、
断熱性を有し、前記燃料電池と前記燃焼部とを収容するケースと、
前記燃料ガスを前記燃料電池に供給する燃料ガス供給路と、
前記酸化剤ガスを前記燃料電池に供給する酸化剤ガス供給路と、
前記燃料電池からの残余燃料ガスを前記ケース外へ排出する残余燃料ガス流路と、
前記ケース外へ排出された残余燃料ガスの一部を前記燃料ガス供給路に還流させる還流路と、
前記ケース外へ排出された残余燃料ガスの残りを前記燃焼部に供給する燃焼用残余燃料ガス供給路と、
前記ケース内に設けられ、前記酸化剤ガス供給路を流れる酸化剤ガスと前記燃焼部からの燃焼排ガスとの熱交換を行なう第1酸化剤ガス熱交換部と、
前記ケース内に設けられ、前記酸化剤ガス供給路を流れる酸化剤ガスと前記燃料電池からの残余燃料ガスとの熱交換を行なう第2酸化剤ガス熱交換部と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記第2酸化剤ガス熱交換部は、前記酸化剤ガス供給路における前記第1酸化剤ガス熱交換部の下流側に設けられている、
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池システムであって、
前記ケース内に設けられ、前記第1酸化剤ガス熱交換部を通過する前の燃焼排ガスと前記燃料ガス供給路を流れる燃料ガスとの熱交換を行なう燃料ガス熱交換部を備える、
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、燃料電池システムについて開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料電池システムとしては、燃料電池スタックと、燃焼器と、燃料電池スタックから排出される燃料極オフガスを燃料電池スタックに循環させるリサイクル燃料ラインと、を備える固体酸化物形燃料電池システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。リサイクル燃料ラインは、燃料極オフガスに含まれる水蒸気を脱湿する凝縮器と、凝縮器の下流に配置されて燃料極オフガスの一部を燃焼器に分配する分配部と、が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-230926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した燃料電池システムでは、燃料電池スタックに還流させる燃料極オフガスの割合(還流率)を高くすることで、高いエネルギ効率を実現することができる。しかしながら、還流率が高くなるほど、燃焼器に対する燃料極オフガスの分配量が減少することから、燃料電池スタックの温度を適正温度に保つために熱量不足が生じるおそれがある。
【0005】
本開示の燃料電池システムは、燃料電池からの残余燃料ガスの一部を還流させると共に残りを燃焼部に供給するものにおいて、高い還流率で残余燃料ガスを還流させても、燃料電池モジュールの温度を適正温度に保つことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の燃料電池システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の燃料電池システムは、
燃料ガスと酸化剤ガスとの反応により発電する燃料電池と、
前記燃料電池からの残余燃料ガスと残余酸化剤ガスとの混合ガスを燃焼させる燃焼部と、
断熱性を有し、前記燃料電池と前記燃焼部とを収容するケースと、
前記燃料ガスを前記燃料電池に供給する燃料ガス供給路と、
前記酸化剤ガスを前記燃料電池に供給する酸化剤ガス供給路と、
前記燃料電池からの残余燃料ガスを前記ケース外へ排出する残余燃料ガス流路と、
前記ケース外へ排出された残余燃料ガスの一部を前記燃料ガス供給路に還流させる還流路と、
前記ケース外へ排出された残余燃料ガスの残りを前記燃焼部に供給する燃焼用残余燃料ガス供給路と、
前記ケース内に設けられ、前記酸化剤ガス供給路を流れる酸化剤ガスと前記燃焼部からの燃焼排ガスとの熱交換を行なう第1酸化剤ガス熱交換部と、
前記ケース内に設けられ、前記酸化剤ガス供給路を流れる酸化剤ガスと前記燃料電池からの残余燃料ガスとの熱交換を行なう第2酸化剤ガス熱交換部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本開示の燃料電池システムでは、燃料電池からの残余燃料ガスの一部を還流させると共に残りを燃焼部に供給するものにおいて、酸化剤ガス供給路を流れる酸化剤ガスと燃焼部からの燃焼排ガスとの熱交換を行なう第1酸化剤ガス熱交換部と、酸化剤ガス供給路を流れる酸化剤ガスと燃料電池からの残余燃料ガスとの熱交換を行なう第2酸化剤ガス熱交換部とがケース内に設けられる。これにより、残余燃料ガスを十分に冷却して、残余燃料ガスがケース外に持ち去る熱量を低減することができる。このため、還流率を高めてエネルギ効率の向上を図ることができると共に、高い還流率により燃焼部に分配される残余燃料ガスが少なくなっても、燃料電池スタックと燃焼器とを含む燃料電池モジュールの温度を適正温度に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の燃料電池システムの概略構成図である。
図2】他の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図3】他の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図4】他の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図5】他の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の燃料電池システム10の概略構成図である。実施形態の燃料電池システム10は、図1に示すように、燃料電池スタック21を含む発電モジュール20を備える。また、燃料電池システム10は、発電モジュール20の運転に必要な各種補機として、燃料ガス(水素ガス)を発電モジュール20に供給する燃料供給系40や、酸化剤ガス(エア)を発電モジュール20に供給するエア供給系50、循環系60、発電モジュール20の発電に伴って生成される排熱を回収する排熱回収系70等を備える。
【0012】
発電モジュール20は、燃料電池スタック21の他に、燃焼器31や熱交換器32,33,34を含み、これらは、断熱性を有するモジュールケース29に収容されている。
【0013】
燃料電池スタック21は、安定化ジルコニア(例えばYSZ)等からなる電解質と、当該電解質の一方の面側に配置されるNi等の触媒金属と安定化ジルコニア等との複合体からなる燃料極と、当該電解質の他方の面側に配置されるLSCF等の空気極と、をそれぞれ含む複数の固体酸化物形の単セルを備える。燃料電池スタック21は、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応により発電する。
【0014】
燃料電池スタック21の燃料極入口には、燃料ガス供給管22の一端が接続され、燃料ガス供給管22の他端には、燃料供給系40が接続されている。また、燃料ガス供給管22は、燃料供給系40から熱交換器32を通過して燃料極入口に至るように配管されている。燃料電池スタック21の空気極入口には、酸化剤ガス供給管23の一端が接続され、酸化剤ガス供給管23の他端には、エア供給系50が接続されている。また、酸化剤ガス供給管23は、エア供給系50から熱交換器34、熱交換器33を順に通過して空気極入口に至るように配管されている。
【0015】
また、燃料電池スタック21の燃料極出口には、燃料極オフガス配管24の一端が接続され、燃料極オフガス配管24の他端には、モジュールケース29外に設けられた循環系60(凝縮器61)に接続されている。また、燃料極オフガス配管24は、燃料極出口から熱交換器33、熱交換器32を順に通過して凝縮器61に至るように配管されている。燃料電池スタック21の空気極出口には、空気極オフガス配管25の一端が接続され、空気極オフガス配管25の他端には、燃焼器31が接続されている。
【0016】
燃焼器31は、導入される燃料極オフガスと空気極オフガスとの混合ガスを燃焼させるものであり、燃焼器31には、当該混合ガスを着火させるための着火器(図示せず)が設けられている。燃焼器31の燃焼熱により、発電モジュール20の温度(特に、燃料電池スタック21の温度)は、適正温度に保たれる。燃焼器31で混合ガスの燃焼に伴って生成される燃焼排ガスは、熱交換器32、熱交換器34を順に通過してからモジュールケース29外に設置された排熱回収系70に供給される。
【0017】
燃料供給系40は、水素供給源(例えば水素タンク1)に一端が接続されると共に熱交換器32の入口に他端が接続された水素供給管41と、水素供給管41に設置された水素ブロワ44と、を有する。水素ブロワ44を作動させることにより、燃料ガスとしての水素ガスが発電モジュール20(熱交換器32)に供給される。また、水素供給管41における水素ブロワ44の上流側には、ゼロガバナ43(均圧弁)が設置されており、当該ゼロガバナ43の上流側には、負圧防止弁(図示せず)や開閉弁42(2連弁)、流量センサ(図示せず)等が設置されている。発電モジュール20に供給された水素ガスは、熱交換器32に導入され、燃焼器31からの燃焼熱や熱交換器32を通過する高温の燃焼排ガスとの熱交換により昇温させられた後、燃料ガス供給管22を介して燃料電池スタック21の燃料極に供給される。
【0018】
エア供給系50は、エア供給管51と、エア供給管51の入口に設けられたフィルタ52と、エア供給管51に設置されたエアブロワ53と、を有する。エアブロワ53を作動させることにより、フィルタ52からエアが吸引されると共に吸引されたエアが発電モジュール20へと圧送(供給)される。また、エア供給管51には、流量センサ(図示せず)が設置されている。発電モジュール20に導入されたエアは、熱交換器34で燃焼排ガスとの熱交換により昇温させられ、熱交換器33で燃料極オフガスとの熱交換により昇温させられた後、燃料電池スタック21の空気極に供給される。
【0019】
循環系60は、燃料極オフガス配管24の他端に接続されると共に冷却水と熱交換可能な熱交換流路を有する凝縮器61と、凝縮器61と熱利用機器(図示せず)とを接続する循環配管64と、循環配管に設置された循環ポンプ(図示せず)と、を備える。循環ポンプを作動させることで、燃料電池スタック21の燃料極側から排出されて凝縮器61に供給された燃料極オフガスは、循環配管64を循環する冷却水との熱交換により、冷却させられ、凝縮させられる。これにより、燃料極オフガスに含まれる水蒸気の少なくとも一部が除去される。
【0020】
また、循環系60は、熱交換流路の出口に接続された凝縮後燃料極オフガス配管62と、凝縮後燃料極オフガス配管62から分岐して燃焼器31に接続された燃焼用燃料極オフガス配管63と、凝縮後燃料極オフガス配管62から分岐して燃料供給系40の水素供給管41における水素ブロワ44とゼロガバナ43との間に接続された還流配管65と、還流配管65に設置された調整弁66(電磁弁)とを備える。調整弁66を開弁することにより、凝縮器61を通過した燃料極オフガスの一部を還流させて燃料供給系40から発電モジュール20に供給することができる。これにより、凝縮後の燃料極オフガスを燃料ガスとして再利用することで、エネルギ効率をより向上させることができる。なお、還流配管65には、調整弁66に代えてオリフィスが設けられてもよい。また、凝縮器61を通過した燃料極オフガスの残りは、燃焼用燃料極オフガス配管63を介して燃焼器31へ供給され、燃焼器31にて燃焼させられる。
【0021】
排熱回収系70は、燃焼排ガスの排熱の少なくとも一部を回収するものである。例えば、排熱回収系70は、モジュールケース29外に設置されると共に燃焼排ガス配管26に接続された熱交換器71と、蓄熱タンク(図示せず)と、熱交換器71と蓄熱タンクとを接続する循環配管72と、循環配管72に設置された循環ポンプ(図示せず)とにより構成することができる。循環ポンプを作動させることにより、熱交換器71に供給された燃焼排ガスは、蓄熱タンク内の熱交換流体と熱交換され、当該燃焼排ガスの排熱の少なくとも一部が、蓄熱タンクに回収される。
【0022】
次に、こうして構成された燃料電池システム10の動作について説明する。
【0023】
燃料電池スタック21の燃料極には、燃料ガスとして燃料供給系40により供給される水素ガスが燃料ガス供給管22を介して導入され、燃料電池スタック21の空気極には、酸化剤ガスとしてエア供給系50により供給されるエアが酸化剤ガス供給管23を介して導入される。そして、空気極では、酸化物イオン(O2-)が生成され、当該酸化物イオンが電解質を透過して燃料極で水素と反応することにより電気エネルギが得られる。
【0024】
各単セルの燃料極において電気化学反応(発電)に使用されなかった燃料極オフガスは、エア供給系50から発電モジュール20に導入されたエアと熱交換器33で熱交換し、燃料供給系40から発電モジュール20に導入された燃料ガス(水素ガス)と熱交換器32で熱交換した後、モジュールケース29外に設置された凝縮器61に供給される。そして、燃料極オフガスは、凝縮器61により冷却させられて燃料極オフガスに含まれる水蒸気が凝縮させられる。凝縮器61を通過した燃料極オフガスのうちの一部は、還流配管65を通って水素供給管41に供給され、燃料電池スタック21に還流する。凝縮器61を通過した燃料極オフガスのうちの残りは、燃焼用燃料極オフガス配管63を通って燃焼器31に供給される。
【0025】
各単セルの空気極において電気化学反応(発電)に使用されなかった空気極オフガスは、燃焼器31に直接に供給される。燃焼器31に導入された燃料極オフガスは、水素を含む可燃性ガスであり、燃焼器31に導入された酸素を含む空気極オフガスと混合され、燃焼器31で混合ガスが燃焼することにより、燃焼熱によって発電モジュール20(モジュールケース29内)の温度が適正温度に保持される。上述したように、燃焼器31に導入される燃料極オフガスは、凝縮器61で燃料極オフガスに含まれる水蒸気の少なくとも一部が除去されているため、燃焼性を良好にすることができる。燃焼器31で生成された燃焼排ガスは、燃料供給系40から燃料極に供給される燃料ガス(水素ガス)と熱交換器32で熱交換した後、エア供給系50から空気極に供給されるエアと熱交換器34で熱交換してから、排熱回収系70に供給される。そして、燃焼排ガスは、排熱回収系70で排熱が回収された後、外気へ排出される。
【0026】
ここで、本実施形態の燃料電池システム10では、凝縮器61を通過した燃料極オフガスのうち一部を還流配管65により水素供給管41に還流させる。燃料極オフガスを燃料ガスとして再利用することで、燃料供給系40(水素ブロワ44)が供給した燃料ガスに対する燃料電池スタック21で利用された燃料ガスの割合(システム全体の燃料利用率)を高めることができ、高い発電効率を得ることができる。しかし、燃焼器31には凝縮器61を通過した燃料極オフガスのうち残りの燃料極オフガスが供給されるから、燃料極オフガスの還流率が高いほど、燃焼器31への燃料極オフガスの分配量は減少する。このため、発電モジュール20の温度を適正温度に保つのに必要な熱量に対して、燃焼器31から付与される熱量に不足が生じるおそれがある。本実施形態では、エア供給系50から発電モジュール20に導入されるエアを低温流体として、熱交換器33で燃料電池スタック21から排出される高温の燃料極オフガスと熱交換させることにより、燃料極オフガスを十分に冷却してからモジュールケース29外へ排出させる。これにより、発電モジュール20から逃げる熱量を低減することができる。
【0027】
さらに、本実施形態の燃料電池システム10では、酸化剤ガス供給管23には、熱交換器33よりも上流側に熱交換器34が設けられ、熱交換器33を通過する前のエアを燃焼器31で生成される燃焼排ガスと熱交換させる。これにより、酸化剤ガス供給管23を流れるエアを、2段階で昇温させて燃料電池スタック21の空気極に供給することができる。これらの結果、燃焼器31からの少ない熱量で発電モジュール20、特に燃料電池スタック21の温度を適正温度に保つことができる。
【0028】
また、本実施形態の燃料電池システム10では、燃料ガス供給管22には、燃料ガス供給管22を流れる燃料ガスを、燃焼器31で生成された燃焼排ガスと熱交換する熱交換器32が設けられる。これにより、燃焼器31からの高温の燃焼排ガスにより燃料ガスを十分に昇温させることができ、燃料電池スタック21を安定して発電させることができる。
【0029】
また、本実施形態の燃料電池システム10では、燃料供給系40から燃料ガスとして水素ガスを燃料電池スタック21の燃料極に供給するものとし、当該燃料電池スタック21から排出された燃料極オフガスを凝縮器61に通してから燃料供給系40(水素供給管41)に還流させる。燃料極オフガスに含まれる水蒸気を除去してから水素供給管41に還流させることで、水蒸気により燃料電池スタック21の化学反応が妨げられるのを防止することができる。
【0030】
上述した実施形態では、燃料電池システム10は、燃料供給系40から燃料ガス供給管22に供給される燃料ガスを低温流体として熱交換する熱交換器として、燃料ガスと燃焼器31で発生した燃焼排ガスとの熱交換を行なう熱交換器32を備えるものとした。しかし、図2の他の実施形態に係る燃料電池システム110に示すように、熱交換器32に加えて、燃料ガス供給管22における熱交換器32の上流側に、燃料ガスと熱交換器33を通過した燃料極オフガスとの熱交換を行なう熱交換器132を備えてもよい。これにより、燃料極オフガスが発電モジュール20から持ち去る熱量を更に低減することができる。
【0031】
上述した実施形態では、燃料電池システム10は、エア供給系50から酸化剤ガス供給管23に供給されるエアを低温流体として熱交換する熱交換器として、エアと熱交換器32を通過した燃焼排ガスとの熱交換を行なう熱交換器34と、熱交換器34を通過したエアと燃料極から排出された燃料極オフガスとの熱交換を行なう熱交換器35と、を備えるものとした。しかし、図3の他の実施形態に係る燃料電池システム210に示すように、エアと燃焼器31で発生した燃焼排ガスとの熱交換を行なう熱交換器234と、熱交換器234を通過した後のエアと燃料極から排出された燃料極オフガスとの熱交換を行なう熱交換器233と、を備えてもよい。この場合、熱交換器32に代えて、燃料供給系40から供給される燃料ガスと熱交換器234を通過した後の燃焼排ガスとの熱交換を行なう熱交換器232を備えてもよい。燃焼器31で発生した燃焼排ガスは、熱交換器234を通過した後、熱交換器232を通過して排熱回収系70に供給される。
【0032】
また、図4の他の実施形態に係る燃料電池システム310に示すように、エア供給系50から酸化剤ガス供給管23に供給されるエアを低温流体として熱交換する熱交換器として、エアと燃料極から排出された燃料極オフガスとの熱交換を行なう熱交換器334と、熱交換器334を通過したエアと熱交換器32を通過した燃焼排ガスとの熱交換を行なう熱交換器333と、を備えてもよい。
【0033】
上述した実施形態では、燃料供給系40は、燃料ガスとして水素ガスを燃料電池スタック21の燃料極に供給するものとしたが、天然ガスやLPガス等の原燃料ガスを、水素ガスを含む燃料ガスに改質して燃料電池スタック21の燃料極に供給するようにしてもよい。この場合、燃料電池システムは、燃料供給系やエア供給系に加えて、水タンクと水タンク内の水(改質水)を圧送する水ポンプとを含む水供給系を備え、燃料供給系は、原燃料ガスを圧送するガスポンプと原燃料ガス中の硫黄成分を除去する脱硫器とを備え、モジュールケース29内には、水供給系から水(改質水)の供給を受けて水蒸気を生成する蒸発器と、蒸発器からの水蒸気を用いて原燃料ガスを燃料ガスに改質する改質器とを備えていればよい。また、この場合、凝縮器61を通過した燃料極オフガスを燃料供給系に還流させると共に、凝縮器61で燃料極オフガスに含まれる水蒸気が凝縮して得られた凝縮水を水供給系(水タンク)に供給するようにしてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、各燃料電池スタック21は、水素とエアに含まれる酸素との反応により発電する発電動作を行なうものとした。しかし、燃料電池スタック21は、可逆作動固体酸化物セルスタックであり、発電動作を実行するFCモードと、電源から電力が供給された状態で高温水蒸気電解により水素を生成する電解動作を実行するECモードと、を備えてもよい。なお、電源としては、系統電源や、太陽光発電装置などの再生可能エネルギ、蓄電池などを用いることができる。
【0035】
図5は、他の実施形態に係る燃料電池システム410の概略構成図である。他の実施形態に係る燃料電池システム410は、可逆作動固体酸化物形セルスタックとして機能する燃料電池スタック21を含む発電モジュール20や、燃料供給系40、エア供給系50、循環系60、排熱回収系70に加えて、水供給系80と水素回収系90とが含まれる。
【0036】
水供給系80は、水(原料水)を貯留する水タンク81と、水タンク81に一端が接続されると共に熱交換器32に他端が接続された水供給管82と、水供給管82に設置された水ポンプ83と、を有する。水ポンプ83を作動させることで、水タンク81内の原料水は、発電モジュール20へと圧送(供給)される。原料水は、熱交換器32で蒸発させられて水蒸気に変換される。
【0037】
水素回収系90は、凝縮後燃料極オフガス配管62から分岐し水素タンク1に接続された回収配管91と、回収配管91に設置された昇圧ポンプ92と、を有する。昇圧ポンプ92を作動させることで、凝縮器61を通過して水蒸気が除去された燃料極オフガス(水素ガス)は、水素タンク1に回収される。
【0038】
ECモードでは、燃料電池スタック21の燃料極には、燃料ガスとして水供給系80と燃料供給系40とにより供給される水蒸気と若干量の水素ガスとが燃料ガス供給管22を介して導入され、燃料電池スタック21の空気極には、スイープガスとしてエア供給系50により供給されるエアが酸化剤ガス供給管23を介して導入される。そして、電源により燃料電池スタック21(可逆作動固体酸化物形セルスタック)の端子間に所定電圧の電力が供給されると、燃料極に導入された水蒸気は、燃料極において電解作用により水素と酸素イオン(O2-)とに分解され、当該酸素イオンが電解質を透過することで空気極において酸素が生成される。なお、燃料極には、水蒸気と共に若干量の水素ガスも供給されるため、燃料極が還元雰囲気に保たれ、当該燃料極が酸化劣化するのを抑制することができる。燃料極で生成された水素ガスは、電解未反応の水蒸気と共に燃料極オフガスとして排出され、空気極に供給されるエアと熱交換器33で熱交換してからモジュールケース29外へ排出される。そして、水素ガスと水蒸気とを含む燃料極オフガスは、凝縮器61に供給され、凝縮器61により冷却させられて水蒸気が除去された後、凝縮後燃料極オフガス配管62、回収配管91を介して水素タンク1に貯留される。また、凝縮器61を通過した燃料極オフガス(水素ガス)の一部は、還流配管65を通って還元用水素として水素供給管41に還流し、残りの燃料極オフガスは、燃焼用燃料極オフガス配管63を通って燃焼器31へ供給される。一方、空気極で生成された酸素ガスは、空気極を通過するエアと共に空気極オフガスとして燃焼器31へ直接に供給される。燃焼器31で燃料極オフガスと空気極オフガスとの混合ガスが燃焼することにより生成される燃焼排ガスは、熱交換器32を通過することで、水供給系80から供給される水(原料水)を蒸発させて水蒸気を生成すると共に生成した水蒸気を昇温する。そして、熱交換器32を通過した燃焼排ガスは、熱交換器34を通過し、エア供給系50から空気極に供給されるエアと熱交換してから、排熱回収系70を経て外気へ排出される。
【0039】
こうして構成された他の実施形態に係る燃料電池システム410においては、電力の需要に応じてFCモードとECモードとを切り替えて実行することができる。例えば、負荷Lが電力を要求している場合にはFCモードを選択し、負荷Lが電力を要求していない場合にはECモードを選択することができる。また、デマンドレスポンス契約を締結した燃料電池システム410においては、電力の需要量を減らす下げDRが要求された場合にはFCモードを選択し、電力の需要量を増やす上げDRが要求された場合にはECモードを選択することができる。
【0040】
なお、動作モードとしてFCモードとECモードとを備える燃料電池システム410は、図1に示す燃料電池システム10に、水供給系80と水素回収系90とを追加して構成された。しかし、図2に示す燃料電池システム110や図3に示す燃料電池システム210、図4に示す燃料電池システム310に水供給系80と水素回収系90とを追加して構成されてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、燃料電池システム10は、単一の燃料電池スタック21を備えるものとしたが、直列あるいは並列に接続された複数の燃料電池スタック21を備えてもよい。この場合、燃料電池スタック21毎に燃料供給系40、エア供給系50を設けて、燃料電池スタック21毎に供給する燃料ガスやエアを個別に制御してもよい。
【0042】
以上、本開示を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本開示は、燃料電池システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10,110、210,310,410 燃料電池システム、21 燃料電池スタック(燃料電池)、22 燃料ガス供給管(燃料ガス供給路)、23 酸化剤ガス供給管(酸化剤ガス供給路)、24 燃料極オフガス配管(残余燃料ガス流路)、29 モジュールケース(ケース)、31 燃焼器(燃焼部)、32 熱交換器(燃料ガス熱交換部)、33 熱交換器(第2酸化剤ガス熱交換部)、34 熱交換器(第1酸化剤ガス熱交換部)、63 燃焼用燃料極オフガス配管(燃焼用残余燃料ガス供給路)、65 還流配管(還流路)。
図1
図2
図3
図4
図5