(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155122
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】高剛性ポリエチレンテレフタレートフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20241024BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241024BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20241024BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B27/00 L
B32B27/36
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069555
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川口 健太
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 潤
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
5E001
【Fターム(参考)】
4F071AA46
4F071AF14Y
4F071AF15
4F071AF20
4F071AF21
4F071AF31
4F071AF61
4F071AG28
4F071AH12
4F071BA01
4F071BA09
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F100AK42A
4F100AK52B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DD07B
4F100GB41
4F100JA03
4F100JA11
4F100JA11A
4F100JK02
4F100JK04
4F100JK04A
4F100JK07
4F100JK14B
4F100JL14B
4F100JN18
5E001AB03
5E001AJ02
(57)【要約】
【課題】曲げ剛性に優れたポリエチレンテレフタレートフィルムを提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレートフィルムでは、厚み15μmに換算するMD方向の曲げ剛性FaとTD方向の曲げ剛性Fbの和が0.05gf・cm2/cm以上である。特に、フィルムを構成するポリマー分子で形成される結晶に関して、小角X線散乱法で得られる結晶サイズが3.0nm以上である。このようなポリエチレンテレフタレートフィルムは、2軸延伸ポリエステルフィルムを融点(Tm)以下の高温で複数回多段延伸することで、内部分子鎖を伸長させながら結晶性を高めることで、融点付近で延伸する方法により得られる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む組成物からなるフィルムであり、厚み15μmに換算するMD方向の曲げ剛性FaとTD方向の曲げ剛性Fbの和が0.05gf・cm2/cm以上であるポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項2】
フィルムを構成するポリマー分子で形成される結晶に関して、小角X線散乱法で得られる結晶サイズが3.0nm以上である請求項1に記載のポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項3】
全方位曲げ剛性の最大値を取る方向が長手方向である、請求項1に記載のポリエチレンテレフタレートフィルム。
【請求項4】
請求項1に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムを基材層とし、基材層の少なくともどちらか一方の表面に離型層が積層された積層フィルム。
【請求項5】
離型層はシリコーン離型成分を含有する組成物からなり、セラミックグリーンシート製造用離型フィルムとして用いられる、請求項4に記載の積層フィルム。
【請求項6】
離型層表面の最大突起高さ(P)が200nm以下であり、離型層表面の算術平均粗さ(Sa)が10nm 以下である、請求項4に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエチレンテレフタレートを主成分とする樹脂を用いたポリエチレンテレフタレートフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂に代表されるポリエステルからなるフィルムは、力学的特性、耐熱性等に優れ様々な用途に展開されている。例えば、包装用途、電気絶縁用途、光学用途、磁気記録用途などに幅広く利用されている。近年、これら用途に用いられるポリエステルフィルムには、薄肉化や薄肉化に伴う高強度化がしばしば求められている。
【0003】
このような課題を解決するため、ポリエチレンテレフタレート系フィルムの強度を高くする方法として、長手方向、横2方向に延伸したフィルムを再度長手方向および横方向に延伸することで、延伸方向に高強度化させる方法が知られている。例えば特許文献1は、長手方向と幅方向に多段階で延伸することで、成形性を損なうことなく強度を向上させる方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の製法で作られた2軸延伸ポリエチレンテレフタレート系フィルムは、張力による伸び変形を抑制向上しているが、延伸温度が低いため、多段延伸の延伸倍率を高く設定することができず、弾性率が低いという問題を有する。
【0006】
以上、従来技術は、長手方向および幅方向の引張弾性率を向上させ、かつ薄肉化に伴う剛性を得ることは出来なかった。
【0007】
本発明の目的は、曲げ剛性に優れたポリエチレンテレフタレートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ポリエチレンテレフタレート系フィルムに関して本願発明者らが鋭意調査した結果、本願発明者らは、2軸延伸ポリエステルフィルムを融点(Tm)以下の高温で複数回多段延伸することで、内部分子鎖を伸長させながら結晶性を高めることで、融点付近で延伸する方法を見出した。これにより、本発明の2軸延伸ポリエチレンテレフタレート系ポリエステルフィルムは剛性を向上させることに成功した。
記述すると、本発明は上記課題を解決するため、以下の構成を有する。
[項1]ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む組成物からなるフィルムであり、厚み15μmに換算するMD方向の曲げ剛性FaとTD方向の曲げ剛性Fbの和が0.05gf・cm2/cm以上であるポリエチレンテレフタレートフィルム。
[項2]フィルムを構成するポリマー分子で形成される結晶に関して、小角X線散乱法で得られる結晶サイズが3.0nm以上である項1に記載のポリエチレンテレフタレートフィルム。
[項3]全方位曲げ剛性の最大値を取る方向が長手方向である、項1又は項2に記載のポリエチレンテレフタレートフィルム。
[項4]項1から項3のいずれか1つに記載のポリエチレンテレフタレートフィルムを基材層とし、基材層の少なくともどちらか一方の表面に離型層が積層された積層フィルム。
[項5]セラミックグリーンシート製造用離型フィルムであり、離型層はシリコーン離型成分を含有する組成物からなる、項4に記載の積層フィルム。
[項6]離型層表面の最大突起高さ(P)が200nm以下であり、離型層表面の算術平均粗さ(Sa)が10nm 以下である、項4に記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフィルムは、曲げ剛性に優れる。そのため、薄肉化でもコシ感が良く、且つ弾性率が高いため、加工時に高品位が必要とされる光学用途をはじめとした工業用途として適している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、曲げ剛性の測定方法を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、小角X線散乱法で得られる結晶サイズの測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフィルムは、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む組成物よりなる。
ここで、ポリエチレンテレフタレート系樹脂とは、エチレングリコールおよびテレフタル酸を主な構成成分として含有するポリマーである。具体的には、繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味する。本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分およびグリコール成分を共重合させても良い。この他のジカルボン酸成分は例えば、イソフタル酸、p-β-オキシエトキシ安息香酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシベンゾフェノン、ビス-(4-カルボキシフェニルエタン)、アジピン酸、セバシン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、シクロヘキサン-1、4-ジカルボン酸等である。上記の他のグリコール成分は例えば、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ビスフェノールA等のエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等である。この他、p-オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸成分も使用できる。
【0012】
ポリエチレンテレフタレート樹脂の重合法は例えば、直接重合法、およびエステル交換法等の任意の製造方法である。直接重合法は、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる方法である。エステル交換法は、テレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させる方法である。
【0013】
また、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂の固有粘度は、0.57dl/g~0.7dl/gの範囲が好ましく、0.58dl/g~0.65dl/gの範囲が更に好ましい。
【0014】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂を含む組成物中には、ポリエチレンテレフタレート樹脂の他に必要に応じて各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては二酸化チタン、微粒子シリカ、カオリン、炭酸カルシウム等の無機滑剤や、アクリル系架橋高分子よりなる微粒子の材料として、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等のアクリル系単量体からなる架橋高分子等の有機滑剤等が挙げられる。また、必要に応じて、安定剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を単独で含有してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
(延伸フィルムの製造方法)
本発明の使用されるポリエステルフィルムは、機械的強度、耐薬品性、耐熱性などの点から、配向フィルムであることが好ましく、より好ましくは2軸配向フィルムである。
【0016】
本発明における樹脂組成物は各種方法により未延伸シートに加工され、その後2軸延伸を施して得られる。未延伸シートの製造方法としては、溶液キャストのほか、溶融押出による方法が利用可能であり、溶融押出法が本発明においては好適である。
【0017】
本発明における樹脂組成物の溶融については280~300℃が好ましく、更に好ましくは280℃が好ましい。280℃未満では溶融樹脂の未溶融の発生や溶融粘度が増加することで生産性が低下するため好ましくない。290℃を越えると熱劣化により分子量低下を起こしやすくなるため、好ましくない。
【0018】
溶融押出のダイ温度については、上述と同様であるが、280~300℃が好ましく、更に好ましくは280℃が好ましい。溶融押出時のダイ温度が280℃以上になると溶融粘度が適した範囲となり、安定して押し出すことができる。温度を300℃以下にすることで樹脂の熱分解を抑制できる。
【0019】
次に、前記の方法で得られた未延伸フィルムを逐次および同時2軸で延伸し、次いで再度幅方向および長手方向にフィルム温度を100℃~250℃の範囲で多段階に延伸することが必要である。
【0020】
これまでの逐次2軸延伸法では、幅方向の厚み斑や寸法安定性を得るために、長手横方向の延伸温度をガラス転移温度(Tg+10℃)~(Tg+50℃)の範囲にすることが好ましく、長手および横方向の延伸倍率は2倍~5倍の範囲にすることが好ましかった。その後、ポリエステルフィルムの熱収縮率を低減させるために、熱固定工程において、30秒以内、好ましくは10秒以内で熱固定処理を行い、0.5~10%の縦弛緩処理、横弛緩処理などを施すことが推奨されている。
【0021】
しかしながら、従来の延伸温度では、フィルムの剛性を得るための高倍率延伸において熱不足により破断を誘発する。そこで、本発明は、例えば縦方向に延伸した1軸延伸フィルムを、横方向に(Tg+10℃)~(Tg+50℃)で延伸することで、ある程度配向させたのちに、さらに高温の(Tg+60)~(Tg+160)で多段階に延伸する。これにより本発明は、高倍率延伸での破断頻度を抑制し、さらにフィルムの剛性を得ることができる。
【0022】
(1)逐次2軸延伸の制御
逐次2軸延伸法の場合、未延伸フィルムをガラス転移温度(Tg)以上の温度において、ロールの速度差を利用して長手方向に延伸して1軸延伸フィルムを作製する。具体的には、シートを加熱し、周速が異なる2本あるいは多数本のロール間で1.1倍~6倍に延伸する。このときの加熱手段としては、加熱ロールを用いる方法でも、非接触の加熱媒体を用いる方法でもよく、これらを併用してもよい。この際、フィルム温度を(Tg-10℃)~(Tg+50℃)の範囲とすることが好ましい。
【0023】
次いで、1軸延伸フィルムをテンターにより幅方向に多段階に延伸する。具体的には、例えば2段階で延伸する場合、1段目のフィルム温度を(Tg+10℃)~(Tg+50℃)で幅方向に1.1倍~4.0倍に延伸し、次いで2段目をフィルム温度(Tg+60℃)~(Tg+160℃)で幅方向に1.1倍~3.0倍に延伸することが好ましい。2段延伸の際は、幅方向の合計倍率を9.0倍以下にすることで、破断頻度が少なくなり好ましい。4段階で延伸する場合、1段目のフィルム温度を(Tg+10℃)~(Tg+40℃)で幅方向に1.1倍~3.0倍に延伸する。次いで2段目をフィルム温度(Tg+50℃)~(Tg+70℃)で幅方向に1.1倍~3.0倍に延伸する。次いで3段目をフィルム温度(Tg+80℃)~(Tg+110℃)で幅方向に1.1倍~3.0倍に延伸する。次いで4段目をフィルム温度(Tg+120℃)~(Tg+160℃)で幅方向に1.1倍~3.0倍に延伸することが好ましい。4段階延伸の際は、多段延伸の幅方向の合計倍率を9.0倍以下にすることで、破断頻度が少なくなり好ましい。
【0024】
(2)同時2軸延伸の制御
同時2軸延伸法で長手方向の剛性を高める場合、次の制御が好ましい。例えば未延伸フィルムをクリップに把持させて、加熱炉でフィルム温度を(Tg+10℃)~(Tg+50℃)で長手方向を1.1~4.0倍に、幅方向を1.1倍~2.0倍の同時に延伸させたのち、再度、長手方向に(Tg+160℃)~(Tg+150℃)で1.1~1.5倍に延伸する。2段延伸の際は、長手方向の合計倍率を8.0倍以下にすることで、破断頻度が少なくなり好ましい。
【0025】
(フィルムの物性)
本発明のフィルムの厚みは、2μm以上500μm以下であることが好ましく、より好ましく15μm以上400μm以下であり、さらに好ましくは20μm以上250μm以下である。フィルムの厚みが2μm以上の場合、フィルムが最低限の剛性を有し取り扱いが容易である。またフィルムの厚みが500μm以下の場合、フィルムを複数のロールで搬送する際のフィルムの搬送性や製造されたフィルムの取扱い性が向上し、取り扱いが容易となる。
【0026】
フィルムの破断強度は、MD方向及びTD方向とも100MPa以上であることが好ましい。より好ましくは200MPa以上であり、さらに好ましくは350MPa以上である。破断強度の好ましい下限は100MPa、より好ましい下限は150MPa、さらに好ましい下限は200MPa、よりさらに好ましい下限は350MPaである。破断強度の好ましい上限は1000MPa以上であり、より好ましい上限は500MPa以上であり、よりさらに好ましい上限は300MPa以上である。好ましい上限の破断強度が300MPa以上では、ポリエステルフィルムの力学的強度が十分となり、加工工程で伸び、ズレ等の不具合を生じることを抑制できるので好ましい。製造上の点を考慮して、上限は1000MPaであると考えられる。
【0027】
フィルムのMD方向の引張弾性率EaとTD方向の引張弾性率Ebの和は5.0GPa以上であることが好ましい。より好ましくは10.0GPa以上であり、さらに好ましく14GPa以上である。引張弾性率の和の好ましい下限は5.0GPa、より好ましい下限は7.0GPa、さらに好ましい下限は8.0GPa、よりさらに好ましい下限は10.0GPaである。引張弾性率の和の好ましい上限は20.0GPa、より好ましい上限は15GPa、さらに好ましい上限は10.0GPaである。好ましい上限の引張弾性率の和が10.0GPa以上では、フィルムの剛直性が十分となり、フィルムのシワや反りが生じることを抑制できるので好ましい。製造上の点を考慮して、上限は20GPaであると考えられる。
【0028】
フィルム厚みを15μmに換算するMD方向の曲げ剛性FaとTD方向の曲げ剛性Fbの和は0.05gf・cm2/cm以上であることが好ましい。より好ましくは0.06gf・cm2/cm以上であり、さらに好ましくは0.07gf・cm2/cm以上である。曲げ剛性の和の好ましい下限は0.05gf・cm2/cm、より好ましい下限は0.06gf・cm2/cm、さらに好ましい下限は0.07gf・cm2/cmである。曲げ剛性の和の好ましい上限は0.10gf・cm2/cm、より好ましい上限は0.09gf・cm2/cm、さらに好ましい上限は0.08gf・cm2/cmである。好ましい上限の曲げ剛性の和が0.07gf・cm2/cm以上では、フィルムのコシ感が十分となり、従来のフィルム厚みから薄肉化した際のシワや反りが生じることを抑制できるので好ましい。製造上の点を考慮して、上限は0.10gf・cm2/cmであると考えられる。
【0029】
フィルムを150℃で30分間加熱したときの熱収縮率がMD方向およびTD方向とも20%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは7%以下である。熱収縮率が大きいと後加工時に高熱下でのフィルムの変形による外観不良などが発生する。上記、熱収縮率は低いことが好ましいが、製造上の点から0.01%が下限と考えられる。
【0030】
フィルムの縦方向の屈折率Nxおよび垂直方向の屈折率Nyは1.60以上が好ましく、より好ましくは1.65以上であり、さらに好ましくは1.70以上である。屈折率が高いほど、延伸方向に分子鎖が配列し、力学的強度が十分となり、加工工程で伸び、ズレ等の不具合を生じることを抑制できるので好ましい。製造上の点を考慮して、上限は1.75であると考えられる。
【0031】
小角X線散乱法で解析するフィルムの長周期は10nm以上であることが好ましく、より好ましくは12nm以上であり、さらに好ましくは15nm以上である。長周期が大きいほど、高次構造の非晶構造と結晶構造を繋ぐ分子鎖が伸長し、力学的強度が十分となり、加工工程で伸び、ズレ等の不具合を生じることを抑制できるので好ましい。製造上の点を考慮して、上限は20nmであると考えられる。
【0032】
ポリエチレンテレフタレートフィルムを構成するポリマー分子で形成される結晶に関して、小角X線散乱法で解析するフィルムの結晶サイズは3nm以上であることが好ましく、より好ましくは4nm以上であり、さらに好ましくは5nm以上である。結晶サイズが大きいほど、高次構造中の結晶構造が大きくなり、フィルム加熱時に高次構造の緩和を抑制し、熱寸法安定性が十分となり、後加工時に高熱下でのフィルムの変形を抑制できるので好ましい。製造上の点から上限は6nmであると考えられる。
【0033】
(離型層)
離型層を構成する樹脂には特に限定はなく、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、各種ワックス、脂肪族オレフィンなどを用いることができ、各樹脂を単独もしくは、2種類以上併用することもできる。
【0034】
本発明の離型層として、例えばシリコーン樹脂とは、分子内にシリコーン構造を有する樹脂のことであり、硬化型シリコーン、シリコーングラフト樹脂、アルキル変性などの変性シリコーン樹脂などが挙げられるが、移行性などの観点から反応性の硬化シリコーン樹脂を用いることが好ましい。反応性の硬化シリコーン樹脂としては、付加反応系のもの、縮合反応系のもの、紫外線もしくは電子線硬化系のものなどを用いることができる。より好ましくは、低温で加工できる低温硬化性の付加反応系のもの、および紫外線もしくは、電子線硬化系のものがよい。これらのものを用いることで、ポリエステルフィルムへの塗工加工時に、低温で加工できる。そのため、加工時におけるポリエステルフィルムへの熱ダメージが少なく、平面性の高いポリエステルフィルムが得られ、セラミックグリーンシートなどの薄膜のシート製造時にもピンホールなどの欠点を少なくすることができる。
【0035】
付加反応系のシリコーン樹脂は例えば、末端もしくは側鎖にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンとを、白金触媒を用いて反応させて硬化させるものである。このとき、120℃で30秒以内に硬化できる樹脂を用いる方が、低温での加工ができ、より好ましい。付加反応系のシリコーン樹脂例えば、ダウ・東レ社製の低温付加硬化型(LTC1006L、LTC1056L、LTC300B、LTC303E、LTC310、LTC314、LTC350G、LTC450A、LTC371G、LTC750A、LTC755、LTC760Aなど)および熱UV硬化型(LTC851、BY24-510、BY24-561、BY24-562など)、信越化学社製の溶剤付加+UV硬化型(X62-5040、X62-5065、X62-5072T、KS5508など)、デュアルキュア硬化型(X62-2835、X62-2834、X62-1980など)などである。
【0036】
縮合反応系のシリコーン樹脂は例えば、末端にOH基をもつポリジメチルシロキサンと末端にH基をもつポリジメチルシロキサンを、有機錫触媒を用いて縮合反応させ、3次元架橋構造をつくるものである。
【0037】
紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては例えば、最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、不飽和基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これでエポキシ基を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの等が挙げられる。また、前記紫外線の代わりに電子線を用いることもできる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いなくても、ラジカルによる架橋反応を行うことが可能である。使用する樹脂の例としては、信越化学社製のUV硬化系シリコーン(X62-7028A/B、X62-7052、X62-7205、X62-7622、X62-7629、X62-7660など)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のUV硬化系シリコーン(TPR6502、TPR6501、TPR6500、UV9300、UV9315、XS56-A2982、UV9430など)、荒川化学社製のUV硬化系シリコーン(シリコリースUV POLY200、POLY215、POLY201、KF-UV265AMなど)が挙げられる。
【0038】
上記、紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、アクリレート変性や、グリシドキシ変性されたポリジメチルシロキサンなどを用いることもできる。これら変性されたポリジメチルシロキサンを、多官能のアクリレート樹脂やエポキシ樹脂などと混合し、開始剤存在下で使用することでも良好な離型性能を出すことができる。
【0039】
その他用いられる樹脂の例としては、ステアリル変性、ラウリル変性など長鎖アルキル基を有するアルキド樹脂やアクリル樹脂、またはメチル化メラミンの反応などで得られるアルキド系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂なども好適である。電子部品などに用いられるシートを成形する場合には、シリコーンを含まない離型剤も好ましい。
【0040】
上記、メチル化メラミンの反応などで得られるアミノアルキド樹脂やアミノアクリル樹脂としては、昭和電工マテリアルズ社製のテスファインシリーズなどが挙げられる。
【0041】
本発明の離型層に上記樹脂を用いる場合は、1種類で使用してもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。2種類以上を混合する場合は、シリコーン系樹脂を2種以上でも構わないし、バインダー樹脂とシリコーン系樹脂など異なる樹脂種を複数混ぜることも好ましい。
【0042】
特にセラミックグリーンシートなどの薄膜シートを成型する場合は、離型層が剥離時に変形しない方が好ましいため、離型層が架橋し硬化していることが好ましい。そのため、離型層にはシリコーン系離型剤以外に、バインダー成分や架橋剤など含むことも好ましい。
【0043】
本発明の離型層に含まれるバインダー成分としては例えば、離型層の架橋密度を高め、離型層の耐久性や耐溶剤性などを向上させるために架橋できる成分が架橋されてなることが好ましい。そのため、バインダー成分には、反応性官能基を有する樹脂と架橋剤が反応してなることが好ましい。また、反応性官能基もしくは架橋剤のどちらか単独で自己架橋してなることも好ましい。しかしながら、本発明において、バインダー成分が、反応性官能基を有する樹脂または架橋剤のみからなる態様を排除するものではない。
【0044】
反応性官能基を有する樹脂としては例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などを好適に使用することができる。これら樹脂には、反応性官能基として、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ、アミノ基などから選ばれる少なくとも1種類以上を有していることが好ましい。
【0045】
本発明の離型層には架橋剤を含有することも好ましい。架橋剤としては例えば、メラミン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、オキサゾリン系、エポキシ系などが好ましい。架橋剤は1種類でも2種類以上を併用して用いても構わない。特に好ましくは、バインダー成分に導入された反応性官能基と反応する架橋剤が好ましい。
【0046】
本発明の離型層には、粒径が1μm以下の粒子などを含有することができるが、ピンホール発生の観点から粒子などの突起を形成するものは、実質的に含有しないほうが好ましい。
【0047】
本発明の離型層には、剥離力を調整するために、軽剥離添加剤や重剥離添加剤といった添加剤や、密着向上剤、帯電防止剤などの添加剤などを添加してもよい。また、基材層との密着性を向上させるために、離型塗布層を設ける前にポリ乳酸フィルムの表面に、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
【0048】
本発明において、離型層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型層の厚みが0.005~2.0μmとなる範囲がよい。離型層の厚みが0.005μm以上であると、剥離性能が保たれて好ましい。また、離型層の厚みが2.0μm以下であると、硬化時間が長くなり過ぎず、離型フィルムの平面性の低下によるシートの厚みムラを生じおそれがなく好ましい。また、硬化時間が長くなり過ぎないので、離型層を構成する樹脂が凝集するおそれがなく、突起を形成するおそれがないため、シートのピンホール欠点が生じにくく好ましい。
【0049】
離型層を形成させたフィルム外表面は、その上で塗布、成型するシートに欠陥を発生させないために、平坦であることが好ましい。フィルム外表面は、ポリエステルフィルムと接していない塗布フィルム全体の離型層表面である。離型層表面の算術平均粗さ(Sa)が10nm以下かつ最大突起高さ(P)が200nm以下であることが好ましい。さらには離型層表面の算術平均粗さ10nm以下かつ最大突起高さ100nm以下がより好ましく、離型層表面の算術平均粗さ10nm以下かつ最大突起高さ30nm以下がなお好ましい。離型層表面の算術平均粗さが10nm以下、且つ、最大突起高さが200nm以下であれば、シート形成時に、ピンホールなどの欠点の発生がなく、歩留まりが良好で好ましい。離型層表面の算術平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であっても構わず、0.3nm以上であっても構わない。最大突起高さ(P)も小さいほど好ましいと言えるが、1nm以上でも構わず、3nm以上であっても構わない。
【0050】
本発明の離型フィルムに設けた離型層の表面自由エネルギーの下限は8mJ/m2以上であることが好ましい。より好ましくは、10mJ/m2以上であり、12mJ/m2以上がさらに好ましい。8mJ/m2以上であるとシートの溶解液を塗布した際にハジキなどが発生しにくいため好ましい。
【0051】
本発明の離型フィルムに設けた離型層の表面自由エネルギーの上限は45mJ/m2以下であることが好ましい。より好ましくは、40mJ/m2以下であり、35mJ/m2以下がさらに好ましい。45mJ/m2以下であると成型したシートの剥離性が良好なため好ましい。
【0052】
本発明において、離型層の形成方法は、特に限定されず、離型性の樹脂を溶解もしくは分散させた塗液を、基材層の一方の面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去後、加熱乾燥、熱硬化または紫外線硬化させる方法が用いられる。このとき、溶媒乾燥、熱硬化時の乾燥温度は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがもっとも好ましい。その加熱時間は、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。180℃以下の場合、フィルムの平面性が保たれ、シートの厚みムラを引き起こすおそれが小さく好ましい。120℃以下であるとフィルムの平面性を損なうことなく加工することができ、シートの厚みムラを引き起こすおそれが更に低下するので特に好ましい。
【0053】
本発明において、離型層を塗布するときの塗液の表面張力は、特に限定されないが30mN/m以下であることが好ましい。表面張力を前記のようにすることで、塗工後の塗れ性が向上し、乾燥後の塗膜表面の凹凸を低減することができる。
【0054】
本発明において、離型層を塗布するときの塗液には、特に限定されないが、沸点が90℃以上の溶剤を添加することが好ましい。沸点が90℃以上の溶剤を添加することで、乾燥時の突沸を防ぎ、塗膜をレベリングさせることができ、乾燥後の塗膜表面の平滑性を向上させることができる。その添加量としては、塗液全体に対し、10~80質量%程度添加することが好ましい。
【0055】
上記塗液の塗布法としては例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、等の方法が挙げられる。
【0056】
(セラミックグリーンシートとセラミックコンデンサ)
一般に、積層セラミックコンデンサは、直方体状のセラミック素体を有する。セラミック素体の内部には、第1の内部電極と第2の内部電極とが厚み方向に沿って交互に設けられている。第1の内部電極は、セラミック素体の第1の端面に露出している。第1の端面の上には第1の外部電極が設けられている。第1の内部電極は、第1の端面において第1の外部電極と電気的に接続されている。第2の内部電極は、セラミック素体の第2の端面に露出している。第2の端面の上には第2の外部電極が設けられている。第2の内部電極は、第2の端面において第2の外部電極と電気的に接続されている。
【0057】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムは、このような積層セラミックコンデンサを製造するために用いられる。例えば、以下のようにして製造される。まず、本発明の離型フィルムをキャリアフィルムとして用い、セラミック素体を構成するためのセラミックスラリーを塗布、乾燥させる。塗布、乾燥したセラミックグリーンシートの上に、第1又は第2の内部電極を構成するための導電層を印刷する。セラミックグリーンシート、第1の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシート及び第2の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシートを適宜積層し、プレスすることにより、マザー積層体を得る。マザー積層体を複数に分断し、生のセラミック素体を作製する。生のセラミック素体を焼成することによりセラミック素体を得る。その後、第1及び第2の外部電極を形成することにより積層セラミックコンデンサを完成させることができる。
【実施例0058】
次に、本発明の効果を実施例および比較例を用いて説明する。まず、本発明で使用した特性値の評価方法を下記に示す。
【0059】
(評価方法)
・ 破断強度
フィルムの破断強度及び破断伸度は、JIS-C-2318に準拠して測定した。フィルムのMD方向及びTD方向に対して、それぞれ長さ120mm及び幅10mmの短冊状に試料を片刃カミソリで切り出した。次いで、株式会社島津製作所製オートグラフAG-IS-Loadcell.1KNを用いて、短冊状試料を試験速度5mm/min、チャック間距離100mmで得られた荷重-歪曲線から各方向の破断強度(MPa)を求めた。
【0060】
・ 弾性率
フィルムの引張弾性率は、JIS-K-7161ならびに、ISO527-1、527-3に準拠して測定した。フィルムのMD方向及びTD方向に対して、それぞれ長さ200mm及び幅15mmの短冊状に試料を片刃カミソリで切り出し、試験片中央部に50mm離れて平行な2本の標線をつけた。次いで、株式会社島津製作所製オートグラフAGS-IS-Loadcell.1KNを用いて、短冊状試料を試験速度0.5mm/min、チャック間距離100mm、標線間50mmの0.1-0.3%から得られた荷重-歪曲線から各方向の引張弾性率を求めた。
【0061】
・ 曲げ剛性(15μm換算)
フィルムの曲げ剛性は、純曲げ理論に準じた一定曲率(最大曲率K=±2.5cm-1)を与えながら、そのときの曲げモーメント(剛さ)の自動計測から測定した。フィルムの延伸方向を100mm、垂直方向を150mmに切り出した。次いで、カトーテック製の純曲げ試験機(KES-FB2A)を用いて、自動計測を行い、曲げ剛性を算出した。純曲げ試験機の概要を
図1に示す。全方位の評価方法は、長手方向を0°、幅方向を90°とし、5°ピッチの曲げ剛性を上記測定方法に従い求めた。その最小値をFa、最大値Fbとした。
なお、曲げ剛性(15μm換算)に関して、例えば厚みが25umの実施例4の場合、曲げ剛性(15μm換算)は、0.080×15/25=0.048の式で算出される。
【0062】
・ 150℃熱収縮率
ISC-2318-1997-5.3.4(寸法変化)に準拠して測定した。測定すべき方向(フィルム幅方向)に対し、フィルムを幅10mm、長さ190mmに切り取り、10mm間隔で印をつけ、印の間隔(A)を測定した。次いで、フィルムを150℃の雰囲気中のオーブンに入れ、無荷重下で150℃±3℃で30分間加熱処理した後、印の間隔(B)を測定した。以下の式より150℃の熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=(A-B)/A×100
【0063】
・ 屈折率
JIS-K-7142に準拠して測定した。アッベ屈折率計を用いてNaD線光で屈折率を測定した。マウント液はヨウ化メチレンを用いて、長手方向の屈折率(Nx)、幅方向の屈折率(Ny)及び厚み方向の屈折率(Nz)を測定した。測定は、フィルム幅方向の中央部において行った。
【0064】
・ 長周期
長周期はX線回折装置を用いて、小角X線散乱測定(SAXS)により得られた回折強度プロファイルから算出した。X線評価用にフィルム試料を幅方向に8mm、長さ方向(延伸方向)に20~30mmにカットし、厚み100μm程度になるよう数枚に重ね合わせて作成した。標準校正用試料にはベヘン酸銀を用いた。放射光施設SPring8のビームライン(BL03XU)を用いて、波長1.2A、カメラ長1700mmでフィルム面法線方向からX線を入射させ、小角X線散乱法(SAXS)で測定した。長周期(Lp)は解析ソフトFit2D、Fitykを用いて算出した。X線で得た回折像より、プロファイルI(q)(I:散乱強度、q:散乱ベクトル)の値を求め、下記の数式により長周期(d)を算出した。
【0065】
【0066】
・ 結晶サイズ
上記(6)で記載する小角X線回折によって得たプロファイルq2I(q)を用いて、下記の数式によりフーリエ変換を行い、相関関数γ(r)(r=距離)を求めることで、結晶サイズ(rc)を算出した。
【0067】
【0068】
以下、結晶サイズ(r
c)の算出方法を詳述する。
図2に示すように、r≧0で最も小さいr
1における極小値をγ(r
1)=γ
min1・・・(A)とする。次に、0≦r≦r
1において、y=γ(r)の2階微分が0となるrを γ(r)の変曲点r
2とし、r
2におけるγ(r)の接線をy=ar+b・・・(B)とする。(A)式と(B)式の交点におけるr=r
cが求めるべき結晶サイズであり、γ
min1=ar
c+bから、r
c=(γ
min1―b)/aとして、r
cを算出した。
【0069】
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート樹脂を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機に供給した。押出機に供給された原料は、押出機の溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、ポリマー菅、Tダイの樹脂温度を280℃に設定して、Tダイよりシート状に溶融押出したのちに、20℃の冷却ロールを用いてシートを作製した。該シートを長手方向に加熱ロール105℃で3.0倍に延伸した。次いで、長手方向延伸後のフィルムをテンターに導き、90℃で予熱し、100℃で幅方向に3.0倍に延伸してフィルムを作製した。該フィルムを再度テンターに導いて、120℃で予熱し、140℃で幅方向に1.39倍に延伸してフィルムを作製した。さらに該フィルムを再度テンターに導いて、140℃で予熱し、170℃で幅方向に1.39倍に延伸してフィルムを作製した。さらに該フィルムを再度テンターに導いて、170℃で予熱し、250℃で幅方向に1.39倍に延伸してフィルムを作製したのちに、100℃で熱処理を行い、厚さ21μmとなる2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0070】
(実施例2)
シート作製の作製までの手順は実施例1と同様に行った。次いで該シートを長手に加熱ロール105℃で3.4倍に延伸した。次いで、長手方向延伸後のフィルムをテンターに導き、90℃で予熱し、100℃で幅方向に1.68倍に延伸してフィルムを作製した。該フィルムを再度テンターに導いて、120℃に予熱し、140℃で1.68倍に延伸してフィルムを作製した。更に該フィルムを再度テンターに導いて、140℃に予熱し、170℃で1.68倍に延伸してフィルムを作製した。更に該フィルムを再度テンターに導いて、170℃で予熱し、250℃で幅方向に1.58倍に延伸したのちに、100℃で熱処理を行い、厚さ23μmとなる2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0071】
(実施例3)
長手方向までの手順は実施例1と同様に行った。次いで、長手方向延伸後のフィルムをテンターに導き、90℃で予熱し、100℃で幅方向に3.0倍に延伸してフィルムを作製した。該フィルムを再度テンターに導いて、120℃に予熱し、140℃で1.39倍に延伸してフィルムを作製した。更に該フィルムを再度テンターに導いて、140℃に予熱し、170℃で1.39倍に延伸してフィルムを作製した。更に該フィルムを再度テンターに導いて、170℃で予熱し、250℃で幅方向に1.47倍に延伸したのちに、100℃で熱処理を行い、厚さ21μmとなる2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0072】
(実施例4)
シート作製までは実施例1と同様に行った。次いで長手方向と幅方向を同時に延伸することが可能な加熱炉を用いた。加熱炉の1ゾーン目の温度90℃で長手方向に4.0倍、幅方向に2.0倍に延伸した後に、加熱炉の2ゾーン目に導き、温度240℃で長手方向に1.5倍延伸した。これにより、厚さ25μmとなる2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0073】
(比較例1)
長手方向までの手順は実施例1と同様に行った。次いで長手方向延伸後のフィルムをテンターに導き、90℃で予熱し、100℃で幅方向に4.0倍延伸したのちに、230℃で熱処理を行い、厚さ25μmとなる2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0074】
(比較例2)
長手方向までの手順は実施例1と同様に行った。次いで長手方向延伸後のフィルムをテンターに導き、90℃で予熱し、100℃で幅方向に6.0倍延伸したのちに、230℃で熱処理を行い、厚さ27μmとなる2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0075】
本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムは、高い弾性率を有するため、薄膜化しても十分なコシ感を得ることや、異物によるキズや変形を抑制することができる。本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムは、上記を含む高い要求品質が求められる電子部材やパネル用保護フィルムなどの幅広い工業用フィルム分野に利用することができる。