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特開2024-155127照明制御システム、照明器具および照明制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155127
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】照明制御システム、照明器具および照明制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/105 20200101AFI20241024BHJP
   H05B 45/10 20200101ALI20241024BHJP
   H05B 45/20 20200101ALI20241024BHJP
   H05B 47/16 20200101ALI20241024BHJP
【FI】
H05B47/105
H05B45/10
H05B45/20
H05B47/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069567
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大津 定治
(72)【発明者】
【氏名】芝原 信一
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273QA13
3K273QA28
3K273RA02
3K273RA05
3K273RA08
3K273RA12
3K273RA17
3K273SA01
3K273SA31
3K273SA45
3K273SA60
3K273TA03
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA27
3K273TA28
3K273TA45
3K273TA78
(57)【要約】
【課題】概日リズムに配慮した照明を提供できる照明制御システム、照明器具および照明制御装置を得ることを目的とする。
【解決手段】本開示に係る照明制御システムは、照明器具と、1日のうちの時間情報に応じた前記照明器具の点灯状態の制御パターンに基づき、前記照明器具を制御する照明制御装置と、を備え、前記制御パターンは、前記照明器具のユーザの生体情報に基づき更新される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明器具と、
1日のうちの時間情報に応じた前記照明器具の点灯状態の制御パターンに基づき、前記照明器具を制御する照明制御装置と、
を備え、
前記制御パターンは、前記照明器具のユーザの生体情報に基づき更新されることを特徴とする照明制御システム。
【請求項2】
前記生体情報は、心拍数、睡眠覚醒リズム、血圧、体温、年齢、性別、体重、行動予定、行動履歴、時計遺伝子および時計タンパク質発現量の少なくとも1つの情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項3】
前記制御パターンは、前記照明器具の使用環境情報に基づき更新されることを特徴とする請求項1または2に記載の照明制御システム。
【請求項4】
前記使用環境情報は、前記照明器具を使用するエリアの温度、湿度、季節、天候および前記照明器具が設置された施設の少なくとも1つの情報を含むことを特徴とする請求項3に記載の照明制御システム。
【請求項5】
前記制御パターンは、前記ユーザの行動予定または行動履歴に基づき、概日リズムの位相をシフトさせるように更新されることを特徴とする請求項1または2に記載の照明制御システム。
【請求項6】
前記照明制御装置は、
前記生体情報を取得するデータ取得部と、
前記生体情報から前記制御パターンを推論するための学習済みモデルを用いて、取得された前記生体情報から前記制御パターンを出力する推論部と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の照明制御システム。
【請求項7】
前記データ取得部は前記照明器具の使用環境情報を取得し、
前記推論部は、前記生体情報と前記使用環境情報から前記制御パターンを推論するための前記学習済みモデルを用いて、取得された前記生体情報と前記使用環境情報から前記制御パターンを出力することを特徴とする請求項6に記載の照明制御システム。
【請求項8】
1日のうちの時間情報に応じた点灯状態の制御パターンに基づき制御され、前記制御パターンは、照明器具のユーザの生体情報に基づき更新されることを特徴とする照明器具。
【請求項9】
1日のうちの時間情報に応じた照明器具の点灯状態の制御パターンに基づき、前記照明器具を制御し、前記制御パターンは、前記照明器具のユーザの生体情報に基づき更新されることを特徴とする照明制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明制御システム、照明器具および照明制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人体への影響に配慮された照明を提供するための照明制御システムが開示されている。この照明制御システムでは、照明灯具と、情報処理装置とが通信可能に接続している。照明灯具は、第1発光装置と、第2発光装置と、第1発光装置による光と第2発光装置による光とを照射する割合を制御して照明光を照射する発光制御部と、を有する。情報処理装置は、調光指示を送信し、照明灯具の第1発光装置による光と第2発光装置による光の照射割合を、1日のうちの時間帯に応じて変化させる調光管理部を有する。情報処理装置は、照明光が照射される時間帯で、照明光のサーカディアン特性を変化させ、サーカディアンリズムに配慮した照明制御を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-173407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生物は内因性の生体リズムを有する。この生体リズムは体内時計とも呼ばれ、種々の生体機能に周期性を与えている。その中でも約24時間周期のサーカディアンリズムは、人体の睡眠覚醒リズムと関係が深いことから注目されている。このサーカディアンリズムを以下では概日リズムと呼ぶ。
【0005】
ヒトの概日リズムは、脳内視床下部の視交叉上核(suprachiasmatic nucleus:SCN)を体内時計の中枢として形成されている。以下では、SCNに基づく体内時計を中枢時計と呼ぶ。ヒトの概日リズムは約25時間周期の内因性リズムを有している。このため概日リズムは、内因性リズムだけでは24時間、つまり1日の周期とずれることとなる。これに対し、中枢時計は目から入る光を外的同調因子として24時間周期に同調する機能を備えている。従って、一般には太陽の光を浴びることで体内時計を調整することができる。
【0006】
加えて、生物は肝臓、腎臓などの各臓器あるいは各細胞に末梢時計と呼ばれる時計を有している。末梢時計の各々がリズムを形成し、代謝リズムおよび免疫機能リズムに深く関わっている。なお、末梢時計のリズムは中枢時計を主軸として臓器間および細胞間での同調を図っている。
【0007】
同調因子に焦点を当てると、光以外の中枢時計の同調因子として、特にヒトの場合は薬物動態が挙げられる。末梢時計は主に中枢時計を同調因子としているが、グルコースなどの栄養を摂取しインスリン分泌が促進されることにより、末梢時計の同調が行われることが報告されている。
【0008】
また人間社会の社会活動は、夜勤、交代勤務、時差を伴う長距離移動など、自然環境である朝夕の明暗サイクルに準じた生活リズムを送ることに限られない。このような生活リズムの乱れを起因に、睡眠障害または行動障害につながる可能性がある。時差ボケはその一例であり、時差によりこれまでと異なる外界環境に置かれることで体内時計のリズムが崩れ、体調に影響を及ぼすことがある。また、加齢、発達期など年齢の違いによっても、概日リズムおよびリズムの同調機能に差が生じることが示唆されており、個々の生活環境等によっても同調機能に差が生じることがある。
【0009】
上述のように概日リズムに関する研究は近年盛んに行われている。概日リズムを形成する上で光が重要な同調因子の一つであることから、概日リズムに配慮した照明装置、照明制御システムなどの技術が開示されている。例えば、特許文献1では、睡眠覚醒リズムを司るホルモンであるメラトニン分泌に配慮して、調光、調色を行うことで、概日リズムの最適化を図っている。
【0010】
しかし、概日リズムはメラトニン分泌が本質ではなく、上述の通り生物が有する種々の生体機能によって影響を及ぼされ得る。このため、特許文献1のようにメラトニン分泌に配慮しただけでは、必ずしも概日リズムに配慮した照明を提供できない可能性がある。
【0011】
本開示は、概日リズムに配慮した照明を提供できる照明制御システム、照明器具および照明制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る照明制御システムは、照明器具と、1日のうちの時間情報に応じた前記照明器具の点灯状態の制御パターンに基づき、前記照明器具を制御する照明制御装置と、を備え、前記制御パターンは、前記照明器具のユーザの生体情報に基づき更新される。
【0013】
本開示に係る照明器具は、1日のうちの時間情報に応じた点灯状態の制御パターンに基づき制御され、前記制御パターンは、照明器具のユーザの生体情報に基づき更新される。
【0014】
本開示に係る照明制御装置は、1日のうちの時間情報に応じた照明器具の点灯状態の制御パターンに基づき、前記照明器具を制御し、前記制御パターンは、前記照明器具のユーザの生体情報に基づき更新される。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る照明制御システム、照明器具および照明制御装置によれば、照明器具の制御パターンがユーザの生体情報に基づき更新される。従って、概日リズムに配慮した照明を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1に係る照明制御システムを説明する図である。
図2】実施の形態2に係る照明制御システムを説明する図である。
図3】実施の形態3に係る概日リズムの位相変化を説明する図である。
図4】実施の形態4に係るフィードバックループの一例を示す図である。
図5】実施の形態5に係るニューラルネットワークを用いた制御パターンの生成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
各実施の形態に係る照明制御システム、照明器具および照明制御装置について図面を参照して説明する。同じまたは対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る照明制御システム100を説明する図である。照明制御システム100は、照明器具1と照明制御装置2とを備える。照明器具1は、例えば調光および調色が可能である。照明器具1は例えば、複数の色温度の光源を含む光源部と、照明制御装置2からの制御信号に応じた調光率および色温度にて光源部を点灯させる点灯装置を備える。照明制御装置2は照明器具1の調光調色制御を行う。
【0019】
照明器具1と照明制御装置2の接続方法は限定されず、有線接続であっても良く、無線接続であっても良い。照明器具1と照明制御装置2は別個に設けられても良く、照明制御装置2が照明器具1に組み込まれていても良い。
【0020】
照明制御装置2は、1日のうちの時間情報に応じた、照明器具1の点灯状態の制御パターンに基づき、照明器具1を制御する。つまり制御パターンは、24時間を1つの周期とする調光調色パターンである。さらに照明制御装置2は、照明器具1のユーザの生体情報に基づき、制御パターンを更新する。
【0021】
照明制御装置2は、一例として演算装置21、記憶部22および通信部23を備える。通信部23がユーザの生体情報を取得すると、演算装置21は取得した生体情報に基づき制御パターンを更新する。この際、演算装置21は予め用意した複数の調光調色パターンから、更新後の制御パターンを選択または生成しても良い。複数の調光調色パターンは記憶部22に記憶されている。また、予め調光調色パターンを用意するのではなく、リアルタイムに演算処理を行い更新後の制御パターンを生成しても良い。
【0022】
更新後の制御パターンは記憶部22に記憶される。演算装置21は、記憶部22に記憶された更新後の制御パターンに基づき照明器具1を制御する。演算装置21、通信部23の機能は、例えばマイクロコンピュータ、プロセッサ等で実現できる。記憶部22の機能は、例えば不揮発メモリ等のメモリにより実現できる。
【0023】
照明制御装置2が取得する生体情報の例としては、心拍数、睡眠覚醒リズム、血圧、体温、年齢、性別、体重、行動予定、行動履歴、時計遺伝子および時計タンパク質発現量がある。生体情報は、これらの情報の少なくとも1つの情報を含めば良い。
【0024】
心拍数、睡眠覚醒リズム、血圧、体温は、人体に取付けるウェアラブル端末3から取得できる。ウェアラブル端末3と照明制御装置2が接続されると、ウェアラブル端末3は検出したユーザの生体情報を照明制御装置2に送信する。また、接触型の検出装置に限らず、非接触型の検出装置によって生体情報を取得しても良い。
【0025】
年齢、性別、体重、行動予定、行動履歴は、タブレット端末4から取得できる。ユーザはこれらのユーザ情報をタブレット端末4に入力する。タブレット端末4と照明制御装置2が接続されると、タブレット端末4は入力された情報を照明制御装置2に送信する。また行動履歴は、照明制御装置2と接続される画像センサなどの行動センサ5によってリアルタイムに検出することもできる。行動センサ5は照明器具1または照明制御装置2に含まれて設置されても良いし、独立して設置されても良い。
【0026】
時計遺伝子および時計タンパク質発現量は、ユーザの検体を入手および解析し、その解析結果をタブレット端末4から照明制御装置2に送信することで取得できる。なお、時計遺伝子および時計タンパク質は、Period遺伝子、PERIODタンパク質をはじめとする概日リズムに影響を与える遺伝子およびタンパク質の総称である。
【0027】
次に本実施の形態の効果を説明する。概日リズムは、複数の要素の組合せにより影響を及ぼされる。このため、自然環境である朝夕の明暗サイクルに準じて、1日のうちの時間帯によるメラトニン分泌に配慮して照明制御を行うだけでは、十分に概日リズムに配慮した照明を提供できない可能性がある。これに対し本実施の形態では、ユーザの生体情報に基づき照明器具1の制御パターンが生成される。従って、概日リズムにさらに配慮した照明を提供できる。具体的には、光以外の同調因子、行動予定、行動履歴、生体情報を考慮した制御パターンにより、生体に与える影響をより考慮した照明を提供できる。
【0028】
例えば、行動予定、行動履歴等の情報に基づき制御パターンを生成することで、交代勤務などの自然環境以外の社会活動に配慮して、適した照明制御を行うことができる。また、概日リズムには個人差があり、個人または特定集団の生活環境、生体情報によって、適した概日リズムは異なる。本実施の形態では、生体情報に基づき制御パターンを生成することで、生体情報に配慮した、適した照明制御を行うことができる。
【0029】
本実施の形態では、照明制御装置2が制御パターンを生成、更新するものとした。これに限らず、制御パターンの生成、更新は照明制御システム100の外部のサーバ等で行われても良く、照明制御装置2または照明器具1が外部から制御パターンを取得するものとしても良い。
【0030】
また、照明制御装置2は時間情報を取得し、制御パターンにおける点灯状態が切り替わるタイミングで照明器具1を制御しても良い。これに限らず、照明制御装置2が更新された制御パターン自体を照明器具1にインプットして、照明器具1が時間情報を取得して制御パターンに従って自身を制御しても良い。
【0031】
上述した変形は、以下の実施の形態に係る照明制御システム、照明器具および照明制御装置について適宜応用することができる。なお、以下の実施の形態に係る照明制御システム、照明器具および照明制御装置については実施の形態1との共通点が多いので、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0032】
実施の形態2.
図2は、実施の形態2に係る照明制御システム200を説明する図である。本実施の形態では、制御パターンは、ユーザの生体情報に加えて、照明器具1の使用環境情報に基づき更新される点が実施の形態1と異なる。他の構成は実施の形態1の構成と同様である。
【0033】
使用環境情報の例としては、照明器具1を使用するエリアの温度、湿度、季節、天候および照明器具1が設置された施設の種類が挙げられる。使用環境情報は、これらの情報の少なくとも1つの情報を含めば良い。
【0034】
温度、湿度は、温湿度センサなどの環境センサ6が照明制御装置2と接続されることで取得できる。季節、天候は、例えばタブレット端末4をインターネット接続することで取得できる。さらに施設の種類は、ユーザがタブレット端末4に情報を入力することで取得できる。
【0035】
これにより、実施の形態1の効果に加えて、生活環境を考慮して調光調色を行うことができる。従って、概日リズムにさらに配慮した照明を提供できる。例えば、本実施の形態では夏季に比べて日照度の低い冬季において、照明器具1が発する光の明るさを朝間時に高く設定することができる。また、保育園、老人ホームなどの特定の集団がユーザとして想定される場合は、特定の集団に合わせた調光調色パターンが求められる。例えば照明器具1が設置された施設が保育園の場合、午睡の時間帯は照明器具1の明るさを低く設定することができる。このように本実施の形態によれば、個人または集団の生活環境を考慮した上で、概日リズムに配慮した照明を提供できる。
【0036】
実施の形態3.
時計遺伝子あるいは時計タンパク質の中には、概日リズムを形成するだけでなく代謝またはアレルギー反応に関わるものが存在する。例えば、Bmal遺伝子/BMALタンパク質は脂質代謝に強く関わっており、その発現量の多少により、代謝促進の度合いが変わる。Bmal遺伝子/BMALタンパク質自身もリズム性を有しており、このリズム性と食事のタイミングがずれると代謝性が悪くなる。一般には夜食は太るなどと言われているように、リズム性と食事のタイミングのずれは肥満につながる可能性がある。
【0037】
一方、個人の事情により食事のタイミングを概日リズムに合わせられない場合がある。例えば、交代勤務者、時差を伴う移動など、夜食を摂るしかない状況もある。こうした場合は、概日リズムに食事タイミングを合わせるのではなく、食事タイミングに概日リズムを合わせることが良いとされる。
【0038】
図3は、実施の形態3に係る概日リズムの位相変化を説明する図である。本実施の形態において照明器具1の制御パターンは、ユーザの行動予定または行動履歴に基づき、概日リズムの位相をシフトさせるように更新される。例えばユーザが夜間に活動しているような場合には、夜間の活動に合わせるように、一般的な概日リズムから意図的に位相をシフトさせる調光調色パターンで照明器具1を制御する。
【0039】
これにより、実施の形態1、2の効果に加えて、個人の事情に合わせた概日リズムを形成することができる。
【0040】
本実施の形態の変形例として、照明制御装置2はユーザの食事タイミングをタブレット端末4、行動センサ5等から取得し、食事のタイミングに合わせて概日リズムの位相をシフトさせるように、制御パターンを更新しても良い。
【0041】
実施の形態4.
図4は、実施の形態4に係るフィードバックループの一例を示す図である。実施の形態1~3により制御パターンを変化させた後に、さらに生体情報または使用環境情報を取得して制御パターンを更新しても良い。
【0042】
これにより、更新した制御パターンによる生体情報への影響を、さらに演算装置21への入力情報に反映させることができる。つまり、フィードバックループあるいはフィードフォワードループの制御を行うことができる。なお、行動予定は未来についての入力情報となる。このように、未来の行動の予測に基づいて制御を変更することをフィードフォワードループと呼んでいる。
【0043】
制御パターンを予め定められた期間毎に更新する場合、演算装置21は当該期間分の生体情報に基づき制御パターンを更新できる。例えば、制御パターンの更新頻度を1週間に1回とした場合、演算装置21は7日分の概日リズムに関する生体情報を、制御パターンを更新するための入力情報として受け取ることができる。演算装置21は、現在の概日リズムが所望の概日リズムとなっていない場合は、制御パターンをさらに変化させる。予め定められた期間毎に制御パターンの更新を繰り返すことで、所望の概日リズムに近づけることができる。
【0044】
実施の形態5.
本実施の形態では、実施の形態4で示したフィードバックループまたはフィードフォワードループ制御に代えて、機械学習されたニューラルネットワークによって制御パターンを取得する。この機械学習では、時間情報、生体情報、使用環境情報が入力系であり、調光率、色温度が出力系となる。
【0045】
次に機械学習における学習済みモデルの生成方法を説明する。照明制御装置2は、生体情報と教師データとを含む学習用データを取得するデータ取得部と、学習用データを用いて生体情報から制御パターンを推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部を備える。データ取得部は例えば通信部23に該当し、モデル生成部は例えば演算装置21に該当する。本実施の形態の教師データは、1日のうちの時間情報に応じた制御パターンである。
【0046】
入力系に使用環境情報を用いる場合は、学習用データとしてさらに使用環境情報が取得される。また学習済みモデルは、生体情報および使用環境情報から制御パターンを推論するための学習済モデルとなる。
【0047】
モデル生成部が用いる学習アルゴリズムは教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。ここでは一例として、ニューラルネットワークを適用した場合について説明する。モデル生成部は、例えばニューラルネットワークモデルに従って、いわゆる教師あり学習により制御パターンを学習する。
【0048】
機械学習のごく単純な一例を説明する。以下では時間情報に基づく調光率を表す関数をF(t)、色温度を表す関数をG(t)とする。生体情報に基づく調光率を表す関数をF(x)、色温度を表す関数をG(x)とする。使用環境情報に基づく調光率を表す関数をF(y)、色温度を表す関数をG(y)とする。F(t)、F(x)、F(y)の影響度を表す係数をA、B、Cとし、G(t)、G(x)、G(y)の影響度を表す係数をL、M、Nとする。
【0049】
これらの複数の情報を加味した調光率をF、色温度をGとする。F、Gは以下のように表すことができる。
F=A×F(t)+B×F(x)+C×F(y)
G=L×F(t)+M×F(x)+N×G(y)
ニューラルネットワークは、例えば生体情報等の入力情報から出力された制御パターンが教師データに近づくように係数を調整する。
【0050】
なお、上記関数では、時間情報、生体情報および使用環境情報に基づく調光率、色温度は独立した関数となっており、F、Gはそれらの加算結果でのみ表されている。これに限らず、各要素が協調して互いに影響を与えても良く、F、Gは例えば乗除算を含む関数で表されても良い。さらに、調光率Fと色温度Gについても独立した関数として表されているが、互いに影響を与えていても良い。
【0051】
加えて、F(t)、F(x)、F(y)、G(t)、G(x)、G(y)の各関数はさらに細分化されて良い。例えばF(x)は以下のように表すことができる。
F(x)= a×f(x1)+b×f(x2)+c×f(x3)
ここで、生体情報に基づく関数として、年齢情報の関数をf(x1)、性別情報の関数をf(x2)、体重情報の関数をf(x3)等としている。さらに要素数が多い場合は、F(x)=Σ[a(n)×f(xn)]のように表すことができる。
【0052】
次に学習済みモデルを用いた制御パターンの推論方法について説明する。照明制御装置2は、データ取得部により生体情報を取得する。照明制御装置2の推論部は、生体情報から制御パターンを推論するための学習済みモデルを用いて、取得された生体情報から制御パターンを出力する。データ取得部は例えば通信部23に該当し、推論部は例えば演算装置21に該当する。
【0053】
入力系に使用環境情報を使用する場合は、データ取得部は照明器具1の使用環境情報をさらに取得することとなる。また推論部は、生体情報と使用環境情報から制御パターンを推論するための学習済みモデルを用いて、取得された生体情報と使用環境情報から制御パターンを出力する。
【0054】
以上から、より多くの情報に基づいた調光調色パターンを導出可能となり、概日リズムの最適化を図ることができる。
【0055】
各実施の形態で説明した技術的特徴は適宜に組み合わせて用いても良い。
【0056】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
照明器具と、
1日のうちの時間情報に応じた前記照明器具の点灯状態の制御パターンに基づき、前記照明器具を制御する照明制御装置と、
を備え、
前記制御パターンは、前記照明器具のユーザの生体情報に基づき更新されることを特徴とする照明制御システム。
(付記2)
前記生体情報は、心拍数、睡眠覚醒リズム、血圧、体温、年齢、性別、体重、行動予定、行動履歴、時計遺伝子および時計タンパク質発現量の少なくとも1つの情報を含むことを特徴とする付記1に記載の照明制御システム。
(付記3)
前記制御パターンは、前記照明器具の使用環境情報に基づき更新されることを特徴とする付記1または2に記載の照明制御システム。
(付記4)
前記使用環境情報は、前記照明器具を使用するエリアの温度、湿度、季節、天候および前記照明器具が設置された施設の少なくとも1つの情報を含むことを特徴とする付記3に記載の照明制御システム。
(付記5)
前記制御パターンは、前記ユーザの行動予定または行動履歴に基づき、概日リズムの位相をシフトさせるように更新されることを特徴とする付記1から4の何れか1項に記載の照明制御システム。
(付記6)
前記照明制御装置は、
前記生体情報を取得するデータ取得部と、
前記生体情報から前記制御パターンを推論するための学習済みモデルを用いて、取得された前記生体情報から前記制御パターンを出力する推論部と、
を備えることを特徴とする付記1から5の何れか1項に記載の照明制御システム。
(付記7)
前記データ取得部は前記照明器具の使用環境情報を取得し、
前記推論部は、前記生体情報と前記使用環境情報から前記制御パターンを推論するための前記学習済みモデルを用いて、取得された前記生体情報と前記使用環境情報から前記制御パターンを出力することを特徴とする付記6に記載の照明制御システム。
(付記8)
1日のうちの時間情報に応じた点灯状態の制御パターンに基づき制御され、前記制御パターンは、照明器具のユーザの生体情報に基づき更新されることを特徴とする照明器具。
(付記9)
1日のうちの時間情報に応じた照明器具の点灯状態の制御パターンに基づき、前記照明器具を制御し、前記制御パターンは、前記照明器具のユーザの生体情報に基づき更新されることを特徴とする照明制御装置。
【符号の説明】
【0057】
1 照明器具、2 照明制御装置、3 ウェアラブル端末、4 タブレット端末、5 行動センサ、6 環境センサ、21 演算装置、22 記憶部、23 通信部、100、200 照明制御システム
図1
図2
図3
図4
図5