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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155144
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】バックル装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/28 20060101AFI20241024BHJP
   B60R 22/26 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60R22/28 107
B60R22/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069588
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆二
【テーマコード(参考)】
3D018
【Fターム(参考)】
3D018CB06
3D018DA05
(57)【要約】
【課題】車幅方向において小型化する。
【解決手段】バックル装置では、ベルト20の縫合部20Bがスプール24に巻取られている。ここで、縫合部20Bがスプール24の上周領域P1及び左周領域P3に配置されている。このため、ベルト20の巻半径が縫合部20Bによって大きくされても、ベルト20によってブーツ34の左被覆部34B及び右被覆部34Cがブーツ34の車幅方向外側に変位されることを抑制でき、バックル装置10を車幅方向において小型化できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、
前記バックル本体に一端側が連結され、縫合部が設けられるベルトと、
前記ベルトの他端側が連結され、前記縫合部が巻取られる巻取部材と、
前記巻取部材の車幅方向一側を被覆する一側被覆部と、
前記巻取部材の車幅方向他側を被覆する他側被覆部と、
を備え、前記巻取部材の周方向領域が前記巻取部材の上方の上周領域と前記巻取部材の下方の下周領域と前記巻取部材の車幅方向一方の一周領域と前記巻取部材の車幅方向他方の他周領域とに均等に分割される場合において前記縫合部が前記一周領域及び前記他周領域の一方のみを含む複数の前記周方向領域に配置されるバックル装置。
【請求項2】
前記ベルトが前記一側被覆部及び前記他側被覆部の少なくとも一方に当接されない請求項1記載のバックル装置。
【請求項3】
前記ベルトが前記一側被覆部及び前記他側被覆部に当接されない請求項2記載のバックル装置。
【請求項4】
前記ベルトの前記巻取部材からの引出しの許容が開始される際に変形されて前記縫合部の前記巻取部材径方向外側の前記ベルトが前記巻取部材からの引出しを許容される変形部材を備える請求項1記載のバックル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトの一端側がバックル本体に連結されると共にベルトの他端側が巻取部材に連結されるバックル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のバックル装置では、ウェビングの一端側がバックル本体に連結されると共に、ウェビングの他端側がスプールに連結されており、ウェビングがスプールに巻取られている。さらに、スプールの車幅方向一側がカバーによって被覆されており、スプールに巻取られたウェビングとカバーとが車幅方向において対向されている。
【0003】
ここで、このようなバックル装置では、車幅方向において小型化できるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-125010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、車幅方向において小型化できるバックル装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のバックル装置は、乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、前記バックル本体に一端側が連結され、縫合部が設けられるベルトと、前記ベルトの他端側が連結され、前記縫合部が巻取られる巻取部材と、前記巻取部材の車幅方向一側を被覆する一側被覆部と、前記巻取部材の車幅方向他側を被覆する他側被覆部と、を備え、前記巻取部材の周方向領域が前記巻取部材の上方の上周領域と前記巻取部材の下方の下周領域と前記巻取部材の車幅方向一方の一周領域と前記巻取部材の車幅方向他方の他周領域とに均等に分割される場合において前記縫合部が前記一周領域及び前記他周領域の一方のみを含む複数の前記周方向領域に配置される。
【0007】
本発明の第2態様のバックル装置は、本発明の第1態様のバックル装置において、前記ベルトが前記一側被覆部及び前記他側被覆部の少なくとも一方に当接されない。
【0008】
本発明の第3態様のバックル装置は、本発明の第2態様のバックル装置において、前記ベルトが前記一側被覆部及び前記他側被覆部に当接されない。
【0009】
本発明の第4態様のバックル装置は、本発明の第1態様~第3態様の何れか1つのバックル装置において、前記ベルトの前記巻取部材からの引出しの許容が開始される際に変形されて前記縫合部の前記巻取部材径方向外側の前記ベルトが前記巻取部材からの引出しを許容される変形部材を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1態様のバックル装置では、乗員に装着されるウェビングに設けられるタングがバックル本体に係合される。また、バックル本体にベルトの一端側が連結されると共に、ベルトの他端側が巻取部材に連結されており、巻取部材にベルトの縫合部が巻取られる。さらに、巻取部材の車幅方向一側を一側被覆部が被覆すると共に、巻取部材の車幅方向他側を他側被覆部が被覆する。
【0011】
ここで、巻取部材の周方向領域が巻取部材の上方の上周領域と巻取部材の下方の下周領域と巻取部材の車幅方向一方の一周領域と巻取部材の車幅方向他方の他周領域とに均等に分割される場合において、縫合部が一周領域及び他周領域の一方のみを含む複数の周方向領域に配置される。このため、縫合部が複数の周方向領域に配置される場合に、ベルトの巻半径(ベルトの巻取部材への巻取部分の外周の半径)が縫合部によって大きくされても、ベルトによって一側被覆部及び他側被覆部が車幅方向に変位されることを抑制でき、バックル装置を車幅方向において小型化できる。
【0012】
本発明の第2態様のバックル装置では、ベルトが一側被覆部及び他側被覆部の少なくとも一方に当接されない。このため、ベルトによって一側被覆部及び他側被覆部の少なくとも一方が車幅方向に変位されることを効果的に抑制できる。
【0013】
本発明の第3態様のバックル装置では、ベルトが一側被覆部及び他側被覆部に当接されない。このため、ベルトによって一側被覆部及び他側被覆部が車幅方向に変位されることを効果的に抑制できる。
【0014】
本発明の第4態様のバックル装置では、ベルトの巻取部材からの引出しの許容が開始される際に、変形部材が変形されて、縫合部の巻取部材径方向外側のベルトが巻取部材からの引出しを許容される。このため、ベルトの巻半径が縫合部によって大きくされて、ベルトによって巻取部材に作用されるトルクが大きくされることで、変形部材が変形されるための荷重を大きくできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るバックル装置を示す右斜め前方から見た分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るバックル装置を示す右方から見た断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るバックル装置の内部を示す前方から見た前面図である。
図4】本発明の実施形態に係るバックル装置のスプール及びベルトを示す前方から見た前面図である。
図5】本発明の実施形態に係るバックル装置のバックル及びベルトを示す右方から見た右面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、本発明の実施形態に係るバックル装置10が右斜め前方から見た分解斜視図にて示されており、図2には、バックル装置10が右方から見た断面図にて示されている。さらに、図3には、バックル装置10の内部が前方から見た前面図にて示されている。なお、図面では、バックル装置10の前方を矢印FRで示し、バックル装置10の右方(表側)を矢印RHで示し、バックル装置10の上方を矢印UPで示している。
【0017】
本実施形態に係るバックル装置10は、車両(自動車)のシートベルト装置12を構成しており、シートベルト装置12は、車室内のシート(図示省略)に適用されている。シートベルト装置12には、巻取装置(図示省略)が設けられており、巻取装置は、シート後部の車幅方向外側かつ下側に設置されている。巻取装置には、長尺帯状のウェビング14(図1参照)が基端側から巻取られており、ウェビング14は、巻取装置への巻取側に付勢されると共に、巻取装置の上側に引出されている。巻取装置には、ロック機構が設けられており、車両の緊急時(衝突時等)には、ロック機構が巻取装置からのウェビング14の引出しをロックする。
【0018】
ウェビング14は、巻取装置よりも先端側において、スルーアンカ(図示省略)に移動可能に貫通されており、スルーアンカは、シート後部の車幅方向外側かつ上側に設置されている。ウェビング14の先端部には、アンカ(図示省略)が固定されており、アンカは、シート後部の車幅方向外側かつ下側に設置されている。ウェビング14は、スルーアンカとアンカとの間において、タング16(図1参照)に移動可能に貫通されている。
【0019】
バックル装置10は、シート後部の車幅方向内側かつ下側に設置されており、バックル装置10の前方、右方及び上方は、それぞれ車両の前側又は後側、車幅方向内方及び上側に向けられている。
【0020】
図1に示す如く、バックル装置10の上部には、略直方体状のバックル本体18が設けられており、バックル本体18の下側部分は、左右方向において、下側へ向かうに従い徐々に小さくされている。バックル本体18には、上側からタング16が係合可能にされており、バックル本体18にタング16が係合されて、シートに着座した乗員にウェビング14が装着される。これにより、ウェビング14のスルーアンカとタング16との間の部分(ショルダウェビング)が乗員の肩部から腰部(胸部を含む)に斜め方向に掛渡されると共に、ウェビング14のタング16とアンカとの間の部分(ラップウェビング)が乗員の腰部に横方向に掛渡される。バックル本体18へのタング16の係合は、解除可能にされており、バックル本体18へのタング16の係合が解除されて、乗員へのウェビング14の装着が解除される。
【0021】
バックル本体18の下部には、連結部材としての帯状のベルト20(ウェビング、図5参照)の先端側部分(上側部)が連結されており、ベルト20は、織物により構成されて、例えばウェビング14と同一の材質にされている。ベルト20の基端部(下側端部)は、ベルト20の基端部近傍と重合されると共に、ベルト20の基端は、縫合糸20Aによりベルト20の基端部近傍と縫合されており、これにより、ベルト20の基端側部分(下側部)が環状にされている。ベルト20の基端側部分の縫合糸20Aが配置される長手方向範囲は、縫合部20Bにされており、縫合部20Bは、ベルト20の基端側部分(重合部分)の縫合部20B以外の部分に比し、可撓性が低くされる(硬くされる)と共に、肉厚が大きくされている。
【0022】
図1図3に示す如く、バックル装置10の下部には、支持体としての金属製のフレーム22が設けられており、フレーム22は、断面U字形板状にされている。フレーム22の左部には、背板22Aが設けられており、フレーム22は、背板22Aの下端部において、車体側(例えばシート下部の後部)に固定されている。フレーム22の前部及び後部には、それぞれ脚板22B及び脚板22Cが設けられており、脚板22B及び脚板22Cは、背板22Aから右方に突出されている。背板22Aの上部には、矩形状の貫通孔22Dが貫通形成されており、貫通孔22Dは、背板22Aの左右方向全体に配置されている。脚板22Bの下側には、略矩形板状の固定片22Eが一体形成されており、固定片22Eは、下側に突出されている。
【0023】
フレーム22には、巻取部材としての金属製で略円筒状のスプール24(図4参照)が支持されている。スプール24は、フレーム22の脚板22B及び脚板22Cに貫通されており、スプール24は、軸方向が前後方向にされて、中心軸線周りに回転可能にされている。スプール24の左側には、フレーム22(背板22A)の貫通孔22Dが配置されており、スプール24は、フレーム22の左側に露出されている。スプール24には、長尺矩形状の挿通孔24Aが貫通形成されており、挿通孔24Aは、スプール24の軸方向に延伸されて、前側及び後側に開放されている。スプール24の前部には、被連結部としての矩形状の連結孔24Bが複数(本実施形態では3個)貫通形成されており、複数の連結孔24Bは、スプール24の周方向に等間隔に配置されている。連結孔24Bは、前側に開放されており、1個の連結孔24Bは、挿通孔24Aと連通されている。
【0024】
また、スプール24の周方向領域は、スプール24の上方の上周領域P1とスプール24の下方の下周領域P2とスプール24の左方(車幅方向外方)の左周領域P3(一周領域)とスプール24の右方(車幅方向内方)の右周領域P4(他周領域)とに均等に分割されるとし、上周領域P1、下周領域P2、左周領域P3及び右周領域P4のスプール24周方向中央は、それぞれスプール24の中心軸線Oの上方、下方、左方及び右方に配置される。
【0025】
スプール24内には、係止部材としての金属製で略円柱状のバー26が同軸上に挿入されており、バー26の軸方向両端部は、同軸上に拡径されて、スプール24内に嵌合されている。ベルト20の基端側部分(環状部分)は、スプール24の挿通孔24Aに挿通されると共に、内部にバー26の軸方向中間部が挿通されており、これにより、ベルト20の基端側部分が、スプール24内にバー26によって係止されて、スプール24に連結されている。ベルト20は、スプール24に巻取られており、ベルト20は、スプール24の左側から上側に引出されている。スプール24の挿通孔24Aは、スプール24の略下端部に配置されており、ベルト20の基端側部分は、挿通孔24Aからスプール24の左側、上側及び右側にこの順番で巻取られると共に、ベルト20の基端側部分より先端側は、スプール24の下側から左側に巻取られて引出されている。
【0026】
また、ベルト20の基端側部分の縫合部20Bは、スプール24の上周領域P1及び左周領域P3に配置されており、ベルト20のスプール24からの引出し位置は、縫合部20Bのスプール24径方向外側に配置されている。縫合部20Bは、可撓性が低くされて、曲率がスプール24の外周面の曲率よりも小さくされた状態でスプール24に巻取られており、縫合部20Bのベルト20長手方向両端側は、スプール24の外周面から径方向外側に離間されている(図4の2点鎖線参照)。縫合部20Bの肉厚は、ベルト20の基端側部分の縫合部20B以外の部分の肉厚に比し大きくされており、ベルト20の縫合部20Bにおける巻半径(ベルト20のスプール24への巻取部分の外周の半径)は、ベルト20の基端側部分の縫合部20B以外の部分における巻半径に比し、大きくされている。
【0027】
フレーム22(脚板22B)の前側には、係止体としての金属製のケース28が配置されている。ケース28には、固定部としての略矩形板状の固定板28Aが設けられており、固定板28Aが脚板22Bに固定されて、ケース28が脚板22Bに固定されている。固定板28Aの前側には、略有底円筒状の係止筒28Bが一体形成されており、係止筒28Bの軸方向は、前後方向にされている。係止筒28B内は、略円柱状の内孔28Cにされて、固定板28Aを貫通すると共に、固定板28Aの後側に開放されており、内孔28Cの後側部分には、スプール24の前部が同軸上に挿入されている。内孔28Cの周面には、前側部分において、係止部としての略台形柱状の係止孔28Dが複数(本実施形態では3個)形成されており、複数の係止孔28Dは、内孔28Cの周方向に等間隔に配置されている。係止孔28Dは、前後方向(内孔28Cの軸方向)に延伸されており、係止孔28Dは、内孔28Cの後側部分に開放されている。固定板28Aの後面には、内孔28Cの径方向外側において、規制部としての正面視略T字状の規制凹部28Eが複数(本実施形態では3個)形成されており、複数の規制凹部28Eは、係止筒28Bの周方向に等間隔に配置されている。規制凹部28Eの先端側部分は、内孔28Cの周方向に延伸されており、規制凹部28Eの基端側部分は、内孔28Cの径方向に延伸されると共に、内孔28Cに連通されている。
【0028】
ケース28の内孔28Cには、制限部材(エネルギー吸収部材)としての金属製で略円柱状のトーションシャフト30が同軸上に配置されている。トーションシャフト30の前端部には、被係止部としての略台形柱状の係止突起30Aが複数(本実施形態では3個)一体形成されており、複数の係止突起30Aは、それぞれ軸方向が前後方向(トーションシャフト30の軸方向)にされると共に、トーションシャフト30の周方向に等間隔に配置されている。係止突起30Aは、ケース28(内孔28C)の係止孔28Dに挿入されて、側面が係止孔28Dの側面に当接されており、トーションシャフト30は、ケース28(内孔28C)に対する相対回転が係止されている。トーションシャフト30の後端部には、連結部としての略台形柱状の連結突起30Bが複数(本実施形態では3個)一体形成されており、複数の連結突起30Bは、それぞれ軸方向が前後方向(トーションシャフト30の軸方向)にされると共に、トーションシャフト30の周方向に等間隔に配置されている。連結突起30Bは、スプール24の連結孔24Bに挿入されると共に、側面が連結孔24Bの側面に当接されており、トーションシャフト30は、スプール24に連結されて、スプール24の回転を制限している。
【0029】
スプール24とトーションシャフト30との間には、変形部材としての金属製のシェアプレート32が配置されている。シェアプレート32の中心部分には、円板状の基部32Aが同軸上に設けられており、基部32Aは、トーションシャフト30の後側において、スプール24内に同軸上に挿入されている。基部32Aの外周には、略T字形板状の破断部32Bが複数(本実施形態では3個)一体形成されており、複数の破断部32Bは、基部32Aの周方向に等間隔に配置されている。破断部32Bの先端側部分は、基部32Aの周方向に延伸されており、破断部32Bの基端側部分は、長尺矩形板状の破断板32Cにされて、基部32Aの径方向に延伸されると共に、基部32Aと一体にされている。破断部32Bは、破断板32Cがスプール24の連結孔24B及びケース28(固定板28A)の規制凹部28E基端側部分に貫通されると共に、先端側部分が規制凹部28Eの先端側部分に挿入されており、破断板32Cが規制凹部28Eの基端側部分の側面に当接されて、シェアプレート32の回転が規制されている。
【0030】
バックル本体18からフレーム22までの範囲には、被覆部材としての略矩形筒状のブーツ34(カバー)が設けられており、ブーツ34は、軟質樹脂製にされて、可撓性を有している。ブーツ34の上部は、左右方向において、下側へ向かうに従い徐々に小さくされており、ブーツ34は、上部内にバックル本体18の下側部分が嵌入されて、バックル本体18の下側へ移動を制限している。ブーツ34の上下方向中間部内には、ベルト20が挿通されており、ブーツ34の下部内は、前側に開放されて、フレーム22(スプール24及びバー26を含む)が嵌入されている。ブーツ34には、下部の直上において、矩形枠板状の支持枠34Aが一体形成されており、支持枠34A内には、ベルト20が挿通されている。支持枠34Aの下側は、フレーム22の上端によって支持されており、これにより、ブーツ34の下側への移動が制限されている。上述の如く、ベルト20がスプール24に巻取られることで、ベルト20に張力が作用された状態で、ブーツ34がバックル本体18とフレーム22との間で弾性収縮力を作用されており、ブーツ34は、フレーム22を下側に付勢してフレーム22に対し自立されると共に、バックル本体18を上側に付勢して自立させている。また、上述の如くベルト20に張力が作用されても、ベルト20の基端側部分の縫合部20Bは、曲率がスプール24の外周面の曲率よりも小さくされた状態で、スプール24に巻取られている(図4の2点鎖線参照)。
【0031】
ブーツ34の下部の左壁は、一側被覆部としての左被覆部34Bにされており、左被覆部34Bは、フレーム22(背板22A)の貫通孔22Dを介してスプール24(スプール24に巻取られたベルト20を含む)の左側を被覆している。左被覆部34Bの下端部及び背板22Aには、樹脂製のクリップ36が貫通されており、クリップ36は、左被覆部34B及び背板22Aを挟持して、左被覆部34Bをフレーム22に固定している。また、上述の如くベルト20の基端側部分の縫合部20Bの曲率がスプール24の外周面の曲率よりも小さくされることで、スプール24に巻取られたベルト20が、左被覆部34Bに大荷重で当接して、左被覆部34Bを左側に変位(弾性変形)させている(図4の1点鎖線参照)。
【0032】
ブーツ34の下部の右壁は、他側被覆部としての右被覆部34Cにされており、右被覆部34Cは、スプール24(スプール24に巻取られたベルト20を含む)の右側を被覆している。右被覆部34Cの前端部には、長尺矩形板状の延出片34Dが一体形成されており、延出片34Dは、下側に延出されている。延出片34Dは、フレーム22(脚板22B)の固定片22Eが貫通されて、固定片22Eに引掛けられており、これにより、右被覆部34Cがフレーム22に固定されている。また、上述の如くベルト20の基端側部分の縫合部20Bの曲率がスプール24の外周面の曲率よりも小さくされても、スプール24の外周面に沿って巻取られたベルト20が、右被覆部34Cに小荷重で当接して(特に右被覆部34Cに接して)、右被覆部34Cを右側に略変位(弾性変形)させていない(図4の1点鎖線参照)。
【0033】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0034】
以上の構成のシートベルト装置12では、バックル装置10において、スプール24の回転をトーションシャフト30が制限して、ベルト20のスプール24からの引出し及びバックル本体18の上側への延出が制限されており、バックル本体18にウェビング14のタング16が係合されることで、乗員にウェビング14が装着される。
【0035】
車両の緊急時(衝突時等)には、巻取装置においてロック機構がウェビング14の引出しをロックすることで、ウェビング14によって乗員が拘束される。そして、例えば乗員に慣性力が作用されて、乗員によってウェビング14が引張られた際には、ウェビング14からタング16及びバックル本体18を介してベルト20にスプール24からの引出力が作用されることで、スプール24に回転力が作用される。さらに、スプール24に作用される回転力によって、トーションシャフト30が周方向に捩れ変形された際には、スプール24の回転が許容されて、ベルト20のスプール24からの引出しが許容されることで、バックル本体18(タング16を含む)の上側への延出が許容される。このため、乗員によるウェビング14の引出しが許容されて、ウェビング14から乗員(特に胸部)に作用される荷重が低減される(バックル本体18の延出許容荷重(フォースリミッタ荷重)に制限される)と共に、乗員の運動エネルギーがトーションシャフト30の捩れ変形によって吸収される。
【0036】
また、スプール24の回転の許容が開始される際には、スプール24の連結孔24B側面がシェアプレート32の破断板32Cに当接されることで、破断板32Cが、スプール24の回転を制限して、ベルト20の引出しを制限可能にされている。このため、スプール24に作用される回転力が小さい場合(例えば車両の軽衝突時)には、破断板32Cがスプール24の回転を制限することで、トーションシャフト30が捩れ変形されることが抑制される。一方、スプール24に作用される回転力が大きい場合には、破断板32Cが連結孔24Bの側面によって破断(変形)されることで、破断板32Cが、スプール24の回転を許可して、ベルト20の引出しを許可する。
【0037】
ところで、ベルト20の基端側部分の縫合部20Bは、曲率がスプール24の外周面の曲率よりも小さくされた状態でスプール24に巻取られており、縫合部20Bのベルト20長手方向両端側は、スプール24の外周面から径方向外側に離間されている(図4の2点鎖線参照)。
【0038】
ここで、縫合部20Bがスプール24の上周領域P1及び左周領域P3に配置されている。このため、縫合部20Bがスプール24の複数の周方向領域に配置される場合に、ベルト20の巻半径が縫合部20Bによって大きくされても、ベルト20のスプール24への巻取部分によって、ブーツ34の左被覆部34Bが左側に変位されるものの、ブーツ34の右被覆部34Cは右側に略変位されない。これにより、左被覆部34B及び右被覆部34Cがブーツ34左右方向(車幅方向)外側に変位されることを抑制でき、バックル装置10を左右方向において小型化できる。
【0039】
また、車両の緊急時にトーションシャフト30が捩れ変形されてスプール24の回転が許容される際には、ベルト20に作用される引出力によって縫合部20Bの曲率が大きくされて、縫合部20Bがスプール24の外周面に沿って曲げられる(図4の実線参照)。さらに、縫合部20Bの肉厚がベルト20の基端側部分の縫合部20B以外の部分の肉厚に比し大きくされると共に、ベルト20のスプール24からの引出し位置が縫合部20Bのスプール24径方向外側に配置されており、ベルト20のスプール24からの引出し位置における巻半径R(図4参照)が大きくされる。このため、ベルト20によってスプール24に作用されるトルクが大きくされることで、シェアプレート32の破断板32Cが破断されるための荷重を大きくできる。これにより、破断板32Cの幅寸法(スプール24周方向の寸法)を大きくでき、シェアプレート32をプレス加工により製造する場合でも、破断板32Cを容易に製造できて、シェアプレート32を容易に製造できる。
【0040】
なお、本実施形態では、ベルト20のスプール24への巻取部分がブーツ34の左被覆部34B及び右被覆部34Cに当接される。しかしながら、ベルト20のスプール24への巻取部分がブーツ34の左被覆部34B及び右被覆部34Cの少なくとも一方(特に左被覆部34B及び右被覆部34C)に当接されなくてもよい。これにより、ベルト20のスプール24への巻取部分によって左被覆部34B及び右被覆部34Cがブーツ34左右方向外側に変位されることを効果的に抑制でき、バックル装置10を左右方向において効果的に小型化できる。
【0041】
また、本実施形態では、ベルト20の基端側部分の縫合部20Bがスプール24の上周領域P1及び左周領域P3に配置される。
【0042】
しかしながら、縫合部20Bがスプール24の上周領域P1及び右周領域P4に配置されてもよく、縫合部20Bがスプール24の下周領域P2及び左周領域P3に配置されてもよく、縫合部20Bがスプール24の下周領域P2及び右周領域P4に配置されてもよい。この場合、ベルト20のスプール24への巻取部分によってブーツ34の左被覆部34B及び右被覆部34Cがブーツ34左右方向外側に変位されることを抑制できる。
【0043】
さらに、縫合部20Bがスプール24の上周領域P1、右周領域P4及び下周領域P2に配置されてもよく、縫合部20Bがスプール24の上周領域P1、左周領域P3及び下周領域P2に配置されてもよい。この場合、ベルト20のスプール24への巻取部分によってブーツ34の左被覆部34B及び右被覆部34Cがブーツ34左右方向外側に変位されることを抑制できる。
【符号の説明】
【0044】
10・・・バックル装置、14・・・ウェビング、16・・・タング、18・・・バックル本体、20・・・ベルト、20B・・・縫合部、24・・・スプール(巻取部材)、32・・・シェアプレート(変形部材)、34B・・・左被覆部(一側被覆部)、34C・・・右被覆部(他側被覆部)、P1・・・上周領域、P2・・・下周領域、P3・・・左周領域(一周領域)、P4・・・右周領域(他周領域)
図1
図2
図3
図4
図5