(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155147
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/12 20060101AFI20241024BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60C11/12 B
B60C11/12 A
B60C11/03 C
B60C11/03 300A
B60C11/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069593
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】加地 与志男
(72)【発明者】
【氏名】野村 洸
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC15
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3D131EC12V
3D131EC12X
3D131EC12Z
(57)【要約】
【課題】本発明は、氷上グリップ性能を向上させた、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の空気入りタイヤは、トレッド踏面に少なくとも1つの陸部を有し、前記陸部の少なくとも1つに、複数の微小サイプと、前記微小サイプよりも延在長さが長い長サイプと、が配置され、前記微小サイプの両端は、前記陸部内で終端し、微小サイプ密度SDmは、以下の関係式、SDt>SDm≧SDt×0.5、を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド踏面に少なくとも1つの陸部を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部の少なくとも1つに、複数の微小サイプと、前記微小サイプよりも延在長さが長い長サイプと、が配置され、
前記微小サイプの両端は、前記陸部内で終端し、
前記微小サイプのタイヤ周方向への投影長さの1つの前記陸部内での総和をtwm(mm)とし、前記長サイプのタイヤ周方向への投影長さの1つの前記陸部内での総和をtwL(mm)とし、前記陸部の外輪郭面積をA(mm2)とし、前記陸部のタイヤ幅方向の最大幅をBW(mm)とし、BL(mm)=A(mm2)/BW(mm)として、
相当サイプ本数Neq=(twm+twL)/BW、
平均サイプ間隔Iave=BL/(Neq+1)、
総サイプ密度SDt=1/Iave=(Neq+1)/BL
=(twm+twL+BW)/A、
微小サイプ密度SDm=(twm+BW)/A、
とそれぞれ表すとき、
前記微小サイプ密度SDmは、以下の関係式、
SDt>SDm≧SDt×0.5
を満たすことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記陸部を区画する溝の最大溝深さをH(mm)とするとき、
SDt≧0.6/H
を満たす、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記総サイプ密度SDtが、0.14(1/mm)以上である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記陸部は、タイヤ周方向に延びる周方向主溝と、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝とにより区画された、ブロックである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤ、特にスタッドレスタイヤのトレッド部の陸部には、氷上グリップ性能を向上するためにサイプと称される細溝が設けられていた。このサイプにより、タイヤ接地面において氷路面が融解することで湧出する水を接地面外に排出することができ、これにより氷上グリップ性能を向上させ得る。
【0003】
陸部の剛性の低下を抑制しつつサイプを高密度に配置することにより、氷上グリップ性能の向上を図った技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、陸部の剛性とサイプによる水の排出との両立は十分でなく、氷上グリップ性能を向上させることには改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、氷上グリップ性能を向上させた、空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)トレッド踏面に少なくとも1つの陸部を有する空気入りタイヤであって、
前記陸部の少なくとも1つに、複数の微小サイプと、前記微小サイプよりも延在長さが長い長サイプと、が配置され、
前記微小サイプの両端は、前記陸部内で終端し、
前記微小サイプのタイヤ周方向への投影長さの1つの前記陸部内での総和をtwm(mm)とし、前記長サイプのタイヤ周方向への投影長さの1つの前記陸部内での総和をtwL(mm)とし、前記陸部の外輪郭面積をA(mm2)とし、前記陸部のタイヤ幅方向の最大幅をBW(mm)とし、BL(mm)=A(mm2)/BW(mm)として、
相当サイプ本数Neq=(twm+twL)/BW、
平均サイプ間隔Iave=BL/(Neq+1)、
総サイプ密度SDt=1/Iave=(Neq+1)/BL
=(twm+twL+BW)/A、
微小サイプ密度SDm=(twm+BW)/A、
とそれぞれ表すとき、
前記微小サイプ密度SDmは、以下の関係式、
SDt>SDm≧SDt×0.5
を満たすことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【0008】
ここで、「トレッド踏面」とは、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填して、最大負荷荷重を負荷した際に、路面と接地することとなるトレッド表面の、タイヤ周方向全域にわたる面をいう。
また、「サイプ」とは、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、サイプ深さの50%以上の領域においてサイプ幅が1mm以下であるものをいう。ここで、サイプ深さは、上記状態において、トレッド踏面に垂直な方向に測るものとし、サイプ幅は、トレッド踏面における延在方向に垂直な断面において、トレッド踏面と平行な方向に測るものとする。
また、「外輪郭面積」とは、トレッド踏面の展開視にて外輪郭で囲まれた面積をいい、従って、陸部内にサイプ、小穴、細溝等の非接地部分が配置されている場合であっても当該サイプ、小穴、細溝等の面積を除外しない面積を意味する。
【0009】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいう。
【0010】
(2)前記陸部を区画する溝の最大溝深さをH(mm)とするとき、
SDt≧0.6/H
を満たす、前記(1)に記載の空気入りタイヤ。
なお、「最大溝深さH」は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態における深さを言う。
【0011】
(3)前記総サイプ密度SDtが、0.14(1/mm)以上である、前記(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
【0012】
(4)前記陸部は、タイヤ周方向に延びる周方向主溝と、タイヤ幅方向に延びる幅方向溝とにより区画された、ブロックである、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
ここで、「溝」とは、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、溝幅(開口幅)が2mm以上のものをいう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、氷上グリップ性能を向上させた、空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】比較となる空気入りタイヤの陸部を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤの陸部の第1の例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤの陸部の第2の例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤの陸部の第3の例を示す図である。
【
図7】タイヤ構造の一例を示すタイヤ幅方向断面図である。
【
図8】タイヤ構造の他の例を示すタイヤ幅方向断面図である。
【
図10】実施例4の比較例1のサイプを示す図である。
【
図11】実施例4の比較例4のサイプを示す図である。
【
図12】陸部が適用されたパターンの一例を示す図である。
【
図13】陸部が適用されたパターンの一例を示す図である。
【
図14】実施例1の従来例1の陸部を示す図である。
【
図15】実施例1の従来例2の陸部を示す図である。
【
図16】実施例1の従来例3の陸部を示す図である。
【
図17】実施例1のシミュレーション結果を示す図である。
【
図18】実施例1のシミュレーション結果を示す図である。
【
図19】実施例1のシミュレーション結果を示す図である。
【
図20】実施例1の従来例と比較例1の評価結果を示す図である。
【
図21】実施例2の氷上摩擦係数に対するサイプ間隔の影響の評価結果を示す図である。
【
図22】実施例3のサイプ密度とブロック剛性との関係のシミュレーション結果を示す図である。
【
図23】実施例3のサイプ密度とブロック剛性との関係のシミュレーション結果を示す図である。
【
図24】実施例3の比較例2の陸部及びシミュレーション結果を示す図である。
【
図25】実施例3の併用例1の陸部及びシミュレーション結果を示す図である。
【
図26】実施例3の併用例2の陸部及びシミュレーション結果を示す図である。
【
図27】実施例3の比較例3の陸部を示す図である。
【
図29】実施例4の比較例3の陸部を示す図である。
【
図30】実施例4のシミュレーション結果を示す図である。
【
図31】実施例4のシミュレーション結果を示す図である。
【
図33】実施例4のシミュレーション結果を示す図である。
【
図34】実施例4のシミュレーション結果を示す図である。
【
図35】実施例4のシミュレーション結果を示す図である。
【
図36】実施例4のシミュレーション結果を示す図である。
【
図37】実施例4のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)は、内部構造は特に限定されない。一例としては、タイヤは、一対のビード部間にトロイダル状に跨るカーカスを備える。一例としては、タイヤは、カーカスのタイヤ径方向外側にベルト等の補強層と、トレッドとを備える。
【0017】
図1は、比較となる空気入りタイヤの陸部の例を示す図である。このタイヤは、トレッド踏面に少なくとも1つの陸部1を有する。特には限定されないが、図示例では、陸部1は、タイヤ周方向に延びる(例えば、タイヤ周方向に延び、又は、タイヤ周方向に対して5°以下の傾斜角度で傾斜して延びる)周方向主溝(
図1では図示せず)と、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びる幅方向溝(
図1では図示せず)とにより区画された、ブロックである。図示例では、ブロックは、平面視で略平行四辺形状である。陸部1は、タイヤ幅方向に対して傾斜して延びる(幅方向溝に区画されることにより)幅方向エッジ2を有している。
【0018】
また、このタイヤは、陸部1の少なくとも1つに、複数の微小サイプ3が配置されている。微小サイプ3のタイヤ幅方向の幅w(
図1参照)は、当該微小サイプ3が配置された陸部1を区画する溝の最大溝深さH(本例では周方向主溝の最大溝深さと幅方向溝の最大溝深さとのうち、深い方)の1.2倍以下であることが好ましい。また、陸部1が図示例のようにブロックである場合や、周方向主溝間で区画される場合や、周方向主溝とトレッド端とにより区画される場合には、微小サイプ3のタイヤ幅方向の幅wは、陸部1のタイヤ幅方向の幅(最大幅)BWの30%以下であることが好ましい。微小サイプ3は、該微小サイプ3のタイヤ幅方向の幅をw(mm)とし、微小サイプ3の深さ(最大深さ)をh(mm)とするとき、w×hは、好ましくは、150(mm
2)以下、より好ましくは100(mm
2)以下、さらに好ましくは50(mm
2)以下である。微小サイプ3のサイプ幅(開口幅)は、0.5mm以下とすることができ、サイプ深さ(最大深さ)hは、3mm以上とすることができる。
【0019】
図1に示すように、微小サイプ3は、第1の要素(長辺)31及び第2の要素(短辺)32を有する。第1の要素31は、該第1の要素31に最も近い幅方向エッジ2と同じ方向に延びている(図示例では、共に右上がり(左下がり)である)。第2の要素32は、第1の要素31の一端から第1の要素31とは異なる方向に延びている(図示例では、第2の要素32は、タイヤ周方向(図示垂直方向)に延びている)。第2の要素32の一端は、第1の要素31の一端に連通している。
【0020】
第1の要素31は、図示例では、直線状である。一方で、第1の要素31は、曲線状とすることもでき、または、1か所以上の屈曲部を有する波型とすることもでき、または、1か所以上の屈曲部を有するジグザグ状とすることもできる。第1の要素31の他端(第2の要素32と連通しない方の端)は、陸部1内で終端している。
【0021】
第2の要素32は、図示例では、直線状である。本実施形態では、第2の要素32の延在長さは、第1の要素31の延在長さよりも短い。また、第2の要素32の他端(第1の要素31と連通しない方の端)は、陸部1内で終端している。
【0022】
第1の要素31と第2の要素32との連通部は、図示のように屈折状とすることができ、または円弧状(
図5参照)であっても良い。第1の要素31に対する第2の要素32の折れ曲り角度θ1は90°以上とするが好ましい。鋭角部を形成しないようにして剛性が低下する箇所を生じないようにすることができるからである。一方で、上記角度θ1は170°以下とすることが好ましい。
【0023】
図2は、微小サイプの断面の一例を示す図である。第2の要素32の延在方向における最浅部のサイプ深さh2は、第1の要素31の延在方向における最深部のサイプ深さh1よりも小さいことが好ましい。これにより、タイヤ製造時に用いる金型のサイプに相当する部分の薄板を補強して座屈し難くしながら、第2の要素32の剛性の低下を抑制して、陸部1の剛性の低下を抑制することができるため、氷上グリップ性能を効果的に向上させることができる。同様の理由により、h2≦h1×0.7、を満たすことがより好ましい。
【0024】
図3は、微小サイプの断面の一例を示す図である。
図3に示すように、第2の要素32は、第2の要素32の他端に向かってサイプ深さが浅くなるように形成されていることが好ましい。金型の薄板部分をさらに座屈し難くすることができるからである。この場合、第1の要素31の最深部の第2の要素32との連通部に近い部分と、第2の要素32の最浅部とを、断面視で滑らかな曲線又は直線で接続することが好ましい。
また、
図2、
図3に示すように、第1の要素31のサイプ底を丸みの帯びた形状とすることが好ましい(曲率半径Rで図示している)。また、
図2に示すように、第2の要素32のサイプ底を丸みの帯びた形状とすることも好ましい。サイプ底でのクラックの発生を抑制することができるからである。
【0025】
ここで、
図1に示すように、陸部1内に、複数の(図示例では4つの)微小サイプ3をタイヤ幅方向に沿って配置した、1列以上の(図示例では5列の)微小サイプ列4が形成されていることが好ましい。剛性低下への影響の小さい微小サイプ3を密に配置して、剛性の低下を抑えつつも、排水性を高めて、氷上グリップ性能を向上させ得るからである。微小サイプ3をタイヤ周方向に投影した際に、当該微小サイプ3と同じ微小サイプ列4内の隣接する微小サイプ3とは重ならないことが好ましい。また、微小サイプ3をタイヤ幅方向に投影した際に、当該微小サイプ3と同じ微小サイプ列4内の隣接する微小サイプ3と重なる部分を有することが好ましい。また、同じ微小サイプ列4内で隣接する微小サイプ3間には、他のサイプを有しないことが好ましい。また、一の微小サイプ列4内において隣接する微小サイプ3同士のタイヤ幅方向間隔は、微小サイプ3のタイヤ幅方向の幅と同じであるか、微小サイプ3のタイヤ幅方向の幅より小さいことが好ましい。剛性低下への影響の小さい微小サイプ3を密に配置して、剛性の低下を抑えつつも、排水性を高めて、氷上グリップ性能を向上させ得るからである。また、微小サイプ列4をタイヤ周方向に複数列配置することが好ましい。剛性低下への影響の小さい微小サイプ3を密に配置して、剛性の低下を抑えつつも、排水性を高めて、氷上グリップ性能を向上させ得るからである。複数の微小サイプ列4を構成する複数の微小サイプ3の第1の要素31は、いずれも同方向に延びていることが好ましい。
【0026】
第1の微小サイプ列及び第2の微小サイプ列を有し、第1の微小サイプ列を構成する微小サイプ3の第1の要素31と、第2の微小サイプ列32を構成する微小サイプ3の第1の要素31とは、タイヤ周方向に投影した際に互いに少なくとも一部が重ならないことが好ましい。互い違いに配置して、陸部1の剛性の均一化を図ることができるからである。より好ましくは、第1の微小サイプ列を構成する微小サイプ3の第1の要素31と、第2の微小サイプ列32を構成する微小サイプ3の第1の要素31とは、タイヤ周方向に投影した際に互いに重なる部分を有しない。陸部1の剛性の均一化を図ることができるからである。
上記のような互い違いの配置は、タイヤ周方向に隣接する第1の微小サイプ列と第2の微小サイプ列との間でなされることが好ましい。
【0027】
また、微小サイプ列4を構成する複数の微小サイプ3の第2の要素32の他端は、いずれも第2の要素32と連通する第1の要素31に対してタイヤ周方向の一方側(同じ側)に位置することが好ましい。このような規則的な形状とすることで、陸部1の剛性の均一化を図ることができるからである。微小サイプ列4を構成する微小サイプ3の第2の要素32の他端は、第1の要素31に対して陸部1の内側に配置されていることが好ましい。幅方向エッジ2に最も近い微小サイプ列4において、微小サイプ3の第1の要素31と、幅方向エッジ2との間には、他のサイプを有さず、且つ、他の溝を有しないことが好ましい。また、タイヤ周方向に隣接する微小サイプ列4同士の間隔(第1の要素31間の最短距離)は、3mm以上とすることが好ましく、陸部1を区画する溝の最大溝深さHに対し、5H以下とすることが好ましく、4H以下とすることがより好ましい。
【0028】
図4~
図6は、それぞれ、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤの陸部の第1~第3の例を示す図である。
図4、
図5に示す例では、微小サイプ列4は、3列配置されており、
図6に示す例では、微小サイプ列4は、2列配置されている。陸部1、幅方向エッジ2、微小サイプ3については、
図1の場合と同様とすることができるので、再度の説明を省略する。
図4~
図6に示す例では、陸部1内に、タイヤ幅方向に延びる1本以上の長サイプ5がさらに配置されている。長サイプ5の延在長さは、微小サイプ3の第1の要素31の延在長さよりも長い。このような長サイプ5を配置することにより排水性を向上させつつ、剛性の低下の影響の小さい微小サイプ3との組み合わせにより、氷上グリップ性能をさらに向上させることができる。好ましくは、微小サイプ3の第1の要素31の延在長さの2倍より長く、より好ましくは、微小サイプ列4を構成する全ての微小サイプ3の延在長さの合計よりも長い。図示例では、長サイプ5は、両端がブロックの端まで延びている。このようにして排水性をより向上させることができる。
図4~
図6に示すように、タイヤ周方向に隣接する微小サイプ列4間にタイヤ幅方向に延びる1本以上3本以下の長サイプを有することが好ましい。一方で、陸部1の剛性の低下を抑制する観点からは、タイヤ周方向に隣接する微小サイプ列4間に配置される長サイプ5は、2本以下であることが好ましい。
図5の例は、第1の要素31と第2の要素32との連通部が円弧状である点で、
図4の例と異なっている。また、
図4の例では、長サイプ5がジグザグ状であるのに対して、
図5の例では、長サイプ5が湾曲状(正弦波状)である。また、
図6の例では、タイヤ周方向に隣接する微小サイプ列4間に2本の長サイプ5が配置されている。長サイプ5は部分的(例えば、1か所又は2か所)に底上げ部を有していても良い。陸部1の剛性を確保することができるからである。陸部1が、周方向主溝により区画される場合、長サイプ5の少なくとも一方の端は、周方向主溝に連通することが好ましい。排水性を向上させることができるからである。
【0029】
ここで、微小サイプ3のタイヤ周方向への投影長さの1つの陸部1内での総和をtw
m(mm)とし、長サイプ5のタイヤ周方向への投影長さの1つの陸部1内での総和をtw
L(mm)とし、
図1、
図4~
図6に示すように、陸部1の外輪郭面積をA(mm
2)とし、陸部1のタイヤ幅方向の最大幅をBW(mm)とし、BL(mm)=A(mm
2)/BW(mm)として、
相当サイプ本数Neq=(tw
m+tw
L)/BW、
平均サイプ間隔Iave=BL/(Neq+1)、
総サイプ密度SDt=1/Iave=(Neq+1)/BL
=(tw
m+tw
L+BW)/A、
微小サイプ密度SDm=(tw
m+BW)/A、
とそれぞれ表すとき、本実施形態では、
微小サイプ密度SDmは、以下の関係式、
SDt>SDm≧SDt×0.5
を満たす。
このように、微小サイプ3と長サイプ5とを組み合わせた構成において、サイプ全体の密度(総サイプ密度SDt)に対して微小サイプの密度(微小サイプ密度SDm)を大きくすることにより、剛性低下への影響の小さい微小サイプ3により排水性を向上させる効果を向上させて、長サイプ5による排水性の向上と相まって、氷上グリップ性能をさらに向上させることができるからである。
同様の理由により、微小サイプ密度SDmは、SDt×0.54以上であることがより好ましく、SDt×0.6以上であることがさらに好ましい。
ここで、「外輪郭面積」とは、トレッド踏面の展開視にて外輪郭で囲まれた面積をいい、従って、陸部内にサイプ、小穴、細溝等の非接地部分が配置されている場合であっても当該サイプ、小穴、細溝等の面積を除外しない面積を意味する。
【0030】
また、陸部1を区画する溝の最大溝深さをH(mm)とするとき、
SDt≧0.6/H
を満たすことが好ましい。サイプ密度を高くして排水性を向上させて、氷上グリップ性能をさらに向上させることができるからである。同様の理由により、SDt≧0.8/H、を満たすことがより好ましい。
平均サイプ間隔は、Iave≦1.8H、を満たすことが好ましい(すなわち、SDt≧1/(1.8H)を満たすことが好ましい)。
また、総サイプ密度SDtが、0.14(1/mm)以上であることが好ましい。サイプ密度を高くして排水性を向上させて、氷上グリップ性能をさらに向上させることができるからである。
【0031】
本実施形態の空気入りタイヤでは、微小サイプ密度SDmは、以下の関係式、
SDt>SDm≧SDt×0.5
を満たす。
このように、微小サイプ3と長サイプ5とを組み合わせた構成において、サイプ全体の密度(総サイプ密度SDt)に対して微小サイプの密度(微小サイプ密度SDm)を大きくすることにより、剛性低下への影響の小さい微小サイプ3により排水性を向上させる効果を向上させて、長サイプ5による高い排水性の向上と相まって、氷上グリップ性能をさらに向上させることができるからである。すなわち、SDmがSDt×0.5未満だと、微小サイプ3の密度が小さいため、排水効果に比して剛性低下の影響が大きくなり、氷上グリップ性能を十分に向上させることができない。
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤによれば、氷上グリップ性能を向上させることができる。
【0032】
陸部1の表面には、直線状の浅サイプを多数配置することができる。浅サイプの深さh3は、微小サイプ3の第1の要素31の最大深さh1に対して、h3≦0.5×h1、を満たすことが好ましい。浅サイプの延在方向と微小サイプ3の第1の要素31の延在方向とを同方向にしても良く、あるいは、交差させても良い。また、浅サイプによって微小サイプ3同士を連結しても良い。
【0033】
幅方向エッジ2のタイヤ幅方向に対する傾斜角度と、微小サイプ3の第1の要素31のタイヤ幅方向に対する傾斜角度との差は、10°以下とすることが好ましく、略平行とすることがより好ましい。ここで、「幅方向エッジ2のタイヤ幅方向に対する傾斜角度」は、微小サイプ3の第1の要素31の両端をそれぞれタイヤ周方向に投影した際の幅方向エッジ2との2つの交点を結んだ直線の、タイヤ幅方向に対する傾斜角度をいうものとする。ただし、第1の要素31が第2の要素32と湾曲して連結している場合は、第1の要素31の一端と、第1の要素31の一端からタイヤ幅方向に、微小サイプ3をタイヤ周方向に投影した際のタイヤ幅方向の幅の30%離間した、第1の要素31上の点と、を結んだ直線の、タイヤ幅方向に対する傾斜角度をいうものとする。また、「微小サイプ3の第1の要素31のタイヤ幅方向に対する傾斜角度」は、微小サイプ3の第1の要素31の両端を結んだ直線の、タイヤ幅方向に対する傾斜角度をいうものとする。また、微小サイプ列4ごとに第1の要素31の深さを異ならせても良く、幅方向エッジ2に近い側の微小サイプ列4を構成する微小サイプ3の第1の要素31の最大溝深さh1をより浅くするのが好ましい。陸部1の剛性を確保することができるからである。微小サイプ3は、さらに第3の要素を有することができ、例えば、微小サイプ3は、Y字型とすることもできる。微小サイプ3と長サイプ5とは、タイヤ幅方向に投影した際に少なくとも一部が重なるようにしても良い。微小サイプ3、長サイプ5の他に別種のサイプ(例えば、細孔(ピンサイプ)、3次元サイプ、フラスコサイプ等)を設けても良い。微小サイプ3の第1の要素31に3次元サイプを適用しても良い。ここで、「3次元サイプ」とは、サイプ内壁面が深さ方向に沿って凹凸状をなすサイプをいう。3次元サイプは、例えば、深さ方向に屈曲しながら延びるサイプでも良く、あるいは、深さ方向に波状に変化しながら延びるサイプでも良いが、特にこれらの例には限定されない。
【0034】
陸部1が幅方向溝により区画される場合、微小サイプ3のタイヤ周方向端と幅方向溝との最短距離は1mm~10mmとすることができる。当該最短距離を1mm以上とすることでクラックや欠けの発生を抑制することができるからである。また、10mm以下とすることにより、微小サイプ3を密に配置し得る。同様の理由により、陸部1が周方向主溝により区画される場合、微小サイプ3のタイヤ幅方向端と周方向主溝との最短距離は1mm~10mmとすることができる。また、微小サイプ3同士の最短距離は、1mm~10mmとすることができる。
【0035】
以上の例では、いずれも陸部がブロックの場合が例示されていたが、この場合には限られず、幅方向溝のみで区画される陸部や、傾斜溝のみで区画される陸部であっても良い。
【0036】
図7は、タイヤ構造の一例を示すタイヤ幅方向断面図である。
図8は、タイヤ構造の他の例を示すタイヤ幅方向断面図である。
タイヤは、通信装置100、200としてのRFタグを備えてよい。RFタグは、ICチップとアンテナとを備える。RFタグは、例えば、タイヤを構成する同種又は異種の複数の部材の間の位置に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、タイヤ生産時にRFタグを取り付け易く、RFタグを備えるタイヤの生産性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、ビードフィラーと、ビードフィラーに隣接するその他の部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。
RFタグは、タイヤを構成するいずれかの部材内に埋設されていてもよい。このようにすることで、タイヤを構成する複数の部材の間の位置に挟み込まれて配置される場合と比較して、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、トレッドゴム、サイドゴム等のゴム部材内に埋設されてよい。
RFタグは、タイヤ幅方向断面視でのタイヤ外面に沿う方向であるペリフェリ長さ方向において、剛性の異なる部材の境界となる位置に、配置されないことが好ましい。このようにすることで、RFタグは、剛性段差に基づき歪みが集中し易い位置に、配置されない。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向断面視でカーカスの端部と、このカーカスの端部に隣接する部材(例えばサイドゴム等)と、の境界となる位置に配置されないことが好ましい。
RFタグの数は特に限定されない。タイヤは、1個のみのRFタグを備えてもよく、2個以上のRFタグを備えてもよい。ここでは、通信装置の一例として、RFタグを例示説明しているが、RFタグとは異なる通信装置であってもよい。
【0037】
RFタグは、例えば、タイヤのトレッド部に配置されてよい。このようにすることで、RFタグは、タイヤのサイドカットにより損傷しない。
RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド中央部に配置されてよい。トレッド中央部は、トレッド部において撓みが集中し難い位置である。このようにすることで、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。また、タイヤ幅方向でのタイヤの両外側からのRFタグとの通信性に差が生じることを抑制できる。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面を中心としてトレッド幅の1/2の範囲内に配置されてよい。
RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド端部に配置されてもよい。RFタグと通信するリーダーの位置が予め決まっている場合には、RFタグは、例えば、このリーダーに近い一方側のトレッド端部に配置されてよい。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド端を外端とする、トレッド幅の1/4の範囲内に配置されてよい。
【0038】
RFタグは、例えば、ビード部間に跨る、1枚以上のカーカスプライを含むカーカスより、タイヤ内腔側に配置されてよい。このようにすることで、タイヤの外部から加わる衝撃や、サイドカットや釘刺さりなどの損傷に対して、RFタグが損傷し難くなる。一例として、RFタグは、カーカスのタイヤ内腔側の面に密着して配置されてよい。別の一例として、カーカスよりタイヤ内腔側に別の部材がある場合に、RFタグは、例えば、カーカスと、このカーカスよりタイヤ内腔側に位置する別の部材と、の間に配置されてもよい。カーカスよりタイヤ内腔側に位置する別の部材としては、例えば、タイヤ内面を形成するインナーライナーが挙げられる。別の一例として、RFタグは、タイヤ内腔に面するタイヤ内面に取り付けられていてもよい。RFタグが、タイヤ内面に取り付けられる構成とすることで、RFタグのタイヤへの取り付け、及び、RFタグの点検・交換が行い易い。つまり、RFタグの取り付け性及びメンテナンス性を向上させることができる。また、RFタグが、タイヤ内面に取り付けられることで、RFタグをタイヤ内に埋設する構成と比較して、RFタグがタイヤ故障の核となることを防ぐことができる。
また、カーカスが、複数枚のカーカスプライを備え、複数枚のカーカスプライが重ねられている位置がある場合に、RFタグは、重ねられているカーカスプライの間に配置されていてもよい。
【0039】
RFタグは、例えば、タイヤのトレッド部で、1枚以上のベルトプライを含むベルトより、タイヤ径方向の外側に配置されてよい。一例として、RFタグは、ベルトに対してタイヤ径方向の外側で、当該ベルトに密着して配置されてよい。また、別の一例として、補強ベルト層を備える場合、当該補強ベルト層に対してタイヤ径方向の外側で、当該補強ベルト層に密着して配置されてよい。また、別の一例として、RFタグは、ベルトよりタイヤ径方向の外側で、トレッドゴム内に埋設されていてもよい。RFタグが、タイヤのトレッド部で、ベルトよりタイヤ径方向の外側に配置されることで、タイヤ径方向でのタイヤの外側からのRFタグとの通信が、ベルトにより阻害され難い。そのため、タイヤ径方向でのタイヤの外側からのRFタグとの通信性を向上させることができる。
また、RFタグは、例えば、タイヤのトレッド部で、ベルトよりタイヤ径方向の内側に配置されていてもよい。このようにすることで、RFタグのタイヤ径方向の外側がベルトに覆われるため、RFタグは、トレッド面からの衝撃や釘刺さりなどに対して損傷し難くなる。この一例として、RFタグは、タイヤのトレッド部で、ベルトと、当該ベルトよりタイヤ径方向の内側に位置するカーカスと、の間に配置されてよい。
また、ベルトが、複数枚のベルトプライを備える場合に、RFタグは、タイヤのトレッド部で、任意の2枚のベルトプライの間に配置されてよい。このようにすることで、RFタグのタイヤ径方向の外側が1枚以上のベルトプライに覆われるため、RFタグは、トレッド面からの衝撃や釘刺さりなどに対して損傷し難くなる。
【0040】
トラック・バス用タイヤでは、RFタグは、例えば、クッションゴムと、トレッドゴムとの間やクッションゴムと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、RFタグへの衝撃を、クッションゴムにより緩和できる。そのため、RFタグの耐久性を向上させることができる。
また、RFタグは、例えば、クッションゴム内に埋設されていてもよい。更に、クッションゴムは、隣接する同種又は異種の複数のゴム部材から構成されてよい。かかる場合に、RFタグは、クッションゴムを構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されてもよい。
【0041】
RFタグは、例えば、タイヤのサイドウォール部又はビード部の位置に配置されてよい。RFタグは、例えば、RFタグと通信可能なリーダーに対して近い一方側のサイドウォール部又は一方側のビード部に配置されてよい。このようにすることで、RFタグとリーダーとの通信性を高めることができる。一例として、RFタグは、カーカスと、サイドゴムと、の間やトレッドゴムとサイドゴムと、の間に配置されてよい。
RFタグは、例えば、タイヤ径方向において、タイヤ最大幅となる位置と、トレッド面の位置と、の間に配置されてよい。このようにすることで、RFタグがタイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側に配置される構成と比較して、タイヤ径方向でのタイヤの外側からのRFタグとの通信性を高めることができる。
RFタグは、例えば、タイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側に配置されていてもよい。このようにすることで、RFタグは、剛性の高いビード部近傍に配置される。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。一例として、RFタグは、ビードコアとタイヤ径方向又はタイヤ幅方向で隣接する位置に配置されてよい。ビードコア近傍は歪みが集中し難い。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。
特に、RFタグは、タイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側であって、かつ、ビード部のビードコアよりタイヤ径方向の外側の位置に配置されることが好ましい。このようにすることで、RFタグの耐久性を向上させることができるとともに、RFタグとリーダーとの通信が、ビードコアにより阻害され難く、RFタグの通信性を高めることができる。
また、サイドゴムがタイヤ径方向に隣接する同種又は異種の複数のゴム部材から構成されている場合に、RFタグは、サイドゴムを構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
【0042】
乗用車用タイヤでは、RFタグは、ビードフィラーと、このビードフィラーに隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、ビードフィラーを配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグを配置することができる。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。
RFタグは、例えば、ビードフィラーと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。カーカスのうちビードフィラーと共にRFタグを挟み込む部分は、ビードフィラーに対してタイヤ幅方向の外側に位置してもよく、タイヤ幅方向の内側に位置してもよい。カーカスのうちビードフィラーと共にRFタグを挟み込む部分が、ビードフィラーに対してタイヤ幅方向の外側に位置する場合には、タイヤ幅方向のタイヤの外側からの衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を、より低減できる。これにより、RFタグの耐久性を、より向上させることができる。
また、ビードフィラーは、サイドゴムと隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ビードフィラーと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
更に、ビードフィラーは、ゴムチェーファーと隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ビードフィラーと、ゴムチェーファーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
【0043】
トラック・バス用タイヤでは、RFタグは、スティフナーと、このスティフナーに隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、スティフナーを配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグを配置することができる。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。RFタグは、例えば、スティフナーと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されてよい。
また、RFタグは、例えば、スティフナーと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。カーカスのうちスティフナーと共にRFタグを挟み込む部分は、スティフナーに対してタイヤ幅方向の外側に位置してもよく、タイヤ幅方向の内側に位置してもよい。カーカスのうちスティフナーと共にRFタグを挟み込む部分が、スティフナーに対してタイヤ幅方向の外側に位置する場合には、タイヤ幅方向のタイヤの外側からの衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を、より低減できる。これにより、RFタグの耐久性を、より向上させることができる。
スティフナーは、ゴムチェーファーと隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、スティフナーと、ゴムチェーファーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
スティフナーは、タイヤ幅方向の外側でハットゴムに隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、スティフナーと、ハットゴムと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
スティフナーは、硬さの異なる複数のゴム部材から構成されてよい。かかる場合に、RFタグは、スティフナーを構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
RFタグは、ハットゴムと、このハットゴムに隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。RFタグは、例えば、ハットゴムと、カーカスプライと、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、RFタグへの衝撃を、ハットゴムにより緩和できる。そのため、RFタグの耐久性を向上させることができる。
【0044】
RFタグは、例えば、ゴムチェーファーと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、ゴムチェーファーを配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグを配置することができる。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。
RFタグは、例えば、ゴムチェーファーと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、リムから加わる衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を低減できる。そのため、RFタグの耐久性を向上させることができる。
【0045】
トラック・バス用タイヤでは、RFタグは、ナイロンチェーファーと、このナイロンチェーファーのタイヤ幅方向の外側又は内側で隣接する別の部材と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、タイヤ変形時に、RFタグの位置が変動し難くなる。そのため、タイヤ変形時にRFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。
ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向外側で、ゴムチェーファーと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファーと、ゴムチェーファーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向外側で、サイドゴムと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファーと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向内側で、スティフナーと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファーと、スティフナーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。また、ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向内側で、ハットゴムと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファーと、ハットゴムと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。更に、ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向内側で、カーカスと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファーと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。更に、ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向内側で、ワイヤーチェーファーと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファーと、ワイヤーチェーファーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
このように、RFタグは、ナイロンチェーファーと、このナイロンチェーファーのタイヤ幅方向の外側又は内側で隣接する別の部材と、の間に挟み込まれて配置されていてよい。特に、RFタグのタイヤ幅方向外側が、ナイロンチェーファーに覆われることで、タイヤ幅方向でのタイヤの外側からの衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を、より低減できる。そのため、RFタグの耐久性を、より向上させることができる。
【0046】
RFタグは、ワイヤーチェーファーと、このワイヤーチェーファーのタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、タイヤ変形時に、RFタグの位置が変動し難くなる。そのため、タイヤ変形時にRFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。ワイヤーチェーファーがタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材は、例えば、ゴムチェーファーなどのゴム部材であってよい。また、ワイヤーチェーファーがタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材は、例えば、カーカスであってもよい。
【0047】
乗用車用タイヤでは、ベルトの半径方向外側にベルト補強層をさらに備えてもよい。例えば、ベルト補強層はポリエチレンテレフタレートからなるコードをタイヤ周方向に連続して螺旋状に巻回してなってもよい。ここでコードは、6.9×10-2N/tex以上の張力をかけて接着剤処理を施してなり、160℃で測定した29.4N荷重時の弾性率が2.5 mN/dtex・%以上であってもよい。さらにベルト補強層はベルト全体を覆うように配置されていてもベルトの両端部のみを覆うように配置されていてもよい。さらにベルト補強層の単位幅あたりの巻き回し密度が幅方向位置で異なっていてもよい。このようにすることで、高速耐久性を低下させることなくロードノイズおよびフラットスポットを低減させることができる。
【0048】
図12は、陸部が適用されたパターンの一例を示す図である。
図12では、トレッド踏面10は、1本以上(図示例では4本)の周方向主溝11と、周方向主溝11間、又は、周方向主溝とトレッド端との間に区画される周方向陸部12と、を有している。そして、周方向陸部12は、複数本の幅方向溝13によって、複数個の陸部1に区画されている。陸部1内の構成は、上述した通りである。陸部1間で構成を同じとすることもでき、あるいは、異ならせることもできる。
図13は、陸部が適用されたパターンの一例を示す図である。
図13では、トレッド踏面10は、トレッド端からタイヤ赤道面付近まで延び、タイヤ幅方向に対する傾斜角度がタイヤ幅方向外側から内側にいくにつれて大きくなる複数本の傾斜溝14を有している。図示例では、1本の周方向主溝11を有しているが、周方向主溝11を有しないパターンとすることもでき、あるいは、2本以上の周方向主溝11を有するパターンとすることもできる。本例では、傾斜溝14は、2か所の屈曲箇所を有することで、タイヤ幅方向に対する傾斜角度がタイヤ幅方向外側から内側にいくにつれて大きくなっているが、屈曲点の個数は特には限定されず、あるいは、タイヤ幅方向に対する傾斜角度がタイヤ幅方向外側から内側にいくにつれて漸増するように滑らかに湾曲した形状とすることもできる。本例では、複数の陸部1の各陸部1は、周方向主溝1と傾斜溝14とによって区画されている。陸部1内の構成は、上述した通りである。陸部1間で構成を同じとすることもでき、あるいは、異ならせることもできる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例には何ら限定されるものではない。
【実施例0049】
<実施例1>
まず、微小サイプを用いていることの効果を確かめるため、ブロックサイズ(側縁長30mm×幅27mm)のブロックに、ブロック側縁間を延びる長サイプを、周方向間隔を変えることによりサイプ密度を変更して、従来例1~3にかかる3つ(
図14~
図16)を用意する。また、
図9に示すような、微小サイプからなるサイプ配置であって、第1の要素が、該第1の要素に最も近い幅方向エッジと異なる方向に延びる、比較例1にかかるブロックを用意する。ブロックサイズは、従来例1~3と同じとする。
図9において、a=3.1(mm)、b=3.1(mm)、c=3.1(mm)、d=3.1(mm)、e=4.7(mm)、f=4.7(mm)、g=2.9(mm)、h=7.8(mm)、i=6.8(mm)、j=1.9(mm)とする。
【0050】
上記の従来例1~3、比較例1について、ブロック剛性及び実接地面積をシミュレーションする。一般に、ブロック剛性が増大すると実接地面積が増大するが、
図17に示すように、比較例1では従来例1~3対比で実接地面積の増大効果が高い。また、
図18、
図19に示すように、サイプ密度が増大することによるブロック剛性及び実接地面積低下の従来例1~3での背反ラインに比して比較例1では改善する。
【0051】
上記のような効果を実際に確かめるため、従来例1~3及び比較例1に対応するブロックを実際に試作し、ブロックを氷上で移動させた際の氷上摩擦係数を評価する試験を行った。試験条件は、氷温-2℃、接地圧P=250kPa、ブロックの幅方向エッジのタイヤ幅方向に対する傾斜角度30°、菱形ブロックの寸法:側縁長さ30mm×幅27mm、微小サイプ深さ及び長サイプ深さ6.7mmとした。
図20に示すように、比較例1では、従来例1~3対比で、低速(0.5km/h)及び高速(5km/h)のいずれの速度条件でも氷上摩擦係数が増大した。このことから微小サイプを用いることにより、氷上グリップ性能を向上することができることがわかる。
【0052】
<実施例2>
次に、「第1の要素は、該第1の要素に最も近い幅方向エッジと同じ方向に延びる」ことの効果を確かめるため、サイプ間、及びサイプと幅方向エッジとの間隔(
図21の横軸)と、氷上摩擦係数(
図21の縦軸)との関係を計測した。
図21に示すように、サイプ間、及びサイプと幅方向エッジとの間隔には、(いずれの速度の場合でも)最適点(最適領域)があることがわかる。このことから、「第1の要素は、該第1の要素に最も近い幅方向エッジと同じ方向に延びる」ことで、第1の要素と幅方向エッジとの間隔を、第1の要素の延在長さにわたって最適領域内にすることができるため、氷上摩擦係数を増大させて、氷上グリップ性能を向上させ得ることがわかる。
【0053】
<実施例3>
氷上摩擦係数を向上するにはサイプ密度及びブロック剛性の増大が有効であるが、両者の寄与は滑り速度により異なる。
図22に示すように、低速時は摩擦面の氷の融解が少なく摩擦係数が大きいため、ブロック剛性の寄与が大きい。一方、
図23に示すように、高速時は摩擦面の氷の融解が多くなり摩擦係数が低下するので、摩擦面の融解水を効果的に排水する必要性が高まり、サイプ密度や排水性の向上の寄与が大きい。このため、低速時から高速時まで、すなわち、氷表面の融解量が少ないときから多いときまで安定的に高い氷上摩擦係数を発現するには、ブロック剛性とサイプ密度・排水性の高次元での両立が求められる。
【0054】
接地面の浮き上がり(実接地面積)のシミュレーションのため、
図24、
図25、及び
図26に示すようなブロックを用意する。ブロックの幅方向エッジのタイヤ幅方向に対する傾斜角度30°、菱形ブロックの寸法:側縁長さ30mm×幅27mm、微小サイプ深さ及び長サイプ深さ6.7mmとする。
図24、
図25、及び
図26の各下図に示すように、長サイプを有する場合(
図25、
図26)でも微小サイプと組み合わせていれば、微小サイプのみの場合(
図24)と比べて接地面の浮き上がりを同等に抑制することができる。これは、微小サイプにより陸部が連続することで剛性の低い部分が形成されにくいためであると考えられる。
図25のブロックでは、
図24のブロック対比で、同等のサイプ間隔(5mm)でより高いサイプ密度を実現する。
図26のブロックでは、
図24のブロック対比で、同等のサイプ密度で、サイプ間隔が増大(6mm)する。
【0055】
微小サイプと長サイプを組み合わせた例として併用例1(
図25)、併用例2(
図26)を用意し、微小サイプのみを用いた比較例として、比較例1(実施例1で説明したもの)、比較例2(
図24)、比較例3(
図27)を用意する。また、長サイプのみを用いた従来例1、2(実施例1で説明したもの)を用意する。また、長サイプのみを用いたもので、従来例1、2とサイプ密度が異なる参考例を用意する。これらの局所的ブロック剛性を計算する。
図28に示すように、同じサイプ密度SDtである従来例(参考例)や比較例に対して、併用例では、ブロック剛性が高いことがわかる。
【0056】
<実施例4>
図29に示す比較例4にかかるブロックを用意する。ブロック剛性及び実接地面積をシミュレーションする。
図30、
図31に示すように、比較例4は、比較例1(実施例1で述べたもの)対比で、ブロック剛性及び実接地面積の増大効果が大きい。また、氷温-2℃の氷上摩擦試験での計測の結果、
図32に示すように、比較例4は、比較例1(実施例1で述べたもの)対比で氷上摩擦係数が増大した。
図33~
図37に示すように、比較例1は、従来例1~3対比では、ブロック剛性及び実接地面積の増大効果が得られるものの、第2の要素を有している分、当該部分での剛性が低下して、比較例4ほどのブロック剛性及び実接地面積の増大効果までは見込めない。一方で、比較例4に示すようなサイプ形状は、金型のサイプに相当する薄板部分が座屈しやすく、金型の耐久性に懸念がある。
【0057】
比較例1では、
図10に示すようにh1=h2=hであり、比較例4は、
図11に示すように、第2の要素を有しない。また、平面視が比較例1と同様でありながら、
図2、
図3のように、h2をh1よりも小さくした底上げ例1、2を用意する。サイプ幅を0.5mm、第2の要素の折り曲がり角度θ1を150°とする。金型耐久性は、耐座屈性を計算し、耐座屈性指標Z/h指数を算出し、氷上性能はV=0.5km/h、V=5km/hでの氷上摩擦係数の指数予測値を計算する。
【0058】
【0059】
表1に示すように、底上げ例1、2では、金型耐久性を比較例1と略同等に保ちながら氷上グリップ性能を向上させ得ることがわかる。