(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155159
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】スライド式切換弁および当該スライド式切換弁を備えた冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 27/00 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
F16K27/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069613
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】濱田 正吾
(72)【発明者】
【氏名】村田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】剱持 大一郎
【テーマコード(参考)】
3H051
【Fターム(参考)】
3H051AA03
3H051BB10
3H051CC01
3H051CC14
3H051FF08
(57)【要約】
【課題】電磁駆動部の振動を抑制することができるスライド式切換弁および当該ブラケットを備えた冷凍サイクルシステムを提供する。
【解決手段】ブラケット1において立設板部2が曲面状に形成されていることで、YZ平面に沿って延びる平面状である構成と比較して、立設板部2に対してX方向の力が加わった際に倒れるような変形を抑制しやすい。このような一対の立設板部2の外縁部24によって電磁駆動部102の弁本体120を支持することにより、電磁駆動部102の振動を抑制することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド式切換弁本体と、前記スライド式切換弁本体の弁体をスライド移動させて流路を切り換え制御可能な電磁駆動部と、前記スライド式切換弁本体に対して前記電磁駆動部を取り付けるブラケットと、を備えたスライド式切換弁であって、
前記スライド式切換弁本体は、前記弁体を収容する円筒状の弁本体を有し、
前記電磁駆動部は、吸引子と、前記吸引子を励磁するコイルと、前記吸引子によって移動させられるプランジャと、前記プランジャ及び前記吸引子を収容する円筒状部と、を有し、
前記ブラケットは、前記弁本体および前記円筒状部の軸線同士が互いに沿って延びるように、前記弁本体の外周面に対し前記円筒状部を取り付けるとともに、前記外周面から外周側に向かって延びるとともに前記軸線の方向に並んで配置された一対の立設板部を備え、
前記立設板部は、前記軸線の方向に交差する面に沿って延在し、前記外周側において前記円筒状部を支持するとともに、前記軸線の方向のいずれかの側に向かって凸となる部分を少なくとも1つ含む曲面部を有することを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記立設板部のうち前記スライド式切換弁本体の側の内縁部が、前記外周面に沿った円弧状の部分を有することを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記内縁部のうち円弧状の部分の曲率が、前記外周面の曲率よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
前記内縁部から前記軸線の方向のいずれかに向かうとともに前記外周面に沿って延びる脚部をさらに備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記一対の立設板部のうち前記電磁駆動部の側の外縁部同士を接続する天板部をさらに備え、
前記天板部は、前記円筒状部に沿って曲面状に延在するとともに該円筒状部の側を向いた載置面を有することを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記天板部は、前記載置面から突出した複数の凸部を有することを特徴とする請求項5に記載のスライド式切換弁。
【請求項7】
前記載置面の曲率は、前記円筒状部の曲率よりも大きく、その周方向の中央部を挟んで両側に少なくとも1つの前記凸部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のスライド式切換弁。
【請求項8】
前記天板部は、前記軸線の方向に沿って延びる一対の端縁のうち少なくとも一方に、切り欠き部を有することを特徴とする請求項5又は6に記載のスライド式切換弁。
【請求項9】
少なくとも前記一対の立設板部と前記天板部とが、1枚の板材により一体的に形成されていることを特徴とする請求項5~7のいずれか1項に記載のスライド式切換弁。
【請求項10】
流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、請求項1~3,5~7のいずれか1項に記載のスライド式切換弁と、を備えることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド式切換弁および当該スライド式切換弁を備えた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷凍サイクルシステムにおいて、電磁駆動部によって、スライド式切換弁本体において弁体を弁座面上においてスライド移動させる切換え制御を行うスライド式切換弁が用いられる。従来、このようなスライド式切換弁として、電磁駆動部としてのパイロット駆動部を取り付けるための取付け金具を備えた流路切換弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された流路切換弁では、取付け金具に押圧部を形成することにより、パイロット駆動部のがたつきの抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の流路切換弁では、取付け金具とパイロット駆動部との間のがたつきを抑制することはできても、取付け金具そのものの変形を抑制することは困難であった。電磁駆動部はコイル及び磁石を有しており重量が大きくなりやすいため、取付け金具が変形して振動が生じやすい。また、電磁駆動部に振動が生じると、振動方向と電磁駆動部の動作方向との関係によっては、異常振動が発生することがあった。従って、電磁駆動部をスライド式切換弁本体に取り付けるための部材によって、電磁駆動部の振動を抑制することが望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、電磁駆動部の振動を抑制することができるスライド式切換弁および当該スライド式切換弁を備えた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスライド式切換弁は、スライド式切換弁本体と、前記スライド式切換弁本体の弁体をスライド移動させて流路を切り換え制御可能な電磁駆動部と、前記スライド式切換弁本体に対して前記電磁駆動部を取り付けるブラケットと、を備えたスライド式切換弁であって、前記スライド式切換弁本体は、前記弁体を収容する円筒状の弁本体を有し、前記電磁駆動部は、吸引子と、前記吸引子を励磁するコイルと、前記吸引子によって移動させられるプランジャと、前記プランジャ及び前記吸引子を収容する円筒状部と、を有し、前記ブラケットは、前記弁本体および前記円筒状部の軸線同士が互いに沿って延びるように、前記弁本体の外周面に対し前記円筒状部を取り付けるとともに、前記外周面から外周側に向かって延びるとともに前記軸線の方向に並んで配置された一対の立設板部を備え、前記立設板部は、前記軸線の方向に交差する面に沿って延在し、前記外周側において前記円筒状部を支持するとともに、前記軸線の方向のいずれかの側に向かって凸となる部分を少なくとも1つ含む曲面部を有することを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、立設板部が曲面状に形成されていることで、スライド式切換弁本体および電磁駆動部の軸線の方向に直交するように延びる平面状である構成と比較して、立設板部に対して直交する方向の力が加わった際に倒れるような変形を抑制することができる。このような一対の立設板部の外周側によって円筒状部を支持することにより、電磁駆動部の振動(特に軸線の方向の振動)を抑制することができる。
【0008】
この際、本発明のスライド式切換弁では、前記立設板部のうち前記スライド式切換弁本体の側の内縁部が、前記外周面に沿った円弧状の部分を有することが好ましい。このような構成によれば、ブラケットと弁本体とをろう付け等によって接合する際に、これらの間の接合面積を大きくし、接合強度を確保しやすい。
【0009】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記内縁部のうち円弧状の部分の曲率が、前記外周面の曲率よりも小さいことが好ましい。このような構成によれば、スライド式切換弁本体の弁本体の外周面のうち一部を、立設板部の内縁部の周方向中央部に接触させた場合に、この接触部を周方向から挟み込む位置において、弁本体の外周面と立設板部の内縁部との間に僅かな隙間を形成することができる。即ち、ろう付けの際に、この隙間にろう材を浸透させ、接合強度を向上させることができる。
【0010】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記内縁部から前記軸線の方向のいずれかに向かうとともに前記外周面に沿って延びる脚部をさらに備えることが好ましい。このような構成によれば、ブラケットと弁本体とをろう付け等によって接合する際に、これらの間の接合面積を大きくして接合強度を確保することができ、さらに、立設板部の変形を抑制することができる。例えば、立設板部が、内縁部からスライド式切換弁本体の外周側に向かって延びる一対の端縁部と、一対の端縁部の間の1つの凸部と、を有して湾曲している場合、一対の端縁部同士が近づいたり離れたりするように(曲率が変化するように)変形しようとする場合がある。脚部は、立設板部に対して交差するように延びることから、このような変形を抑制することができる。
【0011】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記一対の立設板部のうち前記電磁駆動部の側の外縁部同士を接続する天板部をさらに備え、前記天板部は、前記円筒状部に沿って曲面状に延在するとともに該円筒状部の側を向いた載置面を有することが好ましい。このような構成によれば、ブラケットと円筒状部とをろう付け等によって接合する際に、これらの間の接合面積を大きくして接合強度を確保することができる。
【0012】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記天板部は、前記載置面から突出した複数の凸部を有することが好ましい。このような構成によれば、載置面と円筒状部との間に隙間を形成することができ、ろう付けの際に、この隙間にろう材を浸透させ、接合強度を向上させることができる。また、例えば抵抗溶接によって凸部と円筒状部とを仮固定することができ、加工性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記載置面の曲率は、前記円筒状部の曲率よりも大きく、その周方向の中央部を挟んで両側に少なくとも1つの前記凸部が設けられていることが好ましい。このような構成によれば、円筒状部と凸部とが当接した状態において、載置面の周方向の中央部と円筒状部との間に隙間を確保しやすく、上記のような溶接抵抗を実施しやすい。即ち、円筒状部の曲率が大きいと、中央部を挟んで両側の凸部の間に円筒状部が入り込みやすくなり円筒状部と中央部とが接触しやすくなるのに対し、上記の曲率の関係により、このような円筒状部の入り込みを抑制することができる。
【0014】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記天板部は、前記軸線の方向に沿って延びる一対の端縁のうち少なくとも一方に、切り欠き部を有することが好ましい。このような構成によれば、電磁駆動部において他よりも大径に形成されたり突出したりした部分(例えば弁座部)や配管等を切り欠き部に配置し、これらがブラケットと干渉することを抑制することができる。
【0015】
また、本発明のスライド式切換弁では、少なくとも前記一対の立設板部と前記天板部とが、1枚の板材により一体的に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、例えば板材をプレス加工により塑性変形させることでブラケットを形成することができ、製造コストを低減することができる。
【0016】
本発明の冷凍サイクルシステムは、流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、上記に記載のスライド式切換弁と、を備えることを特徴とする。本発明の冷凍サイクルシステムによれば、上記のように電磁駆動部の振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスライド式切換弁及び冷凍サイクルシステムによれば、電磁駆動部の振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一例である実施形態にかかるスライド式切換弁が設けられた冷凍サイクルの概略構成図である。
【
図2】前記スライド式切換弁において、ブラケットによってスライド式切換弁本体に電磁駆動部が取り付けられた様子を示す平面図である。
【
図3】前記ブラケットによって前記スライド式切換弁本体に電磁駆動部が取り付けられた様子を示す側面図である。
【
図4】前記ブラケットを示す上方視の斜視図である。
【
図5】前記ブラケットを示す下方視の斜視図である。
【
図6】前記ブラケットを示す下方視の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態のスライド式切換弁200は、
図2,3に示すように、スライド式切換弁本体としての四方切換弁本体101と、四方切換弁本体101の流路を切換え制御するパイロット電磁弁である電磁駆動部102と、四方切換弁本体101に電磁駆動部102を取り付けるためのブラケット1と、を備え、例えば
図1に示すような冷凍サイクル100を構成するものである。尚、スライド式切換弁は、スライド式切換弁本体として、四方切換弁以外の方式のものを備えていてもよい。冷凍サイクル100は、ルームエアコン、パッケージエアコン、マルチエアコン等の空気調和機に利用されるものであって、流体としての冷媒を圧縮する圧縮機103と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器としての室外熱交換器104と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器としての室内熱交換器105と、室外熱交換器104と室内熱交換器105との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段としての膨張弁106と、スライド式切換弁200と、を備え、これらが冷媒配管によって連結されている。なお、膨張手段としては、膨張弁106に限らず、キャピラリでもよい。
【0020】
この冷凍サイクル100は、
図1に実線矢印で示す冷却モード(冷房運転)において、圧縮機103、四方切換弁本体101、室外熱交換器104、膨張弁106、室内熱交換器105、四方切換弁本体101及び圧縮機103の順に冷媒が流れる冷房サイクルを構成する。一方、破線矢印で示す加温モード(暖房運転)において、圧縮機103、四方切換弁本体101、室内熱交換器105、膨張弁106、室外熱交換器104、四方切換弁本体101及び圧縮機103の順に冷媒が流れる暖房サイクルを構成する。この暖房サイクルと冷房サイクルとの切換えは、電磁駆動部102による四方切換弁本体101の切換え動作によって行われる。
【0021】
四方切換弁本体101は、周知のものであり、円筒状の弁本体111と、弁本体の内部にスライド自在に設けられてその位置が切換えられるスライド弁112と、圧縮機103の吐出口に連通する高圧側導管(D継手)113と、圧縮機103の吸込口に連通する低圧側導管(S継手)114と、室内熱交換器105に連通する室内側導管(E継手)115と、室外熱交換器104に連通する室外側導管(C継手)116と、を備えて構成されている。弁本体111は、その軸方向両端部を塞ぐ栓体117,118を有することにより、全体に密封されたシリンダーとして構成され、スライド弁112を移動させるピストン119を軸方向から挟む空間A11,A12が形成されている。
【0022】
本実施形態の電磁駆動部102は、四方切換弁の構成を有する周知のものであり、弁本体120と、弁座部121と、弁体122と、電磁駆動部123と、継手部材124~127と、を有し、弁体122が所定のスライド方向(即ち移動方向)に沿って移動することで流体の流路が切り換えられるものである。即ち、電磁駆動部123は、プランジャ128と、吸引子129と、コイル130と、を備え、コイル130が通電されることで吸引子が励磁され、プランジャ128によって保持された弁体122が移動するようになっている。電磁駆動部102において流路が切り換えられることにより、高圧側導管113の高圧流体がピストン119を軸方向から挟む空間A11,A12のうち一方に導入され、低圧側導管114の低圧流体が他方の空間に導入され、ピストン119が低圧側の空間に向かって移動する。
【0023】
ブラケット1は、四方切換弁本体101における円筒状の弁本体111の外周面111Aに対し、電磁駆動部102における円筒状部としての弁本体120を取り付けるものであり、弁本体111の軸線と弁本体120の軸線とが互いに沿って延びる(本実施形態では、互いに平行となる)ようになっており、これらの軸線の方向は、スライド弁112及び弁体122のスライド方向と一致している。以下では、弁本体111および弁本体120の軸線の方向をX方向とし、弁本体111と弁本体120とが並ぶ方向をZ方向とし、X方向およびZ方向の両方に直交する方向をY方向とする。また、Z方向における弁本体111の側(四方切換弁本体101の側)を単に下側と呼び、弁本体120の側(電磁駆動部102の側)を単に上側と呼ぶことがある。尚、これらの上下は便宜的なものであり、Z方向は鉛直方向と一致していなくてもよい。
【0024】
ブラケット1は、
図4~8に示すように、一対の立設板部2と、天板部3と、一対の脚部4と、を備える。ブラケット1は、例えばステンレス等により構成された1枚の金属製の板材をプレス加工により塑性変形させることで形成されており、一対の立設板部2と、天板部3と、一対の脚部4と、が一体的に形成されている。
【0025】
立設板部2は、四方切換弁本体101における弁本体111の外周面111Aから外周側に向かって延びるものであり、全体として、軸線の方向であるX方向との直交面であるYZ平面に沿って延在する。一対の立設板部2は、X方向に所定の間隔を開けて並んで配置されており、X方向において互いに近づく側に凸となるように湾曲している。即ち、立設板部2は、Z方向に沿って延びる一対の端縁部21と、一対の端縁部21の間において他の立設板部2の側に向かって凸となる1つの凸部22と、を有して曲面状に形成されており、全体が曲面部となっている。
【0026】
立設板部2は、上側の内縁部23と、下側の外縁部24と、を有する。内縁部23は、四方切換弁本体101の弁本体111の外周面111Aに沿った円弧状に形成されており、四方切換弁本体101の側から見て凹状となっている。外縁部24は、電磁駆動部102の弁本体120の外周面120Aに沿った円弧状に形成された部分を有しており、電磁駆動部102の側から見て凹状となっている。また、外縁部24は、円弧状の部分の両側に、Y方向に沿って直線状に延びる部分を有している。
【0027】
天板部3は、一対の立設板部2の外縁部24同士を接続するものであり、外縁部24の円弧状の部分同士を接続する曲面部3Aと、直線状の部分同士を接続する一対の平面部3Bと、を有する。曲面部3Aは、電磁駆動部102の弁本体120の外周面120Aに沿った曲面状(円筒の一部)に形成されており、一対の平面部3Bは、曲面部3AのY方向の両側においてXY平面に沿って延びる。即ち、曲面部3Aは電磁駆動部102側から見て凹状となっている。このとき、外縁部24と天板部3とは滑らかに接続されており、外縁部24が沿って延びる円弧は、曲面部3Aが沿って延びる円筒の一部となっている。
【0028】
天板部3は、曲面部3Aに、上側を向いた載置面31と、載置面31から突出したディンプルである複数(本実施形態では4つ)の凸部32と、を有し、一対の平面部3Bのそれぞれに切り欠き部33を有する。これにより、天板部3の上側に弁本体120を載置した際に、外周面120Aが載置面31ではなく凸部32と接触するようになっている。4つの凸部は、上方視四角形状の天板部3の四隅に配置されている(
図6参照)。
【0029】
平面部3Bは、X方向に沿って延びる端縁に切り欠き部33が形成されている。電磁駆動部102において他よりも大径に形成されたり突出したりした部分(例えば弁座部)や配管等が、切り欠き部33に配置される。尚、電磁駆動部102は、Y方向の一方側のみから弁座部が突出するように設けられることがあるが、両側に切り欠き部33が形成されていることで、ブラケット1の向きを180°反転させた場合でも、弁座部を切り欠き部33に配置可能となっている。切り欠き部33の形状は、
図6のような矩形状に限定されず、V字状やU字状等の形状であってもよい。
【0030】
一対の脚部4は、一対の立設板部2のそれぞれの内縁部に連続するものであり、四方切換弁本体101の弁本体111の外周面111Aに沿った曲面状に形成されている。このとき、内縁部23と脚部4とは滑らかに接続されており、内縁部が沿って延びる円弧は、脚部4が沿って延びる円筒の一部となっている。また、脚部4は、X方向において他の立設板部2から離れる側に向かって延びており、即ち凸部22とは反対側に(即ち凹側に)延びている。
【0031】
以上のようなブラケット1は、内縁部23および脚部4が例えばろう付けによって四方切換弁本体101の弁本体111の外周面111Aに接合され、外縁部24および天板部3が例えばろう付けによって電磁駆動部102の弁本体120の外周面120Aに接合される。これにより、ブラケット1を介して、四方切換弁本体101に対して電磁駆動部102が取り付けられる。以下、このような接合箇所の詳細な形状及び具体的な接合方法について説明する。
【0032】
内縁部23および脚部4の曲率は、四方切換弁本体101の弁本体111の外周面111Aの曲率よりも小さい。即ち、内縁部23および脚部4は、外周面111Aよりも緩やかなカーブを有している。これにより、内縁部23および脚部4と外周面111Aとを接触させた際、部分的に接触することとなる。具体的には、内縁部23および脚部4のうちY方向の中央部(即ち周方向の中央部)に対して外周面111Aを接触させると、この接触位置を挟んでY方向の両側において、内縁部23および脚部4と、外周面111Aと、の間に隙間が形成される。
【0033】
ろう付けによって内縁部23および脚部4を外周面111Aに接合する場合、ろう材が上記の隙間に流れ込むようになっている。
【0034】
外縁部24の円弧状の部分および載置面31の曲率は、電磁駆動部102の弁本体120の外周面120Aの曲率よりも大きい。即ち、外縁部24の円弧状の部分および載置面31は、外周面120Aよりもきついカーブを有している。また、
図7に示すように、載置面31のY方向の中央部(即ち周方向の中央部)3Cを挟んで両側に凸部32が設けられている。
【0035】
上記のような曲率が設定されていることにより、外周面120Aが中央部3Cの両側の凸部32に接触した際、凸部32の間において、外周面120Aが載置面31に接触しないようになっている。即ち、凸部32の間において、外周面120Aと載置面31との間の隙間は、中央部3Cに近づくにしたがって大きくなっている。尚、上記の曲率の差は、外周面120Aが載置面31のY方向端部や平面部3Bに接触しない程度に設定されている。
【0036】
上記のように凸部32が外周面120Aに接触した状態において、これらを抵抗溶接によって仮固定した後に、本固定のためのろう付け作業を実施すればよい。ろう付けによって外縁部24の円弧状の部分および載置面31を外周面120Aに接合する場合、ろう材が、上記のようにして形成された載置面31と外周面120Aとの間の隙間に流れ込むようになっている。
【0037】
以上の本実施形態によれば、立設板部2が曲面状に形成されていることで、YZ平面に沿って延びる平面状である構成と比較して、立設板部2に対してX方向の力が加わった際に倒れるような変形を抑制しやすい。このような一対の立設板部2の外縁部24によって電磁駆動部102の弁本体120を支持することにより、電磁駆動部102の振動(特にX方向の振動)を抑制することができる。
【0038】
また、立設板部2が曲面状に形成され剛性が向上することにより、共振周波数を高くすることができ、四方切換弁本体101および電磁駆動部102の設計を容易にすることができる。また、上記のように電磁駆動部102の振動を抑制することで、立設板部2を薄肉化して低コスト化することができる。
【0039】
また、立設板部2の内縁部23が、四方切換弁本体101の弁本体111の外周面111Aに沿って円弧状に形成されていることで、ブラケット1と弁本体111とをろう付け等によって接合する際に、これらの間の接合面積を大きくし、接合強度を確保しやすい。
【0040】
また、内縁部23の曲率が、外周面111Aの曲率よりも小さいことで、外周面111Aと内縁部23との間に僅かな隙間を形成することができ、この隙間にろう材を浸透させ、接合強度を向上させることができる。
【0041】
また、ブラケット1が脚部4を備えることで、ブラケット1と弁本体111とをろう付け等によって接合する際に、これらの間の接合面積を大きくして接合強度を確保することができる。さらに、脚部4が立設板部2に対して直交するように延びることから、立設板部2が撓むように(一対の端縁部21同士が近づいたり離れたりするように)変形することを抑制することができる。
【0042】
また、天板部3が、電磁駆動部102の弁本体120に沿って曲面状に延在するとともに弁本体120の側を向いた載置面31を有することで、ブラケット1と弁本体120とをろう付け等によって接合する際に、これらの間の接合面積を大きくして接合強度を確保することができる。
【0043】
また、天板部3が載置面31から突出した複数の凸部32を有することで、載置面31と弁本体120との間に隙間を形成することができ、ろう付けの際に、この隙間にろう材を浸透させ、接合強度を向上させることができる。また、抵抗溶接によって凸部32と弁本体120とを仮固定することができ、加工性を向上させることができる。
【0044】
また、載置面31の曲率が弁本体120の曲率よりも大きく、周方向の中央部3Cを挟んで両側に凸部32が設けられていることで、弁本体120と凸部32とが当接した状態において、周方向の中央部3Cと弁本体120との間に隙間を確保しやすく、上記のような溶接抵抗を実施しやすい。
【0045】
また、天板部3がX方向に沿って延びる端縁に切り欠き部33を有することで、電磁駆動部102において他よりも大径に形成されたり突出したりした部分や配管等を切り欠き部に配置し、これらがブラケット1と干渉することを抑制することができる。
【0046】
また、一対の立設板部2と天板部3と一対の脚部4とが、1枚の板材により一体的に形成されていることで、例えば板材をプレス加工により塑性変形させることでブラケット1を形成することができ、製造コストを低減することができる。
【0047】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、内縁部23の曲率が、四方切換弁本体101の弁本体111の外周面111Aの曲率よりも小さいものとしたが、これらの曲率は、互いに等しくてもよいし、内縁部の曲率の方が多少大きくてもよい。即ち、互いに接合可能な程度の曲率差が設定されていればよい。
【0048】
また、前記実施形態では、一対の立設板部2から脚部4が互いに離れるように延びるものとしたが、互いに近づくように脚部が延びていてもよいし、軸線の方向における同じ側に向かって延びていてもよい。また、脚部は、立設板部において凸となる側に向かって延びていてもよい。また、例えば立設板部の板厚が充分に大きいことで外周面111Aとの接合面積を確保しやすく立設板部が変形しにくい場合等には、脚部は省略されてもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、立設板部2の内縁部23の全体が円弧状に形成されているものとしたが、一部が円弧状に形成されていてもよい。また、ブラケットが四方切換弁の弁本体を支持する態様や接続構造によっては、内縁部は円弧状の部分を有していなくてもよい。例えば、ブラケットおよび弁本体に、互いに係合する部分が設けられていてもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、載置面31の曲率が弁本体120の曲率よりも大きいものとしたが、これらの曲率は、互いに等しくてもよいし、載置面の曲率の方が多少小さくてもよい。即ち、互いに接合可能な程度の曲率差が設定されていればよい。
【0051】
また、前記実施形態では、天板部3が載置面31から突出した複数の凸部32を有するものとしたが、凸部が省略され、載置面全体が電磁駆動部の円筒状部と接触するような構成としてもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、天板部3が、電磁駆動部102の弁本体120に沿って曲面状に延在するとともに弁本体120の側を向いた載置面31を有するものとしたが、ブラケットが電磁駆動部の円筒状部を支持する態様や接続構造によっては、天板部は曲面状の載置面を有していなくてもよい。例えば、ブラケットおよび円筒状部に、互いに係合する部分が設けられていてもよい。
【0053】
また、前記実施形態では、一対の立設板部2と天板部3と一対の脚部4とが、1枚の板材により一体的に形成されているものとしたが、ブラケットは、複数の板材が接合されることにより構成されていてもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、天板部3の両側の端縁に切り欠き部33が形成されているものとしたが、一方の端縁にのみ切り欠き部を形成してもよい。また、電磁駆動部の各部の形状によっては、干渉が生じにくい場合には切り欠き部を形成しなくてもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、ブラケット1が天板部3を有するものとしたが、天板部が省略され、立設板部のみによって電磁駆動部の円筒状部を支持する構成としてもよい。このような構成であっても、立設板部が変形しにくく、一対の立設板部の間において円筒状部も変形しにくいことから、電磁駆動部の振動を抑制することができる。
【0056】
また、前記実施形態では、立設板部2の全体が曲面部となっているものとしたが、立設部の一部が曲面部となっていてもよい。また、曲面部の形状としては、前記実施形態のように他の立設板部の側に凸となったものに限定されず、その反対側に凸となったものであってもよいし、複数の凸部を有して波形状となっていてもよい。また、凸の形状としては、滑らかな曲面状であってもよいし、頂点部が尖った形状であってもよい。
【0057】
また、立設板部は、平板状の部分が複数組み合わされることにより、軸線の方向のいずれかの側に向かって凸となっていてもよく、例えば、YZ平面に対して傾斜した2つの平板状の部分が組み合わされることでV字状の立設板部となっていてもよいし、YZ平面に沿って延びる平板状の部分とZX平面に沿って延びる平板状の部分とが組み合わされることでZ方向視において階段状の立設板部となっていてもよい。立設板部は、X方向(軸線の方向)のいずれかの側に向かって凸の部分を有していれば、平板状の部分を含んでいたとしても、YZ平面に対してZ方向周りに回転することで傾斜した面を含むこととなり、X方向の力が加わった際に倒れるような変形を抑制することができる。
【0058】
また、立設板部は、軸線の方向のいずれかの側に向かって凸となる部分を有していなくてもよく、YZ平面(軸線の方向と直交する面)に対してZ方向(弁本体と円筒状部との対向方向)周りに回転することで傾斜した面を含んでいればよい。例えば、一対の立設板部が、Y方向の一方側から他方側に向かうにしたがってX方向において互いに近づくように、Y方向に対して傾斜を有していてもよい。
【0059】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…ブラケット、2…立設板部(曲面部)、23…内縁部、24…外縁部、3…天板部、31…載置面、32…凸部、33…切り欠き部、4…脚部、100…冷凍サイクル、101…四方切換弁本体(スライド式切換弁本体)、111…弁本体、111A…外周面、102…電磁駆動部、120…弁本体(円筒状部)、103…圧縮機、104…室外熱交換器(第一熱交換器)、105…室内熱交換器(第二熱交換器)、106…膨張弁(膨張手段)、200…スライド式切換弁