(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155160
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】多目的計画パタン分析システム、多目的計画パタン分析方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20230101AFI20241024BHJP
【FI】
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069615
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱本 真生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正和
(72)【発明者】
【氏名】恵木 正史
(72)【発明者】
【氏名】土屋 祐太
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA01
5L049AA01
(57)【要約】
【課題】KPIに対する実効的な影響力を反映したクラスタリング情報をユーザに提示し、ユーザの意思決定を支援する。
【解決手段】多目的パタン分析システム10において、クラスタリング処理部160は、貢献度分析部150により算出された貢献度に基づいて複数の計画をKPIごとにクラスタリングする第1のクラスタリング処理と、第1のクラスタリング処理の結果に基づいて複数の計画を複数のKPIの組み合わせについてクラスタリングする第2のクラスタリング処理と、を行う。クラスタ間主要差異分析部180は、第2のクラスタリング処理で得られた各統合クラスタについて算出された入力因子ごとの代表貢献度に基づいて、統合クラスタ間の主要差異を分析する。ユーザ提示部100は、クラスタ間主要差異分析部180による主要差異の分析結果をユーザに提示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力因子が設定されて前記入力因子の値の組み合わせが互いに異なる複数の計画と、シミュレーションによって前記計画ごとに得られる複数のKPIの値とを取得し、前記入力因子ごとの前記KPIに対する貢献度を算出する貢献度分析部と、
前記貢献度に基づいて複数の前記計画を前記KPIごとにクラスタリングする第1のクラスタリング処理と、前記第1のクラスタリング処理の結果に基づいて複数の前記計画を複数の前記KPIの組み合わせについてクラスタリングする第2のクラスタリング処理と、を行うクラスタリング処理部と、
前記第2のクラスタリング処理で得られた各統合クラスタについて、当該統合クラスタに属する各計画の前記貢献度の代表値に相当する代表貢献度を前記入力因子ごとに算出する代表貢献度算出部と、
各統合クラスタについて算出された前記入力因子ごとの前記代表貢献度に基づいて、前記統合クラスタ間の主要差異を分析するクラスタ間主要差異分析部と、
前記クラスタ間主要差異分析部による前記主要差異の分析結果をユーザに提示するユーザ提示部と、を備える多目的計画パタン分析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の多目的計画パタン分析システムであって、
前記クラスタリング処理部は、前記第2のクラスタリング処理において、前記第1のクラスタリング処理によって作成された前記KPIごとのクラスタのうち、2つ以上の前記KPIについて作成された各クラスタの組み合わせを、前記統合クラスタとして抽出する多目的計画パタン分析システム。
【請求項3】
請求項2に記載の多目的計画パタン分析システムであって、
前記クラスタリング処理部は、前記第2のクラスタリング処理において、各統合クラスタに属する前記計画の数が所定数以上となるように、前記統合クラスタの数を調整する多目的計画パタン分析システム。
【請求項4】
請求項2に記載の多目的計画パタン分析システムであって、
前記ユーザ提示部は、前記主要差異の分析結果を前記ユーザに提示するときに、パレート解を含まない前記統合クラスタの情報を非表示とする多目的計画パタン分析システム。
【請求項5】
請求項1に記載の多目的計画パタン分析システムであって、
前記クラスタ間主要差異分析部は、前記統合クラスタ間の前記代表貢献度の差分値を前記入力因子ごとに算出し、前記差分値が最も大きい前記入力因子を、前記統合クラスタ間の主要差異因子として抽出する多目的計画パタン分析システム。
【請求項6】
請求項5に記載の多目的計画パタン分析システムであって、
前記クラスタ間主要差異分析部は、前記主要差異因子の値またはカテゴリ数の前記統合クラスタ間での増減に基づいて、前記統合クラスタ間の差異情報を決定し、
前記ユーザ提示部は、前記クラスタ間主要差異分析部により決定された前記差異情報を前記ユーザに提示する多目的計画パタン分析システム。
【請求項7】
請求項1に記載の多目的計画パタン分析システムであって、
前記ユーザ提示部は、3つ以上の前記KPIのうち前記ユーザに選択された2つの前記KPIについて、前記主要差異の分析結果を前記ユーザに提示する多目的計画パタン分析システム。
【請求項8】
請求項1に記載の多目的計画パタン分析システムであって、
前記第2のクラスタリング処理で得られた各統合クラスタについて、前記入力因子の変動に対するロバスト性の分析を行うロバスト性分析部を備え、
前記ユーザ提示部は、前記ロバスト性分析部による前記ロバスト性の分析結果を前記ユーザに提示する多目的計画パタン分析システム。
【請求項9】
請求項8に記載の多目的計画パタン分析システムであって、
前記ロバスト性分析部は、前記KPIごとの前記貢献度の不均衡度に基づくロバスト性指標を算出し、前記ロバスト性指標に基づいて前記ロバスト性の分析を行う多目的計画パタン分析システム。
【請求項10】
請求項8に記載の多目的計画パタン分析システムであって、
前記ロバスト性分析部は、前記入力因子のいずれかを外部環境因子として、前記外部環境因子の変化に対する前記KPIの標準偏差に基づくロバスト性指標を算出し、前記ロバスト性指標に基づいて前記ロバスト性の分析を行う多目的計画パタン分析システム。
【請求項11】
コンピュータにより、
複数の入力因子が設定されて前記入力因子の値の組み合わせが互いに異なる複数の計画と、シミュレーションによって得られる前記計画ごとの複数のKPIの値とを取得し、
前記入力因子ごとの前記KPIに対する貢献度を算出し、
前記貢献度に基づいて複数の前記計画を前記KPIごとにクラスタリングする第1のクラスタリング処理を行い、
前記第1のクラスタリング処理の結果に基づいて複数の前記計画を複数の前記KPIの組み合わせについてクラスタリングする第2のクラスタリング処理を行い、
前記第2のクラスタリング処理で得られた各統合クラスタについて、当該統合クラスタに属する各計画の前記貢献度の代表値に相当する代表貢献度を前記入力因子ごとに算出し、
各統合クラスタについて算出された前記入力因子ごとの前記代表貢献度に基づいて、前記統合クラスタ間の主要差異を分析し、
前記主要差異の分析結果をユーザに提示する多目的計画パタン分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多目的計画問題に関して、シミュレーションによって得られた情報に基づくユーザの意思決定を支援するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、利益や生産性の向上に加えて、例えばCO2排出量の削減などの様々な重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)の改善が企業活動において求められている。これに伴い、複数のKPIが同時に向上する施策あるいは計画を立案して実行することが、経営の意思決定上で益々重要になっている。
【0003】
上記のように複数の目的関数を同時に最適化する解を求めることは、多目的計画問題として知られている。KPIに関する多目的計画問題では、例えばシミュレーションによって多数の計画を試行し、各計画に対するKPIの見積りからパレートフロンティアを定義して、試行した計画群のうちパレートフロンティア近傍の計画パタンを人間が選択することで、最適解を求める手法がある。こうした解決手法では、シミュレーションで試行した計画の一つ一つの内容を人が精査してその全体像を十分に把握した上で、どのような計画パタンを採用すべきかを判断し、最終的な意思決定を行う必要がある。
【0004】
しかしながら、一般的に多目的計画問題では、シミュレーションにより試行される計画群の数が多すぎるため、人が全体像を把握するのに時間がかかり、その結果、意思決定までに多くの時間が必要となる。そのため、シミュレーションで試行された計画群を効率的に分析・可視化する手法が求められる。
【0005】
多目的計画問題における大量の計画群を俯瞰的に捉えるには、各計画をその特徴に応じて分類するクラスタリングが有効である。これに関して、例えば下記の特許文献1の技術が知られている。特許文献1には、複数の設計変数の組み合わせを、それぞれ所定の物品性能に対応した複数の制約条件を全て満足する組み合わせである実行可能解と、1つ以上の制約条件を満足しない組み合わせである実行不可能解とに分類し、実行可能解に実行不可能解を含めた集合に対して階層的クラスタリングを施して、同一クラスタ内で隣接するような実行可能解と実行不可能解とのペアを抽出し、このペア間での各設計変数の差異を可視化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の手法では、制約条件を満足するか否かによって設計変数の組み合わせを実行可能解と実行不可能解とに分類しており、物品性能に対する影響の大小が考慮されていない。そのため、これをKPIに関する多目的計画問題に適用した場合、KPIに対する実効的な影響力を反映した適切なクラスタリングを実現できないという課題がある。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて、KPIに対する実効的な影響力を反映したクラスタリング情報をユーザに提示し、ユーザの意思決定を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による多目的計画パタン分析システムは、複数の入力因子が設定されて前記入力因子の値の組み合わせが互いに異なる複数の計画と、シミュレーションによって前記計画ごとに得られる複数のKPIの値とを取得し、前記入力因子ごとの前記KPIに対する貢献度を算出する貢献度分析部と、前記貢献度に基づいて複数の前記計画を前記KPIごとにクラスタリングする第1のクラスタリング処理と、前記第1のクラスタリング処理の結果に基づいて複数の前記計画を複数の前記KPIの組み合わせについてクラスタリングする第2のクラスタリング処理と、を行うクラスタリング処理部と、前記第2のクラスタリング処理で得られた各統合クラスタについて、当該統合クラスタに属する各計画の前記貢献度の代表値に相当する代表貢献度を前記入力因子ごとに算出する代表貢献度算出部と、各統合クラスタについて算出された前記入力因子ごとの前記代表貢献度に基づいて、前記統合クラスタ間の主要差異を分析するクラスタ間主要差異分析部と、前記クラスタ間主要差異分析部による前記主要差異の分析結果をユーザに提示するユーザ提示部と、を備える。
本発明による多目的計画パタン分析方法は、コンピュータにより、複数の入力因子が設定されて前記入力因子の値の組み合わせが互いに異なる複数の計画と、シミュレーションによって得られる前記計画ごとの複数のKPIの値とを取得し、前記入力因子ごとの前記KPIに対する貢献度を算出し、前記貢献度に基づいて複数の前記計画を前記KPIごとにクラスタリングする第1のクラスタリング処理を行い、前記第1のクラスタリング処理の結果に基づいて複数の前記計画を複数の前記KPIの組み合わせについてクラスタリングする第2のクラスタリング処理を行い、前記第2のクラスタリング処理で得られた各統合クラスタについて、当該統合クラスタに属する各計画の前記貢献度の代表値に相当する代表貢献度を前記入力因子ごとに算出し、各統合クラスタについて算出された前記入力因子ごとの前記代表貢献度に基づいて、前記統合クラスタ間の主要差異を分析し、前記主要差異の分析結果をユーザに提示する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、KPIに対する実効的な影響力を反映したクラスタリング情報をユーザに提示し、ユーザの意思決定を支援することができる。
【0011】
本明細書において開示される主題の、少なくとも一つの実施の詳細は、添付されている図面と以下の記述の中で述べられる。開示される主題のその他の特徴、態様、効果は、以下の開示、図面、請求項により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る多目的計画パタン分析システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る多目的計画パタン分析システムの全体動作を示すフローチャートである。
【
図4】シミュレーション設定情報の一例を示す図である。
【
図5】シミュレーション入力情報の一例を示す図である。
【
図6】データ管理部に格納される情報の一例を示す図である。
【
図7】クラスタ分析設定画面の一例を示す図である。
【
図9】クラスタリング処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】パレート近傍要素抽出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】基本クラスタ数調整処理の一例を説明する図である。
【
図13】パレートクラスタ抽出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図14】パレートクラスタの抽出結果の例を示す図である。
【
図15】クラスタリング処理結果の例を示す図である。
【
図16】クラスタ間主要差異分析処理の例を説明する図である。
【
図17】クラスタ間主要差異分析処理の例を説明する図である。
【
図19】分析結果出力画面の他の例を示す図である。
【
図20】分析結果出力画面のさらに別の例を示す図である。
【
図21】ロバスト性分析設定画面の一例を示す図である。
【
図22】ベースラインテーブルの一例を示す図である。
【
図23】貢献度集中分析結果の出力画面の例を示す図である。
【
図24】入力因子設定テーブルの一例を示す図である。
【
図26】環境変化感度分析結果の出力画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る多目的計画パタン分析システムの機能構成を示すブロック図である。
図1に示す多目的パタン分析システム10は、例えば企業活動における多目的計画問題の分析に利用されるものであり、コンピュータを用いて実現される。多目的パタン分析システム10は、ユーザ提示部100、分析設定部110、パラメータ設定部120、シミュレーション実行部130、データ管理部140、貢献度分析部150、クラスタリング処理部160、代表貢献度ベクトル算出部170、クラスタ間主要差異分析部180およびロバスト性分析部190の各機能ブロックを備えて構成される。これらの機能ブロックは、例えばコンピュータが有するCPUにおいて所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0014】
ユーザ提示部100は、多目的パタン分析システム10において得られた分析結果などの情報を、ユーザ提示情報11として多目的パタン分析システム10のユーザに提示する。また、ユーザが多目的パタン分析システム10に対して入力したユーザ入力情報12を取得し、その内容を設定情報101として分析設定部110へ出力する。ユーザ提示部100は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置や、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力装置、あるいはこれらに対して信号を入出力するインタフェースを用いて実現される。
【0015】
分析設定部110は、ユーザ提示部100に対して設定項目情報111を送信し、この設定項目情報111に基づいてユーザがユーザ提示部100に対して入力したユーザ入力情報12を、多目的パタン分析システム10における設定情報101としてユーザ提示部100から受け取る。分析設定部110は、受け取った設定情報101に基づき、パラメータ設定部120、貢献度分析部150、クラスタリング処理部160、クラスタ間主要差異分析部180およびロバスト性分析部190の各機能ブロックに対して、シミュレーション設定情報112、貢献度分析設定情報113、クラスタリング設定情報114、クラスタ間主要差異分析設定情報115、ロバスト性分析設定情報116をそれぞれ出力する。分析設定部110は、例えば設定情報101の内容を項目ごとに分類し、その分類結果に応じて、設定情報101に含まれる様々な情報を、シミュレーション設定情報112、貢献度分析設定情報113、クラスタリング設定情報114、クラスタ間主要差異分析設定情報115、ロバスト性分析設定情報116として出力することができる。
【0016】
パラメータ設定部120は、分析設定部110から入力されるシミュレーション設定情報112に基づいて、シミュレーション実行部130がシミュレーションを実行する際のパラメータ値を設定する。パラメータ設定部120は、例えばシミュレーション実行部130で実行されるシミュレーションに対して予め設定された複数の入力因子について、シミュレーション設定情報112で示されるパラメータ条件に従い、各入力因子の値を設定する。そして、設定した各入力因子の値の情報を、シミュレーション入力情報121としてシミュレーション実行部130とデータ管理部140にそれぞれ出力する。こうして設定される各入力因子の値は、シミュレーション実行時のパラメータ値に相当する。
【0017】
パラメータ設定部120では、シミュレーション実行部130で実行されるシミュレーションに対して上記のような処理を行うことにより、パラメータ値の組み合わせが互いに異なる複数の入力因子の組を設定する。以下では、パラメータ設定部120によって設定される個々の入力因子の組を「計画」と称する。すなわち、パラメータ設定部120は、入力因子の値の組み合わせが互いに異なる複数の計画を設定し、各計画の内容をシミュレーション入力情報121として、シミュレーション実行部130とデータ管理部140に出力する。
【0018】
シミュレーション実行部130は、パラメータ設定部120から入力されるシミュレーション入力情報121に基づいて、企業活動に関する所定のシミュレーションを実行する。例えばシミュレーション実行部130は、ある製品の市場影響力や環境負荷の分析を目的に、当該製品の製造から販売までの流通過程のシミュレーションを実行する。シミュレーション実行部130によるシミュレーション結果は、企業活動の分析のための評価指標(KPI)を表すシミュレーション結果情報131として、シミュレーション実行部130からデータ管理部140へ送られる。なお、シミュレーション実行部130が行うシミュレーションは、例えばエージェントベースのシミュレータや数値シミュレータなど、任意の様々な方式によって実現可能である。
【0019】
データ管理部140は、シミュレーション実行部130によるシミュレーション結果の管理を行う。例えば、パラメータ設定部120からデータ管理部140に入力されるシミュレーション入力情報121と、シミュレーション実行部130からデータ管理部140に入力されるシミュレーション結果情報131とを互いに紐付けて、例えばHDDやSSD等の記憶装置(不図示)に格納することで、計画ごとにシミュレーション結果の管理を行う。ただし、シミュレーション実行部130によるシミュレーション結果をデータ管理部140が適切に管理できれば、その管理方法は問わない。データ管理部140で管理されているシミュレーション結果の情報は、データセット情報141として貢献度分析部150とロバスト性分析部190にそれぞれ出力される。
【0020】
貢献度分析部150は、データ管理部140から入力されるデータセット情報141に基づいて、シミュレーションに対する複数の計画と、その計画ごとにシミュレーションで求められた複数のKPIの値とを取得する。そして、分析設定部110から入力される貢献度分析設定情報113に基づいて、取得した各計画および各KPIの値から入力因子ごとのKPIに対する影響度合いを表す貢献度を算出し、その算出結果を貢献度分析結果情報151としてクラスタリング処理部160へ送る。なお、貢献度分析部150による貢献度の算出方法の詳細については後述する。
【0021】
クラスタリング処理部160は、貢献度分析部150から入力される貢献度分析結果情報151を取得し、その貢献度分析結果情報151が表す入力因子ごとの貢献度に基づいて、シミュレーションを実施した各計画に対するクラスタリング処理を行う。ここでは、分析設定部110から入力されるクラスタリング設定情報114に基づいてクラスタリング条件を設定し、そのクラスタリング条件に従ってクラスタリング処理を実施する。そして、得られたクラスタリング処理の結果をクラスタリング結果情報161として、代表貢献度ベクトル算出部170とロバスト性分析部190にそれぞれ送る。
【0022】
なお、クラスタリング処理部160では、貢献度に基づいて複数の計画をKPIごとにクラスタリングする処理(以下「第1のクラスタリング処理」と称する)と、第1のクラスタリング処理の結果に基づいて複数の計画を複数のKPIの組み合わせについてクラスタリングする処理(以下「第2のクラスタリング処理」と称する)とを行うことにより、クラスタリング処理が2段階で実行される。これらのクラスタリング処理の詳細については後述する。
【0023】
代表貢献度ベクトル算出部170は、クラスタリング処理部160から入力されるクラスタリング結果情報161を取得する。そして、取得したクラスタリング結果情報161が表すクラスタリング結果、すなわちクラスタリング処理部160が行う2段階のクラスタリング処理によって最終的に得られた計画群の各クラスタ(以下「統合クラスタ」と称する)について、当該統合クラスタに属する各計画の貢献度の代表値に相当する代表貢献度を入力因子ごとに算出する。そして、算出した入力因子ごとの代表貢献度の情報を、代表貢献度情報171としてクラスタ間主要差異分析部180へ送る。
【0024】
クラスタ間主要差異分析部180は、代表貢献度ベクトル算出部170から入力される代表貢献度情報171と、パラメータ設定部120から入力されるクラスタ間主要差異分析設定情報115とに基づいて、統合クラスタ間の主要差異の分析を行う。ここでは、例えば任意の2つの統合クラスタについて、その統合クラスタ間で分析対象に指定されたKPIの差異が最も大きくなる入力因子を、当該統合クラスタの組み合わせにおける主要差異因子として特定する。なお、このときの具体的な処理方法については後述する。クラスタ間主要差異分析部180によって得られた統合クラスタ間の主要差異の情報は、クラスタ間主要差異情報181としてユーザ提示部100へ送られる。
【0025】
ユーザ提示部100では、クラスタ間主要差異分析部180から入力されるクラスタ間主要差異情報181の内容を、ユーザ提示情報11としてユーザに提示する。これにより、各統合クラスタの特徴をユーザに提示して、ユーザがどの計画を採用すべきか判断する際の支援を行うことができる。
【0026】
ロバスト性分析部190は、データ管理部140から入力されるデータセット情報141と、クラスタリング処理部160から入力されるクラスタリング結果情報161と、パラメータ設定部120から入力されるロバスト性分析設定情報116とに基づいて、各統合クラスタに対するロバスト性の分析を行う。ここでは、ある入力因子が変動した場合のKPIへの影響度を統合クラスタごとに推定することで、入力因子の変動に対するロバスト性の分析を行う。なお、このときの具体的な処理方法については後述する。ロバスト性分析部190によって得られたロバスト性の分析結果の情報は、ロバスト性分析結果情報191としてユーザ提示部100へ送られる。
【0027】
ユーザ提示部100では、ロバスト性分析部190から入力されるロバスト性分析結果情報191の内容を、ユーザ提示情報11としてユーザに提示する。これにより、各統合クラスタのロバスト性をユーザに提示して、ユーザがどの計画を採用すべきか判断する際の支援を行うことができる。
【0028】
なお、多目的パタン分析システム10において、クラスタ間主要差異分析部180による統合クラスタ間の主要差異の分析と、ロバスト性分析部190によるロバスト性の分析とは、必ずしも両方とも行う必要はない。例えば、統合クラスタ間の主要差異の分析のみを行い、ロバスト性の分析については実施しないこととしてもよい。この場合、多目的パタン分析システム10では、
図1の機能ブロックのうちロバスト性分析部190を省略することができる。また反対に、ロバスト性の分析のみを行い、統合クラスタ間の主要差異の分析については実施しないこととしてもよい。この場合、多目的パタン分析システム10では、
図1の機能ブロックのうち代表貢献度ベクトル算出部170とクラスタ間主要差異分析部180を省略することができる。
【0029】
(全体動作フローチャート)
図2は、本発明の一実施形態に係る多目的計画パタン分析システムの全体動作を示すフローチャートである。
【0030】
ステップS211では、シミュレーションのパラメータ設定を行う。ここでは、分析設定部110がユーザ提示部100からシミュレーションに関する設定情報101を取得し、この設定情報101に基づいて、シミュレーション設定情報112をパラメータ設定部120へ送る。
【0031】
ステップS212では、ステップS211で設定されたパラメータに基づくシミュレーションを実行する。ここでは、パラメータ設定部120がシミュレーション設定情報112に基づいて各パラメータ値を設定することでシミュレーション入力情報121を生成し、シミュレーション実行部130へ送る。これにより、シミュレーションの実行条件を定める複数の計画がシミュレーション実行部130に対して設定される。シミュレーション実行部130は、シミュレーション入力情報121に基づいて計画ごとにシミュレーションを実行し、その結果をシミュレーション結果情報131としてデータ管理部140へ送る。
【0032】
ステップS213では、ステップS212で実行されたシミュレーション結果のデータ管理を行う。ここでは、データ管理部140がシミュレーション入力情報121とシミュレーション結果情報131を互いに関連付けて、不図示の記憶装置に格納する。これにより、ステップS212で実行されたシミュレーションの結果が多目的パタン分析システム10において記録管理される。
【0033】
ステップS214では、ステップS212で実行されたシミュレーション結果に対するクラスタ分析設定を行う。ここでは、分析設定部110がユーザ提示部100から貢献度分析処理とクラスタリング処理に関する設定情報101を取得し、これらの設定情報101に基づいて、貢献度分析設定情報113とクラスタリング設定情報114を貢献度分析部150とクラスタリング処理部160へそれぞれ送る。
【0034】
ステップS215では、ステップS214で行われたクラスタ分析設定に基づく貢献度分析処理を行う。ここでは、貢献度分析部150が各計画のシミュレーション結果を示すデータセット情報141をデータ管理部140から取得し、このデータセット情報141に含まれる計画ごとの入力因子とKPIの値の関係から、各KPIに対する入力因子の貢献度を、貢献度分析設定情報113に基づいて算出する。ここで算出される貢献度とは、ユーザが注目対象に指定したシミュレーション出力値(KPI)に対して、ユーザが分析対象に指定した各入力因子がどれだけ影響を与えたかを示す値のことであり、例えばShapley値、CohortShapley値、Functional ANOVAなどを用いることができる。以下の説明では特に断らない限り、Shapley値を貢献度に用いることとする。なお、貢献度の算出においてユーザがどのKPIを注目対象に指定し、どの入力因子を分析対象に指定したかは、貢献度分析設定情報113に基づいて特定することができる。ステップS215の貢献度分析処理によって得られた入力因子ごとの貢献度の情報は、貢献度分析結果情報151としてクラスタリング処理部160へ送られる。
【0035】
ステップS216では、ステップS215の貢献度分析処理で求められた貢献度に基づくクラスタリング処理を行う。ここでは、クラスタリング処理部160が貢献度分析結果情報151を貢献度分析部150から取得し、この貢献度分析結果情報151が表す各入力因子の貢献度の値に基づいて、クラスタリング設定情報114で設定された条件による計画群のクラスタリングを行う。このとき前述のように、貢献度に基づいて複数の計画をKPIごとにクラスタリングする第1のクラスタリング処理と、第1のクラスタリング処理の結果に基づいて複数の計画を複数のKPIの組み合わせについてクラスタリングする第2のクラスタリング処理とを行うことで、2段階のクラスタリング処理を実行し、複数のKPIへの影響度合いを考慮した計画群を統合クラスタとして求める。ステップS216のクラスタリング処理によって得られた各統合クラスタの情報は、クラスタリング結果情報161として代表貢献度ベクトル算出部170およびロバスト性分析部190へ送られる。
【0036】
ステップS217では、ステップS216のクラスタリング処理で求められた各統合クラスタに対する代表貢献度ベクトル算出処理を行う。ここでは、代表貢献度ベクトル算出部170がクラスタリング結果情報161をクラスタリング処理部160から取得し、このクラスタリング結果情報161が表す各統合クラスタについて、当該統合クラスタに含まれる各計画の貢献度の代表値(例えば平均値や中央値など)を、分析対象に指定された入力因子ごとに算出する。そして、算出された分析対象の入力因子ごとの貢献度の代表値をベクトル成分とするn次元ベクトル(nは分析対象の入力因子数)を各統合クラスタに対して設定し、これを各統合クラスタの代表貢献度ベクトルとすることで、各統合クラスタの入力因子ごとの代表貢献度を表す代表貢献度ベクトルを決定する。ステップS217の代表貢献度ベクトル算出処理によって得られた各統合クラスタの代表貢献度ベクトルの情報は、代表貢献度情報171としてクラスタ間主要差異分析部180へ送られる。
【0037】
ステップS218では、ステップS217の代表貢献度ベクトル算出処理で求められた各統合クラスタの代表貢献度ベクトルに基づいて、各統合クラスタに対するクラスタ間主要差異分析処理を行う。ここでは、クラスタ間主要差異分析部180が代表貢献度情報171を代表貢献度ベクトル算出部170から取得し、この代表貢献度情報171が表す各統合クラスタの代表貢献度ベクトルの値に基づいて、分析対象のKPIにおける各統合クラスタ間での代表貢献度の差分を入力因子ごとに算出する。そして、各統合クラスタ間で代表貢献度の差分が最も大きい入力因子を、当該統合クラスタ間の主要差異因子として特定する。なお、このときにどのKPIを分析対象とするかは、クラスタ間主要差異分析設定情報115に基づいて特定することができる。ステップS218のクラスタ間主要差異分析処理によって得られた各統合クラスタ間の主要差異因子の情報は、クラスタ間主要差異情報181としてユーザ提示部100へ送られる。
【0038】
ステップS219では、ステップS218で行われたクラスタ間主要差異分析処理の結果をユーザに提示する。ここでは、ユーザ提示部100がクラスタ間主要差異情報181に基づいて所定の画面表示を行うことにより、ステップS218の処理結果をユーザに提示して、ユーザの判断に対する支援を行う。
【0039】
ステップS220では、ロバスト性分析設定を行う。ここでは、分析設定部110がユーザ提示部100からロバスト性分析に関する設定情報101を取得し、この設定情報101に基づいてロバスト性分析設定情報116をロバスト性分析部190へ送る。
【0040】
ステップS221では、ステップS216のクラスタリング処理で求められた各統合クラスタに対するロバスト性分析処理を行う。ここでは、ロバスト性分析部190がクラスタリング結果情報161をクラスタリング処理部160から取得し、このクラスタリング結果情報161が表す各統合クラスタについて、環境変化に対する当該統合クラスタのKPIへの影響度を算出し、その算出結果に基づいてロバスト性の評価を行う。ステップS221のロバスト性分析処理によって得られた各統合クラスタのロバスト性の情報は、ロバスト性分析結果情報191としてユーザ提示部100へ送られる。
【0041】
ステップS222では、ステップS221で行われたロバスト性分析処理の結果をユーザに提示する。ここでは、ユーザ提示部100がロバスト性分析結果情報191に基づいて所定の画面表示を行うことにより、ステップS221の処理結果をユーザに提示して、ユーザの判断に対する支援を行う。
【0042】
ステップS222の処理を実行したら、多目的パタン分析システム10は
図2のフローチャートに示す動作を終了する。
【0043】
(パラメータ設定画面)
図3は、
図2のステップS211でパラメータ設定を行う際に表示されるパラメータ設定画面の一例を示す図である。
図3に示すパラメータ設定画面300は、ユーザ提示部100に含まれる表示装置において表示される画面の一例であり、構成要素選択部310、編集スペース320およびパラメータ設定部330を含んで構成される。
【0044】
構成要素選択部310には、サプライチェーンの構成要素を表す各種テンプレートが表示される。ユーザは構成要素選択部310から任意の構成要素を選択して編集スペース320に配置することで、シミュレーション対象とするサプライチェーンの全体構成を定義することができる。また、ユーザは編集スペース320に表示されたサプライチェーン上でいずれかの構成要素を選択することで、その構成要素の各パラメータ要素の値をパラメータ設定部330に表示するとともに、必要に応じて内容を編集することができる。
【0045】
パラメータ設定部330には、パラメータごとに基本値331、摂動フラグ332、摂動値333の各パラメータ要素が表示される。基本値331は各パラメータの基本値を表し、摂動フラグ332はシミュレーション実行時に各パラメータの値を変化させるか否かを示すフラグ情報であり、摂動値333はシミュレーション実行時の各パラメータの変化量を表す。
図3では、摂動フラグ332の値が「1」である各パラメータ要素の値を摂動値333に応じて変化させることで、パラメータ値が異なる複数のシミュレーション計画を作成し、各計画についてシミュレーションを行う場合の画面例を示している。
【0046】
(シミュレーション設定情報)
図4は、
図2のステップS211で分析設定部110からパラメータ設定部120へ送られるシミュレーション設定情報112の一例を示す図である。
図4に示すように、シミュレーション設定情報112は、例えばメイン設定テーブル410およびサブ設定テーブル420に示した各情報を含んで構成される。
【0047】
メイン設定テーブル410は、
図3に例示したパラメータ設定画面300においてユーザに設定された各パラメータの設定値を表している。一方、サブ設定テーブル420は、メイン設定テーブル410においてカテゴリカルに表現されているカテゴリカル因子の詳細情報を表している。
【0048】
メイン設定テーブル410は、シミュレーションの入力因子ごとに設定された複数のレコードを有している。メイン設定テーブル410の各レコードには、因子ID411、変数名412、変数タイプ413、基本値414、摂動415、摂動値466の各フィールドが設定される。
【0049】
因子ID411には、各入力因子に対して固有に設定されるIDが格納される。因子ID411の値は、例えばレコードの登録時に自動で設定される。
【0050】
変数名412と変数タイプ413には、各入力因子の名称と種類がそれぞれ格納される。
図4の例では、変数タイプ413が「時系列」や「連続値」である入力因子については、基本値414や摂動値416が数値的に表され、変数タイプ413が「カテゴリカル」である入力因子については、カテゴリカル因子として、基本値414や摂動値416がカテゴリカルに表現されている。
【0051】
基本値414には、各入力因子の基本値が格納される。基本値414の値には、例えば
図3のパラメータ設定画面300において、パラメータ設定部330の基本値331に入力された値が設定される。
【0052】
摂動415には、各入力因子の摂動の有無を示す値が格納される。
図4の例では、摂動415の値が「0」の場合は摂動なし、「1」の場合は摂動ありを表している。摂動415の値には、例えば
図3のパラメータ設定画面300において、パラメータ設定部330の摂動フラグ332に入力された値が設定される。
【0053】
摂動値416には、各入力因子の摂動条件を示す値が格納される。摂動値416の値には、例えば
図3のパラメータ設定画面300において、パラメータ設定部330の摂動値333に入力された値が設定される。なお、摂動値416におけるグループフラグは、同一グループに属する入力因子間ではパラメータ値が連動して設定されることを示している。
図4の例では、因子ID411の値が「008」であるレコードと、因子ID411の値が「011」であるレコードとで、摂動値416に「Group1」という共通のグループフラグが設定されている。そのため、これらのレコードに対応する「ネットワーク1調達比率」および「ネットワーク2調達比率」の入力因子間では、それぞれの摂動値416に設定されたパラメータ値が連動して設定される。具体的には、例えば「ネットワーク1調達比率」のパラメータ値が0の場合は「ネットワーク2調達比率」のパラメータ値が連動して1に設定され、「ネットワーク1調達比率」のパラメータ値が0.25の場合は「ネットワーク2調達比率」のパラメータ値が連動して0.75に設定される。
【0054】
サブ設定テーブル420は、カテゴリカル因子において選択可能なカテゴリごとに設定された複数のレコードを有している。サブ設定テーブル420の各レコードには、輸送手段ID421、変数名422、ベース輸送コスト423、CO2排出量424の各フィールドが設定される。
【0055】
輸送手段ID421には、各カテゴリに対して固有に設定されるIDが格納される。輸送手段ID421の値は、例えばレコードの登録時に自動で設定される。変数名422には、各カテゴリの名称が格納される。
【0056】
ベース輸送コスト423とCO2排出量424には、各カテゴリでのパラメータ値がそれぞれ格納される。
図4では、カテゴリカル因子において選択可能なカテゴリが車両の種類であり、車両の種類ごとに異なるベース輸送コストおよびCO2排出量がパラメータ値として設定されている場合の例を示しているが、各カテゴリでのパラメータ値はこれに限定されない。
【0057】
(シミュレーション入力情報)
図5は、
図2のステップS212でパラメータ設定部120からシミュレーション実行部130へ送られるシミュレーション入力情報121の一例を示す図である。
図5に示すように、シミュレーション入力情報121は、例えば入力テーブル500に示した各情報を含んで構成される。
【0058】
入力テーブル500は、パラメータ設定部120によって生成される計画ごとに設定された複数のレコードを有している。入力テーブル500の各レコードには、シミュレーションID501、設定パラメータ502の各フィールドが設定される。
【0059】
シミュレーションID501には、各計画に対して固有に設定されるIDが格納される。シミュレーションID501の値は、例えばレコードの登録時に自動で設定される。
【0060】
設定パラメータ502には、計画ごとに設定された各パラメータ値の組み合わせが格納される。ここでは、シミュレーション設定情報112において摂動ありと設定された各パラメータ値、すなわち
図4のメイン設定テーブル410において摂動415の値が「1」である各パラメータ値について、摂動値416で定義された摂動条件を満たす全ての値の組み合わせがレコードごとに設定される。
【0061】
(データセット情報)
図6は、
図2のステップS213でデータ管理部140に格納される情報の一例を示す図である。データ管理部140には、前述のようにシミュレーション入力情報121とシミュレーション結果情報131が互いに関連付けて格納されることで、例えば
図6に示すシミュレーションデータセット600が格納される。このシミュレーションデータセット600の各レコードには、
図5の入力テーブル500で説明したシミュレーションID501および設定パラメータ502と、シミュレーション結果情報131に対応するKPIデータ601との各フィールドが設定される。
【0062】
KPIデータ601には、計画ごとにシミュレーションを実行して得られた各KPI値の組み合わせが格納される。
【0063】
貢献度分析部150およびロバスト性分析部190では、例えば
図6のシミュレーションデータセット600をデータ管理部140からデータセット情報141として取得することで、複数の入力因子が設定されて入力因子の値の組み合わせが互いに異なる複数の計画と、シミュレーション実行部130のシミュレーションによって計画ごとに得られる複数のKPIの値とを取得することができる。
【0064】
(クラスタ分析設定画面)
図7は、
図2のステップS214でクラスタ分析設定を行う際に表示されるクラスタ分析設定画面の一例を示す図である。
図7に示すクラスタ分析設定画面700は、ユーザ提示部100に含まれる表示装置において表示される画面の一例であり、入力因子情報テーブル710、KPI情報テーブル720、クラスタ最小要素数730およびKPIクラスタ数740を含んで構成される。
【0065】
入力因子情報テーブル710には、シミュレーションで用いられる各入力因子の情報が表示される。ユーザは入力因子情報テーブル710において入力因子ごとに分析対象とするか否かを設定することができる。ここで分析対象に設定されなかった入力因子は、貢献度算出の際に基本値が参照され、分析対象に設定された入力因子は、貢献度算出の際に当該入力因子が取り得る全ての値が参照される。入力因子情報テーブル710の内容は、貢献度分析設定情報113として分析設定部110から貢献度分析部150へ送られる。
【0066】
KPI情報テーブル720には、シミュレーションによって求められる各KPIの情報として、各KPIが連続値と離散値のどちらであるか、各KPIについて大小どちらの値がより好ましいかなどの情報が表示される。ユーザはKPI情報テーブル720においてKPIごとに分析対象とするか否かを設定することができる。KPI情報テーブル720の内容は、貢献度分析設定情報113として分析設定部110から貢献度分析部150へ送られるとともに、クラスタリング設定情報114として分析設定部110からクラスタリング処理部160へ送られる。
【0067】
クラスタ最小要素数730とKPIクラスタ数740は、クラスタリング処理のクラスタ数を決めるためのパラメータである。ユーザはクラスタ最小要素数730またはKPIクラスタ数740のどちらか一方を、クラスタ処理におけるクラスタ数の条件として任意に指定することができる。ここで指定されたクラスタ数の条件は、クラスタリング設定情報114として分析設定部110からクラスタリング処理部160へ送られる。
【0068】
(貢献度分析結果情報)
図8は、
図2のステップS215で貢献度分析部150からクラスタリング処理部160へ送られる貢献度分析結果情報151の一例を示す図である。貢献度分析結果情報151では、分析対象に設定されたKPIごとに算出された各入力因子の貢献度が表されている。例えば
図8に示すように、「市場1CO2排出量」というKPIに対する各入力因子の計画ごとの貢献度を表すテーブル810と、「市場1コスト」というKPIに対する各入力因子の計画ごとの貢献度を表すテーブル820と、「市場1需要充足率」というKPIに対する各入力因子の計画ごとの貢献度を表すテーブル830とが、貢献度分析結果情報151としてクラスタリング処理部160へ送られる。
【0069】
テーブル810において、例えばシミュレーションIDの値が「001」の行では、入力因子のうち「販社1安全在庫」は市場1のCO2排出量を0.4ポイント押し下げている一方、「ネットワーク1調達比率」は市場1のCO2排出量を19.7ポイント押し上げていることを示している。これにより、「ネットワーク1調達比率」は「市場1CO2排出量」というKPIに対して、他の入力因子よりも大きな影響を与えていると解釈できる。なお、テーブル810の各行では、市場1のCO2排出量の平均値に各入力因子の貢献度を加算または減算し、その値を全ての入力因子について合計すると、その合計値は市場1のCO2排出量と一致する性質がある。他のテーブル820,830についても同様である。
【0070】
ここで、シミュレーションの各入力因子の値を個々のベクトル要素として、貢献度分析処理に対する入力ベクトルx=[x1, x2, …]を定義する。この場合、i番目のKPIをki(iは任意の自然数)と表すと、このKPIに対する各入力因子の貢献度の値は、入力ベクトルxの関数である貢献度ベクトルZcki(x)=[z1, z2, …]として表すことができる。
【0071】
(クラスタリング処理)
図9は、
図2のステップS216で実行されるクラスタリング処理の手順を示すフローチャートである。
【0072】
なお、以下に説明する
図9のフローチャートにおいて、ステップS910~S940では、前述の第1のクラスタリング処理を行う。その後、ステップS950~S970では、第1のクラスタリング処理の結果に基づく第2のクラスタリング処理を行う。
【0073】
ステップS910では、
図2のステップS215でKPIごとに各入力因子の貢献度が計算された計画群に対して、パレート近傍要素抽出処理を行う。このパレート近傍要素抽出処理では、計画ごとに得られるKPIの値をサンプル点としてプロットした際のパレート近傍の要素(サンプル点)を抽出する。これにより、パレート近傍以外の要素を以降の処理対象から除外し、クラスタリング処理の対象とする計画数を削減する。なお、ステップS910で実行されるパレート近傍要素抽出処理の詳細については、
図10のフローチャートを参照して後述する。
【0074】
多目的計画パタンの分析では、非常にサンプル数が多いときには、不要なサンプルの影響が大きく出ることでサンプル全体の分布が平均化されていってしまい、クラスタリング処理で得られる各クラスタ間の差異が不明瞭になる。そこで本発明では、上記のパレート近傍要素抽出処理を適用することで、クラスタリング処理の対象となるサンプルを間引いて各クラスタ間の差異を明確に提示することができるようにしている。
【0075】
ステップS920では、クラスタリング対象とするKPIを設定する。ここでは、クラスタリング設定情報114で分析対象に設定された各KPIを順次選択し、クラスタリング対象のKPIに設定する。
【0076】
ステップS930では、ステップS920でクラスタリング対象に設定されたKPIについて、計画群の階層クラスタリングを行う。ここでは、貢献度分析結果情報151が表す各計画の貢献度ベクトルに基づいて、各計画を貢献度の値に応じて階層的にクラスタリングする。
【0077】
ステップS940では、分析対象に設定された全てのKPIについて、ステップS930の階層クラスタリングを完了したかを判定する。階層クラスタリングを未実施のKPIが存在する場合はステップS920へ戻り、全てのKPIについて階層クラスタリングを完了したならば、ステップS950へ進む。
【0078】
ステップS950では、第2のクラスタリング処理における各KPIの基本クラスタ数を設定するための基本クラスタ数調整処理を行う。ここでは、クラスタリング設定情報114が表すクラスタ数の条件に従って、各KPIの基本クラスタ数を設定する。具体的には、
図7のクラスタ分析設定画面700においてクラスタ最小要素数730が選択され、これによってクラスタの最小要素数がクラスタ数の条件として指定された場合には、各クラスタに属する要素数が指定されたクラスタ最小要素数以上となるように、各KPIの基本クラスタ数を設定する。一方、
図7のクラスタ分析設定画面700においてKPIクラスタ数740が選択され、これによってKPIクラスタの数がクラスタ数の条件として指定された場合には、各KPIのクラスタ数が指定されたクラスタ数と一致するように、各KPIの基本クラスタ数を設定する。このステップS950の基本クラスタ数調整処理により、ステップS930の階層クラスタリングによってKPIごとにクラスタリングされた各計画が、基本クラスタ数の設定に従って再クラスタリングされる。これにより、第2のクラスタリング処理の対象とする各KPIのクラスタ数を調整することができ、その結果、次のステップS960で作成される統合クラスタの数を調整することができる。
【0079】
なお、ステップS950の基本クラスタ数調整処理は必ずしも実行する必要はなく、実行しなくてもよい。例えば、ステップS930のクラスタリング処理によって得られたKPIごとの各クラスタについて、クラスタリング設定情報114で指定されたクラスタ数の条件を満たすか否かを判定し、満たさない場合にのみステップS950の基本クラスタ数調整処理を実行するようにしてもよい。
【0080】
ステップS960では、ステップS950の基本クラスタ数調整処理によって再クラスタリングされることで決定された各計画のKPIごとのクラスタを統合した統合クラスタの作成処理を行う。ここでは、分析対象に設定された2つ以上のKPIについて作成された各クラスタの組み合わせを、統合クラスタとして抽出する。これにより、各計画を複数のKPIの組み合わせについてクラスタリングした統合クラスタが決定される。
【0081】
ステップS970では、ステップS960で決定された各計画の統合クラスタのうち、各KPIペアについての局所的なパレート近傍のクラスタを抽出するパレートクラスタ抽出処理を行う。なお、ステップS970で実行されるパレートクラスタ抽出処理の詳細については、
図13のフローチャートを参照して後述する。
【0082】
ステップS970の処理を実行したら、クラスタリング処理を終了する。
【0083】
(パレート近傍要素抽出処理)
図10は、
図9のステップS910で実行されるパレート近傍要素抽出処理の手順を示すフローチャートである。
【0084】
ステップS1011では、各計画に対応するサンプル点のいずれかを対象サンプルxiに設定する。
【0085】
ステップS1012では、各計画に対応するサンプル点のうち、ステップS1011で設定した対象サンプルxi以外のいずれかを、比較サンプルxjに設定する。
【0086】
ステップS1013では、ステップS1011,S1012でそれぞれ設定した対象サンプルxiと比較サンプルxjの優劣判定を実施する。ここでは、クラスタリング設定情報114に含まれる当該KPIの優劣情報、すなわち当該KPIにおいて大小どちらの値がより好ましいかを考慮して、対象サンプルxiまたは比較サンプルxjのどちらによって得られるKPIの値がより好ましいかを判断する。
【0087】
ステップS1014では、ステップS1013の優劣判定の結果に基づいて、対象サンプルxiが比較サンプルxjに劣るか否かを判定する。対象サンプルxiが比較サンプルxjに劣る場合はステップS1040へ進み、そうではない場合、すなわち対象サンプルxiが比較サンプルxjよりも優れている場合はステップS1030へ進む。
【0088】
ステップS1030では、ステップS1011で設定した対象サンプルxiについて、他の全ての比較サンプルxjとの比較が完了したか否かを判定する。全ての比較サンプルxjとの比較が完了した場合、すなわち対象サンプルxiに設定した計画が他の全ての計画よりも優れている場合はステップS1031へ進み、そうでない場合はステップS1012へ戻る。
【0089】
ステップS1031では、対象サンプルxiに対してパレート近傍のサンプルであることを示すパレートフラグを付与する。パレートフラグを付与したら、ステップS1040へ進む。
【0090】
ステップS1040では、ステップS1011で全てのサンプル点を対象サンプルxiに設定済みであるか否かを判定する。全てのサンプル点を対象サンプルxiに設定済みである場合、すなわち全てのサンプル点についてステップS1011~S1031の処理を実行済みである場合は、
図10のフローチャートに示すパレート近傍要素抽出処理を終了する。そうでない場合、すなわちパレート近傍要素抽出処理を未実施の計画が存在する場合は、ステップS1011へ戻る。
【0091】
以上説明したパレート近傍要素抽出処理により、全てのKPIについてパレート曲面上にあるサンプルをパレートサンプルと定義し、パレートフラグを付与することができる。こうしてパレートフラグが付与されたパレートサンプルを対象に、
図9のステップS920以降の処理を実行することで、パレート近傍のサンプルのみを対象に多目的計画パタン分析を行うことができる。その結果、処理の高速化を図りつつ適切な分析を行うことができる。
【0092】
(基本クラスタ数調整処理)
図11は、
図9のステップS950で実行される基本クラスタ数調整処理の一例を説明する図である。
図11では、分析対象に設定されたKPIのうち任意の2種類のKPIをKPI1,KPI2とし、これらのKPIがそれぞれ同一のクラスタ数を有するように調整する場合の例を示している。
【0093】
図7のクラスタ分析設定画面700では、前述のようにユーザがクラスタ最小要素数730またはKPIクラスタ数740のどちらか一方を選択することで、クラスタ数の条件を指定することができる。例えば、KPIクラスタ数740が選択された場合には、基本クラスタ数調整処理において各KPIのクラスタ数が指定されたクラスタ数と一致するように、階層クラスタリングのパラメータを調節する。この場合、各KPIのクラスタ数を掛け合わせた値として統合クラスタ数が決定される。一方、クラスタ最小要素数730が選択された場合には、基本クラスタ数調整処理において各統合クラスタに含まれる要素数が指定された最小要素数以上であるという条件を満たしつつ、統合クラスタ数が最大となるように、統合クラスタ数を調整する。これは、階層クラスタリングにおけるクラスタ数を徐々に増やすようにパラメータを調整することで、容易に実現できる。
【0094】
図11に示す統合クラスタテーブル1110,1120は、クラスタ最小要素数730が選択され、最小要素数が10に指定された場合に、基本クラスタ数調整処理において各統合クラスタの要素数を変化させたときの例をそれぞれ示している。これらの統合クラスタテーブル1110,1120において、第2のクラスタリング処理によって求められる統合クラスタは、例えばKPI1の1つ目のクラスタ(クラスタ1)かつKPI2の1つ目のクラスタ(クラスタ1)に属する要素の集合など、複数のKPIのクラスタが交差するセルとして表現される。また、統合クラスタテーブル1110,1120の各セルの数値は、対応する統合クラスタの要素数を示している。
【0095】
統合クラスタテーブル1110は、KPI1,KPI2のクラスタ数をそれぞれ3つに設定した場合の各統合クラスタの要素数の例を示している。この場合、全ての統合クラスタの要素数は10以上になっている。一方、統合クラスタテーブル1120は、KPI1,KPI2のクラスタ数をそれぞれ3つから4つに増やした場合の各統合クラスタの要素数の例を示している。この場合、統合クラスタテーブル1110のKPI1とKPI2の各クラスタのうち、3つ目のクラスタ(クラスタ3)がそれぞれ2つに別れたことにより、統合クラスタテーブル1120においてハッチングで示した各統合クラスタの要素数が10より小さくなっている。そのため本例では、KPI1,KPI2のクラスタ数がそれぞれ3となるように、基本クラスタ数が設定される。
【0096】
(統合クラスタ)
図12は、
図9のステップS960で実行される統合クラスタ作成処理によって求められた統合クラスタの一例を説明する図である。
図12では、分析対象に設定されたKPIのうち、
図8のテーブル810~830にそれぞれ示したのと同一の「市場1CO2排出量」、「市場1コスト」、「市場1需要充足率」の各KPIについて、各計画に対応する要素が属するKPIごとのクラスタと、これらのクラスタを統合した統合クラスタとの例を、計画クラスタ管理テーブル1200として示している。
【0097】
(パレートクラスタ抽出処理)
図13は、
図9のステップS970で実行されるパレートクラスタ抽出処理の手順を示すフローチャートである。
【0098】
ステップS1311では、パレートクラスタの抽出対象とするKPIのペアを設定する。ここでは、クラスタリング設定情報114で分析対象に設定された各KPIのうち2つのKPIのペアを順次選択し、パレートクラスタ抽出対象のKPIに設定する。
【0099】
ステップS1312では、ステップS1311でパレートクラスタ抽出対象に設定されたKPIのペアに対して、パレート近傍要素抽出処理を実行する。ここでは、
図10のフローチャートで説明したのと同様の手順により、当該KPIのペアに対応する各統合クラスタについてパレート近傍のサンプルを抽出する。
【0100】
ステップS1313では、ステップS1312のパレート近傍要素抽出処理において、パレート近傍のサンプルが抽出された統合クラスタを、局所パレートクラスタとして抽出する。ここでは、当該KPIペアについて、パレート近傍のサンプルを1つ以上含む統合クラスタを局所パレートクラスタ、含まない統合クラスタを非局所パレートクラスタとそれぞれ定義する。
【0101】
ステップS1320では、分析対象に設定された全てのKPIのペアについて、ステップS1312のパレート近傍要素抽出処理を完了したかを判定する。パレート近傍要素抽出処理を未実施のKPIペアが存在する場合はステップS1311へ戻り、全てのKPIペアについてパレート近傍要素抽出処理を完了した場合は、
図13のフローチャートに示すパレートクラスタ抽出処理を終了する。
【0102】
以上説明したパレートクラスタ抽出処理により、全てのKPIの組み合わせについて、パレート曲面上にあるサンプルを含む統合クラスタを局所パレートクラスタと定義して、パレートクラスタ判定フラグを付与することができる。こうしてパレートクラス判定フラグが付与された局所パレートクラスタを対象に、
図2のステップS917以降の処理を実行することで、パレート近傍の統合クラスタのみを対象に多目的計画パタン分析を行うことができる。その結果、クラスタ分析結果を表示する際に、パレート解を含まない統合クラスの情報をユーザの判断に影響が少ない表示情報として非表示にし、余分な表示を削減して表示画面を見やすくすることができる。
【0103】
(パレートクラスタ抽出結果)
図14は、
図13のフローチャートで説明したパレートクラスタ抽出処理によるパレートクラスタの抽出結果の例を示す図である。
図14では、3つのKPI(KPI1,KPI2,KPI3)について、それぞれのクラスタ数が2つに設定されている場合のパレートクラスタの抽出結果の例を、テーブル1410,1420,1430にそれぞれ示している。具体的には、テーブル1410では、KPI1とKPI2のペアについて、局所パレートクラスタに該当する統合クラスタのセルを「1」、非局所パレートクラスタに該当する統合クラスタのセルを「0」でそれぞれ示している。同様に、テーブル1420では、KPI2とKPI3のペアについて、局所パレートクラスタに該当する統合クラスタのセルを「1」、非局所パレートクラスタに該当する統合クラスタのセルを「0」でそれぞれ示している。また、テーブル1430では、KPI1とKPI3のペアについて、局所パレートクラスタに該当する統合クラスタのセルを「1」、非局所パレートクラスタに該当する統合クラスタのセルを「0」でそれぞれ示している。
【0104】
(クラスタリング処理結果)
図15は、
図9のフローチャートで説明したクラスタリング処理結果の例を示す図である。
図15において、散布
図1510,1520の各サンプル点は、前述の3種類のKPIの各ペアのうち2つのKPIペア(「市場1CO2排出量」と「市場1コスト」のペア、「市場1需要充足率」と「市場1コスト」のペア)における各計画のKPI値を示している。一方、散布
図1511,1521は、各サンプル点のクラスタリング処理結果、すなわちサンプル点ごとの統合クラスタの分類結果を示しており、これは
図12の計画クラスタ管理テーブル1200の内容を散布図上で表したものに相当する。
【0105】
例えば、散布
図1511における「クラスタ12x」の各サンプル点は、計画クラスタ管理テーブル1200において、「統合クラスタ121」または「統合クラスタ122」のいずれかに属する計画群、すなわち「市場1CO2排出量」については「クラスタ1」に、「市場1コスト」については「クラスタ2」にそれぞれ属する計画群を表している。同様に、散布
図1521における「クラスタx21」の各サンプル点は、計画クラスタ管理テーブル1200において、「統合クラスタ121」または「統合クラスタ221」のいずれかに属する計画群、すなわち「市場1コスト」については「クラスタ2」に、「市場1需要充足率」については「クラスタ1」にそれぞれ属する計画群を表している。
【0106】
(代表貢献度ベクトル)
次に、
図2のステップS217で実行される代表貢献度ベクトル算出処理によって算出される代表貢献度ベクトルについて以下に説明する。
【0107】
前述のように、i番目のKPIに対する各入力因子の貢献度の値を、入力ベクトルxに対する貢献度ベクトルZcki(x)で表すと、このKPIについてのj番目(jは任意の自然数)の統合クラスタCjの代表貢献度ベクトルZcki,cjは、以下の式(1)で表すことができる。
Zcki,cj=E[Zcki(x)|x∈Cj] ・・・(1)
【0108】
なお、式(1)の右辺は、統合クラスタCjに属する全ての計画に対して算出された貢献度ベクトルZcki(x)の代表値、例えば平均値や中央値などを意味する。
【0109】
(クラスタ間主要差異分析処理)
図16および
図17は、
図2のステップS218で実行されるクラスタ間主要差異分析処理の例を説明する図である。
図16に示すテーブル1600は、前述のKPIのうち「市場1CO2排出量」について、これに対応する各統合クラスタの入力因子ごとの代表貢献度の値とその差分値の例を示している。この差分値に基づき、いずれかの入力因子を統合クラスタ間の主要差異因子として抽出することで、クラスタ間主要差異分析処理が行われる。
【0110】
具体的には、テーブル1600の列1610に示す各入力因子について、例えば列1620は、
図15の散布
図1511に示した「クラスタ22x」の代表貢献度ベクトル、すなわち「市場1CO2排出量」については「クラスタ2」に、「市場1コスト」については「クラスタ2」にそれぞれ属する計画群の各入力因子に対する代表貢献度の値を表している。同様に、列1630は、
図15の散布
図1511に示した「クラスタ12x」の代表貢献度ベクトル、すなわち「市場1CO2排出量」については「クラスタ1」に、「市場1コスト」については「クラスタ2」にそれぞれ属する計画群の各入力因子に対する代表貢献度の値を表している。また、列1640は、「クラスタ22x」の代表貢献度ベクトルと「クラスタ12x」の代表貢献度ベクトルとの絶対差分値を表している。
【0111】
クラスタ間主要差異分析処理では、例えば絶対差分値が最も大きい入力因子が主要差異因子として抽出される。
図16のテーブル1600では、列1640に示した各入力因子の絶対差分値のうち、「ネットワーク1輸送手段」の絶対差分値が最も大きい。そのため、この「ネットワーク1輸送手段」が、「クラスタ22x」と「クラスタ12x」の主要差異因子として抽出される。同様の処理がすべてのKPIとすべてのクラスタの組合せについて実施されることで、クラスタ間主要差異分析処理が行われる。
【0112】
なお、上記の処理は変数の連続値で表される入力因子について行われるものであり、カテゴリカル変数で表される入力因子(カテゴリカル因子)については実施できない。そのため、カテゴリカル因子の場合は統合クラスタ間のカテゴリ数の差異を用いて、クラスタ間主要差異分析処理が行われる。その具体例について、以下に
図17を参照して説明する。
【0113】
図17に示すテーブル1700は、カテゴリカル因子である「ネットワーク1輸送手段」が「トラック1」、「トラック2」および「電気トラック」の各カテゴリで表される場合に、各統合クラスタに含まれるこれらのカテゴリの数と、統合クラスタ間のカテゴリ数の差分との例を示している。この差分値に基づき、いずれかのカテゴリを統合クラスタ間の主要差異因子として抽出することで、クラスタ間主要差異分析処理が行われる。
【0114】
具体的には、テーブル1700の列1710に示す各カテゴリについて、例えば列1720は、
図15の散布
図1511に示した「クラスタ22x」に属する計画群でのカテゴリ数を表している。同様に、列1730は、
図15の散布
図1511に示した「クラスタ12x」に属する計画群でのカテゴリ数を表している。また、列1740は、「クラスタ22x」のカテゴリ数と「クラスタ12x」のカテゴリ数との差分を表している。
【0115】
クラスタ間主要差異分析処理では、例えば差分が正方向に大きいほど一方の統合クラスタにおいて優位なカテゴリであり、反対に負方向に大きいほど他方の統合クラスタにおいて優位なカテゴリであると判断される。そして、差分が正負でそれぞれ最大となるカテゴリの組み合わせが、これらの統合クラスタ間の主要差異因子として抽出される。
図17のテーブル1700では、列1740に示した各カテゴリの差分のうち、「トラック1」の差分が最小値(負方向に最大)であり、「電気トラック」の差分が最大値である。すなわち、「クラスタ22x」と「クラスタ12x」の比較において、「トラック1」は「クラスタ12x」で優位なカテゴリであり、「電気トラック」は「クラスタ22x」で優位なカテゴリであると判断できる。そのため、例えば統合クラスタを「クラスタ12x」から「クラスタ22x」へ変更する際の主要差異因子として、「ネットワーク1輸送手段」を「トラック1」から「電気トラック」に変化することが、クラスタ間主要差異分析処理において抽出される。
【0116】
(分析結果の出力画面)
図18は、
図2のステップS219でクラスタ間主要差異分析処理の結果をユーザに提示する際に表示される分析結果出力画面の例を示す図である。
図18の分析結果出力画面1800は、全体クラスタ傾向表示部1810と計画クラスタ分析表示部1820を含んで構成される。
【0117】
全体クラスタ傾向表示部1810には、全てのKPIを考慮した各統合クラスタについて各KPIの代表値の比較結果が表示される。ここに表示される各KPIの代表値は、例えば各統合クラスタに含まれる計画群の各KPIの平均値として求めることができる。
図18の例では、各KPIの値(スコア)が0から1で正規化されて表されている。ユーザは、この全体クラスタ傾向表示部1810の内容から、シミュレーション結果全体でのKPIごとの計画群のクラスタ傾向を参照して、KPI間の大まかなトレードオフ傾向を理解することができる。
【0118】
計画クラスタ分析表示部1820には、任意の2つのKPIを縦軸と横軸にそれぞれ設定して、シミュレーションで得られたサプライチェーン計画群とKPI値との関係がマッピングされた散布図が表示され、さらにこの散布図に対して、各計画についての統合クラスタの分類状況と、隣接する各統合クラスタ間の差異情報の説明とが表示される。ここで表示される統合クラスタ間の差異情報の内容は、前述のクラスタ間主要差異分析処理において、
図16、
図17で説明した方法で抽出される主要差異因子の値またはカテゴリ数の統合クラスタ間での増減に基づいて、クラスタ間主要差異分析部180により決定される。なお、マッピングの際の各条件は、計画クラスタ分析表示部1820内の各設定部により、ユーザが任意に設定することができる。
【0119】
ユーザは、計画クラスタ分析表示部1820の表示内容から、シミュレーションに対する入力因子として存在する様々なパラメータの中で、どのパラメータが注目KPIに影響する主要因子に相当するかを一目で判断することができる。例えば、「市場1CO2排出量」と「市場1コスト」の2つのKPIを調整するためには、「調達比率」と「輸送手段」の2つのパラメータが重要だと分かる。また、統合クラスタの遷移のためにはどのパラメータを重点的に調整すべきかを知ることができる。
【0120】
図19は、
図2のステップS219でクラスタ間主要差異分析処理の結果をユーザに提示する際に表示される分析結果出力画面の他の例を示す図である。
図19の分析結果出力画面1900は、
図18に示した分析結果出力画面1800において、縦軸に設定するKPIを「市場1CO2排出量」から「市場1需要充足率」に変更した場合の例を示している。この分析結果出力画面1900は、
図18の分析結果出力画面1800と同様に、全体クラスタ傾向表示部1910と計画クラスタ分析表示部1920を含んで構成される。なお、全体クラスタ傾向表示部1910の内容は、
図18の全体クラスタ傾向表示部1810と同じである。
【0121】
図20は、
図2のステップS219でクラスタ間主要差異分析処理の結果をユーザに提示する際に表示される分析結果出力画面のさらに別の例を示す図である。
図20の分析結果出力画面2000は、
図19に示した分析結果出力画面1900において、計画クラスタ分析表示部1920にある「パレートクラスタのみ表示」を選択した場合の例を示している。この分析結果出力画面2000は、
図18,19の分析結果出力画面1800,1900と同様に、全体クラスタ傾向表示部2010と計画クラスタ分析表示部2020を含んで構成される。計画クラスタ分析表示部2020では、前述の局所パレートクラスタのみが表示され、非局所パレートクラスタについては非表示とされている。すなわち、計画クラスタ分析表示部2020に表示されたKPIペアに関して、「市場1需要充足率」はより高い値が好ましく、「市場1コスト」はより低い値が好ましい。そのため、計画クラスタ分析表示部2020に表示された散布図上では、左上の境界線付近に各点が存在する統合クラスタが局所パレートクラスタに設定される一方、そうではない統合クラスタ(クラスタx21)については表示対象から除外されている。なお、全体クラスタ傾向表示部2010の内容は、
図18,19の全体クラスタ傾向表示部1810,1910と同じである。
【0122】
本実施形態の多目的パタン分析システム10では、
図18~
図20で説明した各出力画面により、サプライチェーンのシミュレーションにおいて重要な入力因子がユーザに説明される。これにより、多目的パタン分析システム10はユーザに対して、計画候補の空間全体を俯瞰した上で、よりよいサプライチェーンを構成するためパラメータを効率的に導くことを支援できる。
【0123】
(ロバスト性分析設定画面)
図21は、
図2のステップS220でロバスト性分析設定を行う際に表示されるロバスト性分析設定画面の一例を示す図である。
図21に示すロバスト性分析設定画面2100は、ユーザ提示部100に含まれる表示装置において表示される画面の一例であり、サプライチェーン構成表示部2110、貢献度集中分析設定部2120および環境変化感度分析設定部2130を含んで構成される。
【0124】
サプライチェーン構成表示部2110には、
図3のパラメータ設定画面300において編集スペース320で編集されたサプライチェーンの構成情報が表示される。このサプライチェーン構成表示部2110に表示されたサプライチェーンを対象に、多目的パタン分析システム10においてロバスト性分析処理が実施される。
【0125】
本実施形態の多目的パタン分析システム10では、ロバスト性分析処理として、貢献度集中分析処理および環境変化感度分析処理の2種類の分析処理を実施することができる。貢献度集中分析処理は、サプライチェーン上の物流網など特定のネットワーク、あるいは工場など特定のコンポーネントへの依存度が高いことに対するリスクを評価するための分析処理である。これは、災害によるサプライチェーン断絶などによるリスク評価に関する。一方、環境変化感度分析処理は、需要低減や燃料費高騰などサプライチェーン上の外部環境変化に対するリスクを評価するための分析処理である。これは、日々の運用についてのKPI達成に対するリスク評価に関する。
【0126】
貢献度集中分析設定部2120は、貢献度集中分析処理に関する設定を行うためのUIである。ユーザは貢献度集中分析設定部2120により、サプライチェーン構成表示部2110に提示されているサプライチェーン構成から評価対象とする具体的な構成要素を選択することで、ネットワーク、サプライヤ、工場などの構成要素のいずれかを評価対象に設定可能である。
図21の例では、工場1の調達先であるサプライヤ1とサプライヤ2を繋ぐネットワーク1とネットワーク2が評価対象として設定されている。評価対象の設定後、貢献度集中分析設定部2120に表示されている実行ボタンをユーザが押すことで、多目的パタン分析システム10において貢献度集中分析処理が実行される。
【0127】
環境変化感度分析設定部2130は、環境変化感度分析処理に関する設定を行うためのUIである。ユーザは環境変化感度分析設定部2130により、シミュレーションの入力因子からいずれかを選択することで、その入力因子を外部環境変化に応じて変動させる外部環境因子に設定することができる。
【0128】
(貢献度集中分析処理)
続いて、
図2のステップS230で実行されるロバスト性分析処理のうち、貢献度集中分析処理について説明する。
【0129】
貢献度集中分析処理では、前述の貢献度分析処理と同様に、各KPIに対する貢献度(例えばShapley値)が計算される。例えば注目するKPIをkとしたとき、シミュレーションの入力ベクトルxに対するShapley値のベクトルZrk(x)は、以下の式(2)で求めることができる。
Zrk(x)=CalcShapley(SIM, x, xbase) ・・・(2)
【0130】
式(2)において、CalcShapley()はShapley値を計算する関数であり、これはシミュレータSIM、入力ベクトルxおよびベースライン入力xbaseを引数としてもつ。SIMはシミュレーション実行部130のシミュレータである。ベースライン入力xbaseに基づいて入力ベクトルxの値を規則的に変更した分析用入力値x’を生成し、これをシミュレーション実行部130に入力してシミュレーションを実行することにより、分析用入力値x’に対するKPIkに関する出力ykを得て、(x’,yk)のデータペアを複数生成する。この複数のデータペアを所定の計算式に適用することで、入力ベクトルxに対するShapley値のベクトルZrk(x)を算出することができる。
【0131】
ベースライン入力xbaseは、Shapley値を算出する際のベースラインとなる入力値であり、各構成要素について予め定められたパラメータの値を所定のベースライン値に置き換えることで求められる。これを実現するため、本実施形態の多目的パタン分析システム10では、各構成要素について置き換え可能なパラメータの情報が、例えばベースラインテーブルとして記憶されている。
【0132】
図22は、貢献度集中分析処理において用いられるベースラインテーブルの一例を示す図である。
図22に示すベースラインテーブル2200は、評価対象に設定されたサプライチェーンの各構成要素について、カテゴリごとにどのパラメータをベースライン値に置き換え可能かを定義したテーブルである。
【0133】
例えば、評価カテゴリがネットワークであり、評価対象に設定された構成要素が「ネットワーク1」および「ネットワーク2」であるとする。この場合、式(2)におけるベースライン入力xbaseは、入力ベクトルxにおいて「ネットワーク1調達比率」と「ネットワーク2調達比率」の値をそれぞれゼロに置き換えることにより求められる。また、このとき式(2)から得られるShapley値のベクトルZrk(x)は、実質的に2次元のベクトルとなり、具体的には、Zrk(x)=[ネットワーク1の貢献度,ネットワーク2の貢献度]となる。その理由は、この場合にはベースライン入力xbaseと入力ベクトルxとの間における入力因子の値の違いが、「ネットワーク1調達比率」と「ネットワーク2調達比率」の2つしかなく、これら以外の入力因子に対するShapley値がゼロになるためである。
【0134】
ここで、注目するKPIを「市場1需要充足率」(すなわちk=OFR:Order Fulfillment Rate)とし、計画クラスタx11(Cx11と表記する)に含まれる計画群のShapley値のベクトルの平均値をZrOFR,Cx11とすると、計画クラスタx11のロバスト性指標ROFR,Cx11は以下の式(3)で求めることができる。
ROFR,Cx11=max(ZrOFR,Cx11)/(1/N)Σf|ZrOFR,Cx11,f| ・・・(3)
【0135】
式(3)において、NはZrOFR,Cx11の実質的な次元数であり、ZrOFR,Cx11,fは入力ベクトルxのうちf番目の入力因子に対するShapley値である。ただし、ゼロ以外の値を持つのはN個の入力因子しかない。 また、max(ZrOFR,Cx11)はZrOFR,Cx11の要素のうち最大値を得る関数である。すなわち、計画クラスタx11のロバスト性指標ROFR,Cx11は、ZrOFR,Cx11に含まれる要素の最大値と平均値の比率として得ることができる。
【0136】
あるいは、計画クラスタx11のロバスト性指標ROFR,Cx11は、以下の式(4)で求めることもできる。
ROFR,Cx11=Gini(ZrOFR,Cx11) ・・・(4)
【0137】
式(4)において、Gini()はジニ係数を求める関数である。すなわち、計画クラスタx11のロバスト性指標ROFR,Cx11は、ZrOFR,Cx11に含まれる要素の値の不均衡度合として求めることもできる。
【0138】
(貢献度集中分析結果の出力画面)
図23は、上記の貢献度集中分析処理によって得られた貢献度集中に対するロバスト性の評価結果を表す貢献度集中分析結果の出力画面の例を示す図である。
図23の貢献度集中分析結果出力画面2300は、サプライチェーン構成表示部2310と貢献度集中分析表示部2320を含んで構成される。
【0139】
サプライチェーン構成表示部2310には、
図21のロバスト性分析設定画面2100におけるサプライチェーン構成表示部2110と同様に、サプライチェーンの構成情報が表示される。さらに、この構成情報のうち、ロバスト性の評価対象となった構成要素がハイライト表示される。
【0140】
貢献度集中分析表示部2320には、貢献度集中分析処理によって得られた任意のKPIに対する計画クラスタごとのロバスト性指標が表示される。例えば
図23の例で示すように、シミュレーションで得られたサプライチェーン計画群とKPI値との関係がマッピングされた散布図において、各計画のロバスト性の高低をヒートマップで表示することができる。
【0141】
ユーザは、貢献度集中分析表示部2320の表示内容から、サプライチェーンにおいて構成要素の貢献度がどの程度集中しているかを判断できる。その結果、例えば一部のネットワークで貢献度が高すぎるときには、代替ネットワークを契約するなど、経営に関する意思決定を行うことができる。本実施形態の多目的パタン分析システム10では、このようにしてユーザの意思決定を支援することができる。
【0142】
(環境変化感度分析処理)
続いて、
図2のステップS230で実行されるロバスト性分析処理のうち、環境変化感度分析処理について説明する。
【0143】
環境変化感度分析処理を実施する前には、
図21に示したロバスト性分析設定画面2100において外部環境因子の設定が行われる。具体的には、ユーザの操作により環境変化感度分析設定部2130から各入力因子の設定情報を呼び出し、この設定情報において任意の入力因子を選択することで、外部環境因子を設定することができる。
【0144】
図24は、外部環境因子の設定において用いられる入力因子の設定情報を表す入力因子設定テーブルの一例を示す図である。
図24に示す入力因子設定テーブル2400は、評価対象に設定されたサプライチェーンの各構成要素について、カテゴリごとにどのパラメータをベースライン値に置き換え可能かを定義したテーブルである。
図24の入力因子設定テーブル2400において、任意の入力因子に対して列2410に示した環境フラグの値を「1」に設定することで、当該入力因子を外部環境因子に設定することができる。ただし、
図7に例示したクラスタ分析設定画面700において分析対象に設定された入力因子については、これを外部環境因子には設定できないようにすることが好ましい。
【0145】
入力因子設定テーブル2400で外部環境因子に設定された入力因子については、シミュレーション設定情報112の摂動値に定義された入力値の中でランダムな組み合せが設定される。環境変化感度分析処理では、設定されたランダムな組み合わせを全ての計画群に反映することで複数の環境シナリオを作成し、各環境シナリオに対してシミュレーション実行部130により追加シミュレーションを実行する。これにより、外部環境因子の変動に応じたKPIの変化が求められる。
【0146】
図25は、環境変化感度分析処理における追加シミュレーションの結果をまとめた環境変化テーブルの一例を示す図である。
図25に示す環境変化テーブル2500は、「市場1需要充足率」というKPIを対象に、追加シミュレーションで求められた各計画の環境シナリオごとのKPI値とその標準偏差を算出した例を示している。
【0147】
環境変化感度分析処理では、上記のようにして得られた各計画の環境シナリオごとの標準偏差を、各計画の環境変化に対するロバスト性指標として用いることができる。この標準偏差の値が大きいほど、ロバスト性が低いことを示している。
【0148】
(環境変化感度分析結果の出力画面)
図26は、上記の環境変化感度分析処理によって得られた環境変化感度に対するロバスト性の評価結果を表す環境変化感度分析結果の出力画面の例を示す図である。
図26の環境変化感度分析結果出力画面2600は、サプライチェーン構成表示部2610と環境変化感度分析表示部2620を含んで構成される。
【0149】
サプライチェーン構成表示部2610には、
図23の貢献度集中分析結果出力画面2300におけるサプライチェーン構成表示部2310と同様の内容が表示される。すなわち、
図21のロバスト性分析設定画面2100におけるサプライチェーン構成表示部2110と同様に、サプライチェーンの構成情報が表示される。さらに、この構成情報のうち、ロバスト性の評価対象となった構成要素がハイライト表示される。
【0150】
環境変化感度分析表示部2620には、環境変化感度分析処理によって得られた任意のKPIに対する計画クラスタごとのロバスト性指標が表示される。ここでは、例えば
図23の貢献度集中分析結果出力画面2300における貢献度集中分析表示部2320と同様に、シミュレーションで得られたサプライチェーン計画群とKPI値との関係がマッピングされた散布図において、各計画のロバスト性の高低をヒートマップで表示することができる。
【0151】
ユーザは、環境変化感度分析表示部2620の表示内容から、需要変動などの外部環境変化に対してサプライチェーンの各構成要素がどの程度影響を受けるかを判断できる。その結果、外部環境変化に対するロバスト性を考慮した計画を選定することができる。本実施形態の多目的パタン分析システム10では、このようにしてユーザの意思決定を支援することができる。
【0152】
以上説明した本発明の一実施形態に係る多目的パタン分析システム10によれば、以下の作用効果を奏する。
【0153】
(1)多目的パタン分析システム10は、貢献度分析部150、クラスタリング処理部160、代表貢献度ベクトル算出部170、クラスタ間主要差異分析部180およびユーザ提示部100を備える。貢献度分析部150は、複数の入力因子が設定されて入力因子の値の組み合わせが互いに異なる複数の計画と、シミュレーションによって計画ごとに得られる複数のKPIの値とを取得し、入力因子ごとのKPIに対する貢献度を算出する(ステップS215)。クラスタリング処理部160は、貢献度分析部150により算出された貢献度に基づいて複数の計画をKPIごとにクラスタリングする第1のクラスタリング処理と、第1のクラスタリング処理の結果に基づいて複数の計画を複数のKPIの組み合わせについてクラスタリングする第2のクラスタリング処理と、を行う(ステップS216)。代表貢献度ベクトル算出部170は、第2のクラスタリング処理で得られた各統合クラスタについて、当該統合クラスタに属する各計画の貢献度の代表値に相当する代表貢献度を入力因子ごとに算出する(ステップS217)。クラスタ間主要差異分析部180は、各統合クラスタについて算出された入力因子ごとの代表貢献度に基づいて、統合クラスタ間の主要差異を分析する(ステップS218)。ユーザ提示部100は、クラスタ間主要差異分析部180による主要差異の分析結果をユーザに提示する(ステップS219)。このようにしたので、KPIに対する実効的な影響力を反映したクラスタリング情報をユーザに提示し、ユーザの意思決定を支援することができる。
【0154】
(2)クラスタリング処理部160は、第2のクラスタリング処理において、第1のクラスタリング処理によって作成されたKPIごとのクラスタのうち、2つ以上のKPIについて作成された各クラスタの組み合わせを、統合クラスタとして抽出する(ステップS960)。このようにしたので、複数のKPIを考慮した統合クラスタを作成することができる。
【0155】
(3)クラスタリング処理部160は、第2のクラスタリング処理において、各統合クラスタに属する計画の数が所定数以上となるように、統合クラスタの数を調整することができる(ステップS950)。このようにすれば、各統合クラスタが細分化されすぎないように統合クラスタの数を調整できるため、ユーザが計画全体の傾向をより判断しやすいクラスタリング情報をユーザに提示することができる。
【0156】
(4)ユーザ提示部100は、ステップS219で主要差異の分析結果をユーザに提示するときに、
図20の分析結果出力画面2000で示したように、パレート解を含まない統合クラスタの情報を非表示とすることができる。このようにすれば、ユーザの判断に影響が少ない余分な表示を削減して、主要差異の分析結果をユーザに提示する際の表示画面を見やすくすることができる。
【0157】
(5)クラスタ間主要差異分析部180は、統合クラスタ間の代表貢献度の差分値を入力因子ごとに算出し、この差分値が最も大きい入力因子を、統合クラスタ間の主要差異因子として抽出する。このようにしたので、統合クラスタ間の主要な差異を表す入力因子を、主要差異因子として確実に抽出することができる。
【0158】
(6)クラスタ間主要差異分析部180は、
図16,
図17で説明したように、主要差異因子の値またはカテゴリ数の統合クラスタ間での増減に基づいて、統合クラスタ間の差異情報を決定する。ユーザ提示部100は、こうしてクラスタ間主要差異分析部180により決定された差異情報をユーザに提示する(
図18~20)。このようにしたので、統合クラスタ間の差異をユーザに分かりやすく提示することができる。
【0159】
(7)ユーザ提示部100は、3つ以上のKPIのうちユーザに選択された2つのKPIについて、主要差異の分析結果をユーザに提示する(
図18~
図20)。このようにしたので、ユーザが指定した任意のKPIに対する主要差異の分析結果をユーザに提示することができる。
【0160】
(8)多目的パタン分析システム10は、第2のクラスタリング処理で得られた各統合クラスタについて、入力因子の変動に対するロバスト性の分析を行うロバスト性分析部190を備える。ユーザ提示部100は、ロバスト性分析部190によるロバスト性の分析結果をユーザに提示する(ステップS222)。具体的には、ロバスト性分析部190は、貢献度集中分析処理を実行することで、KPIごとの貢献度の不均衡度に基づくロバスト性指標ROFR,Cx11を算出し、このロバスト性指標ROFR,Cx11に基づいてロバスト性の分析を行うことができる。また、ロバスト性分析部190は、環境変化感度分析処理を実行することで、入力因子のいずれかを外部環境因子として、この外部環境因子の変化に対するKPIの標準偏差に基づくロバスト性指標を算出し、このロバスト性指標に基づいてロバスト性の分析を行うこともできる。このようにしたので、サプライチェーンのロバスト性を考慮した計画の策定に関するユーザの意思決定支援を行うことができる。
【0161】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、又は置換のいずれもが、単独で、又は組み合わせても適用可能である。
【0162】
また、上記の各構成、機能、処理部、及び処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、及び機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0163】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0164】
10:多目的パタン分析システム
11:ユーザ提示情報
12:ユーザ入力情報
100:ユーザ提示部
101:設定情報
110:分析設定部
111:設定項目情報
112:シミュレーション設定情報
113:貢献度分析設定情報
114:クラスタリング設定情報
115:クラスタ間主要差異分析設定情報
116:ロバスト性分析設定情報
120:パラメータ設定部
121:シミュレーション入力情報
130:シミュレーション実行部
131:シミュレーション結果情報
140:データ管理部
141:データセット情報
150:貢献度分析部
151:貢献度分析結果情報
160:クラスタリング処理部
161:クラスタリング結果情報
170:代表貢献度ベクトル算出部
171:代表貢献度情報
180:クラスタ間主要差異分析部
181:クラスタ間主要差異情報
190:ロバスト性分析部
191:ロバスト性分析結果情報