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特開2024-155171クリンカ落下検出装置及びクリンカ落下検出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155171
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】クリンカ落下検出装置及びクリンカ落下検出システム
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/38 20060101AFI20241024BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20241024BHJP
   F23M 11/04 20060101ALI20241024BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F22B37/38 Z
F23N5/24 106Z
F23M11/04 103
F23M11/04 F
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069634
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中江 修二
(72)【発明者】
【氏名】沖本 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】本田 雅幹
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】堀岡 竜治
【テーマコード(参考)】
2G064
3K003
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064CC13
2G064CC41
2G064DD08
2G064DD15
3K003SA01
3K003SB07
3K003SC00
(57)【要約】
【課題】火炉の炉底部へのクリンカの落下を速やかに検出することが可能なクリンカ落下検出装置を提供する。
【解決手段】クリンカ落下検出装置であって、ボイラの火炉の下部の振動に関する物理量を検知するセンサから下部の振動に関する物理量を示す振動データを取得するように構成された振動データ取得部と、振動データ取得部によって取得した振動データに基づいて、火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するように構成された、クリンカ落下検出部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの火炉の下部の振動に関する物理量を検知するセンサから前記下部の振動に関する物理量を示す振動データを取得するように構成された振動データ取得部と、
前記振動データ取得部によって取得した前記振動データに基づいて、前記火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するように構成された、クリンカ落下検出部と、
を備える、クリンカ落下検出装置。
【請求項2】
前記火炉の炉底部へのクリンカの落下を前記クリンカ落下検出部が検出した場合に、前記火炉の炉底部の点検を促すための報知情報を出力するように構成された報知情報出力部を更に備える、請求項1に記載のクリンカ落下検出装置。
【請求項3】
前記クリンカ落下検出部は、前記振動データ取得部によって取得した前記振動データが示す物理量が閾値を超過した場合に、前記火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するように構成された、請求項1に記載のクリンカ落下検出装置。
【請求項4】
前記振動データ取得部は、前記火炉の下部の振動に関する物理量を検知する複数のセンサから前記下部の振動に関する物理量を示す振動データを取得するように構成され、
前記クリンカ落下検出部は、前記複数のセンサから取得した前記振動データの各々が示す物理量が同時に閾値を超過した場合に、前記火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するように構成された、請求項1に記載のクリンカ落下検出装置。
【請求項5】
前記センサから取得した前記振動データについて周波数解析を行い、前記振動データにおける所定の周波数帯の振動加速度レベルを算出する周波数解析部を更に備え、
前記クリンカ落下検出部は、前記周波数解析部によって算出した前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが閾値を超過した場合に、前記火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するように構成された、請求項1に記載のクリンカ落下検出装置。
【請求項6】
前記振動データ取得部は、前記火炉の下部の振動に関する物理量を検知する複数のセンサから前記下部の振動に関する物理量を示す振動データを取得するように構成され、
前記クリンカ落下検出装置は、前記複数のセンサから取得した前記振動データの各々について周波数解析を行い、前記複数のセンサから取得した前記振動データの各々における所定の周波数帯の振動加速度レベルを算出する周波数解析部を更に備え、
前記クリンカ落下検出部は、前記周波数解析部によって算出した前記振動データの各々における前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが同時に閾値を超過した場合に、前記火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するように構成された、請求項1に記載のクリンカ落下検出装置。
【請求項7】
前記周波数解析部によって算出した前記振動データの各々における前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが同時に閾値を超過する頻度を、前記ボイラの燃料の性状に関連付けて保存するクリンカ落下頻度保存部を更に備える、請求項6に記載のクリンカ落下検出装置。
【請求項8】
前記火炉の前記炉底部の動画を撮影する撮影装置から取得した動画のデータを一時的に保存する動画一時保存部と、
前記周波数解析部によって算出した前記振動データの各々における前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが同時に閾値を超過したタイミングを第1タイミングと定義すると、前記動画一時保存部に一時的に保存された前記動画のデータから、前記第1タイミングの所定時間前から前記第1タイミングの所定時間後までの動画のデータを抽出して保存する抽出動画保存部と、
を更に備える、請求項6に記載のクリンカ落下検出装置。
【請求項9】
請求項1に記載のクリンカ落下検出装置と、前記センサとを備える、クリンカ落下検出システム。
【請求項10】
前記センサは、前記火炉の外側に設けられた、請求項9に記載のクリンカ落下検出システム。
【請求項11】
請求項4に記載のクリンカ落下検出装置と、前記複数のセンサとを備える、クリンカ落下検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クリンカ落下検出装置及びクリンカ落下検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載されるように石炭炊きボイラの火炉では、石炭の燃焼によって生成される燃焼灰が燃焼空気のよどみ部に付着し、燃焼灰の大きな塊であるクリンカが生成されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-271001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記クリンカは、ボイラ内においては自重や除灰装置(スートブロワ)の効果によって火炉の炉底部に落下する場合がある。この落下するクリンカの大きさを管理することは困難であるため、ごくまれに大型のクリンカが落下した際に炉底部の装置や火炉の水冷管等を損傷させてしまい、プラントの運転を停止させなければならない場合がある。
【0005】
このため、例えばクリンカの成長を阻害する添加剤を火炉に投入したり、クリンカが大きくなる前にスートブロワでクリンカを除去する等の対策が考えられるが、クリンカの成長及び落下を完全に防止することは困難であるため、クリンカが落下した際に必要な対策を行えるように、クリンカの落下を速やかに検出することが望ましい。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、火炉の炉底部へのクリンカの落下を速やかに検出することが可能なクリンカ落下検出装置及びこれを備えるクリンカ落下検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るクリンカ落下検出装置は、
ボイラの火炉の下部の振動に関する物理量を検知するセンサから前記下部の振動に関する物理量を示す振動データを取得するように構成された振動データ取得部と、
前記振動データ取得部によって取得した前記振動データに基づいて、前記ボイラの火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するように構成された、クリンカ落下検出部と、
を備える。
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係るクリンカ落下検出システムは、
前記クリンカ落下検出装置と、前記センサとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、火炉の炉底部へのクリンカの落下を速やかに検出することが可能なクリンカ落下検出装置及びこれを備えるクリンカ落下検出システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るボイラ2の概略構成を模式的に示す図である。
図2図1における火炉4の下部のA-A断面の一例を模式的に示す図である。
図3】火炉4の側壁5の振動加速度レベルを計測するセンサ20の配置の一例を示す模式的な断面図である。
図4】クリンカ落下検出装置22のハードウェア構成の一例を示す図である。
図5】クリンカ落下検出装置22の機能的な構成の一例を説明するための図である。
図6】クリンカ落下検出装置22によるクリンカ落下検出フローの一例を示す図である。
図7図6のS13の判定をより具体的に説明するための図であり、4つのセンサ20から取得した振動データの各々における所定の周波数帯の振動加速度レベルをそれぞれLa1、La2、La3及びLa4とした場合における、振動加速度レベルLa1、La2、La3及びLa4の各々の時系列データの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係るボイラ2の概略構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、ボイラ2は、火炉4と、火炉4の側壁5に設けられたバーナー12と、火炉4の上部4uに設けられた熱交換器としての過熱器14と、火炉4の上部4uに接続する煙道16と、クリンカ落下検出システム18とを備える。ボイラ2は、例えば石炭を燃料として用いる石炭炊きボイラであってもよい。
【0013】
火炉4は、鉛直方向に沿って延在する側壁5と、側壁5の下端に接続する炉底部6と、側壁5の上端に接続する天井壁8とを含む。炉底部6は、漏斗状に形成されており、炉底部6の下端には燃料の燃焼によって生成された燃焼灰を排出するための灰排出口9が形成されている。灰排出口9は、平面視において炉底部6の中央に形成されていてもよい。炉底部6は、側壁5の下端から下方に向かうにつれて灰排出口9に近づくように、鉛直方向及び水平方向の各々に対して傾斜した傾斜方向に沿って延在する。灰排出口9の下方には、灰排出口9から落下した灰が流入する灰処理装置10が配置されている。
【0014】
バーナー12は、火炉4内で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する。
過熱器14は、火炉4の上部に設けられた伝熱管15を含み、伝熱管15を流れる蒸気を火炉4内で生成した燃焼ガスによって加熱して過熱蒸気を生成する。
煙道16は、火炉4から排出される排ガス(火炉4で生成された燃焼ガス)を不図示の煙突に導くように構成される。煙道16には、不図示の節炭器等が設けられる。
【0015】
クリンカ落下検出システム18は、火炉4の下部4dの振動に関する物理量を検知する複数のセンサ20と、火炉4の炉底部6の動画を撮影する撮影装置21と、複数のセンサ20によって検知した火炉4の下部4dの振動に関する物理量を示す振動データに基づいて、火炉4の炉底部6へのクリンカCの落下を検出するように構成されたクリンカ落下検出装置22とを含む。図示する例示的形態では、複数のセンサ20は、火炉4の下部4dにおける火炉4の外側にて側壁5に固定されている。なお、火炉4の下部4dとは、火炉4の高さ方向における火炉4の中央よりも下側の部分を意味し、複数のセンサ20は、火炉4の炉底部6へのクリンカCの落下を精度良く検出する観点から、火炉4の下部4dにおいて、バーナー12よりも下方に設けられていてもよい。
【0016】
図2は、図1における火炉4の下部4dのA-A断面の一例を模式的に示す図である。
図2に示す例示的形態では、火炉4の断面は方形であり、火炉4の4つの側壁5は、前側壁5F、前側壁5Fに対向する後側壁5B、右側壁5R及び右側壁5Rに対向する左側壁5Lを含む。なお、ここでは、火炉4の上述の煙道16(図1参照)が接続される側壁5を便宜的に後側壁5Bとして、前側壁5Fから後側壁5Bを視たときに右側に位置する側壁5を便宜的に右側壁5Rとしている。
【0017】
図2に示す例示的形態では、複数のセンサ20は、火炉4の下部4dにおいて火炉4の側壁5に固定された4つのセンサ20を含み、より詳細には、右側壁5Rに固定された2つのセンサ20と、左側壁5Lに固定された2つのセンサ20とを含む。ここで、灰排出口9の中心を通り右側壁5R及び左側壁5Lの各々と直交する鉛直面を鉛直面Vとすると、右側壁5Rに設けられた2つのセンサ20は、鉛直面Vを挟むように配置される。すなわち、右側壁5Rに設けられた2つのセンサ20の一方は、鉛直面Vに対して一方側(前側)に配置され、右側壁5Rに設けられた2つのセンサ20の他方は、鉛直面Vに対して他方側(後側)に配置される。また、左側壁5Lに設けられた2つのセンサ20は、鉛直面Vを挟むように配置される。すなわち、左側壁5Lに設けられた2つのセンサ20の一方は、鉛直面Vに対して一方側(前側)に配置され、左側壁5Lに設けられた2つのセンサ20の他方は、鉛直面Vに対して他方側(後側)に配置される。
【0018】
複数のセンサ20は、それぞれ、火炉4の下部4dの振動に関する物理量(例えば、火炉4の下部4dの振動時の側壁5の変位、振動速度又は振動加速度等のように、振動の程度を定量的に特徴づけることのできる物理量)を検知する。この目的によれば、複数のセンサ20の各々は、例えばAEセンサ、加速度センサ又はレーザ振動センサ等であってもよい。以下では、複数のセンサ20の各々が、炉底部6の振動に関する物理量として火炉4の下部4dの振動加速度レベル(より詳細には下部4dにおける側壁5の振動加速度レベル)を計測する振動加速度センサである場合を例に説明する。
【0019】
図3は、火炉4の下部4dの振動加速度レベルを計測するセンサ20の各々の配置の一例を示す模式的な断面図である。
図3に示す例示的な実施形態では、火炉4の側壁5は、交互に配置された炉壁管24及びフィン26と、炉壁管24とフィン26における火炉4の外側を向く面を覆う保温材28と、保温材28における火炉4の外側を向く面を覆う外装板30とを含む。また、保温材28と外装板30とをそれらの厚さ方向に貫通する導波棒32の一端がフィン26に固定されており、側壁5の外側(火炉4の外側)に配置されたセンサ20が導波棒32の他端に固定されている。このように、センサ20の各々を火炉4の外側に配置することにより、火炉4の内部の高温に起因してセンサ20の各々が破損することを抑制することができる。
【0020】
図4は、クリンカ落下検出装置22のハードウェア構成の一例を示す図である。図5は、クリンカ落下検出装置22の機能的な構成の一例を説明するための図である。図6は、クリンカ落下検出装置22によるクリンカ落下検出フローの一例を示す図である。
【0021】
図4に示すように、クリンカ落下検出装置22は、例えばプロセッサ72、RAM(Random Access Memory)74、ROM(Read Only Memory)76、HDD (Hard Disk Drive)78、入力I/F80、及び出力I/F82を含み、これらがバス84を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。なお、クリンカ落下検出装置22のハードウェア構成は上記に限定されず、制御回路と記憶装置との組み合わせにより構成されてもよい。またクリンカ落下検出装置22は、クリンカ落下検出装置22の各機能を実現するプログラムをコンピュータが実行することにより構成される。以下で説明するクリンカ落下検出装置22における各部の機能は、例えばROM76に保持されるプログラムをRAM74にロードしてプロセッサ72で実行するとともに、RAM74やROM76におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。クリンカ落下検出装置22を構成するハードウェアは、1つの場所に集約されていてもよいし、複数の場所に分散して設けられていてもよい。
【0022】
図5に示すように、クリンカ落下検出装置22は、振動データ取得部36、周波数解析部38、クリンカ落下検出部40、報知情報出力部42、クリンカ落下頻度保存部44、動画一時保存部46及び抽出動画保存部48を含む。以下、クリンカ落下検出装置22の各部の機能について図6等を用いて説明する。
【0023】
図6に示すように、S11において、振動データ取得部36は、複数のセンサ20(上記の例示的な実施形態では4つのセンサ20)の各々から、火炉4の下部4dの振動に関する物理量を示す振動データとして、火炉4の下部4dの振動加速度レベルを示す振動データ(振動加速度レベルの時系列データ)を取得する。
【0024】
S12において、周波数解析部38は、上記複数のセンサ20から取得した振動データの各々について周波数解析(FFT解析)を行い、該振動データの各々における所定の周波数帯の振動加速度レベルを算出する。なお、ここでの「所定の周波数帯」とは、ボイラ2の運転に伴う火炉4の下部4dの定常振動の周波数(火炉4内の燃焼音やバーナーの噴霧音等の喧騒音(背景音)の周波数)よりもある程度高い周波数帯であってもよい。
【0025】
S13において、クリンカ落下検出部40は、周波数解析部38によってセンサ20毎に(振動データ毎に)に上記所定の周波数帯について算出した上記振動加速度レベルが同時に閾値を超過しているか否かを判定し、周波数解析部38によってセンサ20毎に上記所定の周波数帯について算出した上記振動加速度レベルが同時に閾値を超過していると判定した場合には、火炉4の炉底部6へのクリンカの落下を検出する(すなわち、火炉4の炉底部6にクリンカが落下したと判定する)。S13において、クリンカ落下検出部40は、周波数解析部38によってセンサ20毎に上記所定の周波数帯について算出した上記振動加速度レベルが同時に閾値を超過していないと判定した場合には、火炉4の炉底部6にクリンカが落下していないと判定し、S11に戻る。
【0026】
S13において、炉底部6へのクリンカの落下をクリンカ落下検出部40が検出した場合(周波数解析部38によってセンサ20毎に上記所定の周波数帯について算出した上記振動加速度レベルが同時に閾値を超過した場合)には、S14において、報知情報出力部42は、ボイラ2の運転操作を行うオペレータ-に炉底部6の点検を促すための報知情報を報知装置50に出力する。例えば報知装置50がディスプレイ等の表示装置である場合には、報知情報出力部42は、上記報知情報を報知装置50に表示させるための信号を報知装置50に出力し、報知装置50(表示装置)は、炉底部6の点検を促すための報知情報を表示してもよい。また、例えば報知装置50が警報器等である場合には、報知情報出力部42は、上記報知情報を報知装置50から音声等として出力させるための信号を報知装置50に出力し、報知装置50(警報器等)は、炉底部6の点検を促すための報知情報を音声等として出力してもよい。
【0027】
図7は、図6のS13の判定をより具体的に説明するための図であり、4つのセンサ20から取得した振動データの各々における上記所定の周波数帯の振動加速度レベルをそれぞれLa1、La2、La3及びLa4とした場合における、振動加速度レベルLa1、La2、La3及びLa4の各々の時系列データの一例を示している。
【0028】
図7に示す例では、時刻t1において、4つのセンサ20から取得した振動データの各々における上記所定の周波数帯の振動加速度レベルLa1、La2、La3及びLa4が同時に閾値Lathを超過するため、クリンカが時刻t1に炉底部6へ落下したことをクリンカ落下検出部40が検出し、オペレータ-に炉底部6の点検を促すための報知情報を報知情報出力部42が報知装置50に出力する。
【0029】
なお、図7に示す例では、時刻t2から時刻t3までの期間においても、上記振動加速度レベルLa1、La2、La3及びLa4が同時に閾値Lathを超過しているが、これは、ボイラ2内の煤を除去するための不図示のスートブロワを時刻t2から時刻t3まで動作させていることに起因するものである。このため、クリンカ落下検出部40は、スートブロワを制御するための制御信号に基づいて、スートブロワの動作中にはクリンカの落下を検出しないように構成されていてもよい。
【0030】
以下、上述したクリンカ落下検出装置22が奏する効果について説明する。
図1に示すように、火炉4の内部(図1に示す例では火炉4の上部の過熱器14や火炉4の側壁5等)に付着したクリンカCが火炉の炉底部6に落下した場合、火炉4の下部4dに設けられた複数のセンサ20が火炉4の下部4dの振動の振動加速度レベルを検知し、振動データ取得部36が複数のセンサ20から火炉4の下部4dの振動の振動加速度レベルを示す振動データを取得する。このため、クリンカ落下検出部40は、その振動データに基づいて、火炉4の炉底部6へのクリンカの落下を速やかに検出することができる。これにより、報知情報出力部42が火炉4の炉底部6の点検を促す報知情報を報知装置50に出力するため、ボイラ2を運転するオペレータは、報知装置50の報知情報を確認して必要な対策を速やかにとることが可能となる。
【0031】
また、上述した実施形態では、クリンカ落下検出部40は、複数のセンサ20から取得した振動データの各々における上記所定の周波数帯の振動加速度レベルが同時に閾値を超過した場合に炉底部6へのクリンカの落下を検出するため、炉底部6へのクリンカの落下を精度良く検出することができる。また、炉底部6へのクリンカの衝突によって生じる火炉4の下部4dの振動の振動加速度レベルは、ボイラ2の運転に伴う定常振動と比較して、比較的高い周波数において大きな値をとるような周波数特性を有している。このため、その周波数特性を考慮して上記所定の周波数帯をボイラ2の運転に伴う定常振動よりも比較的高い周波数帯(火炉4の下部4dの振動の振動加速度レベルの周波数分布において比較的振動加速度レベルが大きな周波数帯)に設定することにより、炉底部6へのクリンカの落下を精度良く検出することができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、図5に示すように、クリンカ落下検出装置22は、クリンカ落下頻度保存部44を備えていてもよい。クリンカ落下頻度保存部44は、周波数解析部38によってセンサ20毎に上記所定の周波数帯について算出した上記振動加速度レベル(すなわち複数のセンサ20から取得した振動データの各々における上記所定の周波数帯の振動加速度レベル)が同時に閾値を超過する頻度を、ボイラ2の燃料の性状(例えば石炭の炭種等)に関連付けて保存する。すなわち、クリンカ落下頻度保存部44は、炉底部6へのクリンカの落下の頻度をボイラの燃料の性状に関連付けて保存する。これにより、クリンカ落下頻度保存部44に保存された上記頻度と燃料の性状とに基づいて、炉底部6へのクリンカの落下の頻度と燃料の性状との関係を把握することができる。これにより、炉底部6へのクリンカの落下の頻度と燃料の性状との関係を考慮して、燃料の性状毎のボイラ2の運転パターンの構築に貢献することができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、図5に示すように、クリンカ落下検出装置22は、動画一時保存部46および抽出動画保存部48を備えていてもよい。
【0034】
動画一時保存部46は、火炉4の炉底部6の動画を撮影する撮影装置21から取得した動画のデータを一時的に保存する。
【0035】
ここで、周波数解析部38によってセンサ20毎に上記所定の周波数帯について算出した上記振動加速度レベル(すなわち複数のセンサ20から取得した振動データの各々における上記所定の周波数帯の振動加速度レベル)が同時に閾値を超過したタイミング(図7に示す例では時刻t1)を第1タイミングと定義すると、抽出動画保存部48は、動画一時保存部46に一時的に保存された動画のデータから、第1タイミングの所定時間前(例えば10秒前等)から第1タイミングの所定時間後(例えば2分後等)までの動画のデータを抽出して保存する。
【0036】
かかる構成によれば、抽出動画保存部48に保存された動画のデータを確認することにより、上記第1タイミングに火炉4の炉底部6に実際にクリンカが落下したかどうかを確認することができる。このため、火炉4の炉底部6へのクリンカの落下を精度良く検出することができる。また、抽出動画保存部48への動画のデータの保存が完了した後に動画一時保存部46から動画のデータを削除することにより、保存すべき動画のデータの容量の増大を抑制することができる。
【0037】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0038】
例えば、上述の複数のセンサ20には、ボイラ2の内部における蒸気の漏洩を検出するためにボイラ2の下部4dに設けられたセンサ(チューブリークディテクタ)を流用してもよい。すなわち、クリンカ落下検出装置22は、複数のセンサ20の各々から取得した上記振動データに基づいて、炉底部6へのクリンカの落下の検出だけでなく、ボイラ2の内部における蒸気の漏洩を検出してもよい。
【0039】
例えば、上述した実施形態では、クリンカ落下検出装置22は、クリンカの落下の検出精度を高めるために、周波数解析部38で上記所定の周波数帯について算出した振動加速度レベルを閾値と比較したが、周波数解析部38は必須ではなく、複数のセンサ20から取得した振動加速度レベルが同時に閾値を超過した場合に、火炉4の炉底部6へのクリンカの落下を検出してもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、クリンカの落下の検出精度を高めるために、複数のセンサ20は4つのセンサ20を含んでいたが、クリンカ落下検出システム18が備えるセンサ20の数は例えば1つであってもよく、1つ以上であればよい。
【0041】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0042】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るクリンカ落下検出装置(例えば上述のクリンカ落下検出装置22)は、
ボイラ(例えば上述のボイラ2)の火炉(例えば上述の火炉4)の下部(例えば上述の下部4d)の振動に関する物理量を検知するセンサ(例えば上述のセンサ20)から前記下部の振動に関する物理量(例えば上述の振動加速度レベル)を示す振動データを取得するように構成された振動データ取得部(例えば上述の振動データ取得部36)と、
前記振動データ取得部によって取得した前記振動データに基づいて、前記火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するように構成されたクリンカ落下検出部(例えば上述のクリンカ落下検出部40)と、
を備える。
【0043】
上記(1)に記載のクリンカ落下検出装置によれば、火炉の内部に付着したクリンカが火炉の炉底部に落下した場合、火炉の下部が振動して、その振動に関する物理量を示す振動データを振動データ取得部が取得するため、その振動データに基づいて、クリンカ落下検出部が火炉の炉底部へのクリンカの落下を速やかに検出することができる。これにより、例えばボイラの火炉の炉底部の点検を促して、必要な対策を速やかにとることが可能となる。
【0044】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載のクリンカ落下検出装置において、
前記火炉の炉底部へのクリンカの落下を前記クリンカ落下検出部が検出した場合に、前記火炉の炉底部の点検を促すための報知情報を出力するように構成された報知情報出力部(例えば上述の報知情報出力部42)を更に備える。
【0045】
上記(2)に記載のクリンカ落下検出装置によれば、火炉の炉底部の点検を促すための報知情報を出力することにより、火炉の炉底部へクリンカが落下した場合にオペレータが報知情報に基づいて火炉の炉底部の点検を実行することができ、必要な対策を速やかにとることが可能となる。
【0046】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載のクリンカ落下検出装置において、
前記クリンカ落下検出部は、前記振動データ取得部によって取得した前記振動データが示す物理量が閾値を超過した場合に、前記火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するように構成される。
【0047】
上記(3)に記載のクリンカ落下検出装置によれば、閾値を適切に設定することにより、ボイラの火炉の炉底部へのクリンカの落下を精度良く検出することができる。例えば火炉の炉底部の損傷を招く可能性があるような大きさのクリンカが落下した場合に発生する振動を想定して閾値を設定することにより、火炉の炉底部の損傷が生じる可能性がある場合にのみクリンカの落下を検出することができる。
【0048】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載のクリンカ落下検出装置において、
前記振動データ取得部は、前記火炉の下部の振動に関する物理量を検知する複数のセンサから前記下部の振動に関する物理量を示す振動データを取得するように構成され、
前記クリンカ落下検出部は、前記複数のセンサから取得した前記振動データの各々が示す物理量が同時に閾値を超過した場合に、前記火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するように構成される。
【0049】
上記(4)に記載のクリンカ落下検出装置によれば、複数のセンサから取得した振動データの各々が示す物理量が同時に閾値を超過した場合にボイラの火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するため、火炉の炉底部へのクリンカの落下を精度良く検出することができる。また、例えば火炉の炉底部の損傷を招く可能性があるような大きさのクリンカが落下した場合に発生する振動を想定して閾値を設定することにより、火炉の炉底部の損傷が生じる可能性がある場合にのみクリンカの落下を検出することができる。
【0050】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載のクリンカ落下検出装置において、
前記センサから取得した前記振動データについて周波数解析を行い、前記振動データにおける所定の周波数帯の振動加速度レベルを算出する周波数解析部(例えば上述の周波数解析部38)を更に備え、
前記クリンカ落下検出部は、前記周波数解析部によって算出した前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが閾値を超過した場合に、前記火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するように構成される。
【0051】
上記(5)に記載のクリンカ落下検出装置によれば、火炉の炉底部へのクリンカの衝突によって生じる火炉の炉底部の振動の振動加速度レベルは、ボイラの運転に伴う定常振動と比較して、比較的高い周波数において大きな値をとるような周波数特性を有している。このため、その周波数特性を考慮して上記所定の周波数帯をボイラの運転に伴う定常振動よりも比較的高い周波数帯(火炉の炉底部の振動の振動加速度レベルの周波数分布において比較的振動加速度レベルが大きな周波数帯)に設定することにより、火炉の炉底部へのクリンカの落下を精度良く検出することができる。
【0052】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかに記載のクリンカ落下検出装置において、
前記振動データ取得部は、前記火炉の下部の振動に関する物理量を検知する複数のセンサから前記下部の振動に関する物理量を示す振動データを取得するように構成され、
前記クリンカ落下検出装置は、前記複数のセンサから取得した前記振動データの各々について周波数解析を行い、前記複数のセンサから取得した前記振動データの各々における所定の周波数帯の振動加速度レベルを算出する周波数解析部(例えば上述の周波数解析部38)を備え、
前記クリンカ落下検出部は、前記周波数解析部によって算出した前記振動データの各々における前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが同時に閾値を超過した場合に、前記火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するように構成される。
【0053】
上記(6)に記載のクリンカ落下検出装置によれば、複数のセンサから取得した振動データの各々における所定の周波数帯の振動加速度レベルが同時に閾値を超過した場合にボイラの火炉の炉底部へのクリンカの落下を検出するため、火炉の炉底部へのクリンカの落下を精度良く検出することができる。また、火炉の炉底部へのクリンカの衝突によって生じる炉底部の振動の振動加速度レベルは、ボイラの運転に伴う定常振動と比較して、比較的高い周波数において大きな値をとるような周波数特性を有している。このため、その周波数特性を考慮して上記所定の周波数帯をボイラの運転に伴う定常振動よりも比較的高い周波数帯(火炉の下部の振動の振動加速度レベルの周波数分布において比較的振動加速度レベルが大きな周波数帯)に設定することにより、火炉の炉底部へのクリンカの落下を精度良く検出することができる。
【0054】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の何れかに記載のクリンカ落下検出装置において、
前記周波数解析部によって算出した前記振動データの各々における前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが同時に閾値を超過する頻度を、前記ボイラの燃料の性状に関連付けて保存するクリンカ落下頻度保存部(例えば上述のクリンカ落下頻度保存部44)を更に備える。
【0055】
上記(7)に記載のクリンカ落下検出装置によれば、クリンカ落下頻度保存部に保存された上記頻度と燃料の性状とに基づいて、火炉の炉底部へのクリンカの落下の頻度と燃料の性状との関係を把握することができる。
【0056】
(8)幾つかの実施形態では、上記(6)又は(7)に記載のクリンカ落下検出装置において、
前記火炉の前記炉底部の動画を撮影する撮影装置から取得した動画のデータを一時的に保存する動画一時保存部(例えば上述の動画一時保存部46)と、
前記周波数解析部によって算出した前記振動データの各々における前記所定の周波数帯の前記振動加速度レベルが同時に閾値を超過したタイミングを第1タイミングと定義すると、前記動画一時保存部に一時的に保存された前記動画のデータから、前記第1タイミングの所定時間前から前記第1タイミングの所定時間後までの動画のデータを抽出して保存する抽出動画保存部(例えば上述の抽出動画保存部48)と、
を更に備える。
【0057】
上記(8)に記載のクリンカ落下検出装置によれば、抽出動画保存部48に保存された動画のデータを確認することにより、火炉の炉底部に実際にクリンカが落下したかどうかを確認することができる。このため、炉底部へのクリンカの落下を精度良く検出することができる。また、抽出動画保存部への動画のデータの保存が完了した後に動画一時保存部から動画のデータを削除することにより、保存すべき動画のデータの容量の増大を抑制することができる。
【0058】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係るクリンカ落下検出システムは、
上記(1)、(2)、(3)又は(5)に記載のクリンカ落下検出装置と、前記センサとを備える。
【0059】
上記(9)に記載のクリンカ落下検出システムによれば、上記(1)、(2)、(3)又は(5)に記載のクリンカ落下検出装置を備えるため、クリンカ落下検出部が火炉の炉底部へのクリンカの落下を速やかに検出することができる。
【0060】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)に記載のクリンカ落下検出システムにおいて、
前記センサは、前記火炉の外側に設けられる。
【0061】
上記(10)に記載のクリンカ落下検出システムによれば、センサを火炉の外側に配置することにより、火炉の内部の高温に起因してセンサが破損することを抑制することができる。
【0062】
(11)本開示の少なくとも一実施形態に係るクリンカ落下検出システムは、
上記(4)、(6)、(7)又は(8)に記載のクリンカ落下検出装置と、前記複数のセンサとを備える。
【0063】
上記(11)に記載のクリンカ落下検出システムによれば、上記(4)、(6)、(7)又は(8)に記載のクリンカ落下検出装置を備えるため、クリンカ落下検出部が火炉の炉底部へのクリンカの落下を速やかに検出することができる。
【符号の説明】
【0064】
2 ボイラ
4 火炉
4d 下部
4u 上部
5 側壁
5B 後側壁
5F 前側壁
5L 左側壁
5R 右側壁
6 炉底部
8 天井壁
9 灰排出口
10 灰処理装置
12 バーナー
14 過熱器
15 伝熱管
16 煙道
18 クリンカ落下検出システム
20 センサ
21 撮影装置
22 クリンカ落下検出装置
24 炉壁管
26 フィン
28 保温材
30 外装板
32 導波棒
36 振動データ取得部
38 周波数解析部
40 クリンカ落下検出部
42 報知情報出力部
44 クリンカ落下頻度保存部
46 動画一時保存部
48 抽出動画保存部
50 報知装置
72 プロセッサ
74 RAM
76 ROM
78 HDD
80 入力I/F
82 出力I/F
84 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7