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特開2024-155172剪断方法、金属製品の製造方法及び剪断装置
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  • 特開-剪断方法、金属製品の製造方法及び剪断装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155172
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】剪断方法、金属製品の製造方法及び剪断装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 15/00 20060101AFI20241024BHJP
   B23D 31/02 20060101ALI20241024BHJP
   B23D 31/04 20060101ALI20241024BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B21B15/00 B
B23D31/02
B23D31/04
B23Q17/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069635
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】肥沼 祐大
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029BB02
(57)【要約】
【課題】耳屑等の剪断対象の大きさに関わらず剪断刃物によって剪断することができる剪断方法、金属製品の製造方法及び剪断装置が提供される。
【解決手段】剪断方法は、剪断刃物(スクラップシャー7)によって剪断対象を剪断する剪断方法であって、剪断対象が剪断刃物の剪断可能幅より大きいか否かを判定する判定工程と、剪断対象が剪断可能幅より大きいと判定した場合に、一度に剪断する剪断対象の幅が剪断可能幅以下となるように剪断対象を複数に区画する剪断幅決定工程と、剪断対象を区画毎に複数回に分けて剪断する剪断工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剪断刃物によって剪断対象を剪断する剪断方法であって、
前記剪断対象が前記剪断刃物の剪断可能幅より大きいか否かを判定する判定工程と、
前記剪断対象が剪断可能幅より大きいと判定した場合に、一度に剪断する前記剪断対象の幅が剪断可能幅以下となるように前記剪断対象を複数に区画する剪断幅決定工程と、
前記剪断対象を区画毎に複数回に分けて剪断する剪断工程と、を含む、剪断方法。
【請求項2】
前記剪断対象は、金属板を製品寸法に剪断した際に生じる耳屑であり、
前記剪断刃物は、耳屑を幅方向に剪断するスクラップシャーであり、
前記剪断工程では、耳屑の幅が剪断可能幅以下になるように金属板をサイドシャーによって剪断し、前記スクラップシャーによって耳屑を幅方向に剪断する、請求項1に記載の剪断方法。
【請求項3】
前記剪断工程において耳屑を複数回に分けて剪断する際に、前記金属板を搬送して前記サイドシャーによって1つの区画を剪断した後、前記金属板を逆送させ、再び前記金属板を搬送して前記サイドシャーによって他の区画を剪断する、請求項2に記載の剪断方法。
【請求項4】
前記剪断幅決定工程において、一度に剪断する剪断対象が50mm以上にとなるように前記剪断対象を複数に区画する、請求項1から3のいずれか一項に記載の剪断方法。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の剪断方法によって前記金属板を製品寸法に剪断する、金属製品の製造方法。
【請求項6】
金属板の形状を測定する形状測定装置と、
前記金属板の幅方向端部を剪断して耳屑として切り分けるサイドシャーと、
前記サイドシャーが切り分けた前記耳屑を幅方向に剪断するスクラップシャーと、
前記形状測定装置によって測定された前記金属板の形状と前記金属板から切り出す製品寸法とから前記耳屑の幅を算出し、算出した前記耳屑の幅が前記スクラップシャーの剪断可能幅より大きいか否かを判定する制御装置と、を備え、
前記制御装置が前記耳屑の幅が前記剪断可能幅より大きいと判定した場合に、一度に剪断する前記耳屑の幅が前記剪断可能幅以下となるように前記耳屑を複数に区画し、前記スクラップシャーに前記耳屑を区画毎に複数回に分けて剪断させる、剪断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、剪断方法、金属製品の製造方法及び剪断装置に関する。本開示の剪断方法及び剪断装置は、特に金属板から切り分けられた剪断対象としての耳屑を剪断し、金属製品の製造で用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、製鉄所の圧延工程などでは、圧延した厚鋼板を製品寸法に切り出すために厚鋼板の幅方向端部をサイドシャーで剪断する。このとき、厚鋼板から切り分けられた耳屑は、スクラップシャーによって所定長さに剪断されて回収される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭61-154623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来設備では、スクラップシャー等の剪断刃物によって剪断できる耳屑の幅は決まっている。スクラップシャーの剪断可能幅より耳屑の幅が大きい場合、スクラップシャーによって耳屑を剪断することができない。スクラップシャーによって耳屑を剪断できない場合に、例えばガス切断等の別の方法によって別途耳屑を切断する必要があった。そのため、製造コスト及びリードタイムの増加が問題となっていた。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、耳屑等の剪断対象の大きさに関わらず剪断刃物によって剪断することができる剪断方法、金属製品の製造方法及び剪断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係る剪断方法は、
剪断刃物によって剪断対象を剪断する剪断方法であって、
前記剪断対象が前記剪断刃物の剪断可能幅より大きいか否かを判定する判定工程と、
前記剪断対象が剪断可能幅より大きいと判定した場合に、一度に剪断する前記剪断対象の幅が剪断可能幅以下となるように前記剪断対象を複数に区画する剪断幅決定工程と、
前記剪断対象を区画毎に複数回に分けて剪断する剪断工程と、を含む。
【0007】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記剪断対象は、金属板を製品寸法に剪断した際に生じる耳屑であり、
前記剪断刃物は、耳屑を幅方向に剪断するスクラップシャーであり、
前記剪断工程では、耳屑の幅が剪断可能幅以下になるように金属板をサイドシャーによって剪断し、前記スクラップシャーによって耳屑を幅方向に剪断する。
【0008】
(3)本開示の一実施形態として、(2)において、
前記剪断工程において耳屑を複数回に分けて剪断する際に、前記金属板を搬送して前記サイドシャーによって1つの区画を剪断した後、前記金属板を逆送させ、再び前記金属板を搬送して前記サイドシャーによって他の区画を剪断する。
【0009】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記剪断幅決定工程において、一度に剪断する剪断対象が50mm以上にとなるように前記剪断対象を複数に区画する。
【0010】
(5)本開示の一実施形態に係る金属製品の製造方法は、
(2)又は(3)の剪断方法によって前記金属板を製品寸法に剪断する。
【0011】
(6)本開示の一実施形態に係る剪断装置は、
金属板の形状を測定する形状測定装置と、
前記金属板の幅方向端部を剪断して耳屑として切り分けるサイドシャーと、
前記サイドシャーが切り分けた前記耳屑を幅方向に剪断するスクラップシャーと、
前記形状測定装置によって測定された前記金属板の形状と前記金属板から切り出す製品寸法とから前記耳屑の幅を算出し、算出した前記耳屑の幅が前記スクラップシャーの剪断可能幅より大きいか否かを判定する制御装置と、を備え、
前記制御装置が前記耳屑の幅が前記剪断可能幅より大きいと判定した場合に、一度に剪断する前記耳屑の幅が前記剪断可能幅以下となるように前記耳屑を複数に区画し、前記スクラップシャーに前記耳屑を区画毎に複数回に分けて剪断させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、耳屑等の剪断対象の大きさに関わらず剪断刃物によって剪断することができる剪断方法、金属製品の製造方法及び剪断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る剪断装置の構成例を示す図である。
図2図2は、図1の剪断装置の耳屑の剪断に関する部分の拡大図である。
図3図3は、スクラップシャーの剪断不可部分についての説明図である。
図4A図4Aは、剪断の手順を説明する図である。
図4B図4Bは、剪断の手順を説明する図である。
図4C図4Cは、剪断の手順を説明する図である。
図4D図4Dは、剪断の手順を説明する図である。
図5A図5Aは、実施例1についての剪断回数と剪断幅を示す図である。
図5B図5Bは、実施例2についての剪断回数と剪断幅を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る剪断方法、金属製品の製造方法及び剪断装置10(図1参照)が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0015】
本実施形態では、金属板20(図2参照)の一例である鋼板から切り分けられた剪断対象としての耳屑を、剪断刃物としてのスクラップシャー17によって剪断する場合について説明するが、剪断対象は金属板20に限定されない。ここで、耳屑は金属板20の幅方向端部を剪断することにより、幅方向の両端側に発生する削り屑である。幅方向は、搬送される金属板20を上面視した場合に、金属板20の搬送方向に直交する方向である。また、本実施形態では、金属板20を所望のサイズに切断して金属製品が製造されるとするが、さらに成形などの加工が行われて金属製品が製造されてよい。
【0016】
<剪断装置>
図1は、本実施形態に係る剪断装置10の構成例を示す図である。図2は、図1の剪断装置10の耳屑の剪断に関する部分の拡大図である。剪断装置10は、形状測定装置12と、クロップシャー13と、ダブルサイドシャー14と、スリッターシャー15と、制御装置16と、スクラップシャー17と、を備える。圧延後の金属板20は、剪断装置10が設けられた場所において、図1に示される搬送経路に沿って搬送される。金属板20は、冷却床11で冷却された後で剪断装置10へと搬送され、剪断装置10によって剪断された後で検査工程へと搬送される。つまり、本実施形態において、剪断装置10によって実行される金属板20の剪断は、上流側の工程である圧延工程の後で、かつ、下流側の工程である検査工程の前に行われる。
【0017】
形状測定装置12は、剪断前の金属板20の形状を測定する。形状測定装置12は、金属板20の搬送経路の上流側に設けられている。形状測定装置12は、例えば平面形状計であって、圧延後の金属板20の幅、長さ、曲がり具合及び金属板20の先尾端の形状のそれぞれを測定する。
【0018】
クロップシャー13は、金属板20の先尾端(クロップ部)を剪断する。また、金属板20は搬送方向に長い矩形状であり得る。クロップシャー13は、金属板20の長手方向(搬送方向)の例えば中央部を粗切断して金属板20を分割することができる。
【0019】
ダブルサイドシャー14は、金属板20を製品寸法に切り出すために、金属板20の幅方向(搬送方向に直交する方向)の両端部を剪断して耳屑として切り分ける。本実施形態において、金属板20の幅方向端部のそれぞれにサイドシャーがあり、一対のサイドシャーとして設置されている。このような一対のサイドシャーによってダブルサイドシャー14が構成されている。
【0020】
スリッターシャー15は、金属板20を製品寸法に切り出すために、金属板20の幅方向の中央部を剪断して分割する。
【0021】
スクラップシャー17は、ダブルサイドシャー14が切り分けた耳屑を幅方向に剪断する。スクラップシャー17は、ダブルサイドシャー14の後方(搬送方向の下流側)に配置される。ここで、スクラップシャー17の剪断可能幅、すなわちスクラップシャー17によって剪断することができる耳屑の幅は決まっている。図3に示すように、スクラップシャー17の剪断可能幅(W0)より耳屑の幅(W2)が大きい場合には、スクラップシャー17によって耳屑を剪断できない部分が生じてしまう。このような剪断できない部分は、図3において剪断不可と示されている。本実施形態において、1個のスクラップシャー17の剪断可能幅(W0)は一例として125mmである。ここで、図2及び図3におけるW1は、金属板20から耳屑を除いた残りの幅を示す。
【0022】
制御装置16は、クロップシャー13、ダブルサイドシャー14、スリッターシャー15及びスクラップシャー17の動作を制御する。また、制御装置16は、形状測定装置12によって測定された金属板20の形状と金属板20から切り出す製品寸法とから、耳屑の幅を算出する。また、制御装置16は、算出した耳屑の幅がスクラップシャー17の剪断可能幅より大きいか否かを判定する。そして、制御装置16は、耳屑の幅が剪断可能幅より大きいと判定した場合に、一度に剪断する耳屑の幅が剪断可能幅以下となるように耳屑を複数に区画する。制御装置16は、スクラップシャー17に耳屑を区画毎に複数回に分けて剪断させる。
【0023】
制御装置16は、制御を実行するプロセッサと、制御で使用されるデータ(例えば金属板20の形状の情報)を記憶する記憶部とを備えている。制御装置16は、例えばコンピュータであってよい。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。記憶部は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。
【0024】
<剪断方法>
次に、剪断刃物によって剪断対象を剪断する剪断方法が説明される。本実施形態に係る剪断方法は、上記の剪断装置10によって実行され、スクラップシャー17が剪断刃物に対応し、剪断対象が金属板20を製品寸法に剪断した際に生じる耳屑である。本実施形態に係る剪断方法は、形状測定工程と、判定工程と、剪断幅決定工程と、剪断工程と、を含む。
【0025】
(形状測定工程)
まず、形状測定工程では、形状測定装置12によって剪断前の金属板20の形状が測定される。ここで、例えば金属板20の形状の情報が既に取得されている場合などに、形状測定工程が省略されてよい。
【0026】
(判定工程)
次に、判定工程では、制御装置16によって、金属板20の形状と、予め記憶されている切り出し予定の製品寸法とから、金属板20を剪断した際に生じる耳屑の幅が算出される。そして、判定工程では、制御装置16によって、その耳屑の幅がスクラップシャー17の剪断可能幅より大きいか否かが判定される。
【0027】
(剪断幅決定工程)
次に、剪断幅決定工程では、制御装置16によって、耳屑の剪断幅が決定される。具体的には、制御装置16によって耳屑の幅が剪断可能幅より小さいと判定された場合に、その耳屑の幅を剪断幅とする。一方、耳屑の幅が剪断可能幅より大きいと判定された場合に、一度に剪断する耳屑の幅が剪断可能幅以下となるように耳屑が複数に区画される。具体例として、スクラップシャー17の剪断可能幅が125mmであり、耳屑の幅が200mmである場合に、制御装置16によって、耳屑が幅方向に2分割されて、幅がそれぞれ100mmずつとなるように2つに区画される。このとき、剪断する耳屑の幅が50mmより小さくなると耳屑が捻じれて断面不良が生じたり、捻じれた耳屑が他の設備に当たって破損させたりするリスクがある。このため、各耳屑の幅がそれぞれ50mm以上となるように耳屑を区画することが望ましい。上記の例では、125mmの剪断可能幅に対し、一度に剪断する耳屑の幅(剪断幅)を100mmとしたが、剪断幅は50mm以上125mm以下の間で任意に決定されてよい。
【0028】
(剪断工程)
そして、剪断工程では、制御装置16が決定した剪断幅にて耳屑を剪断する。すなわち、耳屑の幅が剪断可能幅より小さい場合には、耳屑を一度に剪断する。一方、耳屑の幅が剪断可能幅より大きい場合には、耳屑を区画毎に複数回に分けて剪断する。具体的には、図4Aに示すように、まず金属板20が搬送方向の順方向(上流から下流への方向)に搬送される。図4Bに示すように、金属板20をダブルサイドシャー14の前面へ受け入れて1度目の剪断が実施される。このとき、耳屑の幅が上記で区画した剪断幅、すなわち剪断可能幅以下(上記の例で100mm)になるようにダブルサイドシャー14の金属板20の幅方向における位置が調整される。金属板20の幅方向両端部(幅方向端部の両側)がダブルサイドシャー14によって剪断されて、ダブルサイドシャー14の下流に設けられたスクラップシャー17によって、剪断可能幅以下の幅(上記の例で100mm)になっている耳屑が幅方向に剪断される。
【0029】
その後、図4Cに示すように、1度目の剪断が終わった金属板20が搬送方向の逆方向(下流から上流への方向)に搬送(逆送)される。図4Dに示すように、2度目の剪断が実施される。このとき、耳屑の幅が上記で区画した剪断幅、すなわち剪断可能幅以下(上記の例で100mm)になるようにダブルサイドシャー14の金属板20の幅方向位置が改めて調整される。そして、ダブルサイドシャー14に向かって金属板20を再び搬送することによって、1度目に剪断された部分より内側に位置する金属板20の幅方向両端部がダブルサイドシャー14によって剪断される。そして、ダブルサイドシャー14の下流に設けられたスクラップシャー17によって、剪断可能幅以下の幅(上記の例で100mm)になっている耳屑が幅方向に剪断される。
【0030】
このように、制御装置16で区画した区画毎にダブルサイドシャー14での金属板20の幅方向両端部の剪断と、スクラップシャー17での耳屑の剪断とを繰り返すことにより、金属板20を製品寸法に切り出すことができる。また、金属板20を製品寸法に切り出すとともに、耳屑を所定長さに剪断することができる。
【0031】
上記の剪断方法は、金属板20を所望のサイズで切断して製造される金属製品の製造方法の一部として用いることができる。金属製品は、一定のサイズを有する鋼板であってよいし、さらに成形などの加工を経て製造されるものであってよい。
【0032】
<効果>
以上のように、本実施形態に係る剪断方法、金属製品の製造方法及び剪断装置10は、上記の構成により、耳屑等の剪断対象が剪断可能幅より大きい場合に剪断対象を複数に区画して区画毎に複数回に分けて剪断する。そのため、剪断対象の大きさに関わらず剪断刃物によって剪断することができる。本実施形態に係る剪断方法、金属製品の製造方法及び剪断装置10では、従来のように耳屑をガス切断によって切断する必要がなくなる。一般に、ガス切断よりシャー剪断の方が安価であるため、製造コスト削減が可能になる。さらに、ガス切断削減によるリードタイム削減が可能である。
【0033】
<剪断対象>
上記の実施形態において、金属板20から切り分けられた耳屑を剪断対象として説明したが、剪断対象は耳屑に限定されない。様々なものを剪断刃物(シャー)で剪断する際に本開示の手法を適用することが可能である。
【0034】
また、上記の実施形態では、剪断刃物(シャー)に向かって金属板20を搬送することによって金属板20を剪断したが、金属板20に対して剪断刃物の位置を移動させることによって金属板20を剪断する構成としてよい。
【0035】
(実施例)
以下、本開示の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
上記の剪断装置10を用いて耳屑の剪断が実施された。スクラップシャー17の剪断可能幅は125mmであり、剪断幅決定ロジックを用いて耳屑の剪断幅を決定した。剪断幅決定ロジックは、耳屑の幅(片側)を第1の剪断幅(剪断可能幅以下の剪断幅)で割った商と、余りとを用いて耳屑の剪断回数とスクラップシャー17の剪断幅とを決定する。実施例1及び実施例2において、第1の剪断幅は100mmに設定された。また、ここで、剪断可能幅(125mm)と第1の剪断幅(100mm)との差(25mm)を閾値として、剪断幅決定ロジックは、余りが閾値未満であれば、商と同じ数の回数だけ剪断を行い、最後の1回の剪断において第2の剪断幅を用いる。また、剪断幅決定ロジックは、余りが閾値以上であれば、商に1を加えた数の回数だけ剪断を行い、最後の2回の剪断において第2の剪断幅を用いる。図5Aに余りが閾値未満の場合の剪断幅決定ロジック、図5Bに余りが閾値以上の場合の剪断幅決定ロジックが示されている。図5A及び図5Bにおいて商はAで示されている。また、図5A及び図5Bにおいて余りはXで示されている。剪断幅決定ロジックは、余りが閾値未満であれば、第2の剪断幅を(X+100)mmとする。また、剪断幅決定ロジックは、余りが閾値以上であれば、第2の剪断幅を((X+100)/2)mmとする。ここで、第1の剪断幅はスクラップシャー17の剪断可能幅に応じて適宜変更される。第1の剪断幅は、例えばスクラップシャー17の剪断可能幅(例えば125mm)から、金属板20の幅(片側)の変動の最大値(例えば25mm)を減算した値で決定してよい。ただし、剪断の効率の観点から、第1の剪断幅が小さくなりすぎないように、上記の閾値は剪断可能幅の4分の1以下で設定されることが好ましい。また、剪断幅決定ロジックでは、商が1の場合に第1の剪断幅が用いられず、最初から第2の剪断幅を使用した剪断が行われる。
【0037】
(実施例1)
幅:2430mm×長さ:6000mmの鋼板から幅:2000mm×長さ:6000mmの製品を切り出す。このとき、発生する耳屑が片側につき、幅215mmとなる。このため、一度に剪断する耳屑の幅について、50mm≦剪断幅≦125mmが満たされるように剪断幅を決定した。具体的には、耳屑の幅215mmを100mmで割った場合の商(A)が2、余り(X)が15mmである。そのため、図5Aに示すように、1回目の剪断幅が100mm、2回目の剪断幅が115mmとなるように鋼板が区画された。その結果、問題なく耳屑を剪断することができた。
【0038】
(実施例2)
幅:2300mm×長さ:6000mmの鋼板から幅:2000mm×長さ:6000mmの製品を切り出す。このとき、発生する耳屑が片側につき、幅150mmとなる。このため、一度に剪断する耳屑の幅について、50mm≦剪断幅≦125mmが満たされるように剪断幅を決定した。具体的には、耳屑の幅150mmを100mmで割った場合の商(A)が1、余り(X)が50mmである。そのため、図5Bに示すように、1回目の剪断幅が75mm、2回目の剪断幅が75mmとなるように鋼板が区画された。ここで、実施例2は商(A)が1であるため、図5Bで第1の剪断幅(100mm)が用いられず、最初から第2の剪断幅(75mm)が使用される場合に該当する。その結果、問題なく耳屑を剪断することができた。
【0039】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップ(工程)などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0040】
10 剪断装置
11 冷却床
12 形状測定装置
13 クロップシャー
14 ダブルサイドシャー
15 スリッターシャー
16 制御装置
17 スクラップシャー
20 金属板
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B