(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155173
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 23/698 20230101AFI20241024BHJP
G06T 7/20 20170101ALI20241024BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20241024BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20241024BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20241024BHJP
G03B 35/10 20210101ALI20241024BHJP
G03B 7/00 20210101ALI20241024BHJP
G03B 19/02 20210101ALI20241024BHJP
【FI】
H04N23/698
G06T7/20
H04N23/55
H04N23/60 500
G03B15/00 W
G03B35/10
G03B7/00
G03B19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069636
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】菅原 俊
【テーマコード(参考)】
2H002
2H054
2H059
5C122
5L096
【Fターム(参考)】
2H002GA51
2H054BB02
2H059AA07
5C122FA02
5C122FB02
5C122FB11
5C122FH00
5C122FH12
5C122FH20
5C122HB01
5L096AA02
5L096AA06
5L096AA09
5L096CA05
5L096DA01
5L096FA66
5L096GA59
5L096HA04
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】広角でありながら長焦点光学系の解像度を有する画像を得ることが可能な撮像装置が提供される。
【解決手段】撮像装置(10)は、入射する第1の光を撮像素子(12)の所定の受光領域に結像させる光学系(11)と、光学系の光軸と光学系に入射する主光線とのなす角度が第1の光と異なる第2の光を所定の受光領域に導き、第1の光による像に重畳して撮像素子に撮像させる光学素子(13)と、撮像素子が出力する第1の光による像と第2の光による像が重畳した重畳画像の画像信号から、第1の光による像と第2の光による像とを分離するコントローラと(14)、を備え、コントローラは、重畳画像における任意の被写体像の移動方向が第1の光による像と第2の光による像とで異なることに基づいて、第1の光による像と第2の光による像とを分離する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する第1の光を撮像素子の所定の受光領域に結像させる光学系と、
前記光学系の光軸と前記光学系に入射する主光線とのなす角度が前記第1の光と異なる第2の光を前記所定の受光領域に導き、前記第1の光による像に重畳して前記撮像素子に撮像させる光学素子と、
前記撮像素子が出力する前記第1の光による像と前記第2の光による像が重畳した重畳画像の画像信号から、前記第1の光による像と前記第2の光による像とを分離するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記重畳画像における任意の被写体像の移動方向が前記第1の光による像と前記第2の光による像とで異なることに基づいて、前記第1の光による像と前記第2の光による像とを分離する、撮像装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記任意の被写体像の移動方向の検出に、オプティカルフローを用いる、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
ステレオカメラを構成するように、複数の前記光学系と、複数の前記光学素子と、を備え、
前記コントローラは、前記任意の被写体像の移動方向の検出に、同じ時刻に異なる位置から撮像された複数の前記重畳画像を用いる、請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記任意の被写体像の移動方向の検出に、異なる時刻に撮像された複数の前記重畳画像を用いる、請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記コントローラは、機械学習によって生成された画像分離モデルを用いて、前記第1の光による像と前記第2の光による像とを分離し、
前記画像分離モデルは、事前に複数の画像を重ねた学習用重畳画像を作成し、前記学習用重畳画像に対して、前記複数の画像を正解として機械学習させることにより構築されるモデルである、請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項6】
入射する第1の光を撮像素子の所定の受光領域に結像させる光学系と、
前記光学系の光軸と前記光学系に入射する主光線とのなす角度が前記第1の光と異なる第2の光による像とが重畳して撮像された重畳画像の画像信号から、前記第1の光による像と前記第2の光による像とを分離するコントローラと、を備え、
前記重畳画像における任意の被写体像の移動方向が前記第1の光による像と前記第2の光による像とで異なる、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
観察対象を結像させる撮像光学系は、焦点距離、画角などの多様な物性を有する。焦点距離が長くなると、観察対象が拡大化された像が形成されるので、遠方の観察対象の詳細な光学情報、換言すると拡大された光学情報が得られる。画角は広角化するほど、広範囲に位置する観察対象の光学情報が得られる。しかし、焦点距離と画角とはトレードオフの関係がある。焦点距離が長くなると画角が狭角化し、焦点距離が短くなると画角が広角化する。
【0003】
それゆえ、状況に応じて望まれる光学情報を得られるように焦点距離の調整が行われている。例えば、撮像光学系に含まれるズームレンズを変位させることにより、焦点距離の調整が行われる。また、複数の単焦点レンズを切替えることにより、焦点距離の調整が行われる(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11―311832号公報
【特許文献2】特開2004―279556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2の技術は、焦点距離の切替えにより、長焦点光学系の解像度を有する画像(遠方の撮影画像)又は広い画角での撮影画像である広角画像を得ることができる。しかし、特許文献1、2の技術は、遠方の撮影画像と広角画像とを高い解像度で同時に得ることができない。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、広角でありながら長焦点光学系の解像度を有する画像を得ることが可能な撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一実施形態に係る撮像装置は、
入射する第1の光を撮像素子の所定の受光領域に結像させる光学系と、
前記光学系の光軸と前記光学系に入射する主光線とのなす角度が前記第1の光と異なる第2の光を前記所定の受光領域に導き、前記第1の光による像に重畳して前記撮像素子に撮像させる光学素子と、
前記撮像素子が出力する前記第1の光による像と前記第2の光による像が重畳した重畳画像の画像信号から、前記第1の光による像と前記第2の光による像とを分離するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記重畳画像における任意の被写体像の移動方向が前記第1の光による像と前記第2の光による像とで異なることに基づいて、前記第1の光による像と前記第2の光による像とを分離する。
【0008】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記コントローラは、前記任意の被写体像の移動方向の検出に、オプティカルフローを用いる。
【0009】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
ステレオカメラを構成するように、複数の前記光学系と、複数の前記光学素子と、を備え、
前記コントローラは、前記任意の被写体像の移動方向の検出に、同じ時刻に異なる位置から撮像された複数の前記重畳画像を用いる。
【0010】
(4)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記コントローラは、前記任意の被写体像の移動方向の検出に、異なる時刻に撮像された複数の前記重畳画像を用いる。
【0011】
(5)本開示の一実施形態として、(1)から(4)のいずれかにおいて、
前記コントローラは、機械学習によって生成された画像分離モデルを用いて、前記第1の光による像と前記第2の光による像とを分離し、
前記画像分離モデルは、事前に複数の画像を重ねた学習用重畳画像を作成し、前記学習用重畳画像に対して、前記複数の画像を正解として機械学習させることにより構築されるモデルである。
【0012】
(6)本開示の一実施形態に係る撮像装置は、
入射する第1の光を撮像素子の所定の受光領域に結像させる光学系と、
前記光学系の光軸と前記光学系に入射する主光線とのなす角度が前記第1の光と異なる第2の光による像とが重畳して撮像された重畳画像の画像信号から、前記第1の光による像と前記第2の光による像とを分離するコントローラと、を備え、
前記重畳画像における任意の被写体像の移動方向が前記第1の光による像と前記第2の光による像とで異なる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、広角でありながら長焦点光学系の解像度を有する画像を得ることが可能な撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る撮像装置の主要な構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、ステレオカメラとして構成された撮像装置を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1の撮像素子及び光学系の位置を説明するための図である。
【
図4】
図4は、
図1の受光領域に到達する像を説明する概念図である。
【
図5】
図5は、
図1の受光領域に到達する重畳画像が形成される状況を説明する概念図である。
【
図6】
図6は、重畳画像から復元画像を生成する過程を説明するための概念図である。
【
図7】
図7は、第1の光による像と第2の光による像の移動方向の違いを説明するための図である。
【
図8】
図8は、コントローラが実行する測距処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る撮像装置10(
図1参照)が説明される。以下の図面に示す構成要素において、同じ構成要素には同じ符号が付されている。実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率などは、現実のものと必ずしも一致していない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る撮像装置10の主要な構成を示す概略図である。
図2は、ステレオカメラとして構成された撮像装置10を示す図である。本開実施形態に係る撮像装置10はステレオカメラとして構成されるとして説明する。ただし、ステレオカメラとして構成される場合に同じ部品が複数配置されるため、重複を避けて説明をわかりやすくするために、
図1のような撮像装置10の主要部分構成を示す図を用いて説明することがある。
【0017】
図1に示すように撮像装置10は、光学装置21と、コントローラ14と、を備える。撮像装置10は、撮像素子12をさらに備えてよい。また、光学装置21は、撮像光学系(光学系11)と、光学素子13と、を備える。
【0018】
光学系11は、入射する被写体光束を結像させる。光学系11は、入射する第1の光を撮像素子12の所定の受光領域paに結像させる。所定の受光領域paは撮像素子12の受光領域raの一部又は全部である。第1の光は、光学系11単体の画角内に位置する物点が放射する光であってよい。所定の受光領域paは、例えば、中心が光学系11の光軸oxと交差する三次元空間上の仮想の平面又は曲面であってよい。以後、光学系11単体の画角、換言すると光学素子13を含まない構成における光学系11の画角を、直接画角と呼んで説明することがある。光学系11は、位置の異なる物点から放射する光束を、単体で、換言すると光学素子13無しで、異なる像点に結像させる光学部材によって構成される。光学系11を構成する光学部材は、例えば、レンズ、ミラー、絞りなどである。
【0019】
光学系11は、像側テレセントリックでなくてよい。換言すると、光学系11を通過する任意の光束の主光線の光軸oxに対する角度は0°より大きくてよい。又は、光学系11は像側テレセントリックであってよい。
【0020】
光学素子13は、光学系11に入射する第2の光を、所定の受光領域paに導く。第2の光は、光学系11の光軸oxと光学系11に入射する主光線とのなす角度が第1の光と異なる。第2の光は、光学系11の画角外、換言すると直接画角の外に位置する物点が放射する光であってよい。したがって、第2の光の主光線と光軸oxとのなす角度は、第1の光の主光線と光軸oxとのなす角度より大きくてよい。主光線は、光学系11の開口絞りの中心を通る光線、光学系11の入射瞳の中心を通る光線及び任意の一つの物点から放射され光学系11に入射する光束の中心の光線のうちのいずれかであってよい。さらに、光学素子13は、光学系11を通過した第2の光を所定の受光領域paに結像させてよい。
【0021】
光学素子13は、第2の光を反射して所定の受光領域paに導くミラーであってよい。本実施形態において、光学素子13は、第2の光を所定の受光領域paに第1の光による像と反転した像として導く。光学素子13は、第2の光による反転した像を、第1の光による像に重畳して撮像素子12に撮像させる。光学素子13は、例えば平面ミラー、曲面ミラー、DMD又はフレネルミラーであってよい。
【0022】
ミラーの反射面は、光学系11の光軸oxに平行であってよい。又は、ミラーの反射面は、光軸oxに平行でなくてよい。例えばミラーの反射面は、光学系11側を向く外側傾斜の姿勢となるように、光軸oxに対して傾斜してよい。外側傾斜の姿勢では、ミラーの反射面が光軸oxと平行な構成に比べて、光学装置21全体の画角を広角化し得る。例えばミラーの反射面は、光学系11の結像面側を向く内側傾斜の姿勢となるように、光軸oxに対して傾斜してよい。内側傾斜の姿勢では、ミラーの反射面が光軸oxと平行な構成に比べて、光学装置21全体を小型化し得る。
【0023】
ここで、光学装置21は、光学系11及びミラーである光学素子13の間に、光路長調整用のレンズを配置してよい。光路長調整用のレンズの配置により、ミラーの反射面が光軸oxに平行な構成に比べて光路長が長くなることによる合焦位置のずれが低減され得る。光路長調整用のレンズは、例えばシリンドリカルレンズであってよい。また、光学装置21はプリズムを含んで構成されてよい。第2の光は、ミラーである光学素子13によって反射され、さらにプリズムで反射されることにより、所定の受光領域paに導かれてよい。
【0024】
ミラーは、光学系11の光軸oxから見て、反射面が光学系11の射出瞳の外側に位置するように配置されてよい。又は、ミラーは、光学系11の光軸oxから見て、射出瞳の内側に位置してよい。特に、受光領域raが瞳径より小さい構成においては、ミラーが射出瞳の内側に位置してよい。ミラーは、複数の平面ミラーで構成されてよい。
図3に示すように、反射面が互いに平行な2つの平面ミラーのそれぞれと、光軸oxとの間隔Hが等しくてよい。互い平行な2つの平面ミラー、光学系11及び撮像素子12は、CRA≦tan
-1(H/B)を満たすように設計され、配置されてよい。CRAは、直接画角の2倍の角度における物点(pp)から放射される光束の光学系11による主光線の光軸oxに対する角度である。Bは、光学系11のバックフォーカスである。
【0025】
図4に示すように、撮像素子12の受光領域raには、直接画角内の物点、換言すると第1の光を放射する物点に対応する第1の画像成分im1が光学素子13を介することなく到達する。直接画角内の物点に対応する第1の画像成分im1とは、より具体的には、直接画角内に位置する被写体像に相当する。また、受光領域raには、直接画角外の物点、換言すると第2の光を放射する物点に対応する第2の画像成分im2が光学素子13を介して反転して到達する。直接画角外の物点に対応する第2の画像成分im2とは、より具体的には、直接画角外に位置する被写体像に相当する。
【0026】
撮像素子12は、受光領域ra内に結像する像を撮像する。ここで、直接画角は、光学素子13を介することなく受光領域ra内に結像する物点の範囲に相当する画角であってよい。受光領域raには、光学系11の直接画角内から光学系11に入射する第1の光である光束の少なくとも一部が結像してよい。また、受光領域raには、光学系11の直接画角の外から光学系11に入射し光学素子13を通過する第2の光である光束の少なくとも一部が結像してよい。
【0027】
撮像素子12は、可視光、赤外線又は紫外線などの不可視光による像を撮像可能であってよい。撮像素子12は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサなどである。撮像素子12は、カラーイメージセンサであってよい。撮像素子12は、撮像により受光する画像に相当する画像信号を生成する。
【0028】
撮像素子12において、光学素子13が設けられる側の受光領域raの外縁は、光学系11の光軸oxから見て、光学系11の射出瞳の外縁よりも外側に位置してよい。射出瞳の外縁より外側とは、光学系11の光軸oxを基準として外側であることを意味する。光学系11の光軸oxに沿う方向で見て、受光領域raは矩形であってよい。
【0029】
撮像装置10は、複数の光学系11と、複数の光学素子13と、を備えてよい。上記のように、本開実施形態に係る撮像装置10は、互いに視差を有する複数のカメラを備えるステレオカメラとして構成される。
図2に示すように、1組の光学系11と光学素子13とで
図1の構成を有する光学装置21Rが構成されて、別の1組の光学系11と光学素子13とで
図1の構成を有する光学装置21Lが構成される。また、撮像装置10は複数の撮像素子12を備える。光学装置21R及び光学装置21Lのそれぞれは、それぞれの撮像素子12の所定の受光領域paに、第2の光による反転した像が第1の光による像に重畳するように結像させる。
【0030】
撮像装置10の1つのカメラについて、
図5に示すように、第1の画像成分im1と、ミラーである光学素子13によって反転した第2の画像成分im2とが受光領域raにおいて重畳する。したがって、1つのカメラの撮像素子12は、第1の画像成分im1と、ミラーである光学素子13によって反転した第2の画像成分im2との重畳画像olimを撮像する。ここで、本開実施形態に係る撮像装置10は、ステレオカメラとして構成されるため、同じ時刻に異なる位置から撮像された複数の重畳画像olimを取得することができる。得られる複数の重畳画像olimは、互いに視差を有する複数のカメラで撮影されるため、ほぼ同じ撮像対象を異なる視点から撮影した画像となる。ここで、別の例として、複数の重畳画像olimは異なる時刻に撮像されてよい。この場合に、撮像装置10は複数のカメラを備え、複数のカメラのうち撮影するカメラが時間に応じて切り替えられる構成であってよい。また、撮像装置10は視点を変更可能な1つのカメラを備え、時間に応じて視点を変更しながら撮影する構成であってよい。また、撮像装置10は視点を変更せずに異なる時刻の撮影を行う構成であってよい。
【0031】
コントローラ14は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路又はこれらの組み合わせを含んで構成される。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などの汎用プロセッサ又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などであってよい。コントローラ14は、撮像素子12から取得する画像信号に画像処理を施してよい。
【0032】
コントローラ14は、撮像素子12が出力する第1の光による像と第2の光による像が重畳した重畳画像olimの画像信号から、第1の光による像(第1の画像成分im1)と第2の光による像(第2の画像成分im2)とを分離する。
図6に示すように、コントローラ14は、画像信号に相当する重畳画像olimを、第1の画像成分im1と、第2の画像成分im2とに分離する画像処理を施す。コントローラ14は、例えば独立成分分析、ウェーブレット法、画像分離モデルなどの画像処理方法の適用により、重畳画像olimを分離してよい。画像分離モデルは、例えば、事前に複数の画像を重ねた学習用重畳画像を作成し、学習用重畳画像に対して、複数の画像を正解として機械学習させることにより構築されるモデルである。本実施形態において、コントローラ14は、機械学習によって生成された画像分離モデル(学習済モデル)を用いて、第1の光による像と第2の光による像とを分離する。ここで、画像分離モデルは、コントローラ14が重畳画像olimを分離する処理を実行する前に生成されて、コントローラ14がアクセス可能な記憶装置(例えばメモリ)に記憶されていればよい。画像分離モデルは、例えばコントローラ14によって生成されてよいし、コントローラ14と異なる情報処理装置(コンピュータ)によって生成されてよい。また、機械学習の手法は例えばディープラーニングであるが、特定の手法に限定されない。
【0033】
本実施形態において、コントローラ14は、重畳画像olimにおける任意の被写体像の移動方向が第1の光による像と第2の光による像とで異なることに基づいて、第1の光による像と第2の光による像とを分離する。コントローラ14は、任意の被写体像の移動方向の検出に、複数の重畳画像olimを用いる。本実施形態において、コントローラ14は、同じ時刻に撮像された右眼(右側のカメラ)の重畳画像olim_R及び左眼(左側のカメラ)の重畳画像olim_Lを用いる。ただし、上記のように、コントローラ14は、異なる時刻に撮像された複数の重畳画像を用いることも可能である。例えば撮像装置10が車両に搭載されて前方車両及び歩行者などの対象物までの測距に用いられる場合に、対象物の位置の違いが、対象物自身の移動によるものか、カメラの視点変更によるものかの区別が難しいことがある。そのため、撮像装置10が車両に搭載されるような場合に、検出精度を高めるため、撮像装置10がステレオカメラとして構成されて、コントローラ14は同じ時刻に撮像された複数の重畳画像olimを用いることが好ましい。ただし、撮像装置10を用いる測距の対象物が建物などの自ら移動しない物である場合に、コントローラ14は、同じ時刻に撮像された複数の重畳画像olimに代えて異なる時刻に撮像された複数の重畳画像olimを用いてよい。
【0034】
図7は、第1の光による像と第2の光による像の移動方向の違いを説明するための図である。右眼の重畳画像olim_Rに含まれる3つの被写体ob1~ob3は、左眼の重畳画像olim_Lにも含まれている。右眼の重畳画像olim_Rにおける3つの被写体ob1~ob3は実線で示されている。また、左眼の重畳画像olim_Lにおける3つの被写体ob1~ob3は破線で示されている。被写体ob1及びob2は、第1の光による像であって、左眼の重畳画像olim_Lにおける位置が右眼の重畳画像olim_Rより右側にある。すなわち、右眼の重畳画像olim_Rにおける位置から左眼の重畳画像olim_Lにおける位置への変化を移動方向とすると、移動方向は右方向である。これに対して、被写体ob3は、第2の光による像であって、第1の光による像に対して反転した像となっている。したがって、被写体ob3は、左眼の重畳画像olim_Lにおける位置が右眼の重畳画像olim_Rより左側にあり、移動方向が左方向である。このように、第2の光による像が第1の光による像に対して反転した像となっていることから、重畳画像olimにおける任意の被写体像の移動方向は反対になる。したがって、コントローラ14は、重畳画像olimにおける任意の被写体像を、複数の重畳画像olimにおける位置の比較によって特定される移動方向の向きに応じて、第1の光による像か第2の光による像かを判定することができる。ここで、移動方向の向きを検出する被写体像は、例えば物体の特徴点などであってよいし、重畳画像olimを区画した所定サイズのブロック単位又は画素単位であってよい。
【0035】
例えばコントローラ14は、任意の被写体像の移動方向の検出に、オプティカルフローを用いてよい。オプティカルフローでは一般に連続するフレームの画像が用いられるが、コントローラ14は、右眼の重畳画像olim_Rと左眼の重畳画像olim_Lとを連続するフレームの画像と扱って処理を実行してよい。コントローラ14は、例えばLucas-Kanade法などの任意の方法により、重畳画像olimの各画素におけるオプティカルフローを算出する。コントローラ14は、算出した各画素のオプティカルフローに基づいて、各画素についての動きベクトルが第1の方向であれば第1の光による像と判定し、第2の方向であれば第2の光による像と判定できる。ここで、第2の方向は、第1の方向と反対の方向である。また、コントローラ14は、重畳画像olimの各画素におけるオプティカルフローに基づいて、動きベクトルが同じであって互いに近接する画素を同一の被写体に属する画素と判定してよい。また、例えば画像分離モデルの生成においてオプティカルフローの情報も含めて機械学習させることによって、被写体像の移動方向に応じて第1の光による像と第2の光による像とを高精度に分離する画像分離モデルを構築することが可能である。
【0036】
コントローラ14は、分離した第1の画像成分im1及び第2の画像成分im2を結合させることにより、復元画像rcimを生成してよい(
図6参照)。コントローラ14は、復元画像rcimを用いて、撮像装置10の周辺において撮像された被写体の測距を行ってよい。コントローラ14は、例えば、DFD(Depth From Defocus)に基づいて、復元画像rcimを用いて測距を行う。コントローラ14は、運動視差法(SLAM:Simultaneous Localization and Mapping、Motion Stereo)、足元測距法などに基づいて、復元画像rcimを用いた測距を行ってよい。足元測距法は、被写体像の下端が地面に位置することを前提として画像座標に基づいて3次元座標を算出する方法である。
【0037】
コントローラ14は、算出した距離に基づいて距離画像を生成してよい。距離画像は、各画素の画素値が距離に対応した画像である。コントローラ14は、距離画像を外部機器に出力してよい。
【0038】
図8は、本実施形態においてコントローラ14が実行する測距処理のフローチャートである。測距処理は、撮像素子12から画像信号を取得するたびに開始される。
【0039】
ステップS100において、コントローラ14は、取得した画像信号に相当する重畳画像olimから第2の画像成分im2を分離する。分離後、プロセスはステップS101に進む。
【0040】
ステップS101では、コントローラ14は、重畳画像olimからステップS100において分離した第2の画像成分im2を減算することにより、第1の画像成分im1を生成する。第1の画像成分im1の生成後、プロセスはステップS102に進む。
【0041】
ステップS102では、コントローラ14は、ステップS101において分離した第2の画像成分im2と、ステップS101において生成した第1の画像成分im1とを結合させることにより復元画像rcimを生成する。復元画像rcimの生成後、プロセスはステップS103に進む。
【0042】
ステップS103では、コントローラ14は、ステップS102において生成した復元画像rcimを用いて、復元画像rcimに写る各被写体に対して測距を行う。測距後、プロセスはステップS104に進む。
【0043】
ステップS104では、コントローラ14は、ステップS103において算出した距離と当該距離に対応する復元画像rcimの位置とに基づいて、距離画像を生成する。また、コントローラ14は距離画像を外部機器に出力する。距離画像の生成後、測距処理は終了する。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る撮像装置10は、上記の構成によって、広角でありながら長焦点光学系の解像度を有する画像を得ることができる。
【0045】
また、撮像装置10を用いた測距処理を説明したが、本開示の実施形態としては、装置を実施するための方法又はプログラムの他、プログラムが記録された記憶媒体としての実施態様をとることも可能である。記憶媒体は、例えば光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、ハードディスク又はメモリカードなどである。
【0046】
また、プログラムの実装形態としては、コンパイラによってコンパイルされるオブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコードなどのアプリケーションプログラムに限定されない。プログラムは、オペレーティングシステムに組み込まれるプログラムモジュールなどの形態であってよい。さらに、プログラムは、制御基板上のCPUにおいてのみ全ての処理が実施されるように構成されてもされなくてよい。プログラムは、必要に応じて基板に付加された拡張ボード又は拡張ユニットに実装された別の処理ユニットによってその一部又は全部が実施されるように構成されてよい。
【0047】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部などに含まれる機能は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部などを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0048】
本開示に記載された構成要件の全て、及び/又は、開示された全ての方法、又は、処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。また、本開示に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的又は類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一、又は、均等となる特徴の一例にすぎない。
【0049】
さらに、本開示に係る実施形態は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本開示に係る実施形態は、本開示に記載された全ての新規な特徴、又は、それらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法、又は、処理のステップ、又は、それらの組合せに拡張することができる。
【0050】
本開示において「第1」及び「第2」などの記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」などの記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」などの識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【符号の説明】
【0051】
10 撮像装置
11 光学系
12 撮像素子
13 光学素子
14 コントローラ
21、21L、21R 光学装置
im1 第1の画像成分
im2 第2の画像成分
olim、olim_L、olim_R 重畳画像
ox 光軸
pa 所定の受光領域
ra 受光領域
rcim 復元画像