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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155178
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】建築物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/34 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
E04B1/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069642
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 淳平
(72)【発明者】
【氏名】大住 和正
(72)【発明者】
【氏名】中島 俊介
(57)【要約】
【課題】斜線制限ないし天空率の制限をクリアしつつ実質的な容積及び床面積を確保し易い建築物を提供することである。
【解決手段】複数の階層を有する建築物1であって、複数の階層に亘って設けられた上向きに傾斜する外壁4aと、外壁4aの内側に配置され、外壁4aと平行となるように鉛直方向に対して傾斜する柱10と、を有することを特徴とする建築物1。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階層を有する建築物であって、
複数の前記階層に亘って設けられた上向きに傾斜する外壁と、
前記外壁の内側に配置され、前記外壁と平行となるように鉛直方向に対して傾斜する柱と、を有することを特徴とする建築物。
【請求項2】
前記外壁の側からの正面視において、前記柱が上下方向に対して傾斜している、請求項1に記載の建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオフィスビル、商業ビルなどの複数の階層を有する建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビル、商業ビルなどの建築物は、複数の階層を有する多層階ビルの形態とされるのが一般的である。
【0003】
このような複数の階層を有する建築物は、用途地域によって、所定の高さを超える場合に、建築基準法上の斜線制限ないし天空率の制限を受けることになる。
【0004】
従来、複数の階層を有する建築物として、建築基準法上の斜線制限ないし天空率の制限をクリアするために、下層階の部分に対して上層階の部分を道路に対して段差状にセットバックさせた構造のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-95135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の建築物のように、下層階の部分に対して上層階の部分を段差状にセットバックさせた構造とした場合、上層階の容積及び床面積がセットバックした分だけ狭くなり、建物全体としての容積及び床面積を確保し難くなる、という問題が生じることになる。
【0007】
このような問題に対し、上層階の外壁を上向きに傾斜させた構成とすることで上層階の容積及び床面積を確保する構造が考えられる。
【0008】
しかし、この構造においても、建築物の躯体を構成する柱が鉛直方向に延びる姿勢で外壁の内側に配置されるため、上向きに傾斜する外壁と鉛直方向に延びる柱との間のスペースが使用し難く、実質的な容積ないし床面積を確保し難い、という問題があった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、斜線制限ないし天空率の制限をクリアしつつ実質的な容積及び床面積を確保し易い建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の建築物は、複数の階層を有する建築物であって、複数の前記階層に亘って設けられた上向きに傾斜する外壁と、前記外壁の内側に配置され、前記外壁と平行となるように鉛直方向に対して傾斜する柱と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の建築物は、上記構成において、前記外壁の側からの正面視において、前記柱が上下方向に対して傾斜しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、斜線制限ないし天空率の制限をクリアしつつ実質的な容積及び床面積を確保し易い建築物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る建築物の正面図である。
図2図1に示す建築物の側面図である。
図3図1に示す建築物の、範囲Aの部分の拡大図である。
図4図1に示す建築物の、上層階の部分の断面図である。
図5図1に示す建築物の、上層階の部分の躯体構造を示す説明図である。
図6】比較例の建築物の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る建築物について詳細に例示説明する。
【0015】
図1図2に示すように、本実施形態に係る建築物1は、例えばオフィスビル、商業ビルなどとして利用される、複数(多数)の階層を有するビルディングである。
【0016】
建築物1の1階(地上階)から3階までの下層階の部分における、正面(図1に示す側の面)の外壁2a、側面(図2に示す側の面)の外壁2b及び正面と側面との間の角面の外壁2cは、それぞれ地面3に垂直な平面状である。これらの正面の外壁2a、側面の外壁2b及び角面の外壁2cは、それぞれ道路に面する壁である。
【0017】
これに対し、建築物1の4階よりも上階の上層階の部分に複数の階層に亘って設けられた正面の外壁4a、側面の外壁4b及び角面の外壁4cは、それぞれ平面状であるとともに、建築基準法上の斜線制限ないし天空率の制限をクリアするために、それぞれ地面3に垂直な方向(鉛直方向)に対して一定の角度で上向きとなるように傾斜している。
【0018】
図1に示すように、建築物1の正面の外壁4aは、外壁4aの側からの正面視(図1に示す正面視)において、それぞれ鉛直方向に対して傾斜して延びる窓部5及び外壁パネル6を備えた構成とすることができる。より具体的には、外壁4aは、外壁4aの側からの正面視において、それぞれ外壁4aの下端から上端にまで鉛直方向に対して傾斜して延びる複数本のストライプ状の窓部5及び外壁パネル6が交互に横並びに配置された構成とすることができる。
【0019】
図3に示すように、それぞれの窓部5は、縦長で平行四辺形の板状の窓5aが各階層において上下に2枚ずつ並べて配置された構成を有している。なお、窓部5は、縦長で平行四辺形の窓5aが各階層において1枚ずつ配置された構成であってもよく、縦長で平行四辺形の窓5aが各階層において上下に3枚以上並べて配置された構成であってもよく、縦長で平行四辺形の1枚の窓5aが複数の階層に跨って配置された構成であってもよい。
【0020】
それぞれの外壁パネル6は、縦長で平行四辺形の複数のパネルユニット6aがスリット7を介して上下に並べて配置された構成を有している。それぞれのパネルユニット6aは各階層に対応した上下方向長さを有し、各階層の2つの窓5aに隣接して配置されている。なお、パネルユニット6aは、複数の階層に跨る上下方向長さを有する構成であってもよく、外壁パネル6全体が1つのパネルユニット6aで構成されてもよい。
【0021】
なお、外壁4aは、例えば外壁パネル6が設けられずに外壁4aの全体に窓部5が設けられた構成、窓部5が設けられずに外壁4aの全体に外壁パネル6が設けられた構成など、種々の構成とすることができる。また、外壁4aは、外壁4aの側からの正面視において、窓部5及び外壁パネル6が上下方向に平行に延びる構成とすることもできる。
【0022】
図4に示すように、上向きに傾斜する外壁4aの室内の側を向く内側面8(窓部5ないし外壁4aを構成する壁体の室内の側を向く面)は、外壁4aの外側を向く外側面9(窓部5及び外壁パネル6の外側を向く面)と同一角度で傾斜している。
【0023】
図4に示すように、建築物1は、上向きに傾斜する外壁4aの内側に配置された柱10を有している。柱10は、外壁4aの内側面8の内側に外壁4aに沿って配置されており、外壁4aと平行となるように鉛直方向に対して外壁4aと同一角度で傾斜している。より具体的には、柱10は、外壁4aに垂直且つ鉛直方向に平行な縦断面(図4に示す断面)において、外壁4aと平行となるように鉛直方向に対して外壁4aと同一角度で傾斜している。
【0024】
図5に示すように、柱10は、建築物1の4階よりも上階の上層階の部分の構造体(躯体)を構成するものである。柱10は、例えばコンクリート充填鋼管で構成されたものとすることができるが、鉄筋コンクリートなどの他の構成であってもよい。柱10は、建築物1の1階(地上階)から3階までの下層階の部分を構成する鉛直な下側柱11の上端に斜めに接合されている。また、柱10には、建築物1の4階よりも上階の上層階の床13ないし天井14を支持する複数の梁12が接合されている。
【0025】
上記構成の本実施形態の建築物1では、上層階の部分の外壁4aを上向きに傾斜させた構成としたので、建築基準法上の斜線制限ないし天空率の制限をクリアすることができる。
【0026】
また、本実施形態の建築物1では、外壁4aは、内側面8と外側面9とが互いに平行に傾斜した構成であるので、図6に示す比較例の建築物20のように、鉛直方向に延びる柱21を有し、柱21と平行な外壁4aを階層毎に段差状にセットバックさせた構造とした場合に比べて、各階層の床13を、天井14に対してより建築物1の外方に向けて張り出した構成として、その分、各階の容積及び床面積を増加させることができる。
【0027】
さらに、本実施形態の建築物1では、上記構成に加えて、外壁4aの内側に配置されて上層階の部分を構成する柱10を、外壁4aと平行となるように鉛直方向に対して傾斜させた構成としたので、外壁4aの内側面8と柱10との間に三角形ないし台形状のデッドスペースが生じないようにすることができる。これにより、建築物1の室内の柱10の周りのスペースを有効に使用することができるようにして、建築物1の実質的な容積及び床面積を確保することができる。
【0028】
このように、本実施形態の建築物1によれば、複数の階層に亘って設けられた上向きに傾斜する外壁4aと、外壁4aの内側に配置され、外壁4aと平行となるように鉛直方向に対して傾斜する柱10と、を有することで、斜線制限ないし天空率の制限をクリアしつつ実質的な容積及び床面積を確保し易い建築物を提供することができる。
【0029】
また、本実施形態の建築物1によれば、上層階の外壁4aを上向きに傾斜させて斜線制限ないし天空率の制限をクリアし、実質的な容積及び床面積を確保しつつ、さらに柱10を室内側に配置して建築物1の外部から視認されない構成とすることができるので、建築物1の外観の意匠性ないし美観を高めることができる。
【0030】
図3に破線で示すように、本実施形態では、窓部5ないし外壁パネル6が外壁4aの側からの正面視において鉛直方向に対して傾斜して延びた構成とされているのに対応して、柱10も、外壁4aの側からの正面視において鉛直方向すなわち上下方向に対して傾斜した構成とされている。
【0031】
このような構成により、上層階の外壁4aを上向きに傾斜させて斜線制限ないし天空率の制限をクリアし、実質的な容積及び床面積を確保しつつ、さらに外壁4aの側からの正面視において窓部5及び外壁パネル6が鉛直方向に対して傾斜して延びる構成として、建築物1の外観の意匠性ないし美観をさらに高めることができる。
【0032】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0033】
例えば、本実施形態では、建築物1の4階よりも上の全ての階を上層階として、これら上層階における外壁4a、4b及び4cを、それぞれ上向きに傾斜させた構造としているが、建築基準法上の斜線制限ないし天空率の制限の要求をクリアすることができれば、例えば4階以外の所望の階よりも上の階を上層階とし、これら上層階における外壁4a、4b及び4cを、それぞれ上向きに傾斜させた構造としてもよく、所望の階と最上階との間の途中の複数階の外壁4aのみを上向きに傾斜させた構成としてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、建築物1の正面、側面及び角面の全ての外壁4a、4b、4cを上向きに傾斜させて構造としているが、建築基準法上の斜線制限ないし天空率の制限が要求される外壁のみを上向きに傾斜した構造とすればよい。
【0035】
さらに、建築物1の正面ないし側面の何れか乃至全ての外壁を、複数の階層の全てにおいて上向きに傾斜させた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 建築物
2a 外壁
2b 外壁
2c 外壁
3 地面
4a 外壁
4b 外壁
4c 外壁
5 窓部
5a 窓
6 外壁パネル
6a パネルユニット
8 内側面
9 外側面
10 柱
11 下側柱
12 梁
13 床
14 天井
20 建築物
21 柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6