(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155183
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】柱接合部分の超音波探傷方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
G01N29/265
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069647
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】柴田 淳平
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB07
2G047BA03
2G047DB03
2G047DB05
2G047EA10
2G047EA12
(57)【要約】
【課題】鉛直方向に対して傾斜した上側柱とダイヤフラムとの溶接部分を容易且つ正確に超音波探傷することが可能な柱接合部分の超音波探傷方法を提供することである。
【解決手段】鉛直方向に延びる筒状の下側柱21の上端21aに、鉛直方向に対して傾斜して延びる筒状の上側柱22の下端22aが水平に配置されたダイヤフラム30を介して溶接により接合された柱20における、柱接合部分の超音波探傷方法であって、ダイヤフラム30を下側柱21の上端21aに接合する前、ダイヤフラム30の表面30bに上側柱22の下端22aを溶接により接合した状態で、ダイヤフラム30の裏面30cの側から超音波探傷装置50の探触子51により上側柱22の下端22aとダイヤフラム30との溶接部分40を超音波探傷することを特徴とする柱接合部分の超音波探傷方法。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる筒状の下側柱の上端に、鉛直方向に対して傾斜して延びる筒状の上側柱の下端が水平に配置されたダイヤフラムを介して溶接により接合された柱における、柱接合部分の超音波探傷方法であって、
前記ダイヤフラムを前記下側柱の上端に接合する前、前記ダイヤフラムの表面に前記上側柱の下端を溶接により接合した状態で、前記ダイヤフラムの裏面の側から超音波探傷装置の探触子により前記上側柱の下端と前記ダイヤフラムとの溶接部分を超音波探傷することを特徴とする柱接合部分の超音波探傷方法。
【請求項2】
前記ダイヤフラムの裏面の側から前記探触子により前記上側柱の下端と前記ダイヤフラムとの溶接部分を超音波探傷した後、前記ダイヤフラムを前記下側柱の上端に溶接により接合した状態で、前記下側柱の外周面の側から前記探触子により前記下側柱の上端と前記ダイヤフラムとの溶接部分を超音波探傷する、請求項1に記載の柱接合部分の超音波探傷方法。
【請求項3】
前記下側柱が、柱本体部と前記柱本体部の上端に接合された仕口部材とを有し、
前記ダイヤフラムが前記仕口部材の上端に接合されている、請求項1または2に記載の柱接合部分の超音波探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の躯体を構成する柱における柱接合部分の超音波探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物として、例えばオフィスビル、商業ビルなどの、複数の階層を有する多層階ビルの形態とされたものが知られている。
【0003】
このような建築物は、その構造ないし躯体が、複数本の柱と、柱に接合されて両端支持された梁とを有する構成とされるのが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような建築物では、外観の形状ないし構造的な理由から、構造ないし躯体を構成する一部の柱を途中から斜めにするために、当該柱を、鉛直方向に延びる筒状の下側柱の上端に、鉛直方向に対して傾斜して延びる筒状の上側柱の下端を水平に配置されたダイヤフラムを介して溶接により接合した構成とすることが考えられる。
【0006】
一方、下側柱と上側柱とがダイヤフラムを介して溶接により接合された構成の柱において、当該接合部分は躯体の構造耐力上、重要な部分であるため、下側柱とダイヤフラムとの溶接部分及び上側柱とダイヤフラムとの溶接部分について超音波探傷による非破壊評価が求められる。この場合、柱は、下側柱の上端にダイヤフラムが接合された後、当該ダイヤフラムに上側柱が溶接により接合されて構築されるので、上側柱とダイヤフラムとの溶接部分の超音波探傷は、上側柱の外周面の側に超音波探傷装置の探触子を当て、探触子から超音波を溶接部分に向けて斜めに伝播させて行われるのが一般的である。
【0007】
しかし、上側柱が鉛直方向に対して傾斜した構成の柱においては、上側柱の下端はダイヤフラムに対して斜めに接合されているため、上側柱の下端の周方向位置によって溶接部分の上側柱の内部における形状ないし角度が相違するので、上側柱の外周面の側からでは探傷子によって溶接部分の探傷を正確に行うことが困難である、という問題点があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉛直方向に対して傾斜した上側柱とダイヤフラムとの溶接部分を容易且つ正確に超音波探傷することが可能な柱接合部分の超音波探傷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の柱接合部分の超音波探傷方法は、鉛直方向に延びる筒状の下側柱の上端に、鉛直方向に対して傾斜して延びる筒状の上側柱の下端が水平に配置されたダイヤフラムを介して溶接により接合された柱における、柱接合部分の超音波探傷方法であって、前記ダイヤフラムを前記下側柱の上端に接合する前、前記ダイヤフラムの表面に前記上側柱の下端を溶接により接合した状態で、前記ダイヤフラムの裏面の側から超音波探傷装置の探触子により前記上側柱の下端と前記ダイヤフラムとの溶接部分を超音波探傷することを特徴とする。
【0010】
本発明の柱接合部分の超音波探傷方法は、上記構成において、前記ダイヤフラムの裏面の側から前記探触子により前記上側柱の下端と前記ダイヤフラムとの溶接部分を超音波探傷した後、前記ダイヤフラムを前記下側柱の上端に溶接により接合した状態で、前記下側柱の外周面の側から前記探触子により前記下側柱の上端と前記ダイヤフラムとの溶接部分を超音波探傷するのが好ましい。
【0011】
本発明の柱接合部分の超音波探傷方法は、上記構成において、前記下側柱が、柱本体部と前記柱本体部の上端に接合された仕口部材とを有し、前記ダイヤフラムが前記仕口部材の上端に接合されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鉛直方向に対して傾斜した上側柱とダイヤフラムとの溶接部分を容易且つ正確に超音波探傷することが可能な柱接合部分の超音波探傷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る柱接合部分の超音波探傷方法が適用された柱を有する建築物の正面図である。
【
図3】
図1に示す建築物の、範囲Aの部分の拡大図である。
【
図4】
図1に示す建築物の、躯体の構造を示す説明図である。
【
図5】
図1に示す建築物の、柱接合部分の断面図である。
【
図8】上側柱の下端とダイヤフラムとの溶接部分を超音波探傷している様子を示す正面図である。
【
図9】上側柱の下端とダイヤフラムとの溶接部分を超音波探傷している様子を示す底面図である。
【
図10】上側柱の下端とダイヤフラムとの溶接部分を超音波探傷している様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る柱接合部分の超音波探傷方法について詳細に例示説明する。
【0015】
図1、
図2に示す建築物1は、本発明の一実施形態に係る柱接合部分の超音波探傷方法が適用された柱を有する建築物の一例である。この建築物1は、例えばオフィスビル、商業ビルなどとして利用される、複数(多数)の階層を有するビルディングである。
【0016】
建築物1の1階(地上階)から3階までの下層階の部分における、正面(
図1に示す側の面)の外壁2a、側面(
図2に示す側の面)の外壁2b及び正面と側面との間の角面の外壁2cは、それぞれ地面3に垂直な平面状である。これらの正面の外壁2a、側面の外壁2b及び角面の外壁2cは、それぞれ道路に面する壁である。
【0017】
これに対し、建築物1の4階よりも上階の上層階の部分に複数の階層に亘って設けられた正面の外壁4a、側面の外壁4b及び角面の外壁4cは、それぞれ平面状であるとともに、建築基準法上の斜線制限ないし天空率の制限をクリアするために、それぞれ地面3に垂直な方向(鉛直方向)に対して一定の角度で上向きとなるように傾斜している。
【0018】
図1に示すように、建築物1の正面の外壁4aは、外壁4aの側からの正面視(
図1に示す正面視)において、それぞれ鉛直方向に対して傾斜して延びる窓部5及び外壁パネル6を備えた構成とすることができる。より具体的には、外壁4aは、外壁4aの側からの正面視において、それぞれ外壁4aの下端から上端にまで鉛直方向に対して傾斜して延びる複数本のストライプ状の窓部5及び外壁パネル6が交互に横並びに配置された構成とすることができる。
【0019】
図3に示すように、それぞれの窓部5は、縦長で平行四辺形の板状の窓5aが各階層において上下に2枚ずつ並べて配置された構成を有している。なお、窓部5は、縦長で平行四辺形の窓5aが各階層において1枚ずつ配置された構成であってもよく、縦長で平行四辺形の窓5aが各階層において上下に3枚以上並べて配置された構成であってもよく、縦長で平行四辺形の1枚の窓5aが複数の階層に跨って配置された構成であってもよい。
【0020】
それぞれの外壁パネル6は、縦長で平行四辺形の複数のパネルユニット6aがスリット7を介して上下に並べて配置された構成を有している。それぞれのパネルユニット6aは各階層に対応した上下方向長さを有し、各階層の2つの窓5aに隣接して配置されている。なお、パネルユニット6aは、複数の階層に跨る上下方向長さを有する構成であってもよく、外壁パネル6全体が1つのパネルユニット6aで構成されてもよい。
【0021】
外壁4aは、例えば外壁パネル6が設けられずに外壁4aの全体に窓部5が設けられた構成、窓部5が設けられずに外壁4aの全体に外壁パネル6が設けられた構成など、種々の構成とすることができる。また、外壁4aは、外壁4aの側からの正面視において、窓部5及び外壁パネル6が上下方向に平行に延びる構成とすることもできる。
【0022】
図4に示すように、建築物1の躯体(構造)10は、複数本の柱11と、それぞれ対応する柱11に接合されて柱11に両端支持された複数本の梁12とを有している。なお、便宜上、
図4においては、一部の柱及び梁にのみ符号を付している。
【0023】
それぞれの柱11には、各階層において床部分ないし天井部分を構成するように平面視で格子状に配置された複数本の梁12が上下方向に各階層分の間隔を空けて接合されている。また、複数本の梁12は、それぞれ各階層において水平方向に沿って延びて配置され、その両端において対応する柱11に接合されている。
【0024】
建築物1は、躯体10を構成する柱11として、下方から上方に向けて鉛直に延び、途中から鉛直方向に対して傾斜した斜め方向に延びる柱20を有している。
図5に示すように、この柱20は、下側柱21と上側柱22とを有しており、下側柱21の上端21aに上側柱22の下端22aがダイヤフラム30を介して溶接により接合された構成となっている。
【0025】
下側柱21は、鉛直方向すなわち地面3に垂直な方向に延びるとともに上端21aが水平な円筒状となっている。下側柱21の上端21aは、鉛直姿勢の下側柱21の軸線に垂直な面に沿って水平に配置されているので、
図6に示すように、平面視で円形となっている。
【0026】
本実施形態では、下側柱21は、柱本体部21Aと、柱本体部21Aの上端に接合された仕口部材21Bとを有する構成となっている。柱本体部21Aと仕口部材21Bとの接合は、例えば溶接によって行うことができる。柱本体部21Aは、鉛直方向すなわち地面3に垂直な方向に延びるとともに上端が水平な円筒状となっている。仕口部材21Bは、柱本体部21Aと同軸に鉛直方向に延びるとともに上端及び下端が水平な円筒状となっている。仕口部材21Bは、その下端において柱本体部21Aの上端にダイヤフラム31を介して接合されて下側柱21の上端側部分を構成している。したがって、下側柱21の上端21aは仕口部材21Bの上端により構成されている。仕口部材21Bは、その上端21aが全周に亘ってダイヤフラム30の裏面に溶接されることでダイヤフラム30に接合されている。
【0027】
ダイヤフラム30、31は、それぞれ鋼板により矩形の板状に形成されており、表面及び裏面が上下方向を向くように水平に配置されている。ダイヤフラム30、31の中心には、それぞれ下側柱21及び上側柱22の内部にコンクリートを充填する際に当該コンクリートを通す円形の孔30a、31aが設けられている。仕口部材21Bの上端面と下端面とにダイヤフラム30、31が設けられることで、仕口部材21Bの強度をダイヤフラム30、31により高めて、梁12が接合される仕口部材21Bの変形を防止することができる。
【0028】
本実施形態では、下側柱21(柱本体部21A、仕口部材21B)は円筒状であるが、例えば角筒状など、筒状であれば他の形状であってもよい。
【0029】
上側柱22は、鉛直方向すなわち地面3に垂直な方向に対して傾斜して延びるとともに下端22aが水平な円筒状となっている。より具体的には、
図1、
図4から解るように、上側柱22は、
図1に示す正面側で外壁2a及び外壁4aの右端に配置され、
図3に破線で示すように、正面視において鉛直方向に対して傾斜するとともに、
図2に示す側面視においても外壁4aと平行となるように鉛直方向に対して外壁4aと同一角度で傾斜している。すなわち、上側柱22は、正面視及び側面視のそれぞれの方向から見て鉛直方向に対して傾斜する所謂二転びの傾斜姿勢となっている。上側柱22の下端22aは、鉛直方向に対して傾斜する上側柱22の軸線に垂直な面に対して傾斜した面に沿って配置されているので、
図6に示すように、平面視で楕円形となっている。上側柱22は、その下端22aが全周に亘ってダイヤフラム30の表面に溶接されることでダイヤフラム30に接合されている。
【0030】
本実施形態では、上側柱22は円筒状であるが、例えば角筒状など、筒状であれば他の形状であってもよい。また、上側柱22は、軸方向に複数に分割されたものを継手23で接合した構成であってもよい。
【0031】
下側柱21及び上側柱22は、その内部にコンクリートCが充填されてコンクリート充填鋼管に構成されたものとすることができる。下側柱21及び上側柱22を、それぞれコンクリート充填鋼管に構成されたものとすることで、筒状に形成された下側柱21及び上側柱22を、より径の細いものとしつつ所望の強度、剛性、変形性能を有するものとすることができる。
【0032】
なお、下側柱21及び上側柱22は、その内部にコンクリートCが充填されない構成としてもよい。
【0033】
上記構成の柱20は、以下の手順で構築される。
【0034】
まず、
図7に示すように、下側柱21が鉛直姿勢で地面3に設けた基礎部分(不図示)に設置される。下側柱21は、柱本体部21Aの上端に仕口部材21Bを接合した状態で基礎部分に設置するようにしてもよく、柱本体部21Aのみを基礎部分に設置した後、柱本体部21Aの上端に仕口部材21Bを接合するようにしてもよい。何れの場合においても、この状態において下側柱21の上端21aにはダイヤフラム30は接合されていない。
【0035】
一方、上側柱22は、その下端22aに予めダイヤフラム30が溶接により接合される。符号40は、上側柱22の下端22aとダイヤフラム30との間に上側柱22の全周に亘って設けられた溶接部分である。
【0036】
上側柱22の下端22aへのダイヤフラム30の溶接による接合作業は、建築物1の建設現場で行ってもよいが、上側柱22を製造する工場で行ってもよい。工場において上側柱22の下端22aにダイヤフラム30を溶接することで、ダイヤフラム30をより精度よく上側柱22に接合することができる。また、上側柱22を軸方向に複数に分割されたものを継手23で接合した構成とした場合には、工場において上側柱22の下端22aにダイヤフラム30を溶接によって接合した場合であっても、接合作業後の上側柱22をトラック等の車両により建築物1の建設現場にまで容易に運搬することができる。
【0037】
次に、ダイヤフラム30が接合された上側柱22を基礎部分に設置された下側柱21の上方に配置し、上側柱22の下端に接合されているダイヤフラム30を下側柱21の上端21aに溶接により接合する。これにより、鉛直方向に延びる筒状の下側柱21の上端21aに、鉛直方向に対して傾斜して延びる筒状の上側柱22の下端22aが水平に配置されたダイヤフラム30を介して溶接により接合された柱20が構築される。
【0038】
ここで、上記構成の柱20を有する建築物1では、柱20の下側柱21と上側柱22とのダイヤフラム30を介した溶接による接合部分は、躯体10の構造耐力上、重要な部分であるため、当該溶接部分について超音波探傷による非破壊評価が求められる。
【0039】
しかし、柱20が完成した状態で超音波探傷を行うと、上側柱22の下端22aはダイヤフラム30に対して斜めに接合されているため、上側柱22の下端22aの周方向位置によって溶接部分40の上側柱22の内部における形状ないし角度が相違し、上側柱22の外周面の側からでは超音波探傷によって溶接部分40の探傷を正確に行うことが困難である。
【0040】
そこで、本実施形態に係る柱接合部分の超音波探傷方法では、
図7に示すように、ダイヤフラム30を下側柱21の上端21aに接合する前(上側柱22を下側柱21に接合する前)、ダイヤフラム30の表面30bに上側柱22の下端22aを溶接により接合した状態で、
図8、
図9、
図10に示すように、ダイヤフラム30の裏面30cの側から超音波探傷装置50の探触子51により上側柱22の下端22aとダイヤフラム30との溶接部分40を超音波探傷するようにしている。
【0041】
超音波探傷装置50としては、例えば、電気パルスなどの超音波信号を発信、受信する探触子51を有し、探触子51から発信されて被探傷物の内部に伝搬された超音波信号の探触子51で受信された反射波の連続性、反射強度、伝播時間などに基づいて、被探傷物の内部の所望の部分の形状あるいは欠損等の傷の有無を非破壊評価することができるものを用いることができる。
【0042】
より具体的には、本実施形態に係る柱接合部分の超音波探傷方法における超音波探傷は、探触子51を、ダイヤフラム30の裏面30cに当接させた状態で、上側柱22の下端22aのダイヤフラム30への溶接部分40に沿った楕円形の経路で移動させながら行うことができる。
【0043】
このとき、
図8に示すように、探触子51から発信される超音波信号は、探触子51からダイヤフラム30の内部において溶接部分40に当たって反射するので、上側柱22の下端22aがダイヤフラム30に対して斜めに接合されることで上側柱22の周方向位置によって溶接部分40の形状ないし角度が相違することの影響を受けることを抑制して、超音波探傷装置50の探触子51によって溶接部分40を容易且つ正確に超音波探傷することができる。
【0044】
特に、探触子51を溶接部分40に沿った楕円形の経路で移動させながら超音波探傷を行うことで、探触子51から発信される超音波信号が、探触子51からダイヤフラム30の内部に垂直に発信されるとともに溶接部分40に当たった反射波も探触子51に対して垂直に入射されるようにして、すなわち、探触子51から発信される超音波信号が、探触子51と被探傷物である溶接部分40との間で探触子51に対して垂直に行き来する所謂垂直探傷法によって溶接部分40の探傷を行うことができるようにして、溶接部分40を容易且つより正確に超音波探傷することができる。
【0045】
このように、本実施形態に係る柱接合部分の超音波探傷方法によれば、ダイヤフラム30を下側柱21の上端21aに接合する前、ダイヤフラム30の表面30bに上側柱22の下端22aを溶接により接合した状態で、ダイヤフラム30の裏面30cの側から超音波探傷装置50の探触子51により上側柱22の下端22aとダイヤフラム30との溶接部分40を超音波探傷するようにしたので、上側柱22の下端22aがダイヤフラム30に対して斜めに接合されている場合であっても、鉛直方向に対して傾斜した上側柱22とダイヤフラム30との溶接部分40を超音波探傷装置50の探触子51によって容易且つ正確に超音波探傷することができる。
【0046】
上記のように、ダイヤフラム30の裏面30cの側から探触子51により上側柱22の下端22aとダイヤフラム30との溶接部分40を超音波探傷した後には、下側柱21の上端21aにダイヤフラム30が溶接されることで、上側柱22が下側柱21にダイヤフラム30を介して接合されて柱20が完成する。
【0047】
柱20が完成した状態においては、上記の通りの方法で、既に上側柱22とダイヤフラム30との溶接部分40の超音波探傷による評価は完了している。
【0048】
一方、柱20が完成した後には、ダイヤフラム30と下側柱21の上端21aとの溶接部分60の超音波探傷が求められるが、当該超音波探傷は、ダイヤフラム30を下側柱21の上端21aに溶接により接合した状態で、従来と同様に、下側柱21の外周面の側から探触子51により下側柱21の上端21aとダイヤフラム30との溶接部分60を超音波探傷すればよい。この場合、下側柱21はダイヤフラム30に対して垂直に接合されており、溶接部分60の形状は下側柱21の上端21aの全周に亘って略同一であるので、従来と同様に、下側柱21の外周面の側から探触子51により溶接部分60を超音波探傷する方法により精度よく超音波探傷を行うことができる。
【0049】
また、本実施形態に係る柱接合部分の超音波探傷方法では、下側柱21を、円筒状の柱本体部21Aと、柱本体部21Aの上端に接合された仕口部材21Bと、を有し、ダイヤフラム30が仕口部材21Bの上端21aに接合された構成としたので、仕口部材21Bを備えた下側柱21を梁12からの入力に対する所望の強度を有するものとしつつ、鉛直方向に対して傾斜した上側柱22とダイヤフラム30との溶接部分40を容易且つ正確に超音波探傷することを可能とすることができる。
【0050】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 建築物
2a 外壁
2b 外壁
2c 外壁
3 地面
4a 外壁
4b 外壁
4c 外壁
5 窓部
5a 窓
6 外壁パネル
6a パネルユニット
7 スリット
10 躯体
11 柱
12 梁
20 柱
21 下側柱
21a 上端
21A 柱本体部
21B 仕口部材
22 上側柱
22a 下端
23 継手
30 ダイヤフラム
30a 孔
30b 表面
30c 裏面
31 ダイヤフラム
31a 孔
40 溶接部分
50 超音波探傷装置
51 探触子
60 溶接部分
C コンクリート