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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155191
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】差圧弁および弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 47/02 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
F16K47/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069665
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡利 大介
【テーマコード(参考)】
3H066
【Fターム(参考)】
3H066AA01
3H066BA32
3H066BA33
(57)【要約】
【課題】騒音を抑制でき、比較的容易に作製できる差圧弁および差圧弁を有する弁装置を提供する。
【解決手段】電磁弁の弁本体10には差圧弁部50が設けられている。差圧弁部50は、差圧弁室13と第1流出口14とを区画するダイアフラム51と、差圧弁室13に配置され、ダイアフラム51によって移動される差圧弁体56と、第1流出口14に配置され、差圧弁体56とともに移動されるストッパ57と、合成樹脂製のスリーブ52と、を有する。スリーブ52は、ストッパ57が摺動可能に接する第1部分と、弁本体10に対して固定される第2部分と、を有する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室と背圧室とを有する弁本体と、前記弁室と前記背圧室とを区画するダイアフラムと、前記弁室に配置され、前記ダイアフラムによって移動される弁体と、前記背圧室に配置され、前記弁体とともに移動される移動部材と、を有する差圧弁であって、
前記差圧弁が、前記移動部材が摺動可能に接する第1部分と、前記弁本体に対して固定される第2部分と、を有する接触部材を備えることを特徴とする差圧弁。
【請求項2】
前記第1部分が、円筒形状を有しており、
前記第2部分が、前記第1部分の一端に接続されかつ前記第1部分から離れるにしたがって径が大きくなる円錐台筒形状を有しており、周方向全体にわたって前記弁本体に対して固定され、
前記移動部材が、円筒形状の周壁部と、前記周壁部の一端に接続された円板形状の底壁部と、を有し、
前記底壁部が前記ダイアフラムに接し、
前記周壁部が前記第1部分の内側に配置され、前記周壁部の外周面が前記第1部分の内周面に摺動可能に接する、請求項1に記載の差圧弁。
【請求項3】
前記第1部分の内周面には、当該第1部分の一端から他端まで延びる均圧溝が設けられている、請求項2に記載の差圧弁。
【請求項4】
前記差圧弁が、円環形状の保持部材と、前記弁本体に取り付けられ、前記保持部材を前記弁本体に向けて押しつける円筒形状の差圧弁枠と、を有し、
前記保持部材が、前記ダイアフラムの外周部に接する円環平面と、前記円環平面と反対側にある外向きテーパー面と、を有し、
前記差圧弁枠が、内向きテーパー面を有し、
前記第2部分が、前記外向きテーパー面と前記内向きテーパー面との間に保持される、請求項2または請求項3に記載の差圧弁。
【請求項5】
流入口と、前記流入口に接続された主弁室と、前記主弁室に主弁座を介して接続された第1流出口と、前記主弁室に分岐通路を介して接続された差圧弁室と、前記差圧弁室に差圧弁座を介して接続された第2流出口と、を有する弁本体と、
前記主弁室に配置される主弁体と、
前記差圧弁室と前記第1流出口とを区画するダイアフラムと、
前記差圧弁室に配置され、前記ダイアフラムによって移動される差圧弁体と、
前記第1流出口に配置され、前記差圧弁体とともに移動される移動部材と、を有する弁装置であって、
前記弁装置が、前記移動部材が摺動可能に接する第1部分と、前記弁本体に対して固定される第2部分と、を有する接触部材を備えることを特徴とする弁装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧弁および差圧弁を有する弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の弁装置の一例である差圧弁付電磁弁が特許文献1に開示されている。特許文献1の電磁弁は、1つの弁本体に電磁弁部と差圧弁部とが一体的に設けられている。弁本体は、主弁室と、差圧弁室と、流入口と、第1流出口と、第2流出口と、を有している。流入口は、主弁室に接続されている。主弁室は、主弁座を介して第1流出口に接続されている。主弁室は、分岐通路を介して差圧弁室にも接続されている。差圧弁室は、差圧弁座を介して第2流出口に接続されている。電磁弁部は、主弁座を開閉する主弁体を有している。差圧弁部は、差圧弁座を開閉する差圧弁体を有している。
【0003】
差圧弁部は、差圧弁室と背圧室としての第1流出口とを区画する合成樹脂製のダイアフラムを有しており、ダイアフラムに差圧弁体が取り付けられている。差圧弁室と第1流出口との差圧でダイアフラムが変形すると、差圧弁体が移動して差圧弁座を開閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-152848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した電磁弁の差圧弁部は、差圧弁体とともに移動する防振ばねを有している。防振ばねは、弁本体に取り付けられた円筒形状の差圧弁枠の内周面に摺動可能に接する複数の弾性脚部を有している。各弾性脚部は、差圧弁室側から第1流出口側に向かって延びており、その先端が固定されていない開放端である。複数の弾性脚部は、径方向外方に向かう復元力によって差圧弁枠の内周面に押しつけられるように弾性変形されている。防振ばねによって差圧弁体の移動に対する抵抗力が生じて、差圧弁体の微少な振動が抑制される。これにより、差圧弁座が差圧弁座の開閉を繰り返すことにより生じる騒音を抑制できる。しかしながら、防振ばねが差圧弁体とともに移動するとき、冷媒によって複数の弾性脚部に径方向内方または径方向外方に向かう力が加わることがある。特に、弾性脚部が移動方向に対して傾斜している構成では、当該力が大きくなる。そのため、弾性脚部が差圧弁枠の内周面に押しつけられる力が変動することを考慮して弾性脚部を弾性変形させる必要があり、差圧弁枠の内周面に適切に押しつけられる弾性脚部を有する防振ばねを作製することが難しい。
【0006】
そこで、本発明は、騒音を抑制でき、比較的容易に作製できる差圧弁および差圧弁を有する弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る差圧弁は、弁室と背圧室とを有する弁本体と、前記弁室と前記背圧室とを区画するダイアフラムと、前記弁室に配置され、前記ダイアフラムによって移動される弁体と、前記背圧室に配置され、前記弁体とともに移動される移動部材と、を有する差圧弁であって、前記差圧弁が、前記移動部材が摺動可能に接する第1部分と、前記弁本体に対して固定される第2部分と、を有する接触部材を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記第1部分が、円筒形状を有しており、前記第2部分が、前記第1部分の一端に接続されかつ前記第1部分から離れるにしたがって径が大きくなる円錐台筒形状を有しており、周方向全体にわたって前記弁本体に対して固定され、前記移動部材が、円筒形状の周壁部と、前記周壁部の一端に接続された円板形状の底壁部と、を有し、前記底壁部が前記ダイアフラムに接し、前記周壁部が前記第1部分の内側に配置され、前記周壁部の外周面が前記第1部分の内周面に摺動可能に接する、ことが好ましい。
【0009】
本発明において、前記第1部分の内周面には、当該第1部分の一端から他端まで延びる均圧溝が設けられている、ことが好ましい。
【0010】
本発明において、前記差圧弁が、円環形状の保持部材と、前記弁本体に取り付けられ、前記保持部材を前記弁本体に向けて押しつける円筒形状の差圧弁枠と、を有し、前記保持部材が、前記ダイアフラムの外周部に接する円環平面と、前記円環平面と反対側にある外向きテーパー面と、を有し、前記差圧弁枠が、内向きテーパー面を有し、前記第2部分が、前記外向きテーパー面と前記内向きテーパー面との間に保持される、ことが好ましい。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る弁装置は、流入口と、前記流入口に接続された主弁室と、前記主弁室に主弁座を介して接続された第1流出口と、前記主弁室に分岐通路を介して接続された差圧弁室と、前記差圧弁室に差圧弁座を介して接続された第2流出口と、を有する弁本体と、前記主弁室に配置される主弁体と、前記差圧弁室と前記第1流出口とを区画するダイアフラムと、前記差圧弁室に配置され、前記ダイアフラムによって移動される差圧弁体と、前記第1流出口に配置され、前記差圧弁体とともに移動される移動部材と、を有する弁装置であって、前記弁装置が、前記移動部材が摺動可能に接する第1部分と、前記弁本体に対して固定される第2部分と、を有する接触部材を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、接触部材が、第1部分と第2部分とを有し、弁体とともに移動される移動部材が第1部分に摺動可能に接し、第2部分が弁本体に対して固定される。このようにしたことから、接触部材によって弁体(差圧弁体)の移動に対する抵抗力が生じて、弁体の振動を抑制できる。また、接触部材が弁本体に対して固定されているので、冷媒による接触部材が移動部材に接する力の変動が生じない。そのため、接触部材の調整等が不要となり、差圧弁および差圧弁を有する弁装置を比較的容易に作製できる。また、接触部材が合成樹脂製であれば、金属粉が生じない。そのため、金属粉によるダイアフラムの損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例に係る差圧弁付電磁弁の断面図である。
図2】差圧弁付電磁弁が有する差圧弁部の拡大断面図である(閉弁状態)。
図3】差圧弁付電磁弁が有する差圧弁部の拡大断面図である(開弁状態)。
図4図2における一点鎖線の円で囲った箇所の拡大断面図である。
図5】差圧弁付電磁弁が有するスリーブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の弁装置の一実施例に係る差圧弁付電磁弁について、図1図5を参照して説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例に係る差圧弁付電磁弁の断面図である。図2図3は、差圧弁付電磁弁が有する差圧弁部の拡大断面図である。図2は、閉弁状態の差圧弁部を示す。図3は、開弁状態の差圧弁部を示す。図4は、図2における一点鎖線の円で囲った箇所の拡大断面図である。図5は、差圧弁付電磁弁が有するスリーブを示す図である。図5A図5Bおよび図5Cは、スリーブの側面図、正面図および斜視図である。以下の説明において、「上下左右」との用語は、図1図4における上下左右に対応しており、各構成要素の相対的な位置関係を示している。
【0016】
図1図5に示すように、本実施例の差圧弁付電磁弁1(以下、単に「電磁弁1」という。)は、弁本体10を有している。弁本体10には、電磁弁部30と、差圧弁部50と、が設けられている。
【0017】
弁本体10は、略直方体形状を有している。弁本体10は、流入口11と、主弁室12と、差圧弁室13と、第1流出口14と、第2流出口15と、を有している。
【0018】
流入口11は、弁本体10の左側面10aに開口している。流入口11は、主弁室12に接続されている。主弁室12には、主弁口16を囲む円形の主弁座17が設けられている。主弁室12は、主弁座17(主弁口16)を介して第1流出口14に接続されている。第1流出口14は、弁本体10の左側面10aに開口している。主弁室12は、分岐通路18を介して差圧弁室13にも接続されている。差圧弁室13には、差圧弁口19を囲む円形の差圧弁座20が設けられている。差圧弁室13は、差圧弁座20(差圧弁口19)を介して第2流出口15に接続されている。第2流出口15は、弁本体10の背面に開口している。差圧弁室13は、第1流出口14に向く開口を有しており、弁本体10は、当該開口を囲む円環平面である保持面10bを有している。
【0019】
電磁弁部30は、固定鉄心31と、ケース32と、プランジャ33と、電磁コイル34と、弁軸35と、パイロット弁体36と、主弁体40と、を有している。
【0020】
固定鉄心31は、第1円筒部31aと、第2円筒部31bと、を一体的に有している。第2円筒部31bの外径は、第1円筒部31aの内径より小さい。第2円筒部31bは、第1円筒部31aの上端に同軸に接続されている。第1円筒部31aは、弁本体10にねじ構造で固定されている。第2円筒部31bは、弁本体10から上方に向けて延びるように配置されている。固定鉄心31は、吸引子ともいわれる。
【0021】
ケース32は、円筒形状を有している。ケース32は、下端が開口しかつ上端が塞がれている。ケース32の下端には、固定鉄心31の第2円筒部31bが挿入されている。ケース32は、固定鉄心31に接合されている。
【0022】
プランジャ33は、円筒形状を有している。プランジャ33の外径は、ケース32の内径よりわずかに小さい。プランジャ33は、ケース32の内側に上下方向に移動可能に配置されている。プランジャ33と固定鉄心31の第2円筒部31bとの間には、プランジャばね38が配置されている。プランジャばね38は、圧縮コイルばねであり、プランジャ33を上方に向けて押している。
【0023】
電磁コイル34は、円筒形状を有している。電磁コイル34の内側には、ケース32が配置される。電磁コイル34によって、固定鉄心31およびプランジャ33が磁化される。
【0024】
弁軸35は、細長い円筒形状を有している。弁軸35の上端は、プランジャ33に固定されている。弁軸35は、固定鉄心31の第2円筒部31bに挿入されている。弁軸35は、第2円筒部31bによって上下方向に移動可能に支持されている。弁軸35は、流体通路35aを有している。流体通路35aは、弁軸35の上端から下端近傍まで延びている。
【0025】
パイロット弁体36は、弁軸35の下端に一体的に接続されている。パイロット弁体36の下面には、円板形状のパッキン36aが取り付けられている。
【0026】
主弁体40は、胴部41と、上フランジ部42と、下フランジ部43と、を一体的に有している。
【0027】
胴部41は、円柱形状を有している。胴部41は、パイロット通路44を有している。パイロット通路44は、胴部41の上端から下端まで延びている。胴部41の上端には、パイロット通路44を囲むパイロット弁座45が設けられている。パイロット弁座45には、パイロット弁体36のパッキン36aが接離される。
【0028】
上フランジ部42は、胴部41の上部に配置されている。上フランジ部42は、固定鉄心31の第1円筒部31aの内側に上下方向に摺動可能に配置されている。上フランジ部42は、主弁室12と固定鉄心31の内側のパイロット弁室37とを区画している。上フランジ部42は、均圧通路42aを有している。均圧通路42aは、主弁室12とパイロット弁室37とを接続する。上フランジ部42と弁本体10との間には、開弁ばね39が配置されている。開弁ばね39は、圧縮コイルばねであり、主弁体40を上方に向けて押している。
【0029】
下フランジ部43は、胴部41の下部に配置されている。下フランジ部43の下面には、円環板形状のパッキン43aが取り付けられている。パッキン43aは、主弁座17に接離される。下フランジ部43の外径は、上フランジ部42の外径より小さい。
【0030】
なお、電磁弁部30は、電磁コイル34に通電していないときに開弁状態となるノーマルオープン形電磁弁であるが、電磁コイル34に通電していないときに閉弁状態となるノーマルクローズ形電磁弁であってもよい。
【0031】
差圧弁部50は、ダイアフラム51と、スリーブ52と、封止部材53と、保持部材54と、差圧弁枠55と、差圧弁体56と、ストッパ57と、を有している。
【0032】
ダイアフラム51は、例えば、ポリイミドなどの合成樹脂製の薄膜体である。ダイアフラム51は、円形のシート形状を有している。ダイアフラム51は、弁本体10内において差圧弁室13と背圧室としての第1流出口14とを区画するように配置されている。
【0033】
ダイアフラム51は、中央部51aと、外周部51bと、を一体的に有している。中央部51aは、差圧弁室13と第1流出口14との差圧がない状態で差圧弁室13側に突出する円錐台形状となるように構成されている。外周部51bは、円環形状を有している。外周部51bの内周縁は、中央部51aの外周縁に接続されている。なお、本明細書における円錐台形状とは、例えば中央部分が緩やかに隆起したドーム形状のように、外周縁や天井部分が滑らかな湾曲面で連結された形状、および、外周縁や天井部分が滑らかな湾曲面で構成された形状を含むものとする。
【0034】
スリーブ52は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリイミドなどの合成樹脂製の薄膜体である。スリーブ52は、全体的に円筒形状を有している。スリーブ52は、左右方向に沿って配置されている。スリーブ52は、第1部分52aと、第2部分52bと、を一体的に有している。第1部分52aは、円筒形状を有している。第1部分52aは、均圧溝52dを有している。均圧溝52dは、第1部分52aの内周面52cに配置されており、第1部分52aの右端(一端)から左端(他端)まで延びている。均圧溝52dは、2つ設けられている。均圧溝52dは、1つ以上設けられていることが好ましい。第2部分52bは、第1部分52aの右端に接続され、第1部分52aから離れるにしたがって径が大きくなる円錐台筒形状を有している。スリーブ52は、接触部材である。
【0035】
封止部材53は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの合成樹脂製である。封止部材53は、円環板形状を有している。封止部材53の外径は、ダイアフラム51の外径と同じである。封止部材53の内径は、ダイアフラム51の中央部51aの外径より大きい。封止部材53は、弁本体10の保持面10bとダイアフラム51の外周部51bにおける差圧弁室13側の面(右方を向く面)の間に配置されている。
【0036】
保持部材54は、全体的に円環形状を有している。保持部材54は、円筒部54aと、フランジ部54bと、を一体的に有している。フランジ部54bは、円筒部54aの右端に接続されている。フランジ部54bは、円環平面54cを有している。円環平面54cは、ダイアフラム51の外周部51bにおける第1流出口14側の面(左方を向く面)に配置されている。円筒部54aは、円環形状の外向きテーパー面54tを有している。外向きテーパー面54tは、円筒部54aの左端に配置されている。保持部材54において、外向きテーパー面54tは円環平面54cと左右方向(保持部材54の中心軸方向)の反対側に配置されている。
【0037】
差圧弁枠55は、略円筒形状を有している。差圧弁枠55は、第1流出口14に左右方向に沿って配置されている。差圧弁枠55は、段付きの周壁部55aと底壁部55bとを一体的に有している。周壁部55aの右端が開口し、周壁部55aの左端が底壁部55bによって塞がれている。
【0038】
差圧弁枠55の周壁部55aは、ストッパ面55cと、内向きテーパー面55tと、を有している。ストッパ面55cは、右方を向く円環平面であり、周壁部55aの内側に配置されている。内向きテーパー面55tは、周壁部55aの右端に配置されている。底壁部55bは、流通孔55dを有している。
【0039】
差圧弁枠55の周壁部55aの右端近傍には雄ねじが設けられており、差圧弁枠55は弁本体10にねじ構造で固定されている。差圧弁枠55の内向きテーパー面55tと保持部材54の外向きテーパー面54tとの間には、スリーブ52の第2部分52bが配置されている。差圧弁枠55は、スリーブ52を介して保持部材54を弁本体10の保持面10bに向けて押しつけている。これにより、スリーブ52の第2部分52bが、内向きテーパー面55tと外向きテーパー面54tとの間に全周にわたって保持され、弁本体10に対して固定される。また、ダイアフラム51の外周部51bおよび封止部材53が、保持部材54の円環平面54cと弁本体10の保持面10bとの間に全周にわたって保持される。差圧弁枠55の内側空間は、流通孔55dを介して第1流出口14に接続されており、実質的に第1流出口14である。
【0040】
差圧弁体56は、略円板形状を有している。差圧弁体56は、差圧弁室13に左右方向に摺動可能に配置されている。差圧弁体56の右端面には、円板形状のパッキン56aが取り付けられている。パッキン56aは、差圧弁座20に接離される。差圧弁体56は、ダイアフラム51の中央部51aにおける差圧弁室13側の面に配置されている。
【0041】
ストッパ57は、円筒形状を有している。ストッパ57は、差圧弁枠55の内側空間に左右方向に沿って配置されている。ストッパ57は、周壁部57aと底壁部57bとを一体的に有している。周壁部57aの左端が開口し、周壁部の右端(一端)が底壁部57bによって塞がれている。底壁部57bは、ダイアフラム51の中央部51aにおける第1流出口14側の面に配置されている。ストッパ57は、移動部材である。
【0042】
差圧弁体56とストッパ57とは、ダイアフラム51の中央部51aを挟んで互いに結合されている。ストッパ57は、差圧弁体56とともに移動される。差圧弁体56が最大開弁位置に至ると、ストッパ57の周壁部57aの左端が差圧弁枠55のストッパ面55cに当接して、差圧弁体56の開弁方向(左方)の移動を規制する。ストッパ57の底壁部57bと差圧弁枠55の底壁部55bとの間には、閉弁ばね58が配置されている。閉弁ばね58は、圧縮コイルばねであり、ストッパ57を介して差圧弁体56を閉弁方向(右方)に押している。
【0043】
ストッパ57の周壁部57aは、スリーブ52の第1部分52aの内側に配置されている。周壁部57aの外周面57cは、第1部分52aの内周面52cに摺動可能に接している。スリーブ52の第1部分52aは、ストッパ57を左右方向に移動可能に支持している。
【0044】
また、スリーブ52は、ダイアフラム51、保持部材54および差圧弁枠55によって囲まれた空間Sを、第1流出口14側の第1空間部分S1と、ダイアフラム51側の第2空間部分S2と、に区画している。第1空間部分S1は、流通孔55dを介して第1流出口14と接続されている。第2空間部分S2は、ダイアフラム51に面する空間である。そのため、第1流出口14を流れる冷媒に含まれる異物が、第1空間部分S1に留まり、当該異物の第2空間部分S2への進入が抑制される。また、第1空間部分S1と第2空間部分S2とが、スリーブ52の均圧溝52dによって接続されている。これにより、ダイアフラム51の第1流出口14の冷媒圧力がダイアフラム51に適切に加わる。
【0045】
ダイアフラム51と、スリーブ52と、封止部材53と、保持部材54と、差圧弁枠55と、差圧弁体56と、ストッパ57と、はそれぞれの中心軸が1つの直線上で一致するように(すなわち同軸に)配置されている。
【0046】
次に、電磁弁1の動作の一例について説明する。
【0047】
図1に電磁コイル34に通電していない状態の電磁弁1を示す。図1において、パイロット弁体36がパイロット弁座45から離れており、パイロット弁座45が開いている。また、主弁体40が主弁座17から離れており、主弁座17が開いている。このとき、流入口11から主弁室12に流れ込んだ冷媒は、主弁座17を介して第1流出口14に流れるとともに、分岐通路18を介して差圧弁室13に流れる。そのため、差圧弁室13および第1流出口14の差圧が比較的小さく、図2に示すように、ダイアフラム51の中央部51aは差圧弁室13側に突出する円錐台形状となる。これにより、差圧弁体56が、差圧弁座20に接して、差圧弁座20を閉じる。差圧弁座20が閉じていると、差圧弁室13の冷媒は、差圧弁室13に留まり第2流出口15に流れない。
【0048】
そして、電磁コイル34に通電すると、プランジャ33が固定鉄心31に引き寄せられ、パイロット弁体36が下方に移動する。そして、パイロット弁体36がパイロット弁座45に接して主弁体40を下方に押し、主弁体40が主弁座17に接する。これにより、パイロット弁体36がパイロット弁座45を閉じ、主弁体40が主弁座17を閉じて、主弁室12から第1流出口14への冷媒の流れが遮断される。
【0049】
主弁体40が主弁座17を閉じて少し経つと、第1流出口14の冷媒圧力が差圧弁室13の冷媒圧力に対して低下する。そのため、差圧弁室13および第1流出口14の差圧が比較的大きくなり、図3に示すように、ダイアフラム51の中央部51aが、第1流出口14側に突出するように変形する。これにより、差圧弁体56が、差圧弁座20から離れ、差圧弁座20を開く。差圧弁座20が開くと、差圧弁室13の冷媒が、差圧弁座20および差圧弁口19を介して第2流出口15に流れる。
【0050】
ダイアフラム51は差圧弁室13および第1流出口14の差圧に応じて変形し、ダイアフラム51の変形に伴って差圧弁体56が移動して差圧弁座20を開閉する。具体的には、差圧弁室13の冷媒圧力が第1流出口14の冷媒圧力より高くなると差圧弁座20が開き、差圧弁室13の冷媒圧力が第1流出口14の冷媒圧力以下になると差圧弁座20が閉じる。
【0051】
例えば、スリーブ52を有しない構成では、差圧の大きさがダイアフラム51の変形が始まる大きさをわずかに超える程度の場合、(1)差圧弁座20が開くと、差圧弁室13の冷媒圧力が低下して差圧が小さくなり、差圧弁座20が閉じ、(2)差圧弁座20が閉じると、差圧弁室13の冷媒圧力が上昇して差圧が大きくなり、差圧弁座20が開き、上記(1)、(2)が繰り返されて、差圧弁体56が高速で振動してしまうおそれがある。
【0052】
一方、スリーブ52を有する構成では、差圧弁体56とともに移動するストッパ57がスリーブ52に摺動可能に接するので、ストッパ57とスリーブ52との摩擦力が差圧弁体56の移動に対する抵抗力となり、差圧弁体56が振動してしまうことを抑制できる。
【0053】
以上説明したように、電磁弁1は、弁本体10と、主弁体40と、ダイアフラム51と、スリーブ52と、差圧弁体56と、ストッパ57と、を有する。弁本体10は、流入口11と、流入口11に接続された主弁室12と、主弁室12に主弁座17を介して接続された第1流出口14と、主弁室12に分岐通路18を介して接続された差圧弁室13と、差圧弁室13に差圧弁座20を介して接続された第2流出口15と、を有する。主弁体40は、主弁室12に配置される。ダイアフラム51は、差圧弁室13と第1流出口14とを区画する。差圧弁体56は、差圧弁室13に配置され、ダイアフラム51によって移動される。ストッパ57は、第1流出口14に配置され、差圧弁体56とともに移動される。スリーブ52が、合成樹脂製であり、ストッパ57が摺動可能に接する第1部分52aと、弁本体10に対して固定される第2部分52bと、を有する。このようにしたことから、スリーブ52によって差圧弁体56の移動に対する抵抗力が生じて、差圧弁体56の振動を抑制できる。また、スリーブ52が弁本体10に対して固定されているので、冷媒によるスリーブ52がストッパ57に接する力の変動が生じない。そのため、スリーブ52の調整等が不要となり、電磁弁1を比較的容易に作製できる。また、スリーブ52が合成樹脂製であり、金属粉が生じない。そのため、電磁弁1において、金属粉によるダイアフラムの損傷を抑制できる。
【0054】
また、スリーブ52の第1部分52aが、円筒形状を有しており、第2部分52bが、第1部分52aの右端に接続されかつ第1部分52aから離れるにしたがって径が大きくなる円錐台筒形状を有している。第2部分52bが、周方向全体にわたって弁本体10に対して固定される。ストッパ57が、円筒形状の周壁部57aと、周壁部57aの右端に接続された円板形状の底壁部57bと、を有する。底壁部57bがダイアフラム51に接する。周壁部57aが第1部分52aの内側に配置され、周壁部57aの外周面57cが第1部分52aの内周面52cに摺動可能に接する。このようにすることで、スリーブ52が、ダイアフラム51に面する第2空間部分S2を第1流出口14に対して区画する。そのため、第1流出口14を流れる冷媒に含まれる異物によるダイアフラム51の損傷を抑制できる。また、スリーブ52が、例えば、金属のプレス加工によって製造される防振ばねに比べて簡易な円筒形状を有しており、製造コストを低減できる。
【0055】
また、スリーブ52の第1部分52aの内周面52cには、第1部分52aの右端から左端まで延びる均圧溝52dが設けられている。このようにすることで、第2空間部分S2の冷媒圧力が、第1流出口14と流通孔55dを通じて接続された第1空間部分S1の冷媒圧力と同じになり、ダイアフラム51に第1流出口14の冷媒圧力を適切に加えることができる。これにより、ダイアフラム51を適切に機能させることができる。
【0056】
また、電磁弁1が、円環形状の保持部材54と、弁本体10に取り付けられ、保持部材54を弁本体10に向けて押しつける円筒形状の差圧弁枠55と、を有する。保持部材54が、ダイアフラム51の外周部51bに接する円環平面54cと、円環平面54cと反対側にある外向きテーパー面54tと、を有する。差圧弁枠55が、内向きテーパー面55tを有する。スリーブ52の第2部分52bが、外向きテーパー面54tと内向きテーパー面55tとの間に保持される。このようにすることで、差圧弁枠55によって保持部材54を弁本体10に向けて押しつけることで、弁本体10と保持部材54との間にダイアフラム51の外周部51bを保持することができるとともに、外向きテーパー面54tと内向きテーパー面55tとの間に第2部分52bを保持することができる。そのため、比較的簡易な構成で、ダイアフラム51およびスリーブ52を弁本体10に対して固定できる。
【0057】
電磁弁1は、接触部材としてスリーブ52を有している。電磁弁1は、スリーブ52に代えて、例えば、合成樹脂製の長方形状の接触片を有していてもよい。この構成おいて、接触片の長手方向の一方の端部(第1部分)がストッパ57の周壁部57aに摺動可能に接し、接触片の長手方向の他方の端部(第2部分)が外向きテーパー面54tと内向きテーパー面55tとの間に保持され、弁本体10に対して固定される。接触片が弾性変形され、接触片の復元力によって第1部分がストッパ57の周壁部57aに押しつけられていてもよい。この構成においても、上述した電磁弁1と同じ(実質的に同じを含む)作用効果を奏する。なお、接触片は金属製でもよく、例えば、板金をプレス加工することにより接触片を作製してもよい。
【0058】
なお、本実施例の電磁弁1は、電磁弁部30と差圧弁部50とを有する複合弁(弁装置)であったが、本発明を単体の差圧弁に適用してもよい。
【0059】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1…差圧弁付電磁弁、10…弁本体、10a…左側面、10b…保持面、11…流入口、12…主弁室、13…差圧弁室、14…第1流出口、15…第2流出口、16…主弁口、17…主弁座、18…分岐通路、19…差圧弁口、20…差圧弁座、30…電磁弁部、31…固定鉄心、31a…第1円筒部、31b…第2円筒部、32…ケース、33…プランジャ、34…電磁コイル、35…弁軸、35a…流体通路、36…パイロット弁体、36a…パッキン、37…パイロット弁室、38…プランジャばね、39…開弁ばね、40…主弁体、41…胴部、42…上フランジ部、42a…均圧通路、43…下フランジ部、43a…パッキン、44…パイロット通路、45…パイロット弁座、50…差圧弁部、51…ダイアフラム、51a…中央部、51b…外周部、52…スリーブ、52a…第1部分、52b…第2部分、52c…内周面、52d…均圧溝、53…封止部材、54…保持部材、54a…円筒部、54b…フランジ部、54c…円環平面、54t…外向きテーパー面、55…差圧弁枠、55a…周壁部、55b…底壁部、55c…ストッパ面、55d…流通孔、55t…内向きテーパー面、56…差圧弁体、56a…パッキン、57…ストッパ、57a…周壁部、57b…底壁部、57c…外周面、58…閉弁ばね、S…空間、S1…第1空間部分、S2…第2空間部分

図1
図2
図3
図4
図5