(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155196
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】配管部材、浴室及び配管部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 33/025 20060101AFI20241024BHJP
F16L 33/24 20060101ALI20241024BHJP
E03C 1/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F16L33/025
F16L33/24
E03C1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069673
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】西 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】大北 達也
(72)【発明者】
【氏名】江口 智人
(72)【発明者】
【氏名】常松 大樹
【テーマコード(参考)】
2D060
3H017
【Fターム(参考)】
2D060AA01
2D060AB07
2D060AC03
3H017EA09
(57)【要約】
【課題】ホースと配管部材の固定の安定化が求められている。
【解決手段】本開示の配管部材は、ホースがホースクランプにより固定されるホース接続部を備える配管部材であって、前記配管部材に一体形成されると共に前記ホース接続部側に張り出し、前記ホースクランプの回転を規制する回転規制部を備える配管部材である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホースがホースクランプにより固定されるホース接続部を備える配管部材であって、
前記配管部材に一体形成されると共に前記ホース接続部側に張り出し、前記ホースクランプの回転を規制する回転規制部を備える配管部材。
【請求項2】
前記回転規制部は、前記ホースクランプの一の突出片のみを挟んで対向する一対の対向部を備える請求項1に記載の配管部材。
【請求項3】
前記回転規制部は、複数設けられている請求項1又は2に記載の配管部材。
【請求項4】
前記ホース接続部から延長され、屈曲形状をなすエルボ部を備え、
前記回転規制部は、前記エルボ部から突出している請求項1又は2に記載の配管部材。
【請求項5】
前記ホースとは別の部材に接続される接続部を有して継手として使用される請求項1又は2に記載の配管部材。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の配管部材が、給水配管又は給湯配管に使用されている浴室。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の配管部材の製造方法であって、
前記回転規制部となる部分を含む張出部が前記ホース接続部と一体になった中間品を鍛造する鍛造工程と、
前記張出部の一部を前記ホース接続部から切り離すトレパニング加工を行って、前記回転規制部を形成すると共に前記回転規制部と前記ホース接続部との間に前記ホースの先端部を受容可能な受容溝を形成する切削工程と、を行う配管部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の配管部材として、ホースクランプによりホースと接続されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-204752号公報(
図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホースと配管部材の固定の安定化が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、ホースがホースクランプにより固定されるホース接続部を備える配管部材であって、前記配管部材に一体形成されると共に前記ホース接続部側に張り出し、前記ホースクランプの回転を規制する回転規制部を備える配管部材である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図4】ホースに接続された配管部材の
図2におけるA-A線断面図
【
図5】ホースに接続された配管部材の
図2におけるB-B線断面図
【
図14】型開きされた成形金型から取り外される中間体の断面図
【
図15】トレパニング加工が行われる中間体の拡大正面図
【
図16】トレパニング加工が行われる中間体の拡大側面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1及び
図2に示すように、本開示の一実施形態に係る配管部材10は、ホース90に接続される継手として使用される。
図2に示すように、配管部材10の一端部には、ホース90に挿入されるホース接続部12が配置されている。配管部材10の他端部には、ホース90とは別の部材(例えば、ホース、配管、又は流体機器等のように内部流路を有する部材)と接続される部材接続部15が配置されている。
【0008】
なお、本実施形態の例では、部材接続部15は、雄ねじ部13を外周面に備えると共に、雌ねじ部14を内周面に備えている。例えば、部材接続部15は、雄ねじ部13と螺合する雌ねじ部を有する配管、又は、雌ねじ部14と螺合する雄ねじ部を有する配管、と接続される。また、ホース90は、例えば、樹脂製等の単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。後者の場合、例えば、ホース90にアルミニウム等の金属層が含まれていてもよい。ホース90及び配管部材10を流れる流体は、特に限定されるものではなく、例えば、液体であってもよいし、気体であってもよいし、気液混合体であってもよい。
【0009】
本実施形態の例では、配管部材10は、略L字状に屈曲していて、直筒状のホース接続部12と、屈曲形状をなしてホース接続部12から延長されたエルボ部40と、を有する(
図2及び
図7参照)。
【0010】
ホース接続部12には、ホース90が、外側からホースクランプ20(
図3参照)によって締め付けられることで、固定される(
図2及び
図4参照)。なお、例えば、ホース接続部12の外周面には、環状突部17が設けられている(
図6参照)。環状突部17は、上述のようにホースクランプ20によってホース90がホース接続部12に締め付けられると、ホース90の内面に食い込み、ホース90とホース接続部12との間をシールする(
図2及び
図5参照)。例えば、環状突部17は、ホース接続部12の先端側を向くテーパ面を有し、ホース接続部12の基端に向かうにつれて突出量を大きくしていて、その基端の段差部により、ホース90の内面に係止し易くなっている。例えば、環状突部17は、ホース接続部12の軸方向で複数設けられていてもよい。
【0011】
なお、
図6及び
図7に示すように、本実施形態の例では、ホース接続部12の基端部には、環状突部17の頂上部(基端部)と略同じ外径となるように拡径された拡径部16が設けられている。
【0012】
ホースクランプ20は、
図3に示すように、例えば帯状板金を丸めてなり、リング状をなしている。ホースクランプ20は、その径方向外側に突出する一対の摘まみ片25,26を両端部に備え、それら端部同士が交差した構成になっている。なお、例えば、ホースクランプ20の一端部には、貫通孔22が形成され、その貫通孔22に、ホースクランプ20の幅狭になった他端部の摘まみ片26が挿通されて突出し、ホースクランプ20の両端部が交差している。
【0013】
ホースクランプ20は、一対の摘まみ片25,26が挟持されて近づけられると、弾性変形して拡径状態になる。また、ホースクランプ20は、一対の摘まみ片25,26の挟持が解除されると、弾発力により縮径状態となり、上述のようにホースクランプ20の内側に挿通されたホース90を締め付けてホース接続部12の外面に押し付ける(
図2参照)。
【0014】
エルボ部40は、
図2に示すように、ホース接続部12と連絡される一端部に、ストレート状の一端側流路R1を有すると共に、部材接続部15が設けられる他端部に、ストレート状の他端側流路R2を有し、それら流路R1,R2がコーナー部40Cで交差している。本実施形態の例では、一端側流路R1が延びる第1方向H1(ホース接続部12の中心軸J1方向)と、他端側流路R2が延びる第2方向H2(部材接続部15の中心軸J2方向)とが、直交している。
【0015】
図7に示すように、エルボ部40のうちコーナー部40Cよりも他端側(部材接続部15側)の部分からは、フランジ部42が外側に張り出している。本実施形態の例では、フランジ部42は、ホース接続部12の中心軸J1と平行に配置されている。
図2に示すように、フランジ部42とホース接続部12との間には、ホース90の先端部を受容可能なホース受容溝41が形成されている。ホース受容溝41の内面のうちホース接続部12と対向する内向き面41M(
図8及び
図9参照)は、ホース接続部12の中心軸J1を中心とする円弧面になっている(
図9参照)。従って、ホース受容溝41は、中心軸J1を中心とする円弧状をなしている。
【0016】
フランジ部42の外縁部のうちホース接続部12と対向する部分には、ホースクランプ20の一部を受容する受容凹部42Uが形成されている。受容凹部42Uの内面のうちホース接続部12側を向く内向き面42M(
図8及び
図9参照)は、ホース接続部12の中心軸J1を中心とする円弧面になっている。また、
図2に示すように、受容凹部42Uの内面のうちホース接続部12の先端側を向く面は、ホースクランプ20が第1方向H1で突き当てられる当接面40Dになっている。例えば、当接面40Dは、平坦面になっていて、ホース接続部12の中心軸J1と直交している。
【0017】
なお、本実施形態の例では、エルボ部40のコーナー部40Cからは、ホース接続部12とは反対側に固定用張出部18が張り出している。固定用張出部18は、配管部材10の固定用の雌ねじ孔19を有している。例えば、この雌ねじ孔19は、ホース接続部12と同軸上に配置されていて、ホース接続部12とは反対側に開口している。なお、本実施形態の例では、固定用張出部18は、フランジ部42と第2方向H2でつながっている(
図7参照)。
【0018】
ところで、例えば、配管部材10の設置作業等において、作業者が、配管部材10を固定してから、その配管部材10に接続されたホース90を掴むということが起こり得る。このように、ホース90に外力がかかった場合、ホース接続部12に対して、ホース90が回転することが考えられ、このように回転が生じると、ホース90とホース接続部12との間のシール性の低下を招く虞がある。そのため、ホース90とホース接続部12の固定の安定化が求められる。
【0019】
ここで、本願発明者は、ホース90に挿入されるホース接続部12とホース90とがホースクランプ20で固定される従来の接続構造について精査したところ、このような接続構造では、ホース90とホース接続部12よりも、ホース90とホースクランプ20の方が、強固に固定される(相対回転し難い)傾向があるという知見を得た。そして、鋭意検討した結果、ホース接続部12に対してホースクランプ20を回り止めしておけば、ホース接続部12に対するホース90の回転の規制にも効果的であるという知見を得るに至り、以下の特徴を有する配管部材10を発明するに至った。
【0020】
具体的には、配管部材10には、ホース接続部12に対するホースクランプ20の回転を規制する回転規制部30が備えられている。回転規制部30は、
図1に示すように、ホースクランプ20側に張り出し、ホースクランプ20に対してホース接続部12の周方向で対向して当接可能になっている。例えば、回転規制部30は、エルボ部40から張り出していて、本実施形態の例では、エルボ部40のうちコーナー部40Cよりも一端側の部分(例えば一端部)から張り出している。また、回転規制部30は、配管部材10に一体形成されている。
【0021】
回転規制部30は、ホース接続部12の周方向で、ホースクランプ20の摘まみ片25と対向する。本実施形態の例では、回転規制部30は、ホース接続部12の先端側を向く当接面30Dと、その当接面30Dから突出する対向突部31とを、有していて、回転規制部30のうちホースクランプ20の摘まみ片25と対向する部位は、対向突部31になっている。対向突部31は、回転規制部30のうちホース接続部12の径方向外側の外縁部で、かつ、回転規制部30のうちホース接続部12の周方向の両端部に配置されている(即ち、対向突部31は、当接面30Dの外側の両角部にそれぞれ設けられている(
図9参照))。また、後述のように、当接面30Dには、ホースクランプ20が突き当てられる(
図5参照)。なお、当接面30Dは、例えば平坦面になっていて、本実施形態の例では、ホース接続部12の中心軸J1と直交している。
【0022】
図4に示すように、回転規制部30は、ホース接続部12の中心軸J1(即ち、一端側流路R1(
図2参照)の流路中心)と部材接続部15の中心軸J2(即ち、他端側流路R2の流路中心)とが含まれる仮想平面に対して交差する方向(例えば、この仮想平面に対して直交する第3方向H3)で突出している。そして、この仮想平面に対して直交する第3方向H3から配管部材10を見た場合に、回転規制部30は、ホース接続部12及びエルボ部40からはみ出さないように配置されている(
図7参照)。なお、回転規制部30は、第2方向H2でフランジ部42と対向している(
図6及び
図7参照)。
【0023】
回転規制部30は、複数設けられていてもよく、例えば、ホース接続部12の周方向の複数箇所に配置されていてもよい。この場合、それぞれの回転規制部30が、ホースクランプ20の別々の回転位置でホースクランプ20の回転を規制するように配置されていてもよい。本実施形態の例では、回転規制部30は、ホース接続部12の周方向で反対の位置に一対設けられ、ホース接続部12を挟んで互いに対向配置されている。また、本実施形態の例では、これら一対の回転規制部30は、中心軸J1に対して回転対象かつ線対称な形状になっている(
図6及び
図9参照)。
【0024】
本実施形態の配管部材10は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、鍛造工程で、
図10に示す鍛造品の中間体10Aが形成される。中間体10Aには、回転規制部30がまだ形成されておらず、回転規制部30となる部分を含む張出部30Aが一対形成されている。張出部30Aは、エルボ部40とホース接続部12(詳細には、拡径部16)とにまたがってそれらにつながっていて、中間体10Aには、ホース受容溝32もまだ形成されていない。
【0025】
また、
図11に示すように、中間体10Aでは、ホース接続部12(詳細には拡径部16)とフランジ部42が連絡部34によってつながっていて、ホース受容溝41や受容凹部42Uもまだ形成されていない。なお、
図11に示す中間体10Aでは、ホース接続部12の環状突部17も(即ち、いわゆるタケノコ形状も)まだ形成されていない。また、雄ねじ部13(
図2参照)等の雄ねじ部や、雌ねじ孔19等の雄ねじ部もまだ形成されていない。中間体10Aのそれ以外の構成は、配管部材10と同様である。
【0026】
図12に示すように、中間体10Aは、ホース接続部12の中心軸J1とは直交する方向(本実施形態の例では、第3方向H3)で型抜き可能な形状の外面を有している。具体的には、一対の張出部30Aは、第3方向H3で線対称な形状でかつ中心軸J1に対して回転対象な形状になっている。張出部30Aは、ホース接続部12の径方向外側に張り出していて、張出部30Aのうちホース接続部12の先端側を向く面(
図12で紙面手前側を向く面)には、一対の突条31Aと、平坦面30DAと、が設けられている。一対の突条31Aは、第3方向H3に延びると共に、張出部30Aのうち第2方向H2の両端部に配置され、第2方向H2で互いに対向している。平坦面30DAは、一対の突条31Aの間に設けられ、例えば、中心軸J1に対して直交している。
【0027】
図13及び
図14には、中間体10Aを成形する成形金型70が示されている。成形金型70には、第3方向H3に移動して、成形金型70を型閉じ及び型開きする上型71と下型72とが備えられると共に、上型71と下型72の間に配置される複数の中子(
図13に示す中子73等)が備えられる。上型71と下型72は、ホース接続部12の外周面と、一対の張出部30Aの外側面とを成形する。中子73は、ホース接続部12の内部流路とエルボ40の一端側流路R1(
図2参照)とを成形する。また、図示しない中子として、エルボ部40のうち部材接続部15(
図2参照)の雌ねじ部14を含む他端側流路R2を成形する中子等も備えられる。
【0028】
そして、成形金型70内に、加熱された金属(例えば、黄銅等)の鍛造素材がセットされて、成形金型70が型閉じされる(
図13参照)。すると、成形金型70内で、ホース接続部12と一対の張出部30Aとが一体形成された鍛造品の中間体10Aが得られる。
【0029】
ここで、上述のように、中間体10Aの外面は、第3方向H3で型抜き可能な形状になっている。従って、
図14に示すように、上型71と下型72を第3方向H3で分離して成形金型70を型開きし、中間体10Aを第3方向H3で型抜きすることができる。そして、上型71と下型72の分離と共に、中子(中子73等)がホース接続部12等から抜かれて、中間体10Aが成形金型70から取り外される。
【0030】
次に、中間体10Aが切削される切削工程が行われる。この工程では、ホース接続部12の中心軸J1回りに切削工具K(トレパニングドリル)を回転させて切削を行うトレパニング加工が行われる。具体的には、この工程では、
図15に示す中間体10Aの張出部30Aの一部(張出部30Aのうちホース接続部12側の部分)と、
図16に示す連絡部34の一部とを除去する。これにより、
図15から
図17への変化に示すように、張出部30Aの一部がホース接続部12から切り離されて回転規制部30が形成される。このとき、ホース受容溝32と内向き面31M,32Mも形成される。また、このとき、張出部30Aの平坦面30DA(
図12参照)の一部が、ホース接続部12の周方向に延長されて当接面30Dが形成され、突条31Aのうちホース接続部12から離れた側の端部が、切削されずに残ることで、対向突部31が形成される(
図9参照)。また、上記トレパニング加工により、
図16から
図18への変化に示すように、フランジ部42とホース接続部12の間に、ホース受容溝41が形成されると共に、
図12から
図9への変化に示すように、フランジ部42に、受容凹部42Uが形成される。なお、このトレパニング加工では、切削工具Kが中心軸J1を中心として回転するので、内向き面31M,32M,41M及び42Mが、中心軸J1を中心とする円弧面となると共に、ホース受容溝32,41が、中心軸J1を中心とする円弧状の溝になる。また、当接面30D,40D同士は、同一の仮想平面上に形成される。
【0031】
以上により、配管部材10に回転規制部30が形成される。その後、各ねじ部(雄ねじ部(例えば雄ねじ部13等)、雌ねじ部(例えば雌ねじ孔19等))とホース接続部12の環状突部17が切削加工(旋盤加工)にて形成され、本実施形態の配管部材10が得られる(
図2及び
図7参照)。本実施形態の配管部材10の製造方法では、鍛造だけでは製造できない形状の金属の配管部材を、トレパニング加工により容易に形成する可能となる。しかも、本実施形態の配管部材10の製造方法では、鍛造品に、一段取りの切削加工を行うだけで、配管部材10を製造することができ、金属の配管部材10の製造をより容易にすることが可能となる。
【0032】
本実施形態では、配管部材10には、ホース90が例えば以下のようにして取り付けられる。まず、一対の摘まみ片25,26を挟持して近づけて、ホースクランプ20を拡径状態にし、その拡径状態としたまま、ホース90をホースクランプ20の内側に挿通すると共に、ホース90の内側にホース接続部12を挿入する。この際、ホース90の先端部を、配管部材10のホース受容溝32に受容させると共に、ホースクランプ20を、配管部材10の当接面30D及び当接面40Dに第1方向H1で突き当てる(
図2及び
図5参照)。また、この際、ホースクランプ20の一方の摘まみ片25を、回転規制部30の一対の対向突部31同士の間に配置する(
図4参照)。そして、一対の摘まみ片25,26の挟持を解除してホースクランプ20を縮径状態に弾性復元させて、ホース90を外側からホース接続部12に締め付けて固定する。
【0033】
この状態では、ホースクランプ20の摘まみ片25が、ホース接続部12の周方向で回転規制部30(本実施形態の例では、対向突部31)に対向する。従って、回転規制部30がホースクランプ20の摘まみ片25に当接することで、ホースクランプ20の回転を規制することができる。これにより、例えば、ホースクランプ20をホース接続部12に対して回転させる外力が生じた場合等に、ホースクランプ20の回転を規制することで、ホースの回転も規制することが可能となる。しかも、上述のように、ホース接続部12とホース90がホースクランプ20で固定される接続構造では、ホース90とホース接続部12よりも、ホース90とホースクランプ20の方が、強固に固定される傾向があるため、ホースクランプ20の回転を規制することで、ホース90の回転を効果的に規制することが可能となる。このように、配管部材10によれば、ホース90とホース接続部12の固定の安定化を図ることが可能となり、ホース90とホース接続部12とのシール性の低下を抑制可能となる。
【0034】
また、本実施形態では、回転規制部30は、ホースクランプ20の一対の摘まみ片25,26のうち、一方の摘まみ片25のみを挟んで対向する一対の対向突部31を備えている。この構成によれば、回転規制部30がホースクランプ20の複数の突出片(一対の摘まみ片25,26等)を挟む構成よりも、回転規制部30をコンパクトにすることが可能となる。また、ホースクランプ20の動きを、一対の対向突部31の対向方向の両方で規制可能となる。本実施形態では、一対の対向突部31が、摘まみ片25をホース接続部12の周方向で両側から挟むので、ホースクランプ20の当該周方向の両側への回転を規制することができる。また、ホース90の外径により、様々なサイズのホースクランプ20が用いられることが考えられるが、一対の対向突部31を、一対の摘まみ片25,26のうち一方の摘まみ片のみを挟む構成とすれば、一対の摘まみ片25,26同士の上記周方向での間隔が様々であるホースクランプ20に対しても、一対の対向突部31の間隔を広げ過ぎなくてもよくなり、回転規制部30を、ホースクランプ20の回転の遊びが小さい構成とすることが可能となる。
【0035】
ところで、
図2及び
図4に示すように、配管部材10は、例えば、壁99(例えば浴室Sの壁)に固定され、壁99の取付孔99Aに部材接続部15が挿通されると共に、フランジ部42が壁99のうち取付孔99Aの開口縁に宛がわれる。そして、例えば、配管部材10のうち部材接続部15側の部分が、居住空間側に配置される。より具体的には、例えば、配管部材10(本実施形態の例では継手)は、浴室Sや洗面室等の水回り空間において、給水配管や給湯配管等の配管に使用される(例えば配管の一部として使用される)。上述のように浴室S等の壁99に固定される配管部材10では、例えば、部材接続部15が浴室S内の給水配管や給湯配管に接続される。ここで、本実施形態の例では、エルボ部40は、第3方向H3から見たときに屈曲形状をなしていて(
図2参照)、回転規制部30は、エルボ部40から第3方向H3で突出している(
図6参照)。従って、回転規制部30が壁99から離れる側に(例えば第2方向H2に)突出する構成に比べて、壁99に対する回転規制部30の突き出し量を抑えることができる。これにより、壁99の裏側のスペースをコンパクトにすることが可能となり、部材接続部15が配置される室内側のスペースを広げることが可能となる。
【0036】
また、本実施形態の例では、回転規制部30が、ホース接続部12の周方向の複数箇所に配置されていることで、ホースクランプ20の配置の自由度を高くすることができる。例えば、配管部材10の設置場所の周辺のスペースを考慮して、摘まみ片25,26が邪魔にならない向きにホースクランプ20を配置することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態では、回転規制部30やフランジ部42に、第1方向H1(ホース接続部12の中心軸J1方向)でホースクランプ20を突き当て可能な当接面30D,40Dが設けられるので、ホースクランプ20を当接面30D,40Dに当てて第1方向H1でのホースクランプ20の位置決めをすることが可能となる。
【0038】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、配管部材10が、継手として用いられたが、これに限定されるものではなく、ホースに接続される単なる配管や、ノズル等であってもよい。
【0039】
(2)上記実施形態では、エルボ部40において、一端側流路R1と他端側流路R2とが直交していたが、直角以外の角度で交差していてもよいし、エルボ部40の内部流路が、円弧状に曲がっていてもよい。また、配管部材10が、エルボ部40の代わりに、ホース接続部12から延長されたストレート状の管部を有し、配管部材10全体がストレート状に延びていてもよい。この場合、このストレート状の管部から回転規制部30を張り出させればよい。
【0040】
(3)上記実施形態では、フランジ部42が、ホース接続部12の中心軸J1方向(第1方向H1)に対して平行に配置されていたが、交差する配置になっていてもよい。また、上記実施形態では、フランジ部42が、部材接続部15の中心軸J2に対して垂直になっていたが、傾斜していてもよい。
【0041】
(4)上記実施形態では、配管部材10が、鍛造品を切削して得られたが、鍛造のみで形成できる形状になっていてもよい。また、配管部材10が、樹脂製であってもよく、例えば、射出成形品であってもよいし、3Dプリンターで形成されたものであってもよい。
【0042】
(5)上記実施形態では、一対の回転規制部30が、中心軸J1に対して回転対象かつ線対称に設けられていたが、回転対象でかつ線対称ではない形状であってもよいし、線対称でかつ回転対象ではない形状であってもよい。
【0043】
(6)上記実施形態において、回転規制部30は、1つだけ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。回転規制部30が複数設けられる場合、例えば、回転規制部30を、ホース接続部12を周方向で等分する位置に設けてもよい。
【0044】
(7)上記実施形態では、回転規制部30に、ホースクランプ20をホース接続部12の周方向の両側から挟んで対向する一対の対向部(対向突部31)が設けられていたが、ホースクランプ20に上記周方向の一方側から対向する対向部(対向突部31)のみが設けられていてもよい。
【0045】
(8)上記実施形態では、配管部材10(例えば、回転規制部30やフランジ部42)に、ホースクランプ20をホース接続部12の中心軸J1方向(第1方向)で突き当て可能な当接面(当接面30D,40D)が設けられていたが、このような当接面が設けられていなくてもよい。例えば、フランジ部42に、受容凹部42Uが設けられていなくてもよい。
【0046】
(9)上記実施形態では、配管部材10が、回転規制部30が一体形成されたものであったが、配管部材10を、別途形成しておいた回転規制部30を接着や溶接等により固定した構成とすることもできる。
【0047】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0048】
例えば、以下の特徴群は、配管部材に関し、「従来の配管部材として、ホースクランプによりホースと接続されるものが知られている(例えば、特開2013-204752号公報(
図2等)参照)。」という背景技術について、「ホースと配管部材の固定の安定化が求められている。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。また、従来の配管部材に対して、従来にない新たな配管部材の開発が望まれている。
【0049】
[特徴1]
ホースがホースクランプにより固定されるホース接続部を備える配管部材であって、
前記配管部材に一体形成されるとともに前記ホース接続部側に張り出し、前記ホースクランプの回転を規制する回転規制部を備える配管部材。
【0050】
本特徴によれば、ホースと配管部材の固定の安定化を図ることが可能となる。本特徴では、例えば、ホースクランプを回転させる外力が生じた場合に、ホースクランプの回転を規制できるので、ホースの回転も規制することが可能となる。これにより、ホースとホース接続部とのシール性が低下する虞を低減可能となる。
【0051】
[特徴2]
前記回転規制部は、前記ホースクランプの一の突出片(摘まみ片25)のみを挟んで対向する一対の対向部(対向突部31)を備える特徴1に記載の配管部材。
【0052】
本特徴によれば、回転規制部がホースクランプの複数の突出片を挟む構成よりも、回転規制部をコンパクトにすることが可能となる。また、ホースクランプの動きを、一対の対向部の対向方向の両方で規制可能となる。
【0053】
[特徴3]
前記回転規制部は、複数設けられている特徴1又は2に記載の配管部材。
【0054】
[特徴4]
前記ホース接続部から延長され、屈曲形状をなすエルボ部を備え、
前記回転規制部は、前記エルボ部から突出している特徴1から3の何れか1の特徴に記載の配管部材。
【0055】
[特徴5]
前記エルボ部は、第1の方向(第3方向H3)から見たときに屈曲形状をなし、
前記回転規制部は、前記エルボ部のうち前記ホース接続部寄りの位置から前記第1の方向で突出している特徴4に記載の配管部材。
【0056】
本特徴によれば、エルボ部のコーナーの外側で回転規制部により配管部材が嵩張ることを抑制可能となる。
【0057】
[特徴6]
前記ホースとは別の部材に接続される接続部を有して継手として使用される特徴1から5の何れか1の特徴に記載の配管部材。
【0058】
[特徴7]
特徴1から6の何れか1の特徴に記載の配管部材が、給水配管又は給湯配管に使用されている浴室。
【0059】
[特徴8]
特徴1から6の何れか1の特徴に記載の配管部材の製造方法であって、
前記回転規制部となる部分を含む張出部が前記ホース接続部と一体になった中間品を鍛造する鍛造工程と、
前記張出部の一部を前記ホース接続部から切り離すトレパニング加工を行って、前記回転規制部を形成すると共に前記回転規制部と前記ホース接続部との間に前記ホースの先端部を受容可能な受容溝を形成する切削工程と、を行う配管部材の製造方法。
【0060】
本特徴によれば、鍛造だけでは作れない形状の金属の配管部材を、トレパニング加工により容易に形成することが可能となる。
【0061】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0062】
10 配管部材
10A 中間体
12 ホース接続部
20 ホースクランプ
25 摘まみ片
26 摘まみ片
30 回転規制部
30A 張出部
31 対向突部
40 エルボ部
90 ホース