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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155197
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】配管部材及び浴室
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/26 20060101AFI20241024BHJP
   F16L 15/08 20060101ALI20241024BHJP
   E03C 1/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F16L33/26
F16L15/08
E03C1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069674
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】西 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】大北 達也
(72)【発明者】
【氏名】江口 智人
(72)【発明者】
【氏名】常松 大樹
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060AA01
2D060AB07
2D060AC03
(57)【要約】
【課題】配管部材の螺合接続の強度アップが望まれる。
【解決手段】本開示の配管部材は、金属筒で覆われる樹脂筒部を有する配管部材であって、前記金属筒のうち露出する周面には、螺子部が形成され、前記金属筒及び前記樹脂筒部の互いに当接する周面には、断面非円形をなして互いに回転不能に当接する回転規制部が形成されている配管部材である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属筒で覆われる樹脂筒部を有する配管部材であって、
前記金属筒のうち露出する周面には、螺子部が形成され、
前記金属筒及び前記樹脂筒部の互いに当接する周面には、断面非円形をなして互いに回転不能に当接する回転規制部が形成されている配管部材。
【請求項2】
前記回転規制部は、前記金属筒の径方向で前記螺子部と重なっている請求項1に記載の配管部材。
【請求項3】
前記回転規制部は、断面正多角形状になっている請求項2に記載の配管部材。
【請求項4】
前記回転規制部は、断面正八角形状になっている請求項3に記載の配管部材。
【請求項5】
前記樹脂筒部は、その周面に陥没する環状溝部を備えて、前記環状溝部の底面に前記回転規制部を有する請求項1から4の何れか1の請求項に記載の配管部材。
【請求項6】
請求項1から3の何れか1の請求項に記載の配管部材が、給水配管又は給湯配管に使用されている浴室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管部材に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の配管部材が他の配管部材と螺合接続される接続構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-317886号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配管部材の螺合接続の強度アップが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、金属筒で覆われる樹脂筒部を有する配管部材であって、前記金属筒のうち露出する周面には、螺子部が形成され、前記金属筒及び前記樹脂筒部の互いに当接する周面には、断面非円形をなして互いに回転不能に当接する回転規制部が形成されている配管部材である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る配管部材の断面図
図2】ホースに接続された配管部材の斜視図
図3】ホースに接続された配管部材の図1におけるA-A線断面図
図4】配管部材の側面図
図5】配管部材の図4におけるB-B線断面図
図6】配管部材の一部破断斜視図
図7】(A)配管部材の金属筒及び樹脂筒部の側断面図、(A)配管部材の樹脂筒部周辺における一部破断斜視図
図8図4におけるC-C線で切断された配管部材の斜視図
図9】配管部材の図4におけるC-C線断面図
図10】(A)配管部材の拡大C-C線断面図、(B)配管部材の拡大C-C線断面図
図11】(A)第2実施形態に係る配管部材の金属筒及び樹脂筒部の側断面図、(B)第2実施形態に係る配管部材の樹脂筒部周辺における一部破断斜視図
図12】(A)他の実施形態に係る配管部材の金属筒及び樹脂筒部の断面図、(B)他の実施形態に係る配管部材の金属筒及び樹脂筒部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る配管部材10は、継手として使用され、内部流路を有する部材(例えば、配管部材や流体機器等)同士を接続する。本実施形態では、配管部材10は、略L字状に屈曲しているが、ストレート状になっていてもよい。なお、配管部材10を流れる流体は、特に限定されるものではなく、例えば、液体であってもよいし、気体であってもよいし、気液混合体であってもよい。
【0008】
本実施形態の例では、配管部材10の一端部は、他の配管部材95(図1参照)と接続される。配管部材10の一端側に設けられる直筒状の配管接続部20は、雄螺子部51を外周面に備えていて、この雄螺子部51は、配管部材95の雌螺子部(例えば、ナットの雌螺子部)と螺合接続される。配管接続部20については、後に詳説する。
【0009】
配管部材10の他端部は、例えば、ホース90と接続される。配管部材10の他端側に設けられる直筒状のホース接続部12は、ホース90に挿入され、ホース90が、外側からホースクランプ60によって締め付けられることで固定されるものである。例えば、ホース接続部12の外周面には、係止突部17が設けられている(図1及び図4参照)。係止突部17は、上述のようにホースクランプ60によってホース90がホース接続部12に締め付けられると、ホース90の内面に食い込み可能になっている。例えば、係止突部17は、ホース接続部12の先端側を向くテーパ面を有し、ホース接続部12の基端に向かうにつれて突出量を大きくしていて、その基端の段差部により、ホース90の内面に係止し易くなっている。係止突部17は、ホース接続部12の周方向で複数設けられていてもよいし、該周方向全体に延びる環状であってもよい。また、係止突部17は、ホース接続部12の軸方向に複数並んでいてもよい。
【0010】
なお、例えば、ホースクランプ60は、図2及び図3に示すように、帯状板金を丸めてなり、リング状をなしている。ホースクランプ60は、その径方向外側に突出する一対の摘まみ片65,66を両端部に備え、それら端部同士が交差した構成になっている。ホースクランプ60は、一対の摘まみ片65,66が挟持されて近づけられると、弾性変形して拡径状態になる。そして、一対の摘まみ片65,66の挟持が解除されると、ホースクランプ60は、弾発力により縮径状態となって、上述のようにホースクランプ60の内側に挿通されたホース90を締め付けてホース接続部12の外面に押し付ける(図1及び図3参照)。
【0011】
なお、本実施形態の例では、配管部材10には、ホース接続部12に対して径方向外側から間隔を空けて対向する外側対向部30が設けられている(図5参照)。外側対向部30は、ホースクランプ60に外側から重なり(図1参照)、外側対向部30とホース接続部12との間に、ホース90の先端部を受容可能なホース受容溝30Uを形成すると共に、ホースクランプ60をホース接続部12の軸方向で突き当て可能な突き当て面30D(例えば段差面)を有する。配管部材10では、ホースクランプ60を、このように突き当てることで、位置決め可能になっている。なお、例えば、ホース90の可撓性が低い場合(例えばホース90に金属層が含まれる場合)等では、ホース90が掴まれたときに、ホース90からホース接続部12に曲げ負荷がかかることがあり、ホース接続部12の根元等が折れることがある。これに対し、本実施形態の配管部材10では、外側対向部30により、ホースクランプ60、即ち、ホース90及びホース接続部12を外側から支持することが可能となるので、ホース接続部12を折れ曲がり難くすることが可能となる。また、外側対向部30が、ホースクランプ60の摘まみ片65,66にホース接続部12の周方向で対向配置されることで、ホースクランプ60の回転が規制可能になっている。なお、本実施形態の例では、外側対向部30は、一対設けられている。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の例では、配管部材10の内部流路は、配管接続部20の内側に配置されるストレート状の一端側流路R1と、ホース接続部12の内側に配置されるストレート状の他端側流路R2とが、配管部材10のコーナー部40Cで交差してなる。以下では、配管接続部20の(一端側流路R1の)中心軸J1と、ホース接続部12の(他端側流路R2の)中心軸J2とに、共に直交する方向をZ方向と適宜呼ぶこととする(図3等参照)。
【0013】
図4及び図6に示すように、本実施形態の例では、配管部材10のうちコーナー部40Cよりも一端側(配管接続部20側)の部分からは、フランジ部42が外側に張り出している。例えば、フランジ部42は、ホース接続部12の中心軸J2(図1参照)と平行に配置されている。図3に示すように、フランジ部42の一部が、一方の外側対向部30を構成していてもよい。
【0014】
なお、例えば、コーナー部40Cからは、ホース接続部12とは反対側に固定用張出部18が張り出している。固定用張出部18は、配管部材10の固定用の雌螺子孔19を有している。例えば、この雌螺子孔19は、ホース接続部12と同軸上に配置されていて、ホース接続部12とは反対側に開口している。
【0015】
図4に示すように、本実施形態の例では、配管部材10のうちフランジ部42と配管接続部20との間の部分は、配管接続部20よりも拡径された拡径部27になっている。拡径部27の外周面には、雄螺子部27Nが形成されていると共に、Z方向に陥没した陥没凹部27Uが形成されている(図6及び図8参照)。拡径部27のうち配管接続部20側を向く面には、Z方向に延びる溝27Mが形成されている。本実施形態の例では、陥没凹部27Uと溝27Mはそれぞれ、複数ずつ設けられ、Z方向で線対称かつ中心軸J1回りで回転対称に配置され、陥没凹部27Uと溝27Mとは、配管接続部20の中心軸J1方向で重なっている(図6参照)。
【0016】
なお、例えば、図1に示すように、配管部材10は、壁99(例えば浴室Sの壁)に固定され、壁99の取付孔99Aに拡径部27が挿通されると共に、フランジ部42が壁99のうち取付孔99Aの開口縁に宛がわれる。そして、例えば、配管部材10の配管接続部20側の部分が、居住空間側に配置される。より具体的には、例えば、配管部材10(本実施形態の例では継手)は、浴室Sや洗面室等の水回り空間において、給水配管や給湯配管等の配管に使用される(例えば配管の一部として使用される)。上述のように浴室S等の壁99に固定される配管部材10では、例えば、部材接続部20が浴室S内の配管部材95(給水配管や給湯配管等)に接続される。なお、配管部材10には、拡径部27に雄螺子部27Nが設けられているので、壁99の取付孔99A又は配管部材95に雌螺子部を設けておいて、その雌螺子部を拡径部27の雄螺子部27Nと螺合させることもできる。
【0017】
さて、図1に示すように、本実施形態の例では、配管部材10は、樹脂製の配管部材本体40と、金属筒50とを備えている。配管部材本体40は、一端側流路R1と他端側流路R2を有する内部流路を含む部分である。金属筒50は、配管部材本体40の樹脂筒部21を覆う。樹脂筒部21は、配管部材本体40の一端部に設けられ、金属筒50のうち露出する外周面には、上述の雄螺子部51が形成されている。このように、配管部材95と接続される雄螺子部51が、配管部材本体40よりも硬度や強度が高い材質のもの(例えば、青銅や黄銅等の銅合金製のもの等)となっていることで、配管部材本体40と同じ材質のものである場合に比べて、配管部材10と配管部材95との螺合接続の強度アップを図ることが可能となる。また、雄螺子部51が金属で構成されることで、樹脂で構成される場合よりも耐久性の向上を図ることも可能となる。また、このような螺子部に比べて強度が必要とされない部分については、樹脂で構成することで、配管部材10の製造コストの削減を図ることも可能となる。なお、本実施形態の例では、配管部材本体40は、配管部材10のうち金属筒50以外の部分全体からなり、配管部材10は、配管部材本体40と金属筒50が一体化したインサート成形品である。
【0018】
ここで、このように樹脂筒部21を覆う金属筒50に螺子部が形成されている構成では、樹脂筒部21に対する金属筒50の回り止めが不十分であると、配管部材10と他の配管部材95とを螺合させる際に、金属筒50が配管部材95の雌螺子部と共回りし、螺合接続ができなくなるという問題が生じ得る。
【0019】
これに対し、本実施形態の配管部材10には、金属筒50と樹脂筒部21の相対回転を規制する回転規制部11が備えられている(図6及び図8参照)。具体的には、回転規制部11は、金属筒50と樹脂筒部21との互いに当接する周面に形成され、断面非円形をなして互いに回転不能に当接する。回転規制部11は、金属筒50の径方向で雄螺子部51と重なっている(図7(A)及び図7(B)参照)。これにより、金属筒50を軸方向でコンパクトにすることが可能となる。
【0020】
回転規制部11は、図9に示すように、中心軸J1方向から見ると正多角形状になっていて(断面正多角形状になっていて)、具体的には、本実施形態の例では、正八角形状になっている。また、本実施形態の例では、回転規制部11の中心軸は、配管接続部20の中心軸J1と一致している。回転規制部11の断面形状には、等間隔に配置された角28と、隣り合う角28同士を連絡する互いに同サイズの辺29と、が設けられる。
【0021】
図10(A)に示すように、本実施形態の例では、金属筒50の露出する周面(外周面)と、樹脂筒部21の露出する周面(内周面)との間の距離を、配管接続部20の径方向に2等分する仮想の中間円Mに対して、辺29は、2箇所で交わる。即ち、角28は、中間円Mよりも外側(中心軸J1から離れた側)に配置される。言い換えれば、正八角形の回転規制部11に対して、外接する仮想の外接円L(図10(B)参照)と、内接する仮想の内接円Sとの間に、上記中間円M(図10(A)参照)が位置することになる(内接円Sの半径RS<中間円Mの半径RM<外接円Lの半径RL)。この構成によれば、金属筒50と樹脂筒部21のうち一方が薄くなり過ぎることを抑制可能となる。即ち、図10(B)に示す金属筒50の最小の肉厚D1(樹脂筒部21の角28と対向する部分の肉厚)や樹脂筒部21の最小の肉厚D2(辺29の中央に位置する部分の肉厚)が小さくなり過ぎることを抑制可能となる。その結果、金属筒50又は樹脂筒部21の強度が低下し過ぎたり、加工が困難になって生産性が低下したりすることを抑制可能となる。なお、例えば、外接円Lよりも内接円Sの方が中間円Mに近くなるように回転規制部11を構成すると(図10参照)、外側の金属筒50よりも強度が低い内側の樹脂筒部21の厚さが薄くなり過ぎることを抑制し易くなる。
【0022】
ここで、回転規制部11の形状(中心軸J1方向から見た形状)を正六角形にすることも考えられるが(図12(A)参照)、回転規制部11の形状が正八角形である場合には、正六角形である場合に比べて、外接円Lと内接円Sとの径方向の距離(半径RLと半径RSの差)が半分程度になる(これは外接円Lと内接円Sの丁度中間の円を正八角形と正六角形の場合で同じ半径にしたときの比較である)。従って、その分だけ、金属筒50の最小の肉厚D1や樹脂筒部21の最小の肉厚D2を確保し易くなり、金属筒50や樹脂筒部21の強度アップを図ったり、加工の生産性を高めたりすることが可能となる。特に、雄螺子部51の外径や樹脂筒部21の(一端側流路R1の)内径の自由度が規格や仕様等により制限されている場合には、回転規制部11が正八角形である構成は、正六角形である構成に比べて有利であり、回転規制部11が雄螺子部51と金属筒50の径方向で重なる構成(図7(A)参照)においては径方向のスペースが限られるため、特に有利である。
【0023】
また、回転規制部11が正八角形である構成は、正六角形である構成に比べて、金属筒50や樹脂筒部21に必要な肉厚を確保しつつ、配管接続部20の総肉厚を薄くすることも可能となり、軽量化や製造コスト削減等の点でも有利である(例えば、円の断面積が半径の2乗に比例することから、半径RLと半径RSの差が小さくなることは特に効果的である)。
【0024】
ここで、回転規制部11の形状が正多角形である場合、その角の数が増える程、外接円Lと内接円Sの径方向の距離(半径RLと半径RSの差)は小さくなるが、回転規制部11が円形に近くなるため、樹脂筒部21に対する金属筒50の回り止めの機能は低くなると考えられる。これに対し、回転規制部11の形状が正八角形状である配管部材10では、樹脂筒部21に対する金属筒50の回転の防止効果が十分であることも確認できた。以上から、回転規制部11の形状は、正多角形の中では、正八角形が最も好ましい。
【0025】
本実施形態の例では、配管部材10に、金属筒50と樹脂筒部21とが金属筒50の軸方向(即ち、中心軸J1方向)で互いにスライドすることを規制するスライド規制部が設けられている。図7(A)に示すように、樹脂筒部21は、その外周面に陥没した環状溝部23を備えていて、その環状溝部23に、金属筒50の内周面に設けられた環状突部52が受容されている。そして、環状溝部23の内面のうち溝幅方向(中心軸J1方向)で互いに対向する対向面24,25が、環状突部52に中心軸J1方向で当接し、樹脂筒部21と金属筒50との相対的なスライドを不能にする。即ち、本実施形態の例では、上記対向面24,25と、環状突部52とに、上記スライド規制部が設けられている。なお、例えば、対向面24,25と、環状溝部23の底面23Mとは、直交している。
【0026】
本実施形態の例では、樹脂筒部21の回転規制部11は、環状溝部23の底面に設けられると共に、金属筒50の回転規制部11は、環状突部52に設けられている。
【0027】
なお、詳細には、本実施形態の例では、金属筒50は、雄螺子部51を軸方向の途中に有し、雄螺子部51に対して軸方向の両側の部分の外周面は、雄螺子部51の螺子底と略同軸同径の円筒面になっている。また、環状突部52は、金属筒50のうち軸方向の途中位置から拡径部27側の端まで延びている。言い換えれば、金属筒50の内周面は、軸方向の前記途中位置から先端側(拡径部27から離れる側)に拡径されている。また、本実施形態の例では、樹脂筒部21は、配管部材本体40のうち環状溝部23から先端までの部分になっていて、例えば、樹脂筒部21の先端と金属筒50の先端とが、中心軸J1方向でそろっている(それらの先端面同士が略面一になっている)。
【0028】
本実施形態の配管部材10は、例えば、以下のようにして製造することができる。本実施形態の配管部材10は、上述のようにインサート成形品であり、配管部材10を成形する図示しない成形金型に、金属筒50をセットして、成形金型内に樹脂を射出することで、配管部材本体40が金属筒50と一体に成形されることで得られる。このインサート成形によって、金属筒50と樹脂筒部21との互いの対向面全体が密着する。
【0029】
なお、本実施形態の例では、配管部材10(配管部材本体40)は、Z方向で型抜き可能な形状の外面を有している(図5参照)。成形金型には、Z方向に移動して、成形金型を型閉じ及び型開きする上型と下型とが備えられ、型閉じ状態での上型と下型により、配管部材本体40の外面が成形される。その後、成形金型が型開きされて、配管部材10(配管部材本体40)がZ方向で型抜きされる。本実施形態では、成形金型からの配管部材10の取り外しを容易することができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の配管部材10では、雄螺子部51が、金属で構成されるので、樹脂筒部21と同様に樹脂で構成される場合よりも、他の配管部材95等との螺合接続の強度アップを図ることが可能となる。また、金属筒50と樹脂筒部21の互いに当接する周面には、断面非円形をなして互いに回転不能に当接する回転規制部11が形成されているので、金属筒50と樹脂筒部21の相対回転が防がれ、他の配管部材95等との螺合接続の強度アップを図ることが可能となる。
【0031】
また、回転規制部11が、断面正多角形状になっているので、金属筒50や樹脂筒部21の肉厚の周方向の分布の偏りを抑制可能となる。しかも、回転規制部11が、断面正八角形状になっていると、回転規制部11が断面正六角形状になっている場合に比べて、金属筒50や樹脂筒部21が薄肉になり過ぎることを抑制しつつ、金属筒50や樹脂筒部21が径方向で嵩張ることを抑制可能となる。
【0032】
[第2実施形態]
図11(A)及び図11(B)に示す第2実施形態の配管部材10は、樹脂筒部21の外周面の形状と、金属筒50の内周面の形状とが、上記第1実施形態とは異なり、それ以外の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0033】
図11(A)に示すように、本実施形態では、樹脂筒部21の環状溝部23の一対の対向面24,25のうち樹脂筒部21の先端側を向く対向面24(拡径部27側の対向面)が、環状溝部23の底面23Mに向かうにつれて(中心軸J1に向かうにつれて)、樹脂筒部21の先端側に向かうように湾曲している(詳細には、凹面状に湾曲している)。そして、環状溝部23の内面に対応した形状となる金属筒50の内周面も、この湾曲部分に対応して凸面状に湾曲している(R形状になっている)。この構成では、環状溝部23の底面23Mと対向面24とが直交する構成に比べて、底面23Mと対向面24が交差する隅部における応力集中の抑制を図ることが可能となり、樹脂筒部21の耐久性の向上を図ることが可能となる。
【0034】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、配管部材10が、継手として用いられたが、これに限定されるものではなく、ホースに接続される単なる配管や、ノズル等であってもよい。
【0035】
(2)上記実施形態では、雄螺子部51を有する金属筒50が、樹脂筒部21を外側から覆っていたが、雌螺子部を有する金属筒が、樹脂筒部21を内側から覆って樹脂筒部21に一体化した配管部材(例えばインサート成形品)であってもよい。ここで、樹脂筒部21は、樹脂製のため、金属筒50に比べて、外気温の変化による収縮が起こり易い(縮径され易い)と考えられるが、このように樹脂筒部21が金属筒50の外側に設けられる構成では、このような収縮が起きても樹脂筒部21と金属筒50の一体化を容易に維持することが可能となる。また、金属筒50が樹脂筒部21を内側から覆う構成では、回転規制部11を、上記外接円Lの方が上記内接円Sよりも上記中間円Mに近いように構成してもよい。
【0036】
(3)上記実施形態では、配管部材10がインサート成形品であったが、例えば、配管部材10が、予め成形しておいた配管部材本体40(樹脂筒部21)に、金属筒50を接着材等で固定したものであってもよい。この場合、例えば、配管部材10を、金属筒50が樹脂筒部21の先端から装着可能な構成とすればよい。また、配管部材本体40は、3Dプリンタで成形されたものであってもよい。
【0037】
(4)上記実施形態では、回転規制部11が、金属筒50の環状突部52と、樹脂筒部21の環状溝部23の内面と、に設けられていたが、逆の構成で、回転規制部11が、金属筒50の環状の溝部の内面と、樹脂筒部21の環状の突部と、に設けられていてもよい。また、回転規制部11が、金属筒50と樹脂筒部21との互いに当接する周面に設けられていれば、これら環状の突部や環状の溝部が設けられていなくてもよい。
【0038】
(5)上記実施形態では、回転規制部11が、雄螺子部51と金属筒50の径方向で重なっていたが、回転規制部11が、雄螺子部51に対して重ならずに金属筒50の軸方向でずれていてもよい。
【0039】
(6)上記実施形態では、回転規制部11の形状は、正八角形状であったが、非円形な形状であればよく、これに限定されるものではない。回転規制部11の形状は、例えば、図12(A)に示すように正六角形状であってもよいし、正三角形状、正四角形状、正十角形状、正十二角形状であってもよいし、正多角形ではない多角形状であってもよい。また、回転規制部11の形状は、楕円状や長円形状であってもよいし、星形であってもよい。また、回転規制部11の形状は、中心軸J1に対して回転対象であってもよいし、線対称であってもよいし、このような対称性を有していなくてもよい。また、回転規制部11の中心軸が、樹脂筒部21や金属筒50の中心軸と一致していなくてもよい。
【0040】
(7)回転規制部11の形状は、図12(B)に示すような非円形状であってもよい。同図の例では、樹脂筒部21の外周面の回転規制部11は、円筒面の周方向の一部に凹部21U(例えば軸方向に延びる溝等)が形成された形状をなし、金属筒50の内周面の回転規制部11は、円筒面の周方向の一部に突部50T(例えば軸方向に延びる突条等)が形成された形状をなしている。そして、凹部21Uに突部50Tがぴたりと受容されている。また、逆の構成で、このような凹部が金属筒50に設けられると共に、凹部に受容される突部が樹脂筒部21に設けられていてもよい。なお、図12では、雄螺子部51の図示が省略されている。
【0041】
(8)上記実施形態において、樹脂筒部21の回転規制部11の角28が丸みを帯びていてもよい(例えばR形状に面取りされていてもよい)。この場合、金属筒50の内周面のうち角28と対向する隅部も、角28の形状に合わせてR形状(略円弧状の凹面)に形成してもよい。
【0042】
(9)上記実施形態では、金属筒50と樹脂筒部21が、配管部材10の一端部に設けられていたが、配管部材10の途中に設けられていてもよい。
【0043】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。
【0044】
例えば、以下の特徴群は、配管部材に関し、「樹脂製の配管部材が他の配管部材と螺合接続される接続構造が知られている(例えば、特開2002-317886号公報(図1等)参照)。」という背景技術について、「配管部材の螺合接続の強度アップが望まれる。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。また、従来の配管部材に対して、従来にない新たな配管部材の開発が望まれている。
【0045】
[特徴1]
金属筒で覆われる樹脂筒部を有する配管部材であって、
前記金属筒のうち露出する周面には、螺子部が形成され、
前記金属筒及び前記樹脂筒部の互いに当接する周面には、断面非円形をなして互いに回転不能に当接する回転規制部が形成されている配管部材。
【0046】
特徴1では、螺子部が、金属で構成されるので、樹脂筒部と同様に樹脂で構成される場合よりも、他の配管部材等との螺合接続の強度アップを図ることが可能となる。また、金属筒と樹脂筒部の互いに当接する周面には、断面非円形をなして互いに回転不能に当接する回転規制部が形成されているので、金属筒と樹脂筒部の相対回転が防がれ、他の配管部材等との螺合接続の強度アップを図ることが可能となる。
【0047】
[特徴2]
前記回転規制部は、前記金属筒の径方向で前記螺子部と重なっている特徴1に記載の配管部材。
【0048】
特徴2によれば、金属筒を軸方向にコンパクトにすることが可能となる。
【0049】
[特徴3]
前記回転規制部は、断面正多角形状になっている特徴1又は2に記載の配管部材。
【0050】
特徴3によれば、金属筒や樹脂筒部の肉厚の周方向の分布の偏りを抑制可能となる。
【0051】
[特徴4]
前記回転規制部は、断面正八角形状になっている特徴3に記載の配管部材。
【0052】
特徴4によれば、回転規制部が断面正六角形状になっている場合に比べて、金属筒や樹脂筒部が薄肉になり過ぎることを抑制しつつ、金属筒や樹脂筒部が径方向で嵩張ることを抑制可能となる。また、
【0053】
[特徴5]
前記樹脂筒部は、その周面に陥没する環状溝部を備えて、前記環状溝部の底面に前記回転規制部を有する特徴1から4の何れか1の特徴に記載の配管部材。
【0054】
特徴5によれば、樹脂筒部のうち環状溝部を挟んで対向する部分で、樹脂筒部に対する金属筒の軸方向でのスライドを規制できる。
【0055】
[特徴6]
前記金属筒及び前記樹脂筒部には、前記金属筒の軸方向で互いにスライド不能となるように当接するスライド規制部が形成され、
前記環状溝部の内面のうち溝幅方向で対向する部分に、前記スライド規制部を有する特徴5に記載の配管部材。
【0056】
[特徴7]
特徴1から6の何れか1の請求項に記載の配管部材が、給水配管又は給湯配管に使用されている浴室。
【0057】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0058】
10 配管部材
11 回転規制部
21 樹脂筒部
50 金属筒
51 雄螺子部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12