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特開2024-155199ホログラム像表示媒体及びホログラム像表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155199
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ホログラム像表示媒体及びホログラム像表示方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/30 20060101AFI20241024BHJP
   G03H 1/02 20060101ALI20241024BHJP
   G03H 1/22 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60Q1/30 A
G03H1/02
G03H1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069678
(22)【出願日】2023-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】513143537
【氏名又は名称】株式会社アーティエンス・ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100111659
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 聡
(72)【発明者】
【氏名】白倉 明
【テーマコード(参考)】
2K008
3K339
【Fターム(参考)】
2K008AA14
2K008CC03
2K008DD12
2K008FF07
2K008FF24
2K008HH02
3K339AA34
3K339BA07
3K339BA08
3K339BA21
3K339BA22
3K339BA23
3K339BA25
3K339CA25
3K339EA01
3K339EA06
3K339FA02
3K339FA03
3K339FA04
3K339FA05
3K339GA01
3K339GB22
3K339GC06
3K339HA30
(57)【要約】
【課題】ホログラム像を再生するための専用の光源を用いることなく、後方の車両の運転者の眼の高さが異なっていても、前方の物体との距離が変化したことを後方の車両の運転者が正確に確認できるようなホログラム像を再生するホログラム像表示媒体を提供する。
【解決手段】後方車20の前照灯21の路面2からの位置より低い位置にある前方車10の後部バンパー11に取り付けられるホログラム像表示媒体30であって、後方車20の前照灯21からの光束22が前方車10の後部に当たることにより、ホログラム像表示媒体30が照射され、前方車10と後方車20の車間距離の違いに応じて、異なるパターンのホログラム像が再生され、それを後方車20の運転者の目40が視認するようにしたホログラム像表示媒体30。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方の物体であって後方の車両の前照灯の上下方向の位置及び/又は左右方向の位置と異なる位置に取り付けられ、前記前照灯からの照射によりホログラム像が再生されるホログラム像表示媒体であって、
前記前方の物体と前記後方の車両の距離の変化に対応して異なるパターンの前記ホログラム像が再生され、前記後方の車両の運転者が再生された前記異なるパターンの前記ホログラム像を視認できるようにしたことを特徴とするホログラム像表示媒体。
【請求項2】
前記ホログラム像表示媒体は基材にフォトポリマ層が形成されたホログラム用記録媒体であり、前記フォトポリマ層には、
前記前照灯から上下方向及び/又は左右方向に第1の角度をもつ光が照射されたときに、第1の回折領域をもつ第1のホログラム像を再生する第1の干渉縞と、
前記前照灯から上下方向及び/又は左右方向に前記第1の角度とは異なる第2の角度をもつ光が照射されたときに、前記第1の回折領域とは異なる第2の回折領域をもち、前記第1のホログラム像とは異なるパターンの第2のホログラム像を再生する第2の干渉縞と
が記録されていることを特徴とする請求項1記載のホログラム像表示媒体。
【請求項3】
前記フォトポリマ層には、さらに、前記前照灯から上下方向及び/又は左右方向に前記第1の角度及び前記第2の角度とは異なる第3の角度をもつ光が照射されたときに、前記第1の回折領域及び前記第2の回折領域とは異なる第3の回折領域をもち、前記第1ホログラム像及び前記第2のホログラム像とは異なるパターンの第3のホログラム像を再生する第3の干渉縞が記録されていることを特徴とする請求項2記載のホログラム像表示媒体。
【請求項4】
前方の物体であって後方の車両の前照灯の上下方向の位置及び/又は左右方向の位置と異なる位置に取り付けられたホログラム像表示媒体に、前記前照灯から光を照射してホログラム像を再生するホログラム像表示方法であって、
前記前方の物体と前記後方の車両の距離の変化に対応して異なるパターンの前記ホログラム像が再生され、前記後方の車両の運転者が再生された前記異なるパターンの前記ホログラム像を視認できるようにしたことを特徴とするホログラム像表示方法。
【請求項5】
前記前照灯から上下方向及び/又は左右方向に第1の角度をもつ光が照射されたときに、第1の回折領域をもつ第1のホログラム像が再生され、
前記前照灯から上下方向及び/又は左右方向に前記第1の角度とは異なる第2の角度をもつ光が照射されたときに、前記第1の回折領域とは異なる第2の回折領域をもち、前記第1のホログラム像とは異なるパターンの第2のホログラム像が再生されることを特徴とする請求項4記載のホログラム像表示方法。
【請求項6】
前記前照灯から上下方向及び/又は左右方向に前記第1の角度及び前記第2の角度とは異なる第3の角度をもつ光が照射されたときに、前記第1の回折領域及び前記第2の回折領域とは異なる第3の回折領域をもち、前記第1ホログラム像及び前記第2のホログラム像とは異なるパターンの第3のホログラム像が再生されることを特徴とする請求項5記載のホログラム像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後方の車両の前方にある物体に取り付けて後方の車両の前照灯によりホログラム像を再生するようにしたホログラム像表示媒体及びホログラム像表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラムは、ホログラフィーによる干渉縞、すわなち、物体を表す物体光と参照光を干渉させて生じる干渉縞を感光材料に記録し、広告宣伝用の立体的な画像、セキュリティー用の画像等の種々の画像を表示するようにしたものである。
このホログラムは、一般の印刷された画像やディスプレイに表示された画像と異なり、ホログラム像を再生する媒体(ホログラム画像表示媒体)を見る方向・角度によって異なるホログラム像が見えたり、ホログラム像が見えなくなったりするようにできることから、前方の車両等の物体にホログラム像表示媒体を取り付け、後方の車両からこのホログラム像表示媒体が再生するホログラム像を視認するようにした種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平6-12599号公報)には、自動車の後部の低い位置にイメージホログラムを取り付け、このイメージホログラムの背後の所定位置に光源を配置し、光源からの照明によりイメージホログラムから再生される領域が該イメージホログラムから斜め上方後方に向かうものであり、後続の車が一定距離以内に近づいた時のみに後続の車の乗員がイメージホログラムの再生光を観察できるようになっている車間距離確認装置が開示されている。
しかしながら、特許文献1の車間距離確認装置では、イメージホログラムと光源の位置が固定され、イメージホログラムの再生の回折領域も固定される一方、後続の車の乗員(運転者)の眼の高さは、車の種類によって大きく異なることから(運転者の眼の高さは、普通乗用車では路面から約1.2m、ワンボックスカーでは路面から約1.8m、トラックでは路面から約2.4mとなる。)、後続の車の乗員がイメージホログラムの再生光を観察できる前方の車との車間距離が、車の種類によって大きく異なり、特許文献1の車間距離確認装置は、特定種類の車(例えば普通乗用車)にしか適用できないという問題がある。
また、特許文献1の車間距離確認装置では、イメージホログラムの背後に取り付けた光源によってイメージホログラムの再生させることから、車に光源を配置するスペースが必要となるばかりか、光源を常時点灯させる必要があり、それによる電力消費が大きくなるという問題がある。
さらに、特許文献1の車間距離確認装置では、夜間においては、後続の車のヘッドライトが前方の車のイメージホログラムを照射してその反射光が後続の車の乗員の眼に入り、イメージホログラムの再生像が見にくくなるという問題がある。
【0004】
次に、特許文献2(特開平9-315236号公報)には、車両の車体や窓ガラス表面に装着され文字やマークを表示する装飾用の車両用オーナメントにおいて、前記オーナメントは基板に配されたホログラムを有しており、前記ホログラムは車外の外光や後続車のヘッドランプによりホログラムに記録された複数のパターンをそれぞれ特定の方向に回折するホログラムである車両用オーナメントが開示されている。
しかしながら、特許文献2の車両用オーナメントは、ある方向から入射した光を第1の特定の方向に回折する第1のホログラムと同じ方向から入射した光を第1の特定の方向とは異なる特定の方向に回折する第2のホログラムを透明基板に取り付け、視認者が第1のホログラムのパターンと第2のホログラムのパターンを異なる方向から視認できるようにしたもので、前方車と後続車の距離の変化に対応して後続車の運転者が異なるホログラムのパターンを視認するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-12599号公報
【特許文献2】特開平9-315236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ホログラム像を再生するための専用の光源を用いることなく、後方の車両の運転者の眼の高さが異なっていても、前方の物体との距離が変化したことを後方の車両の運転者が正確に確認できるようなホログラム像を再生するホログラム像表示媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、前方の物体であって後方の車両の前照灯の上下方向の位置及び/又は左右方向の位置と異なる位置に取り付けられ、前記前照灯からの照射によりホログラム像が再生されるホログラム像表示媒体であって、前記前方の物体と前記後方の車両の距離の変化に対応して異なるパターンの前記ホログラム像が再生され、前記後方の車両の運転者が再生された前記異なるパターンの前記ホログラム像を視認できるようにしたホログラム像表示媒体を提供して、上記課題を解決するものである。
【0008】
請求項2の発明は、前記ホログラム像表示媒体は基材にフォトポリマ層が形成されたホログラム用記録媒体であり、前記フォトポリマ層には、前記前照灯から上下方向及び/又は左右方向に第1の角度をもつ光が照射されたときに、第1の回折領域をもつ第1のホログラム像を再生する第1の干渉縞と、前記前照灯から上下方向及び/又は左右方向に前記第1の角度とは異なる第2の角度をもつ光が照射されたときに、前記第1の回折領域とは異なる第2の回折領域をもち、前記第1のホログラム像とは異なるパターンの第2のホログラム像を再生する第2の干渉縞とが記録されているホログラム像表示媒体を提供して、上記課題を解決するものである。
【0009】
請求項3の発明は、前記フォトポリマ層には、さらに、前記前照灯から上下方向及び/又は左右方向に前記第1の角度及び前記第2の角度とは異なる第3の角度をもつ光が照射されたときに、前記第1の回折領域及び前記第2の回折領域とは異なる第3の回折領域をもち、前記第1ホログラム像及び前記第2のホログラム像とは異なるパターンの第3のホログラム像を再生する第3の干渉縞が記録されているホログラム像表示媒体を提供して、上記課題を解決するものである。
【0010】
請求項4の発明は、前方の物体であって後方の車両の前照灯の上下方向の位置及び/又は左右方向の位置と異なる位置に取り付けられたホログラム像表示媒体に、前記前照灯から光を照射してホログラム像を再生するホログラム像表示方法であって、前記前方の物体と前記後方の車両の距離の変化に対応して異なるパターンの前記ホログラム像が再生され、前記後方の車両の運転者が再生された前記異なるパターンの前記ホログラム像を視認できるようにしたホログラム像表示方法を提供して、上記課題を解決するものである。
【0011】
請求項5の発明は、前記前照灯から上下方向及び/又は左右方向に第1の角度をもつ光が照射されたときに、第1の回折領域をもつ第1のホログラム像が再生され、前記前照灯から上下方向及び/又は左右方向に前記第1の角度とは異なる第2の角度をもつ光が照射されたときに、前記第1の回折領域とは異なる第2の回折領域をもち、前記第1のホログラム像とは異なるパターンの第2のホログラム像が再生されるホログラム像表示方法を提供して、上記課題を解決するものである。
【0012】
請求項6の発明は、前記前照灯から上下方向及び/又は左右方向に前記第1の角度及び前記第2の角度とは異なる第3の角度をもつ光が照射されたときに、前記第1の回折領域及び前記第2の回折領域とは異なる第3の回折領域をもち、前記第1ホログラム像及び前記第2のホログラム像とは異なるパターンの第3のホログラム像が再生されるホログラム像表示方法を提供して、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明のホログラム像表示媒体においては、後方の車両の前照灯からの照射によりホログラム像が再生されることから、専用の光源を用いることなくホログラム像を再生でき、再生されるホログラム像により、後方の車両の運転者の眼の高さが異なっていても、前方の物体との距離が変化したことを後方の車両の運転者が正確に確認できるという効果を奏する。
【0014】
請求項2に記載の発明のホログラム像表示媒体においては、さらに、前方の物体と後方の車両の距離が変化し、後方の車両の前照灯から上下方向及び/又は左右方向に第1の角度をもつ光が照射されたときに、ホログラム像表示媒体に記録された第1の干渉縞により、第1の回折領域をもつ第1のホログラム像を再生が再生され、後方の車両の前照灯から上下方向及び/又は左右方向に第2の角度をもつ光が照射されたときに、ホログラム像表示媒体に記録された第2の干渉縞により、第2の回折領域をもち第1のホログラム像とは異なるパターンの第2のホログラム像が再生されることから、後方の車両の運転者は、ホログラム像表示媒体で再生されるホログラム像のパターンが第1のホログラム像から第2のホログラム像に変化することにより、前方の物体との距離が変化したことを知ることができるという効果を奏する。
【0015】
請求項3に記載の発明のホログラム像表示媒体においては、さらに、前方の物体と後方の車両の距離が変化し、後方の車両の前照灯から上下方向及び/又は左右方向に第3の角度をもつ光が照射されたときに、ホログラム像表示媒体に記録された第3の干渉縞により、第3の回折領域をもち第1ホログラム像及び第2のホログラム像とは異なるパターンの第3のホログラム像を再生が再生されることから、後方の車両の運転者は、ホログラム像表示媒体で再生されるホログラム像のパターンが第1のホログラム像や第2のホログラム像から第3のホログラム像に変化することにより、前方の物体との距離が変化したことを知ることができるという効果を奏する。
【0016】
請求項4に記載の発明のホログラム像表示方法においては、後方の車両の前照灯からの照射によりホログラム像が再生されることから、専用の光源を用いることなくホログラム像を再生でき、再生されるホログラム像により、後方の車両の運転者の眼の高さが異なっていても、前方の物体との距離が変化したことを後方の車両の運転者が正確に確認できるという効果を奏する。
【0017】
請求項5に記載の発明のホログラム像表示方法においては、さらに、前方の物体と後方の車両の車間距離が変化し、後方の車両の前照灯から上下方向及び/又は左右方向に第1の角度をもつ光が照射されたときに、第1の回折領域をもつ第1のホログラム像を再生が再生され、後方の車両の前照灯から上下方向に第2の角度をもつ光が照射されたときに、第2の回折領域をもち第1のホログラム像とは異なるパターンの第2のホログラム像が再生されることから、後方の車両の運転者は、ホログラム像表示媒体で再生されるホログラム像のパターンが第1のホログラム像から第2のホログラム像に変化することにより、前方の物体との距離が変化したことを知ることができるという効果を奏する。
【0018】
請求項6に記載の発明のホログラム像表示方法においては、さらに、前方の物体と後方の車両の距離が変化し、後方の車両の前照灯から上下方向及び/又は左右方向に第3の角度をもつ光が照射されたときに、第3の回折領域をもち第1ホログラム像及び第2のホログラム像とは異なるパターンの第3のホログラム像を再生が再生されることから、後方の車両の運転者は、ホログラム像表示媒体で再生されるホログラム像のパターンが第1のホログラム像や第2のホログラム像から第3のホログラム像に変化することにより、前方の物体との距離が変化したことを知ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明を実施するためのホログラム像表示システム全体の構成を表した側面図である。
図2図1のホログラム像表示システムの平面図である。
図3】前方車の背面図である。
図4】後部バンパー11に取り付けられたホログラム像表示媒体30の拡大横断面図である。
図5】後部バンパー11に取り付けられた他のホログラム像表示媒体の拡大横断面図である。
図6】後方車20の前照灯21からの光が前方車10のホログラム像表示媒体30を照射した場合、ホログラム像表示媒体30の回折光を説明するための説明図である。
図7】車間距離Lが異なるとホログラム像表示媒体30で再生されるホログラム像のパターンが異なることを説明するための説明図である。
図8】ホログラム像表示媒体30で再生されるホログラム像のパターンの例を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[本発明を実施するためのホログラム像表示システムの全体構成]
図1は、本発明を実施するためのホログラム像表示システム全体の構成を表した側面図、図2は、図1のホログラム像表示システムの平面図、図3は、前方車の背面図である。
図中、1はホログラム像表示システム、2は路面、10は本発明の前方の物体となる前方車、11は後部バンパー、20は後方車、21は前照灯(ヘッドライト)、21Rは右前照灯、21Lは左前照灯、22は光束、22Rは右光束、22Lは左光束、30はホログラム像表示媒体、40は後方車の運転者の目であり、光束22、右光束22R及び左光束22Lを網点で表す。
ホログラム像表示システム1は、前方車10、後方車20、後方車の前照灯21及びホログラム像表示媒体30から構成され、図では、前方車10は普通乗用車を表し、後方車20はワンボックスカーを表している。
ホログラム像表示媒体30は、前方車10の後部バンパー11に取り付けられ、ホログラム像表示媒体30(後部バンパー11)の路面2からの位置(高さ)は、後方車20の前照灯21の路面2からの位置(高さ)より低くなっている。
そして、ホログラム像表示システム1においては、後方車20の前照灯21(右前照灯21Rと左前照灯21L)を点灯させ、光束22(右光束22Rと左光束22L)が前方車10の後部に当たることにより、ホログラム像表示媒体30が照射され、前方車10と後方車20の車間距離の違いに応じて、異なるパターンのホログラム像が再生され、それを後方車20の運転者の目40が視認することとなる(詳細は後述する)。
なお、本発明における前方の物体は、普通乗用車、ワンボックスカー、トラック等の四輪自動車、自動二輪車、自転車、原動機付自転車、建設車両等の前方の車両に限定されず、後方の車両が走行する道路や線路の後方の車両より前方の部分、後方の車両の前方にある構造物、縁石、ガードレール、トンネル壁面、標識、案内板等であってもよい。
【0021】
図4は、後部バンパー11に取り付けられたホログラム像表示媒体30の拡大横断面図であり、図中、31は基材となるベースフィルム、32はフォトポリマ層、33はカバーフィルムである。
ホログラム像表示媒体30は、ホログラム像再生用記録媒体であり、図4に示すように、例えばPETフィルムからなるベースフィルム31の一方の面に光重合型フォトポリマからなるフォトポリマ層32が形成され、その上に例えばPETフィルムからなるカバーフィルム33が被着されたものである。
このホログラム像表示媒体30のベースフィルム31の他方の面が接着材等(図示せず)介して後部バンパー11に貼り付けられる。
フォトポリマ層32は、体積型ホログラフィック記録層となるもので、フォトポリマ層32には、第1の干渉縞、第2の干渉縞及び第3の干渉縞が多重記録されている。
第1の干渉縞は、前照灯21から上下方向に第1の角度をもつ光が照射されたときに第1の回折領域(視野角)をもつ第1のホログラム像を再生する干渉縞であり、第2の干渉縞は、前照灯21から上下方向に第1の角度とは異なる第2の角度をもつ光が照射されたときに第1の回折領域(視野角)とは異なる第2の回折領域(視野角)をもち、第1のホログラム像とは異なるパターンの第2のホログラム像を再生する干渉縞であり、第3の干渉縞は、前照灯21から上下方向に第1・第2の角度とは異なる第3の角度をもつ光が照射されたときに第1・第2の回折領域(視野角)とは異なる第3の回折領域(視野角)をもち、第1・第2のホログラム像とは異なるパターンの第3のホログラム像を再生する干渉縞である。
【0022】
図5は、後部バンパー11に取り付けられた他のホログラム像表示媒体の拡大横断面図であり、図中、30’はホログラム像表示媒体、32’は多層フォトポリマ層、32aは第1フォトポリマ層、32bは第2フォトポリマ層、32cは第3フォトポリマ層であり、図4に示すものと同一のものには同一の符号を付す。
ホログラム像表示媒体30’は、図4に示すホログラム像表示媒体30において、フォトポリマ層32を多層フォトポリマ層32’としたホログラム像再生用記録媒体であり、ベースフィルム31の一方の面に多層フォトポリマ層32’が形成され、その上にカバーフィルム33が被着されたものであり、ベースフィルム31の他方の面が接着材等介して後部バンパー11に貼り付けられる。
第1フォトポリマ層32a、第2フォトポリマ層32b及び第3フォトポリマ層32cは、いずれも光重合型フォトポリマからなる体積型ホログラフィック記録層であり、第1フォトポリマ層32aには、上記第1のホログラム像を再生する第1の干渉縞が記録され、第2フォトポリマ層32bには、上記第2のホログラム像を再生する第2の干渉縞が記録され、第3フォトポリマ層32cには、上記第3のホログラム像を再生する第3の干渉縞が記録されている。
【0023】
[ホログラム像表示媒体30の回折光]
図6は、後方車20の前照灯21からの光が前方車10のホログラム像表示媒体30を照射した場合、ホログラム像表示媒体30の回折光を説明するための説明図であり、図6(a)は、ホログラム像表示媒体30の回折光等を示した側面図、図5(b)は、ホログラム像表示媒体30の回折光等を示した平面図である。
図中、23は前照灯21からの照射光、23R1、23R2は右前照灯21Rからの照射光、23L1、23L2は左前照灯21Lからの照射光、40aは後方車が普通自動車である場合の運転者の眼、40bは後方車がトラックである場合の運転者の眼、40’は後方車の助手席同乗者の眼、50Vはホログラム像表示媒体30からの上下方向の回折光領域、50Vaは下側境界面、50Vbは上側境界面、50Hはホログラム像表示媒体30からの左右方向の回折光領域、50HRは右側境界面、50HLは左側境界面、60はホログラム像表示媒体30の中心を通る水平面、61はホログラム像表示媒体30の右端を通る垂直面、62はホログラム像表示媒体30の左端を通る垂直面であり、回折光領域50V、50Hを網点で表す。
今、ホログラム像表示媒体30を前照灯21より低い位置に取り付けられており、ホログラム像表示媒体30の中心の路面2からの高さをhf、前照灯21の中心の路面からの高さをhg(>hf)、前方車と後方車の距離(ホログラム像表示媒体30と前照灯21との前後方向の距離)をLとすると、前照灯21の照射光23がホログラム像表示媒体30の中心を照射する上下方向の水平面60に対する角θは、
tanθ=(hg-hf)/L
を満たすこととなる(図6(a)参照)。
【0024】
ホログラム像表示媒体30の上下方向の長さは、距離Lに比べて十分に小さいことから、前照灯21は、角度θでホログラム像表示媒体30を照射することとなる。
そして、前方車と後方車の距離Lが短くなるにつれて角度θ(前照灯21がホログラム像表示媒体30を照射する上下方向の角度)は大きくなる。
この場合、前照灯21の中心の路面からの高さをhgは、後方車の種類に依らず0.8~1.0mとほぼ一定であることから、ホログラム像表示媒体30の中心の路面2からの高さhfを一定にすれば、後方車の種類に依らず、角度θは距離Lに対応して変化する。
また、前方車と後方車の前後方向の中心線が一直線上あるとして、ホログラム像表示媒体30の左右方向の長さ(幅)をwf、右前照灯21Rと左前照灯21Lの中心距離をwgとすると、右前照灯21Rからの照射光23R1、23R2が画像表示媒体30の右端、左端を照射する左右方向の垂直面61、62に対する角度をΨi1、Ψi2とすると、角度Ψi1、Ψi2は、
tan(Ψi1)=(wg-wf)/2L
tan(Ψi2)=(wg+wf)/2L
を満たすこととなる(図6(b)参照)。
左前照灯21Lからの照射光は右前照灯21Rからの照射光と左右対称となることから、左前照灯21Lからの照射光23L1、23L2が画像表示媒体30の左端、右端を照射する左右方向の垂直面61、62に対する角度は、Ψi1、Ψi2となる。
【0025】
後方者の運転者の眼40a、40bの路面2からの高さをHa、Hbとし、眼40a、40bと画像表示媒体30の中心を結ぶ線が水平面60となす上下方向の角度をφa、φbとすると、眼40a、40bとホログラム像表示媒体30との前後方向の距離は距離Lに近似でき、角度φa、φbは、
tanφa=(Ha-hf)/L
tanφb=(Hb-hf)/L
を満たすことなる。
また、後方者の運転者の眼40と助手席同乗者の眼40’の距離をWaとし、眼40と画像表示媒体30の右端を結ぶ線が垂直面61に対する角度をΨsとすると、角度Ψsは、
tanΨs=(Wa-wf)/2L
を満たすこととなる(図6(b)参照)。
眼40と眼40’は左右対称の位置にあることから、眼40’とホログラム像表示媒体30の左端を結ぶ線が垂直面62に対する角もΨsとなる。
【0026】
そして、ホログラム像表示媒体30には、上下方向において、前照灯21からの照射光23により、下側境界面50Vaと上側境界面50Vbで囲まれた回折光領域50Vに回折光を再生するような干渉縞が記録されており、下側境界面50Vaが水平面60となす角度がφaとなり、上側境界面50Vbが水平面60となす角度がφbとなる(図6(a)参照)。
また、ホログラム像表示媒体30には、左右方向において、右前照灯21Rからの照射光23R1、23R2と左前照灯21Lからの照射光23RL、23L2とにより、右側境界面50HRと左側境界面50HLで囲まれた回折光領域50Hに回折光を再生するような干渉縞が記録されており、右側境界面50HR、左側境界面50HLと垂直面61、62となす角度がΨsとなる(図6(b)参照)。
これにより、上下方向において、後方車が普通乗用車やトラックであってもその運転者の眼40a、40bは、回折光領域50V内にあり、ホログラム像表示媒体30に記録された干渉縞で再生される回折光によるホログラム像を視認できる(後方車がワンボックスカーであればその運転者の眼の高さは眼40a、40bの高さの間にあり、ワンボックスカーの運転者もホログラム像表示媒体30で再生される回折光によるホログラム像を視認できる)。
また、左右方向において、後方車の運転者の眼40aと同乗者の眼40’は、回折光領域50H内にあり、運転者と同乗者は、ホログラム像表示媒体30で再生される回折光によるホログラム像を視認できる。
【0027】
[距離に対応したパターンのホログラム像の再生]
図7は、距離Lが異なるとホログラム像表示媒体30で再生されるホログラム像のパターンが異なることを説明するための説明図であり、図7(a)、(b)、(c)は、それぞれ距離L1、L2、L3における前照灯21からの照射光とホログラム像表示媒体30からの回折光を示した側面図である。
図7(a)に示すように距離L1では、前照灯21は、上下方向に以下を満たす角度θ1でホログラム像表示媒体30を照射する。
tanθ1=(hg-hf)/L1
今、hf=0.3m、hg=0.9m、L1=30mとすると、tanθ1=0.02となり、θ1=1.2度となる。
また、ホログラム像表示媒体30には、上下方向において、前照灯21から角度θ1で照射されると、水平面60となす角度φa1の下側境界面50Va1と、水平面60となす角度がφb1の上側境界面50Vb1とで囲まれた第1の回折光領域50V1に回折光を再生する第1の干渉縞が記録されており、角度φa1、φb1は、以下の式を満たす。
tanφa1=(Ha-hf)/L1
tanφb1=(Hb-hf)/L1
今、Ha=1.2m、Hb=2.4m、hf=0.3m、L1=30mとすると、tanφa1=0.03、tanφb1=0.07となり、φa1=1.8度、φb1=4.0度となる。
これより、距離L1が30mになると、前照灯21が上下方向に1.2度の角度でホログラム像表示媒体30を照射し、ホログラム像表示媒体30は、下側1.8度、上側4.0度の第1の回折光領域50V1に回折光を再生し、後方車が普通乗用車であってもトラックであっても、運転者は、第1の干渉縞で再生される回折光による第1のホログラム像を視認することができる。
【0028】
図7(b)に示すように距離L2では、前照灯21は、上下方向に以下を満たす角度θ2でホログラム像表示媒体30を照射する。
tanθ2=(hg-hf)/L2
今、hf=0.3m、hg=0.9m、L2=20mとすると、tanθ2=0.03となり、θ2=1.8度となる。
また、ホログラム像表示媒体30には、上下方向において、前照灯21から度角θ2で照射されると、水平面60となす角度がφa2の下側境界面50Va2と、水平面60となす角度がφb2の上側境界面50Vb2とで囲まれた第2の回折光領域50V2に回折光を再生する第2の干渉縞が記録されており、角度φa2、φb2は、以下の式を満たす。
tanφa2=(Ha-hf)/L2
tanφb2=(Hb-hf)/L2
今、Ha=1.2m、Hb=2.4m、hf=0.3m、L2=20mとすると、tanφa2=0.045、tanφb2=0.105となり、φa2=2.6度、φb2=6.0度となる。
これより、距離L2が20mになると、前照灯21が上下方向に1.8度の角度でホログラム像表示媒体30を照射し、ホログラム像表示媒体30は、下側2.6度、上側6.0度の第2の回折光領域50V2に回折光を再生し、後方車が普通乗用車であってもトラックであっても、運転者は、第2の干渉縞で再生される回折光による第2のホログラム像(第1のホログラム像とは異なるパターンのホログラム像)を視認することができる。
【0029】
図7(c)に示すように距離L3では、前照灯21は、上下方向に以下を満たす角度θ3でホログラム像表示媒体30を照射する。
tanθ3=(hg-hf)/L3
今、hf=0.3m、hg=0.9m、L3=10mとすると、tanθ3=0.06となり、θ3=3.6度となる。
また、ホログラム像表示媒体30には、上下方向において、前照灯21から角度θ3で照射されると、水平面60となす角度φa3の下側境界面50Va3と、水平面60となす角度がφb3の上側境界面50Vb3とで囲まれた第3の回折光領域50V3に回折光を再生する第2の干渉縞が記録されており、角度φa3、φb3は、以下の式を満たす。
tanφa3=(Ha-hf)/L3
tanφb3=(Hb-hf)/L3
今、Ha=1.2m、Hb=2.4m、hf=0.3m、L3=10mとすると、tanφa3=0.09、tanφb3=0.21となり、φa3=5.3度、φb3=12.0度となる。
これより、距離L3が10mになると、前照灯21が上下方向に3.6度の角度でホログラム像表示媒体30を照射し、ホログラム像表示媒体30は、下側5.3度、上側12.0度の第3の回折光領域50V3に回折光を再生し、後方車が普通乗用車であってもトラックであっても、運転者は、第3の干渉縞で再生される回折光よる第3のホログラム像(第1のホログラム像、第2のホログラム像とは異なるパターンのホログラム像)を視認することができる。
【0030】
図8は、ホログラム像表示媒体30で再生されるホログラム像のパターンの例を示した正面図であり、図中、71は第1のホログラム像、72は第2のホログラム像、73は第3のホログラム像である。
図8(a)に示すように、第1のホログラム像71は、緑色の間隔の広いラインペア像のパターンのホログラム像であり、第2のホログラム像72は、赤色の間隔の狭いラインペア像のパターンのホログラム像であり、第3のホログラム像73は、「車間をあけて Keep your distance!」文字からなるパターンのホログラム像である。
これより、後方車の運転者には、前方車との距離がL1(例えば30m)近くになると前方車の後部下部に第1のホログラム像71(例えば緑色の間隔の広いラインペア像のパターン)が見え始め、前方車との距離がL2(例えば20m)近くになると前方車の後部下部に見えていた第1のホログラム像71が第2のホログラム像72(例えば赤色の間隔の狭いラインペア像のパターン)に変化し、前方車との距離がL3(例えば10m)近くになると前方車の後部下部に見えていた第2のホログラム像72が第3のホログラム像73(例えば「車間をあけて Keep your distance!」文字からなるパターン)に変化する。
よって、後方車の運転者は、前方車との距離が異なることにより、前方車の後部下部に取り付けられたホログラム像表示媒体30から異なるパターンのホログラム像を視認でき、前方車との距離がどの程度変化したのかを正確に認識することができる。
【0031】
[左右方向の照射角の変化]
前方車と後方車の距離Lが短くなると、右前照灯21R・左前照灯21Lがホログラム像表示媒体30を照射する左右方向の角度Ψi1、Ψi2は大きくなる(図6(b))。
図7に示す例では、ホログラム像表示媒体30は、前照灯21からの上下方向の角度θの変化(角度θ1、θ2、θ3)にのみ対応して異なるパターンのホログラム像(第1のホログラム像71、第2のホログラム像72、第3のホログラム像73)を再生し、右前照灯21R・左前照灯21Lからの照射角度Ψi1、Ψi2の変化にホログラム像のパターンは依存しないようにしている。
この場合、距離L(L1、L2、L3)に対応してホログラム像表示媒体30が再生するホログラム像のパターン(第1のホログラム像71、第2のホログラム像72、第3のホログラム像73)は、右前照灯21R・左前照灯21Lがホログラム像表示媒体30を照射する左右方向の角度Ψi1、Ψi2の変化にも対応するようにしてもよい。
すなわち、距離L1、L2、L3おける右前照灯21R・左前照灯21Lがホログラム像表示媒体30を照射する左右方向の角度をΨi11・Ψi21、Ψi12・Ψi22、Ψi12・Ψi23とすると、前方車との距離がL1となり、前照灯21が上下方向の角度θ1でホログラム像表示媒体30を照射し、右前照灯21R・左前照灯21Lが左右方向の角度Ψi11、Ψi21でホログラム像表示媒体30を照射した場合、ホログラム像表示媒体30は第1のホログラム像71を再生し、前方車との距離がL2となり、前照灯21が上下方向の角度θ2でホログラム像表示媒体30を照射し、右前照灯21R・左前照灯21Lが左右方向の角度Ψi12、Ψi22でホログラム像表示媒体30を照射すると、ホログラム像表示媒体30が第2のホログラム像72を再生し、前方車との距離がL3となり、前照灯21が上下方向の角度θ3でホログラム像表示媒体30を照射し、右前照灯21R・左前照灯21Lが左右方向の角度Ψi13、Ψi23でホログラム像表示媒体30を照射すると、ホログラム像表示媒体30が第3のホログラム像73を再生するようにしてもよい。
また、距離L(L1、L2、L3)に対応してホログラム像表示媒体30が再生するホログラム像のパターンは、右前照灯21R・左前照灯21Lがホログラム像表示媒体30を照射する左右方向の角度Ψi1、Ψi2の変化だけに対応して変化し、前照灯21からの上下方向の角度θの変化には依存しないようにしてもよい。
【0032】
以上のようにホログラム像表示システム1においては、前方車10の後部下部の後方車20の前照灯21より低い位置にホログラム像表示媒体30が取り付けられ、ホログラム像表示媒体30には、第1の干渉縞、第2の干渉縞及び第3の干渉縞が記録されている。
この場合、運転者の眼40の路面からの高さは、後方車20の種類(普通乗用車、ワンボックスカー、トラック)によって大きく異なるが、前照灯21の路面からの高さは、後方車20の種類に依らずほぼ一定であり、ホログラム像表示媒体30の路面からの高さは後方車20の前照灯21の路面からの高さより低いことから、前方車10と後方車20の距離Lが短くなるにつれて、前照灯21がホログラム像表示媒体30を照射する上下方向の角度θは大きくなる。
そして、前方車と後方車の距離がL1(例えば30m)になり、後方車の前照灯21が前方車のホログラム像表示媒体30を上下方向の角度θ1(例えば1.2度)で照射すると、ホログラム像表示媒体30の第1の干渉縞により、下側の角度がφa1(例えば1.8度)、上側の角度がφb1(例えば4.0度)の第1の回折光領域50V1に回折光が再生され、後方車20の種類に依らず、運転者は第1のホログラム像71を視認することができ、また、前方車と後方車の距離がL2(例えば20m)になり、後方車の前照灯21がホログラム像表示媒体30を上下方向の角度θ2(例えば1.8度)で照射すると、ホログラム像表示媒体30の第2の干渉縞により、下側の角度がφa2(例えば2.6度)、上側の角度がφb2(例えば6.0度)の第2の回折光領域50V2に回折光が再生され、後方車20の種類に依らず、運転者は第2のホログラム像72を視認することができ、さらに、前方車と後方車の距離がL3(例えば10m)になり、後方車の前照灯21がホログラム像表示媒体30を上下方向の角度θ3(例えば3.6度)で照射すると、ホログラム像表示媒体30の第3の干渉縞により、下側の角度がφa3(例えば5.3度)、上側の角度がφb3(例えば12.0度)の第3の回折光領域50V3に回折光が再生され、後方車20の種類に依らず、運転者は第3のホログラム像73を視認することができる。
【0033】
これより、後方車20の種類に依らず、後方車20の前照灯21が前方車10の後部下部に取り付けられたホログラム像表示媒体30を照射し、後方車の運転者には、前方車10と後方車20の距離がL1(例えば30m)近くになると、前方車の後部下部に第1のホログラム像71が見え始め、前方車との距離がL2(例えば20m)近くになると前方車の後部下部に見えていた第1のホログラム像71が第2のホログラム像72に変化し、前方車との距離がL3(例えば10m)近くになると前方車の後部下部に見えていた第2のホログラム像72が第3のホログラム像73に変化する。
よって、ホログラム像表示システム1及びホログラム像表示媒体30においては、ホログラム像を再生するための専用の光源を用いることなく、後方車20の前照灯21によって前方車10の後部下部に取り付けられたホログラム像表示媒体30からホログラム像を再生し、後方車20の運転者の眼の高さが異なっていても、前方車10との距離が変化したことを後方車20の運転者が正確に確認できるようなパターンのホログラム像を再生することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のホログラム像表示媒体及びホログラム像表示方法は、ホログラム像を再生するための専用の光源を用いることなく、後方の車両の運転者の眼の高さが異なっていても、前方の物体との距離が変化したことを後方の車両の運転者が正確に確認できるようなホログラム像を再生することができ、前方の物体には、普通乗用車、ワンボックスカー、トラック等の四輪自動車、自動二輪車、自転車、原動機付自転車、建設車両等の車両の他に、後方の車両が走行する道路や線路の後方の車両より前方の部分、後方の車両の前方にある構造物、縁石、ガードレール、トンネル壁面、標識、案内板等が利用でき、後方の車両には、四輪自動車、自動二輪車、自転車、原動機付自転車等の各種車両が利用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 ホログラム像表示システム
2 路面
10 前方車
11 後部バンパー
20 後方車
21 前照灯
21R 右前照灯
21L 左前照灯
22 光束
22R 右光束
22L 左光束
23 前照灯21からの照射光
23R1、23R2 右前照灯21Rからの照射光
23L1、23L2 左前照灯21Lからの照射光
30、30’ ホログラム像表示媒体
31 ベースフィルム
32 フォトポリマ層
32’ 多層フォトポリマ層
32a 第1フォトポリマ層
32b 第2フォトポリマ層
32c 第3フォトポリマ層
33 カバーフィルム
40 後方車の運転者の目
40a 後方車が普通自動車である場合の運転者の眼
40b 後方車がトラックである場合の運転者の眼
40’ 後方車の助手席同乗者の眼
50V ホログラム像表示媒体30からの上下方向の回折光領域
50Va 下側境界面
50Vb 上側境界面
50H ホログラム像表示媒体30からの左右方向の回折光領域
50HR 右側境界面
50HL 左側境界面
60 ホログラム像表示媒体30の中心を通る水平面
61 ホログラム像表示媒体30の右端を通る垂直面
62 ホログラム像表示媒体30の左端を通る垂直面
71 第1のホログラム像
72 第2のホログラム像
73 第3のホログラム像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8