(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155208
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】光触媒スプレー、消臭方法及び光触媒被覆物
(51)【国際特許分類】
A61L 9/00 20060101AFI20241024BHJP
A61L 9/14 20060101ALI20241024BHJP
A61L 9/18 20060101ALI20241024BHJP
B01J 35/39 20240101ALI20241024BHJP
B01J 23/652 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61L9/00 C
A61L9/14
A61L9/18
B01J35/02 J
B01J23/652 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069691
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】芝 直樹
(72)【発明者】
【氏名】堤之 朋也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 喜紀
(72)【発明者】
【氏名】渥美 竜文
【テーマコード(参考)】
4C180
4G169
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180CB01
4C180CC03
4C180CC15
4C180DD04
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4C180EB05Y
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4G169AA02
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4G169FB24
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4G169FC08
4G169FC10
4G169HA20
4G169HB06
4G169HD10
4G169HE03
4G169HE12
(57)【要約】
【課題】本開示は、長期間容器を保存しても光触媒粒子の分散状態を維持し、施工ムラを抑制可能な光触媒スプレー、消臭方法及び光触媒被覆物を提供する。
【解決手段】本開示に係る光触媒スプレーは、光触媒混濁液を含有するスプレー成分と、前記スプレー成分を収容するスプレー容器と、を備え、前記光触媒混濁液は、可視光応答型光触媒効果を有する粉体と、分散媒としてのエタノール水溶液と、グルコン酸又はグルコノデルタラクトンと、親水性不揮発性液体と、を含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒混濁液を含有するスプレー成分と、
前記スプレー成分を収容するスプレー容器と、
を備え、
前記光触媒混濁液は、可視光応答型光触媒効果を有する粉体と、分散媒としてのエタノール水溶液と、グルコン酸又はグルコノデルタラクトンと、親水性不揮発性液体と、を含むことを特徴とする光触媒スプレー。
【請求項2】
前記スプレー成分として、噴射ガスを含むことを特徴とする請求項1に記載の光触媒スプレー。
【請求項3】
前記噴射ガスを除いた前記光触媒混濁液に含まれる前記粉体の重量mに対する、前記噴射ガスを除いた前記光触媒混濁液に含まれる前記グルコン酸又はグルコノデルタラクトンの重量nの重量比(n/m)は、0.05以上0.20以下であることを特徴とする請求項2に記載の光触媒スプレー。
【請求項4】
前記親水性不揮発性液体は、脂肪族ポリエーテル誘導体又は脂肪族アミン誘導体を含むことを特徴とする請求項1に記載の光触媒スプレー。
【請求項5】
前記噴射ガスは、ジメチルエーテルを含むことを特徴とする請求項2に記載の光触媒スプレー。
【請求項6】
前記スプレー容器の内圧は、25℃で0.35MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒スプレー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の光触媒スプレーを用いて室内の基材に噴射し、前記基材を光触媒層でコーティングする被覆工程と、
前記光触媒層に光を照射する照射工程と、
を含むことを特徴とする消臭方法。
【請求項8】
基材と、
前記基材上に設けられた光触媒層と、
を備え、
前記光触媒層は、可視光応答型光触媒効果を有する粉体と、グルコン酸又はグルコノデルタラクトンと、を含むことを特徴とする光触媒被覆物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光触媒スプレー、消臭方法及び光触媒被覆物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に消臭技術としては、主に化学的消臭、物理的消臭、生物的消臭、感覚的消臭の4つに大別される。その中で、化学的消臭法は、臭い成分と消臭剤の成分との化学反応(中和、付加、縮合、酸化など)により無臭の成分にする方法で、臭いの対象がわかっている場合に優れた効果を発揮する。
【0003】
化学的消臭材料の1つとして、光触媒の強い酸化力を利用した消臭材料が開発されている。そして、光触媒を利用した消臭材料については、従来から多数提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、光触媒性を有するアナターゼ型の酸化チタン粒子に、ナノメートルオーダーの金属銀および金属銅粒子から選ばれる金属粒子を分散付着させてなる材料を調製し、シラン系アルコキシドとエチルアルコールを配合し、LPGガスと共にエアゾール容器に充填した光触媒スプレーが提案されている。光触媒を利用した消臭材料は、有機系の脱臭材料に比べて耐熱性に優れ、製品への加工も容易であり、銀イオンの状態として担持している場合のように変色したり変質したりするおそれが小さいとしている。
【0005】
また、例えば、特許文献2では、光触媒として、光触媒粒子と、有機アルカリと、アニオン性分散剤と、硬化性板状粒子とを含むことを特徴とする塗料組成物が開示されている。
【0006】
また、例えば、特許文献3では、プラスチックを多く使用し、静電気を帯びた室内部材を用いた構造に対し、帯電防止剤を含むエアゾールを用い、これを噴霧することを特徴とする車室内の帯電防止方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-349423号公報
【特許文献2】特開2005-171029号公報
【特許文献3】特公昭59-066099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
光触媒は、施工すれば剥がれない限り、半永久的に光照射による消臭効果を維持できるがスプレー製品として製品容器で保管後も内容物が沈降することなく、光触媒粒子を分散させ性能を維持できることが必要となる。
【0009】
しかしながら、光触媒粒子を含む塗料を容器に長期間保存した場合、保存容器のガスケットゴム部材等に含まれる金属イオン成分によって、光触媒粒子が凝集して粗粒化して沈降し、長期保管後の分散状態が維持できなくなる。係る光触媒粒子を含む塗料を噴射すると噴射粒子が周囲の帯電した部材の影響を受けて帯対電圧の大きい部材に吸い寄せられ、噴射した場所の静電気が蓄積しやすい部材に選択的に付着するため、不均一に定着する。凝集した粒子を多く含むと光触媒成分の施工ムラ(白化)が発生して外観がわるくなる、施工ムラによって本来の消臭効果が発揮できなくなる。
【0010】
そこで、本開示は上記問題に鑑み、長期間容器を保存しても光触媒粒子の分散状態を維持し、施工ムラを抑制可能な光触媒スプレー、消臭方法及び光触媒被覆物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一態様では、光触媒混濁液を含有するスプレー成分と、前記スプレー成分を収容するスプレー容器と、を備え、前記光触媒混濁液は、可視光応答型光触媒効果を有する粉体と、分散媒としてのエタノール水溶液と、グルコン酸又はグルコノデルタラクトンと、親水性不揮発性液体と、を含むことを特徴とする。
【0012】
本開示の他の態様では、上記光触媒スプレーを用いて室内の部材に噴射し、前記部材を光触媒層でコーティングする被覆工程と、前記光触媒層に光を照射する照射工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
本開示の他の態様では、基材と、前記基材上に設けられた光触媒層と、を備え、前記光触媒層は、可視光応答型光触媒効果を有する粉体と、グルコン酸又はグルコノデルタラクトンと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本開示によれば、長期間容器を保存しても光触媒粒子の分散状態を維持し、施工ムラを抑制可能な光触媒スプレー、消臭方法及び光触媒被覆物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示に係る光触媒スプレーの断面図である。
【
図2】
図2は、グルコノデルタラクトンが水系分散剤中で加水分解して、グルコノデルタラクトンとグルコン酸との平衡状態を示す図である。
【
図3】
図3は、グルコン酸又はグルコノデルタラクトンが金属を捕捉した様子を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示に係る消臭方法の工程図である。
【
図5】
図5は、本開示に係る光触媒被覆物の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本開示の解決手段として必須であるとは限らない。
【0017】
1、光触媒スプレー
[1-1、スプレー容器]
図1は、本開示に係る光触媒スプレーの断面図である。本開示に係る光触媒スプレーは、スプレー容器を備える。
【0018】
スプレー容器は、スプレー成分である光触媒混濁液と、噴射ガス等を収容するスプレー容器、バルブ部材11、アクチュエータ12、ディップチューブ13等を備える。バルブ部材11は、マウンテンカップガスケット14、ステム、ハウジング、ステムガスケット、スプリング、噴射孔等を備える。
【0019】
スプレー容器とバルブ部材11の密着部にガスケットゴム18が挟持され、噴射孔15bのステム15にはステム孔を密閉するためにガスケットゴムが使用されている。これらのガスケットゴムはブチルゴムやニトリルゴムが用いられる。
【0020】
アクチュエータの頭部が押されていない状態では、ステム15に取り付けられたステムガスケット15aがステム孔15bを塞ぎ、スプレー容器の内部は密閉状態となる。
【0021】
アクチュエータの頭部が押されると、ステムが下がりステムガスケットでシールしていたステム孔が開放され、スプレー成分の溶液の流路が噴射孔までつながる。エアゾール容器の内部は後述する噴射ガスにより高圧となっているため、この圧力によりスプレー成分の溶液は、チューブ、バルブ部材、アクチュエータの流路を流れ、噴射孔から噴出する。
【0022】
このように、光触媒スプレーは、噴射孔から、対象物である基材に光触媒混濁液を含有するスプレー成分を噴射する。
【0023】
[1-2、スプレー成分]
開示に係る光触媒スプレーは、スプレー成分を備える。
【0024】
スプレー成分は、光触媒混濁液を含有する。光触媒混濁液は、可視光応答型光触媒効果を有する粉体と、分散媒としてのエタノール水溶液と、グルコン酸又はグルコノデルタラクトンと、親水性不揮発性液体と、を含むことを特徴とする。
【0025】
[1-2-1、可視光応答型光触媒効果を有する粉体]
光触媒混濁液は、可視光応答型光触媒効果を有する粉体を含有する。
【0026】
可視光応答型光触媒効果を有する粉体は、光触媒活性を有する粉体又は微粒子である。可視光応答型光触媒効果を有する粉体は、光触媒粒子等が挙げられる。光触媒スプレーで光触媒混濁液を含有するスプレー成分を対象物である基材むけて噴射することにより基材の表面に形成された光触媒層において、価電子帯と伝導帯との間のエネルギーのギャップ以上のエネルギーを持つ光が光触媒粒子に照射されると、光触媒粒子の価電子帯の電子が伝導帯に励起され価電子帯に正孔が発生してこの電子及び正孔が光触媒粒子内部を移動する。
【0027】
発生した電子が酸素ガスを還元することにより、スーパーオキシドアニオンが生成する。正孔が水を酸化することにより、ヒドロキシラジカルが生成する。生成したヒドロキシラジカルによって、活性酸素種が生成する。生成した活性酸素種によって、例えば、臭いの元になる有害物質の分解が達成される。
【0028】
一般に光触媒粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化タングステンが良く知られているが屋内の可視光光源下でも光触媒活性に優れた光触媒層を得るために、光触媒混濁液は、酸化タングステンを含有することが好ましい。光触媒混濁液は、1種の光触媒粒子のみを含有してもよく、2種以上の光触媒粒子を含有してもよい。
【0029】
酸化タングステンは特に限定されず、酸化タングステンとしては市販品を適宜使用することができる。酸化タングステンとしては、例えば、WO3(三酸化タングステン)、WO2、WO、W2O3、W4O5、W4O11、W25O73、W20O58、及びW24O68、並びにこれらの混合物が挙げられる。光触媒活性を向上させるために、酸化タングステンとしては、WO3が好ましい。酸化タングステンの一部がV価に還元されていてもよい。ただし、酸化タングステンはVI価に酸化してから使用することが好ましい。VI価に酸化する方法としては、例えば、酸化タングステンを高温で焼成する方法が挙げられる。なお、酸化タングステンの結晶構造は、特に限定されない。
【0030】
光触媒粒子の平均粒子径は、5nm以上200nm以下であることが好ましい。光触媒粒子の平均粒子径5nm以上であると、光触媒粒子が凝集し難くなり、光触媒粒子の再分散が容易となる。光触媒粒子の平均粒子径が200nm以下であると、光触媒粒子と他のスプレー成分とを均一に混合できる傾向があり、スプレーにより形成される光触媒層から光触媒粒子が離脱することを抑制できる。光触媒粒子の平均粒子径は、BET法により測定された光触媒粒子の比表面積(単位:m2/g)に基づいて、光触媒粒子の1次粒子が球状であると仮定して算出された値である。
【0031】
光触媒粒子の表面に、助触媒粒子が備えられていてもよい。助触媒粒子としては、金属粒子が好ましく、遷移金属粒子がより好ましく、白金族金属粒子が更に好ましい。白金族金属粒子としては、例えば、Pt、Pd、Rh、Ru、Os、及びIrの粒子が挙げられる。光触媒粒子の表面に助触媒粒子が備えられることにより、光触媒粒子の価電子帯と伝導帯との間のエネルギーのギャップを小さくして、可視光領域での光応答性を向上させることができる。助触媒粒子は、白金族金属の酸化物の粒子であってもよい。
【0032】
また、後述する噴射ガスを除いた光触媒混濁液に含まれる可視光応答型光触媒効果を有する粉体の重量mに対する、噴射ガスを除いた光触媒混濁液に含まれるグルコン酸又はグルコノデルタラクトンの重量nの重量比(n/m)は、0.01以上0.50以下であることが好ましい。さらに好ましくは、上記重量比(n/m)は、0.05以上0.20以下である。
【0033】
上記重量比(n/m)が0.05未満では光触媒粒子表面に酸化分解し難いゴム配合剤成分が付着すると消臭効果が小さくなる場合があり、重量比(n/m)が0.01未満では特に顕著になる場合がある。一方で、0.20より高いと噴射後に粒子が凝集する場合があり、0.50より高いと特に顕著になる場合がある。
【0034】
[1-2-2、分散媒]
光触媒混濁液は、分散媒を含む。
【0035】
光触媒混濁液の溶媒中における分散媒の役割は、スプレー成分の液滴の粘度をさげて細かな噴霧状態を保つことである。そのため、エタノールを含有した分散媒であることが好ましい。エタノールは、水と比べて揮発しやすい特性を持つため溶媒に含有させることによりスプレー成分の乾燥時間を短縮できる。また、エタノールは、殺菌作用があるため光触媒混濁液を含有するスプレー成分の長期保管が可能になる。
【0036】
光触媒混濁液の分散媒としてエタノール水溶液中のエタノール含有率は、20wt%以上60wt%未満が好ましい。溶媒中のエタノール配合量が60wt%を超えると燃焼や引火がし易くなることや長期保管での光触媒分散状態を保ちにくくなる場合がある。溶媒中のエタノール配合量が20wt%未満になると噴射した成分の乾燥が遅くなる場合がある。
【0037】
[1-2-3、グルコン酸又はグルコノデルタラクトン]
光触媒混濁液は、グルコン酸又はグルコノデルタラクトンを含む。
【0038】
グルコノデルタラクトンは、水に溶けると徐々に加水分解して
図2に示すように、グルコン酸との平衡状態になると考えられている。
【0039】
ここで、スプレー容器についてガスケットゴムが使用されている旨を上述したが、ガスケットゴムは、後述する噴射ガスが、これらガスケットゴムに浸透するため膨潤して、ゴム配合剤成分(特に金属や硫黄等)をスプレー成分中に浸み出す。
【0040】
ガスケットゴムから浸みだしたゴム配合剤成分が分散媒に溶出して、光触媒粒子表面に付着する。光触媒は表面で光吸収して、励起された電子と正孔が表面にある水酸基や酸素を酸化還元により活性化して、発生した活性酸素種が対象物を酸化分解することで消臭機能を持つと考えられている。
【0041】
このゴム配合剤成分がスプレー成分中の光触媒混濁液に悪影響を及ぼし、光触媒粒子が凝集して粗粒化して沈降し、長期保管後の分散状態が維持できなくなる。また、光触媒粒子表面に酸化分解し難いゴム配合剤成分が付着すると、光触媒の消臭性能が劣化して本来の消臭効果が発揮できなくなる。さらに、この付着成分を光触媒に光を照射して分解させる時間が必要になる。
【0042】
そこで、本開示に係る光触媒スプレーは、光触媒混濁液中に含まれるグルコン酸又はグルコノデルタラクトンによって、光触媒粒子が凝集して粗粒化することを防止する。
【0043】
詳細には、
図3に示すように、グルコン酸又はグルコノデルタラクトンが金属を捕捉し、光触媒粒子の凝集を防止する。なお、
図3中のMは、Ca、Na、Al、Zn、Mg等の金属や硫黄(酸化防止剤など)等である。
【0044】
グルコン酸は、
図3に示すように、D-グルコースの1位のアルデヒド基(-CHO)が酸化されてカルボキシル基(-COOH)となったオキシカルボン酸であり、金属化合物に吸着する性質があるため水系分散媒に溶解すると三酸化タングステンを主成分とする光触媒粒子表面に付着しやすく表面を保護する。
【0045】
このため、ガスケットゴム配合成分が光触媒粒子表面に付着するのを抑えられ、経時での消臭不良が発生せず安定した性能を維持することができる。またグルコン酸は無色無臭であるため塗工後の外観・匂いを気にすることも無い。更にグルコン酸はD-グルコースの1位のアルデヒド基(-CHO)が酸化されてカルボキシル基(-COOH)となった単純な構造であるため光照射下で光触媒による分解性が高く、本来の光触媒の消臭効果を発揮することができる。また、粗粒化による施工ムラ(白化)を抑制することができる。
【0046】
なお、ガスケットゴム配合成分が光触媒粒子に影響を与える旨を例示的に説明したが、スプレー成分に含まれる水等にもCa、Na、Al、Zn、Mg等の金属が含有しているので、それらに対しても、グルコン酸又はグルコノデルタラクトンの含有は有効である。
【0047】
[1-2-4、親水性不揮発性液体]
光触媒混濁液は、親水性不揮発性液体を含む。
【0048】
親水性不揮発性液体は、界面活性剤が挙げられる。親水性不揮発性液体は、光触媒粒子表面を濡らして、光触媒粒子を光触媒混濁液中で良く分散させる。また、親水性不揮発性液体は、光触媒粒子表面を濡らすことで、噴射後の帯電を抑え、噴射するスプレー成分の液滴の乾燥を遅らす効果がある。さらに、親水性不揮発性液体は、噴射後の液滴が乾燥して光触媒粒子の大凝集物が発生して周囲への不均一な付着、定着になることを抑えて、より分散性良く周囲に付着、定着させる効果を有する。よって、親水性不揮発性液体によって、施工ムラ(白化)を抑制することができる。つまり、親水性不揮発性液体は、グルコン酸又はグルコノデルタラクトンとの含有により、相乗効果を発揮することができる。
【0049】
また、親水性不揮発性液体の液性は、アルカリ性~中性であるとグルコン酸のカルボキシル基のプロトンが解離しやすくなり、光触媒粒子に吸着しやすくなる。このことにより、難分解性であるのガスケットゴム配合成分が光触媒粒子表面に付着するのを抑制でき、経時での光触媒の消臭性能劣化が発生せず安定した消臭性能を維持することができる。
【0050】
親水性不揮発性液体は、脂肪族ポリエーテル誘導体又は脂肪族アミン誘導体を含むことが好ましい。また、親水性不揮発性液体は、アミノ基又は、高分子アミン含有のポリアルキレングリコール誘導体を含んでいる化合物を含むことが好ましい。また、それらの分子量は、10,000以下であることが好ましい。
【0051】
親水性不揮発性液体は、25℃で液体状態であることが好ましい。常温で液体でないと親水性不揮発性液体が光触媒混濁液を含有するスプレー成分中で固化又は噴射後に固化して光触媒粉体の分散不良が発生し、光触媒成分の施工ムラになり、本来の消臭効果が発揮できなくなる場合がある。
【0052】
[1-2-5、噴射ガス]
スプレー成分として、噴射ガスを含む。
【0053】
噴射ガスは液化ガスである。液化ガスが気化することでスプレー容器内が高圧になり、光触媒混濁液の液滴を霧状にさせる。
【0054】
液化ガスは、例えば、ジメチルエーテルが挙げられる。ジメチルエーテルの沸点は-24.8℃であり、ジメチルエーテルは液化ガスとしてスプレー容器に入れられるため、スプレー容器内では、ジメチルエーテルの一部がスプレー成分中に溶解している、又は液体として存在している。また、スプレー容器内では、ジメチルエーテルの一部はスプレー容器内の気相に気体として存在する。
【0055】
スプレー容器の内圧は、25℃で0.35MPa以上であることが好ましい。このようにすれば、スプレー容器内が高圧になり、光触媒混濁液の液滴を霧状にさせることができ、施工ムラをより抑制可能となる。
【0056】
スプレー成分のpHは、25℃で4以上7以下であることが好ましい。この範囲ではスプレー容器内に腐食が発生せず長期間保管が可能となる。
【0057】
[1-2-6、添加剤]
スプレー成分は、添加剤を含んでもよい。
【0058】
スプレー成分に含有してもよい添加剤としては、防腐効果を有する有機化合物や無機化合物が挙げられる。防腐効果を有する有機化合物としては、ブチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、ベンジルパラベン、イソプロピルパラベン、イソブチルパラベンなどのパラオキシ安息香酸エステル、有機窒素硫黄系化合物、ピリチオン系化合物、有機ヨウ素化合物、トリアジン系化合物、イソチアゾリン系化合物、イミダゾール系化合物、ピリジン系化合物、ニトリル系化合物、チオカルバメート系化合物、チアゾール系化合物、及びジスルフィド系化合物が挙げられる。防腐効果を有する無機化合物としては、金属イオン、金属イオン含有有機または無機化合物が挙げられる。
【0059】
[1-3、光触媒スプレーの製造方法]
本開示に係る光触媒スプレーは、通常のエアゾール製造方法により製造できる。スプレー容器は、アルミやブリキからなる有底筒状の容器である。スプレー容器は、スプレー成分を充填後、上端の開口部にガスケットを介してエアゾールバルブをクリンチして液化ガスなどの噴射剤が所定の液量まで充填される。
【0060】
液化ガスとしては、液化ガスの液密度を調整しやすく、エアゾールの圧力を調整しやすい点から、プロパン(液密度:0.501g/ml)、ノルマルブタン(液密度:0.579g/ml)、イソブタン(液密度:0.557g/ml)及びこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル(液密度:0.661g/ml)、及び液化石油ガスとジメチルエーテルの混合ガスなどが使用されている。
【0061】
また、エアゾール容器3の内部圧力を調節するために、加圧剤として炭酸ガス、チッ素ガス、圧縮空気、酸素ガスなどの圧縮ガスを用いることができる。光触媒スプレーの好ましい内圧は、上述した通りである。
【0062】
2、消臭方法
図4は、本開示に係る消臭方法の工程図である。
図4に示すように、本開示に係る消臭方法は、被覆工程と、照射工程と、を含む。
【0063】
被覆工程は、上述した光触媒スプレーを用いて室内の基材に噴射し、基材を光触媒層でコーティングする。
【0064】
照射工程は、光触媒層に光を照射して光触媒粒子を活性化して、室内に存在する臭い成分を分解する。
【0065】
3、光触媒被覆物
図5は、本開示に係る光触媒被覆物の断面図である。本開示に係る光触媒被覆物は、
図5に示すように、基材と、その基材上に設けられた光触媒層と、を備える。
【0066】
そして、光触媒層は、可視光応答型光触媒効果を有する粉体と、グルコン酸又はグルコノデルタラクトンと、を含むことを特徴とする。上記粉体、グルコン酸又はグルコノデルタラクトン等の作用効果等については、上述した通りである。
【0067】
また、基材としては、例えば、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、及び皮革が挙げられる。
【0068】
なお、噴霧後に形成される光触媒層は、島状や層状どちらでも良く、厚みも特に限定されない。
【実施例0069】
以下、実施例及び比較例等により本開示に係る光触媒スプレー、消臭方法及び光触媒被覆物を具体的に説明するが、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。
【0070】
実施例に係る光触媒スプレー(A-1)~(A-16)及び比較例に係るスプレー(B-1)~(B-6)を作製した。表1A、表1B、2に、各光触媒スプレーの組成を示す。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
表1A、表1B及び表2中の「Pt-WO3」は、白金担持酸化タングステン粒子を示す。光触媒粒子である白金担持酸化タングステン粒子は、以下に示す方法により作製した。
【0075】
酸化タングステン粉末(キシダ化学株式会社製)200gと純水1000mLとを混合した後、超音波を照射しながら分散させて、酸化タングステン粒子の分散液Aを得た。分散液Aに、ヘキサクロロ白金(VI)・6水和物(キシダ化学株式会社製、純度98.5%)を溶解させて、酸化タングステン粒子の分散液Bを得た。ヘキサクロロ白金(VI)・6水和物の添加量は、酸化タングステン粒子の重量に対する白金単体での重量の割合が0.05wt%となるような量とした。分散液Bを100℃で加熱して水分を蒸発させた後、500℃で焼成することにより、白金担持酸化タングステン粉末を得た。得られた粉末に含まれる白金担持酸化タングステン粒子の平均粒子径は、175nmであった。
【0076】
親水性不揮発性液体として界面活性剤を用いた。表1A、表1B及び表2に示した界面活性剤には、ポリオキシアルキレン化合物である日油株式会社製エスリームを使用した。なお、当該エスリームは、アミノ基含有ポリアルキレングリコール誘導体を含んでいる。
【0077】
また、表1A、表1B及び表2中の「水」は純水であり、「EtOH」はエチルアルコールである。表2中の「-」は、該当する材料をスプレーが含有していないことを示す。表1A、表1B及び表2中の「光触媒固形分wt%」は、「スプレー成分の液剤中の光触媒固形分重量パーセント」を示す。「界面活性剤(g)/光触媒固形分(g)」は、「光触媒粒子の重量に対する界面活性剤の重量の比率」を示す。「グルコノデルタラクトン(g)/光触媒固形分(g)」は、「光触媒粒子の重量に対するグルコノデルタラクトンの重量の比率」を示す(噴射ガスを除いた光触媒混濁液に含まれる光触媒粒子の粉体の重量mに対する、噴射ガスを除いた光触媒混濁液に含まれるグルコン酸又はグルコノデルタラクトンの重量nの重量比(n/m)を示す)。「エタノールwt%」は、「スプレー成分の液剤中のエタノールの重量パーセント」を示す。
【0078】
以下、表1A、表1B及び表2に示す光触媒スプレー(A-1)~(A-16)及びスプレー(B-1)~(B-6)の作製方法について説明する。
【0079】
<光触媒スプレーの作製方法>
まず、光触媒スプレーの作製に用いる白金担持酸化タングステン粒子の水分散液を調製した。
【0080】
[白金担持酸化タングステン粒子の水分散液の調製]
白金担持酸化タングステン粒子の水分散液の固形分濃度が20wt%となるように、上記で調製した白金担持酸化タングステン粉末と、純水とを混合した。混合物に超音波を照射しながら分散させて、白金担持酸化タングステン粒子の水分散液1000gを調製した。
【0081】
次に、以下に示す方法により、スプレー成分(以下単に液剤)を調製し、アルミ製エアゾール容器に充填し、各光触媒スプレーを作製した。
【0082】
[光触媒スプレー(A-1)の作製]
水39.8gとエタノール10.0gと界面活性剤エスリーム0.10gとグルコノデルタラクトン0.01gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の光触媒混濁液(以下単に水分散液)(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.5gを添加して液剤を得た。
【0083】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-1)を得た。
【0084】
[光触媒スプレー(A-2)の作製]
水38.0gとエタノール10.0gと界面活性剤エスリーム1.00gとグルコノデルタラクトン0.05gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.0gを添加して液剤を得た。
【0085】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-2)を得た。
【0086】
[光触媒スプレー(A-3)の作製]
水20.8gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム0.10gとグルコノデルタラクトン0.01gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.50gを添加して液剤を得た。
【0087】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-3)を得た。
【0088】
[光触媒スプレー(A-4)の作製]
水19.0gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム1.00gとグルコノデルタラクトン0.05gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.00gを添加して液剤を得た。
【0089】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-4)を得た。
【0090】
[光触媒スプレー(A-5)の作製]
水39.8gとエタノール10.0gと界面活性剤エスリーム0.10gとグルコノデルタラクトン0.01gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.50gを添加して液剤を得た。
【0091】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-5)を得た。
【0092】
[光触媒スプレー(A-6)の作製]
水37.9gとエタノール10.0gと界面活性剤エスリーム1.00gとグルコノデルタラクトン0.10gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.00gを添加して液剤を得た。
【0093】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-6)を得た。
【0094】
[光触媒スプレー(A-7)の作製]
水20.8gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム0.10gとグルコノデルタラクトン0.01gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.50gを添加して液剤を得た。
【0095】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-7)を得た。
【0096】
[光触媒スプレー(A-8)の作製]
水18.9gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム1.00gとグルコノデルタラクトン0.10gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.00gを添加して液剤を得た。
【0097】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-8)を得た。
【0098】
[光触媒スプレー(A-9)の作製]
水39.8gとエタノール10.0gと界面活性剤エスリーム0.10gとグルコノデルタラクトン0.02gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.50gを添加して液剤を得た。
【0099】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-9)を得た。
【0100】
[光触媒スプレー(A-10)の作製]
水37.8gとエタノール10.0gと界面活性剤エスリーム1.00gとグルコノデルタラクトン0.20gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.00gを添加して液剤を得た。
【0101】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-10)を得た。
【0102】
[光触媒スプレー(A-11)の作製]
水20.8gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム0.10gとグルコノデルタラクトン0.02gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.50gを添加して液剤を得た。
【0103】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-11)を得た。
【0104】
[光触媒スプレー(A-12)の作製]
水18.8gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム1.00gとグルコノデルタラクトン0.20gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.00gを添加して液剤を得た。
【0105】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-12)を得た。
【0106】
[光触媒スプレー(A-13)の作製]
水20.8gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム0.10gとグルコノデルタラクトン0.001gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.50gを添加して液剤を得た。
【0107】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-13)を得た。
【0108】
[光触媒スプレー(A-14)の作製]
水19.0gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム1.00gとグルコノデルタラクトン0.01gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.00gを添加して液剤を得た。
【0109】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-14)を得た。
【0110】
[光触媒スプレー(A-15)の作製]
水20.8gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム0.10gとグルコノデルタラクトン0.05gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.50gを添加して液剤を得た。
【0111】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-15)を得た。
【0112】
[光触媒スプレー(A-16)の作製]
水18.5gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム1.00gとグルコノデルタラクトン0.50gを混合し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.00gを添加して液剤を得た。
【0113】
スプレー容器としてアルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(A-16)を得た。
【0114】
[光触媒スプレー(B-1)の作製]
水20.8gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム0.10gを混合(グルコノデルタラクトン無し)攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.50gを添加して液剤を得た。
【0115】
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-1)を得た。
【0116】
[光触媒スプレー(B-2)の作製]
水19.0gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム1.00gを混合(グルコノデルタラクトン無し)攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.00gを添加して液剤を得た。
【0117】
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-2)を得た。
【0118】
[光触媒スプレー(B-3)の作製]
水20.8gとエタノール29.0gと界面活性剤エスリーム0.10gを混合(グルコノデルタラクトン無し)し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)0.50gを添加して液剤を得た。
【0119】
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-3)を得た。
【0120】
[光触媒スプレー(B-4)の作製]
水39.0gとエタノール10.0gとグルコノデルタラクトン0.05gを混合(界面活性剤無し)し攪拌した後、上記で調製した白金担持酸化タングステン粒子の水分散液(白金担持酸化タングステン粒子の含有率:20wt%)5.00gを添加して液剤を得た。
【0121】
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-4)を得た。
[スプレー(B-5)の作製]
水40.0gとエタノール10.0gを添加して液剤を得た。
【0122】
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-5)を得た。
【0123】
[スプレー(B-6)の作製]
水21.0gとエタノール29.0gを添加して液剤を得た。
【0124】
アルミ製エアゾール容器(満注量216ml)を用い、該エアゾール容器に有効成分として上記液剤、液化ガスとしてジメチルエーテル50gを充填し、光触媒スプレー(B-6)を得た。
【0125】
各光触媒スプレー(A-1)~(A-16)及び(B-1)~(B-4)を45℃環境で3か月静置させた。
【0126】
<光触媒スプレーの評価方法及び評価結果>
[光触媒層(以下単に塗膜)の欠陥有無確認]
以下に示す方法により、塗膜の欠陥有無確認を行った。
【0127】
室内長×室内幅×室内高=容積3.6m3の室を準備した。
【0128】
ポリカーボネート製シート(厚み0.5mm,φ50mm)を布等で擦り、静電気測定器で測定しながらポリカーボネート製シートの表面を+10kVに帯電させ、室前方(空間の長手方向前半分)に設置した。
【0129】
室内中央の床に作製した光触媒スプレー(A-1)~(A-16)及びスプレー(B-1)~(B-4)のいずれか1つを設置して、設置位置で全量噴射スプレーボタンを押してロックし、噴射開始して室の扉を閉じた。噴射終了後は5分間そのままの状態で成分を定着させた。
【0130】
室の扉を開け、ポリカーボネート製シートを取り出し、真上から表面を観察して塗膜の欠陥有無を確認した。ここでいう塗膜の欠陥とは、光触媒スプレーを噴霧した際に、液剤に含まれる光触媒粒子が基材表面の帯電によって集まり、更に光触媒粒子の凝集によって、塗面に霧がかかったように白く見える現象を指す。塗膜に欠陥がなかった場合は「良好○」と評価し、塗膜に一部欠陥箇所があった場合は「やや不良△」と評価し、塗膜全体に欠陥箇所があった場合は「不良×」と評価した。評価結果を表3に示す。
【0131】
[噴射性試験]
上記塗膜の欠陥有無確認後、各光触媒スプレー(A-1)~(A-16)及び(B-1)~(B-4)缶設置場所周辺のスプレー液飛散状態を確認し判定した。
【0132】
結果を、表3に示す。表3中の評価として、「良好○」は周囲に液滴の飛散が無いことを示し、「やや不良△」は周囲に液滴の飛散が確認されたこと、「不良×」は周囲に液滴が多く飛散して濡れが確認されたことを示す。
【0133】
[消臭試験]
以下に示す方法により、光触媒活性の確認試験である消臭試験(アセトアルデヒドガス分解測定)を行った。
【0134】
(初期評価)
各光触媒スプレー(A-1)~(A-16)及び(B-1)~(B-4)から容器に5秒間噴射して回収した液剤をセルロース生地(125mm×125mm)に塗布して消臭試験用サンプル(A-1)~(A-16)及び(B-1)~(B-4)を作成して、日照場所に1週間消臭試験用サンプルを静置して良く乾燥させた。
【0135】
次に容積1Lのガスバッグをサンプル毎に用意し、消臭試験用サンプルを入れてから20ppmの濃度となるようにアセトアルデヒドガスをガスバックに投入した。次いで、青色LED(ピーク波長450nm)ランプを用いて、4500ルクスの光を消臭試験用サンプルに照射してガス投入後12時間後のガスバック内のアセトアルデヒドガス濃度変化を検知管により測定した。
【0136】
(経時評価)
各光触媒スプレー(A-1)~(A-16)及び(B-1)~(B-4)を50℃環境下で倒立の状態で1ヶ月保管した。評価は初期評価と同じ評価方法で実施した。
【0137】
各消臭試験用サンプルの消臭試験結果を、表3に示す。表3中の評価として、「良好○」はアセトアルデヒドガス残存率が20%未満であることを示し、「やや不良△」はアセトアルデヒドガス濃度が20%以上40%未満で、「不良×」はアセトアルデヒドガス濃度が40%以上100%以下であることを示している。
【0138】
(B-5)と(B-6)については、消臭試験を行わず、保管後、内容液を瓶に回収して外観検査を行った。
【0139】
総合評価では、塗膜の欠陥確認試験、噴射性試験、消臭試験においてやや不良△と不良×の評価が1つもない場合「良好○」と評価し、塗膜の欠陥確認試験、噴射性試験、消臭試験においてやや不良△の評価が少なくとも1つある場合「やや不良△」と評価し、塗膜の欠陥確認試験、噴射性試験、消臭試験において不良×の評価が少なくとも1つある場合「不良×」と評価した。
【0140】
【0141】
実施例に係る光触媒スプレーでは、総合評価が全て良好○であった。よって、実施例に係る光触媒スプレーでは、長期間容器を保存しても光触媒粒子の分散状態を維持し、施工ムラを抑制できた。
【0142】
一方では、比較例に係るスプレーでは、総合評価がやや不良△又は不良×であった。よって、比較例に係るスプレーでは、長期間容器を保存しても光触媒粒子の分散状態を維持し、施工ムラを抑制できなかった。(B-5)と(B-6)については、経時保管後の内容液には白色の懸濁物が析出しており、ゴム臭があることからガスケットゴムから溶解した成分と考えられる。
【0143】
以上より、本開示に係る光触媒スプレー、消臭方法及び光触媒被覆物によれば、長期間容器を保存しても光触媒粒子の分散状態を維持し、施工ムラを抑制可能である。
【0144】
なお、上記のように本開示の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本開示の範囲に含まれるものとする。
【0145】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また光触媒スプレー、消臭方法及び光触媒被覆物の構成、動作も本開示の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
10 スプレー容器、11 バルブ部材、12 アクチュエータ、13 ディップチューブ、14 マウンテンカップガスケット、15 ステム、15a ステムガスケット、15b 噴射孔、16 ハウジング、17 スプリング、18 ガスケットゴム、
20 スプレー成分、
30 気相、
40 基材、
50 光触媒層
100 光触媒スプレー、200 光触媒被覆物、
S1 被覆工程、S2 照射工程