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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155210
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ピラートリム取付け構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
B60R13/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069693
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】黒木 誠一郎
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA07
3D023BB10
3D023BC01
3D023BD08
3D023BE03
3D023BE35
(57)【要約】
【課題】衝突が発生した際に、安定してエアバッグを展開させる。
【解決手段】片側の端部には車体BDと固定させる固定部110が形成されている伸縮可能なテザー部100と、一方端側にはテザー部100が接合され、他方端側は棒状に延在し、その先端部には突起部230が形成されているベース部200と、一方端側はピラートリムPTに回動可能に嵌合され、他方端側にはベース部200における突起部230と回動可能に嵌合する荷重調整部300と、を備え、テザー部100をU字状に屈曲させた状態でテザー部100とベース部200とを結合させるリインフォース部400が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体とピラートリムとを接合させるピラートリム取付け構造において、
片側の端部には前記車体と固定させる固定部が形成されている伸縮可能なテザー部と、
一方端側には前記テザー部が接合され、他方端側は棒状に延在しその先端部には突起部が形成されているベース部と、
一方端側は前記ピラートリムに回動可能に嵌合され、他方端側は前記ベース部における前記突起部と回動可能に嵌合する荷重調整部と、
を備え、
前記テザー部と前記ベース部とを結合させるリインフォース部が設けられていることを特徴とするピラートリム取付け構造。
【請求項2】
前記リインフォース部の両端部には、複数の切り欠き部を有していることを特徴とする請求項1に記載のピラートリム取付け構造。
【請求項3】
前記荷重調整部は、開口部を有した有底円筒状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のピラートリム取付け構造。
【請求項4】
前記荷重調整部の前記開口部は、円錐形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のピラートリム取付け構造。
【請求項5】
前記荷重調整部の内壁部には、径方向内側に突出した調整部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のピラートリム取付け構造。
【請求項6】
前記荷重調整部の内壁部には、複数の前記調整部が設けられ、前記複数の調整部は、それぞれ異なる形状を成していることを特徴とする請求項5に記載のピラートリム取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラートリム取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両が側面からの衝突を受けた際に、サイドウインドウ上部においてピラーあるいはサイドウインドウと乗員との間に膨張展開することによって乗員を保護するカーテンエアバッグが実用化されている。
【0003】
カーテンエアバッグは、車体とガーニッシュ(ピラートリム)との間に収容されている。車体とピラートリムとは、例えば、クリップによって離脱可能に固定されている。
【0004】
車両が側面からの衝突を受けた場合には、カーテンエアバッグは、ピラートリムを車体から車室内側に向かって離脱させながら膨張展開する。
そのため、カーテンエアバッグが膨張展開し、ピラートリムを車体から車室内側に向かって離脱させた際に、ピラートリムが乗員に干渉しないようにする必要がある。
【0005】
上記の要求に対応する技術として、車両用内装部材は、台座の内側に突出する緩衝片を含む台座が設けられたガーニッシュ(トリム)本体と、ガーニッシュ本体を移動位置で保持可能なアンカー部とを有するクリップとを有し、ガーニッシュ本体が初期位置で保持されると、クリップが有するアンカー部は緩衝片とガーニッシュ本体との間に位置し、ガーニッシュ本体が初期位置から移動位置に移動するときにアンカー部と緩衝片とが接触をすることによって、クリップの破断を防止する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6062763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術においては、クリップにおけるアンカー部に設けられた突起部を、ピラートリムに設けられた緩衝片に当接させることによってクリップの破断を防止し、ピラートリムが乗員に干渉することを防止している。
【0008】
しかしながら、クリップによって移動距離が制限されるピラートリムと膨張展開するカーテンエアバッグとが干渉することによって、カーテンエアバッグの膨張展開が不安定になる虞があるという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、衝突が発生した際に、安定してエアバッグを展開するピラートリム取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、車体とピラートリムとを接合させるピラートリム取付け構造において、片側の端部には前記車体と固定させる固定部が形成されている伸縮可能なテザー部と、一方端側には前記テザー部が接合され、他方端側は棒状に延在し、その先端部には突起部が形成されているベース部と、一方端側は前記ピラートリムに回動可能に嵌合され、他方端側には前記ベース部における前記突起部と回動可能に嵌合する荷重調整部と、を備え、前記テザー部と前記ベース部とを結合させるリインフォース部が設けられているピラートリム取付け構造を提案している。
【0011】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記リインフォース部の両端部には、複数の切り欠き部を有しているピラートリム取付け構造を提案している。
【0012】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記荷重調整部は、開口部を有した有底円筒状に形成されているピラートリム取付け構造を提案している。
【0013】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記荷重調整部の開口部は、円錐状に形成されているピラートリム取付け構造を提案している。
【0014】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記荷重調整部の内壁部には、径方向内側に突出した調整部が設けられているピラートリム取付け構造を提案している。
【0015】
形態6;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記荷重調整部の内壁部には、複数の前記調整部が設けられ、前記複数の調整部は、それぞれ異なる形状を成しているピラートリム取付け構造を提案している。
【発明の効果】
【0016】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、衝突が発生した際に、安定してエアバッグを展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るピラートリム取付け構造が適用された車両を車室内側から車両進行方向側を見た概要図である。
図2】本発明の実施形態に係るピラートリム取付け構造の構成を示す断面図であり、(a)は図1に示す矢印方向から見たA―A線に沿う断面図であり、(b)は図1に示す矢印方向から見たB―B線に沿う断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るピラートリム取付け構造におけるテザー部およびベース部を示す概要図であり、(a)は平面図を示し、(b)は側面図を示し、(c)はピラートリム内に収容された状態を示す側面図である。
図4】本発明の実施形態に係るピラートリム取付け構造における荷重調整部の詳細図であり、(a)は荷重調整部の断面図であり、(b)は図4(a)における矢印方向から見たC―C線に沿う断面図であり、(c)は図4(a)における矢印方向から見たD―D線に沿う断面図であり、(d)は図4(a)における矢印方向から見たE―E線に沿う断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るピラートリム取付け構造におけるリインフォース部を示す概要図であり、(a)は平面図を示し、(b)は側面図を示している。
図6図2(b)に示されたピラートリム内部に収容されたエアバッグが膨張展開した際のピラートリム取付け構造の動きを(a)~(d)の順に時系列で示した断面図である。
図7】本発明の実施形態に係るピラートリム取付け構造において荷重が印可された際の荷重調整部におけるベース部の動きを(a)~(d)の順に時系列で示した断面図である。
図8】本発明の実施形態に係るピラートリム取付け構造において荷重が印可された際の、車体とピラートリムとの距離とテザー部に印可される荷重との関係を示した図である。
図9】本発明の実施形態に係るピラートリム取付け構造のリインフォース部における変形例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1から図9を用いて、本実施形態に係るピラートリム取付け構造10について説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは、車両Vの車両進行方向側を示し、矢印UPは車両Vの上方を示し、矢印LHは車室内側から車両進行方向側を見て左側を示している。また、以下の説明において、上下、前後、左右の方向を用いて説明するときには、特に断りのない限り、車室内側から車両進行方向側を見ての上下方向、車両進行方向側を前としての前後方向、車室内側から車両進行方向側を見ての左右方向を示すものとする。
【0019】
<実施形態>
図1から図5を用いて、本実施形態に係るピラートリム取付け構造10の構成について説明する。
【0020】
<ピラートリム取付け構造10について>
図1に示すように、本実施形態に係るピラートリム取付け構造10は、例えば、車両VのウインドシールドWSの車幅方向両側に設けられたAピラー部APの内部に設けられている。以下、助手席側のAピラー部APにおいて、図1のハッチングで示すPS部に設けられているピラートリム取付け構造10について説明する。
【0021】
ピラートリム取付け構造10は、車両Vにおける車体BDとピラートリムPTとを接合している。車両VのAピラー部APには、例えば、カーテンエアバッグ等のエアバッグABが収容されている。
また、図2(a)に示すように、Aピラー部APには、車体BDにピラートリムPTを固定させるクリップCLを嵌合させるホルダHLが設けられている。ホルダHLには、貫通孔が設けられ、クリップCLは、ピラートリムPTおよびテザー部100をホルダHLに固定させている。
具体的には、クリップCLの固定爪LN側は、テザー部100に設けられた貫通孔を通してホルダHLに嵌合することによって車体BDに固定されている。また、嵌合部WPがピラートリムPTに設けられた台座孔FS1に嵌合することによって、クリップCLの嵌合部WP側は、ピラートリムPTに固定されている。
また、Aピラー部APの車両後側には、図2(b)におけるドットハッチングで示すように、エアバッグABが折りたたまれて収容されている。
【0022】
ピラートリム取付け構造10は、図2(a)に示すように、テザー部100と、ベース部200と、荷重調整部300と、リインフォース部400と、を含んで構成されている。
また、車体BDとピラートリムPTとは、クリップCLによって固定されているとともに、テザー部100とベース部200および荷重調整部300とによって、接続されている。また、テザー部100とベース部200とはリインフォース部400によって結合されている。
ピラートリム取付け構造10は、伸縮部120においてU字状に曲げられた状態で車体BDとピラートリムPTとの間に収容されている。
【0023】
<テザー部100について>
テザー部100は、例えば、シリコン等の伸縮可能な柔軟性を有する部材によって平板状に形成されている。テザー部100には、図3(a)および(b)に示すように、一方端にはクリップCLを貫通させて車体BDとテザー部100とを固定させる固定部110が設けられ、他方端には、伸縮部120が形成されている。
【0024】
固定部110は、平面視で略矩形の平板状に形成され、中央部には板厚方向に貫通孔が設けられている。
【0025】
伸縮部120は、平面視で略直線状に延在し、先端部においてベース部200と結合している。また、伸縮部120には、伸縮部120の略垂直方向に向けてリインフォース部400が結合されている。
伸縮部120は、エアバッグABが最大に膨張展開した際の車体BDとピラートリムPTとの距離DTmax以上に伸長可能に設けられている。
【0026】
<ベース部200について>
ベース部200は、図3(a)および(b)に示すように、基底部210と、接続軸220と、突起部230とが形成されている。
基底部210は、樹脂等の部材によって略円柱状に形成されている。基底部210における一方の底面側には伸縮部120が結合され、他方の底面側には、硬質樹脂等の部材によって円柱棒状の接続軸220が形成されている。接続軸220の先端部には、接続軸220よりも大きい径を有する略球状の突起部230が設けられている。
また、ベース部200の側面部には、リインフォース部400が結合されている。
リインフォース部400は、図3(c)に示すように、テザー部100における伸縮部120をU字状に屈曲させた状態で伸縮部120とベース部200とを結合させている。
【0027】
<荷重調整部300について>
荷重調整部300は、一方端側はピラートリムPTに回転可能に嵌合され、他方端側にはベース部200における突起部230と回転可能に嵌合している。
荷重調整部300は、図4(a)に示すように、樹脂等の部材によって、開口部COを有した有底円筒状に形成されている。荷重調整部300の内径は、ベース部200における突起部230の直径よりも大きく形成されている。
荷重調整部300には、調整部310(調整部310a~調整部310c)、凸部320が設けられている。また、荷重調整部300は、略円錐状の空間として開口部COが形成されている。荷重調整部300の内部底部には、略球状の空間として嵌合部CHが形成されている。
【0028】
調整部310(調整部310a~調整部310c)は、荷重調整部300の内壁部に径方向内側に向かって突出して設けられている。調整部310は、個々の突起部を複数環状に配設することによって形成されている。個々の突起部は、例えば、中空アーチ状に形成されている。
調整部310は、図4(a)~図4(d)に示すように、荷重調整部300に複数個所設けられ、それぞれ異なる形状を成している。
例えば、図4(b)~図4(d)に示すように、調整部310aは、4箇所の突起を含む形状を成し、調整部310bは、8箇所の突起を含む形状を成し、調整部310cは、12箇所の突起を含む形状を成している。
また、調整部310a~調整部310cにおける突起の先端が形成する円径は、調整部310aはILa、調整部310bはILb、調整部310cはILcである。このとき、ILa、ILbおよびILcは、ベース部200における突起部230の直径よりも小さく形成されている。
なお、ILa、ILbおよびILcは、図4においては同じ内径として例示しているが、それぞれ異なる内径であってもよい。
【0029】
また、荷重調整部300のベース部200における基底部210が位置する側には、開口部COが形成されている。
開口部COは、略円錐形状に形成されている。また、開口部COの円錐形頂点側には、略円形の貫通孔が設けられた停止壁SWが設けられている。停止壁SWは、突起部230が所定の荷重TFswでは通過できない強度を有して設けられている。ここでいう、所定の荷重TFswは、例えば、テザー部100が破断される荷重TFctよりも大きい荷重である。
【0030】
凸部320は、荷重調整部300の開口部COとは反対側の端部に形成されている。
凸部320は、ピラートリムPTに設けられた台座孔FS2に回転可能に嵌合する。
【0031】
<リインフォース部400について>
リインフォース部400は、図5(a)および(b)に示すように、シリコン等の伸縮可能な柔軟性を有する部材によって平板状に形成されている。リインフォース部400は、例えば、テザー部100における伸縮部120をU字状に屈曲させた状態で伸縮部120とベース部200とを結合している。
また、リインフォース部400のテザー部100およびベース部200との結合部側には、図5(a)のハッチングで示す、複数の切り欠き部VNが設けられている。切り欠き部VNは、例えば、リインフォース部400の両端部に荷重が発生した場合に、車両後側から車両前側に向かって、段階的に破断させる形状を有している。具体的には、例えば、切り欠き部VNは、リインフォース部400において車両後側における幅RWが最も細く脆弱となる形状を成している。
【0032】
<作用・効果>
上記のように構成された本実施形態に係るピラートリム取付け構造10において、衝突物が車両Vに衝突し、例えば、助手席側のAピラー部APに収容されているエアバッグABが展開した場合の作用について、図6図8を用いて説明する。
【0033】
図6(a)に示すように、車両Vに衝突が発生した場合には、Aピラー部APに収容されているエアバッグABが、矢印AR1に示す、車両後側下部に向かう膨張展開が開始される。エアバッグABの膨張展開によって、ピラートリムPTが矢印AR1に示す方向に押される。
そして、エアバッグABの膨張による押圧力によって、クリップCLにおける嵌合部WPが台座孔FS1から離脱あるいは破断し、ピラートリムPTは、車両前側の辺RCを支点とした回転を起こしながら、矢印AR2に示す方向に向かって移動する。
このとき、ピラートリムPTは、テザー部100と、ベース部200と、荷重調整部300と、リインフォース部400と、によって車体BDに接続されている状態になる。
【0034】
図6(b)に示すように、エアバッグABが膨張し、ピラートリムPTは、矢印AR3に示す方向にさらに移動し、ピラートリムPTに固定されている荷重調整部300とともに、ベース部200が矢印AR3の方向に向かって移動する。
そして、車体BDとピラートリムPTとの距離DTが広がっていく。ピラートリムPTが車体BDから離れることによって、テザー部100には、荷重TFが印可される。
また、車体BDとピラートリムPTとの距離DTが広がることによって、リインフォース部400の両端部に結合されているテザー部100とベース部200との距離が広がっていく。そして、リインフォース部400の両端部には荷重TFが加わり、リインフォース部400に設けられた切り欠き部VNが、車両後側から車両前側に向かって、段階的に破断していく。そのため、テザー部100に印加される荷重TFは、段階的に大きくなっていく。そして、段階的に大きくなっていく荷重TFによって、テザー部100は、破断することなく段階的に伸長していく。
また、リインフォース部400が、車両後側から車両前側に向かって段階的に破断していくことによって、ベース部200には、矢印AR4に示す方向に向かう回転が発生する。換言すると、リインフォース部400が乗員に近い側から乗員から遠い側に向かって段階的に破断していくことによって、ピラートリムPTには、乗員から遠ざかる方向に向かう回転が発生する。このとき、ベース部200に設けられた略球状の突起部230が、有底円筒形状の荷重調整部300に嵌合していることによって、ピラートリムPTは、矢印AR4に示す方向に抵抗なく回転する。換言すると、ピラートリムPTは、エアバッグABの膨張にあわせた方向に安定して回転していく。
【0035】
さらに、エアバッグABが膨張すると、図6(c)に示すように、リインフォース部400は破断する。そして、ピラートリムPTは、テザー部100と、ベース部200と、荷重調整部300と、によって車体BDに接続されている状態になる。
テザー部100は、伸縮可能な柔軟性を有する部材によって形成されているため、エアバッグABの膨張展開に追従してピラートリムPTを移動させ、距離DTは、さらに広がっていく。
また、ベース部200における略球状の突起部230が、荷重調整部300における略球状の空間として嵌合部CHと回転可能に嵌合している。そのため、矢印AR5に示す方向に回転することによって、テザー部100における回転を含む動きに抵抗なく追従する。
そして、ピラートリムPTは、エアバッグABの膨張展開に追従して矢印AR6に示す方向に移動していく。
【0036】
さらに、エアバッグABが膨張し、ピラートリムPTに矢印AR7に示す方向に押圧力が印可されると、図6(d)に示すように、ベース部200における突起部230が、荷重調整部300における調整部310a~調整部310cを段階的に移動していく。調整部310a~調整部310cは、それぞれ異なる形状をしているため、印加される荷重TFの強さに基づいて、調整部310a~310cを段階的に移動する。
【0037】
具体的には、図7(a)に示すように、エアバッグABが膨張した場合には、ベース部200には、矢印AR9に示す方向に荷重TFが印可される。調整部310a~調整部310cにおける突起の先端が形成する円径ILa、ILbおよびILcは、突起部230の直径よりも小さく形成されている。したがって、突起部230に荷重TFが印可され、調整部310a~調整部310cを通過する際には、抵抗力が発生する。
例えば、図8における矢印Avnの区間においては、リインフォース部400に設けられた切り欠き部VNが段階的に破断していくことによって、リインフォース部400は、段階的に伸長し距離DTは広がっていく。このとき、荷重調整部300においては、突起部230は、調整部310aに留まっている。
また、矢印A310aの区間においては、突起部230は、荷重TFが荷重TFaに達するまでは、調整部310aの位置に留まる。荷重TFが荷重TFa以上になった場合には、図7(b)に示すように、突起部230は、調整部310aを通過し調整部310bの位置に移動する。
矢印A310bの区間においては、突起部230は、荷重TFが荷重TFbに達するまでは、調整部310bの位置に留まる。荷重TFが荷重TFb以上になった場合には、突起部230は、調整部310bを通過し調整部310cの位置に移動する。
矢印A310cの区間においては、図7(c)に示すように、突起部230は、荷重TFが荷重TFcに達するまでは、調整部310cの位置に留まる。荷重TFが荷重TFc以上になった場合には、突起部230は、図7(d)に示すように、調整部310cを通過し停止壁SWの位置に移動する。
矢印Aswの区間においては、突起部230は、エアバッグの展開が完了するまで、停止壁SWの位置に留まる。
【0038】
また、突起部230が停止壁SWの位置にある場合には、開口部COが略円錐形状に形成されているため、ベース部200は、図6(d)における矢印AR5および矢印AR8に示すように、テザー部100および荷重調整部300の動きにあわせて広い範囲で回転する。
【0039】
そして、テザー部100による長さの伸長および荷重調整部300における突起部230の調整部310a~調整部310cの通過にともなって、車体BDとピラートリムPTとの距離DTは、エアバッグABの膨張が終了するまで広がっていく。
エアバッグABの膨張が終了することによって、車体BDとピラートリムPTとの距離DTの伸長は、距離DTmaxにおいて終了する。
【0040】
以上のように、リインフォース部400および荷重調整部300は、テザー部100に印可される荷重TFを段階的に吸収分散させることによって、テザー部100に、テザー部100が破断される荷重TFctが印可されることを制限する。
そして、エアバッグの展開が完了するまでテザー部100が急激な伸長をせずに破断しないことによって、ピラートリム取付け構造10は、ピラートリムPTを飛散させることなく車体BDに繋ぎ止める。
また、テザー部100の柔軟性および回転可能なベース部200と荷重調整部300とによって、ピラートリム取付け構造10は、ピラートリムPTをエアバッグABの膨張展開方向に対して抵抗することなく移動させる。
【0041】
以上、説明したように、本実施形態に係る車体BDとピラートリムPTとを接合させるピラートリム取付け構造10は、片側の端部には車体BDと固定させる固定部110が形成されている伸縮可能なテザー部100と、一方端側にはテザー部100が接合され、他方端側は棒状に延在し、その先端部には突起部230が形成されているベース部200と、一方端側はピラートリムPTに回動可能に嵌合され、他方端側にはベース部200における突起部230と回動可能に嵌合する荷重調整部300と、を備え、テザー部100をU字状に屈曲させた状態でテザー部100とベース部200とを結合させるリインフォース部400が設けられている。
つまり、エアバッグABが膨張展開した場合には、ピラートリムPTが離脱することによって、テザー部100に荷重TFが印可される。テザー部100に荷重TFが印可されることによって、リインフォース部400が伸長したのちに破断する。そして、ベース部200に設けられた突起部230が、荷重調整部300に回動可能に嵌合していることによって回転が発生し、テザー部100に印加される荷重TFを吸収する。
したがって、エアバッグABの膨張展開によって印可されるテザー部100に印可される荷重TFを、リインフォース部400の伸長および荷重調整部300における回転によって吸収分散させることによって、ピラートリム取付け構造10は、エアバッグABの展開完了までテザー部100を破断させることなく、ピラートリムPTを車体BDに繋ぎ止めておくことができる。
また、柔軟性のあるテザー部100および回動可能なベース部200と荷重調整部300とが、ピラートリムPTをエアバッグABの膨張展開方向に対して抵抗することなく回転させることによって、ピラートリム取付け構造10は、エアバッグABの展開を妨げることなく離脱させることができる。
そのため、衝突が発生した際に、安定してエアバッグを展開することができる。
【0042】
また、本実施形態に係るピラートリム取付け構造10は、リインフォース部400の両端部には、複数の切り欠き部を有している。
つまり、テザー部100に荷重TFが発生した場合には、リインフォース部400に設けられた切り欠き部VNが、印加される荷重TFの強さに基づいて、段階的に破断する。そして、リインフォース部400がテザー部100に印可される荷重TFを段階的に吸収分散し、リインフォース部400は、テザー部100に急激な伸長をさせず破断させない。したがって、ピラートリム取付け構造10は、エアバッグABの動きにあわせてピラートリムPTを移動させ、ピラートリムPTを飛散させることなく車体BDに繋ぎ止めることができる。
そのため、衝突が発生した際に、安定してエアバッグを展開することができる。
【0043】
また、本実施形態に係るピラートリム取付け構造10は、荷重調整部300が、開口部COを有した有底円筒状に形成されている。
つまり、ベース部200に設けられた略球状の突起部230が、有底円筒形状の荷重調整部300に嵌合することによって、ピラートリムPTは、ベース部200と結合されているテザー部100の動きにあわあせて無理なく回転することができる。したがって、ピラートリム取付け構造10は、エアバッグABの動きにあわせてピラートリムPTを移動させることができる。
そのため、衝突が発生した際に、安定してエアバッグを展開することができる。
【0044】
また、本実施形態に係るピラートリム取付け構造10は、荷重調整部300の開口部COが、円錐形状に形成されている。
つまり、突起部230が停止壁SWの位置にある場合には、開口部COが略円錐形状に形成されているため、ベース部200は、テザー部100および荷重調整部300の動きにあわあせて広い範囲で回転することができる。したがって、ピラートリム取付け構造10は、エアバッグABの動きにあわせてピラートリムPTを移動させることができる。
そのため、衝突が発生した際に、安定してエアバッグを展開することができる。
【0045】
また、本実施形態に係るピラートリム取付け構造10は、荷重調整部300の内壁部には、径方向内側に突出した調整部310が形成されている。
つまり、エアバッグABが膨張し、テザー部100に荷重TFが発生した場合には、荷重調整部300において、ベース部200に設けられた突起部230が調整部310(調整部310a~310c)を段階的に移動する。そして、荷重調整部300がテザー部100に印可される荷重TFを段階的に吸収分散し、エアバッグの展開が完了するまでテザー部100に急激な伸長をさせずに破断させない。したがって、ピラートリム取付け構造10は、エアバッグABの動きにあわせてピラートリムPTを移動させ、ピラートリムPTを飛散させることなく車体BDに繋ぎ止めることができる。
そのため、衝突が発生した際に、安定してエアバッグを展開することができる。
【0046】
また、本実施形態に係るピラートリム取付け構造10は、荷重調整部300の内壁部には、前記調整部が複数箇所設けられ、前記複数の調整部は、それぞれ異なる形状を成している。
つまり、エアバッグABが膨張し、テザー部100に荷重が発生した場合には、荷重調整部300において、ベース部200に設けられた突起部230が、複数の調整部310a~調整部310cを段階的に移動していく。調整部310a~調整部310cは、それぞれ異なる形状をしているため、印加される荷重TFの大きさに基づいて、調整部310a~310cを段階的に移動する。そして、荷重調整部300がテザー部100に印可される荷重TFを段階的に吸収分散し、エアバッグの展開が完了するまでテザー部100に急激な伸長をさせずに破断させない。したがって、ピラートリム取付け構造10は、エアバッグABの動きにあわせてピラートリムPTを移動させ、ピラートリムPTを飛散させることなく車体BDに繋ぎ止めることができる。
そのため、衝突が発生した際に、安定してエアバッグを展開することができる。
【0047】
<変形例>
本実施形態においては、リインフォース部400における切り欠き部VNを車両後側から車両前側に向かって段階的に破断させる形状を例示したが、リインフォース部400の変形例として、図9(a)に示すように、リインフォース部400Aにおける切り欠き部として車両前後方向に向かって対称に設けてもよい。あるいは、図9(b)に示すように、リインフォース部400Bにおける切り欠き部として、幅が異なる複数のリインフォースを設け、それぞれに切り欠き部を設けてもよい。
この場合においても、リインフォース部400Aあるいはリインフォース部400Bを段階的に破断させることによって、リインフォース部400Aあるいはリインフォース部400Bは、テザー部100に印可される荷重TFを段階的に吸収分散させる。そして、テザー部100に急激な伸長をさせず破断させない。したがって、ピラートリム取付け構造10は、エアバッグABの動きにあわせてピラートリムPTを移動させ、ピラートリムPTを飛散させることなく車体BDに繋ぎ止めることができる。
そのため、衝突が発生した際に、安定してエアバッグを展開することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、車両VにおけるAピラー部APに適用する事例を記載したが、エアバッグABが膨張展開される際に離脱させる他のピラートリム、コンソールボックス、あるいはセンターコンソールにピラートリム取付け構造10を適用させてもよい。
【0049】
また、本実施形態においては、調整部310における突起部は、中空アーチ状の形状を例示したが、突起部にスリット、矩形、三角形等の形状の変更を行うことにより、突起部の変形に必要な荷重を調整させてもよい。この場合には、突起部230が調整部を通過する際の荷重が変更されることによって、ピラートリムPTの離脱挙動を制御し、エアバッグの展開を安定させることができる。
【0050】
以上、この発明の実施形態について、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10;ピラートリム取付け構造
100;テザー部
110;固定部
120;伸縮部
200;ベース部
210;基底部
220;接続軸
230;突起部
300;荷重調整部
310a;調整部
310b;調整部
310c;調整部
320;凸部
400;リインフォース部
BD;車体
CL;クリップ
PT;ピラートリム
SW;停止壁
V;車両
VN;切り欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9