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特開2024-155213熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤、熱空気架橋用ゴム組成物、物品、及び熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155213
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤、熱空気架橋用ゴム組成物、物品、及び熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20241024BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20241024BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20241024BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/14
C08K5/098
C08J3/24 Z CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069701
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
(72)【発明者】
【氏名】詫摩 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】林 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 昌紀
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA16
4F070AB10
4F070AB16
4F070AC04
4F070AC14
4F070AC40
4F070AC56
4F070AC94
4F070AE01
4F070AE02
4F070AE04
4F070AE08
4F070AE30
4F070GA05
4F070GA06
4F070GB03
4F070GC02
4J002AC011
4J002AC021
4J002BB151
4J002EG037
4J002EG047
4J002EK006
4J002EK036
4J002FD010
4J002FD090
4J002FD146
4J002FD150
4J002FD156
(57)【要約】
【課題】熱空気存在下における有機過酸化物による架橋で得られる架橋ゴムが優れた機械特性を有しながらも、架橋ゴムの表面のべたつきを抑制できる、熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤を提供すること。
【解決手段】ゴムと有機過酸化物を含有するゴム組成物に含まれ、かつ炭素数が8~30の脂肪酸と、2価又は3価の金属との脂肪酸金属塩を有効成分とする、熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムと有機過酸化物を含有するゴム組成物に含まれ、かつ炭素数が8~30の脂肪酸と、2価又は3価の金属との脂肪酸金属塩を有効成分とする、熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤。
【請求項2】
ゴムを100質量部に対し、有機過酸化物を0.1~15質量部、及び請求項1記載の熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤を0.001~10質量部を含有する、熱空気架橋用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項2記載の熱空気架橋用ゴム組成物から形成される物品。
【請求項4】
請求項1記載の熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤と有機過酸化物とを、ゴムに混練し、空気の存在下において120~250℃で架橋する、熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤、熱空気架橋用ゴム組成物、物品、及び熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機過酸化物は、ゴムや熱可塑性エラストマー、樹脂の架橋剤として広く利用されている。有機過酸化物による架橋は硫黄での架橋と比較して、架橋ゴムの機械的物性や耐熱性等が高い特徴がある。これは、有機過酸化物架橋で形成される炭素-炭素結合が、硫黄架橋により形成される炭素-硫黄結合よりも化学的に安定であるためと考えられている。
【0003】
有機過酸化物によるゴムの架橋反応は有機過酸化物の-O-O-結合の分解により生じる酸素ラジカルが、ゴム中の水素原子を引き抜くことでポリマーラジカルが生成し、このポリマーラジカル同士がカップリングすることで起こるとされている。
【0004】
有機過酸化物によりゴムの架橋を行う場合、ゴム表面では空気中の酸素分子により架橋反応が阻害される。その結果、ゴム表面では架橋反応の進行が不十分となり、べたついたゴム表面生じる。このため、有機過酸化物によるゴムの架橋は酸素が除かれたスチームチューブ、溶融塩浴、スチームオートクレーブ、及び排気密閉金型内等で加熱して行うのが一般的である。
【0005】
酸素が除かれた環境下で加熱して架橋反応を行うためには、硫黄架橋を行う場合に比べて製造設備が高価になる。また架橋反応を行うまでの準備やメンテナンスが必要となり、硫黄架橋に比べ生産性が低下する。
【0006】
これらの課題により、硫黄架橋と同様に空気存在下でもゴム表面にべたつきが生じない有機過酸化物による架橋ゴムを製造する方法が求められていた。
【0007】
この課題を解決する方法として、硫黄系化合物を用いる方法(特許文献1)、アスコルビン酸を用いる方法(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-105532号公報
【特許文献2】国際公開第2022/13114号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、有機過酸化物と、ポリ(アルキルフェノール)ポリスルフィド及びベンゾチアジルスルフィドを併用することで、架橋ゴム表面のべたつきが改善されることが開示されている。しかし、架橋ゴムの機械特性は十分ではない。またポリ(アルキルフェノール)ポリスルフィド、ベンゾチアジルスルフィドは飛散性が高い粉体であり、これらを取り扱う際には作業安全性を確保するための措置が必要となる。
【0010】
特許文献2は有機過酸化物とアスコルビン酸誘導体を併用することで機械特性や耐熱性が優れる架橋ゴムが得られることが開示されている。しかしアスコルビン酸誘導体は経時的な分解が起こりやすい性質を有する。そのため、ゴム組成物の保管温度等によりゴム組成物中のアスコルビン酸誘導体の量に差が生じ、架橋ゴムの品質にばらつきが生じる原因となる懸念がある。
【0011】
また、シリカ等の滑剤をゴム表面に塗布し、べたつきを一時的に低減させること知られている。しかし昨今、アルコール等で消毒されることが多くなっており、ふき取り後にべたつきがあるように感じてしまう場合があり、アルコールによる拭き上げ後もべたつかない表面を有するゴムが求められている。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明は、熱空気存在下における有機過酸化物による架橋で得られる架橋ゴムが優れた機械特性を有しながらも、架橋ゴムの表面のべたつきを抑制できる、熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は以下のものである。
(1)ゴムと有機過酸化物を含有するゴム組成物に含まれ、かつ炭素数が8~30の脂肪酸と、2価又は3価の金属との脂肪酸金属塩を有効成分とする、熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤。
(2)ゴムを100質量部に対し、有機過酸化物を0.1~15質量部、及び上記(1)の熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤を0.001~9質量部を含有する、熱空気架橋用ゴム組成物。
(3)上記(2)の熱空気架橋用ゴム組成物から形成される物品。
(4)上記(1)の熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤と有機過酸化物とを、ゴムに混練し、空気の存在下において120~250℃で架橋する、熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤は、熱空気存在下における有機過酸化物による架橋で得られる架橋ゴムが優れた機械特性を有しながらも、アルコールによる拭き上げ後でも架橋ゴムの表面のべたつきを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤(以下、べたつき抑制剤とも称す。)は、ゴムと有機過酸化物を含有するゴム組成物に含まれ、かつ炭素数が8~30の脂肪酸と、2価又は3価の金属との脂肪酸金属塩を有効成分とする。
【0016】
<ゴム>
ゴムは、合成ゴム、天然ゴム等が挙げられる。合成ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンのランダム共重合体及びブロック共重合体、ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ブタジエン-イソプレン共重合体等のジエン系ゴム、エチレン-プロピレンのランダム共重合体及びブロック共重合体、エチレン-ブテンのランダム共重合体及びブロック共重合体、エチレンとα-オレフィンとの共重合体、エチレン-アクリル酸、エチレン-メタクリル酸等のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル、エチレン-メタクリル酸エステル等のエチレン-不飽和カルボン酸エステル共重合体、不飽和カルボン酸の一部が金属塩である、エチレン-アクリル酸-アクリル酸金属塩、エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸金属塩等のエチレン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸金属塩共重合体、アクリル酸エステル-ブタジエン共重合体ブチルアクリレート-ブタジエン共重合体等のアクリル系弾性重合体、エチレン-酢酸ビニル等のエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ブチレン-イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレン及びそれらの変性物等が挙げられるが、架橋ゴムの機械特性の観点からエチレン-プロピレン-ジエン共重合体が好ましい。前記ゴムは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0017】
前記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体において、構成単位のジエンモノマーとしては、特に限定されず、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-プロピリデン-5-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、ノルボルナジエン等の環状ジエン類;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,7-オクタジエン等の鎖状非共役ジエン類等が挙げられる。特に好ましくは5-エチリデン-2-ノルボルネンである。
【0018】
前記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体の市販品としては、可塑剤等を含有する油展グレードと、可塑剤等を含有しない非油展グレードがあり、ゴムに求められる物性によって適宜選択すればよい。
【0019】
前記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体におけるエチレン量は、30質量%~80質量%であることが好ましく、40質量%~70質量%であることがより好ましい。前記エチレン-プロピレン-ジエン共重合体におけるジエン量は,1質量%~15質量%であることが好ましく、4質量%~9質量%であることがより好ましい。
【0020】
<有機過酸化物>
有機過酸化物は、ゴムの架橋形態に応じて適宜選択すればよい。前記有機過酸化物は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0021】
前記有機過酸化物としては、例えば、ヒドロペルオキシド類、ジアルキルペルオキシド類、ペルオキシエステル類、ペルオキシケタール類、ペルオキシモノカーボネート類、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシジカーボネート類等が挙げられるが、有機過酸化物の熱分解性や、べたつき抑制剤を含む熱空気架橋用ゴム組成物の貯蔵安定性、架橋ゴムの機械特性等の観点から、ジアルキルペルオキシド類、ペルオキシケタール類が好ましく、ジアルキルペルオキシド類がより好ましい。
【0022】
前記ジアルキルペルオキシド類としては、例えば、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジ-t-ヘキシルペルオキシド等が挙げられる。
【0023】
また、前記ペルオキシケタール類としては、例えば、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブタン、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルペルオキシ)バレラート、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
【0024】
また、これらの中でも、半減期温度がゴムの架橋温度に適していることから、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましく、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが特に好ましい。
【0025】
<脂肪酸金属塩>
脂肪酸金属塩は、炭素数が8~30の脂肪酸と、価数が2価又は3価の金属との脂肪酸金属塩(金属石鹸)である。
【0026】
前記脂肪酸金属塩は、耐水性の観点から、炭素数が8~30であることが好ましく、炭素数が12~24であることがより好ましく、炭素数が14~20であることがさらに好ましい。また、金属は、上記の価数を満たせば特に限定されないが、2価であることが好ましい。前記脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸鉄、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、オクチル酸鉄、オクチル酸バリウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸スズ、ナフテン酸銅、ナフテン酸マンガンが挙げられる。これらのうち、ステアリン酸鉄、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、オクチル酸鉄が入手性や架橋ゴムの物性の観点から好ましく、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸コバルトがより好ましく、ステアリン酸マグネシウムが特に好ましい。前記脂肪酸金属塩は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0027】
<熱空気架橋用ゴム組成物>
本発明の熱空気架橋用ゴム組成物は、前記ゴム100質量部に対し、前記有機過酸化物を0.1~15質量部、及び前記熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤を0.001~10質量部を含有する。
【0028】
前記有機過酸化物は、前記ゴム100質量部に対し、機械特性、耐熱性及びべたつき抑制の観点から、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが特に好ましい。また、前記有機過酸化物は、前記ゴム100質量部に対し、ゴムの伸びの観点から、15質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが特に好ましい。なお、前記ゴムが混合物である場合にはゴム成分の合計量を100質量部とする。
【0029】
前記熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤は、前記ゴム100質量部に対し、架橋ゴムの機械特性及びべたつき抑制の観点から、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、そして、架橋ゴムの機械特性の観点から、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
【0030】
本発明の熱空気架橋用ゴム組成物は、架橋ゴムの機械特性の観点から、架橋促進剤を含んでいてもよい。前記架橋促進剤としては、特に限定されず、キノイド系、樹脂系、硫黄系、トリアジン系、ポリオール系、ポリアミン系、マレイミド系等の架橋促進剤が挙げられる。前記架橋促進剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0031】
キノイド系架橋促進剤としては、例えば、p-キノンジオキシム、p,p´-ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ-p-ベンゾキノン、ポリ-p-ジニトロベンゼン等が挙げられる。
【0032】
樹脂系架橋促進剤としては、例えば、アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド、ジベンゾチアゾリルジスルフィド縮合物、トリアジン-ホルムアルデヒド縮合物、オクチルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノール・スルフィド樹脂、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が挙げられる。
【0033】
硫黄系架橋促進剤としては、例えば、2,2´-ジベンゾチアゾリルジスルフィド、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、N,N´-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼピノン-2)、チウラムポリスルフィド、2-(4´-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、アミルフェノールジサルファイド重合物等が挙げられる。これらのうち、アミルフェノールジサルファイド重合物と2,2´-ジベンゾチアゾリルジスルフィドが架橋ゴムの物性の観点から好ましい。
【0034】
ポリアミン系架橋促進剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレン・テトラミン、テトラエチレン・ペンタミン、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)カルバメート、N,N´-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサンジアミン、アンモニウムベンゾエート等が挙げられる。
【0035】
トリアジン系架橋促進剤としては、例えば、2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン等が挙げられる。
【0036】
ポリオール系架橋促進剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ハイドロキノン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0037】
マレイミド系架橋促進剤としては、例えば、N,N´-m-フェニレンジマレイミド等が挙げられる。
【0038】
前記架橋促進剤を使用する場合、前記架橋促進剤は、前記ゴム100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、そして、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0039】
また、本発明の熱空気架橋用ゴム組成物は、耐摩耗性の観点から、カーボンブラックを含んでいてもよい。前記カーボンブラックとしては、市販のものを用いることができ、一般に補強剤として用いられているファーネスブラックを用いることができる。前記カーボンブラックは、瀝青質微粉末を高充填する際の混練性及び成形性といった観点から、好ましくは、窒素吸着比表面積が20~60m/gであって、DBP吸油量が40~130ml/100gのもの、例えば、FEFカーボンブラック、SRFカーボンブラック等が用いられる。
【0040】
前記カーボンブラックの市販品としては、商品名:「シーストG-SO」、「シーストSO」、「シーストS」(以上、東海カーボン製)、「旭#55」、「旭#51」、「旭#50」(以上、旭カーボン製)等が挙げられる。
【0041】
前記カーボンブラックを使用する場合、前記カーボンブラックは、耐摩耗性の観点から、前記ゴム100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、そして、ゴムの伸びの観点から、150質量部以下であることが好ましく、120質量部以下であることがより好ましい。
【0042】
また、本発明の熱空気架橋用ゴム組成物は、ゴム類の加工で一般的に使用される、硫黄、架橋助剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、難燃化剤等の添加剤、プロセスオイル等の可塑剤、ステアリン酸等の滑剤等のその他の成分を任意の割合で配合することができる。前記その他の成分は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0043】
前記その他の成分を使用する場合、本発明の効果を損なわない範囲で使用すればよく、例えば、前記ゴム100質量部に対し、前記その他の成分は、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、そして、100質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
【0044】
<熱空気架橋用ゴム組成物の製造方法>
本発明の熱空気架橋用ゴム組成物の製造方法は、上記の各成分を混合することにより得ることができる。混練方法は、ゴム類の加工で一般的に用いられている公知の手法を使用することができ、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機、トランスファーミキサー等の混練機が使用可能であり、ニーダーが好ましい。
【0045】
<物品、及び熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制方法>
本発明の物品は、前記熱空気架橋用ゴム組成物から形成される架橋ゴムである。具体的には、前記熱空気架橋用ゴム組成物を空気の存在下で加熱(架橋)することにより得られる。加熱(架橋)方法は、公知の方法で実施でき、使用される有機過酸化物の種類及び架橋しようとするゴム類の種類、必要とする物性等によって適宜決めればよい。加熱(架橋)を行う装置としては、例えば、熱風式オーブンやマイクロ波(高周波)、遠赤外線、電熱等の予備加熱装置を有する熱風式加熱炉(例えばミクロ電子(株)製のMMV型熱風式加熱炉、東洋精機(株)製のギヤー式老化試験機等)等が使用できる。加熱温度は120℃から250℃であることが好ましく、130℃から200℃であることがより好ましい。加熱時間は3分から60分であることが好ましく、5分から30分であることがより好ましい。すなわち、本発明では、前記熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制剤と前記有機過酸化物とを、前記ゴムに混練し、空気の存在下において熱架橋することにより、熱空気架橋用ゴムのべたつき抑制することができる。
【0046】
前記物品は、例えば、窓わくゴム、スチームホース、自動車用部品、電線ケーブル、ゴムの引布、防振ゴム素材等の屋外環境で使用するクッション材・緩衝ゴム材等に利用できるが、上記用途に限定されるものではない。
【実施例0047】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
<実施例1~30及び比較例1~2>
各実施例及び比較例において、表1~3に示す原料を配合(単位:質量部)し、ニーダーで均一に混練りしたのち、ロール機で延伸し板状に成形した。次いで、室温まで冷却することにより、ゴム組成物(ゴムシート、50cm×10cm、厚さ2cm)を製造した。上記組成物を金型(10cm×5cm)に約12g入れ、テフロン(登録商標)板で金型を挟んだうえで、5分ハンドプレス機(30MPa、110℃)で圧力をかけ、10cm×5cmに仮成形した。この仮成形ゴム板上部に穴をあけ、インキュベーター中央部にフックで吊り下げて、空気の存在下180℃×15分で熱することで架橋ゴムを得た。
【0049】
表1~3に示す各成分は以下のとおりである。
EPDM:JSR株式会社製、商品名「JSREP21(エチレン-プロピレン-ジエン共重合体)
カーボンブラック:東海カーボン株式会社製、商品名「シーストG-SO」
酸化亜鉛:和光純薬株式会社製
ステアリン酸:和光純薬株式会社製
プロセスオイル:出光興産株式会社製、商品名「PW-90」
パーブチルP:日油株式会社製、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン
ステアリン酸鉄:日油株式会社製、商品名「ステアリン酸鉄」
ステアリン酸バリウム:日油株式会社製、商品名「バリウムステアレート」
ステアリン酸マグネシウム:東京化成工業株式会社製
モノステアリン酸アルミニウム:日油株式会社製、商品名「アルミニウムステアレート300」
トリステアリン酸アルミニウム:日油株式会社製、商品名「アルミニウムステアレート900」
ステアリン酸コバルト:東京化成工業株式会社製
ステアリン酸亜鉛:和光純薬株式会社製
ステアリン酸カルシウム:東京化成工業株式会社製
オクチル酸マグネシウム:日本化学産業株式会社製、商品名「ニッカオクチックスマグネシウム2%」
オクチル酸鉄:日本化学産業株式会社製、商品名「ニッカオクチックス鉄6%」
オクチル酸バリウム:東栄化工株式会社製、商品名「ヘキソエートバリウム15%」
オクチル酸ジルコニウム:東栄化工株式会社製、商品名「ヘキソエートジルコニウム12%」
オクチル酸コバルト:キシダ化学株式会社製
オクチル酸スズ:東京化成工業株式会社製
ナフテン酸銅:東栄化工株式会社製、商品名「ナフテン酸銅8%」
ナフテン酸マンガン:東京化成工業株式会社製
サンセラーAP:三新化学工業株式会社製、アミルフェノールジサルファイド重合物
MBTS:2,2´-ジベンゾチアゾリルジスルフィド、東京化成工業株式会社製
【0050】
上記で得られた架橋ゴムを用い、以下の評価を行った。結果を表1~3に示す。
【0051】
<機械特性の評価>
架橋ゴムをダンベル3号で打ち抜き、JISK6251に準拠した引張試験(引張速度500mm/min)を行い破断応力、及び伸び率を測定した。破断応力が5MPa未満は×、5MPa以上10MPa未満を〇、10MPa以上を◎と評価した。伸び率が250%未満は×、250%以上300%未満を〇、300%以上を◎と評価した。
【0052】
<べたつきの評価>
架橋ゴムを1時間、23℃、湿度50%RHの空間で冷却した。べたつき抑制効果の耐久性を評価するため、エタノールで湿らせたキムワイプ(日本製紙クレシア社製)で1回拭き上げたサンプルでべとつきの程度を評価した。評価は10人で行い、人差し指の腹が全面触れる強さで10秒間触り、べとつきを下記5段階の基準より選択した。10人の評価点の合計値が25点未満を×、25~35点を〇、36点以上を◎とした。
評価点
5点:べたつきが無い
4点:僅かにべたつきがある
3点:べたつきがある
2点:べたつきがあり、表面に指の痕がわずかに残る
1点:べたつきがあり、表面に指の痕が残る
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
脂肪酸金属塩を有効成分とするべたつき抑制剤が含まれていない熱空気架橋用ゴム組成物を用いた比較例1は、伸び率が低く、強いべたつきがある架橋ゴムが得られた。脂肪酸金属塩を有効成分とするべたつき抑制剤を含む熱空気架橋用ゴム組成物を用いた実施例1~8では表面のべたつきがなく、機械特性(破断応力、伸び率)に優れた架橋ゴムが得られた。
【0057】
脂肪酸金属塩を有効成分とするべたつき抑制剤が含まれていない熱空気架橋用ゴム組成物に架橋促進剤を併用した比較例2では、伸び率が低く、強いべたつきがある架橋ゴムが得られた。脂肪酸金属塩を有効成分とするべたつき抑制剤を含む熱空気架橋用ゴム組成物に架橋促進剤を併用した実施例9~30では表面のべたつきがなく、機械特性(破断応力、伸び率)に優れた架橋ゴムが得られた。