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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155219
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】糸巻取機
(51)【国際特許分類】
   B65H 63/06 20060101AFI20241024BHJP
   D01H 13/14 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B65H63/06 B
D01H13/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069714
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】澤田 映
【テーマコード(参考)】
3F115
4L056
【Fターム(参考)】
3F115AA09
3F115BA02
3F115CA34
3F115CB18
3F115CB19
3F115CC23
3F115CC26
4L056AA45
4L056AA47
4L056BA07
4L056BE05
4L056CA06
4L056EA04
4L056EA13
4L056EA34
4L056EA49
4L056EB13
4L056EC05
4L056EC48
4L056EC49
4L056ED09
4L056ED11
(57)【要約】
【課題】継目領域の芯繊維の欠落を検出可能な糸巻取機を提供する。
【解決手段】自動ワインダは、監視部16と、糸継部14と、巻取部18と、ユニット制御部51と、を備える。監視部16は、糸20の状態を監視する。糸継部14は、糸20の走行方向において監視部16より上流に配置されており、トレイ側の糸20とパッケージ30側の糸20とを糸継ぎする。巻取部18は、糸20を巻き取ってパッケージ30を形成する。監視部16は、光学センサ16a及び静電容量センサ16bの少なくとも1つを有する。光学センサ16aは、糸20の太さを検出する。静電容量センサ16bは、糸20の質量を検出する。ユニット制御部51は、糸継部14による糸継ぎがされた継目領域に対する監視部16の検出結果に基づいて、継目領域の芯繊維の有無を判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮糸から成る芯繊維と、前記芯繊維に巻き付けられるカバー繊維と、から構成される糸を供給する給糸部と、
前記糸の状態を監視する監視部と、
糸の走行方向において前記監視部より上流に配置されており、給糸部側の糸とパッケージ側の糸とを糸継ぎする糸継部と、
前記糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取部と、
制御部と、
を備え、
前記監視部は、
糸の太さを検出する光学センサ及び糸の質量を検出する静電容量センサの少なくとも1つを有し、
前記制御部は、前記糸継部による糸継ぎがされた継目領域に対する前記監視部の検出結果に基づいて、前記継目領域の前記芯繊維の有無を判定することを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記継目領域が前記監視部を通過する際の糸の巻取速度が、定常時の糸の巻取速度未満となるように前記巻取部を制御することを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
前記監視部は、前記光学センサ及び前記静電容量センサを有し、
前記制御部は、前記光学センサの検出結果と前記静電容量センサの検出結果の差異と、前記差異に対して巻取中の糸の糸情報に応じて予め定められた閾値と、に基づいて、前記継目領域の前記芯繊維の有無を判定することを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記監視部は、糸で反射した反射光を検出する反射式センサを含む前記光学センサを有し、
前記制御部は、前記反射式センサの検出結果に基づいて、前記カバー繊維からの前記芯繊維の飛出しの有無を判定することを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記監視部は、前記光学センサ及び前記静電容量センサを有し、
前記光学センサは、糸が位置する領域を透過した透過光を検出する透過式センサと、糸で反射した反射光を検出する反射式センサと、を含み、
前記制御部は、前記透過式センサの検出結果、前記反射式センサの検出結果、及び、前記静電容量センサの検出結果に基づいて、前記カバー繊維からの前記芯繊維の飛出しの有無を判定することを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
糸に張力を付与する第1状態と、前記第1状態よりも糸に付与する張力が小さい第2状態と、に切替可能な張力付与部を備え、
前記制御部は、前記張力付与部を前記第2状態としてから前記継目領域が前記監視部を通過するように制御することを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項6に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記張力付与部を第2状態としてから前記継目領域が前記監視部を通過するように制御した後に、前記継目領域の位置を前記監視部の上流まで戻し、前記張力付与部を第1状態としてから前記継目領域が前記監視部を通過するように制御することを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項6に記載の糸巻取機であって、
糸の走行方向において前記監視部よりも下流に配置されており、糸の状態を監視する第2監視部を備え、
前記制御部は、前記張力付与部を前記第2状態としてから前記継目領域が前記監視部を通過するように制御し、前記張力付与部を前記第1状態としてから前記継目領域が前記第2監視部を通過するように制御することを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
糸の走行方向において前記監視部よりも上流に配置されており、糸の伸縮を検出する伸縮検出部を備え、
前記制御部は、前記継目領域に対する前記監視部の検出結果と、糸に対する前記伸縮検出部の検出結果と、に基づいて、前記継目領域の前記芯繊維の有無を判定することを特徴とする糸巻取機。
【請求項10】
請求項9に記載の糸巻取機であって、
糸に張力を付与する第1状態と、前記第1状態よりも糸に付与する張力が小さい第2状態と、に切替可能な張力付与部を備え、
前記制御部は、前記張力付与部が第1状態のときの前記伸縮検出部の検出結果と、前記張力付与部が第2状態のときの前記監視部の検出結果と、に基づいて、前記継目領域の前記芯繊維の有無を判定することを特徴とする糸巻取機。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記監視部の検出結果に基づいて、糸継時の前記糸継部の動作設定を変更することを特徴とする糸巻取機。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記継目領域を撮影する撮影装置を備え、
前記制御部は、前記撮影装置の撮影結果に基づいて、前記カバー繊維からの前記芯繊維の飛出しの有無を判定することを特徴とする糸巻取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、芯繊維とカバー繊維とから構成される糸を巻き取る巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、芯繊維(コア)の周囲にカバー繊維(結束糸)を巻き付けた糸(コアヤーン)の異常を検出する方法を開示する。この方法では、光源と受光器の間に糸を通し、光源から受光器に向けて光を照射する。糸の太さに応じて、受光器の受光量が変化する。従って、受光器の受光量に基づいて糸ムラを検出できる。特許文献1では、糸ムラに基づいて、糸の異常、詳細にはカバー繊維の欠落を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-167330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カバー繊維の欠落が発生した場合は糸の外形が変化するため、特許文献1で示した方法で検出できる。しかし、芯繊維が欠落した場合、糸の外形があまり変化しないため、この方法での検出は困難である。また、芯繊維の欠落は、糸継時に発生する可能性がある。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、継目領域の芯繊維の欠落を検出可能な糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、糸巻取機は、給糸部と、監視部と、糸継部と、巻取部と、制御部と、を備える。前記給糸部は、伸縮糸から成る芯繊維と、前記芯繊維に巻き付けられるカバー繊維と、から構成される糸を供給する。前記監視部は、前記糸の状態を監視する。前記糸継部は、糸の走行方向において前記監視部より上流に配置されており、給糸部側の糸とパッケージ側の糸とを糸継ぎする。前記巻取部は、前記糸を巻き取ってパッケージを形成する。前記監視部は、光学センサ及び静電容量センサの少なくとも1つを有する。前記光学センサは、糸の太さを検出する。前記静電容量センサは、糸の質量を検出する。前記制御部は、前記糸継部による糸継ぎがされた継目領域に対する前記監視部の検出結果に基づいて、前記継目領域の前記芯繊維の有無を判定する。
【0008】
これにより、監視部の検出結果に基づいて、継目領域の芯繊維の有無を検出できる。
【0009】
前記の糸巻取機においては、前記制御部は、前記継目領域が前記監視部を通過する際の糸の巻取速度が、定常時の糸の巻取速度未満となるように前記巻取部を制御することが好ましい。
【0010】
これにより、監視部の検出精度が高くなるため、芯繊維の有無を一層精度良く検出できる。
【0011】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記監視部は、前記光学センサ及び前記静電容量センサを有する。前記制御部は、前記光学センサの検出結果と前記静電容量センサの検出結果の差異と、前記差異に対して巻取中の糸の糸情報に応じて予め定められた閾値と、に基づいて、前記継目領域の前記芯繊維の有無を判定することが好ましい。
【0012】
閾値判定を行うことにより簡単な方法で芯繊維の有無を判定できる。また、糸情報に応じた閾値を設定することにより、芯繊維の有無を精度良く検出できる。
【0013】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記監視部は、糸で反射した反射光を検出する反射式センサを含む前記光学センサを有する。前記制御部は、前記反射式センサの検出結果に基づいて、前記カバー繊維からの前記芯繊維の飛出しの有無を判定する。
【0014】
これにより、センサを追加することなく、更に芯繊維の飛出しを検出できる。
【0015】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、即ち、前記監視部は、前記光学センサ及び前記静電容量センサを有する。前記光学センサは、糸が位置する領域を透過した透過光を検出する透過式センサと、糸で反射した反射光を検出する反射式センサと、を含む。前記制御部は、前記透過式センサの検出結果、前記反射式センサの検出結果、及び、前記静電容量センサの検出結果に基づいて、前記カバー繊維からの前記芯繊維の飛出しの有無を判定する。
【0016】
これにより、2種類の光学センサと静電容量センサを使うことにより、芯繊維の飛出しを精度良く検出できる。
【0017】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、糸に張力を付与する第1状態と、前記第1状態よりも糸に付与する張力が小さい第2状態と、に切替可能な張力付与部を備える。前記制御部は、前記張力付与部を前記第2状態としてから前記継目領域が前記監視部を通過するように制御する。
【0018】
継目領域の芯繊維が欠落している場合は、張力を低下させても継目領域の縮みが発生しにくい。そのため、張力が小さい状態で継目領域の情報を検出することにより、継目領域の芯繊維の有無を精度良く検出できる。
【0019】
前記の糸巻取機においては、前記制御部は、前記張力付与部を第2状態としてから前記継目領域が前記監視部を通過するように制御した後に、前記継目領域の位置を前記監視部の上流まで戻し、前記張力付与部を第1状態としてから前記継目領域が前記監視部を通過するように制御することが好ましい。
【0020】
これにより、監視部を2つ設けることなく、張力を変更して継目領域の情報を検出できる。
【0021】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、糸の走行方向において前記監視部よりも下流に配置されており、糸の状態を監視する第2監視部を備える。前記制御部は、前記張力付与部を前記第2状態としてから前記継目領域が前記監視部を通過するように制御し、前記張力付与部を前記第1状態としてから前記継目領域が前記第2監視部を通過するように制御する。
【0022】
これにより、糸を逆方向に移動させることなく、張力を変更して継目領域の情報を検出できる。
【0023】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、糸の走行方向において前記監視部よりも上流に配置されており、糸の伸縮を検出する伸縮検出部を備える。前記制御部は、前記継目領域に対する前記監視部の検出結果と、糸に対する前記伸縮検出部の検出結果と、に基づいて、前記継目領域の前記芯繊維の有無を判定する。
【0024】
これにより、糸の伸縮を検出可能であればコストが低いセンサを利用できる。
【0025】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、糸に張力を付与する第1状態と、前記第1状態よりも糸に付与する張力が小さい第2状態と、に切替可能な張力付与部を備える。前記制御部は、前記張力付与部が第1状態のときの前記伸縮検出部の検出結果と、前記張力付与部が第2状態のときの前記伸縮検出部の検出結果と、に基づいて、前記継目領域の前記芯繊維の有無を判定する。
【0026】
張力付与部を備えることにより、糸の伸縮を意図的に発生させることができるので、継目領域の伸縮を精度良く検出できる。
【0027】
前記の糸巻取機においては、前記制御部は、前記監視部の検出結果に基づいて、糸継時の前記糸継部の動作設定を変更することが好ましい。
【0028】
これにより、糸の異常が発生しにくくなるように糸継ぎの動作設定を変更できる。
【0029】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、前記継目領域を撮影する撮影装置を備える。前記制御部は、前記撮影装置の撮影結果に基づいて、前記カバー繊維からの前記芯繊維の飛出しの有無を判定する。
【0030】
これにより、芯繊維の飛出しを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態の自動ワインダの正面図。
図2】巻取ユニットの正面図及びブロック図。
図3】糸の構成を示す断面図。
図4】正常状態と芯繊維が欠落した状態の検出結果の違いを示すグラフ。
図5】継目領域の芯繊維の有無を判定する処理を示すフローチャート。
図6】第2実施形態の継目領域の芯繊維の有無を判定する処理を示すフローチャート。
図7】第2実施形態の巻取ユニットの動作の流れを示すフローチャート。
図8】第3実施形態の継目領域の芯繊維の有無を判定する処理を示すフローチャート。
図9】第3実施形態の巻取ユニットの正面図。
図10】第4実施形態の芯繊維の飛出しを検出する処理を示すフローチャート。
図11】第4実施形態の巻取ユニットの正面図。
図12】第5実施形態の巻取ユニットの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、糸巻取時の糸の走行方向における上流及び下流を意味する。
【0033】
図1に示すように、第1実施形態の自動ワインダ(糸巻取機)1は、並べて配置された複数の巻取ユニット10と、玉揚装置60と、機台制御装置90と、を備える。
【0034】
図2に示すように、それぞれの巻取ユニット10は、トレイ(給糸部)5にセットされた給糸ボビン21から解舒された糸20を綾振りしながら、クレードル23に支持されたコーン形状の巻取管22に巻き取り、コーン形状のパッケージ30を形成する。ただし、巻取ユニット10は、円筒状の巻取管22に糸20を巻き取ってチーズ形状のパッケージ30を形成する構成であってもよい。
【0035】
図3に示すように、巻取ユニット10が巻き取る糸20は、芯繊維20aと、カバー繊維20bと、から構成される。芯繊維20aは、弾性糸又は合繊糸である。芯繊維20aは、例えばポリウレタン、ナイロン、又はアクリルである。芯繊維20aは、伸縮性を有する。伸縮性とは、カバー繊維20b又は一般的な天然繊維の糸と比較して伸縮性が高いことを意味する。カバー繊維20bは、芯繊維20aの外周に巻き付けられる。カバー繊維20bは、天然繊維の糸であってもよいし、弾性糸又は合繊糸であってもよい。
【0036】
玉揚装置60は、パッケージ30が満巻となった巻取ユニット10の位置まで走行し、当該巻取ユニット10の満巻のパッケージ30をクレードル23から外す。玉揚装置60は、更に、糸20が巻かれていない巻取管22を巻取ユニット10に供給する。
【0037】
機台制御装置90は、機台入力部91と、機台表示部92と、を備える。機台入力部91は、オペレータが所定の設定値を入力したり適宜の制御方法を選択したりすることで、各巻取ユニット10に対する設定を行うことができる。オペレータは、例えば巻き取る糸20の情報(糸情報)を設定する。糸情報は、芯繊維20a及びカバー繊維20bのそれぞれの材質(種類)、太さ(番手)、撚数の少なくとも1つを含む。
【0038】
次に、図2を参照して、巻取ユニット10の構成を具体的に説明する。図2に示すように、それぞれの巻取ユニット10は、巻取ユニット本体11と、ユニット制御部(制御部)51と、を備える。
【0039】
ユニット制御部51は、例えば、CPU等の演算装置と、RAMと、ROMと、I/Oポートと、通信ポートと、を備える。このROMには、巻取ユニット本体11の各部を制御するプログラムが記録されている。I/Oポートと通信ポートには、巻取ユニット本体11が備える各部及び機台制御装置90が接続されており、制御情報等の通信ができる。これにより、ユニット制御部51は、巻取ユニット本体11が備える各部の動作を制御することができる。
【0040】
巻取ユニット本体11には、上流側から順に、糸解舒補助装置12と、張力付与部13と、糸継部14と、監視部16と、巻取部18と、が設けられている。
【0041】
糸解舒補助装置12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸20の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸20の解舒を補助する。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸20の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに接触し、当該バルーンを適切な大きさに制御することによって糸20の解舒を補助する。
【0042】
張力付与部13は、走行する糸20に所定の張力を付与する。張力付与部13は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯が配置されたゲート式である。可動の櫛歯は、ロータリ式のソレノイドにより回動することができる。これにより、張力付与部13が糸20に付与する張力を変更することができる。なお、張力付与部13には、上記ゲート式以外にも、例えば、ディスク式を採用することができる。
【0043】
糸継部14は、監視部16が糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸(給糸部側の糸)と、パッケージ30側の上糸(パッケージ側の糸)とを糸継ぎする。具体的には、糸継部14は、下糸及び上糸を解撚した後に重ね合わせて再び撚り合わせることにより、糸継ぎを行う。以下の説明では、糸継ぎが行われた箇所を継目領域と称する。糸継部14としては、機械式、又は、圧縮空気等の流体を用いる構成を採用することができる。
【0044】
監視部16は、糸20の状態を監視する。監視部16は、糸20の異常を検出した場合、図略のカッタにより糸20を切断する。監視部16は、光学センサ16aと、静電容量センサ16bと、を備える。光学センサ16a及び静電容量センサ16bは、1つのケースに固定されている。ただし、光学センサ16aと静電容量センサ16bが別々のケースにそれぞれ固定され、離れて配置されてもよい。監視部16は、光学センサ16a及び静電容量センサ16bの何れか一方のみを有していてもよい。
【0045】
光学センサ16aは、透過式センサであり、光源と受光部を備える。光源と受光部は糸道を挟んで一側と他側に配置されている。光源は糸道に向けて(受光部に向けて)光を照射する。受光部は、光源が照射し、糸20を透過した光を受光する。これにより、糸20が太くなるに連れて受光部の受光量が減少する。以上により、光学センサ16aは糸20の太さを検出できる。光学センサ16aの検出結果はユニット制御部51に出力される。本明細書において、検出結果とは、センサが直接検出した値(検出値)だけでなく、検出値を変換した値や、検出値に基づいて算出された値を含む。
【0046】
静電容量センサ16bは、糸20の有無により生じる静電容量の変化を検出する。検出される静電容量の変化から、糸20の質量(言い換えれば、繊維量)が算出される。そして、糸20の質量に基づく糸20の太さが特定される。ただし、芯繊維20aの欠落が生じている場合、外観上の糸20の太さに対して、糸20の質量が低くなる。静電容量センサ16bの検出結果はユニット制御部51に出力される。
【0047】
糸継部14の下流側及び上流側には、給糸ボビン21側の下糸の糸端を捕捉して糸継部14に案内する下糸捕捉部材25と、パッケージ30側の上糸の糸端を捕捉して糸継部14に案内する上糸捕捉部材26と、がそれぞれ設けられている。下糸捕捉部材25は、下糸パイプアーム33と、この下糸パイプアーム33の先端に形成された下糸吸引口32と、を備える。上糸捕捉部材26は、上糸パイプアーム36と、この上糸パイプアーム36の先端に形成された上糸吸引口35と、を備える。
【0048】
下糸パイプアーム33と上糸パイプアーム36は、それぞれ軸34と軸37を中心にして回動可能である。下糸パイプアーム33及び上糸パイプアーム36には適宜の吸引源(図略)がそれぞれ接続されている。これにより、下糸吸引口32及び上糸吸引口35に吸引流を発生させて、下糸パイプアーム33と上糸パイプアーム36により上糸及び下糸の糸端をそれぞれ吸引捕捉できる。
【0049】
巻取部18は、巻取管22を着脱可能に支持するクレードル23と、巻取管22の外周面又はパッケージ30の外周面に接触して回転可能な接触ローラ29と、綾振りアーム71と、綾振駆動モータ72と、を備える。
【0050】
クレードル23は、回動軸48を中心に回動可能である。巻取管22への糸20の巻取りに伴って糸層が増大することで、それに応じてクレードル23が回動する。これにより、糸層の増大に伴う形状変化の影響をなくすことができる。
【0051】
クレードル23には、パッケージ駆動モータ41が取り付けられている。パッケージ駆動モータ41によって巻取管22を回転駆動して、糸20を巻取管22に巻き取る。パッケージ駆動モータ41のモータ軸は、巻取管22をクレードル23に支持させたときに、当該巻取管22と相対回転不能に連結される(いわゆるダイレクトドライブ方式)。パッケージ駆動モータ41の動作は、図略のモータドライバを介して、ユニット制御部51により制御される。なお、ダイレクトドライブ方式に代えて、パッケージ30に接触させる接触ローラを回転させることにより、パッケージ30を回転駆動してもよい。
【0052】
綾振りアーム71は、糸20と係合して糸20を綾振りする。綾振りアーム71は、綾振駆動モータ72によって駆動される。具体的には、綾振りアーム71は、綾振駆動モータ72のロータの回転と連動して、パッケージ幅方向(巻取管22及びパッケージ30の軸方向)に連続的に往復運動するように設けられている。綾振駆動モータ72の動作は、図略のモータドライバを介して、ユニット制御部51により制御される。綾振りアーム71の先端部には例えばフック状の糸ガイド部が形成されている。糸ガイド部によって糸20を保持した状態で、綾振りアーム71が往復旋回運動を行うことにより、糸20を綾振りさせることができる。なお、綾振りアーム71に代えて、接触ローラに形成した綾振溝を用いて、糸20を綾振りしてもよい。
【0053】
綾振りアーム71による綾振りを行いながら、パッケージ30を回転駆動することにより、糸20を巻取管22に巻き取って、パッケージ30を形成できる。
【0054】
次に、図4及び図5を参照し、継目領域の芯繊維20aの有無を判定する処理を説明する。
【0055】
糸継部14が糸継ぎを行う際、芯繊維20aの伸縮性により継目領域において芯繊維20aが欠落する場合がある。従来の構成では、芯繊維20aの欠落は検出が困難である。例えば光学センサ16aは糸20の外観を検出するため、糸20の内部の状態を検出できない。静電容量センサ16bは糸20の質量を検出するため、糸20の内部の状態を加味した値が検出されるが、芯繊維20aの欠落が原因で質量が小さいのか、糸20自体が細いことが原因で質量が小さいのか判定できない。
【0056】
この点、本実施形態では、光学センサ16aと静電容量センサ16bの両方を設けることにより、芯繊維20aの欠落を検出できる。具体的には、光学センサ16aの検出結果と静電容量センサ16bの検出結果の差異を用いる。光学センサ16aの検出結果は糸20の太さであり、静電容量センサ16bの検出結果は糸20の質量である。そのため、光学センサ16aの検出結果と静電容量センサ16bの検出結果の差異を算出するためには、2つの検出結果の単位を揃える必要がある。ここで、オペレータが機台制御装置90に入力した糸情報に基づいて、糸20の密度がわかる。糸20の太さと糸20の密度に基づいて、糸20の質量を算出できる。従って、光学センサ16aが検出した糸20の太さを糸20の質量に変換できる。これにより、糸20の質量を用いて、光学センサ16aの検出結果と静電容量センサ16bの検出結果の差異を算出できる。また、糸20の質量と糸20の密度に基づいて、糸20の太さを算出できる。従って、静電容量センサ16bが検出した糸20の質量を糸20の太さに変換できる。これにより、糸20の太さを用いて、光学センサ16aの検出結果と静電容量センサ16bの検出結果の差異を算出することもできる。
【0057】
図4の上側のグラフには、正常状態の糸20(即ち、芯繊維20aとカバー繊維20bから構成される糸20)に対する光学センサ16aの検出結果と静電容量センサ16bの検出結果が示されている。図4の下側のグラフには、芯繊維20aが欠落した状態の糸20(即ち、カバー繊維20b)に対する光学センサ16aの検出結果と静電容量センサ16bの検出結果が示されている。芯繊維20aが欠落した状態の糸20に対する検出結果の差異は、正常状態の糸20に対する検出結果の差異よりも大きい。なぜなら、正常状態と芯繊維20aの欠落状態において、光学センサ16aの検出結果は大きくは変化しないが、静電容量センサ16bの検出結果は大きく変化する。この特徴を利用し、本実施形態では、継目領域に対する、光学センサ16aの検出結果と静電容量センサ16bの検出結果の差異を用いて、継目領域の芯繊維20aの欠落の有無を判定する。
【0058】
以下、図5のフローチャートを参照して、詳細な処理を説明する。図5に示すフローチャートは、ユニット制御部51によって実行される。ユニット制御部51は、糸継ぎを開始した後に(S101)、閾値情報を読み出す(S102)。また、閾値情報は、糸情報と、閾値と、を対応付けた情報であり、予めユニット制御部51に記憶されている。ユニット制御部51は、オペレータが機台制御装置90に入力した糸情報に基づいて、対応する閾値を選択して読み出す。なお、閾値情報を読み出すタイミングは一例であり、糸継ぎの開始前に読み出してもよい。また、糸継ぎ毎に閾値を読み出す処理に代えて、例えば糸情報が変更されるまでの間は、ユニット制御部51が同一の閾値を記憶し続けてもよい。
【0059】
閾値は、継目領域の芯繊維20aの欠落の判定に用いられる。そのため、閾値情報が示す閾値は、正常状態において光学センサ16aの検出結果と静電容量センサ16bの検出結果との差異に基づく値(例えば差異の平均値)より大きい。閾値情報が示す閾値は、継目領域の芯繊維20aが欠落した状態において光学センサ16aの検出結果と静電容量センサ16bの検出結果との差異に基づく値(例えば差異の平均値)より小さい。
【0060】
次に、ユニット制御部51は、継目領域が監視部16を通過するタイミングを特定し、このタイミングで巻取速度を低下させる(S103)。ここで、ユニット制御部51は、糸継ぎに関する制御を行うため、糸継ぎが完了するタイミングは既知である。更に、ユニット制御部51は、巻取部18を制御するため、糸20の巻取速度は既知である。そして、糸継部14から監視部16までの距離は既知である。以上により、ユニット制御部51は、継目領域が監視部16を通過するタイミングを特定できる。あるいは、ユニット制御部51は、糸継ぎの完了から所定時間を経過したタイミングで、継目領域が監視部16を通過すると推測してもよい。所定時間は実験的又はシミュレーションにより予め求めてユニット制御部51に記憶しておけばよい。
【0061】
巻取速度の低下は、ユニット制御部51が巻取部18を制御することにより行われる。巻取速度を低下させることにより、継目領域が監視部16を通過するタイミングでの巻取速度は定常時の巻取速度未満となる。定常時の巻取速度とは、巻取条件として設定された巻取速度である。言い換えれば、糸20を巻き取ってパッケージ30を形成する間(糸継ぎ時を除く)の巻取速度である。なお、巻取速度を低下させた結果、継目領域が監視部16に位置する際の巻取速度が0となってもよい。また、巻取速度を低下させる処理に代えて、糸継ぎ後に定常時の巻取速度未満で巻取りを再開し、その状態で継目領域が監視部16を通過してもよい。
【0062】
次に、ユニット制御部51は、継目領域が監視部16を通過するタイミングにおいて、光学センサ16aによる継目領域の検出結果(以下、第1検出結果)を取得する(S104)。ユニット制御部51は、継目領域が監視部16を通過するタイミングにおいて、静電容量センサ16bによる継目領域の検出結果(以下、第2検出結果)を取得する(S105)。継目領域が監視部16を通過するタイミングで巻取速度を低下させるため、光学センサ16a及び静電容量センサ16bは、糸20の状態を精度良く検出できる。
【0063】
次に、ユニット制御部51は、第1検出結果と第2検出結果の差異と閾値とを比較する(S106)。この処理は、上述したように第1検出結果と第2検出結果の単位を揃えて行われる。次に、ユニット制御部51は、第1検出結果と第2検出結果の差異と閾値とを比較する(S107)。差異の算出方法は、例えば、光学センサ16aの検出結果の平均値と、静電容量センサ16bの検出結果の平均値と、の差異である。あるいは、他の方法で第1検出結果と第2検出結果の差異を算出してもよい。
【0064】
ユニット制御部51は、差異が閾値以下か否かを判定する(S107)。上述したように、芯繊維20aが欠落している場合、第1検出結果に対して第2検出結果が大きくなる。つまり、ユニット制御部51は、差異が閾値以下である場合、継目領域に芯繊維20aが有ると判定する(S108)。一方、ユニット制御部51は、差異が閾値を超えている場合、継目領域に芯繊維20aが無いと判定し、その旨を通知する(S108)。通知方法は、例えば、機台制御装置90又はユニット制御部51がアラームランプ又はアラーム音を発生させてもよい。あるいは、オペレータ端末又は管理者端末に対してメッセージを送信してもよい。
【0065】
このように、光学センサ16aと静電容量センサ16bの検出結果を用いることにより、糸20の継目領域の芯繊維20aの欠落の有無を精度良く検出できる。
【0066】
また、継目領域に芯繊維20aが無い場合、糸継部14の動作設定に改善の余地がある可能性がある。例えば、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸と、の重なり長さが短い場合に芯繊維20aの欠落が生じることがある。そのため、糸を引き込む糸寄せレバーの動作量を大きくすることにより、芯繊維20aの欠落が生じにくくなる可能性がある。あるいは、解撚又は撚掛けの時間を長くすることにより、芯繊維20aの欠落が生じにくくなる可能性がある。本実施形態では、ユニット制御部51は、継目領域に芯繊維20aが無いと判定した場合に、糸継部14の動作設定を変更する(S110)。これにより、次回以降の糸継ぎにおいて、芯繊維20aの欠落が生じる確率を低減できる。なお、ステップS110の処理は必須ではなく省略、または例えば3回に1度実行することもできる。
【0067】
本実施形態では、芯繊維20aの欠落が生じた場合その旨を通知し、処理を続行する。この処理に代えて、糸継ぎを再試行してもよい。糸継ぎの再試行とは、監視部16によって糸20を切断し、再度、糸継部14が給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸と、を糸継ぎすることである。再度の糸継ぎでは、ステップS110で設定した糸継部14の動作設定の変更が適用されるため、芯繊維20aの欠落が生じにくい。
【0068】
次に、図6及び図7を参照して、第2実施形態について説明する。なお、以後の説明においては、明示した部分以外の構成については、第1実施形態の自動と同じ構成を有する。また、第1実施形態と同じ処理については、同じステップ番号を付して、説明を省略する。
【0069】
第2実施形態では、糸20の張力を変化させて芯繊維20aの有無を判定する。上述したように、ユニット制御部51は、張力付与部13を制御して、可動の櫛歯の動作量を変化させることにより、糸20の張力を変化させることができる。以下では、張力付与部13が糸20に第1張力を付与する状態を第1状態と称し、張力付与部13が糸20に第2張力(第1張力よりも小さい張力)を付与する状態を第2状態と称する。張力付与部13を第1状態から第2状態に切り替えることにより、糸20が緩むため、糸20に縮みが発生し易い。
【0070】
糸20の張力を低下させて糸20を縮ませる方法は、張力付与部13に限られない。例えば、ユニット制御部51は、巻取部18を制御して巻取速度を低下させることにより、糸20を縮ませることができる。この場合、巻取部18(詳細にはパッケージ駆動モータ41)が「張力付与部」に相当する。例えば、ユニット制御部51は、糸継部14による糸継後に糸継部14(詳細には糸20を引き寄せる糸寄せレバー)が糸20に接触することにより張力を大きくし、糸継部14による糸20の接触を解除することにより張力を低下させて糸20を縮ませることができる。この場合、糸継部14(詳細には糸寄せレバー)が「張力付与部」に相当する。例えば、ユニット制御部51は、監視部16の清掃用の圧縮空気を糸20に噴射することにより糸20に掛かる張力を大きくし、圧縮空気の噴射を解除することにより張力を低下させて糸20を縮ませることができる。この場合、監視部16(詳細には圧縮空気の噴射部)が「張力付与部」に相当する。また、圧縮空気を糸20に噴射することにより、糸20の局所的に作用した張力変化を糸20の他の部分に作用させることができる。
【0071】
継目領域に芯繊維20aが含まれる場合、継目領域とそれ以外の部分は、同程度に縮む。継目領域に芯繊維20aが無い場合、芯繊維20aが無いことに起因して伸縮が低かったり強度が小さかったりするため、継目領域の縮み量が、それ以外の部分の縮み量よりも小さくなる。つまり、糸20に付与される張力により継目領域の縮み量が異なるため、張力の付与状況が異なる継目領域の検出結果を比較することにより、継目領域の芯繊維20aの有無を判定できる。また、継目領域とそれ以外の部分の縮み量を比較することにより、継目領域の芯繊維20aの有無を判定することもできる。
【0072】
第2実施形態では、糸継ぎ(S101、図7左上)の後に、ユニット制御部51は、張力付与部13を第2状態に設定する(S201)。ユニット制御部51は、継目領域(図7の符号20c)が監視部16を通過するタイミングでの光学センサ16a及び静電容量センサ16bの検出結果を取得する。(S202、図7右上)。
【0073】
次に、ユニット制御部51は、継目領域が監視部16を通過した後に、糸20を監視部16の上流まで戻す(S203、図7左下)。具体的には、ユニット制御部51は、巻取部18を制御してパッケージ30を逆転させつつ、補助ノズル81を用いて糸20を吸引する。これにより、継目領域が上流側に戻される。なお、補助ノズル81に代えて、下糸捕捉部材25を用いて糸20を吸引してもよい。あるいは、糸継部14の糸寄せレバーを用いて糸20を上流側に移動させてもよい。
【0074】
次に、ユニット制御部51は、張力付与部13を第1状態に設定する(S204)。これにより、糸20の張力が大きくなる。ユニット制御部51は、継目領域が再び監視部16を通過するタイミングでの光学センサ16a及び静電容量センサ16bの検出結果を取得する。(S205、図7右下)。
【0075】
次に、ユニット制御部51は、1回目と2回目の検出結果を比較する(S206)。具体的には、ユニット制御部51は、1回目と2回目の継目領域の縮みの程度を比較する。1回目では糸20の張力が小さいため、糸20が縮み易い。ただし、継目領域に芯繊維20aが無い場合、継目領域はあまり縮まない。一方、2回目では糸20の張力が大きいため、糸20が直線状になり易い。従って、ユニット制御部51は、1回目の継目領域の縮みの程度と、2回目の継目領域の縮みの程度と、を比較する。縮みの程度が大きい場合、単位長さ当たりの糸20の繊維量が多くなるので、光学センサ16aが検出する糸20の太さ及び静電容量センサ16bが検出する糸20の太さが太くなる。ユニット制御部51は、上記の比較により得られた比較値に基づいて、第1実施形態と同様に閾値比較を行う。以降の処理は第1実施形態と同じである。
【0076】
以上により、張力を異ならせたときの縮みの程度に基づいて、継目領域の芯繊維20aの有無を判定できる。また、第2実施形態では、張力付与部13を第2状態として1回目の検出結果を取得し、次に張力付与部13を第1状態として2回目の検出結果を取得する。つまり、張力が小さい状態から張力が大きい状態に変化させる。そのため、糸20に対する張力の掛かり具合が糸20の走行方向において拡散しにくいので、より適切な検出結果を取得できる。
【0077】
なお、第2実施形態では、継目領域を2回計測する。これに代えて、張力を小さく変化させた状態で継目領域を1回だけ計測してもよい。この場合、ユニット制御部51は、継目領域の縮みの程度と、継目領域以外の縮みの程度と、を比較する。継目領域に芯繊維20aが有る場合、継目領域と、それ以外の領域と、で縮みの程度は同じである。継目領域に芯繊維20aが無い場合、継目領域の縮みの程度は、それ以外の領域の縮みの程度よりも小さい。以上により、継目領域を1回だけ計測しても縮みの程度に基づいて、継目領域の芯繊維20aの有無を判定できる。
【0078】
なお、第2実施形態の処理に代えて、張力付与部13を第1状態として監視部16による1回目の検出結果を取得し、次に張力付与部13を第2状態として監視部16による2回目の検出結果を取得してもよい。
【0079】
第1実施形態と第2実施形態の処理を組み合わせてもよい。即ち、第1実施形態の処理で継目領域に芯繊維20aが有ると判定され、更に第2実施形態の処理で継目領域に芯繊維20aが有ると判定された場合に、継目領域に芯繊維20aが有ると判定してもよい。
【0080】
次に、図8及び図9を参照し、第3実施形態について説明する。
【0081】
第2実施形態では、糸20を戻して同じ監視部16を2回通過させたのに対し、第3実施形態では、糸20を戻さずに、2つの監視部を順に通過させる。そのため、図9に示すように、第3実施形態の巻取ユニット10は、第2監視部17を更に備える。第2監視部17は、監視部16の下流に配置されている。第2監視部17は、監視部16と同様、光学センサ17aと、静電容量センサ17bと、を備える。
【0082】
ユニット制御部51は、張力付与部13を第2状態に設定し(S401)、継目領域に監視部16を通過させ、光学センサ16aと静電容量センサ16bによる継目領域の検出結果を取得する(S402)。次に、ユニット制御部51は、継目領域が監視部16を通過した後に、張力付与部13を第1状態に設定し(S403)、継目領域に第2監視部17を通過させ、光学センサ17aと静電容量センサ17bによる継目領域の検出結果を取得する(S404)。
【0083】
これにより、第3実施形態では、糸20を戻さずに、第2実施形態と同様の検出結果を取得できる。以降の処理は第2実施形態と同じである。
【0084】
第3実施形態では、監視部16と第2監視部17は、同じ構成である。これに代えて、監視部16と、監視部16と比較して簡易的なセンサである伸縮検出部と、を設けてもよい。簡易的なセンサとは、例えば、監視部16と比較して低精度の光学センサ又は静電容量センサである。または、撮像装置としてもよい。この場合、伸縮検出部は、監視部16の上流に配置される。そして、張力付与部13が第2状態において伸縮検出部が継目領域を計測し、その後に張力付与部13が第1状態において監視部16が継目領域を計測する。なお、伸縮検出部は継目領域を計測することが好ましいが、伸縮検出部が継目領域以外の領域を計測してもよい。
【0085】
次に、図10及び図11を参照して、第4実施形態について説明する。
【0086】
第4実施形態の自動ワインダ1は、継目領域における芯繊維20aの飛出しを検出する機能を更に有する。具体的には、図11に示すように、巻取ユニット10は、撮影装置19を備える。撮影装置19は、糸継部14の下流に配置されている。本実施形態では、糸継部14の近傍、詳細には、糸走行方向において、糸継部14と監視部16の間に撮影装置19が配置されている。この位置に撮影装置19を配置することにより、糸継ぎが行われた後であって、かつ、糸20の走行が停止している状態において、糸20を撮影できる。なお、撮影装置19は、監視部16の下流に配置されていてもよい。撮影装置19は、糸を撮影して撮影結果をユニット制御部51に出力する。
【0087】
ユニット制御部51は、撮影装置19による継目領域の撮影結果(撮影して得られた画像)を取得する(S501)。ユニット制御部51は、継目領域の撮影結果に基づいて、継目領域での芯繊維20aの飛出しの有無を判定する(S502)。ユニット制御部51は、継目領域の撮影結果を解析し、カバー繊維20bから飛び出した芯繊維20aが特定できた場合、芯繊維20aの飛出しが有ると判定する。ユニット制御部51は、継目領域における芯繊維20aの飛出しが有ると判定した場合(S503)、芯繊維20aの飛出しがあることを通知する(S504)。通知先は、第1実施形態と同じである。
【0088】
次に、図12を参照して、第5実施形態について説明する。
【0089】
第5実施形態の自動ワインダ1は、継目領域における芯繊維20aの飛出しを検出する方法が第4実施形態の自動ワインダ1とは異なる。具体的には、第5実施形態の自動ワインダ1の監視部16は、静電容量センサ16bに加え、更に2種類の光学センサ、詳細には透過式センサ16cと、反射式センサ16dと、を備える。透過式センサ16cは、第1実施形態の光学センサ16aと同じ構成である。反射式センサ16dは、光源と受光部とを備える。光源は、糸20に光を照射する。受光部は、光源が照射した光が糸20で反射した光を受光する。従って、糸20が太くなるに連れて、受光部が検出する光量が増加する。また、糸20におけるカバー繊維20bの状態(つまり芯繊維20aの飛出しの有無)により受光部が検出する光量が変化する。なお、透過式センサ16cと反射式センサ16dで光源は共通であってもよいし、個別に光源を備えていてもよい。
【0090】
第5実施形態では、ユニット制御部51は、主として反射式センサ16dを用いて、継目領域での芯繊維20aの飛出しの有無を判定する。即ち、継目領域での芯繊維20aの飛出しが有る場合、飛び出した部分で光が反射する。従って、ユニット制御部51は、反射式センサ16dの検出結果に基づいて、継目領域での芯繊維20aの飛出しの有無を判定できる。
【0091】
なお、継目領域での芯繊維20aの飛出しの有無を精度良く判定するために、更に、静電容量センサ16b及び透過式センサ16cの検出結果を用いてもよい。即ち、透過式センサ16cにより検出された光量によって、反射式センサ16dにより検出された光量を補正してやることにより、芯繊維20aの飛出しの有無を正確に判定することができる。さらに静電容量センサ16bの検出結果は、継目領域の位置を的確に特定するために用いることができる。即ち、継目領域では糸20を重ねて撚るため、継目領域の質量(繊維量)は他の箇所よりも大きくなる。静電容量センサ16bは、糸20の質量を検出するため、検出結果が大きい箇所は継目領域であると特定できる。また、反射式センサ16dだけでは、糸20に付着した異物で反射することもある。この点、反射式センサ16dの検出結果に加えて、透過式センサ16cの検出結果を用いることにより、異物の影響を軽減して、継目領域での芯繊維20aの飛出しの有無を判定できる。
【0092】
上記実施形態の監視部16は、光学センサ16a及び静電容量センサ16bの両方を有するが、監視部16は光学センサ16a及び静電容量センサ16bの片方のみを有していてもよい。この構成であっても、以下の処理を行うことにより、継目領域の芯繊維20aの欠落を検出できる。即ち、芯繊維20aの有無の影響を受けて、正常状態での光学センサ16aの検出結果は、芯繊維20aの欠落状態での光学センサ16aの検出結果よりも僅かに大きくなる。また、静電容量センサ16bについては上述したように、正常状態と芯繊維20aが欠落した状態とで検出結果が大きくことなる。従って、これらの検出結果の間の大きさを有する閾値を設定し、検出結果が閾値より小さい場合は、芯繊維20aが欠落していると判定できる。
【0093】
以上に説明したように、上記実施形態の自動ワインダ1は、トレイ5と、監視部16と、糸継部14と、巻取部18と、ユニット制御部51と、を備える。トレイ5は、伸縮糸から成る芯繊維20aと、芯繊維20aに巻き付けられるカバー繊維20bと、から構成される糸20を供給する。監視部16は、糸20の状態を監視する。糸継部14は、糸20の走行方向において監視部16より上流に配置されており、トレイ5側の糸20とパッケージ30側の糸20とを糸継ぎする。巻取部18は、糸20を巻き取ってパッケージ30を形成する。監視部16は、光学センサ16a及び静電容量センサ16bの少なくとも1つを有する。光学センサ16aは、糸20の太さを検出する。静電容量センサ16bは、糸20の質量を検出する。ユニット制御部51は、糸継部14による糸継ぎがされた継目領域に対する監視部16の検出結果に基づいて、継目領域の芯繊維20aの有無を判定する。
【0094】
これにより、監視部16の検出結果に基づいて、継目領域の芯繊維20aの有無を検出できる。
【0095】
上記実施形態の自動ワインダ1において、ユニット制御部51は、継目領域が監視部16を通過する際の糸20の巻取速度が、定常時の糸20の巻取速度未満となるように巻取部18を制御する。
【0096】
これにより、監視部16の検出精度が高くなるため、芯繊維20aの有無を一層精度良く検出できる。
【0097】
上記実施形態の自動ワインダ1において、監視部16は光学センサ16a及び静電容量センサ16bを有する。ユニット制御部51は、光学センサ16aの検出結果と静電容量センサ16bの検出結果の差異と、差異に対して巻取中の糸20の糸情報に応じて予め定められた閾値と、に基づいて、継目領域の芯繊維20aの有無を判定する。
【0098】
閾値判定を行うことにより簡単な方法で芯繊維20aの有無を判定できる。また、糸情報に応じた閾値を設定することにより、芯繊維20aの有無を精度良く検出できる。
【0099】
上記実施形態の自動ワインダ1において、監視部16は、糸20で反射した反射光を検出する反射式センサ16dを含む光学センサ16aを有する。ユニット制御部51は、反射式センサ16dの検出結果に基づいて、カバー繊維20bからの芯繊維20aの飛出しの有無を判定する。
【0100】
これにより、センサを追加することなく、更に芯繊維20aの飛出しを検出できる。
【0101】
上記実施形態の自動ワインダ1において、監視部16は光学センサ16a及び静電容量センサ16bを有する。光学センサ16aは、糸20が位置する領域を透過した透過光を検出する透過式センサ16cと、糸20で反射した反射光を検出する反射式センサ16dと、を含む。ユニット制御部51は、透過式センサ16cの検出結果、反射式センサ16dの検出結果、及び、静電容量センサ16bの検出結果に基づいて、カバー繊維20bからの芯繊維20aの飛出しの有無を判定する。
【0102】
これにより、2種類の光学センサと静電容量センサ16bを使うことにより、芯繊維20aの飛出しを精度良く検出できる。
【0103】
上記実施形態の自動ワインダ1は、糸20に張力を付与する第1状態と、第1状態よりも糸20に付与する張力が小さい第2状態と、に切替可能な張力付与部13を備える。ユニット制御部51は、張力付与部13を第2状態としてから継目領域が監視部16を通過するように制御する。
【0104】
継目領域の芯繊維20aが欠落している場合は、張力を低下させても継目領域の縮みが発生しにくい。そのため、張力が小さい状態で継目領域の情報を検出することにより、継目領域の芯繊維20aの有無を精度良く検出できる。
【0105】
上記実施形態の自動ワインダ1において、ユニット制御部51は、張力付与部13を第2状態としてから継目領域が監視部16を通過するように制御した後に、継目領域の位置を監視部16の上流まで戻し、張力付与部13を第1状態としてから継目領域が監視部16を通過するように制御する。
【0106】
これにより、監視部16を2つ設けることなく、張力を変更して継目領域の情報を検出できる。
【0107】
上記実施形態の自動ワインダ1は、糸20の走行方向において監視部16よりも下流に配置されており、糸20の状態を監視する第2監視部17を備える。ユニット制御部51は、張力付与部13を第2状態としてから継目領域が監視部16を通過するように制御し、張力付与部13を第1状態としてから継目領域が第2監視部17を通過するように制御する。
【0108】
これにより、糸20を逆方向に移動させることなく、張力を変更して継目領域の情報を検出できる。
【0109】
上記実施形態の自動ワインダ1は、糸20の走行方向において監視部16よりも上流に配置されており、糸20の伸縮を検出する伸縮検出部を備える。ユニット制御部51は、継目領域に対する監視部16の検出結果と、糸20に対する伸縮検出部の検出結果と、に基づいて、継目領域の芯繊維20aの有無を判定する。
【0110】
これにより、糸20の伸縮を検出可能であればコストが低いセンサを利用できる。
【0111】
本実施形態の自動ワインダ1は、糸20に張力を付与する第1状態と、第1状態よりも糸20に付与する張力が小さい第2状態と、に切替可能な張力付与部13を備える。ユニット制御部51は、張力付与部13が第1状態のときの伸縮検出部の検出結果と、張力付与部13が第2状態のときの監視部16の検出結果と、に基づいて、継目領域の芯繊維20aの有無を判定する。
【0112】
張力付与部13を備えることにより、糸20の伸縮を意図的に発生させることができるので、継目領域の伸縮を精度良く検出できる。
【0113】
上記実施形態の自動ワインダ1において、ユニット制御部51は、監視部16の検出結果に基づいて、糸継時の糸継部の動作設定を変更する。
【0114】
これにより、糸20の異常が発生しにくくなるように糸継ぎの動作設定を変更できる。
【0115】
上記実施形態の自動ワインダ1は、継目領域を撮影する撮影装置19を備える。ユニット制御部51は、撮影装置19の撮影結果に基づいて、カバー繊維20bからの芯繊維20aの飛出しの有無を判定する。
【0116】
これにより、芯繊維20aの飛出しを検出できる。
【0117】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0118】
第1実施形態の光学センサ16aは透過式センサであるが、反射式センサに代えてもよい。また、光学センサ16aは、少なくとも1つの発光素子と、2つの受光素子と、を備え、一方の受光素子で反射光を検出し、他方の受光素子で透過光を検出する構成であってもよい。
【0119】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。
【0120】
上記実施形態では本発明を自動ワインダに適用する例を示したが、自動ワインダに代えて紡績機等の他の糸巻取機に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0121】
1 自動ワインダ
5 トレイ(給糸部)
10 巻取ユニット
16 監視部
16a 光学センサ
16b 静電容量センサ
18 巻取部
20 糸
20a 芯繊維
20b カバー繊維
51 ユニット制御部(制御部)
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