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特開2024-155223内燃機関のノッキング制御方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155223
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】内燃機関のノッキング制御方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20241024BHJP
   F02P 5/15 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F02D45/00 368A
F02P5/15 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069728
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 優己
(72)【発明者】
【氏名】浦川 真司
【テーマコード(参考)】
3G022
3G384
【Fターム(参考)】
3G022EA02
3G022FA04
3G022GA13
3G384BA24
3G384DA04
3G384DA55
3G384EA03
3G384EB02
3G384EB04
3G384EE31
3G384FA26Z
3G384FA33Z
3G384FA56Z
(57)【要約】
【課題】トレース制御域およびMBT制御域のそれぞれで、ノッキングを確実に抑制しつつ過大な点火時期遅角を回避する。
【解決手段】トレース制御域では、気筒毎に記憶されるトレース気筒別フィードバック量を、各気筒のノッキングの検出の有無に基づいて算出し、内燃機関の運転点に応じたトレース基準点火時期とトレース気筒別フィードバック量とに基づいて最終点火時期を決定する。MBT制御域では、気筒毎に記憶されるMBT気筒別フィードバック量を、各気筒のノッキングの検出の有無に基づいて算出し、内燃機関の運転点に応じたMBT基準点火時期とMBT気筒別フィードバック量とに基づいて最終点火時期を決定する。トレース制御域にある間はMBT気筒別フィードバック量の値を保持し、MBT制御域にある間はトレース気筒別フィードバック量の値を保持する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の負荷と回転速度とから定まる運転領域をノッキングが生じやすいトレース制御域とノッキングが生じにくいMBT制御域とに大別し、
気筒毎にノッキングの検出を行い、
トレース制御域では、気筒毎に記憶されるトレース気筒別フィードバック量を、各気筒のノッキングの検出の有無に基づいて算出し、内燃機関の運転点に応じたトレース基準点火時期と上記トレース気筒別フィードバック量とに基づいて最終点火時期を決定し、
MBT制御域では、気筒毎に記憶されるMBT気筒別フィードバック量を、各気筒のノッキングの検出の有無に基づいて算出し、内燃機関の運転点に応じたMBT基準点火時期と上記MBT気筒別フィードバック量とに基づいて最終点火時期を決定し、
トレース制御域にある間は上記MBT気筒別フィードバック量の値を保持し、MBT制御域にある間は上記トレース気筒別フィードバック量の値を保持する、
内燃機関のノッキング制御方法。
【請求項2】
少なくともトレース制御域とMBT制御域との境界付近においては、トレース基準点火時期とトレース気筒別フィードバック量とに基づくトレース最終点火時期候補と、MBT基準点火時期とMBT気筒別フィードバック量とに基づくMBT最終点火時期候補と、を比較して、相対的に遅角側の値を最終点火時期とする、
請求項1に記載の内燃機関のノッキング制御方法。
【請求項3】
トレース最終点火時期候補を最終点火時期として点火を行ったときは、次の点火サイクルは、運転点がトレース制御域にあるものとみなし、
MBT最終点火時期候補を最終点火時期として点火を行ったときは、次の点火サイクルは、運転点がMBT制御域にあるものとみなす、
請求項2に記載の内燃機関のノッキング制御方法。
【請求項4】
上記トレース気筒別フィードバック量および上記MBT気筒別フィードバック量は、対応する気筒でノッキングを検出したときに遅角方向に所定量増加させ、ノッキングを検出しないときは所定の微小量ずつ減少させていくことで算出される、
請求項1に記載の内燃機関のノッキング制御方法。
【請求項5】
内燃機関に設けられたノッキング検出用センサと、
各気筒のノッキングの検出の有無に基づいて気筒毎に更新されるトレース気筒別フィードバック量を記憶するトレース気筒別フィードバック量記憶部と、
各気筒のノッキングの検出の有無に基づいて気筒毎に更新されるMBT気筒別フィードバック量を記憶するMBT気筒別フィードバック量記憶部と、
ノッキングが生じやすいトレース制御域を少なくとも含む内燃機関の運転領域について負荷と回転速度とから定まる各運転点に対しトレース基準点火時期を割り付けたトレース基準点火時期マップと、
ノッキングが生じにくいMBT制御域を少なくとも含む内燃機関の運転領域について各運転点に対しMBT基準点火時期を割り付けたMBT基準点火時期マップと、
トレース制御域では、上記トレース基準点火時期と上記トレース気筒別フィードバック量とに基づいて最終点火時期を決定し、MBT制御域では、上記MBT基準点火時期と上記MBT気筒別フィードバック量とに基づいて最終点火時期を決定する制御部と、
を備えてなる内燃機関のノッキング制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関のノッキングを点火時期フィードバック制御によって抑制するノッキング制御方法およびノッキング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のノッキングを抑制する技術として、ノッキングセンサ(あるいは筒内圧センサ)によってノッキングの検出を行い、あるレベルのノッキングが検出されたら点火時期を所定量遅角補正し、その後ノッキングが検出されなければ徐々に点火時期を進角させていくことで、トレースノック状態に維持する技術が広く知られている。
【0003】
特許文献1には、ノッキングが生じにくい運転領域ではMBT点近傍のベース点火時期に気筒別のオフセット量を加えて点火時期を決定し、ノッキングが生じやすい運転領域では、気筒別にノッキングの検出を行い、気筒別の点火時期フィードバック制御を行うことが記載されている。そして、前者の運転領域での気筒別のオフセット量を、後者の点火時期フィードバック制御による気筒間の点火時期の差異に基づいて決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-70511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ノッキングが生じにくい運転領域ではノッキング検出に基づく点火時期フィードバック制御をせずに、いわゆるフィードフォワードの形で気筒毎にオフセット量を加算する構成となっている。このような構成では、ノッキング回避のために余裕を見込んだ大きなオフセット量を与える必要があり、結局、最終点火時期がMBT点から離れてしまい、好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る内燃機関のノッキング制御方法は、
内燃機関の負荷と回転速度とから定まる運転領域をノッキングが生じやすいトレース制御域とノッキングが生じにくいMBT制御域とに大別し、
気筒毎にノッキングの検出を行い、
トレース制御域では、気筒毎に記憶されるトレース気筒別フィードバック量を、各気筒のノッキングの検出の有無に基づいて算出し、内燃機関の運転点に応じたトレース基準点火時期と上記トレース気筒別フィードバック量とに基づいて最終点火時期を決定し、
MBT制御域では、気筒毎に記憶されるMBT気筒別フィードバック量を、各気筒のノッキングの検出の有無に基づいて算出し、内燃機関の運転点に応じたMBT基準点火時期と上記MBT気筒別フィードバック量とに基づいて最終点火時期を決定し、
トレース制御域にある間は上記MBT気筒別フィードバック量の値を保持し、MBT制御域にある間は上記トレース気筒別フィードバック量の値を保持する。
【0007】
すなわち、ノッキングが生じやすいトレース制御域では、トレース基準点火時期と気筒毎のノッキング検出に基づくトレース気筒別フィードバック量とを用いて気筒別の点火時期フィードバック制御を行い、ノッキングが生じにくいMBT制御域では、MBT基準点火時期と気筒毎のノッキング検出に基づくMBT気筒別フィードバック量とを用いて気筒別の点火時期フィードバック制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、トレース制御域およびMBT制御域のそれぞれで、それぞれに適した基準点火時期および気筒別フィードバック量を用いて点火時期フィードバック制御を行うので、ノッキングを確実に抑制しつつ過大な点火時期遅角を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施例となる内燃機関のシステム構成を示す説明図。
図2】一実施例のノッキング制御の機能ブロック図。
図3】一実施例のノッキング制御における作用を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、この発明が適用された自動車用内燃機関1のシステム構成を示している。この実施例の内燃機関1は、直列3気筒の筒内直噴型火花点火式内燃機関であって、各気筒毎に、筒内へ向けて燃料を噴射する燃料噴射弁2を備えているとともに、生成された混合気に点火を行うための点火プラグ3を例えば天井面中央部に備えている。この点火プラグ3は、各気筒毎に設けられる点火ユニット4に接続されており、エンジンコントローラ11からの制御信号によって、各気筒毎に点火時期が制御可能である。
【0012】
また、内燃機関1のシリンダブロックの適宜位置には、いずれかの気筒でノッキングが生じたときに機械的な振動に基づきこのノッキングを検出するノッキングセンサ5が配置されている。
【0013】
各気筒の吸気弁6によって開閉される吸気ポートは吸気コレクタ8に集合しており、この吸気コレクタ8の入口部には、エンジンコントローラ11からの制御信号によって開度が制御される電子制御型スロットル弁9が配置されている。排気弁7によって開閉される排気ポートには、排気マニホルド10が接続されている。
【0014】
上記エンジンコントローラ11には、内燃機関1の運転条件として、機関回転速度を検出するためのクランク角センサ13、負荷に相当する吸入空気量を検出するエアフロメータ14、冷却水温を検出する水温センサ15、運転者により操作されるアクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ16、排気空燃比を検出する空燃比センサ17、等のセンサ類の検出信号が入力されている。エンジンコントローラ11は、これらの検出信号に基づき、燃料噴射弁2による燃料噴射量および噴射時期、点火ユニット4を介した点火プラグ3の点火時期、スロットル弁9の開度、等を最適に制御している。
【0015】
次に、上記エンジンコントローラ11によって実行されるノッキング制御について説明する。図2は、一実施例のノッキング制御の機能ブロック図である。ノッキング判定部21は、ノッキングセンサ5の検出信号に基づき、気筒別にノッキングの検出を行う。例えば、各気筒毎に所定クランク角範囲の信号を抽出し、所定レベル以上のノッキング振動成分が含まれているか否かを判定する。
【0016】
点火領域判定部22は、運転領域がトレース制御域にあるかMBT制御域にあるかを判定する。すなわち、本実施例では、内燃機関1の負荷と回転速度とから定まる運転領域を、ノッキングが生じやすいトレース制御域(一般に高負荷域)と相対的にノッキングが生じにくいMBT制御域とに大別しており、点火領域判定部22は、現在の運転点がどちらの領域にあるかを判定し、後述する2種類のフィードバック量の演算の切換を行う。より詳しくは、前回の点火サイクルにおける点火時期がトレース基準点火時期に基づくトレース制御であったかMBT基準点火時期に基づくMBT制御であったか、に従って、領域判定を行う。
【0017】
MBT基準点火時期演算部23は、内燃機関1の負荷と回転速度とに対応したMBT基準点火時期を算出する。MBT基準点火時期演算部23は、負荷と回転速度とから定まる各運転点に対し最適なMBT付近の基準点火時期を割り付けたMBT基準点火時期マップを備えており、このMBT基準点火時期マップからそのときの運転点に対応したMBT基準点火時期を演算する。ここで、MBT基準点火時期演算部23におけるMBT基準点火時期マップは、少なくとも、MBT制御域内の各運転点と、トレース制御域との境界付近の各運転点と、を含んで構成されている。トレース制御域を含む運転領域の全域にMBT基準点火時期の値を備えていても良い。
【0018】
トレース基準点火時期演算部24は、同様に、内燃機関1の負荷と回転速度とに対応したトレース基準点火時期を算出する。トレース基準点火時期は、ノッキング発生を未然に防止するように、MBT点よりも遅角側に設定される。トレース基準点火時期演算部24は、負荷と回転速度とから定まる各運転点に対し最適なトレース基準点火時期を割り付けたトレース基準点火時期マップを備えており、このトレース基準点火時期マップからそのときの運転点に対応したトレース基準点火時期を演算する。ここで、トレース基準点火時期演算部24におけるトレース基準点火時期マップは、少なくとも、トレース制御域内の各運転点と、MBT制御域との境界付近の各運転点と、を含んで構成されている。MBT制御域を含む運転領域の全域にトレース基準点火時期の値を備えていても良い。
【0019】
MBT気筒別フィードバック量記憶部25は、MBT制御域での各気筒のノッキングの検出の有無に基づいて各気筒毎にMBT気筒別フィードバック量を演算し、かつ記憶する。MBT気筒別フィードバック量は、対象とする気筒でノッキングが生じたと判定されたときに一定量増加し、ノッキングが検出されなかったときは所定の微小量ずつ減少させていくことで算出される。このMBT気筒別フィードバック量は、トレース制御域にある間は、更新されずにそのまま保持される。なお、この例では、フィードバック量の増加が点火時期の遅角側への変化に相当する。
【0020】
MBT気筒別点火時期演算部26は、そのときの運転点のMBT基準点火時期からMBT気筒別フィードバック量を減算することで、MBT基準点火時期に基づくMBT最終点火時期候補を気筒毎に算出する。
【0021】
トレース気筒別フィードバック量記憶部27は、トレース制御域での各気筒のノッキングの検出の有無に基づいて各気筒毎にトレース気筒別フィードバック量を演算し、かつ記憶する。トレース気筒別フィードバック量は、対象とする気筒でノッキングが生じたと判定されたときに一定量増加し、ノッキングが検出されなかったときは所定の微小量ずつ減少させていくことで算出される。このトレース気筒別フィードバック量は、MBT制御域にある間は、更新されずにそのまま保持される。
【0022】
トレース気筒別点火時期演算部28は、そのときの運転点のトレース基準点火時期からトレース気筒別フィードバック量を減算することで、トレース基準点火時期に基づくトレース最終点火時期候補を気筒毎に算出する。
【0023】
最終点火時期演算部29は、MBT気筒別点火時期演算部26が算出したMBT最終点火時期候補とトレース気筒別点火時期演算部28が算出したトレース最終点火時期候補とを比較し、相対的に遅角側の値を最終点火時期とする。対象の気筒の点火は、この最終点火時期に従って実行される。なお、MBT最終点火時期候補とトレース最終点火時期候補との比較をMBT制御域とトレース制御域との境界付近のみで行うようにしてもよい。
【0024】
点火領域判定部22における領域判定は、前述したように、最終点火時期演算部29においてどちらの点火時期候補に従って点火を行ったかに基づいてなされる。例えば、前回の点火がMBT最終点火時期候補に基づくものであれば、運転点がMBT制御域にあるものとみなして、ノッキング検出の有無に基づきMBT気筒別フィードバック量の加算・減算処理を行い、トレース気筒別フィードバック量の値はそのまま保持する。前回の点火がトレース最終点火時期候補に基づくものであれば、運転点がトレース制御域にあるものとみなして、ノッキング検出の有無に基づきトレース気筒別フィードバック量の加算・減算処理を行い、MBT気筒別フィードバック量の値はそのまま保持する。換言すれば、前回サイクルの最終点火時期に基づき、MBT気筒別点火時期演算部26とトレース気筒別点火時期演算部28との切換がなされる。
【0025】
従って、運転点がMBT制御域とトレース制御域との境界付近にあるときに、より適切にMBT気筒別点火時期演算部26とトレース気筒別点火時期演算部28との切換を行うことができる。そして、運転点が一方の制御域から他方の制御域に切り換わったと点火領域判定部22が判定するときには、MBT最終点火時期候補とトレース最終点火時期候補とは互いに近似した値にある。
【0026】
図3は、一実施例の直列3気筒内燃機関1における(a)ノッキング信号、(b)トレース気筒別フィードバック量、(c)MBT気筒別フィードバック量、(d)最終点火時期、の変化を示したタイムチャートである。この例では、時間t1までの期間がトレース制御域にあり、時間t1~t2の期間がMBT制御域にあり、時間t2以降がトレース制御域にある。太実線が♯1気筒の特性を、細実線が♯2気筒の特性を、一点鎖線が♯3気筒の特性を、それぞれ示している。なお、(b)トレース気筒別フィードバック量、(c)MBT気筒別フィードバック量および(d)最終点火時期については、図の下方が遅角側(フィードバック量としては大)として示してある。
【0027】
例えば、時間t1までのトレース制御域においては、各気筒でノッキングが検出されると、対応する気筒のトレース気筒別フィードバック量が所定量増加(図では下方へ変化)し、また、ノッキングが検出されない間は、対応する気筒のトレース気筒別フィードバック量が徐々に減少(図では上方へ変化)していく。最終点火時期は、このトレース気筒別フィードバック量に応じて気筒毎に制御される。つまり、最終点火時期は、ノッキングが検出されない間は徐々に進角していき、やがてノッキングが検出されることで遅角する、という動作を繰り返すことになる。トレース制御域にある間、MBT気筒別フィードバック量は、各気筒の値が更新されることなくそのまま保持される。
【0028】
時間t2においてトレース制御域からMBT制御域に遷移すると、MBT気筒別フィードバック量がノッキングの検出に基づいて増減変化することになり、このMBT気筒別フィードバック量に応じて最終点火時期が気筒毎に制御される。トレース気筒別フィードバック量は時間t2時点の値がそのまま保持される。
【0029】
時間t2におけるMBT気筒別フィードバック量は、それ以前のMBT制御域におけるフィードバック制御による値が反映しているので、時間t2においてトレース制御域からMBT制御域へ遷移したときに、最終点火時期が大きく変化することがない。特に、上記実施例のように、トレース制御域とMBT制御域との境界付近ではトレース最終点火時期候補とMBT最終点火時期候補とを比較して領域判定を行う場合には、領域切換直前の最終点火時期と領域切換直後の最終点火時期とが実質的に連続したものとなる。従って、最終点火時期が不連続となることによるトルク変動等を抑制できる。
【0030】
時間t3においてMBT制御域からトレース制御域に遷移すると、再びトレース気筒別フィードバック量がノッキングの検出に基づいて増減変化することになり、このトレース気筒別フィードバック量に応じて最終点火時期が気筒毎に制御される。MBT気筒別フィードバック量は、各気筒の値が更新されることなくそのまま保持される。この時間t3においても、最終点火時期は大きく変化せず、実質的に連続したものとなる。
【0031】
以上、この発明の一実施例を説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施例では直列3気筒内燃機関を例に説明したが、この発明は、任意の多気筒内燃機関に適用できる。また、ノッキング検出用センサとして各気筒の筒内圧を検出する筒内圧センサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…内燃機関
3…点火プラグ
5…ノッキングセンサ
11…エンジンコントローラ
21…ノッキング判定部
22…点火領域判定部
23…MBT基準点火時期演算部
24…トレース基準点火時期演算部
25…MBT気筒別フィードバック量記憶部
26…MBT気筒別点火時期演算部
27…トレース気筒別フィードバック量記憶部
28…トレース気筒別点火時期演算部
29…最終点火時期演算部
図1
図2
図3