(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155229
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】電力取引支援装置、電力取引支援方法、および電力取引支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241024BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069778
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 一徳
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 ほなみ
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】約定の確実性の高い電力取引を支援する電力取引支援装置、電力取引支援方法、および電力取引支援プログラムを提供する。
【解決手段】計量時間帯の異なる複数の電力商品32毎に電力の売買取引を行うザラ場取引を対象とした電力取引支援装置である電力取引支援装置10は、計画算出部22と、執行算出部24と、を備える。計画算出部22は、電力需要予測FDおよび発電量予測FGの少なくとも一方に基づいて目標取引計画電力量TVを算出し、目標取引計画電力量TVに基づいて電力取引市場30の電力商品32の取引時間帯内における時系列の取引計画電力量の推移を表す取引計画軌道VPを算出する。執行算出部24は、取引計画軌道VPと、電力商品32の約定実績電力量VBと、が近づくように電力商品32に対する入札価格候補PFを算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量時間帯の異なる複数の電力商品ごとに電力の売買取引を行うザラ場取引を対象とした電力取引支援装置であって、
電力需要予測および発電量予測の少なくとも一方に基づいて前記電力商品に対する目標取引計画電力量を算出し、前記目標取引計画電力量に基づいて前記電力商品の取引時間帯内における時系列の取引計画電力量の推移を表す取引計画軌道を算出する計画算出部と、
前記取引計画軌道と、前記電力商品の約定実績電力量とが近づくように前記電力商品に対する入札価格候補を算出する執行算出部と、
を備える電力取引支援装置。
【請求項2】
前記計画算出部は、
前記目標取引計画電力量に基づいて、前記電力商品の前記取引時間帯内の設定された執行時間における時系列の前記取引計画電力量の推移を表す前記取引計画軌道を算出する、
請求項1に記載の電力取引支援装置。
【請求項3】
前記計画算出部は、
前記目標取引計画電力量を計画値の増減に関する計画値増減情報に基づいて変更し、変更した前記目標取引計画電力量に基づいて前記取引計画軌道を算出する、
請求項1に記載の電力取引支援装置。
【請求項4】
前記執行算出部は、
前記取引計画軌道と前記約定実績電力量との偏差の大きさに応じた入札価格の調整倍率を表す入札更新特性と、前記取引計画軌道と前記約定実績電力量との前記偏差と、を用いて、前記偏差に応じた入札価格の調整に従って、前記取引計画軌道と前記約定実績電力量とが近づくように前記電力商品に対する前記入札価格候補を算出する、
請求項1に記載の電力取引支援装置。
【請求項5】
前記電力商品の取引価格および気配値の少なくとも一方に基づいて、前記取引価格または前記気配値の変化量が所定値以上である場合、前記執行算出部で算出された前記入札価格候補を前記変化量に応じて変更する戦略算出部、
を備える、請求項1に記載の電力取引支援装置。
【請求項6】
前記執行算出部または前記戦略算出部は、
前記入札価格候補に基づいて対応する前記電力商品の電力取引市場に自動入札する、
請求項5に記載の電力取引支援装置。
【請求項7】
前記計画算出部は、
複数の前記電力商品の各々の取引市場間の取引価格および気配値MPの少なくとも一方に基づいて、蓄電池の蓄電容量の範囲で取引時の収入が増加するように、複数の前記電力商品の各々ごとに算出した前記目標取引計画電力量の一部を移し替え、移し替え後の前記目標取引計画電力量に基づいて前記取引計画軌道を算出する、
請求項1に記載の電力取引支援装置。
【請求項8】
前記戦略算出部は、
複数の前記電力商品の各々の取引市場間の取引価格および気配値の少なくとも一方に基づいて、ユーザの使用する蓄電池の蓄電容量の範囲で取引時に収入が増加するように、売電量と買電量とを同じ電力量で同時に入札するための追加入札価格候補を前記電力商品の電力取引市場に自動入札する、
請求項5に記載の電力取引支援装置。
【請求項9】
計量時間帯の異なる複数の電力商品毎に電力の売買取引を行うザラ場取引を対象とした電力取引支援装置で実行される電力取引支援方法であって、
電力需要予測および発電量予測の少なくとも一方に基づいて前記電力商品に対する目標取引計画電力量を算出し、前記目標取引計画電力量に基づいて前記電力商品の取引時間帯内における時系列の取引計画電力量の推移を表す取引計画軌道を算出するステップと、
前記取引計画軌道と、前記電力商品の約定実績電力量とが近づくように前記電力商品に対する入札価格候補を算出するステップと、
を含む電力取引支援方法。
【請求項10】
計量時間帯の異なる複数の電力商品毎に電力の売買取引を行うザラ場取引を対象としたコンピュータで実行される電力取引支援プログラムであって、
電力需要予測および発電量予測の少なくとも一方に基づいて前記電力商品に対する目標取引計画電力量を算出し、前記目標取引計画電力量に基づいて前記電力商品の取引時間帯内における時系列の取引計画電力量の推移を表す取引計画軌道を算出するステップと、
前記取引計画軌道と、前記電力商品の約定実績電力量とが近づくように前記電力商品に対する入札価格候補を算出するステップと、
を実行させるための電力取引支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力取引支援装置、電力取引支援方法、および電力取引支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一日を複数の電力量計量時間帯である計量時間帯に分割し、複数の計量時間帯の各々の電力商品ごとに個別に需要供給の関係で価格と量を均衡させるザラ場取引を行う当日市場(時間前市場)が設けられている。ザラ場取引では、価格および時間優先で競売が行われ、売買条件が合致した入札から順次約定し、同一の電力商品に対して複数回約定することが可能となっている。このようなザラ場取引を対象にした電力取引の支援方法として、更新幅の設定により入札価格を変更する自動入札方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の需要家間で電力取引を行うP2P(Peer to Peer)形態の電力取引がザラ場で行われるようになることも見込まれる。P2P形態の電力取引に需要家が参加する場合、入札等の手間が掛かることに加え、ザラ場取引の取引時間帯内に約定できない場合や不合理的な入札等によって、需要家がP2P形態の電力取引の適切な経済メリットを得られない可能性がある。すなわち、従来技術では、約定の確実性の高い電力取引を支援することが困難となる場合があった。
【0005】
本発明の課題は、約定の確実性の高い電力取引を支援することができる、電力取引支援装置、電力取引支援方法、および電力取引支援プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電力取引支援装置は、計量時間帯の異なる複数の電力商品毎に電力の売買取引を行うザラ場取引を対象とした電力取引支援装置であって、計画算出部と、執行算出部と、を備える。計画算出部は、電力需要予測および発電量予測の少なくとも一方に基づいて前記電力商品に対する目標取引計画電力量を算出し、前記目標取引計画電力量に基づいて前記電力商品の取引時間帯内における時系列の取引計画電力量の推移を表す取引計画軌道を算出する。執行算出部24は、前記取引計画軌道と、前記電力商品の約定実績電力量とが近づくように前記電力商品に対する入札価格候補を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力取引支援装置の構成の一例の模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電力取引支援装置および電力取引市場の一例の機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、取引計画軌道の算出の一例の説明図である。
【
図4】
図4は、入札価格候補算出の一例の説明図である。
【
図5A】
図5Aは、目標計画軌道と約定実績電力量との関係の一例の説明図である。
【
図5B】
図5Bは、入札価格候補と入札価格候補との関係の一例の説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態の電力取引支援装置が実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態の電力取引支援装置および電力取引市場の一例の機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、目標取引計画電力量の一例の説明図である。
【
図9】
図9は、取引計画軌道の算出の一例の説明図である
【
図10】
図10は、入札電力量分の気配値の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態の電力取引支援装置が実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、電力取引支援装置の一例のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る電力取引支援装置、電力取引支援方法、および電力取引支援プログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
【0010】
図1は、本実施形態に係る電力取引支援装置10の構成の一例の模式図である。
【0011】
電力取引支援装置10は、電力取引市場30における電力取引を支援する為の情報処理装置である。電力取引支援装置10は、サーバーPC(Personal Computer)等であり、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、HDD(Hard Disk Drive)と、通信インタフェース(I/F)と、ディスプレイ等の表示装置と、キーボードやマウス等の入力装置とを備える通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0012】
電力取引支援装置10は、通信部12と、入力部14と、表示部16と、記憶部18と、制御部20と、を備える。通信部12と、入力部14と、表示部16と、記憶部18と、制御部20とは、バス等により通信可能に接続されている。
【0013】
通信部12は、外部の情報処理装置と通信する。例えば、通信部12は、ネットワーク等を介して電力取引市場30と通信可能に接続されている。入力部14は、ユーザによる操作入力を受付けるキーボード等の入力デバイスである。ユーザは、電力取引支援装置10を利用する利用者であり、需要家の一例である。表示部16は、各種の情報を表示するディスプレイである。記憶部18は、各種の情報を記憶する。記憶部18は、例えば、HDDや、メモリ等である。制御部20は、情報処理を実行する演算部である。
【0014】
図2は、本実施形態の電力取引支援装置10および電力取引市場30の一例の機能ブロック図である。
【0015】
本実施形態において想定する電力取引市場30は、電力量計量時間帯である計量時間帯の異なる複数の電力商品32(電力商品321~電力商品32n)(n=48)の各々ごとに電力の売買取引を行うザラ場取引の当日市場(時間前市場)である。複数の電力商品32の各々は、一日を電力の計量単位(30分)で分割した48個の計量時間帯に対応した電力商品32(電力商品321~電力商品32n)の各々の電力取引市場である。以下では、電力商品321~電力商品32nを総称して説明する場合、単に、電力商品32と称して説明する場合がある。
【0016】
本実施形態の電力取引支援装置10は、複数の電力商品32ごとに電力の売買取引を行うザラ場取引を支援する。
【0017】
電力取引支援装置10の制御部20は、計画算出部22と、執行算出部24と、戦略算出部26と、を備える。計画算出部22、執行算出部24、および戦略算出部26の少なくとも1つは、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば、上記各部は、CPUなどのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のIC(Integrated Circuit)などのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2以上を実現してもよい。
【0018】
計画算出部22、執行算出部24、および戦略算出部26は、複数の電力商品32(電力商品321~電力商品32n)の各々に対応する、計画算出部221~計画算出部22n、執行算出部241~執行算出部24n、戦略算出部261~戦略算出部26nをそれぞれ備える。なお、計画算出部221~計画算出部22n、執行算出部241~執行算出部24n、および戦略算出部261~戦略算出部26n、をそれぞれ総称して説明する場合、単に、計画算出部22、執行算出部24、戦略算出部26、とそれぞれ称して説明する場合がある。
【0019】
計画算出部22は、電力需要予測FDおよび発電量予測FGの少なくとも一方に基づいて、電力商品32に対する目標取引計画電力量TVを算出する。
【0020】
電力需要予測FDとは、電力取引支援装置10を利用する需要家であるユーザの、電力商品32の計量時間帯の電力需要の予測値を表す。発電量予測FGとは、電力取引支援装置10を利用する需要家であるユーザの、電力商品32の計量時間帯の発電量の予測値を表す。
【0021】
例えば、計画算出部22は、ユーザによる入力部14の操作指示によって入力された、各電力商品32の計量時間帯ごとの電力需要予測FDおよび発電量予測FGの少なくとも一方を受付ける。また、計画算出部22は、通信部12を介して外部の情報処理装置から、各電力商品32の計量時間帯ごとの電力需要予測FDおよび発電量予測FGの少なくとも一方を受付けてもよい。
【0022】
具体的には、ユーザが電力を買電する小売事業者等である場合には、計画算出部22は、電力需要予測FDを受付ける。また、ユーザが太陽光や風力、流れ込み水力等で発電した電力を売電する発電事業者等の場合には、計画算出部22は発電量予測FGを受付ける。また、ユーザが電力の売電および買電の双方を行う事業者等である場合には、計画算出部22は、電力需要予測FDおよび発電量予測FGを受付ける。
【0023】
計画算出部22は、受付けた電力需要予測FDおよび発電量予測FGの少なくとも一方に基づいて、電力商品32に対する目標取引計画電力量TVを算出する。
【0024】
目標取引計画電力量TVとは、電力商品32の取引時間帯において取引する目標の計画電力量を表す。
【0025】
例えば、計画算出部22は、発電量予測FGを受付けた場合、該発電量予測FGを対応する計量時間帯の電力商品32に対する目標売電計画電力量TVsとして算出する。目標売電計画電力量TVsは、取引が売電である場合の目標取引計画電力量TVである。具体的には、ユーザが電力を売電する発電事業者等の場合には、計画算出部22は、受付けた発電量予測FGを、対応する計量時間帯の電力商品32に対する目標売電計画電力量TVsとして算出する。
【0026】
また、例えば、計画算出部22は、電力需要予測FDを受付けた場合、該電力需要予測FDを対応する計量時間帯の電力商品32に対する目標買電計画電力量TVpとして算出する。目標買電計画電力量TVpは、取引が買電である場合の目標取引計画電力量TVである。具体的には、ユーザが電力を買電する小売事業者等である場合には、計画算出部22は、受付けた電力需要予測FDを、対応する計量時間帯の電力商品32に対する目標買電計画電力量TVpとして算出する。
【0027】
また、例えば、計画算出部22は、電力需要予測FDおよび発電量予測FGを受付けた場合、電力需要予測FDと発電量予測FGとの差分を、対応する計量時間帯の電力商品32に対する目標取引計画電力量TVとして算出する。電力需要予測FDから発電量予測FGを減算した値を目標取引計画電力量TVとする場合、差分がプラスの値である場合には目標買電計画電力量TVpを表し、差分がマイナスの値である場合には目標売電計画電力量TVsを表すものとなる。
【0028】
すなわち、計画算出部22に含まれる、各電力商品321~電力商品32nの各々に対応する計画算出部221~計画算出部22nは、各々の対応する電力商品32の電力需要予測FDおよび発電量予測FGの少なくとも一方を用いて、各々の対応する電力商品32に対する目標取引計画電力量TVを算出する。
【0029】
計画算出部22は、計量時間帯の異なる複数の電力商品32に対する目標取引計画電力量TVを算出すると、算出した目標取引計画電力量TVに基づいて、電力商品32の取引計画軌道VPを算出する。
【0030】
取引計画軌道VPとは、電力商品32の取引時間帯内における時系列の取引計画電力量の推移を表す情報である。
【0031】
図3は、取引計画軌道VPの算出の一例の説明図である。
図3中、横軸は時間を表し、縦軸は電力量を表す。
図3には、計量時間帯の異なる複数の電力商品32の内、1つの電力商品32に対する取引計画軌道VPの算出の一例を示す。
【0032】
例えば、計画算出部22が、ある計量時間帯の電力商品32に対する目標取引計画電力量TVとして、
図3に示す目標売電計画電力量TVsを算出した場面を想定する。この場合、計画算出部22は、該目標売電計画電力量TVsを、該電力商品32の取引時間帯(例えば、前日17時から当日の計量時間帯の1時間前まで)における開始時間から終了時間への時間経過に沿って割り振ることで、取引計画軌道VPを算出する。
【0033】
なお、計画算出部22は、
図3に示すように、目標売電計画電力量TVsを、電力商品32の取引時間帯内における、設定された執行時間SPの開始時間から終了時間までの時間経過に沿って割り振ることで、取引計画軌道VPを算出してもよい。
【0034】
執行時間SPとは、電力商品32の取引時間帯における、ユーザが入札の執行を希望する時間帯である。例えば、電力取引支援装置10を利用する利用者であるユーザは、入力部14を操作することで、電力商品32の取引時間帯内における、入札の執行を希望する所望の執行時間SPを入力する。計画算出部22は、入力部14から執行時間SPを受け付け、取引計画軌道VPの算出に用いればよい。また、計画算出部22は、記憶部18または通信部12を介して外部の情報処理装置などから、執行時間SPを受付けてもよい。
【0035】
そして、計画算出部22は、電力商品32の取引時間帯内における設定された執行時間SPの開始時間から終了時間までの時間経過に沿って目標売電計画電力量TVsを割り振ることで、取引計画軌道VPを算出すればよい。すなわち、計画算出部22は、目標取引計画電力量TVに基づいて、電力商品32の取引時間帯内の設定された執行時間SPにおける時系列の取引計画電力量の推移を表す取引計画軌道VPを算出する。
【0036】
また、計画算出部22は、目標買電計画電力量TVp、または目標買電計画電力量TVpおよび目標売電計画電力量TVsを含む目標取引計画電力量TVを算出した場合についても同様にして取引計画軌道VPを算出すればよい。すなわち、計画算出部22は、目標買電計画電力量TVpおよび目標取引計画電力量TVを電力商品32の取引時間帯内における執行時間SPの開始時間から終了時間までの時間経過に沿って割り振ることで、取引計画軌道VPを算出すればよい。
【0037】
計画算出部22が、電力商品32の取引時間帯内における執行時間SPの開始時間から終了時間までの時間経過に沿って目標取引計画電力量TVを割り振ることによって取引計画軌道VPを算出することで、電力取引支援装置10は、有利な入札価格での約定が図れるように支援することができる。
【0038】
なお、執行時間SPとして長い時間が設定されるほど、取引価格変動の影響が大きくなるが、有利な価格で取引可能となる機会が増加する。このため、ユーザが任意の執行時間SPを設定することで、ユーザは、取引価格変動のリスクの大小を指定することが可能となる。
【0039】
図2に戻り説明を続ける。計画算出部22は、算出した取引計画軌道VPを、同じ計量時間帯の電力商品32を担当する執行算出部24へ出力する。すなわち、各電力商品32
1~電力商品32
nの各々に対応する計画算出部22
1~計画算出部22
nは、同じ電力商品32に対応する執行算出部24
1~執行算出部24
nへ算出した取引計画軌道VPをそれぞれ出力する。
【0040】
なお、電力需要予測FDおよび発電量予測FGは、電力商品32の取引時間帯において逐次更新される。このため、計画算出部22は、逐次更新される電力需要予測FDおよび発電量予測FGの少なくとも一方を用いることで、逐次更新した目標取引計画電力量TVを算出し、逐次更新した取引計画軌道VPを算出し、執行算出部24へ順次出力する。
【0041】
執行算出部24は、取引計画軌道VPと、電力商品32の約定実績電力量VBと、が近づくように、電力商品32に対する入札価格候補PBを算出する。
【0042】
約定実績電力量VBとは、電力商品32の取引時間帯の取引開始からの約定情報を蓄積した約定電力量の実績値を表す情報である。入札価格候補PBとは、対応する電力商品32の取引時間帯における候補とする入札価格を表す情報である。
【0043】
執行算出部24は、対応する複数の電力商品32の各々から電力商品32の取引時間帯の約定実績電力量VBを取得する。そして、執行算出部24は、電力商品32の各々ごとに、電力商品32の約定実績電力量VBと取引計画軌道VPとが近づくように、電力商品32に対する入札価格候補PBを算出する。
【0044】
図4は、執行算出部24による入札価格候補PB算出の一例の説明図である。
図4には、計画算出部22が、ある取引時間帯の電力商品32に対する目標取引計画電力量TVとして目標売電計画電力量TVsを算出し(
図3参照)、目標売電計画電力量TVsから算出された取引計画軌道VPを用いて入札価格候補PBを算出する場面を一例として示す。
【0045】
執行算出部24は、取引計画軌道VPと約定実績電力量VBとの偏差Eを小さくするように、入札価格候補PBを算出し更新する。入札価格候補PBの算出には、PI(Proportional-Integral)制御演算回路等を用いればよい。
【0046】
このように、執行算出部24は、約定実績電力量VBと取引計画軌道VPとが近づくように、電力商品32に対する入札価格候補PBを算出する。
【0047】
このため、例えば、
図3に示すように、約定実績電力量VBが取引計画軌道VP未満の場合には、執行算出部24は、約定を優先し入札価格を下げるように入札価格候補PBを算出する。また、例えば、
図3に示すように、約定実績電力量VBが取引計画軌道VPより多い場合には、執行算出部24は、収益を優先し入札価格を上げるように、入札価格を表す入札価格候補PBを算出する。
【0048】
すなわち、各電力商品321~電力商品32nの各々に対応する執行算出部241~執行算出部24nは、同じ電力商品32に対応する計画算出部221~計画算出部22nからそれぞれ受付けた取引計画軌道VPに基づいて、約定実績電力量VBと取引計画軌道VPとが近づくように、対応する電力商品321~電力商品32nの各々に対する入札価格候補PBを算出する。
【0049】
なお、約定実績電力量VBは、電力商品32の取引時間帯において逐次更新される。また、上述したように、計画算出部22から出力される取引計画軌道VPは逐次更新される。このため、執行算出部24は、逐次更新される約定実績電力量VBおよび取引計画軌道VPを用いることで、逐次更新した入札価格候補PBを算出することとなる。
【0050】
図2に戻り説明を続ける。執行算出部24は、入札更新特性SBを更に受付けてもよい。入札更新特性SBとは、取引計画軌道VPと約定実績電力量VBとの偏差Eの大きさに応じた入札価格の調整倍率の設定値である。調整倍率は、偏差Eの比例、偏差Eの積分、偏差Eの微分に比例、等の係数値によって表される。例えば、ユーザは、入力部14を操作することで所望の入札更新特性SBを入力する。執行算出部24は、入力部14から受付けた入札更新特性SBを更に用いて、入札価格候補PBを算出してもよい。
【0051】
詳細には、執行算出部24は、取引計画軌道VPと約定実績電力量VBとの偏差Eと、入札更新特性SBと、を用いて、入札更新特性SBによって表される偏差Eに応じた入札価格の調整に従って、取引計画軌道VPと約定実績電力量VBとが近づくように、電力商品32に対する入札価格候補PBを算出する。
【0052】
例えば、執行算出部24は、入札更新特性SBに対する偏差Eの比例係数Kp、偏差Eの積分時定数TI、および近似微分値のゲインKdを用いて、偏差Eを入力とするPI制御演算またはPD(Proportional-Derivative)制御演算により、入札価格候補PBを算出し更新する。
【0053】
図4を用いて説明する。具体的には、執行算出部24は、以下の処理により入札価格候補PBを算出する。例えば、目標売電計画電力量TVsから算出された取引計画軌道VPを用いて入札価格候補PBを算出する場面を一例として説明する。
【0054】
この場合、執行算出部24は、下記式(1)および式(2)を用いて、入札価格候補PBを算出する。
【0055】
【0056】
式(1)および式(2)中、Δtは演算周期を表し、kは演算ステップを表す。Eは偏差Eを表す。Kpは入札更新特性SBに対する偏差Eの比例係数を表す。TIは偏差Eの積分時定数を表す。Kdは近似微分値のゲインを表す。VBは約定実績電力量VBを表し、VPは取引計画軌道VPを表す。PBは入札価格候補PBを表す。
【0057】
式(2)中、KpおよびTIは、入札更新特性SBを表す。
【0058】
式(1)および式(2)に示すように、ユーザが入札更新特性SBによって表される制御演算の応答性を指定することで、ユーザは対応する電力商品32における約定の可能性を調整することができる。すなわち、執行算出部24は、ユーザによって指定された入札更新特性SBによって表される、約定リスクの大小に応じた入札価格候補PBを算出することができる。
【0059】
【0060】
戦略算出部26は、電力商品32ごとの取引価格TPおよび気配値MPの少なくとも一方に基づいて、取引価格TPまたは気配値MPの変化量が所定値以上である場合、執行算出部24で算出された入札価格候補PBを該変化量に応じて変更した入札価格候補PFを算出する。
【0061】
戦略算出部26は、電力商品32の取引価格TPおよび気配値MPを対応する電力商品32の電力取引市場から取得する。電力商品32の取引価格TPおよび気配値MPは逐次更新される。戦略算出部26は逐次更新される取引価格TPおよび気配値MPを電力商品32の電力取引市場から取得すればよい。
【0062】
詳細には、電力取引支援装置10を利用するユーザが電力を買電する小売事業者等である場合には、戦略算出部26は、売り気配値を気配値MPとして取得すればよい。また、電力取引支援装置10を利用するユーザが電力を売電する発電事業者等の場合には、戦略算出部26は、買い気配値を気配値MPとして取得すればよい、また、電力取引支援装置10を利用するユーザが電力の売電および買電の双方を行う事業者等である場合には、戦略算出部26は、買い気配値および売り気配値を気配値MPとして取得すればよい。
【0063】
戦略算出部26は、取引価格TPおよび気配値MPの変化幅および変化速度からトレンドの変化量を検出する。そして、戦略算出部26は、検出した変化量が所定値以上である場合、執行算出部24で算出された入札価格候補PBを該変化量分変更することで、変更後の入札価格候補PBである入札価格候補PFを算出する。また、戦略算出部26は、検出した変化量が所定値未満である場合、執行算出部24で算出された入札価格候補PBを変更せず、そのまま入札価格候補PFとして算出する。
【0064】
該所定値は、ユーザによる入力部14の操作指示等に応じて適宜変更可能としてもよい。また、戦略算出部26は、入札変更特性SFを更に用いて入札価格候補PFを算出してもよい。入札変更特性SFは、レンジ価格変動の外側の価格帯に設定される逆指値である。例えば、利用者は入力部14を操作することで入札変更特性SFを入力すればよい。そして、戦略算出部26は、対応する電力商品32の取引価格が入札変更特性SFによって表される逆指値によって表される価格を下回った場合に、該逆指値によって表される価格を入札価格候補PFとして算出してもよい。
【0065】
なお、上述したように、電力商品32の取引価格TPおよび気配値MPは、電力商品32の取引時間帯において逐次更新される。また、上述したように、執行算出部24で算出される入札価格候補PBも逐次更新される。このため、戦略算出部26は、逐次更新される取引価格TP、気配値MP、および入札価格候補PBを用いることで、逐次更新した入札価格候補PFを算出する。
【0066】
図5Aおよび
図5Bは、執行算出部24によって算出された入札価格候補PBと、該入札価格候補PBを用いて戦略算出部26が算出した入札価格候補PFと、の関係の一例の説明図である。
図5A中、横軸は時間を示し、縦軸は電力量を示す。
図5B中、横軸は時間を示し、縦軸は価格を示す。
【0067】
例えば、計画算出部22が目標売電計画電力量TVsを算出し、該目標売電計画電力量TVsに基づいて取引計画軌道VPを算出した場面を想定する。そして、執行算出部24が売電の該取引計画軌道VPから売電の入札価格候補PBを算出し、戦略算出部26が該入札価格候補PBから売電の入札価格候補PFを算出した場面を想定する。また、この場面における取引計画軌道VPが
図5Aによって示される場合を想定する。
【0068】
この場合、執行算出部24は、例えば、
図5Aに示す取引計画軌道VPおよび約定実績電力量VBに基づいて入札価格候補PBを算出することで、
図5Bに示す売電入札価格候補PBsを算出する。また、戦略算出部26は、対応する電力商品32の取引価格TPおよび気配値MPの変化幅および変化速度から検出したトレンドの変化量が所定値以上である場合、売電入札価格候補PBsを該変化量分変更した売電入札価格候補PFsを計算する。
図5A及び
図5Bにおいて、 PI制御演算,戦略算出部有りでのVBおよびこれに基づき算出されたPFsを入札例1として、PI制御演算,戦略算出部無しでのVBおよびこれに基づき算出されたPBsを入札例2として示している。
【0069】
このため、ある電力商品32の取引時間帯に含まれる執行時間SPにおける売電入札価格候補PBsおよび売電入札価格候補PFsの変化は、例えば、
図5Bに示すものとなる。
【0070】
詳細には、
図5Aおよび
図5Bに示すように、執行算出部24および戦略算出部26による算出処理によって、売電の取引計画軌道VPに合わせて約定するように、売電入札価格候補PBsおよび売電入札価格候補PFsは変化する。戦略算出部26によって算出された売電入札価格候補PFsは、執行算出部24によって算出された売電入札価格候補PBsに比べて、買電気配値MPsにより速く近づく入札価格を示し、且つ、取引計画軌道VPに沿って約定している。また、
図5Bに示すように、戦略算出部26によって算出された入札価格候補PFは、買電気配値MPsの急変化に追従した入札価格となっており、約定が遅くならない入札価格による入札が可能となっている。
【0071】
よって、戦略算出部26が、電力商品32の取引価格TPまたは気配値MPの変化量が所定値以上である場合、執行算出部24で算出された入札価格候補PBを該変化量に応じて変更した入札価格候補PFを算出することで、取引価格TPおよび気配値MPの変化に追従し且つ取引計画軌道VPに沿って約定するような入札価格を算出することができる。
【0072】
戦略算出部26は、入札価格候補PFに基づいて対応する電力商品32の電力取引市場に自動入札する。すなわち、戦略算出部26は、戦略算出部26によって逐次算出される入札価格候補PFを、該入札価格候補PFの対応する電力商品32の電力取引市場に自動入札する。また、戦略算出部26は、電力商品32ごとに算出した入札価格候補PFを表示部16等に出力してもよい。この場合、ユーザは、表示部16に表示された入札価格候補PFを視認しながら入力部14を操作することで、手動で電力商品32の電力取引市場への入札を行ってもよい。
【0073】
また、上述したように、戦略算出部26は、電力商品32の取引価格TPまたは気配値MPの変化量が所定値未満である場合、執行算出部24で算出された入札価格候補PBを変更せず入札価格候補PFとして算出する。また、本実施形態の電力取引支援装置10は、戦略算出部26を備えない構成であってもよい。この場合、執行算出部24または戦略算出部26は、執行算出部24で算出した入札価格候補PBを、該入札価格候補PBの対応する電力商品32の電力取引市場に自動入札する。市場価格の速い変化に対応するためには、執行算出部24または戦略算出部26が、算出した入札価格候補PBまたは入札価格候補PFを使用して対応する電力商品32へ自動入札することが好ましい。
【0074】
また、執行算出部24または戦略算出部26は、電力商品32ごとに算出した入札価格候補PBを表示部16等に出力してもよい。この場合、電力取引支援装置10を利用するユーザは、表示部16に表示された入札価格候補PBを視認しながら入力部14を操作することで、手動で電力商品32の電力取引市場への入札を行ってもよい。この場合、電力取引支援装置10を利用するユーザは、算出された入札価格候補PBまたは入札価格候補PFを用いることで、容易に電力商品32へ入札を行うことができる。
【0075】
なお、電力取引支援装置10の計画算出部22(計画算出部221~計画算出部22n)、執行算出部24(執行算出部241~執行算出部24n)、および戦略算出部26(戦略算出部261~戦略算出部26n)では、対応する電力商品32(電力商品321~電力商品32n)の各々に対応する計画算出部22、執行算出部24、および戦略算出部26の群ごとに、上記処理を実行する。
【0076】
電力取引支援装置10では、電力取引支援装置10を利用するユーザの売買電力量の規模やシステムに応じて、計画算出部22、執行算出部24、および戦略算出部26の各算出部の演算周期、1入札あたりの電力量(市場入札単位の倍数)を選定すればよい。
【0077】
例えば、計画算出部22、執行算出部24、および戦略算出部26の各算出部の演算周期は、以下式(A)の関係を満たす演算周期とすればよい。
【0078】
計画算出部22の演算周期≧執行算出部24の演算周期≧戦略算出部26の演算周期
・・・・式(A)
【0079】
例えば、計画算出部22の演算周期としては数分程度、戦略算出部26の演算周期としては数秒程度を選択することができる。
【0080】
次に、本実施形態の電力取引支援装置10が実行する情報処理の流れの一例を説明する。
【0081】
図6は、本実施形態の電力取引支援装置10が実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。電力取引支援装置10の計画算出部22(計画算出部22
1~計画算出部22
n)、執行算出部24(執行算出部24
1~執行算出部24
n)、および戦略算出部26(戦略算出部26
1~戦略算出部26
n)では、対応する電力商品32(電力商品32
1~電力商品32
n)の各々に対応する計画算出部22、執行算出部24、および戦略算出部26の群ごとに、
図6に示す情報処理が実行される。
【0082】
計画算出部22は、電力需要予測FDおよび発電量予測FGの少なくとも一方に基づいて、電力商品32に対する目標取引計画電力量TVを算出する(ステップS100)。
【0083】
計画算出部22は、ステップS100で算出した目標取引計画電力量TVに基づいて、取引計画軌道VPを算出する(ステップS102)。
【0084】
執行算出部24は、ステップS102で算出された取引計画軌道VPと、電力商品32の約定実績電力量VBと、が近づくように、電力商品32に対する入札価格候補PBを算出する(ステップS104)。
【0085】
戦略算出部26は、電力商品32の電力取引市場における取引価格TPおよび気配値MPの少なくとも一方に基づいて、ステップS104で算出された入札価格候補PBを変更した入札価格候補PFを算出する(ステップS106)。詳細には、戦略算出部26は、取引価格TPまたは気配値MPの変化量が所定値以上である場合、ステップS104で算出された入札価格候補PBを該変化量に応じて変更した入札価格候補PFを算出する。戦略算出部26は、該変化量が所定値未満である場合、ステップS104で算出された入札価格候補PBを入札価格候補PFとして算出する。
【0086】
戦略算出部26は、ステップS106で算出した入札価格候補PFによって表される入札価格で対応する電力商品32へ入札する(ステップS108)。詳細には、戦略算出部26は、ステップS106で算出した入札価格候補PFによって表される入札価格で対応する電力商品32の電力取引市場へ自動入札、または入札価格候補PFによって表される入札価格でユーザによる入力部14の操作指示に応じて対応する電力商品32の電力取引市場へ手動入札する。そして、本ルーチンを終了する。
【0087】
以上説明したように、本実施形態の電力取引支援装置10は、計量時間帯の異なる複数の電力商品32毎に電力の売買取引を行うザラ場取引を対象とした電力取引支援装置である。電力取引支援装置10は、計画算出部22と、執行算出部24と、を備える。計画算出部22は、電力需要予測FDおよび発電量予測FGの少なくとも一方に基づいて目標取引計画電力量TVを算出し、目標取引計画電力量TVに基づいて電力商品32の取引時間帯内における時系列の取引計画電力量の推移を表す取引計画軌道VPを算出する。執行算出部24は、取引計画軌道VPと、電力商品32の約定実績電力量VBと、が近づくように電力商品32に対する入札価格候補PFを算出する。
【0088】
ここで、国内卸電力市場には、板寄せ方式で約定するスポット市場とザラ場取引の時間前市場が設けられている。スポット市場では均衡的な価格付けで約定するため、入札価格と約定価格が一致せず、計画した通りに約定できないこともある。一方、時間前市場はザラ場市場であり、電力供給の当日まで市場価格に応じて取引を行うことができる。時間前市場では発電量の予測変化などに起因する需給計画の変動分を補填する場としての役割が期待されている。再生可能エネルギーを利用した電源の拡大に合わせて、ザラ場取引を行う当日市場(時間前市場)の取引増加も見込まれている。
【0089】
このようなザラ場取引を対象とした電力取引の支援方法として更新幅の設定により入札価格を変更する自動入札方法が公開されている。また、太陽光発電など再生可能エネルギーを利用した電源設備を保有した余剰電力を有する一般需要家と、再生可能エネルギーを利用した電力を安価に購買したい一般需要家との間で、電力取引の仲介によりP2P形態の電力取引が行われるようになることも見込まれる。P2P形態の電力取引では、電力事業者との取引に比べて有利な価格で売電、買電を取引することで経済メリットを享受できるとともに、市場原理に基づき利用者の節電行動や蓄電設備によるピークシフトを促すことで社会的な便益を産出することが期待される。
【0090】
しかし、ザラ場電力市場の取引価格の短時間変動や変化トレンドは常時変化する。このため、約定が難しく時間がかかるときに計画された電力量の取引執行が困難となる場合があった。また、短時間に取引執行することで、取引価格の有利な時間タイミングでの取引可能性を結果的に除外してしまう場合があった。また、P2P形態の電力取引がザラ場で行われるようになることも見込まれる。このため、入札価格の選定等に手間が掛かることに加え、需要家の余剰電力量や需要量に合わせた電力取引がザラ場取引時間帯内に約定できない場合があった。また、心理的な入札価格の選定等に伴う合理性の低い入札行動により、P2P形態の電力取引の適切な経済的メリットを得られない可能性があった。このため、従来技術では、約定の確実性の高い電力取引を支援することは困難であった。
【0091】
一方、本実施形態の電力取引支援装置10は、ザラ場取引を対象とした電力取引支援装置10であって、電力需要予測FDおよび発電量予測FGの少なくとも一方に基づいて目標取引計画電力量TVを算出し、目標取引計画電力量TVを電力商品32の取引時間帯内に割り振った取引計画電力量の推移を表す取引計画軌道VPを算出する。そして、電力取引支援装置10は、取引計画軌道VPと、電力商品32の約定実績電力量VBと、が近づくように電力商品32に対する入札価格候補PFを算出する。
【0092】
すなわち、本実施形態の電力取引支援装置10は、市場価格予測の情報によらず、約定実績電力量VBと、取引価格TPおよび気配値MPの少なくとも一方と、に基づいて約定実績電力量VBが取引計画軌道VPに近づくように入札価格候補PFを逐次算出し逐次更新する。このため、本実施形態の電力取引支援装置10は、ザラ場取引における複数の電力商品32の取引時間帯を通じて時間的に入札を分散し、約定の確実性の高い電力取引の執行を支援することができる。また、本実施形態の電力取引支援装置10は、ザラ場取引の取引時間帯内に需要家の余剰電力量や需要量に合わせた電力取引が約定されるように支援することができる。
【0093】
従って、本実施形態の電力取引支援装置10は、約定の確実性の高い電力取引を支援することができる。
【0094】
また、本実施形態の電力取引支援装置10は、P2P形態の電力取引に需要家が参加する場合の入札価格の選定等の作業負荷が軽減される。また、本実施形態の電力取引支援装置10は、需要者による入札価格の選定等に伴う合理性の低い入札行動による、P2P形態の電力取引の適切な経済的メリットが得られなくなることを抑制することができる。このため、本実施形態の電力取引支援装置10は、上記効果に加えて、需要家がP2P形態の電力取引の適切な経済メリットが得られるように支援することができる。
【0095】
また、本実施形態の電力取引支援装置10では、計画算出部22が、電力商品32の取引時間帯内における執行時間SPの開始時間から終了時間までの時間経過に沿って目標取引計画電力量TVを割り振ることによって、取引計画軌道VPを算出する。このため、本実施形態の電力取引支援装置10は、執行時間SPを用いることで、上記効果に加えて、有利な入札価格での約定が図れるように支援することができる。また、本実施形態の電力取引支援装置10では、ユーザが執行時間SPを設定することができる。このため、電力取引支援装置10を利用するユーザは、取引時間方向のリスク許容度を容易に設定することができる。また、本実施形態の電力取引支援装置10では、ユーザが入札更新特性SBを設定することができる。このため、電力取引支援装置10を利用するユーザは、価格の上下方向のリスク許容度を容易に設定することが可能となる。
【0096】
また、本実施形態の電力取引支援装置10では、執行算出部24は、約定実績電力量VBと取引計画軌道VPとが近づくように、入札価格候補PBを算出する。言い換えると、執行算出部24は、約定実績電力量VBと取引計画軌道VPとの偏差Eを小さくするように入札価格候補PBを算出する。このため、本実施形態の電力取引支援装置10は、目標取引計画電力量TVの約定の確実性の高い電力取引支援を行うことができる。
【0097】
また、本実施形態の電力取引支援装置10では、戦略算出部26は、電力商品32ごとの取引価格TPおよび気配値MPの少なくとも一方に基づいて、取引価格TPまたは気配値MPの変化量が所定値以上である場合、執行算出部24で算出された入札価格候補PBを該変化量に応じて変更した入札価格候補PFを算出する。
【0098】
このため、本実施形態の電力取引支援装置10は、電力商品32において大きな価格変化が発生した場合であっても、約定を優先した電力取引を支援することが可能となる。
【0099】
また、戦略算出部26は、入札変更特性SFを更に用いて入札価格候補PFを算出してもよい。ユーザにより設定された入札変更特性SFを更に用いて戦略算出部26が入札価格候補PFを算出することで、電力取引支援装置10を使用するユーザは、価格の上下方向のリスク許容度を容易に設定することが可能となる。
【0100】
(第2の実施形態)
本実施形態では、計画算出部22および戦略算出部26が、複数の電力商品32の各々の取引市場間の取引価格TPおよび気配値MPの少なくとも一方に基づいて、更に入替処理または追加入札を行う形態を説明する。
【0101】
また、本実施形態では、電力取引支援装置10の利用者であるユーザが電力の売電および買電の双方を行う事業者である場合を想定して説明する。また、ユーザである需要家が、所定の蓄電容量SSの蓄電池を備える形態を一例として説明する。すなわち、本実施形態では、太陽光発電設備などの発電システムを保有し、再生可能エネルギー由来の余剰電力を有する需要家と、再生可能エネルギー由来の余剰電力を安価に購入することを希望する需要家と、の間のP2P形態のザラ場取引の電力取引市場30を対象とした形態を一例として説明する。
【0102】
図1は、本実施形態に係る電力取引支援装置10Bの構成の一例の模式図である。電力取引支援装置10Bは、上記実施形態の電力取引支援装置10と同様に、ザラ場取引を対象とした電力取引市場30用の電力取引支援装置である。電力取引市場30は、上記実施形態と同様である。電力取引支援装置10Bは、制御部20に替えて制御部21を備える点以外は、上記実施形態の電力取引支援装置10と同様である。
【0103】
図7は、本実施形態の電力取引支援装置10Bおよび電力取引市場30の一例の機能ブロック図である。
【0104】
電力取引支援装置10Bの制御部21は、計画算出部23と、執行算出部24と、戦略算出部27と、を備える。計画算出部23、執行算出部24、および戦略算出部27の少なくとも1つは、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば、上記各部は、CPUなどのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のICなどのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2以上を実現してもよい。
【0105】
計画算出部23、執行算出部24、および戦略算出部27は、上記実施形態の計画算出部22、執行算出部24、および戦略算出部26の各々と同様に、複数の電力商品32(電力商品321~電力商品32n)の各々に対応する、計画算出部231~計画算出部23n、執行算出部241~執行算出部24n、戦略算出部271~戦略算出部27nをそれぞれ備える。なお、計画算出部231~計画算出部23n、執行算出部241~執行算出部24n、および戦略算出部271~戦略算出部27n、をそれぞれ総称して説明する場合、単に、計画算出部23、執行算出部24、戦略算出部27、とそれぞれ称して説明する場合がある。
【0106】
計画算出部23は、上記実施形態の計画算出部22と同様に、電力需要予測FDおよび発電量予測FGの少なくとも一方に基づいて、電力商品32に対する目標取引計画電力量TVを算出する。計画算出部23による目標取引計画電力量TVの算出方法は、上記実施形態の計画算出部22による算出方法と同様である。
【0107】
上述したように、本実施形態では、ユーザが電力の売電および買電の双方を行う事業者等であり、所定の蓄電容量SSの蓄電池を備える形態を一例として説明する。蓄電池には、例えば、PV(Photovoltaics)等の発電システムが接続されており、発電設備によって蓄電池に電力が蓄電される。
【0108】
本実施形態では、計画算出部23は、蓄電容量SSおよび計画値増減情報CSを更に受付ける。また、計画算出部23は、対応する電力商品32の電力取引市場から取引価格TPおよび気配値MPを更に受付ける。
【0109】
蓄電容量SSは、ユーザである事業者に設置された蓄電池の蓄電可能容量である。計画値増減情報CSは、計画値の増減に関する情報である。例えば、需要家であるユーザは入力部14を操作することで蓄電容量SSを入力する。電力取引支援装置10Bの計画算出部23は、入力された蓄電容量SSを受付ける。
【0110】
計画値増減情報CSは、目標取引計画電力量TVの増減に関する情報であり、ユーザによって設定される情報である。具体的には、例えば、計画値増減情報CSは、節電予定の電力量、需要設備運用の時間シフト予定、等を表す情報である。
【0111】
例えば、ユーザが節電等を希望するために、各計量時間帯の電力商品32に対する目標取引計画電力量TVの増減を希望する場合がある。この場合、ユーザは入力部14を操作することで、各電力商品32に対して希望の計画値増減情報CSを入力する。電力取引支援装置10Bの計画算出部23は、電力商品32に対して入力された計画値増減情報CSを受付ける。
【0112】
計画算出部23は、電力需要予測FDおよび発電量予測FGに基づいて計画算出部22と同様にして算出した電力商品32に対する目標取引計画電力量TVを、計画値増減情報CSに基づいて変更する。
【0113】
図8は、目標取引計画電力量TVの一例の説明図である。電力取引支援装置10の利用者であるユーザが電力の売電および買電の双方を行う事業者である場合、計画算出部23は、複数の計量時間帯の各々の電力商品32ごとに、電力需要予測FDおよび発電量予測FGを受付ける。このため、各電力商品32に対応する計画算出部23の各々は、対応する電力商品32の電力需要予測FDと発電量予測FGとの差分を、対応する計量時間帯の電力商品32に対する目標取引計画電力量TVとして算出する。このため、
図8に示すように、複数の計量時間帯の各々の複数の電力商品32の各々の目標取引計画電力量TVが算出された状態となる。
【0114】
図8に示す例の場合、プラスの値の目標取引計画電力量TVは目標買電計画電力量TVpを表し、マイナスの値の目標取引計画電力量TVは目標売電計画電力量TVsを表す。すなわち、太陽光発電設備などの発電システムを保有した需要家では、売電を行う計量時間帯(電力商品32)と買電を行う計量時間帯(電力商品32)とが混在することとなる。
【0115】
電力需要予測FDおよび発電量予測FGは、対応する電力商品32の取引時間帯において逐次更新される。このため、計画算出部23は、逐次更新される電力需要予測FDおよび発電量予測FGを用いて、対応する電力商品32に用いる目標取引計画電力量TVを逐次更新する。
【0116】
また、本実施形態では、計画算出部23は、各電力商品32に対応する計画値増減情報CSに基づいて変更した目標取引計画電力量TVを算出する。
【0117】
そして、本実施形態では、計画算出部23は、対応する複数の電力商品32の各々ごとに算出した目標取引計画電力量TVを、複数の電力商品32の各々の取引市場間の取引価格TPおよび気配値MPの少なくとも一方に基づいて、ユーザの利用する蓄電池の蓄電容量SSの範囲で取引時の収入が増加するように、複数の電力商品32の各々ごとに算出した目標取引計画電力量TVの一部を移し替える。
【0118】
例えば、計画算出部23は、複数の電力商品32間の取引価格TPおよび気配値MPを比較し、ある計量時間帯の電力商品32用に算出した目標取引計画電力量TVと、他の計量時間帯の電力商品32用に算出した目標取引計画電力量TVとを、ユーザの利用する蓄電池の蓄電容量SSの範囲で取引時の収入が増加するように移し替える。
【0119】
言い換えると、計画算出部23は、電力商品32間の取引価格TPおよび気配値MPを比較し、ユーザの利用する蓄電池の蓄電容量SSの範囲で該ユーザの収益が増加するように、対象とする電力商品32を移し替える。
【0120】
そして、計画算出部23は、移し替え後の目標取引計画電力量TVに基づいて、計画算出部22と同様にして取引計画軌道VPを算出する。
【0121】
図9は、取引計画軌道VPの算出の一例の説明図である。
図9中、横軸は時間を表す。
図9には、計量時間帯の異なる複数の電力商品32の内、
図8中の符号Aで示す1つの電力商品32に対する目標取引計画電力量TVを用いた取引計画軌道VPの算出の一例を示す。また、
図9には、売電の場合の取引計画軌道VPの一例を示す。
図9中、時刻Bは、発電量予測FG等の更新により目標売電計画電力量TVsが変化した時刻である。
【0122】
なお、
図9に示すように、ユーザは、自動入札用の執行時間SPと、手動入札用の執行時間SPと、の2種類の執行時間SPを設定してもよい。
【0123】
【0124】
戦略算出部27は、戦略算出部26と同様に、電力商品32ごとの取引価格TPおよび気配値MPの少なくとも一方に基づいて、取引価格TPまたは気配値MPの変化量が所定値以上である場合、執行算出部24で算出された入札価格候補PBを該変化量に応じて変更した入札価格候補PFを算出する。
【0125】
本実施形態では、戦略算出部27は、複数の電力商品32の各々の取引市場間の取引価格TPおよび気配値MPの少なくとも一方に基づいて、ユーザの使用する蓄電池の蓄電容量SSの範囲で取引時に収入が増加するように、売電量と買電量とを同じ電力量で同時に入札するための追加入札価格候補を電力商品32の電力取引市場に自動入札する。すなわち、戦略算出部27はユーザの使用する蓄電池の蓄電容量SSの範囲で取引時に収入が増加するように、複数の電力商品32に対して±0となるように売り買いを行うような自動入札を行う。
【0126】
具体的には、戦略算出部27は、蓄電池を運用する需要家に対して、異なる複数の計量時間帯の各々の電力商品32の気配値MPとして、注文気配値の価格差を参照する。そして、戦略算出部27は、蓄電池の充放電により電力量の時間シフトの可能な制約範囲である蓄電容量SSの範囲で売買差益が得られるように、裁定取引のための入札を行う。
【0127】
図10は、入札電力量分の気配値MPの一例を示す図である。戦略算出部27は、入札電力量分の気配値MPを複数の電力商品32の電力取引市場の各々から取得して比較し、蓄電容量SSの範囲で売電と買電とを同じ電力量で同時に自動入札する。戦略算出部27は、下記式(3)~式(7)によって表される最適化問題の解に応じて自動入札すればよい
【0128】
【0129】
式(3)~式(7)中、pi(k)は、iによって表される電力商品32の各々の取引価格を表す。Si(k)は、iによって表される電力商品32に対する売電量を表す。ui(k)は、iによって表される電力商品32に対する売電量を表す。cは、1回の売電手数料を表す。ΔTは、電力融通時間長さを表し、電力量計量時間(30分)である。xi(k)は、融通後の蓄電池の充電状態SOC(State Of Charge)の見込みを表す。Xmaxは、SOC上限を表す。Xminは、SOC下限を表す。
【0130】
なお、戦略算出部27は、ユーザ間の取引履歴を分散台帳(ブロックチェーン)に記録してもよい。また、戦略算出部27は、暗号資産によりユーザ間の売買代金を自動精算してもよい。
【0131】
次に、本実施形態の電力取引支援装置10Bで実行する情報処理の流れの一例を説明する。
【0132】
図11は、本実施形態の電力取引支援装置10Bが実行する情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。電力取引支援装置10Bの計画算出部23(計画算出部23
1~計画算出部23
n)、執行算出部24(執行算出部24
1~執行算出部24
n)、および戦略算出部27(戦略算出部27
1~戦略算出部27
n)では、対応する電力商品32(電力商品32
1~電力商品32
n)の各々に対応する計画算出部23、執行算出部24、および戦略算出部27の群ごとに、
図11に示す情報処理が実行される。
【0133】
計画算出部23は、電力需要予測FDおよび発電量予測FGの少なくとも一方に基づいて、電力商品32に対する目標取引計画電力量TVを算出する(ステップS200)。
【0134】
計画算出部23は、計画値増減情報CSに基づいてステップS200で算出した目標取引計画電力量TVを変更する(ステップS202)。
【0135】
計画算出部23は、取引価格TPおよび気配値MPに基づいて、蓄電池の蓄電容量SSの範囲で取引時の収入が増加するように、複数の電力商品32の各々ごとに算出した目標取引計画電力量TVの一部を移し替える(ステップS204)。
【0136】
計画算出部23は、ステップS204で移し替えた後の目標取引計画電力量TVに基づいて、取引計画軌道VPを算出する(ステップS206)。
【0137】
執行算出部24は、ステップS206で算出された取引計画軌道VPと、電力商品32の約定実績電力量VBと、が近づくように、電力商品32に対する入札価格候補PBを算出する(ステップS208)。
【0138】
戦略算出部27は、電力商品32の電力取引市場における取引価格TPおよび気配値MPの少なくとも一方に基づいて、ステップS208で算出された入札価格候補PBを変更した入札価格候補PFを算出する(ステップS210)。
【0139】
戦略算出部27は、ステップS210で算出した入札価格候補PFの入札価格で対応する電力商品32の電力取引市場へ自動入札すると共に、複数の電力商品32の各々の取引市場間の取引価格TPおよび気配値MPの少なくとも一方に基づいて、ユーザの使用する蓄電池の蓄電容量SSの範囲で取引時に収入が増加するように、売電量と買電量とを同じ電力量で同時に入札するための追加入札価格候補を対応する電力商品32の電力取引市場に自動入札する(ステップS212)。そして、本ルーチンを終了する。
【0140】
以上説明したように、本実施形態では、計画算出部23は、目標取引計画電力量TVを計画値の増減に関する計画値増減情報CSに基づいて変更し、変更した目標取引計画電力量TVに基づいて取引計画軌道VPを算出する。
【0141】
このため、本実施形態の電力取引支援装置10Bは、上記実施形態の効果に加えて、ユーザである需要家の計画値増減情報CSに応じた確実性の高い電力取引の執行を支援することができる。
【0142】
また、本実施形態では、計画算出部23は、複数の電力商品32の各々の取引市場間の取引価格TPおよび気配値MPの少なくとも一方に基づいて、蓄電池の蓄電容量SSの範囲で取引時の収入が増加するように、複数の電力商品32の各々ごとに算出した目標取引計画電力量TVの一部を移し替え、移し替え後の目標取引計画電力量TVに基づいて取引計画軌道VPを算出する。
【0143】
このため、本実施形態の電力取引支援装置10Bは、上記実施形態の効果に加えて、蓄電設備を使用した収益の向上を支援することができる。また、本実施形態の電力取引支援装置10Bでは、余剰電力量が大きく取引価格の低い時間帯の電力を蓄電設備により需要が大きく取引価格の高い時間帯に時間シフトさせることができ、需給バランスの改善を図り、社会的な便益の産出を図ることができる。
【0144】
また、本実施形態では、戦略算出部27は、複数の電力商品32の各々の取引市場間の取引価格TPおよび気配値MPの少なくとも一方に基づいて、ユーザの使用する蓄電池の蓄電容量SSの範囲で取引時に収入が増加するように、売電量と買電量とを同じ電力量で同時に入札するための追加入札価格候補を対応する電力商品32の電力取引市場に自動入札する。このように、本実施形態では、戦略算出部27は、蓄電容量SSの範囲で、売電と買電を同じ電力量で同時自動入札するので、低リスクで蓄電設備による収益向上を図ることができ、電力ピークシフトに貢献することができる。
【0145】
次に、上記実施形態の電力取引支援装置10および電力取引支援装置10Bのハードウェア構成の一例を説明する。
【0146】
図12は、上記実施形態の電力取引支援装置10および電力取引支援装置10Bの一例のハードウェア構成図である。
【0147】
上記実施形態の電力取引支援装置10および電力取引支援装置10Bは、CPU(Central Processing Unit)11A、ROM(Read Only Memory)11B、RAM(Random Access Memory)11C、およびI/F11D等がバス11Eにより相互に接続されており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0148】
CPU11Aは、上記実施形態の電力取引支援装置10および電力取引支援装置10Bを制御する演算装置である。ROM11Bは、CPU11Aによる各種処理を実現するプログラム等を記憶する。ここではCPUを用いて説明しているが、電力取引支援装置10および電力取引支援装置10Bを制御する演算装置として、GPU(Graphics Processing Unit)を用いてもよい。RAM11Cは、CPU11Aによる各種処理に必要なデータを記憶する。I/F11Dは、データを送受信するためのインターフェースである。
【0149】
上記実施形態の電力取引支援装置10および電力取引支援装置10Bでは、CPU111Aが、ROM11BからプログラムをRAM11C上に読み出して実行することにより、上記各機能がコンピュータ上で実現される。
【0150】
なお、上記実施形態の電力取引支援装置10および電力取引支援装置10Bで実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、HDD(ハードディスクドライブ)に記憶されていてもよい。また、上記実施形態の電力取引支援装置10および電力取引支援装置10Bで実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、ROM11Bに予め組み込まれて提供されていてもよい。
【0151】
また、上記実施形態の電力取引支援装置10および電力取引支援装置10Bで実行される上記処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disc)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、上記実施形態の電力取引支援装置10および電力取引支援装置10Bで実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、上記実施形態の電力取引支援装置10で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0152】
なお、上記には、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0153】
10,10B…電力取引支援装置、22,23…計画算出部、24…執行算出部、26,27…戦略算出部