(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155240
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 37/28 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
D06F37/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069825
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 拓馬
【テーマコード(参考)】
3B165
【Fターム(参考)】
3B165AA11
3B165AE01
3B165AE02
3B165BA12
3B165CA01
3B165CA13
(57)【要約】
【課題】開閉する際の負荷による折れ蓋の変形を防ぐことができる洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機は、筐体と、筐体の上部を覆う折れ蓋とを備える。折れ蓋は、筐体に取り付けられた蓋後部20と、ヒンジ部22bを介して折り畳み自在に蓋後部20に取り付けられた蓋前部とを有する。蓋後部20は、筐体の上部に面する蓋体下部23の上に、蓋体上部22を重ねた構成とされ、蓋体上部22の上面に板部材21が張り付けられている。ヒンジ部22bは、蓋体上部22と一体に形成されている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体の上部を覆う折れ蓋とを備えた洗濯機であって、
前記折れ蓋は、前記筐体に取り付けられた蓋後部と、ヒンジ部を介して折り畳み自在に前記蓋後部に取り付けられた蓋前部とを有し、
前記蓋後部は、前記筐体の上部に面する蓋体下部の上に、蓋体上部を重ねた構成とされ、前記蓋体上部の上面に板部材が張り付けられており、
前記ヒンジ部は、前記蓋体上部と一体に形成されていること
を特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機であって、
前記蓋体上部は、上面から下方へ延び、前記蓋前部に面する折目側面を有し、
前記ヒンジ部は、前記折目側面に沿って設けられていること
を特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項2に記載の洗濯機であって、
前記折目側面から前記蓋前部側に突出したブリッジ部を有し、
前記ヒンジ部は、前記ブリッジ部を介して前記折目側面と繋がっていること
を特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項3に記載の洗濯機であって、
前記ヒンジ部は、前記折目側面に沿って複数設けられ、
前記ブリッジ部は、隣接する前記ヒンジ部同士の間に跨るように、前記折目側面に沿って延伸されていること
を特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項1に記載の洗濯機であって、
前記蓋体上部の上面は、粗面加工され、
前記板部材は、接着部材を介して前記蓋体上部の上面に接着されていること
を特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筐体の上部を覆う折れ蓋を備えた洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯機では、衣類や水等の飛び出しを防ぐため、洗濯槽の開口部を覆う蓋が設けられている。近年では、衣類の投入のし易さなどを考慮して、開口部が大きくなっているが、それに合わせて蓋を大きくすると開閉し辛くなるので、折り畳み可能とされた折れ蓋構造を採用した洗濯機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の洗濯機は、洗濯機本体上部に配置し、衣類投入口を形成した上面カバーと、衣類投入口を開閉自在に覆うように配設された折り畳み可能な2枚折れ蓋構造の蓋体とを備える。蓋体は、前部に設けられた前蓋体と、後部に設けられた後蓋体とから構成される。前蓋体は、上面を形成する前蓋と、下面を形成し前接着面を一体形成した前蓋当て板とから構成される。後蓋体は、上面を形成する後蓋と、下面を形成し後接着面を一体形成した後蓋当て板とから構成される。
【0005】
ところで、従来の洗濯機では、蓋体を屈曲させる軸支部が、後蓋当て板に設けられており、蓋体を折り畳む際の負荷が加わると、後蓋当て板が変形することが懸念される。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、開閉する際の負荷による折れ蓋の変形を防ぐことができる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る洗濯機は、筐体と、前記筐体の上部を覆う折れ蓋とを備えた洗濯機であって、前記折れ蓋は、前記筐体に取り付けられた蓋後部と、ヒンジ部を介して折り畳み自在に前記蓋後部に取り付けられた蓋前部とを有し、前記蓋後部は、前記筐体の上部に面する蓋体下部の上に、蓋体上部を重ねた構成とされ、前記蓋体上部の上面に板部材が張り付けられており、前記ヒンジ部は、前記蓋体上部と一体に形成されていることを特徴とする。
【0008】
本開示に係る洗濯機では、前記蓋体上部は、上面から下方へ延び、前記蓋前部に面する折目側面を有し、前記ヒンジ部は、前記折目側面に沿って設けられている構成としてもよい。
【0009】
本開示に係る洗濯機は、前記折目側面から前記蓋前部側に突出したブリッジ部を有し、前記ヒンジ部は、前記ブリッジ部を介して前記折目側面と繋がっている構成としてもよい。
【0010】
本開示に係る洗濯機では、前記ヒンジ部は、前記折目側面に沿って複数設けられ、前記ブリッジ部は、隣接する前記ヒンジ部同士の間に跨るように、前記折目側面に沿って延伸されている構成としてもよい。
【0011】
本開示に係る洗濯機では、前記蓋体上部の上面は、粗面加工され、前記板部材は、接着部材を介して前記蓋体上部の上面に接着されている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によると、蓋前部を支持するヒンジ部と一体に形成された蓋体上部に、板部材が張り付けられているので、蓋体上部の剛性、強度を確保することができる。つまり、折れ蓋を開閉する際、可動するヒンジ部の負担が大きいが、強固な板部材によって蓋体上部が補強されているので、負荷による変形を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施の形態に係る洗濯機の外観を示す斜視図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係る洗濯機の外観を示す上面図である。
【
図3】折れ蓋を閉じた状態の洗濯機を示す要部側面図である。
【
図4】折れ蓋を開けた状態の洗濯機を示す要部側面図である。
【
図11】蓋後部のヒンジ部近傍を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図12】蓋後部のヒンジ部近傍の断面を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態に係る洗濯機について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本開示の実施の形態に係る洗濯機の外観を示す斜視図であって、
図2は、本開示の実施の形態に係る洗濯機の外観を示す上面図である。
【0016】
本開示の実施の形態に係る洗濯機1は、筐体2の上面(筐体上面2a)に洗濯物を投入する投入口(図示しない)を設けた縦型洗濯機とされており、投入口を覆うように折れ蓋3が設けられている。本実施の形態において、筐体上面2aは、背面側が高く前面側が低くなるように傾斜している。
【0017】
折れ蓋3は、筐体2に取り付けられた蓋後部20と、ヒンジ部22b(後述する
図6参照)を介して折り畳み自在に蓋後部20に取り付けられた蓋前部10とで構成されている。本実施の形態において、折れ蓋3のうち、蓋後部20が7割程度の面積を占めており、蓋後部20の方が蓋前部10よりも大きい。
【0018】
折れ蓋3は、上面視において(
図2参照)、略矩形状とされているが、これに限定されず、例えば、円形状としてもよく、蓋前部10と蓋後部20とが、平坦な側面を介して分割されていればよい。
【0019】
蓋前部10には、折れ蓋3を開閉する際、ユーザの手が差し込まれる取っ手11が設けられている。取っ手11は、折れ蓋3を閉じた際に、蓋前部10の上面となる位置に設けられている。なお、以下では説明のため、蓋前部10および蓋後部20について、折れ蓋3を閉じた状態で上方に位置する側を、単に上面側と呼び、下方に位置する側を、単に下面側と呼ぶことがある。
【0020】
蓋後部20は、背面側の端部(背面側端部20a)が筐体2に軸支されており、前面側の端部(前面側端部20b)に蓋前部10が取り付けられている。次に、折れ蓋3を開閉した状態について、
図3および
図4を参照して説明する。
【0021】
図3は、折れ蓋を閉じた状態の洗濯機を示す要部側面図であって、
図4は、折れ蓋を開けた状態の洗濯機を示す要部側面図である。なお、
図3および
図4は、図面の見易さを考慮して、筐体2の上部を拡大して示し、筐体2の下部を省略している。
【0022】
折れ蓋3を開ける際、蓋後部20は、背面側端部20aを支点にして回動し、前面側端部20bが上方へ移動する(
図4参照)。この際、蓋前部10は、ヒンジ部22bを支点にして回動して折り畳まれる。開ける際に折れ蓋3を折り畳むことで、ユーザに把持される蓋前部10の高さが下がり、取っ手11が前面側に向くので、操作しやすくなる。
図4に示すように、蓋前部10は、上面が垂直となるまで回動せずに、上面の前端が斜め下方向に向いた角度で停止する。これにより、取っ手11が前方に寄った状態で蓋前部10が停止するため、ユーザが取っ手11に届きやすくなる。また、蓋前部10は、上面の前端が斜め下方向に向いた角度で停止しているので、重力によって下方に付勢された状態となり、蓋前部10が揺れ動かずに安定している。したがって、ユーザが取っ手11を掴み損なわずに、蓋前部10を確実に手前に引くことができる。
【0023】
図5は、上面側から見た折れ蓋を示す斜視図であって、
図6は、下面側から見た折れ蓋を示す平面図である。
【0024】
蓋後部20は、筐体2の上部に面する蓋体下部23の上に、蓋体上部22を重ねた構成とされ、蓋体上部22の上面に板部材21が張り付けられている。本実施の形態において、板部材21は、ガラス板とされているが、これに限定されず、金属、アクリル、および樹脂などで形成されていてもよく、容易に曲がらない程度の剛性を有する材料で形成されていればよい。
【0025】
蓋体下部23および蓋体上部22の中央部には、それぞれ開口(下部開口23aおよび上部開口22a)が設けられており、板部材21は、下部開口23aおよび上部開口22aを覆っている。板部材21が透明とされていると、折れ蓋3を閉じた状態でも、下部開口23aおよび上部開口22aを通じて、洗濯機1の内部の状況をユーザが視認することができる。なお、板部材21が非透明の場合など、洗濯機1の内部の状況を視認する必要が無い場合は、開口を設けなくてもよい。
【0026】
板部材21については、塗料などを用いて表面が着色されていてもよい。板部材21の色については、全体を同じ色にする必要はなく、前後で色が異なるようにグラデーションを付けてもよいし、光沢がある色としてもよい。また、部分的に色を異ならせて模様を付けてもよく、例えば、ドット柄として際には、ドットのサイズや密度を徐々に推移させて、グラデーションをつけてもよい。なお、板部材21の前方は、蓋前部10と同色または近似色とすることが好ましい。板部材21の後方は、前方から徐々に明度を上げるグラデーションとして奥行き感を演出してもよく、逆に、後方の明度を徐々に落とすことでコンパクト感を演出してもよい。また、明度ではなく、光沢の大小で前後の存在感を異ならせてもよい。
【0027】
【0028】
蓋前部10には、ヒンジ部22bに取り付けられる受け部12が設けられている。本実施の形態において、ヒンジ部22bは、円柱状の凸部(後述する
図11参照)を有しており、受け部12は、凸部が差し込まれる凹部を有している。なお、これに限定されず、ヒンジ部22bおよび受け部12は、両者を組み合わせることで、蓋後部20が蓋前部10を軸支する構成とされていればよい。
【0029】
【0030】
蓋体下部23には、背面側端部20aに対応する位置に、筐体軸支部23bが設けられており、筐体軸支部23bを介して、折れ蓋3が筐体2に取り付けられる。なお、
図8では、省略しているが、折れ蓋3には、筐体2に連結されるシャフトや、シャフトに巻き付けられるバネなどが設けられていてもよい。折れ蓋3は、
図3に示す閉じた状態と、
図4に示す開けた状態とのいずれかで姿勢を維持する構成とされており、中間の状態では、いずれかに推移するようにバネによって付勢される。
【0031】
【0032】
蓋体上部22は、板部材21と接着される上面(接着面22c)が粗面加工されている。板部材21は、例えば、両面テープや接着剤などの接着部材を介して接着面22cに接着される。接着面22cの外周には、リブ22dが設けられており、リブ22dは、板部材21の端部を受け止める。このように、蓋体上部22の接着面22cに粗面加工を施し、表面積を増加させることで、板部材21との接着力を向上させることができる。
【0033】
蓋体上部22には、前面側端部20bに対応する位置に、接着面22cから下方へ延び、蓋前部10に面する折目側面22eが設けられている。そして、ヒンジ部22bは、折目側面22eに沿って設けられている。従って、ヒンジ部22bは、蓋体上部22と一体に形成されている。このように、蓋前部10を支持するヒンジ部22bと一体に形成された蓋体上部22に、板部材21が張り付けられているので、蓋体上部22の剛性、強度を確保することができる。つまり、折れ蓋3を開閉する際、可動するヒンジ部22bの負担が大きいが、強固な板部材21によって蓋体上部22が補強されているので、負荷による変形を防ぐことができる。なお、蓋体上部22については、他の部材に応じて形状が決定されているので、それらと組み合わせた蓋後部20を示す
図10ないし
図12と併せて、詳細に説明する。
【0034】
図10は、蓋後部を示す斜視図であって、
図11は、蓋後部のヒンジ部近傍を拡大して示す拡大斜視図であって、
図12は、蓋後部のヒンジ部近傍の断面を拡大して示す拡大断面図である。
【0035】
図10ないし
図12に示すように、蓋体上部22と蓋体下部23とを組み合わせた状態では、折目側面22eが蓋体下部23の前面側の端部を覆っている。このように、蓋体上部22と蓋体下部23との接合部が折目側面22eによって覆われているので、折れ蓋3を折り畳む際に、ユーザから接合部を隠すことができ、美観を向上させることができる。また、折目側面22eにできるだけ近接させてヒンジ部22bを設けることで、強度が弱い部分を小さくし、より強固な構造とすることができる。また、
図12に示すように、蓋体上部22の折目側面22eの裏側は、上下に亘って蓋体下部23の前面壁に支持されている。これにより、蓋体上部22の上面(接着面22c)から折目側面22eの下方に至る領域を広く補強することができる。蓋体下部23の前面壁の下方が前方に延びてヒンジ部22bの下方を支持してもよい(
図12参照)。これにより、蓋体下部23の前面壁によってヒンジ部22bが補強される。
【0036】
蓋体上部22は、折目側面22eから蓋前部10側に突出したブリッジ部22fを有しており、ヒンジ部22bは、ブリッジ部22fを介して折目側面22eと繋がっている。また、ヒンジ部22bは、折目側面22eに沿って複数設けられており、ブリッジ部22fは、隣接するヒンジ部22b同士の間に跨るように、折目側面22eに沿って延伸されている。
【0037】
このように、ブリッジ部22fを設けて、蓋後部20の端面からヒンジ部22bを少し離間させることで、蓋前部10を可動させるための隙間を確保することができる。また、複数のヒンジ部22bを設けることで、蓋前部10と蓋後部20とを強固に連結しつつ、負荷を分散させて強度を確保することができる。さらに、折目側面22eとの間を繋ぐブリッジ部22fは、複数のヒンジ部22bに対応するように一体に形成されているので、強度を向上させることができる。蓋体下部23の前面壁の下方が前方に延びてブリッジ部22fの下方を支持してもよい(
図12参照)。これにより、蓋体下部23の前面壁によってブリッジ部22fが補強される。
【0038】
蓋体上部22と蓋体下部23とには、両者を重ねた際に、互いを係止する爪や凹部等が形成されている。なお、これに限定されず、複数の部材を組み合わせるための一般的な構造を採用してもよく、他の部材で押さえたり、ビスやネジ等で固定したりしてもよい。
【0039】
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 洗濯機
2 筐体
2a 筐体上面
3 折れ蓋
10 蓋前部
11 取っ手
12 受け部
20 蓋後部
20a 背面側端部
20b 前面側端部
21 板部材
22 蓋体上部
22a 上部開口
22b ヒンジ部
22c 接着面
22d リブ
22e 折目側面
22f ブリッジ部
23 蓋体下部
23a 下部開口
23b 筐体軸支部