(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155262
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】リバウンドスプリングユニット、懸架装置
(51)【国際特許分類】
F16F 9/58 20060101AFI20241024BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20241024BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20241024BHJP
B60G 11/14 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
F16F9/58 A
F16F9/32 N
F16F7/00 D
F16F9/32 A
B60G11/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069849
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】古野 達郎
【テーマコード(参考)】
3D301
3J066
3J069
【Fターム(参考)】
3D301DA08
3D301DA22
3D301DA24
3D301DA33
3D301DA51
3D301DA53
3D301DA84
3D301DA85
3J066AA07
3J066BA01
3J066BB01
3J066BC01
3J066BD01
3J066BE01
3J069AA54
3J069CC05
3J069CC15
3J069CC18
3J069DD26
(57)【要約】
【課題】衝撃音を低減させることができる技術を提供する。
【解決手段】リバウンドスプリングユニット100は、ロッドを摺動可能に支持するロッドガイド部とロッドに固定された固定部材との間に配置されたスプリング105と、スプリング105とロッドガイド部との間に配置されたリバウンドラバー130と、スプリング105におけるリバウンドラバー130側の端部を保持するとともに、リバウンドラバー130とロッドとの隙間と外部とを連通する溝127が形成された保持部材120と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドを摺動可能に支持するロッドガイド部と前記ロッドに固定された固定部材との間に配置されたスプリングと、
前記スプリングと前記ロッドガイド部との間に配置されたリバウンドラバーと、
前記スプリングにおける前記リバウンドラバー側の端部を保持するとともに、前記リバウンドラバーと前記ロッドとの隙間と外部とを連通する連通路が形成された保持部材と、
を備えるリバウンドスプリングユニット。
【請求項2】
前記リバウンドラバーのばね定数は前記スプリングのばね定数よりも大きい
請求項1に記載のリバウンドスプリングユニット。
【請求項3】
前記保持部材は、円環状部と、前記円環状部から前記ロッドガイド部側に突出した突出部とを有し、
前記リバウンドラバーは、前記突出部と嵌り合う、
請求項1に記載のリバウンドスプリングユニット。
【請求項4】
前記保持部材の前記突出部は、前記円環状部における内側の部位から円筒状に突出し、
前記リバウンドラバーは、円筒状であるとともに前記突出部の外側に配置され、
前記連通路は、前記突出部の外周面及び前記円環状部における前記リバウンドラバー側の面に形成された溝にて構成されている、
請求項3に記載のリバウンドスプリングユニット。
【請求項5】
前記保持部材の前記突出部は、周方向に複数設けられ、
前記リバウンドラバーは、円筒状であるとともに、前記保持部材側の面から前記ロッドガイド部側に凹み前記突出部が嵌り込む複数の凹部が形成され、
前記連通路は、前記保持部材の円環状部に形成された軸方向に交差する方向の貫通孔にて構成されている、
請求項3に記載のリバウンドスプリングユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のリバウンドスプリングユニットを有する緩衝装置と、
前記緩衝装置の周囲に配置されたコイルスプリングと、
を備える懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバウンドスプリングユニット及び懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の油圧緩衝器のリバウンドスプリング機構においては、ピストンロッドおよびシリンダ間において、ピストンロッドに固定したリバウンドシートとシリンダに固定したロッドガイドの間にリバウンドスプリングが介装されている。また、リバウンドスプリングの一端を保持するスプリングホルダとリバウンドシートとの間にリバウンドラバーが介装されている。リバウンドラバーは、ピストンロッドがシリンダに対し伸長方向にストロークした場合に、スプリングホルダとリバウンドシートとが接触して音を発することを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のリバウンドスプリング機構においては、リバウンドラバーは、ピストンロッドがシリンダに対し伸長方向にストロークした場合に、スプリングホルダとリバウンドシートとが接触して発する衝撃音を抑制する。しかしながら、ホイールサイズの大型化によるバネ下重量の増加等により音の低減が更に求められている。
本発明は、衝撃音を低減させることができるリバウンドスプリングユニット等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、ロッドを摺動可能に支持するロッドガイド部と前記ロッドに固定された固定部材との間に配置されたスプリングと、前記スプリングと前記ロッドガイド部との間に配置されたリバウンドラバーと、前記スプリングにおける前記リバウンドラバー側の端部を保持するとともに、前記リバウンドラバーと前記ロッドとの隙間と外部とを連通する連通路が形成された保持部材と、を備えるリバウンドスプリングユニットである。
ここで、前記リバウンドラバーのばね定数は前記スプリングのばね定数よりも大きくても良い。
また、前記保持部材は、円環状部と、前記円環状部から前記ロッドガイド部側に突出した突出部とを有し、前記リバウンドラバーは、前記突出部と嵌り合っても良い。
また、前記保持部材の前記突出部は、前記円環状部における内側の部位から円筒状に突出し、前記リバウンドラバーは、円筒状であるとともに前記突出部の外側に配置され、前記連通路は、前記突出部の外周面及び前記円環状部における前記リバウンドラバー側の面に形成された溝にて構成されていても良い。
また、前記保持部材の前記突出部は、周方向に複数設けられ、前記リバウンドラバーは、円筒状であるとともに、前記保持部材側の面から前記ロッドガイド部側に凹み前記突出部が嵌り込む複数の凹部が形成され、前記連通路は、前記保持部材の円環状部に形成された軸方向に交差する方向の貫通孔にて構成されていても良い。
他の観点から捉えると、本発明は、上述したリバウンドスプリングユニットを有する緩衝装置と、前記緩衝装置の周囲に配置されたコイルスプリングと、を備える懸架装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、衝撃音を低減させることができるリバウンドスプリングユニット等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る懸架装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るスプリングユニットの概略構成の一例を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るスプリングユニットの断面の一例を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るリバウンドラバーが縮むときの状態の一例を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係るスプリングユニットの断面の一例を示す図である。
【
図6】第2実施形態に係る保持部材、リバウンドラバーの斜視図の一例である。
【
図7】第2実施形態に係るリバウンドラバーが縮むときの状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る懸架装置1の概略構成の一例を示す図である。
図2は、第1実施形態に係るスプリングユニット100の概略構成の一例を示す図である。
図3は、第1実施形態に係るスプリングユニット100の断面の一例を示す図である。
懸架装置1は、乗用自動車等の四輪車に用いられるサスペンションであり、
図1に示すように、油圧式の緩衝装置2と、緩衝装置2の外側に配置されたコイルスプリング3とを備える。また、懸架装置1は、コイルスプリング3における、後述するロッド20の軸方向の第1側(
図1では下側)の端部を支持する下スプリングシート4と、コイルスプリング3における、ロッド20の軸方向の第2側(
図1では上側)の端部を支持する上スプリングシート5とを備える。
【0009】
また、懸架装置1は、懸架装置1を車両に取り付けるための車体側ブラケット6と、懸架装置1を車輪に取り付けるための車輪側ブラケット7と、シリンダ部10及びロッド20の少なくとも一部を覆うダストカバー8とを備える。
以下では、ロッド20の軸方向を、単に「軸方向」と称する場合がある。また、軸方向の第1側(
図1では下側)、軸方向の第2側(
図1では上側)を、それぞれ、単に「第1側」、「第2側」と称する場合がある。また、軸方向に交差する方向(例えば、直交方向)を、「半径方向」と称する。半径方向において、シリンダ11の中心線側を単に「内側」と称し、中心線から離れる側を単に「外側」と称する場合がある。
【0010】
以下、緩衝装置2について詳述する。
緩衝装置2は、オイルを収容するシリンダ部10と、第2側の端部がシリンダ部10から突出して設けられるとともに第1側の端部がシリンダ部10内に挿入されるロッド20とを備える。また、緩衝装置2は、ロッド20の第1側の端部に設けられるピストン部30と、シリンダ部10の第1側の端部に設けられるボトム部40とを備える。また、緩衝装置2は、ロッド20が伸びる際に衝撃を緩和するリバウンドスプリングユニット(以下、「スプリングユニット」と称する場合がある。)100を備える。
【0011】
シリンダ部10は、オイルを収容するシリンダ11と、シリンダ11の外側に設けられる外筒体12とを有する。また、シリンダ部10は、ロッド20を移動可能に支持するロッドガイド部60と、外筒体12における第2側の端部に装着されたバンプストッパキャップ15と、シリンダ部10内のオイルの漏れやシリンダ部10内への異物の混入を防ぐオイルシール16とを備える。
そして、シリンダ部10は、シリンダ11の外周面と外筒体12の内周面とで、リザーバ室Rを形成している。
【0012】
ロッド20は、軸方向に長く延びる棒状の部材である。ロッド20は、第1側にピストン部30を保持する。また、ロッド20は、第2側にて車体側ブラケット6を介して例えば車体に連結される。
また、ロッド20は、ロッド20に固定された固定部材25を有する。固定部材25は、ロッド20の周囲を覆う円筒状部26と、円筒状部26の第2側に設けられた円板状部27とを有する。円板状部27における第2側の面は平坦な面である。固定部材25は鉄にて成形されており、ロッド20に溶接等にて固定されている。
【0013】
ピストン部30は、ピストン31と、ピストン31に形成された複数の油路の内の一部の油路における第1側の端部を塞ぐバルブ群32と、ピストン31に形成された一部の油路における第2側の端部を塞ぐバルブ群33と、を備えている。
ピストン31は、その外周面に設けられたシール部材を介してシリンダ11の内周面に接触し、シリンダ11内のオイルが封入された空間を、ピストン31よりも第1側の第1油室Y1と、ピストン31よりも第2側の第2油室Y2とに区画する。
【0014】
ボトム部40は、
図1に示すように、軸方向に貫通する複数の油路を有するバルブボディ41と、バルブボディ41の第1側に設けられるバルブ42と、バルブボディ41の第2側に設けられるバルブ43とを備える。
ボトム部40のバルブボディ41は、第1油室Y1とリザーバ室Rとを区画する。
【0015】
ロッドガイド部60は、内側に配置された薄肉円筒状のガイド61と、ガイド61を内側に保持するガイドケース70とを備えている。
ガイド61は、ガイドケース70よりも耐摩耗性に優れた材質にて成形されている。
【0016】
ガイドケース70は、内側に設けられた円筒状の内側円筒状部71と、内側円筒状部71の外側に設けられた円筒状の外側円筒状部72とを有している。内側円筒状部71と外側円筒状部72とは、内側円筒状部71における第2側の部位の外周面と、外側円筒状部72における第1側の部位の内周面とが連続するように一体的に成形されている。
【0017】
内側円筒状部71の内側にガイド61が嵌め込まれている。内側円筒状部71の外径はシリンダ11の内径よりも小さく成形されており、シリンダ11の内側に配置される。
外側円筒状部72は、シリンダ11の第2側において、ロッド20と外筒体12との間に配置されている。外側円筒状部72の外径は、外筒体12の第2側の端部の内径よりも小さい。
【0018】
〔スプリングユニット100〕
スプリングユニット100は、ロッド20の周囲に配置されるスプリング105と、スプリング105における第1側の端部に配置されてロッド20及びシリンダ11に対して摺動可能な摺動部材110とを備える。また、スプリングユニット100は、スプリング105における第2側の端部に配置されてスプリング105を保持する保持部材120と、保持部材120とロッドガイド部60との間に配置されたリバウンドラバー130とを備える。摺動部材110、保持部材120は、金属、又は、樹脂にて成形され、リバウンドラバー130は、ゴムにて成形されていることを例示することができる。
【0019】
(スプリング105)
スプリング105は、コイルスプリングであり、第1側の端部に形成された座巻部である第1座巻部106と、第2側の端部に形成された座巻部である第2座巻部107と、第1座巻部106と第2座巻部107との間に設けられて伸縮する伸縮部108とを有する。
【0020】
(摺動部材110)
摺動部材110は、ロッド20を通すための貫通孔が中央部に形成された円板状の円板状部111と、円筒状の円筒状部112とを有している。
摺動部材110の内周面の径はロッド20の外周面の径よりも大きい。ゆえに、摺動部材110は、ロッド20に対して移動可能である。
【0021】
円板状部111は、外周面の径が、スプリング105の外径よりも大きい。
円筒状部112の外周面の径はスプリング105の内径よりも大きく、円筒状部112はスプリング105の内側に圧入されている。摺動部材110は、円板状部111における第2側の面がスプリング105の第1側の端部に接触するまで、円筒状部112がスプリング105の内側に挿入されている。円筒状部112の軸方向の長さはスプリング105の第1座巻部106の長さよりも大きい。このようにして、摺動部材110は、スプリング105の第1側の端部を保持する。
【0022】
(保持部材120)
保持部材120は、第1側に設けられた円筒状の第1円筒状部121と、第2側に設けられた円筒状の第2円筒状部122と、第1円筒状部121と第2円筒状部122とを接続する円板状の円板状部123とを有している。第1円筒状部121、第2円筒状部122及び円板状部123の内径は等しく、軸方向の全域に亘って同径の内周面124を形成している。内周面124の径は、ロッド20の外周面の径、及び、ロッドガイド部60のガイド61の内周面の径よりも大きく、ガイドケース70の内側円筒状部71の内周面の径よりも小さい。
【0023】
第1円筒状部121の外周面である第1外周面125の径は、スプリング105の内径よりも大きく、第1円筒状部121はスプリング105の内側に圧入されている。
第2円筒状部122の外周面である第2外周面126の径は、リバウンドラバー130の後述する内周面132の径よりも大きく、円板状部123の外周面の径よりも小さい。
円板状部123の外周面の径は、スプリング105の外径よりも大きく、シリンダ11の内周面の径よりも小さい。
【0024】
保持部材120におけるリバウンドラバー130と対向する部位には、表面から凹んだ溝127が周方向に等間隔に複数(例えば4つ)形成されている。溝127は、第2円筒状部122の第2外周面126から内側に凹んだ軸方向溝128と、円板状部123の第2側の面から第1側に凹んだ半径方向溝129とから構成される。溝127は、後述する環状空間135と保持部材120の外部とを連通する連通路として機能する。複数の溝127における開口面積の合計は、ロッドガイド部60のガイド61の内周面とロッド20の外周面との隙間の面積、及び、保持部材120の内周面124とロッド20の外周面との隙間の面積よりも大きい。
【0025】
以上のように構成された保持部材120は、円板状部123における第1側の面がスプリング105の第2側の端部に接触するまで、第1円筒状部121がスプリング105の内側に挿入されている。第1円筒状部121の軸方向の長さはスプリング105の第2座巻部107の長さよりも大きい。このようにして、保持部材120は、スプリング105の第2側の端部を保持する。
【0026】
(リバウンドラバー130)
リバウンドラバー130は、円筒状であるとともに、第1側及び第2側の端部における内側及び外側の部位に面取りが形成されている。
リバウンドラバー130の外周面131の径は、保持部材120の円板状部123の外周面の径以上である。リバウンドラバー130の内周面132の径は、保持部材120の第2円筒状部122の第2外周面126の径よりも小さく、リバウンドラバー130は、保持部材120の第2円筒状部122の外側に嵌め込まれている。そして、リバウンドラバー130の内周面132とロッド20の外周面との間に環状空間135が形成される。
以上のように構成されたリバウンドラバー130のばね定数はスプリング105のばね定数よりも大きいため、リバウンドラバー130は、スプリング105よりも変形し難い。
【0027】
(スプリングユニット100の作用)
ロッド20のシリンダ部10からの突出量が多くなると、
図3に示すように、摺動部材110が固定部材25に接触するとともに、リバウンドラバー130がロッドガイド部60に接触する。そして、さらにロッド20のシリンダ部10からの突出量が多くなると、スプリング105が縮む。そして、スプリング105が最も縮んだ状態となった後にリバウンドラバー130が縮む。このように、スプリング105が縮むこと、及び、リバウンドラバー130が縮むことにより、例えば、車両が走行している路面に凹みがありロッド20の突出量が急に多くなった場合の衝撃を吸収する。
【0028】
図4は、第1実施形態に係るリバウンドラバー130が縮むときの状態の一例を示す図である。
リバウンドラバー130が縮むとき、環状空間135内のオイルは、
図4に矢印で示すように溝127を通って保持部材120の外部に流出する。そして、これにより、減衰力が生じる。それゆえ、スプリングユニット100は、スプリング105及びリバウンドラバー130が縮むことに加えて、オイルが溝127を通るときに生じる減衰力により伸長時の衝撃を吸収する。その結果、スプリングユニット100は、伸長時の衝撃音を抑制することができる。
【0029】
また、スプリングユニット100においては、リバウンドラバー130が保持部材120よりも第2側に配置されている。それゆえ、仮に、高速伸長時にリバウンドラバー130が変形してシリンダ11の内周面に接触するまで膨らんだとしても、環状空間135内のオイルは、保持部材120の内周面124とロッド20の外周面との間の隙間を介して保持部材120の外部に流出可能である。その結果、リバウンドラバー130が変形することに起因してオイルロックが生じることが抑制される。
【0030】
以上、説明したように、スプリングユニット100は、ロッド20を摺動可能に支持するロッドガイド部60とロッド20に固定された固定部材25との間に配置されたスプリング105と、スプリング105とロッドガイド部60との間に配置されたリバウンドラバー130とを備える。また、スプリングユニット100は、スプリング105におけるリバウンドラバー130側の端部を保持するとともに、リバウンドラバー130とロッド20との間の環状空間135(隙間の一例)と外部とを連通する溝127(連通路の一例)が形成された保持部材120を備える。
【0031】
以上のように構成されたスプリングユニット100は、伸長時に、スプリング105及びリバウンドラバー130が縮むことに加えて、オイルが溝127を通るときに生じる減衰力により伸長時の衝撃を吸収するので、衝撃音を低減させることができる。
【0032】
また、リバウンドラバー130のばね定数はスプリング105のばね定数よりも大きい。その結果、伸長時に、スプリング105が縮んだ後にリバウンドラバー130を縮ませることができるので、確度高く、環状空間135内のオイルが溝127を通るようにすることができる。
【0033】
また、保持部材120は、円環状部の一例としての円板状部123と、円板状部123からロッドガイド部60側に突出した突出部の一例としての第2円筒状部122とを有し、リバウンドラバー130は、第2円筒状部122と嵌り合う。それゆえ、保持部材120は、リバウンドラバー130を確度高く保持することができる。
【0034】
また、保持部材120の第2円筒状部122は、円板状部123における内側の部位から円筒状に突出し、リバウンドラバー130は、第2円筒状部122の外側に配置され、溝127は、第2円筒状部122の外周面及び円板状部123におけるリバウンドラバー130側の面に形成されている。
【0035】
それゆえ、第2円筒状部122よりも第2側に環状空間135を形成することができるので、環状空間135の容積を大きくすることができる。その結果、オイルが溝127を通るときに生じる減衰力を大きくすることができる。また、溝127が保持部材120の外表面に形成された凹部にて構成されているので、例えば、貫通孔にて構成される場合と比べて簡易に溝127を形成することができる。また、溝127の大きさを変更することでオイルが溝127を通るときに生じる減衰力の大きさを簡易に調整することができる。
【0036】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係るスプリングユニット200の断面の一例を示す図である。
図6は、第2実施形態に係る保持部材220、リバウンドラバー230の斜視図の一例である。
第2実施形態に係るスプリングユニット200は、第1実施形態に係るスプリングユニット100に対して、保持部材120、リバウンドラバー130それぞれに相当する保持部材220、リバウンドラバー230が異なる。以下、第1実施形態と異なる点について説明する。第1実施形態と第2実施形態とで、同じものについては同じ符号を用い、その詳細な説明は省略する。
【0037】
(保持部材220)
保持部材220は、第1円筒状部121と、第1円筒状部121よりも第2側に設けられた円筒状の第2円筒状部222と、第2円筒状部222における第2側の端面から第2側に突出した突出部223とを有している。第1円筒状部121及び第2円筒状部222の内径は等しく、軸方向の全域に亘って同径の内周面224を形成している。内周面224の径は、ロッド20の外周面の径、及び、ロッドガイド部60のガイド61の内周面の径よりも大きく、ガイドケース70の内側円筒状部71の内周面の径よりも小さい。
【0038】
第2円筒状部222の外周面の径は、スプリング105の外径よりも大きく、シリンダ11の内周面の径よりも小さい。第2円筒状部222には、第2側の端部における内側の部位から第1側の端部における外側の部位の方へ延びる貫通孔227が形成されている。貫通孔227は、周方向に等間隔に複数(例えば4つ)形成されている。貫通孔227は、後述する環状空間235と保持部材220の外部とを連通する連通路として機能する。複数の貫通孔227における開口面積の合計は、ロッドガイド部60のガイド61の内周面とロッド20の外周面との隙間の面積、及び、保持部材220の内周面224とロッド20の外周面との隙間の面積よりも大きい。
【0039】
突出部223は、周方向に等間隔に複数(例えば4つ)設けられている。突出部223は、概略直方体状である。ただし、突出部223における軸方向に平行な面にて切断した断面形状は、先端部の大きさが基端部の大きさよりも小さい台形である。また、突出部223における周方向の形状も、先端部の大きさが基端部の大きさよりも小さい台形である。突出部223は、第2円筒状部222の第2側の端面における半径方向の中央部に設けられている。
【0040】
(リバウンドラバー230)
リバウンドラバー230は、円筒状であるとともに、第1側及び第2側の端部における内側及び外側の部位に面取りが形成されている。
リバウンドラバー230の外周面の径は、保持部材220の第2円筒状部222の外周面の径以上である。リバウンドラバー230の内周面232の径は、保持部材220の内周面224の径よりも大きい。また、リバウンドラバー230の内周面232は、突出部223よりも内側に形成されている。そして、リバウンドラバー230の内周面232とロッド20の外周面との間に環状空間235が形成される。
【0041】
リバウンドラバー230には、第1側の端面から第2側に凹んだ凹部233が形成されている。凹部233は、保持部材220の突出部223が嵌り込む部位であり、周方向に等間隔に突出部223と同数形成されている。凹部233は、概略直方体状である。ただし、凹部233における軸方向に平行な面にて切断した断面形状は、奥(第2側の部位)の大きさが手前(第1側の部位)の大きさよりも小さい台形である。また、凹部233における周方向の形状も、奥の大きさが手前の大きさよりも小さい台形である。
以上のように構成されたリバウンドラバー230のばね定数はスプリング105のばね定数よりも大きいため、リバウンドラバー230は、スプリング105よりも変形し難い。
【0042】
(スプリングユニット200の作用)
図7は、第2実施形態に係るリバウンドラバー230が縮むときの状態の一例を示す図である。
スプリングユニット200においても、スプリング105が縮むこと、及び、リバウンドラバー230が縮むことにより、例えば、車両が走行している路面に凹みがありロッド20の突出量が急に多くなった場合の衝撃を吸収する。
また、リバウンドラバー230が縮むとき、環状空間235内のオイルは、貫通孔227を通って保持部材220の外部に流出する。そして、これにより、減衰力が生じる。それゆえ、スプリングユニット200は、スプリング105及びリバウンドラバー230が縮むことに加えて、オイルが貫通孔227を通るときに生じる減衰力により伸長時の衝撃を吸収する。その結果、スプリングユニット200は、伸長時の衝撃音を抑制することができる。
【0043】
また、スプリングユニット200においては、リバウンドラバー230が保持部材220よりも第2側に配置されている。また、保持部材220の貫通孔227は、リバウンドラバー230と離れた位置に形成されている。それゆえ、仮に、高速伸長時にリバウンドラバー230が変形してシリンダ11の内周面に接触するまで膨らんだとしても、環状空間235内のオイルは、貫通孔227や、保持部材220の内周面224とロッド20の外周面との間の隙間を介して保持部材220の外部に流出可能である。その結果、リバウンドラバー230が変形することに起因してオイルロックが生じることが抑制される。
【0044】
以上、説明したように、スプリングユニット200は、ロッド20を摺動可能に支持するロッドガイド部60とロッド20に固定された固定部材25との間に配置されたスプリング105と、スプリング105とロッドガイド部60との間に配置されたリバウンドラバー230とを備える。また、スプリングユニット200は、スプリング105におけるリバウンドラバー230側の端部を保持するとともに、リバウンドラバー230とロッド20との間の環状空間235(隙間の一例)と外部とを連通する貫通孔227(連通路の一例)が形成された保持部材220を備える。
【0045】
以上のように構成されたスプリングユニット200によれば、伸長時に、スプリング105及びリバウンドラバー230が縮むことに加えて、オイルが貫通孔227を通るときに生じる減衰力により伸長時の衝撃を吸収するので、衝撃音を低減させることができる。
【0046】
また、リバウンドラバー230のばね定数はスプリング105のばね定数よりも大きい。その結果、伸長時に、スプリング105が縮んだ後にリバウンドラバー230を縮ませることができるので、確度高く、環状空間235内のオイルが貫通孔227を通るようにすることができる。
【0047】
また、保持部材220は、円環状部の一例としての第2円筒状部222と、第2円筒状部222からロッドガイド部60側に突出した突出部223を有し、リバウンドラバー230は、突出部223と嵌り合う。それゆえ、保持部材220は、リバウンドラバー230を確度高く保持することができる。
【0048】
また、保持部材220の突出部223は、周方向に複数設けられ、リバウンドラバー230は、円筒状であるとともに、保持部材220側の面からロッドガイド部60側に凹み突出部223が嵌り込む複数の凹部233が形成され、貫通孔227は、保持部材220の第2円筒状部222に形成された軸方向に交差する方向の貫通孔である。
【0049】
保持部材220の複数の突出部223とリバウンドラバー230の複数の凹部233とが嵌り合う構成であるので、リバウンドラバー230における半径方向の大きさを大きくすることができ、リバウンドラバー230の体積を大きくすることができる。それゆえ、リバウンドラバー230の縮み量を多くすることができるので、伸長時の衝撃吸収量を増加させることができ、衝撃音を低減させることができる。
【0050】
また、保持部材220の第2円筒状部222に形成された貫通孔227を介して環状空間235と保持部材220の外部とを連通するので、確度高く環状空間235内のオイルが貫通孔227を通る。その結果、確度高く減衰力を生じさせることができる。なお、貫通孔227の大きさを変更することでオイルが貫通孔227を通るときに生じる減衰力の大きさを簡易に調整することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…懸架装置、2…緩衝装置、3…コイルスプリング、10…シリンダ部、11…シリンダ、20…ロッド、25…固定部材、60…ロッドガイド部、100,200…リバウンドスプリングユニット、105…スプリング、110…摺動部材、120,220…保持部材、122,222…第2円筒状部、123…円板状部、127…溝、130,230…リバウンドラバー、135,235…環状空間、223…突出部、227…貫通孔、233…凹部