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特開2024-155267サルコペニア予防及び/又は治療用医薬組成物、サルコペニア予防及び/又は治療剤、並びにサルコペニアの予防及び/又は治療方法
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  • 特開-サルコペニア予防及び/又は治療用医薬組成物、サルコペニア予防及び/又は治療剤、並びにサルコペニアの予防及び/又は治療方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155267
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】サルコペニア予防及び/又は治療用医薬組成物、サルコペニア予防及び/又は治療剤、並びにサルコペニアの予防及び/又は治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4418 20060101AFI20241024BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
A61K31/4418
A61P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069858
(22)【出願日】2023-04-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業」「インクレチンシグナルを調節するサルコペニア治療薬の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(71)【出願人】
【識別番号】523151780
【氏名又は名称】山田 祐一郎
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000125381
【氏名又は名称】学校法人藤田学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 侑也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】矢部 大介
(72)【発明者】
【氏名】清野 祐介
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】IMATの蓄積を阻害し、サルコペニアの予防及び/又は治療に臨床応用できる医薬組成物及び剤を提供する。
【解決手段】サルコペニア予防及び/又は治療用医薬組成物が、式(I)で表される化合物又はその医薬上許容される塩である化合物を有効成分とし、Wは窒素原子又はCRを、Rは、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基を意味し、Zは特定の官能基である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物、又はその医薬上許容される塩である化合物を有効成分とし、
Wは窒素原子又はCRを、Rは、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基を意味し、Zは、下記一般式(V1)、下記一般式(V2)、又は下記一般式(Y1)で表される基であり、
【化1】

【化2】

Aは置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4~8のシクロアルキルメチル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルファニル基、置換されていてもよいフェニルスルファニル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルフィニル基、置換されていてもよいフェニルスルフィニル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアロイル基、又は置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基を意味し、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、COOR、CONR、又は置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基を意味し、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換されていてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、又は-(CH)n-NR10を意味するか、或いはRとRと付け根の窒素原子と共に又は更に他の窒素原子若しくは酸素原子と共に形成する5~6員の複素環を意味し、nは1~3の整数を意味し、R、R10は、RとR10と付け根の窒素原子と共に又は更に他の窒素原子若しくは酸素原子と共に形成する5~6員の複素環を意味する、サルコペニア予防及び/又は治療用医薬組成物。
【請求項2】
下記式(I)で表される化合物、又はその医薬上許容される塩である化合物を有効成分とし、
Wは窒素原子又はCRを、Rは、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基を意味し、Zは、下記一般式(V1)、下記一般式(V2)、又は下記一般式(Y1)で表される基であり、
【化3】

【化4】

Aは置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4~8のシクロアルキルメチル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルファニル基、置換されていてもよいフェニルスルファニル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルフィニル基、置換されていてもよいフェニルスルフィニル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアロイル基、又は置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基を意味し、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、COOR、CONR、又は置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基を意味し、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換されていてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、又は-(CH)n-NR10を意味するか、或いはRとRと付け根の窒素原子と共に又は更に他の窒素原子若しくは酸素原子と共に形成する5~6員の複素環を意味し、nは1~3の整数を意味し、R、R10は、RとR10と付け根の窒素原子と共に又は更に他の窒素原子若しくは酸素原子と共に形成する5~6員の複素環を意味する、サルコペニア予防及び/又は治療剤。
【請求項3】
請求項1に記載された医薬組成物、又は請求項2に記載された剤において、前記一般式(I)で表される化合物、又はその医薬上許容される塩である化合物が、下記一般式(II)で表される化合物又はその医薬上許容される塩であり、
【化5】

Wは前記一般式(I)と同義であり、Vは前記一般式(V1)又は前記一般式(V2)で表される基を意味する、医薬組成物又は剤。
【請求項4】
請求項3に記載された医薬組成物又は剤において、前記一般式(II)中のVが下記一般式(V3)又は下記一般式(V4)で表され、
【化6】

当該一般式(V3)及び(V1)のすべての記号は、前記一般式(V1)及び前記一般式(V2)の記号と同義である、医薬組成物又は剤。
【請求項5】
請求項4に記載された医薬組成物又は剤において、前記一般式(V3)及び一般式(V4)のAは置換されていてもよいフェニル基である、医薬組成物又は剤。
【請求項6】
請求項5に記載された医薬組成物又は剤において、前記一般式(II)中のWはCRであり、Rはハロゲン原子又はシアノ基である、医薬組成物又は剤。
【請求項7】
請求項5に記載された医薬組成物又は剤において、前記一般式(II)中のVが一般式(V3)であり、Rが水素原子、置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基である、医薬組成物又は剤。
【請求項8】
請求項1に記載された医薬組成物、又は請求項2に記載された剤において、前記一般式(I)で表される化合物、又はその医薬上許容される塩である化合物が、下記一般式(III)で表される化合物又はその医薬上許容される塩であり、
【化7】




当該一般式(III)中のWは前記一般式(I)中のWと同義であり、Yは前記一般式(Y1)で表される基を意味する、医薬組成物又は剤。
【請求項9】
請求項8に記載された医薬組成物又は剤において、前記一般式(I)中のYが下記一般式(Y2)で表される基であり、
【化8】

当該一般式(Y2)中のすべての記号が前記一般式(Y1)中の記号と同義である、医薬組成物又は剤。
【請求項10】
請求項9に記載された医薬組成物又は剤において、前記一般式(Y2)中のR及びRはともに水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基である、医薬組成物又は剤。
【請求項11】
請求項10に記載された医薬組成物又は剤において、Rは置換されていてもよいフェニルスルホニル基である、医薬組成物又は剤。
【請求項12】
請求項10に記載された医薬組成物又は剤において、前記R及びRはメチル基である、医薬組成物又は剤。
【請求項13】
請求項11に記載された医薬組成物又は剤において、前記一般式(III)中のWはCRであり、Rはハロゲン原子又はシアノ基である、医薬組成物又は剤。
【請求項14】
サルコペニアの予防及び/又は治療方法であって、対象に請求項1に記載された医薬組成物、又は請求項2に記載された剤を投与する工程を含む、サルコペニアの予防及び/又は治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サルコペニア予防及び/又は治療用医薬組成物、サルコペニア予防及び/又は治療剤、並びにサルコペニアの予防及び/又は治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サルコペニアは加齢による骨格筋量の減少と、筋力あるいは身体機能の低下と定義される。サルコペニアの病態形成の一つの原因は筋線維間脂肪(IMAT)であり、IMATの増加の制御によるサルコペニアの予防及び/又は治療の可能性が近年指摘されている。
【0003】
一方、特許文献1には、消化管ホルモンの1種であるGastric inhibitory polypeptide又はGlucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)とGIP受容体の結合を阻害する特定の化合物の、肥満、インスリン抵抗性、又は肝臓への脂質蓄積の予防又は改善剤への応用が開示されている。前記化合物が、in vitroでGIPとGIP受容体の結合を阻害することは確認された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/148004号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている前記化合物がIMATの蓄積を阻害し、サルコペニアの予防及び/又は治療に臨床応用できるか、in vivoで確認されていなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、IMATの蓄積を阻害し、サルコペニアの予防及び/又は治療に臨床応用できる医薬組成物及び剤を提供することである。さらに本発明が解決しようとする別の課題は、IMATの蓄積が阻害されるサルコペニアの予防及び/又は治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み検討を重ね、特許文献1に開示されている前記化合物がIMATの蓄積を阻害し、サルコペニアの予防及び/又は治療に臨床応用できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0008】
本発明は、下記一般式(I)で表される化合物、又はその医薬上許容される塩である化合物を有効成分とし、Wは窒素原子又はCRを、Rは、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基を意味し、Zは、下記一般式(V1)、下記一般式(V2)、又は下記一般式(Y1)で表される基であり、
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】
Aは置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4~8のシクロアルキルメチル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルファニル基、置換されていてもよいフェニルスルファニル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルフィニル基、置換されていてもよいフェニルスルフィニル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアロイル基、又は置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基を意味し、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、COOR、CONR、又は置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基を意味し、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換されていてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、又は-(CH)n-NR10を意味するか、或いはRとRと付け根の窒素原子と共に又は更に他の窒素原子若しくは酸素原子と共に形成する5~6員の複素環を意味し、nは1~3の整数を意味し、R、R10は、RとR10と付け根の窒素原子と共に又は更に他の窒素原子若しくは酸素原子と共に形成する5~6員の複素環を意味する、サルコペニア予防及び/又は治療用医薬組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、下記一般式(I)で表される化合物、又はその医薬上許容される塩である化合物を有効成分とし、Wは窒素原子又はCRを、Rは、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基を意味し、Zは、下記一般式(V1)、下記一般式(V2)、又は下記一般式(Y1)で表される基であり、
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
Aは置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4~8のシクロアルキルメチル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルファニル基、置換されていてもよいフェニルスルファニル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルフィニル基、置換されていてもよいフェニルスルフィニル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアロイル基、又は置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基を意味し、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、COOR、CONR、又は置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基を意味し、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換されていてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、又は-(CH)n-NR10を意味するか、或いはRとRと付け根の窒素原子と共に又は更に他の窒素原子若しくは酸素原子と共に形成する5~6員の複素環を意味し、nは1~3の整数を意味し、R、R10は、RとR10と付け根の窒素原子と共に又は更に他の窒素原子若しくは酸素原子と共に形成する5~6員の複素環を意味する、サルコペニア予防及び/又は治療剤に関する。
【0016】
前記一般式(I)で表される化合物、又はその医薬上許容される塩である化合物は、好ましくは、下記一般式(II)で表される化合物又はその医薬上許容される塩であり、Wは前記一般式(I)と同義であり、Vは前記一般式(V1)又は前記一般式(V2)で表される基を意味する。
【0017】
【化5】
【0018】
より好ましくは、前記一般式(II)中のVが下記一般式(V3)又は下記一般式(V4)で表され、当該一般式(V3)及び(V1)のすべての記号は、前記一般式(V1)及び前記一般式(V2)の記号と同義である。
【0019】
【化6】
【0020】
更に好ましくは、前記一般式(V3)及び一般式(V4)のAは置換されていてもよいフェニル基である。
【0021】
特に好ましくは、前記一般式(II)中のWはCRであり、Rはハロゲン原子又はシアノ基である。特に好ましくは、前記一般式(II)中のVが一般式(V3)であり、Rが水素原子、置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基である。
【0022】
前記一般式(I)で表される化合物、又はその医薬上許容される塩である化合物が、下記一般式(III)で表される化合物又はその医薬上許容される塩であってもよい。
【0023】
【化7】
【0024】
前記一般式(III)中のWは前記一般式(I)中のWと同義であり、Yは前記一般式(Y1)で表される基を意味する。
【0025】
好ましくは前記一般式(I)中のYは下記一般式(Y2)で表される基であり、当該一般式(Y2)中のすべての記号が前記一般式(Y1)中の記号と同義である。
【0026】
【化8】
【0027】
より好ましくは前記一般式(Y2)中のR及びRはともに水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基である。
【0028】
更に好ましくは、Rは置換されていてもよいフェニルスルホニル基であり、前記R及びRはメチル基である。特に好ましくは、前記一般式(III)中のWはCRであり、Rはハロゲン原子又はシアノ基である。
【0029】
さらに本発明は、対象に前記医薬組成物、又は剤を投与する工程を含む、サルコペニアの予防及び/又は治療方法に関する。
【発明の効果】
【0030】
本発明のサルコペニア予防及び/又は治療用医薬組成物は、IMATの蓄積を阻害し、サルコペニアの予防及び/又は治療に臨床応用できる医薬組成物である。本発明のサルコペニア予防及び/又は治療剤は、IMATの蓄積を阻害し、サルコペニアの予防及び/又は治療に臨床応用できる剤である。本発明のサルコペニアの予防及び/又は治療方法は、IMATの蓄積を阻害し、サルコペニアの予防及び/又は治療に臨床応用できる方法である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】野生型マウスの筋組織を傷害してIMATを誘導し、GIPR拮抗薬を含む、ないし当該拮抗薬を含まない餌を与えて飼育した際のIMAT領域の測定結果を示す図。
図2】GIP受容体拮抗薬群でIMAT形成が抑制される理由(推定)を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明について更に詳細に説明する。
なお、数値範囲の「~」は、断りがなければ、以上から以下を表し、両端の数値をいずれも含む。また、数値範囲を示したときは、上限値および下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示したものとする。
【0033】
本発明のサルコペニア予防及び/又は治療用医薬組成物、並びにサルコペニア予防及び/又は治療剤は、下記一般式(I)で表される化合物、又はその医薬上許容される塩である化合物を有効成分とする。
なお、下記一般式(I)で表される化合物は特許文献1に開示されており、本願明細書中で使用される用語は、特許文献1に開示されている用語と同義である。
【0034】
【化9】


【0035】
上記一般式(1)において、Wは窒素原子又はCRを、Rは、ハロゲン原子、シアノ基、又はニトロ基を意味し、Zは、下記一般式(V1)、下記一般式(V2)、又は下記一般式(Y1)で表される基である。
【0036】
【化10】
【0037】
上記一般式(V1)、(V2)、及び一般式(Y1)において、Aは置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換されていてもよい炭素数4~8のシクロアルキルメチル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルファニル基、置換されていてもよいフェニルスルファニル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルフィニル基、置換されていてもよいフェニルスルフィニル基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキルスルホニル基、置換されていてもよいフェニルスルホニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアロイル基、又は置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基を意味し、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、COOR、CONR、又は置換されていてもよいアリール基を意味し、Rは、水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基を意味し、R、Rは、それぞれ独立して水素原子、置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換されていてもよい炭素数3~7のシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、又は-(CH)n-NR10を意味するか、或いはRとRと付け根の窒素原子と共に又は更に他の窒素原子若しくは酸素原子と共に形成する5~6員の複素環を意味し、nは1~3の整数を意味し、R、R10は、RとR10と付け根の窒素原子と共に又は更に他の窒素原子若しくは酸素原子と共に形成する5~6員の複素環を意味する。
【0038】
前記一般式(I)で表される化合物、又はその医薬上許容される塩である化合物は、好ましくは下記一般式(II)で表される化合物又はその医薬上許容される塩である。
【0039】
【化11】
【0040】
前記一般式(II)中、Wは前記一般式(I)と同義であり、Vは前記一般式(V1)又は前記一般式(V2)で表される基を意味する。
【0041】
前記一般式(II)中のVは、より好ましくは下記一般式(V3)又は下記一般式(V4)で表され、当該一般式(V3)及び(V1)のすべての記号は、前記一般式(V1)及び前記一般式(V2)の記号と同義である。
【0042】
【化12】
【0043】
前記一般式(V3)及び一般式(V4)のAは、より好ましくは置換されていてもよいフェニル基である。
【0044】
更に好ましくは前記一般式(II)中のWはCRであり、Rはハロゲン原子又はシアノ基であり、前記一般式(II)中のVが一般式(V3)であり、Rが水素原子、置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基である。
【0045】
前記一般式(I)で表される化合物、又はその医薬上許容される塩である化合物は、好ましくは下記一般式(III)で表される化合物又はその医薬上許容される塩であってもよい。
【0046】
【化13】
【0047】
前記一般式(III)中のWは前記一般式(I)中のWと同義であり、Yは前記一般式(Y1)で表される基を意味する。
【0048】
前記一般式(I)中のYは、より好ましくは下記一般式(Y2)で表される基であり、当該一般式(Y2)中のすべての記号が前記一般式(Y1)中の記号と同義である。
【0049】
【化14】
【0050】
前記一般式(Y2)中のR及びRは、更に好ましくは共に水素原子又は置換されていてもよい炭素数1~3のアルキル基である。
【0051】
特に好ましくは、Rは置換されていてもよいフェニルスルホニル基であり、前記R及びRはメチル基である。
【0052】
最も好ましくは前記一般式(III)中のWはCRであり、Rはハロゲン原子又はシアノ基である。
【0053】
<組成物及び剤の形態及び形状>
本発明の組成物及び剤の形態及び形状は限定されない。すなわち、粉末状、固体状、ゲル化剤によりゲル化されたゲル状体、ないし油脂又は溶媒に溶解している液状体であってもよい。
さらに本発明の組成物及び剤は、適当な添加物、製剤的素材等と共に、例えば、医薬品、飲食品、食品添加物、サプリメント、動物飼料の等の形態に調製してもよい。
【0054】
典型的に、医薬品の形態としては、例えば注射剤、散剤、顆粒剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル錠、速崩錠、シロップ等の形態が挙げられる。
【0055】
本発明の組成物及び剤の投与量は、サルコペニアに起因する疾患又は障害を持つ被投与者又は被投与動物の年齢、健康状態、投与継続期間、投与頻度などによって、適宜決定することができる。一般的な投与量を例示すれば、例えば、前記一般式(I)で表される化合物として1,700~2,800mg/Kg(体重)/日、好ましくは2,000~2,500mg/Kg(体重)/日である。
【0056】
本発明の組成物及び剤は、所定期間にわたって継続的に摂取するように用いられてもよく、例えば1ヶ月以上にわたって継続的に摂取するように用いられることも可能である。
【0057】
本発明の組成物及び剤に含まれる、前記一般式(I)で表される化合物は、特に限定されないが、1日当たりに無理なく摂取できる量で、前記一般式(I)で表される化合物が上記有効投与量となるように調整された含有量であることが好ましい。例えば、本発明の組成物又は剤中の固形分換算で、前記一般式(I)で表される化合物の含有量は20~60質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましい。
【0058】
<サルコペニアの予防及び/又は治療方法>
本発明のサルコペニアの予防及び/又は治療方法は、対象に前記医薬組成物又は剤を投与する工程を含む。前記対象から人が除かれていてもよい。
【0059】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の前記一般式(I)で表される化合物の使用を開示する。
前記一般式(I)で表される化合物の使用において、前記医薬組成物又は剤の製造のための使用。
【実施例0060】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
実施例及びにおいて、IMAT領域は以下のとおりに算出された。
安楽死したマウスから前脛骨筋を摘出し、当該前脛骨筋を急速凍結した。前記前脛骨筋の起始側(膝側)から約2.5mmの部位で、10μm厚の切片を薄切した。次いでペリリピンに対する免疫染色を筋切片について行った。キーエンス社のBZ-9000の4倍レンズで観察し、撮影した。キーエンス社のBZ-II analyzer software version 2.2を用いて、撮影した画像の解析を行った。IMAT領域はペリリピン陽性細胞から構成されるため、ペリリピン染色領域で囲まれた範囲をIMAT領域として識別した。IMAT領域を筋切片全体の面積で除して、IMAT領域の面積の割合を算出した。
【0062】
実施例1
12週齢の野生型マウス12匹(各マウスの体重は約24g/匹)のそれぞれの前脛骨筋に50%(v/v)グリセロール50μlを筋肉注射し、筋組織を傷害してIMATを誘導した。その後特許文献1の[化32]で示される化合物として下記式(1)で示される化合物(GIPR拮抗薬)0.133質量%を含むhigh fat dietを14日間自由に食べさせた(前記high fat dietの摂取量は約3g/匹/日)。前記筋肉注射から14日後、前記12匹のマウスの前脛骨筋のIMAT領域を測定した。結果を図1(A)及び(B)に示す。なお、図1(A)及び(B)において、「GIPR拮抗薬+」は前記化合物を与えられたことを意味し、図1(A)の右側の写真は、前記12匹の1匹のマウスのIMAT領域を示す。
【0063】
【化15】
【0064】
比較例1
餌として前記式(1)で示される化合物を含まないhigh fat dietのみを与えたこと以外、実施例1と同様にして12匹のマウスの前脛骨筋のIMAT領域を測定した。結果を図1(A)及び(B)に示す。なお、図1(A)及び(B)において、「GIPR拮抗薬-」は前記化合物を与えられなかったことを意味し、図1(A)の左側の写真は、high fat dietのみを与えられた前記12匹の1匹のマウスのIMAT領域を示す。
【0065】
実施例1及び比較例1の結果から、GIP受容体拮抗薬群で有意にIMAT形成が抑制されることが、in vivoで確認された。
【0066】
GIP受容体拮抗薬群で有意にIMAT形成が抑制される理由は、以下の通りであると推認される。
食事の刺激により小腸からGIPが分泌され、これがFAPのGIP受容体に働き、成熟脂肪細胞への分化が促進され、IMATの増加につながる。FAPから分泌されるWISP1は筋分化促進因子である。FAPの脂肪細胞への分化が、筋分化促進因子の分泌を低下させる。結果的に、衛星細胞から線維へ段階的に分化する経路が減弱し、筋量の減少につながり、IMATの増加と筋量の減少によりサルコペニアの病態が形成される(図2)。
図1
図2