(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155271
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】トーチノズル
(51)【国際特許分類】
B23K 9/013 20060101AFI20241024BHJP
B23K 9/29 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B23K9/013 C
B23K9/29 B
B23K9/29 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069867
(22)【出願日】2023-04-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】523151850
【氏名又は名称】神野 太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100225967
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】神野 太郎
【テーマコード(参考)】
4E001
【Fターム(参考)】
4E001AA02
4E001CA03
4E001LD20
4E001LE06
4E001LE09
4E001LH06
(57)【要約】
【課題】 既存のTIG溶接装置を有効活用すべく、母材への斫りを繰り返せば、母材を溶断することが可能なトーチノズルを提供すること。
【解決手段】 トーチノズル1の母材側端部には、略U字状の吐出溝14が形成され、受給口13から受給した特定ガスは、略U字状の吐出溝14から吐出される。このため、例えば溶融池の表面径が所定の大きさになったときに、作業者がリモコンを操作すれば、溶融池に対して特定ガスが吐出される。その結果、特定ガスの吐出によって、溶融池の溶融母材が母材上を移動する。溶融母材が母材上を移動する際には、溶融母材との温度差が大きいため、母材上で凝固することがあっても溶着することはない。従って、アーク放電によって母材を溶融しつつ、発生した溶融池の溶融母材を特定ガスによって移動させる作業、すなわち母材への斫り作業を繰り返せば、最終的には母材を溶断することができることとなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材との間でアーク放電を行うタングステン電極を収容するとともに、シールドガスを吐出する略円筒のトーチノズルであって、
前記トーチノズルには、特定ガスを受給する受給口が設けられ、
前記受給口から受給した特定ガスを前記略円筒の母材側端部から吐出するトーチノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のトーチノズルにおいて、
前記トーチノズルの略円筒を構成する略円筒壁の内部には、前記受給口から前記母材側端部まで連通する連通管が設けられているトーチノズル。
【請求項3】
請求項2に記載のトーチノズルにおいて、
前記連通管は、タングステン電極を収容する収容部の縮径に沿うように傾斜しているトーチノズル。
【請求項4】
請求項3に記載のトーチノズルにおいて、
前記母材側端部には、略U字状の吐出溝が形成されているトーチノズル。
【請求項5】
請求項4に記載のトーチノズルにおいて、
前記吐出溝は、溶接の進行方向の後端側に設けられているトーチノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TIG(Tungsten Inert Gas:タングステン不活性ガス)溶接に用いられるトーチノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なステンレス材の切断方法としては、刃物による切断(例えばグラインダ、セイバーソー、ハンドソーなど)や溶断(例えばプラズマ切断機など)が挙げられる。これらの切断方法のうち、作業効率を考慮すれば、プラズマ切断が優位と考えられるものの、ステンレス材の肉厚が厚くなる程、急激に切断速度が低下することや、切断時にスラグ(ドロス)が飛散することや、多量のヒューム(粉塵)が発生することなどのデメリットも存在する。
【0003】
こうしたデメリットを解消すべく、スラグの飛散及び粉塵の発生を抑制することが可能な切断方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、溶接において、主に溶接部の裏斫り(突合せ溶接で、開先の底部の溶込み不良部分又は第一層部分などを裏面から斫り取ること)に用いられる方法の一つとしては、エアアークガウジングがある。エアアークガウジングでは、エアアークガウジング用トーチに炭素電極を取り付けて電極と母材間にアークを発生させて母材を溶融させるとともに、圧縮空気を吹き付けて溶融母材を吹き飛ばすことによって溝掘りを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、例えばステンレス平板を切断する場合には、アーク放電によって発生した溶融池の溶融母材を移動させることは困難である。また、円筒形状の配管であっても、水平に設置された配管の頂点付近では平板を切断する場合と同様にアーク放電によって発生した溶融池の溶融母材を移動させることは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、既存のTIG溶接装置を有効活用すべく、母材への斫りを繰り返せば、母材を溶断することが可能なトーチノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
母材との間でアーク放電を行うタングステン電極を収容するとともに、シールドガスを吐出する略円筒のトーチノズルであって、前記トーチノズルには、特定ガスを受給する受給口が設けられ、前記受給口から受給した特定ガスを前記略円筒の母材側端部から吐出する構成とした。
【0008】
このように構成すれば、アーク放電によって母材を溶融しつつ、発生した溶融池の表面径が所定の大きさになったときに、特定ガスを吐出すれば、溶融池の溶融母材が母材上を移動する。溶融母材が母材上を移動する際には、溶融池の溶融母材と母材との温度差が大きいため、母材上で凝固することがあっても溶着することはない。このように溶融池の溶融母材を特定ガスによって移動させる作業、すなわち母材への斫り作業を繰り返せば、最終的には母材を溶断することができることとなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、既存のTIG溶接装置を有効活用すべく、母材への斫りを繰り返せば、母材を溶断することが可能なトーチノズルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図8】母材を斫った後の様子を示す説明図及び断面図。
【
図9】厚みがある母材を斫るときの様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、トーチノズルを示す斜視図である。同図に示すように、トーチノズル1は、リン青銅からなる略円筒の形状に形成されている。そして、トーチノズル1には、母材との間でアーク放電を行うタングステン電極11を収容する収容部12が形成されており、タングステン電極11を収容するとともに、シールドガスをタングステン電極11と収容部12との隙間から吐出する。トーチノズル1の上部には、特定ガスを受給する受給口13が設けられている。
【0012】
また、トーチノズル1の母材側端部には、略U字状の吐出溝14が形成されている。この吐出溝14は、トーチノズル1の進行方向の後端側に形成されている。受給口13から受給した特定ガスは、略U字状の吐出溝14から吐出される。
【0013】
図2は、トーチノズル1の母材側端部から見た側面図である。同図に示すように、吐出溝14の内部には、奥へと延びる3本の連通管15が透設されている。
図3は、トーチノズル1の平面図である。同図に示すように、3本の連通管15は、トーチノズル1を構成する略円筒壁の内部に設けられている。そして、3本の連通管15は、受給口13と母材側端部に形成された吐出溝14との間を連通している。このため、受給口13から受給した特定ガスは、3本の連通管15を介して母材側端部の吐出溝14から吐出される。
【0014】
図4は、トーチノズル1の右側面図である。同図に示すように、タングステン電極11(図示略)を収容する収容部12は、シールドガスの吐出方法に向かって縮径されている。このため、シールドガスが整流されてアークに対するシールド効果が向上する。連通管15は、トーチノズル1の母材側端部に延伸する程、収容部12に向かって傾斜している。すなわち、連通管15は、収容部12の縮径に沿うようにトーチノズル1の中心軸(同図に示す一点鎖線)に対して傾斜している。つまり、連通管15は、トーチノズル1の長手方向に対して傾斜している。そして、受給口13から受給した特定ガスは、連通管15を介して吐出溝14から吐出される。その結果、アーク放電に対して斜め方向から特定ガスが吐出されることとなる。
【0015】
図5は、TIG溶接の構成を示す説明図である。同図に示すように、ガスボンベ21には、シールガスとしてアルゴンガスが充填されている。ガスボンベ21から供給されるアルゴンガスは、圧力調整器22と流量計23とを介して溶接電源24に接続されている。圧力調整器22は、ガスボンベ21,28に充填されているアルゴンガスのガス圧を調整する。流量計23は、ガスボンベ21,28から供給されるアルゴンガスの流量を計測する。溶接電源24は、TIG溶接に必要な電力を供給している。
【0016】
溶接電源24には、シールガスや特定ガスの吐出などを制御するリモコン25が接続されている。また、溶接電源24には、母材26に対してTIG溶接を行うトーチ27が接続されている。このトーチ27の先端部には、トーチノズル1が着脱可能に取り付けられている。トーチ27には、溶接電源24を経由したシールガスとしてアルゴンガスが供給されている。
【0017】
ガスボンベ28には、特定ガスとしてアルゴンガスが充填されている。ガスボンベ28から供給されるアルゴンガスは、圧力調整器22、流量計23及び電磁弁29を介してトーチノズル1に供給されている。リモコン25を操作すると、電磁弁29の開閉が行われ、特定ガスがトーチノズル1の吐出溝14から吐出される。
【0018】
このように構成されたTIG溶接の構成において、母材を斫る場合を説明する。
図6は、母材を斫るときの様子を示す第一説明図である。
図6(a)に示すように、トーチ27を斜めにしながら、アーク放電によって母材26の温度が上昇すると、母材26が溶融して、やがて溶融池31(同図に示す二重斜線)が発生する。
【0019】
そして、例えば溶融池31の表面径が所定の大きさになったときに、作業者がリモコン25を操作すれば、溶融池31に対して特定ガスが吐出される。すなわち、トーチノズル1の母材側端部に形成された吐出溝14から特定ガスが吐出される。その結果、
図6(b)に示すように、特定ガスの吐出によって、溶融池31の溶融母材32が母材26上を移動する。このとき、特定ガスの吐出力とアーク熱による急激な膨張で生じる膨張力とが相俟って、溶融母材32が母材26上を移動する。溶融母材32が母材26上を移動する際には、溶融母材32と母材26との温度差が大きいため、母材26上で凝固することがあっても溶着することはない。こうして溶融母材32が溶融池31から移動すると、その後には溶融溝33が形成される。
【0020】
図7は、母材を斫るときの様子を示す第二説明図である。
図7(a)に示すように、トーチ27を矢印で示す進行方向に移動する。移動先で母材26の温度が上昇すると、母材26が溶融して、やがて溶融池31(同図に示す二重斜線)が発生する。例えば溶融池31の表面径が所定の大きさになったときに、作業者がリモコン25を操作すれば、特定ガスが吐出される。すると、
図7(b)に示すように、溶融池31の溶融母材32が母材26上を移動する。このとき、溶融母材32と母材26との温度差が大きいため、母材26上で凝固することがあっても溶着することはない。こうして溶融母材32が溶融池31から移動すると、その後には溶融溝33が形成される。
【0021】
図8(a)は、母材を斫った後の様子を示す説明図である。
図8(b)は、
図8(a)のA-A線で示す部分の断面図である。
図8(a)及び(b)に示すように、トーチ27を矢印で示す進行方向に移動させながら、溶融池31の溶融母材32を移動させる作業を繰り返せば、進行方向に長い溶融溝33が形成される。
【0022】
図9は、厚みがある母材を斫るときの様子を示す説明図である。同図に示すように、厚みがある母材26を溶融する場合には、同図(a)に示すように、トーチ27を斜めにしながら、発生した溶融池31の溶融母材32を移動させる作業を進行方向に沿って1度行えば、所定の深さの溶融溝33が形成される。
【0023】
その後、同図(b)~(d)に示すように、先の作業で形成された溶融溝33に対して再度同じ作業を繰り返す。すなわち、同じ位置で母材26を溶融させて再度溶融池31を発生させる。そして、発生した溶融母材32を移動させる。このとき、溶融溝33がシールガスの効果を高める。つまり溶融溝33がアーク放電を安定的に維持するとともに、酸化を防止することができる。この作業を繰り返せば、厚みがある母材26であっても、徐々に溶融溝33が深く形成され、最終的には母材26を溶断することができる。
【0024】
以上、本実施形態によれば、次のような作用、効果を得ることができる。
(1)トーチノズル1の母材側端部には、略U字状の吐出溝14が形成され、受給口13から受給した特定ガスは、略U字状の吐出溝14から吐出される。このため、例えば溶融池31の表面径が所定の大きさになったときに、作業者がリモコン25を操作すれば、溶融池31に対して特定ガスが吐出される。その結果、特定ガスの吐出によって、溶融池31の溶融母材32が母材26上を移動する。このとき、特定ガスの吐出力とアーク熱による急激な膨張で生じる膨張力とが相俟って、溶融母材32が母材26上を移動する。溶融母材32が母材26上を移動する際には、溶融母材32と母材26との温度差が大きいため、母材26上で凝固することがあっても溶着することはない。従って、アーク放電によって母材26を溶融しつつ、発生した溶融池31の溶融母材32を特定ガスによって移動させる作業、すなわち母材26への斫り作業を繰り返せば、最終的には母材26を溶断することができることとなる。
【0025】
(2)アーク放電による溶融池31の発生と、特定ガスの吐出による溶融池31の溶融母材32の移動とが繰り返されて、溶融溝33が形成される。このとき、母材26に対しては、アーク放電による加熱と、特定ガスの吐出による一瞬の冷却とが交互に繰り返される。このため、母材26の熱膨張が抑制され、溶融溝33内の凹凸が軽減される。従って、表面が滑らかなで、ほぼ直線基調の溶融溝33が形成されることとなる。
【0026】
(3)3本の連通管15は、受給口13と母材側端部に形成された吐出溝14とを連通している。このため、受給口13から受給した特定ガスは、3本の連通管15を介して母材側端部の吐出溝14から吐出される。このため、特定ガスを吐出しても、特定ガスが周りの空気を巻き込むことを極力抑制することができ、シールドガスの効果を弱めることはない。従って、シールドガスの効果を維持することができる。
【0027】
(4)しかも、吐出溝14は、トーチノズル1の母材側端部において略U字状に形成されている。このため、溶融池31の溶融母材32の全体を包み込むように、つまり溶融母材32を一塊として母材26上を移動させることができる。加えて、吐出溝14が略U字状に形成されていることから、シールドガスに影響を及ぼす可能性は極めて低い。よって、TIG溶接機能を活用しつつ、母材26への斫り作業や母材26の溶断を行うことができる。
【0028】
(5)連通管15は、収容部12の縮径に沿うようにトーチノズル1の中心軸に対して傾斜している。つまり、連通管15は、トーチノズル1の長手方向に対して傾斜している。このため、受給口13から受給した特定ガスは、連通管15を介して吐出溝14から吐出される。その結果、アーク放電に対して斜め方向から特定ガスが吐出される。従って、溶融池31の溶融母材32は、母材26上を移動されることとなる。
【0029】
(6)連通管15は、3本で構成されている。このため、受給口13から受給した特定ガスが、受給口13付近で留まることなく、3本の連通管15を介して吐出溝14から吐出される。従って、特定ガスは確実に吐出溝14から吐出されることとなる。
【0030】
(7)トーチノズル1に対して受給口13から特定ガスを受給しない場合には、トーチノズル1は通常のTIG溶接機能を有する。一方、特定ガスを吐出溝14から吐出する場合には、母材26への斫り作業を繰り返すことによって母材26を溶断することができる。従って、トーチノズル1は、TIG溶接機能、斫り機能及び溶断機能を備えている。よって、トーチノズル1によれば、TIG溶接した後、再度溶接部を取り外すことができるため、エアアークガウジング装置を用意する必要はない。また、その際不活性ガスを用いているので、母材26の表面の酸化や窒化を防止できる。その結果、酸化部分や窒化部分を削除する必要もなく、直ちに再溶接することができる。
【0031】
(8)例えば母材26として、僅かなクラックが入った鉄素材を補修する場合において、通常はグラインダなどでクラックの周辺を切削したときには、クラックに鉄くずが入り込んで、クラックの深さを把握するのが困難なこともある。しかし、トーチノズル1を用いて母材26の鉄を溶融し、特定ガスで溶融した鉄を移動させる方法を採用すれば、溶融した鉄の表面張力により、クラックに溶融した鉄が入り込むことはなく、確実にクラックの周辺を取り除くことができる。つまり、トーチノズル1を用いてクラックの周辺を斫り取ることができる。
【0032】
(9)例えば溶融池31の表面径が所定の大きさになったときに、作業者がリモコン25を操作している。これは、溶融池31の表面径がほぼ溶融池31の深さと同じになるという発明者の経験則に基づいている。このため、溶融池31の表面径が大きくなる程、溶融池31を深く形成させることができる。従って、作業中の溶融池31の表面径に基づいて、溶融池31の深さ、ひいては溶融溝33の深さを予め把握することができる。
【0033】
なお、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・トーチノズル1の材質としては、セラミック、真鍮、アルミナ(酸化アルミニウム)であっても良い。
・特定ガスとしては、酸素を微量に含む不活性ガスであっても良い。例えば、アルゴン98%と酸素2%とから構成される特定ガスであっても良い。このように酸素を微量に含む特定ガスによれば、母材が酸化して溶融温度が低下するため、母材が溶けやすくなる。また、溶融母材32の粘性が低くくなるため、溶融母材32を流れやすくすることができる。
【0034】
・シールドガスとしては、水素ガスを微量に含む不活性ガスであっても良い。例えば、アルゴン97%と水素3%とから構成されるシールドガスであっても良い。このように水素ガスを微量に含むシールドガスによれば、アーク熱が母材26に伝わり易くなり、溶融池31の大きさや深さが増える。その結果、TIG溶接や母材26の溶融を素早く行うことができる。
【0035】
・作業者が特定ガスを吐出溝14から吐出させるためのリモコン25をトーチ27に設けた構成であっても良い。このように構成すれば、作業者はトーチ27を把持した状態のままで、特定ガスを吐出させるタイミングを容易に操作できる。
【0036】
・温度センサや赤外線センサなどによって溶融池31の温度が所定温度に達したときに、特定ガスを吐出溝14から吐出させる構成としても良い。このように構成すれば、作業者が特定ガスを吐出溝14から吐出させるためのリモコンを操作する必要はなく、特定ガスを吐出させるためのリモコンを省略することができる。
【0037】
・1つのガスボンベからシールドガスと特定ガスとに分岐する構成としても良い。すなわち、特定ガスとして、シールドガスと同様の不活性ガスを採用すれば、カスボンベ21からシールドガスと特定ガスとに分岐する構成で良いため、別途特定ガスを用意する必要がなく、その構成が簡便となる。
・吐出溝14は、略V字状に形成しても良い。
・吐出溝14は、複数の小径で全体として略U字状または略V字状に形成しても良い。
【0038】
上記実施形態より把握される技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
〔1〕請求項1から請求項5に記載のトーチノズルにおいて、
前記受給口から特定ガスを受給しない場合には、通常のTIG溶接のトーチノズルとして機能するトーチノズル。
このように構成すれば、TIG溶接機能、斫り機能及び溶断機能を備えたトーチノズルを提供することができる。
【0039】
〔2〕請求項1から請求項5または前記〔1〕に記載のトーチノズルを備えたTIG溶接装置。
このように構成すれば、TIG溶接機能、斫り機能及び溶断機能を備えたTIG溶接装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…トーチノズル、11…タングステン電極、13…受給口、14…吐出溝、15…連通管、26…母材。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材との間でアーク放電を行うタングステン電極を収容する収容部を有し、前記タングステン電極と前記収容部との隙間からシールドガスを吐出する略円筒のトーチノズルであって、
前記トーチノズルには、前記シールドガスとは役割が異なり、溶融母材を移動させる役割の特定ガスを受給する受給口が設けられ、
前記略円筒の母材側端部には、吐出溝が形成され、
前記特定ガスを前記吐出溝から吐出するトーチノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のトーチノズルにおいて、
前記トーチノズルの略円筒を構成する略円筒壁の内部には、前記特定ガスを前記受給口から前記吐出溝まで連通する連通管が設けられているトーチノズル。
【請求項3】
請求項2に記載のトーチノズルにおいて、
前記連通管は、タングステン電極を収容する収容部の縮径に沿うように傾斜しているトーチノズル。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
母材との間でアーク放電を行うタングステン電極を収容する収容部を有し、前記タングステン電極と前記収容部との隙間からシールドガスを吐出する略円筒のトーチノズルであって、
前記トーチノズルには、前記シールドガスとは役割が異なり、溶融母材を移動させる役割の特定ガスを受給する受給口が設けられ、前記略円筒の母材側端部には、吐出溝が形成され、前記特定ガスを前記吐出溝から吐出する構成とした。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
1…トーチノズル、11…タングステン電極、12…収容部、13…受給口、14…吐出溝、15…連通管、26…母材。