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特開2024-155278模擬血管付き注射トレーニング用器具および模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング用器具
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  • 特開-模擬血管付き注射トレーニング用器具および模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング用器具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155278
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】模擬血管付き注射トレーニング用器具および模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング用器具
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/24 20060101AFI20241024BHJP
   G09B 23/28 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G09B19/24 Z
G09B23/28
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069882
(22)【出願日】2023-04-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】515007475
【氏名又は名称】株式会社ナースあい
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】多田 真寿美
(72)【発明者】
【氏名】早川 絵美子
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA06
(57)【要約】
【課題】 高齢者の血管の特性まで再現でき、実際の血管のように二股や三股に分岐した模擬血管を造形できる模擬血管付き注射トレーニング用器具を提供する。
【解決手段】
人体の対象箇所のベースとなる立体形状を再現した立体形状物200と、柔軟性があり対象箇所に存在する血管の血管壁の厚みに相当する厚みを備え、立体形状物200の上に貼付する柔軟性シート100を備える。柔軟性シート100の貼付面において、少なくとも複数個の接着領域111と、接着領域同士111の間に非接触領域121が設けられており、立体形状物200への貼付において、隣接し合う接着領域同士121の貼付間隔を狭めた間隔とし、非接触領域111を立体形状物200には当接させずに浮かせて盛り上げて模擬血管110を再現する。模擬血管付き注射トレーニング器具300は注射トレーニング機器、医療用カテーテルの挿管トレーニング機器に用いることができる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体または動物の対象箇所のベースとなる立体形状を再現した立体形状物と、
柔軟性があり、前記対象箇所に存在する血管の血管壁の厚みに相当する厚みを備え、前記立体形状物の上に貼付する柔軟性シートを備え、
前記立体形状物に対向する前記柔軟性シートの貼付面において、少なくとも複数個の接着領域と、前記接着領域同士の間に非接触領域が設けられており、
前記柔軟性シートの前記立体形状物への貼付状態において、隣接し合う前記接着領域同士の貼付間隔を狭めた間隔とし、前記非接触領域を前記立体形状物には当接させずに浮かせて盛り上げて模擬血管を再現して注射のトレーニングを行うことを特徴とする模擬血管付き注射トレーニング用器具。
【請求項2】
前記立体形状物が、対象とする年齢層および性別で平均的な前記対象箇所の立体形状であり、
前記柔軟性シートの前記厚みが、対象とする前記年齢層および前記性別の前記人体の前記血管壁の平均的な厚みであり、
前記模擬血管の形状が、対象とする前記年齢層および前記性別の前記人体の前記対象箇所に見られる平均的な血管の形状であることを特徴とする請求項1に記載の模擬血管付き注射トレーニング用器具。
【請求項3】
前記年齢層が前期高齢者または後期高齢者であり、前記柔軟性シートの厚みが、前期高齢者または後期高齢者の前記血管壁の平均的な厚みであり、前記模擬血管において隣接し合う前記接着領域同士の前記貼付間隔の狭めを大きくし、前記非接触領域の盛り上げを大きくしたとすることを特徴とする請求項1に記載の模擬血管付き注射トレーニング用器具。
【請求項4】
前記対象箇所が、肘から手首にかけた前腕部の一部であり、
前記立体形状物が、上面が水平面であり、
前記柔軟性シートの前記接触領域が、前記立体形状物の前記上面の前記水平面に貼付されたものである請求項1に記載の模擬血管付き注射トレーニング用器具。
【請求項5】
前記立体形状物が、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせで形成されたものであり、
前記柔軟性シートが、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせで形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の模擬血管付き注射トレーニング用器具。
【請求項6】
シート状の模擬皮膚シートを備え、
前記模擬血管が形成された前記柔軟性シートの上に前記模擬皮膚シートを被覆せしめたことを特徴とする請求項1に記載の模擬血管付き注射トレーニング用器具。
【請求項7】
請求項1に記載の前記模擬血管付き注射トレーニング器具を、医療用カテーテル挿管のトレーニング用に適用した模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具であって、
前記立体形状物が、特定患者の特定箇所の立体形状であり、
前記立体形状物が、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせで形成されたものであり、
前記特定箇所が、医療用カテーテルを挿入する治療箇所であり、
前記柔軟性シートが、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせで形成されたものであり、
前記模擬血管の形状が、前記特定患者の前記医療用カテーテルを挿入する治療箇所における前記血管の形状を模擬したものであり、
前記立体形状物および前記模擬血管が、前記特定患者の前記特定箇所から取得した3次元データを基に形成したものであり、前記医療用カテーテル挿管をトレーニングすることを特徴とする模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具。
【請求項8】
前記特定箇所が、前記特定患者の心臓の全体または一部であり、
前記立体形状物が、前記特定患者の心臓の全体または一部の形状であり、
前記模擬血管の形状が、前記特定患者の前記心臓の前記冠動脈と前記冠静脈と前記大心静脈と前記中心静脈の少なくともいずれかを含む前記血管の形状であることを特徴とする請求項7に記載の模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具。
【請求項9】
前記柔軟性シートの前記厚みと硬さが、前記特定患者の前記特定箇所の前記血管の前記血管壁の厚みと硬さ相当のものであることを特徴とする請求項7に記載の模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈や静脈へ穿刺する際の手技を練習する注射トレーニング器具に用いることができる模擬血管付き注射トレーニング用器具に関する。特に、人体や動物を用いた練習に近い注射を再現でき、研修医、看護実習者に対して、実際の注射器を用いた注射を練習せしめる注射トレーニング器具に関する。
また、本発明は、人体や動物の臓器の表面を走る血管内に医療用カテーテルを挿管したり引き抜いたりする際の手技をシミュレーションするモデルに用いることができる模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング用器具に関する。特に、特定患者の特定箇所、例えば、当該患者の心臓の治療箇所となる冠動脈などの血管を再現した模擬心臓モデルとし、治療に当たる医師、看護師などのスタッフに対して治療前のシミュレーションに用いることができるものである。
【背景技術】
【0002】
治療過程や検査過程において、薬剤の投与または体液の採取など様々な場面において、注射器を用いて患者または被験者の体内に注射針を穿通することが多くある。注射針の穿通は患者に痛みを与えることとなるため、医師や看護師などの医療関係者にとってその技量を磨くことは重要である。この注射の技量はやはり経験の中で磨かれてゆくことが多い。もし、注射技量の習得中の者が、実際の患者や被験者を相手にするのではなくトレーニング機器により技量を研鑽できれば好都合である。
【0003】
従来技術において、効果的な注射技量の習得を行うことを目的とした注射トレーニング器具が幾つか知られている。
例えば、図10に示した特開平10-161522号公報に開示された注射練習器具が知られている。 この注射練習器具は、ケーシングをその上壁に開口窓を設け、下壁を注射部位に沿う湾曲形状となし、ケーシング内に人の皮下層を模したスポンジ体の表面にアクリル系の皮膜を溶剤接着させた弾力部材を収納させたもので、ケーシングを人体の注射予定部位に乗せるなどした後、弾力部材をつまみ上げ、注射の抵抗感を与えながら注射針を刺して注射の練習を行うようにしたものである。
【0004】
また、例えば、図11に示した特開2002-325839号公報に開示された穿通シミュレータが知られている。この穿通シミュレータは、注射針の穿通の練習の部分を抜粋して説明すれば、腕を模した腕模型と、その腕模型に設けた穿通シャントと、その穿通シャントの中を通る血管を模した循環流路を設けた構造である。練習者は穿通シャントに対して注射針を穿通してその内部にある模擬血管に差し込むことを繰り返して練習できるものである。
【0005】
また、例えば、図12に示した特開2010-243867号公報に開示された注射練習器が知られている。この注射練習器は、高弾力性層を構成する下層の高弾力シリコーンゴムシートと、その上面に接合状態に配した低弾力層を構成する上層の低弾力シリコーンゴムシートと、低弾力シリコーンゴムシート中に埋め込んだ大径の模擬血管チューブ及び小径の模擬血管チューブとからなるものである。模擬血管チューブは、高弾力シリコーンゴムシートの弾力で低弾力シリコーンゴムシート側に押され、低弾力シリコーンゴムシートの対応する外面側の部位を外面に膨出させることにより、いわゆる人間の皮膚下における血管の盛り上がりを再現せしめたものである。練習者は、低弾力シリコーンゴムシートの下にある模擬血管チューブに対して外表面側から注射針を穿通することを繰り返して手技を練習するものとなっている。
【0006】
【特許文献1】特開平10-161522号公報
【特許文献2】特開2002-325839号公報
【特許文献3】特開2010-243867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術において、医療関係者用の注射技量習得を目的とした注射トレーニング器具は、特許文献1から特許文献3に示すようなものは知られていたが、それぞれ下記に示すような問題があった。
特に、高齢者の血管は比較的皮膚下で筋肉や組織とともに血管の位置が左右に動きやすくなっており、そのような高齢者の血管の特性まで再現した注射トレーニング器具は知られていない。
また、実際の血管はいわゆる二股や三股に分かれた走り方をしている場合もあるが、従来技術における注射トレーニング器具は血管を樹脂製の管で模擬している場合が多く、実際の血管のように二股や三股に分岐した模擬血管を造形することは難しく、分岐点において2本の管の切開面同士を貼り合わせて模擬血管同士を接続するなどする必要があり、実際の血管のように二股や三股に分岐した模擬血管を造形することは事実上不可能であった。
【0008】
上記の特許文献1の特開平10-161522号公報に示した注射練習器具は、皮膚をつまんで注射をするいわゆる皮下注射の練習には使用できるものの、体内の動脈や静脈という血管に対して穿通するような血管内注射の練習ができず注射技量の習得としては不十分なものであった。また、この特許文献1の特開平10-161522号公報に示した注射練習器具は高齢者の血管の特性まで再現した注射練習器具ではない。また、特許文献1の特開平10-161522号公報に示した注射練習器具では実際の血管のように二股や三股に分岐した模擬血管を造形することは事実上不可能であった。
【0009】
次に、上記特許文献2の特開2002-325839号公報に開示された穿通シミュレータは、透析患者のように特定の穿通箇所に対応する穿通シャントが形成されたものであり、その決まった箇所の穿通シャントに対して注射針を穿通することしか練習できない。一般に血管内注射や採血などを行う場合、穿通する血管の場所、太さ、深さ、形状などが患者や被験者によって多様であり、それゆえの難しさが存在する。実際の静脈注射では皮下の血管の適切な位置を探して穿通するという技量が求められる。また、この特許文献2の特開2002-325839号公報に開示された穿通シミュレータは高齢者の血管の特性まで再現したシミュレータとはなっていない。また、特許文献2の特開2002-325839号公報に開示された穿通シミュレータでは実際の血管のように二股や三股に分岐した模擬血管を造形することは事実上不可能であった。
【0010】
次に、上記特許文献3の特開2010-243867号公報に開示された注射練習器によれば、患者や被験者の皮膚に対して所定角度で斜めに穿通しつつ皮下の血管まで穿通するという練習は可能と考えられる。
しかし、この特許文献3の特開2010-243867号公報に開示された注射練習器は高齢者の血管の特性まで再現した注射練習器具ではない。また、この特許文献3の特開2010-243867号公報に開示された注射練習器では実際の血管のように二股や三股に分岐した模擬血管を造形することは事実上不可能であった。
なお、従来技術ではいわゆる3Dプリンタで複雑な形状のものを造形することはできるが、それは、樹脂糸または樹脂粉体を硬化させて形成するので柔軟性がない硬いもので、模擬血管としての性状を持っていないものしか造形できない。
また、ポリウレタンゲルを用いる造形も一体としての塊でしか形成されず、高齢者の血管のように皮膚下で筋肉や組織とともに血管のみの位置が左右に動きやすいなどの特有の特性まで再現することはできない。
【0011】
上記問題点に鑑み、本発明は、机の上に静置した状態または練習台となる者の実際の腕に載せ置いた状態にて、皮下の血管の適切な位置を探して穿通するという注射技量の習得が可能となり、また、高齢者の血管の特性まで再現でき、さらに、実際の血管のように二股や三股に分岐した模擬血管を造形することができる注射トレーニング器具として用いることができる模擬血管付き注射トレーニング器具を提供することを目的とする。
また、本発明は、実際の血管のように二股や三股に分岐した模擬血管を造形できるので、従来技術では極めて難しい臓器表面を走る血管について、柔軟性と弾力性がある実際の血管を再現することができるので、医療用カテーテルを挿入する治療箇所における血管を模擬した血管付き臓器モデルとし、医療用カテーテルの挿入または引き抜きの練習用に用いることができる模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明にかかる模擬血管付き注射トレーニング用器具は、人体または動物の対象箇所のベースとなる立体形状を再現した立体形状物と、柔軟性があり、前記対象箇所に存在する血管の血管壁の厚みに相当する厚みを備え、前記立体形状物の上に貼付する柔軟性シートを備え、前記立体形状物に対向する前記柔軟性シートの貼付面において、少なくとも複数個の接着領域と、前記接着領域同士の間に非接触領域が設けられており、前記柔軟性シートの前記立体形状物への貼付状態において、隣接し合う前記接着領域同士の貼付間隔を狭めた間隔とし、前記非接触領域を前記立体形状物には当接させずに浮かせて盛り上げて模擬血管を再現したことを特徴とするものである。
【0013】
上記構成により、模擬血管を樹脂製の管などではなく、血管壁の厚みや柔軟性を再現した柔軟性シートのうち模擬血管を形成する領域である非接触領域を浮かせて弛ませて断面がいわゆるオメガとなるように造形し、ベースとなる立体形状物の表面と柔軟性シートで断面がオメガ状になるよう弛ませて盛り上げた空間で囲まれた空洞を模擬血管とすることができる。
例えば、隣接し合う3つの接触領域の間に形成される非接触領域はいわゆるY字型となり、いわゆる二股に分岐した模擬血管を形成することができる。
また、隣接し合う2つの接触領域の間に形成される非接触領域を曲線状にすることにより、いわゆる曲線状の模擬血管を形成することができる。
なお、立体形状物はシリコーンゲルやポリウレタンゲルや柔軟性のある樹脂素材が好ましい。柔軟性シートもシリコーンゲルやポリウレタンゲルや柔軟性のある樹脂素材が好ましい。
【0014】
次に、上記構成において、立体形状物が、対象とする年齢層および性別で平均的な人体や動物の対象箇所の立体形状であり、柔軟性シートの厚みが、対象とする年齢層および性別の血管壁の平均的な厚みであり、模擬血管の形状が、対象とする年齢層および性別の対象箇所に見られる平均的な血管の形状とすることができる。
【0015】
模擬血管付きの立体形状物としての対象箇所が、例えば、肘から手首にかけた前腕部の一部であれば、採血、血管注射または点滴針刺入などで選択されることが多い部位となり、採血、血管注射または点滴針刺入の練習に効果的なものとすることができる。この場合、立体形状物として腕の形を模しても良いが、上面が水平面であり、柔軟性シートの接触領域が、立体形状物の上面の水平面に貼付されたものでも良い。採血、血管注射または点滴針刺入の練習用に用いる模擬血管付き注射トレーニング器具となる。
【0016】
次に、本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具は、高齢者用の模擬血管付き注射トレーニング器具に特化させることこともできる。
例えば、年齢層が前期高齢者または後期高齢者であり、柔軟性シートの厚みが、前期高齢者または後期高齢者の血管壁の平均的な厚みであり、模擬血管において隣接し合う接着領域同士の貼付間隔の狭めを大きくし、非接触領域の盛り上げを大きくした模擬血管とすれば、より高齢者の血管の特性を再現した模擬血管付き注射トレーニング器具とすることができる。
つまり、模擬血管の断面のオメガ形状をより大きく弛ませて、より大きく盛り上げたものとすれば、ベースとなる立体形状物の表面に対して、接着部分が狭い間隔で断面が大きく盛り上がった模擬血管となるので、模擬血管部分の弛みや盛り上げが大きく、左右方向(血管の方向に対して左右横方向)により動きやすくなり、高齢者の血管の特性を再現した模擬血管とすることができる。また、柔軟性シートの柔軟性も高齢者の血管壁の柔らかさと近いものを採用することにより、より高齢者の血管の特性を再現した模擬血管となる。
【0017】
次に、本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具が、採血、血管注射または点滴針刺入の練習に用いる場合は、シート状の模擬皮膚シートを備えた構成とし、この模擬皮膚シートを模擬血管が形成された柔軟性シートの上に被覆せしめたものとすれば、皮膚まで模擬したものとすることができる。
【0018】
さらに、本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具が、採血、血管注射または点滴針刺入の練習に用いる場合は、注射針の貫き抜けを防止するため、立体的形状の下層、または、立体的形状の下に、硬度が大きく注射針の貫通を防止する板状の注射針穿通防止層を設ける構成も好ましい。注射針穿通防止層の素材はプラスチック樹脂素材またはゴム素材とする。
上記構成により、注射針が貫き抜けても注射針の尖端を安全に模擬血管付き注射トレーニング器具の中に留めることができ、安全性担保ができる。
なお、立体的形状物の中に、注射針で穿通可能な膜にて形成した模擬血液を含有させた模擬血液封入体をまばらに埋設して配置しておくことも可能である。
この構成によれば、練習中に模擬血液封入体に穿通してしまうと、模擬血液が皮下組織模擬層に染み出ることとなり、実際の注射時における出血なども再現した練習を行うことができる。
【0019】
次に、本発明にかかる模擬血管付き注射トレーニング器具は、採血、血管注射または点滴針刺入の練習だけではなく、特定患者に対する治療前の医療用カテーテルの挿管練習や引き抜きシミュレーションにも用いることができる。つまり、注射トレーニング器具に代えて医療用カテーテルの挿管トレーニング器具として用いることができる。
例えば、立体形状物が、特定患者の特定箇所の立体形状であり、立体形状物が、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせで形成されたものであり、特定箇所が、医療用カテーテルを挿入する治療箇所であり、柔軟性シートが、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせで形成されたものであり、柔軟性シートの厚みが、特定患者の特定箇所の血管の血管壁の厚みであり、模擬血管の形状が特定患者の医療用カテーテルを挿入する治療箇所における血管の形状を模擬したものであれば良い。特に、立体形状物および模擬血管が特定患者の特定箇所から取得した3次元データを基に形成したものであれば、より一層特定患者に対する治療前の医療用カテーテルの挿管練習や引き抜きシミュレーションに最適なものとなる。
具体的には、例えば、当該特定箇所が特定患者の心臓の全体または一部であり、立体形状物が特定患者の心臓の全体または一部の形状とする。柔軟性シートの厚みが特定患者の心臓の表面に形成されている左右の冠動脈や左右の冠静脈や大心静脈や中心静脈の少なくともいずれかを含む血管の血管壁の厚みとする。模擬血管の形状が特定患者の心臓の左右の冠動脈や左右の冠静脈や大心静脈や中心静脈の少なくともいずれかを含む心臓の表面を走る左右の冠動脈や左右の冠静脈や大心静脈や中心静脈などの血管の形状とする。
【0020】
従来技術において提供される心臓モデルは、特定患者の3次元データを基にしているものの、全体としてシリコーンゲルまたはポリウレタンゲルの塊として造形されるのみであるため、内部の心室や心房のほか、心臓の内部を通る大きく太い上行大動脈や肺動脈や肺静脈や上大静脈や下大静脈は比較的正確に造形されていた。しかし、従来技術のおける3次元造形では、特定患者の心臓の表面を走る左右の冠動脈や左右の冠静脈や大心静脈や中心静脈などを造形することが事実上難しかった。これら心臓の表面を走る左右の冠動脈や左右の冠静脈や大心静脈や中心静脈なども医療用カテーテル治療の対象箇所となり得る箇所であり、これらが再現された心臓モデルを得ることができれば治療前のシミュレーションには非常に役に立つものとなる。
本発明にかかる模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具においても、立体的形状物の素材をシリコーンゲルまたはポリウレタンゲルまたは樹脂とし、特定患者の心臓を再現するとともに、その表面に本発明の柔軟性シートを貼り付け、接触領域を貼付しつつ、非接触領域を浮かせて弛ませて盛り上げて模擬血管として冠動脈や冠静脈や大心静脈や中心静脈などを形成すれば良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具によれば、机の上に静置した状態または練習台となる者の実際の腕に載せ置いた状態にて皮下の血管の適切な位置を探して穿通するという注射技量の習得が可能となる。
また、本発明の模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具によれば、医療用カテーテルの挿管練習や引き抜き練習モデルとして使用することができ、従来であれば難しかった特定患者の心臓の表面を走る冠動脈や冠静脈や大心静脈や中心静脈などの模擬血管を造形することが容易であり、模擬血管付きの模擬心臓モデルを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1にかかる模擬血管付き注射トレーニング器具300の構成を簡単に示した図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】柔軟性シート100を変形して作成した模擬血管110の構造を示す図(その1)である。
図4】柔軟性シート100を変形して作成した模擬血管110の構造を示す図(その2)である。
図5】模擬血液を充填する手順を説明する図である。
図6】オプションとしての模擬皮膚シート340を備えた構造を示した図である。
図7】動物の模擬皮膚シート340aを用いた動物用の模擬血管付き注射トレーニング器具300aを示す図である。
図8】本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300と従来技術の模擬血管付き注射トレーニング器具1との違いが分かりやすいように比較した図である。
図9】実施例2にかかる模擬血管付き注射トレーニング器具300aの構造を簡単に示した図である。
図10】従来技術(特開平10-161522号公報)に開示された注射練習器具を簡単に示した図である。
図11】従来技術(特開2002-325839号公報)に開示された穿通シミュレータを示す図である。
図12】従来技術(特開2010-243867号公報)に開示された注射練習器を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具を説明する。
実施例1にかかる模擬血管付き注射トレーニング器具は、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。なお、注射トレーニング器具としての適用対象は人体のみならず愛玩動物や保護動物も含まれるものである。以下、人体の例を中心に説明するが、動物の場合も同様に考えれば良い。
なお、特定患者の特定箇所の医療用カテーテルの挿管操作または引き抜き操作の練習用に用いる医療用カテーテル操作トレーニング器具は実施例2で説明する。
【実施例0024】
実施例1にかかる本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300の例を示す。
図1は実施例1にかかる模擬血管付き注射トレーニング器具300の構成を簡単に示した図である。図1の例は、模擬した人体の対象箇所が肘から手首にかけた前腕部の一部である。特に、上面が肘裏から手首裏を模擬したもので、採血、注射または点滴針刺入の練習用に用いる注射トレーニング器具として提供するものである。
なお、本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300の対象箇所は特に限定されず、人体の他の部分を対象箇所として造形することが可能であることは言うまでもない。
図1において立体形状物200は上面が水平面として簡単に製作した例である。実際の人体の肘から手首までを模擬した立体形状物200としても良い。
図1の例は、人体の左腕の前腕の内側(手首から肘裏)を上面としたものであり、図示において上側が左手首側、下側が左肘裏側となっている。
図2は、図1のA-A線断面図である。
模擬血管付き注射トレーニング器具300は、図1および図2に示した構成例では、柔軟性シート100と立体形状物200と周辺部材を備えたものとなっている。
以下、各構成要素を説明する。
【0025】
柔軟性シート100は、柔軟性があり、人体の対象箇所に存在する血管の血管壁の厚みに相当する厚みを備えたシートであり、立体形状物200の上に貼付するものである。
柔軟性シート100の厚みについては、例えば、人体の対象箇所が肘から手首にかけた前腕部の一部であり、特に、肘裏から手首裏にかけての採血または注射の練習用に用いる注射トレーニング器具に用いるものであるので、当該肘裏などの付近の血管の厚みであれば良い。
なお、模擬する血管の厚みは、年齢層および性別によりある程度異なるが、適用する柔軟性シート100の厚みはそのカテゴリーの平均的な血管の厚みで良い。
また、高齢者(前期高齢者や後期高齢者)により血管の厚みが異なるが、適用する柔軟性シート100の厚みはその高齢者(前期高齢者や後期高齢者)のカテゴリーの平均的な血管の厚みで良い。
また、実施例2で後述するように、医療用カテーテルの挿管シミュレーションに用いる場合は、対象箇所が特定患者の心臓の冠動脈であれば、柔軟性シート100の厚みはその特定患者の患部の冠動脈の厚みであれば良い。
【0026】
次に、柔軟性シート100の硬度であるが、例えば、人体の対象箇所が肘裏から手首裏にかけた前腕部の一部に対する採血または注射の練習用に用いる注射トレーニング器具に用いる場合は、当該肘裏などの付近の血管の硬度に近いものであれば良い。
なお、模擬する血管の硬さは、年齢層および性別によりある程度異なるが、適用する柔軟性シート100の硬度はそのカテゴリーの平均的な血管の硬さで良い。
また、高齢者(前期高齢者や後期高齢者)により血管の硬さが異なるが、適用する柔軟性シート100の硬度はその高齢者(前期高齢者や後期高齢者)のカテゴリーの平均的な血管の硬度で良い。
【0027】
柔軟性シート100の硬度に関しては皮膚の柔らかさに近いものが好ましく、例えば、ゴム硬度10から30度程度とすることができる。この硬度であれば、注射針が容易に穿通でき、穿通した際の抵抗が皮膚の抵抗と近くなる。
また、実施例2で後述するように、医療用カテーテルの挿管シミュレーションに用いる場合は、対象箇所が特定患者の心臓の冠動脈であれば、柔軟性シート100の硬度はその特定患者の患部の冠動脈の硬度であれば良い。
【0028】
柔軟性シート100の表面は、柔軟性シート貼付部分120の表面を形成するので、柔軟性シート100の表面の粘性は比較的小さいものとする。手技の練習時にはいわゆる“さらさら”とした状態の方が扱いやすいからである。
柔軟性シート100の裏面は、立体形状物の内部充填物220に貼付する柔軟性シート貼付部分120の裏面を形成するので、柔軟性シート100の裏面の粘性は比較的大きいものとする。柔軟性シート貼付部分120は脱着可能であるが、立体形状物200の内部充填物220に貼付した状態で使用するので、柔軟性シート100の裏面側と立体形状物200の内部充填物220の表面側とも粘性の大きなものであれば、両者がしっかりと貼り付けることができ、注射針の穿通練習の間にも安定した状態となる。
【0029】
柔軟性シート100の素材は、例えば、シリコーンゲル素材、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせなどが良い。
柔軟性シート100の色であるが限定されない。例えば、透明の無着色のものや、血管を模した色に着色するなど自在である。
【0030】
柔軟性シート100は、一様の平面的なシートで良いが、立体形状物200に対向する柔軟性シート100の貼付面において、少なくとも複数個の接着領域121と、接着領域同士の間に非接触領域111が設けられている。
柔軟性シート100の立体形状物200への貼付において、隣接し合う接着領域121同士の貼付間隔を狭めた間隔とし、非接触領域111を立体形状物200には当接させずに浮かせて盛り上げて造形し、模擬血管110を作る。
【0031】
図3および図4は、柔軟性シート100を変形して作成した模擬血管110の構造を示す図である。
図3(a)に示すように、柔軟性シート100の裏面側(立体形状物200に対向する柔軟性シート100の貼付面)には、複数個の接着領域121と、接着領域同士の間に非接触領域111が設けられている。
なお、接着領域121は、粘性が高く調整され、ベース素材220も粘度の強い素材であれば、接着領域121には接着剤は不要である。なお、ベース素材220が粘度の小さい素材であれば、接着領域121に接着剤を塗布する場合もありうる。
【0032】
この柔軟性シート100を立体形状物200に対して貼付する際、図3(b)に示すように、隣接し合う接着領域121同士の貼付間隔を本来の間隔よりも狭めた間隔で貼付してゆく。そのため、非接触領域111の横断面が弓なりに盛り上げられ、立体形状物200の表面には当接せず、隙間の空間が形成される。
つまり、板状の柔軟シート素材100を隣接し合う接触領域121を寄せて盛り上げつつ位置を決めて下面の立体形状物200のベース素材220に対して接着領域121を接着してゆき、残った非接着領域111を模擬血管110として盛り上げて形成してゆく。
【0033】
図2は、模擬血管付き注射トレーニング器具300に形成する模擬血管110の高さや太さや断面形状として様々なものが造形可能な点を説明した図である。なお、この特徴によって、模擬血管110が実際の血管の特性、例えば、血管の位置が左右に動いたりずれたりするような特性を再現することが可能となる。
【0034】
図2(a)の例は、立体形状物200のベース素材220に対して隣接し合う接着領域121の間隔を狭めて接着してゆく際に、図2(b)や図2(c)に比べて間隔の狭めを少なくした状態を示している。図2(a)では横断面がいわゆる半円状のドーム型に近くなっている。
図2(b)の例は、図2(a)に比べて間隔の狭め幅を大きくした状態であり、図2(c)よりも間隔の狭め幅を小さくした状態を示している。
図2(c)の例は、図2(a)や図2(b)に比べて間隔の狭め幅を大きくした状態を示している。図2(c)では横断面がいわゆるオメガ状に近くなっており、最下部において少し隙間が空いている状態になっている。
このように、立体形状物200のベース素材220に対して隣接し合う接着領域121の間隔を調整することにより、形成される模擬血管110の上方向や上斜め方向からの力に対する抗力、つまり、模擬血管110の断面方向の変形しやすさを調整することができる。
【0035】
つまり、図2(a)、図2(b)、図2(c)の3つを比較すると、図2(a)は横断面が半円状となっており、道路トンネルのアーチ構造のように上方向や上斜め方向からの力に対する抗力が強く、変形しにくい模擬血管110として造形されている。
一方、図2(c)は、横断面がオメガ状に近くなっており、真上方向からの押圧には抗力が強いが、立体形状物200の表面上で支持する面積が小さいため、上斜め方向からの力に対する抗力が弱く、横断面方向に変形しやすい模擬血管110となっている。
【0036】
図2(d)に示すように、図2(c)の横断面の模擬血管110は、上斜め方向からの力に対する抗力が弱く、横断面方向に変形しやすい模擬血管110となっていることが分かる。
なお、図2(d)の横断面の模擬血管110の持つこの特性を活用すれば、高齢者の血管の特性、つまり、血管の位置が左右に動いたりずれたりするような特性の再現が可能となる。特に、高齢者の血管は比較的皮膚下で筋肉や組織とともに血管の位置が左右に動きやすくなっており、そのような高齢者の血管の特性まで再現することができる。
【0037】
本発明にかかる模擬血管付き注射トレーニング器具300では、この模擬血管110の形状を自在に作り込むことができる。
実際の血管はいわゆる二股や三股に分かれた走り方をしている場合もあるが、本発明にかかる模擬血管付き注射トレーニング器具300では自在に形成することができ、例えば、隣接し合う3つの接触領域の間に形成される非接触領域はいわゆるY字型となり、いわゆる二股に分岐した模擬血管を形成することができる。四股や五股など複雑なものも形成できる。
また、隣接し合う2つの接触領域121の間に形成される非接触領域111を曲線状にすることにより、いわゆる曲線状の模擬血管110を形成することができる。
【0038】
図4は、図1に示した構造例において、いわゆるY字状に二股になっている箇所における模擬血管110の構造を分かりやすく示した図である。
図4(a)に示すように、模擬血管110におけるB線の断面、C線の断面、D線の断面が簡単に示されているが、B線の断面は1本の模擬血管110となっていることが分かる。C線の断面は2本に枝分かれする根元の部分に相当するもので、2本の模擬血管110が結合したような断面形状となっていることが分かる。D線の断面は2本に枝分かれした状態の断面形状となっていることが分かる。
図4(b)は、いわゆるY字状に二股になっている箇所における模擬血管110の構造とその形成状態が示した図である。
図4(b)に示すように、3つの隣接し合う接着領域121を三方向からそれぞれY字を形成するように間隔を狭めて押圧接着してゆき、Y字状のドーム型やオメガ型の空洞を形成してゆく。このように形成する模擬血管110の形状は自在に調整することが可能であることが分かる。
【0039】
一方、図8(b)に示すように、従来技術における注射トレーニング器具は血管を樹脂製のパイプ管で模擬している場合が多く、実際の血管のように二股や三股に分岐した模擬血管を造形することは難しく、分岐点において2本の管の切開面同士を貼り合わせて模擬血管同士を接続するなどする必要があり、実際の血管のように二股や三股に分岐した模擬血管を造形することは事実上不可能であった。なお、従来技術ではいわゆる3Dプリンタで複雑な形状に形成することはできるが、それは、樹脂を硬化させて形成するので硬く、模擬血管としての性状を持っていないものしか造形できない。
【0040】
引き続き、人体の対象箇所の立体形状物200について説明する。
立体形状物200は、ベース210、ベース210内部の内部充填物220を備えている。なおオプションとして注射針穿通防止層(図示せず)を設ける構成もあり得る。
ベース210は、対象箇所となる人体の一部の外形に近いものが好ましいが、かならずしも人体の対象箇所の外形と一致させたり、類似させたりする必要がないケースがある。模擬血管付き注射トレーニング器具300の使用目的に合わせれば十分な場合があるからである。
本実施例1の例では、模擬血管付き注射トレーニング器具300を採血または血管注射または点滴針刺入の練習用に用いる注射トレーニング器具として提供する例であり、特に、肘裏から手首裏にかけての前腕部に対する採血または注射の練習用に用いる注射トレーニング器具であるので、実際の前腕の形状をそっくり模擬する必要まではなく、その上面を平面としても、模擬血管110が再現されていれば練習に資する。そこで、図1のように立体形状物200の上面を平面とし、立体形状物200全体を厚みのある板状体としている。
【0041】
また、ベース210は図2の断面で示したような上面が開放された箱体状のものであるので、扱いやすいように粘度が小さく比較的さらさらした状態に仕上げたものが好ましい。つまり、内部充填物220が粘度の高いシリコーンゲルやポリウレタンゲルやゴム素材や柔らかい樹脂素材であるので、内部充填物220を充填しておく枠体として機能するものである。
【0042】
内部充填物220はベース210内部に充填されたものであり、柔軟性シート100の接着領域121と押圧接着するものなので、ある程度粘度が大きな素材であることが好ましい。例えば、粘度が調整されたシリコーンゲルやポリウレタンゲルやゴム素材や柔らかい樹脂素材が好ましい。
【0043】
なお、オプションとして、注射針穿通防止層(図示せず)を設ける構成もあり得る。注射針穿通防止層はベース210内の最下層に設ければ良い。注射針穿通防止層は硬度が大きく注射針の貫通を防止する板状のもので良い。
注射針穿通防止層を設けることで、注射練習の初心者などが強く刺通しすぎてベース210の下面を突き破ろうとした場合に、突き破りを防止することができ、安全な注射練習に資することができる。
特に、後述する図6(b)に示すように、模擬血管付き注射トレーニング器具300を練習台となる人の腕の上に載せ置いて行う場合には有効である。例えば、注射針穿通防止層のゴム硬度は60より大きく80度程度ぐらいまでとすることができる。この硬度はタイヤのゴム程度よりやや硬い程度の硬度であり、注射針が容易には穿通できないが、ある程度の可撓性は確保されるものとなる。
注射針穿通防止層の素材は、例えば、プラスチック樹脂またはゴム素材とすることができる。
【0044】
引き続き、周辺部材を説明する。
この例では、周辺部材として、エッジ310、接続管320、導通管330を備えた構成となっている。なお、図6の構成ではオプションとしての模擬皮膚シート340を備えたものとなっている。
【0045】
エッジ310は模擬血管110と接続管320をカバーする部分である。
エッジ310の形状は特に限定されない
なお、立体形状物300としては、エッジ310は必須ではないが、このようなエッジ310を設けておくことにより、練習時やシミュレーション時に柔軟性シート100により形成されている模擬血管110を取り扱いやすくなる場合があり得る。
【0046】
接続管320は、模擬血管110を1つにまとめて外部に導通する接続部分である。なお、図1では模擬血管110をカバーするエッジ310内で模擬血管110がどのような形状になっているかは描かれていないが、接続管320により枝分かれが1本にまとめられ、その上で外部に引き出されている。このように、エッジ310内の内部の模擬血管110の形状は実際の血管を模擬した形状とはなっていない場合がある。つまり、接続管320および導通管330を介して外部に導通するための経路の確保であって、実際の実際の血管を模擬した部分ではない。その意味において、カバーとなるエッジ310を設ける意味がある。
【0047】
なお、接続管320自体は断面が円形の管状のもので良い。模擬血管110と接続管320との接続箇所については、液体(模擬血液)を用いるバージョンであれば、両者間で液体(模擬血液)が漏れないような接続構造が必要である。
例えば、接続管320の径が模擬血管110の断面径より少し大きく、接続管320が模擬血管110の端部の内部に少し入り込んだ状態で周囲を接着剤などで封止する構造がある。
例えば、接続管320の径が模擬血管110の断面径より少し小さく、接続管320の端部の下面が切開されドーム状に開放されており、模擬血管110の端部を包み込んだ状態で周囲を接着剤などで封止する構造がある。
その他にも様々な接続構造があり得る。
【0048】
導通管330は、接続管320と接続され、接続管320からさらに外部に導通する部材である。液体(模擬血液)を用いるバージョンであれば、導通管330が液体(模擬血液)を送出したり排出したりする液体袋に導通しているものとする。
【0049】
次に、本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300内に模擬血液を充填する手順を説明する。
図5は、模擬血管付き注射トレーニング器具300内に模擬血液を充填する手順を説明する図である。模擬血管付き注射トレーニング器具300内への模擬血液の充填は、どちらの端部に模擬血液パック400を接続して行っても良いが、この例では、肘側の端部に模擬血液パック400を接続し、手首側の端部に向けて模擬血液を充填する図となっている。
まず、図5(a)に示すように、模擬血液が充填されている模擬血液パック400を導通管330に対して接続して導通路を確保する。接続が確認できれば、模擬血液パック400を適宜押圧すると模擬血液パック400から押し出された模擬血液が導通管330を介して模擬血管付き注射トレーニング器具300側に注入されて行く。
模擬血管110にも模擬血液が充填されてゆき、やがて先端側の導通管330まで模擬血液が行き渡り、模擬血管付き注射トレーニング器具300内への充填が完了する。
【0050】
次に、図5(b)に示すように、手首側の端部から導通している導通管330を封止するようにクランプ410を取り付けて封止し、模擬血液の漏出を防止する。なお、模擬血液パック400はそのまま接続した状態としておくことが好ましい。採血のトレーニングでは、模擬血管付き注射トレーニング器具300内の模擬血液が抜かれて減少するが、模擬血液パック400からその減少分を補うように供給できる。また、注射や点滴針の刺通トレーニングでは、模擬血管付き注射トレーニング器具300内に液が注入されていくが、注入相当分の液体を模擬血液パック400へ受け入れることができ、模擬血管付き注射トレーニング器具300内の模擬血管内の液圧を良好な状態に維持できる。
このように、模擬血液パック400を取り付け、模擬血管付き注射トレーニング器具300内に模擬血液を充填させ、クランプ410で手首側の導通管330を封止すれば準備完了である。
【0051】
次に、オプションとして注射トレーニング時に用いる模擬皮膚シートについて説明する。
図6(a)は、オプションとしての模擬皮膚シート340を備えた構造を示した図である。図1に示した模擬血管付き注射トレーニング器具300の表面を覆うような模擬皮膚シート340がある。
この模擬皮膚シート340は、透明または薄肌色のシート状のもので、対象箇所の表面の皮膚を模擬したものである。
模擬皮膚シート340を載せない状態で練習すれば、模擬血管を目視しながら採血や血管注射の練習ができ、初心者の訓練には至便である。また、模擬皮膚シート340を載せ置いた状態で練習すれば、より実際の採血や血管注射と近い状態がシミュレーションできるので、上達者や熟練者の訓練には至便である。
【0052】
図6(b)は、模擬血管付き注射トレーニング器具300を練習台となる人の腕の上に載せ置いて練習を行う様子を示す図である。
図6(c)は、模擬血管付き注射トレーニング器具300を、机の上に載せ置いて練習を行う様子を示す図である。なお、図示しないが、実際に採血を行う採血場にある腕載台の上において練習することも有効である。
【0053】
次に、本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300を、動物用の採血、血管注射、点滴針の差入のトレーニング器具に適用する場合について述べる。
図7は、動物の模擬皮膚シート340aを用いた動物用の模擬血管付き注射トレーニング器具300aを示す図である。
従来から動物病院内において、獣医師および看護師などが動物の治療にあたり採血や注射を行う施術があるが、人間の場合と同様、注射針を用いた採血や注射には技量が必要である。特に、動物は一度でも注射で痛い思いをすると以後注射を極端に恐れることが多く、暴れたり鳴き叫んだりして治療の妨げとなることもある。そのため、獣医師および看護師なども注射トレーニング器具としての本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300aが非常に役に立つと考えられる。
また、近年、愛玩動物看護師という国家資格も始まり、愛玩動物看護の技量の習得、資格取得後の技量の維持・向上に向けて注射トレーニング器具としての本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300aが非常に役に立つと考えられる。
【0054】
図7(a)の例の動物の模擬皮膚シート340aは、模擬血管付き注射トレーニング器具300aを被覆できる袋状のものであり、その模擬皮膚シート340aの上には毛皮、模擬毛皮としてのファーなどで覆われたものとなっている。動物の採血や注射は毛皮の上から行わざるを得ず、このような動物の模擬皮膚シート340aを用いて練習することは実践に役立つ。
【0055】
なお、この例では、動物の模擬皮膚シート340aは袋状のものであり、さらにバンドやバックルのような締結具が付いた例となっている。動物は静止してくれることが少ないので、このような締結具を介して動物の所定箇所に巻き付けて留めることにより動く動物にも取り付けることができ、安定した状態で注射等の練習を行うことが容易となる。
図7(b)は、動物用の模擬血管付き注射トレーニング器具300aを練習台となる愛玩動物(この例は犬)の所定箇所に取り付けて練習を行う様子を示す図である。
【0056】
また、図7(c)は、動物用の模擬血管付き注射トレーニング器具300aを、机の上に載せ置いて練習を行う様子を示す図である。なお、図示しないが、実際に採血を行う採血場にある腕載台の上において練習することも有効である。
この図7(c)のように載置して動物用の注射等の練習する場合は、表面が毛皮、模擬毛皮としてのファーなどで覆われた模擬皮膚シート340aを用いることが好ましい。
【0057】
次に、本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300と従来技術における模擬血管付き模擬生体ファントム1との違いを示しておく。
図8は、本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300と従来技術における模擬血管付き模擬生体ファントム1との違いが分かりやすいように比較した図である。
図8(a)は、本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300の断面および二股構造を示す図であるが、図8(a)に示すように、本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300では、立体形状物200の表面上に模擬血管110が形成されており、高齢者の血管のように皮膚下で筋肉や組織とともに血管のみの位置が左右に動きやすいなどの特有の特性まで再現できている。また、二股構造も形成されている。
【0058】
一方、図8(b)に示す従来技術における模擬血管付き模擬生体ファントム1は、模擬血管50がパイプ状のものであり、ベース材20内に埋設されており、高齢者の血管のように皮膚下で筋肉や組織とともに血管のみの位置が左右に動きやすいなどの特有の特性まで再現することはできない。また、二股構造は事実上形成できず、小さな径のパイプ同士を完全な二股に接続することは極めて困難である。
【0059】
以上、本実施例1にかかる本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300は、皮下の血管の適切な位置を探して穿通するという注射技量の習得が可能となり、また、高齢者の血管の特性まで再現でき、さらに、実際の血管のように二股や三股に分岐した模擬血管を造形することができる注射トレーニング器具として用いることができる。
【実施例0060】
次に、実施例2にかかる本発明の模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具300aについて説明する。
実施例2にかかる模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具300aは、特定患者の特定箇所の医療用カテーテルの挿管操作または引き抜き操作の練習用に用いるものである。
実施例2において、実施例1で説明したものと同様の部分については説明を適宜省略する。
以下の例では、特定患者の特定箇所として模擬心臓における模擬冠動脈を例として説明する。本発明の模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具300aは臓器の表面を走っている血管を模擬することができるので、他の模擬臓器の他の模擬血管であっても適用できる。
【0061】
図9は、実施例2にかかる模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具300aの構造を簡単に示した図である。特定患者Aの模擬心臓とその模擬冠動脈の一部を含むものとして図示されている。
図9(a)が特定患者Aの模擬冠動脈が作成される前の心臓モデルである。別途3D造形された立体形状物200aである心臓モデル200a(冠動脈形成前)となっている。
図9(b)が立体形状物200aである心臓モデル200a(冠動脈形成前)に対して、特定患者Aの模擬冠動脈が作成された状態の心臓モデル300aとなっている。
【0062】
実施例2にかかる模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具300aについても、柔軟性シート100、立体形状物200aにより形成される。周辺部材についても形成しても良い。
【0063】
立体形状物200aは、特定患者の特定箇所の立体形状であり、この例では特定患者Aの心臓の全体またはその一部である立体形状である。立体形状物200aは特定患者Aの心臓から別途取得した3次元データを基に形成したものとする。
図9(a)に示すような立体形状物200aである心臓モデル200a(冠動脈形成前)の形成手段は限定されない。例えば、別途、特定患者Aの心臓をCTスキャンで3次元データを取得しておき、その3次元データを基に、別途3次元造形技術によって、あらかじめ図9(a)に示すような立体形状物200aである心臓モデル200a(冠動脈形成前)を形成しておく。特定患者Aの実際の心臓に近い弾力性をもつように形成する手段として、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせで形成することが好ましい。
【0064】
柔軟性シート100は実施例1に説明したものと同様で良いが、ここでは、柔軟性シート100の厚みや硬度は、特定患者Aの心臓の患部である冠動脈の厚みや硬さに相当するものに調整されたものとする。柔軟性シート100は、図9(a)に示すように平面的なものであっても良い。
実施例2で使用する柔軟性シート100としても、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせのものが好ましい。
模擬血管を造形する特定箇所は医療用カテーテルを挿入する治療箇所であり、ここでは、特定患者Aの冠動脈とする。
この治療箇所である特定患者Aの冠動脈の模擬冠動脈を、実施例1で示した手順により柔軟性シート100を用いて形成する。
形成する模擬血管の形状は特定患者Aの冠動脈の形状である。
【0065】
図9(b)に示すような立体形状物200aである心臓モデル200aに対して模擬冠動脈110aを形成手段は実施例1と同様であるが、ここでは、模擬血管である模擬冠動脈110aは、特定患者Aの心臓の冠動脈から取得した3次元データを基に形成する。例えば、別途、特定患者Aの心臓をCTスキャンで3次元データを取得しておき、その3次元データを基に冠動脈の形状や患部状態を、実施例1に示した手順にて作り込んでゆけば良い。図9(b)のものが得られる。
上記の例では、模擬冠動脈を作り込んだ例であるが、その他、特定患者Aの心臓の表面を走る他の血管、例えば、冠静脈や大心静脈や中心静脈などであっても良い。
図9(b)では、実施例1で示したような周辺部材は図示していないが、周辺部材を設けても良く、設けなくとも良い。
【0066】
以上、本実施例2にかかる本発明の模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具300aは、医療用カテーテルの挿管操作または引き抜き操作の練習用に用いる医療用カテーテル操作トレーニング器具として用いることができる。
【0067】
以上、本発明の模擬血管付き注射トレーニング器具300の構成例における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
本発明は、注射トレーニング器具として用いることもでき、また、医療用カテーテルの挿管シミュレーション器具としても用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
100 柔軟性シート
110 模擬血管
111 非接着領域
120 柔軟性シート貼付部分
121 接着領域
200 立体形状物
210 ベース
220 内部充填物
300 模擬血管付き注射トレーニング器具
300a 医療用カテーテル挿管トレーニング器具
310 エッジ
320 接続管
330 導通管
340 模擬皮膚シート
400 模擬血液パック
410 クランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-06-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】手続補正書
【補正対象項目名】手続補正1
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2024-03-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体または動物の対象箇所のベースとなる立体形状を再現した立体形状物と、
柔軟性があり、前記対象箇所に存在する血管の血管壁の厚みに相当する厚みを備え、前記立体形状物の上に貼付する柔軟性シートと、
前記柔軟性シートの上に被覆せしめたシート状の模擬皮膚シートを備え、
前記立体形状物に対向する前記柔軟性シートの貼付面において、少なくとも複数個の接着領域と、前記接着領域同士の間に非接触領域が設けられており、
前記柔軟性シートの前記立体形状物への貼付状態において、隣接し合う前記接着領域同士の貼付間隔を狭めた間隔とし、前記非接触領域を前記立体形状物には当接させずに浮かせて盛り上げて模擬血管を再現して注射のトレーニングを行うことを特徴とする模擬血管付き注射トレーニング用器具。
【請求項2】
前記立体形状物が、対象とする年齢層および性別で平均的な前記対象箇所の立体形状であり、
前記柔軟性シートの前記厚みが、対象とする前記年齢層および前記性別の前記人体の前記血管壁の平均的な厚みであり、
前記模擬血管の形状が、対象とする前記年齢層および前記性別の前記人体の前記対象箇所に見られる平均的な血管の形状であることを特徴とする請求項1に記載の模擬血管付き注射トレーニング用器具。
【請求項3】
前記年齢層が前期高齢者または後期高齢者であり、前記柔軟性シートの厚みが、前期高齢者または後期高齢者の前記血管壁の平均的な厚みであり、前記模擬血管において隣接し合う前記接着領域同士の前記貼付間隔の狭めを大きくし、前記非接触領域の盛り上げを大きくしたとすることを特徴とする請求項に記載の模擬血管付き注射トレーニング用器具。
【請求項4】
前記対象箇所が、肘から手首にかけた前腕部の一部であり、
前記立体形状物が、上面が水平面であり、
前記柔軟性シートの前記接着領域が、前記立体形状物の前記上面の前記水平面に貼付されたものである請求項1に記載の模擬血管付き注射トレーニング用器具。
【請求項5】
前記立体形状物が、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせで形成されたものであり、
前記柔軟性シートが、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせで形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の模擬血管付き注射トレーニング用器具。
【請求項6】
シート状の模擬皮膚シートを備え、
前記模擬血管が形成された前記柔軟性シートの上に前記模擬皮膚シートを被覆せしめたことを特徴とする請求項1に記載の模擬血管付き注射トレーニング用器具。
【請求項7】
人体または動物の対象箇所のベースとなる立体形状を再現した立体形状物と、
柔軟性があり、前記対象箇所に存在する血管の血管壁の厚みに相当する厚みを備え、前記立体形状物の上に貼付する柔軟性シートを備え、
前記立体形状物に対向する前記柔軟性シートの貼付面において、少なくとも複数個の接着領域と、前記接着領域同士の間に非接触領域が設けられており、
前記柔軟性シートの前記立体形状物への貼付状態において、隣接し合う前記接着領域同士の貼付間隔を狭めた間隔とし、前記非接触領域を前記立体形状物には当接させずに浮かせて盛り上げて模擬血管を再現し、医療用カテーテル挿管のトレーニング用に適用した模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具であって、
前記立体形状物が、特定患者の特定箇所の立体形状であり、
前記立体形状物が、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせで形成されたものであり、
前記特定箇所が、医療用カテーテルを挿入する治療箇所であり、
前記柔軟性シートが、シリコーンゲル、ポリウレタンゲル、ゴム素材、樹脂素材のいずれかまたはそれらの組み合わせで形成されたものであり、
前記模擬血管の形状が、前記特定患者の前記医療用カテーテルを挿入する治療箇所における前記血管の形状を模擬したものであり、
前記立体形状物および前記模擬血管が、前記特定患者の前記特定箇所から取得した3次元データを基に形成したものであり、前記医療用カテーテル挿管をトレーニングすることを特徴とする模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具。
【請求項8】
前記特定箇所が、前記特定患者の心臓の全体または一部であり、
前記立体形状物が、前記特定患者の心臓の全体または一部の形状であり、
前記模擬血管の形状が、前記特定患者の前記心臓の冠動脈冠静脈大心静脈中心静脈の少なくともいずれかを含む前記血管の形状であることを特徴とする請求項7に記載の模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具。
【請求項9】
前記柔軟性シートの前記厚みと硬さが、前記特定患者の前記特定箇所の前記血管の前記血管壁の厚みと硬さ相当のものであることを特徴とする請求項7に記載の模擬血管付き医療用カテーテル挿管トレーニング器具。