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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155280
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】塗膜剥離施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20241024BHJP
   E01D 11/00 20060101ALI20241024BHJP
   B05C 9/10 20060101ALN20241024BHJP
   B05C 11/10 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D11/00
B05C9/10
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069884
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】508251575
【氏名又は名称】株式会社 フィルターサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 庸行
【テーマコード(参考)】
2D059
4F042
【Fターム(参考)】
2D059AA42
2D059BB06
2D059EE01
2D059GG21
2D059GG39
4F042AA23
4F042BA04
4F042BA08
4F042BA10
4F042BA22
4F042CC12
4F042DA03
4F042DH01
4F042ED09
4F042ED11
4F042ED12
(57)【要約】
【課題】作業の安全性を確保しつつ、効率よくかつ高い品質でハンガーロープの塗膜を剥離する塗膜剥離施工方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる塗膜剥離施工方法においては、吊り橋を構成するハンガーロープ3の塗膜を剥離するために、ハンガーロープ3に沿って鉛直昇降動作を行うゴンドラ11と、照射口12cを有するレーザーヘッド12aとケーブルによってレーザーヘッド12aに接続された発振器本体12bとを有するレーザー装置12と、ハンガーロープ3に対して一定方向からレーザー光線を照射するためにレーザーヘッド12aを固定する固定治具13と、を備えた塗膜剥離システム10を使用する。そして、ゴンドラ11を一定の速度でハンガーロープ3の上端位置から下端位置まで下降させ、この下降期間においてレーザーヘッド12aからレーザー光線を照射することによってハンガーロープ3の塗膜を剥離する。
【選択図】図3-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本のメインケーブルから鉛直に垂らされた多数のハンガーロープで桁を支持する吊り橋において、表面が塗装された前記ハンガーロープの塗膜を剥離する塗膜剥離施工方法であって、
ハンガーロープに沿って鉛直昇降動作を行うハンガーロープ点検用のゴンドラと、レーザー光線の照射口を有するレーザーヘッドとケーブルによって前記レーザーヘッドに接続された発振器本体とを有するレーザー装置と、前記ゴンドラの鉛直昇降動作に連動して昇降するように設けられ、ハンガーロープに対して一定方向からレーザー光線を照射するために前記レーザーヘッドを固定する固定治具と、を備えた塗膜剥離システムを使い、
前記ゴンドラに前記発振器本体を載置し、前記照射口がハンガーロープと対向する位置である初期位置に配置されるように前記レーザーヘッドを前記固定治具に固定した状態で、前記ゴンドラをハンガーロープの上端位置まで上昇させ、
その後、前記ゴンドラを予め規定された一定の速度でハンガーロープの下端位置まで下降させ、
前記ゴンドラの下降期間において前記レーザーヘッドからレーザー光線を照射することによって、常時一定方向からハンガーロープの塗膜を剥離する、
ことを特徴とする塗膜剥離施工方法。
【請求項2】
さらに、前記レーザーヘッドの照射口を前記初期位置から前記軸回りに120°回転させ、ハンガーロープに対して回転後の位置である120°回転位置の方向からレーザー光線が照射されるように前記レーザーヘッドを前記固定治具に固定した状態で、再度、前記ゴンドラを前記上端位置まで上昇させた後に前記一定の速度で下降させ、
当該下降期間において前記レーザーヘッドからレーザー光線を照射することによって、前記120°回転位置の方向からハンガーロープの塗膜を剥離し、
その後、前記レーザーヘッドの照射口を前記120°回転位置から前記軸回りにさらに120°回転させ、ハンガーロープに対して回転後の位置である240°回転位置の方向からレーザー光線が照射されるように前記レーザーヘッドを前記固定治具に固定した状態で、再度、前記ゴンドラを前記上端位置まで上昇させた後に前記一定の速度で下降させ、
当該下降期間において前記レーザーヘッドからレーザー光線を照射することによって、前記240°回転位置の方向からハンガーロープの塗膜を剥離し、
レーザー光線を照射する方向を120°ずつ変えながら、前記ゴンドラを3往復させることによって、ハンガーロープの塗膜を全周にわたって剥離する、
ことを特徴とする請求項1に記載の塗膜剥離施工方法。
【請求項3】
前記ゴンドラは、その上部に、2本の昇降用ロープに吊るされた前記固定治具を昇降させる巻き取りドラムと、当該巻き取りドラムを駆動するモータと、をさらに備え、
前記ゴンドラ内部において、前記昇降用ロープの長さの範囲で前記固定治具の昇降動作を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の塗膜剥離施工方法。
【請求項4】
前記一定の速度は、ハンガーロープの塗膜を剥離可能な速度とする、
ことを特徴とする請求項2に記載の塗膜剥離施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長大吊り橋のハンガーロープに塗布された塗膜を剥離(除去)する塗膜剥離施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長大吊り橋は、中央径間が200m以上の2本の主塔とそれに渡される2本のメインケーブルとを有し、そのケーブルから鉛直に垂らされたハンガーロープで桁を支持する橋のことである。
【0003】
このような長大吊り橋は、多数のハンガーロープにより支えられているが、ハンガーロープには塩害防止などの観点から、塗装されたワイヤーロープが一般的に使用されており、近年になって、塗膜劣化およびそれに伴う発錆が顕著に現れている。原因としては、厳しい環境(海上、強風)に設置されていることや、車両や強風等による振動の影響、飛散物による影響などが考えられる。
【0004】
そして、ワイヤーロープの塗膜劣化や錆などへの対策として、たとえば、作業員による塗膜の塗り替え(剥離、塗装)など、従来から保全のための補修作業が行われている。
【0005】
たとえば、下記引用文献1には、ワイヤーロープの塗膜劣化や錆などへの対策として、吊り橋に使用されている主ケーブルの塗膜剥離方法が開示されている。具体的には、作業員が誘導加熱装置の加熱ヘッドを吊り橋の主ケーブル(ラッピングワイヤ)の外周面の塗膜に宛がい、加熱ヘッドの誘導コイルによる誘導加熱でラッピングワイヤを加熱してラッピングワイヤの塗膜を軟化させ、軟化させた塗膜をシート状の塊またはその他の塊状で剥離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-140607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の塗膜剥離方法においては、作業員が誘導加熱装置の加熱ヘッドを吊り橋の主ケーブル(ラッピングワイヤ)の外周面の塗膜に宛がい、ラッピングワイヤを加熱し、その加熱で塗膜を軟化させて塗膜をシート状の塊にするなど、飛散しないような状態で塗膜を剥離する。その際、作業員が足場を少しずつ移動しながら、手作業で加熱ヘッドを上下左右にずらすことによって塗膜の剥離作業を行っている。
【0008】
塗膜劣化や錆などへの対策としては、特許文献1に記載のように塗膜の塗り替えなどの補修を行うことが望ましいが、このような補修作業は、作業員による高所での手作業となるため、作業の安全性を考慮すると、機械による自動化が望まれる。
【0009】
また、主ケーブルの塗膜剥離作業は、上記特許文献1に記載のように、作業員による足場の移動で実施可能であるが、たとえば、長大吊り橋のハンガーロープは、主ケーブルから鉛直に垂らされており、数十メートルに達する高さでの鉛直昇降の作業となるため、足場を移動しながらの塗膜剥離作業の実施は非常に困難である。しかしながら、上記特許文献1には、ハンガーロープの塗膜剥離作業については何ら示されていない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、作業の安全性を確保しつつ、効率よくかつ高い品質でハンガーロープの塗膜を剥離することができる塗膜剥離施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる塗膜剥離施工方法は、2本のメインケーブルから鉛直に垂らされた多数のハンガーロープで桁を支持する吊り橋において、表面が塗装されたハンガーロープの塗膜を剥離する施工方法である。この塗膜剥離施工方法では、ハンガーロープに沿って鉛直昇降動作を行うハンガーロープ点検用のゴンドラと、レーザー光線の照射口を有するレーザーヘッドとケーブルによってレーザーヘッドに接続された発振器本体とを有するレーザー装置と、ゴンドラの鉛直昇降動作に連動して昇降するように設けられ、ハンガーロープに対して一定方向からレーザー光線を照射するためにレーザーヘッドを固定する固定治具と、を備えた塗膜剥離システムを使用する。そして、ゴンドラに発振器本体を載置し、照射口がハンガーロープと対向する位置である初期位置に配置されるようにレーザーヘッドを固定治具に固定した状態で、ゴンドラをハンガーロープの上端位置まで上昇させ、その後、ゴンドラを予め規定された一定の速度でハンガーロープの下端位置まで下降させ、ゴンドラの下降期間においてレーザーヘッドからレーザー光線を照射することによって、常時一定方向からハンガーロープの塗膜を剥離することを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる塗膜剥離施工方法においては、レーザーヘッドの照射口を初期位置からさらに軸回りに120°回転させ、ハンガーロープに対して回転後の位置である120°回転位置の方向からレーザー光線が照射されるようにレーザーヘッドを固定治具に固定した状態で、再度、ゴンドラを前記上端位置まで上昇させた後に一定の速度で下降させ、当該下降期間においてレーザーヘッドからレーザー光線を照射することによって、120°回転位置の方向からハンガーロープの塗膜を剥離する。その後、レーザーヘッドの照射口を120°回転位置から軸回りにさらに120°回転させ、ハンガーロープに対して回転後の位置である240°回転位置の方向からレーザー光線が照射されるようにレーザーヘッドを固定治具に固定した状態で、再度、ゴンドラを上端位置まで上昇させた後に一定の速度で下降させ、当該下降期間においてレーザーヘッドからレーザー光線を照射することによって、240°回転位置の方向からハンガーロープの塗膜を剥離する。すなわち、本発明にかかる塗膜剥離施工方法においては、レーザー光線を照射する方向を120°ずつ変えながら、ゴンドラを3往復させることによって、ハンガーロープの塗膜を全周にわたって剥離する。
【0013】
また、本発明にかかる塗膜剥離施工方法において、ゴンドラは、その上部に、2本の昇降用ロープに吊るされた固定治具を昇降させる巻き取りドラムと、当該巻き取りドラムを駆動するモータと、をさらに備える。この構成により、ゴンドラ内部において、昇降用ロープの長さの範囲で固定治具の昇降動作を行う。
【0014】
そして、本発明にかかる塗膜剥離施工方法において、上記一定の速度は、ハンガーロープの塗膜を剥離可能な速度とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる塗膜剥離施工方法によれば、作業の安全性を確保しつつ、効率よくかつ高い品質でハンガーロープの塗膜を剥離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、長大吊り橋の構造の一例を示す概略図である。
図2図2は、4本一組のハンガーロープが桁内部に定着されている状態を示す図である。
図3-1】図3-1は、塗膜剥離システムの構成を模式的に示す概略構成図である。
図3-2】図3-2は、塗膜剥離システムの構成を模式的に示す概略構成図である。
図4図4は、レーザー装置を構成するレーザーヘッドの形状の一例を模式的に示す概略図である。
図5図5は、取付治具を一体化させた取付治具付きレーザーヘッドの一例を示す図である。
図6図6は、本発明にかかる塗膜剥離施工方法の一例を時系列に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる塗膜剥離施工方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0018】
<長大吊り橋>
図1は、長大吊り橋の構造の一例を示す概略図である。図1に示す長大吊り橋100は、中央径間が200m以上の2本の主塔1とそれに渡される2本のメインケーブル(主ケーブル)2とを有し、そのメインケーブル2から鉛直に垂らされた多数のハンガーロープ3で桁4を支持する。
【0019】
本実施形態においては、上述した長大吊り橋100を構成する部材であるハンガーロープ3の塗膜を剥離する作業、すなわち、ハンガーロープ3の塗膜剥離施工方法について説明する。以下では、特に、作業の安全性を確保しつつ、効率よくかつ高い品質でハンガーロープ3の塗膜を剥離する塗膜剥離施工方法について説明する。
【0020】
本実施形態の塗膜剥離施工方法の対象となるハンガーロープ3は、桁4に作用する荷重をメインケーブル1に伝達させる重要部材であり、たとえば、1格点(1つの鞍掛部)あたり2本のロープで構成され、この2本のロープがメインケーブル1上で鞍掛けされ、桁4内部において定着されている。すなわち、メインケーブル1の1つの鞍掛部(図示せず)から鉛直に垂らさせた4本一組のハンガーロープ3の下端部が、桁4内部において定着されている(図2参照)。
【0021】
また、本実施形態において使用されるハンガーロープ3は、たとえば、亜鉛メッキ鋼線を撚り合わせたワイヤーロープであり、その表面には塩害防止などの観点から塗装が施されている。
【0022】
<塗膜剥離システムの概略構成>
図3図3-1および図3-2)は、本実施形態の塗膜剥離システムの構成を模式的に示す概略構成図であり、図3-1(a)は正面図、図3-1(b)は側面図、図3-2(a)は平面図、図3-2(d)は図3-1の破線Aの位置から見た上面図、図3-2(c)は底面図である。
【0023】
図3において、塗膜剥離システム10は、4本一組のハンガーロープ3に沿って鉛直昇降動作を行うハンガーロープ点検用のゴンドラ11と、レーザー光線を照射するレーザーヘッド12aと図示しないケーブル(光路)によってレーザーヘッド12aに接続された発振器本体12bとを有し、レーザーヘッド12aからレーザー光線を照射することによってハンガーロープ3の塗膜を剥離するレーザー装置12と、ゴンドラ11の鉛直昇降動作に連動して昇降するように設けられ、ハンガーロープ3に対して一定方向からレーザー光線を照射するためにレーザーヘッド12aを固定する固定治具13と、を備える。
【0024】
本実施形態の塗膜剥離システム10において、ゴンドラ11は、ハンガーロープ点検用のゴンドラであり、図3-1(a)に示すように、たとえば、正面から見て左右に足場11aが設けられ、図3-2(a)(b)(c)に示すように、4本一組のハンガーロープ3を囲うように枠11bが形成されている。また、枠11bの内側には、櫓状に組まれた棚部11cが枠11bと一体に形成され、棚部11cの上面には、2本の昇降用ロープ14に吊るされた固定治具13を棚部11c内部において昇降させる巻き取りドラム15と、巻き取りドラム15を駆動するモータ16が、取り付けられている(図3-2(a)参照)。
【0025】
そして、ゴンドラ11は、図示しないコントローラやゴンドラ用モータなどによって制御され、ハンガーロープ3に沿って鉛直昇降動作を行う。なお、本実施形態において、ゴンドラ11の積載重量は、たとえば、250kg~300kg程度であることを想定する。
【0026】
また、本実施形態の塗膜剥離システム10において、レーザー装置12は、一例として、クリーンレーザージャパン株式会社製「BG lightCASE CL100」を使用した。このレーザー装置12は、集光されたレーザー光線をハンガーロープ3に照射することにより、塗膜、錆、汚れなどの対象物を気化(昇華)させる。このレーザー光線は、ハンガーロープ3を構成するワイヤーロープへの熱の影響を最小限に抑え、高い品質でハンガーロープ3の塗膜を剥離する。なお、レーザー装置12は、上述した製品に限らず、たとえば、レーザー光線によってハンガーロープ3の塗膜を剥離可能な装置であればよく、任意である。
【0027】
図4は、レーザー装置12を構成するレーザーヘッド12aの形状の一例を模式的に示す概略図である。図4において、レーザーヘッド12aは、先端にレーザー光線の照射口12cを有し、照射口12cの側面(いずれか一方)が固定治具13への取付面12dとなる。本実施形態では、照射口12cを正面にみて、左側面が取付面12dとなる(図3-1(a)参照)。そして、レーザーヘッド12aは、ケーブル(光路)12eにより延伸可能な構造とし、このケーブル12eを介してゴンドラ11に載置されたレーザー装置12の発振器本体12bに接続される。
【0028】
また、本実施形態の塗膜剥離システム10において、固定治具13は、4本一組のハンガーロープ3に対して個別に摺接して固定治具13を昇降可能に案内するガイド部13a(図3-2(c)参照)を有する底面13b、および平面を有する上面13c、が平行に形成された土台部13dを備える(図3-1(a)参照)。
【0029】
さらに、固定治具13は、土台部13dの上面13cに取り付けられた2枚のレーザーヘッド固定用プレート13eを備える。この2枚のレーザーヘッド固定用プレート13eには、ハンガーロープ3を収容可能な切り込みであるハンガーロープ収容部13fが形成されている。本実施形態において、2枚のレーザーヘッド固定用プレート13eは、4本一組のハンガーロープ3のうち、対角に位置する2本のハンガーロープ3をハンガーロープ収容部13f内に収容できるように、土台部13dの上面13cにネジ止めなどにより取り付けられ、固定される(図3-2(b)参照)。
【0030】
そして、2枚のレーザーヘッド固定用プレート13eには、レーザー光線の照射口12cがハンガーロープ収容部13fに収容されたハンガーロープ3と対向するように、予めそれぞれ1台のレーザーヘッド12aが所定の位置に取り付けられている。本実施形態においては、所定の位置の一例として、図3-2(b)に示す位置に2台のレーザーヘッド12aをそれぞれ取り付けた。この際、レーザーヘッド12aの取付面12dをレーザーヘッド固定用プレート13eの表面に接触させ、ネジ止めなどを行うことにより、固定治具13にレーザーヘッド12aを固定する。本実施形態では、上述したように予め取り付けられたレーザーヘッド12aの照射口12cの位置を初期位置(0°回転位置と呼ぶ場合がある)とする。
【0031】
すなわち、本実施形態の塗膜剥離システム10は、土台部13dの上面13cに2枚のレーザーヘッド固定用プレート13eを取り付けた固定治具13を使用することにより、2台のレーザー装置12を搭載する。なお、本実施形態においては、ゴンドラ11の積載重量を考慮し、固定治具13の土台部13dに2枚のレーザーヘッド固定用プレート13eを取り付ける構造(2台のレーザー装置12を搭載可能な構造)としたが、これに限定するものではない。たとえば、レーザー装置12を1台だけゴンドラ11に搭載することとしてもよいし、さらに、ゴンドラ11の積載重量の許容範囲内であれば、3枚または4枚のレーザーヘッド固定用プレート13eを土台部13dに取り付けて、3台または4台のレーザー装置12をゴンドラ11に搭載することも可能である。
【0032】
また、固定治具13における土台部13dの上面13cには、上述した昇降用ロープ14を取り付けるための昇降用ロープ取付部13gが設けられている(図3-2(b)参照)。
【0033】
本実施形態においては、上述した構造を有する塗膜剥離システム10を使用して、レーザーヘッド12aからレーザー光線を照射することによって、ハンガーロープ3の塗膜を剥離する。
【0034】
なお、本実施形態においては、レーザーヘッド固定用プレート13eにレーザーヘッド12aの取付面12dを直接接触させ、取り付ける構造としたが、たとえば、レーザーヘッド12aを設置するスペースが取れないような場合(たとえば、ハンガーロープ3、昇降用ロープ14、枠11b、棚部11cなどによってスペースがとれない場合)には、レーザーヘッド固定用プレート13eとレーザーヘッド12aの取付面12dとの間にスペーサのような取付治具を使用し、レーザーヘッド12aに傾斜を持たせることとしてもよい。具体的には、図5に示すような取付治具を一体化させた取付治具付きのレーザーヘッドを用意し、この取付治具付きレーザーヘッドをレーザーヘッド固定用プレート13eに固定する。これにより、レーザーヘッド固定用プレート13eに対して傾斜を持たせた状態でレーザーヘッド12aを取り付けることができるため、少ないスペースを有効的に使用することが可能となる。傾斜角度は、90°未満であれば、取付治具の加工により自由に設定可能である。
【0035】
<塗膜剥離施工方法>
つづいて、本実施形態の塗膜剥離施工方法について説明する。図6は、本実施形態の塗膜剥離施工方法の一例を時系列に示す図である。本実施形態においては、2台のレーザー装置12が搭載された塗膜剥離システム10を使用して、長大吊り橋におけるハンガーロープ3の塗膜を剥離する。
【0036】
具体的には、ゴンドラ11の左右の足場11aにそれぞれ1台ずつレーザー装置12の発振器本体12bを載置し、照射口12cが剥離対象のハンガーロープ3と対向する初期位置(0°回転位置)に配置されるように、各発振器本体12bにそれぞれ接続されたレーザーヘッド12aを2枚のレーザーヘッド固定用プレート13eに固定した状態(固定治具13に固定した状態)において、まず、ゴンドラ11を、4本一組のハンガーロープ3の上端位置まで上昇させる。
【0037】
つぎに、ゴンドラ11を予め規定された一定の速度でハンガーロープ3の下端位置まで下降させる。その際、ゴンドラ11の下降期間において2台のレーザーヘッド12aからレーザー光線を照射することによって、常時一定方向(0°回転位置に配置された照射口12cの方向)から2本のハンガーロープ3の塗膜を剥離する(図6(a)参照:1回目の剥離処理)。ここで、一定の速度は、ハンガーロープ3の塗膜を確実に剥離可能な速度とし、たとえば、事前にハンガーロープに対して試験的に剥離作業を実施し、その結果に基づいて予め規定しておく。
【0038】
つぎに、2台のレーザーヘッド12aを固定治具13から取り外し、それぞれの照射口12cを剥離対象のハンガーロープ3を軸として初期位置から軸回りに120°回転させる。このときの照射口12cの位置を120°回転位置とする。そして、ハンガーロープ3に対して120°回転位置の方向からレーザー光線が照射されるように、各レーザーヘッド固定用プレート13eにレーザーヘッド12aを固定する。その後、2台のレーザーヘッド12aを固定した状態で、再度、ゴンドラ11を4本一組のハンガーロープ3の上端位置まで上昇させる。
【0039】
つぎに、1回目の剥離処理と同様に、ゴンドラ11を予め規定された一定の速度でハンガーロープ3の下端位置まで下降させ、その下降期間において2台のレーザーヘッド12aからレーザー光線を照射することによって、常時一定方向(120°回転位置に配置された照射口12cの方向)から2本のハンガーロープ3の塗膜を剥離する(図6(b)参照:2回目の剥離処理)。
【0040】
つぎに、2台のレーザーヘッド12aを固定治具13から取り外し、それぞれの照射口12cを剥離対象のハンガーロープ3を軸として120°回転位置から軸回りに120°回転させる。このときの照射口12cの位置を240°回転位置とする。そして、ハンガーロープ3に対して240°回転位置の方向からレーザー光線が照射されるように、各レーザーヘッド固定用プレート13eにレーザーヘッド12aを固定する。その後、2台のレーザーヘッド12aを固定した状態で、再度、ゴンドラ11を4本一組のハンガーロープ3の上端位置まで上昇させる。
【0041】
最後に、1回目、2回目の剥離処理と同様に、ゴンドラ11を予め規定された一定の速度でハンガーロープ3の下端位置まで下降させ、その下降期間において2台のレーザーヘッド12aからレーザー光線を照射することによって、常時一定方向(240°回転位置に配置された照射口12cの方向)から2本のハンガーロープ3の塗膜を剥離する(図6(c)参照:3回目の剥離処理)。
【0042】
すなわち、本実施形態の塗膜剥離施工方法においては、レーザー光線の照射方向を120°ずつ変えながら、ゴンドラ11を3往復させることによって、4本一組のハンガーロープ3のうちの2本のハンガーロープ3の塗膜を全周にわたって剥離する。
【0043】
その後、2枚のレーザーヘッド固定用プレート13eを、残り2本のハンガーロープ3をハンガーロープ収容部13fに収容可能な位置に付け替える作業を行う。そして、照射口12cが剥離対象のハンガーロープ3と対向する初期位置(0°回転位置)に配置されるように、2台のレーザーヘッド12aを2枚のレーザーヘッド固定用プレート13eに固定した状態で、さらに、上述した3回の剥離処理を実施する。これにより、4本一組のハンガーロープ3の塗膜を全周にわたって剥離することができる。すなわち、合計6回の剥離処理で、4本一組のハンガーロープ3の塗膜を全周にわたって剥離することができる。
【0044】
なお、ゴンドラ11の積載重量が4台のレーザー装置12の搭載を許容する場合には、土台部13dの上面13cに4枚のレーザーヘッド固定用プレート13eを取り付けた固定治具13を使用することにより、3回の剥離処理で、4本一組のハンガーロープ3の塗膜を全周にわたって剥離することができる。
【0045】
また、本実施形態においては、図6(a)に示す位置を照射口12cの初期位置(0°回転位置)としたが、初期位置は、照射口12cの正面が剥離対象のハンガーロープ3の方向となる位置であって、かつレーザーヘッド固定用プレート13e上に0°回転位置、120°回転位置、240°回転位置を設定できる位置であればよく、この条件を満たす位置であればどの位置を初期位置としてもよい。
【0046】
また、本実施形態においては、上述したように、棚部11cの上面に、2本の昇降用ロープ14に吊るされた固定治具13を棚部11c内部において昇降させる巻き取りドラム15と、その巻き取りドラム15を駆動するモータ16が、取り付けられている。これらは、たとえば、剥離作業後に塗膜が残っている場合や、ピンポイントで剥離作業を行いたい場合などに、特定の高さでゴンドラ11を止めた状態において、昇降用ロープ14の長さの範囲で固定治具13(レーザーヘッド12a)の昇降動作を実施可能とする。これにより、さらに品質の高い塗膜剥離作業が可能となる。
【0047】
また、本実施形態においては、長大吊り橋を一例としてハンガーロープの塗膜剥離施工方法について記述したが、これに限るものではなく、上述した塗膜剥離施工方法は、鉛直に垂らされた塗装済みロープ(ワイヤーケーブルなど)を有するすべての構造物に適用可能である。
【0048】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、すべて本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0049】
1 主塔
2 メインケーブル
3 ハンガーロープ
4 桁
10 塗膜剥離システム
11 ゴンドラ
11a 足場
11b 枠
11c 棚部
12 レーザー装置
12a レーザーヘッド
12b 発振器本体
12c 照射口
12d 取付面
12e ケーブル(光路)
13 固定治具
13a ガイド部
13b 底面
13c 上面
13d 土台部
13e レーザーヘッド固定用プレート
13f ハンガーロープ収容部
13g 昇降用ロープ取付部
14 昇降用ロープ
15 巻き取りドラム
16 モータ
100 長大吊り橋
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6