(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155282
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】駆動回路装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20241024BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20241024BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/16 F
H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069887
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】豊田 真希
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740MM02
5J055AX12
5J055AX25
5J055AX56
5J055AX65
5J055BX16
5J055DX13
5J055DX22
5J055EY01
5J055EY02
5J055EY21
5J055EZ02
5J055EZ10
5J055FX05
5J055FX13
5J055GX01
(57)【要約】
【課題】ロバスト性を向上させつつ、スイッチング素子のスイッチング損失を増加させずに、スイッチング素子のサージ電圧を抑制することができる駆動回路装置を提供する。
【解決手段】駆動回路装置1は、スイッチング素子2のゲート端子Gに接続された可変ゲート抵抗回路5と、スイッチング素子2におけるソース端子Sとドレイン端子Dとの間の端子間電圧の電圧変化を検出する微分回路8と、微分回路8により端子間電圧の規定量以上の電圧変化が検出されたときに、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値が小さくなるように可変ゲート抵抗回路5を制御する比較回路9とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御端子に供給される電気信号により第1端子と第2端子との間の電流が制御されるスイッチング素子を駆動する駆動回路装置において、
前記制御端子に接続された可変抵抗回路と、
前記第1端子と前記第2端子との間の端子間電圧の電圧変化を検出する電圧変化検出回路と、
前記電圧変化検出回路により前記端子間電圧の規定量以上の電圧変化が検出されたときに、前記可変抵抗回路の可変抵抗の抵抗値が小さくなるように前記可変抵抗回路を制御する制御回路とを備える駆動回路装置。
【請求項2】
前記電圧変化検出回路は、前記端子間電圧を微分することで、前記端子間電圧の電圧変化を検出する微分回路を有する請求項1記載の駆動回路装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記微分回路の出力電圧を予め決められた閾値と比較し、前記微分回路の出力電圧と前記閾値との比較結果に応じた切替信号を前記可変抵抗回路に出力する比較回路を有する請求項2記載の駆動回路装置。
【請求項4】
前記比較回路は、前記微分回路の出力電圧が第1閾値以上である場合と、前記微分回路の出力電圧が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以下である場合とにおいて、前記切替信号として前記可変抵抗の抵抗値を小さくするための信号を前記可変抵抗回路に出力する請求項3記載の駆動回路装置。
【請求項5】
前記電圧変化検出回路は、前記端子間電圧を下げるように分圧する分圧回路を更に有し、
前記微分回路は、前記分圧回路の出力電圧を微分する請求項2~4の何れか一項記載の駆動回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の駆動回路装置としては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の駆動回路装置は、駆動用電源の正極に接続された第1トランジスタと、駆動用電源の負極に接続された第2トランジスタと、第1トランジスタ及び第2トランジスタのソース端子と電圧駆動素子のゲート端子との間に接続されたゲート抵抗と、第1トランジスタ及び第2トランジスタのゲート端子に接続された抵抗と、第2トランジスタのドレイン端子と抵抗との間に接続されたコンデンサとを備えている。このような構成により、サージ電圧を抑制しつつ、スイッチング損失の低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、電圧駆動素子(スイッチング素子)を流れる電流の変化を電流経路の寄生インダクタンスにより検出し、負荷電流が大きいときのみ、ゲート抵抗を大きくしている。しかし、寄生インダクタンスに流れる電流を微小な電圧として検出するため、バラツキやノイズに対するロバスト性の影響が懸念される可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、ロバスト性を向上させつつ、スイッチング素子のスイッチング損失を増加させずに、スイッチング素子のサージ電圧を抑制することができる駆動回路装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、制御端子に供給される電気信号により第1端子と第2端子との間の電流が制御されるスイッチング素子を駆動する駆動回路装置において、制御端子に接続された可変抵抗回路と、第1端子と第2端子との間の端子間電圧の電圧変化を検出する電圧変化検出回路と、電圧変化検出回路により端子間電圧の規定量以上の電圧変化が検出されたときに、可変抵抗回路の可変抵抗の抵抗値が小さくなるように可変抵抗回路を制御する制御回路とを備える。
【0007】
このような駆動回路装置においては、スイッチング素子における第1端子と第2端子との間の端子間電圧の規定量以上の電圧変化が検出されると、スイッチング素子の制御端子に接続された可変抵抗回路の可変抵抗の抵抗値が小さくなるように可変抵抗回路が制御される。このように端子間電圧の規定量以上の電圧変化がある期間では、可変抵抗回路の可変抵抗の抵抗値が小さくなるため、スイッチング素子のスイッチング損失が低減される。従って、スイッチング素子のサージ電圧を抑制するために、端子間電圧の規定量以上の電圧変化がない期間において、可変抵抗回路の可変抵抗の抵抗値を大きくすることができる。つまり、端子間電圧の規定量以上の電圧変化がある期間において、可変抵抗回路の可変抵抗の抵抗値を小さくすることで、端子間電圧の規定量以上の電圧変化がない期間におけるスイッチング損失の増加分を許容することができる。このように端子間電圧の規定量以上の電圧変化がない期間では、可変抵抗回路の可変抵抗の抵抗値を大きくすることで、スイッチング素子のサージ電圧が抑制される。これにより、スイッチング素子のスイッチング損失を増加させずに、スイッチング素子のサージ電圧を抑制することができる。また、スイッチング素子における第1端子と第2端子との間の端子間電圧を検出することにより、十分な検出電圧が得られる。これにより、バラツキやノイズに対するロバスト性を向上させることができる。
【0008】
電圧変化検出回路は、端子間電圧を微分することで、端子間電圧の電圧変化を検出する微分回路を有してもよい。このように微分回路により端子間電圧を微分することにより、簡単な回路構成で端子間電圧の電圧変化を検出することができる。
【0009】
制御回路は、微分回路の出力電圧を予め決められた閾値と比較し、微分回路の出力電圧と閾値との比較結果に応じた切替信号を可変抵抗回路に出力する比較回路を有してもよい。このように比較回路により微分回路の出力電圧を閾値と比較することにより、簡単な回路構成で可変抵抗回路を制御することができる。
【0010】
比較回路は、微分回路の出力電圧が第1閾値以上である場合と、微分回路の出力電圧が第1閾値よりも小さい第2閾値以下である場合とにおいて、切替信号として可変抵抗の抵抗値を小さくするための信号を可変抵抗回路に出力してもよい。このような構成では、スイッチング素子のターンオフ時には、スイッチング素子の端子間電圧の傾きが正となるため、微分回路の出力電圧が大きくなる。この場合、微分回路の出力電圧が第1閾値以上であるときに、可変抵抗回路の可変抵抗の抵抗値が小さくなる。一方、スイッチング素子のターンオン時には、スイッチング素子の端子間電圧の傾きが負となるため、微分回路の出力電圧が小さくなる。この場合、微分回路の出力電圧が第2閾値以下であるときに、可変抵抗回路の可変抵抗の抵抗値が小さくなる。
【0011】
電圧変化検出回路は、端子間電圧を下げるように分圧する分圧回路を更に有し、微分回路は、分圧回路の出力電圧を微分してもよい。このように分圧回路によりスイッチング素子の端子間電圧を下げるように分圧することにより、高電圧で駆動されるスイッチング素子が使用される場合でも、微分回路及び制御回路を適切に動作させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロバスト性を向上させつつ、スイッチング素子のスイッチング損失を増加させずに、スイッチング素子のサージ電圧を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る駆動回路装置の構成を示す回路図である。
【
図3】スイッチング素子のターンオフ時の動作を示すタイミング図である。
【
図4】スイッチング素子のターンオン時の動作を示すタイミング図である。
【
図5】比較例として一般的な駆動回路装置の一例の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る駆動回路装置の構成を示す回路図である。
図1において、本実施形態の駆動回路装置1は、例えばモータ駆動系のインバータ等に使用される。駆動回路装置1は、スイッチング素子2を駆動する回路装置である。
【0016】
スイッチング素子2は、例えばnチャネル型のMOSFETである。スイッチング素子2は、ゲート端子G(制御端子)と、ソース端子S(第1端子)と、ドレイン端子D(第2端子)とを有している。ソース端子Sは、接地されている。ドレイン端子Dは、高電圧源3と接続されている。
【0017】
スイッチング素子2は、ゲート端子Gに供給される電気信号によりソース端子Sとドレイン端子Dとの間の電流が制御される。スイッチング素子2は、ゲート端子Gに印加されるゲート電圧によって、ソース端子Sとドレイン端子Dとの間が電気的に接続された状態(ON状態)と、ソース端子Sとドレイン端子Dとの間が電気的に遮断された状態(OFF状態)とに切り替えられる。
【0018】
駆動回路装置1は、ゲートドライバ回路4と、このゲートドライバ回路4とスイッチング素子2のゲート端子Gとの間に接続された可変ゲート抵抗回路5(可変抵抗回路)とを備えている。
【0019】
ゲートドライバ回路4は、PWM信号等の制御信号に応じてスイッチング素子2のゲート端子Gに印加されるゲート電圧を制御することで、スイッチング素子2のON/OFF制御を行う。ゲートドライバ回路4は、電圧源6に接続されている。電圧源6の電圧は、高電圧源3の電圧よりも低い。
【0020】
可変ゲート抵抗回路5は、スイッチング素子2のゲート端子Gに接続されたゲート抵抗の抵抗値を設定する。可変ゲート抵抗回路5は、
図2に示されるように、主抵抗11と、スイッチング素子12,13と、抵抗14と、抵抗15,16と、スイッチング素子17と、抵抗18とを有している。
【0021】
主抵抗11は、ゲートドライバ回路4とスイッチング素子2のゲート端子Gとの間に接続されている。つまり、主抵抗11の両端は、ゲートドライバ回路4及びスイッチング素子2のゲート端子Gにそれぞれ接続されている。
【0022】
スイッチング素子12、抵抗14及びスイッチング素子13は、ゲートドライバ回路4とスイッチング素子2のゲート端子Gとの間に直列に接続されている。スイッチング素子12、抵抗14及びスイッチング素子13は、主抵抗11に対して並列に接続されている。
【0023】
スイッチング素子12,13は、例えばpチャネル型のMOSFETである。スイッチング素子12,13は、特に図示はしないが、スイッチング素子2と同様に、ゲート端子、ソース端子及びドレイン端子を有している。スイッチング素子12のドレイン端子は、ゲートドライバ回路4に接続されている。スイッチング素子13のドレイン端子は、スイッチング素子2のゲート端子Gに接続されている。抵抗14は、スイッチング素子12,13のソース端子間に接続されている。
【0024】
抵抗15は、スイッチング素子12のゲート端子及びドレイン端子間に接続されている。抵抗16は、スイッチング素子13のゲート端子及びドレイン端子間に接続されている。つまり、抵抗15,16は、互いに直列に接続されていると共に、主抵抗11に対して並列に接続されている。なお、抵抗15,16の抵抗値は、主抵抗11及び抵抗14の抵抗値に比べて十分に高い。
【0025】
スイッチング素子17は、抵抗18を介してスイッチング素子12,13のゲート端子と接続されている。スイッチング素子17は、例えばnチャネル型のMOSFETである。スイッチング素子17は、特に図示はしないが、スイッチング素子2と同様に、ゲート端子、ソース端子及びドレイン端子を有している。スイッチング素子17のドレイン端子は、抵抗18と接続されている。スイッチング素子17のソース端子は、接地されている。
【0026】
このような可変ゲート抵抗回路5において、スイッチング素子17のゲート端子にゲート切替信号(後述)としてOFF信号が入力されたときは、スイッチング素子17がOFF状態である。この場合には、抵抗18に電流が流れず、スイッチング素子12,13のゲート端子がOFFであるため、スイッチング素子12,13がOFF状態である。
【0027】
スイッチング素子12,13がOFF状態であるときは、ゲートドライバ回路4とスイッチング素子2のゲート端子Gとの間は、主抵抗11と抵抗15,16とが並列接続された等価回路となる。ただし、抵抗15,16の抵抗値は、主抵抗11の抵抗値に比べて十分に高い。従って、主抵抗11の抵抗値をR1としたときに、スイッチング素子2のゲート端子Gと接続されるゲート抵抗の抵抗値は、ほぼ主抵抗11の抵抗値(R1)となる。
【0028】
スイッチング素子17のゲート端子にゲート切替信号(後述)としてON信号が入力されたときは、スイッチング素子17がON状態となる。この場合には、抵抗18に電流が流れ、スイッチング素子12,13のゲート端子がONとなるため、スイッチング素子12,13がON状態となる。
【0029】
スイッチング素子12,13がON状態であるときは、ゲートドライバ回路4とスイッチング素子2のゲート端子Gとの間は、主抵抗11と抵抗14と抵抗15,16とが並列接続された等価回路となる。ただし、抵抗15,16の抵抗値は、主抵抗11及び抵抗14の抵抗値に比べて十分に高い。従って、主抵抗11の抵抗値をR1とし、抵抗14の抵抗値をR2としたときに、スイッチング素子2のゲート端子Gと接続されるゲート抵抗の抵抗値は、ほぼ主抵抗11及び抵抗14の並列回路の合成抵抗値(R1・R2/(R1+R2))となる。
【0030】
これにより、ゲート切替信号がON信号であるときのゲート抵抗の抵抗値は、ゲート切替信号がOFF信号であるときのゲート抵抗の抵抗値よりも小さくなる。ここで、ゲート抵抗は、可変ゲート抵抗回路5の可変抵抗に相当する。なお、可変ゲート抵抗回路5の回路構成については、
図2に示された回路には限られず、種々変更可能である。
【0031】
図1に戻り、駆動回路装置1は、分圧回路7と、微分回路8と、比較回路9とを更に備えている。
【0032】
分圧回路7は、スイッチング素子2におけるドレイン端子Dとソース端子Sとの間の端子間電圧(以下、スイッチング素子2のドレインソース間電圧という)を下げるように分圧する回路である。分圧回路7は、スイッチング素子2のドレインソース間電圧を微分回路8及び比較回路9を駆動させることが可能な電圧に変換する。微分回路8及び比較回路9を駆動させることが可能な電圧は、例えばゲートドライバ回路4を駆動させることが可能な電圧と等しい。
【0033】
微分回路8は、
図3及び
図4に示されるように、分圧回路7の出力電圧を微分することで、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの電圧変化を検出する回路である。微分回路8は、例えばオペアンプ、コンデンサ及び抵抗等により構成されている。微分回路8は、分圧回路7と協働して、スイッチング素子2のドレインソース間電圧(端子間電圧)の電圧変化を検出する電圧変化検出回路を構成している。
【0034】
比較回路9は、電圧変化検出回路(前述)によりスイッチング素子2のドレインソース間電圧(端子間電圧)の規定量以上の電圧変化が検出されたときに、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値が小さくなるように可変ゲート抵抗回路5を制御する制御回路を構成している。
【0035】
比較回路9は、スイッチング素子2のドレインソース間電圧の単位時間当たりの電圧変化量が規定量以上であることが検出されたときに、スイッチング素子2のドレインソース間電圧の単位時間当たりの電圧変化量が規定量よりも小さいことが検出されたときに比べて、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値が小さくなるように可変ゲート抵抗回路5を制御する。スイッチング素子2のドレインソース間電圧の単位時間当たりの電圧変化量は、スイッチング素子2のドレインソース間電圧の傾きに相当する。規定量は、スイッチング素子2の電気的特性等に応じて適宜決定される。
【0036】
比較回路9は、
図3及び
図4に示されるように、微分回路8の出力電圧を予め決められた閾値と比較し、微分回路8の出力電圧と閾値との比較結果に応じたゲート切替信号を可変ゲート抵抗回路5に出力する。比較回路9は、例えばコンパレータ等により構成されている。
【0037】
具体的には、比較回路9は、微分回路8の出力電圧が高閾値P(第1閾値)以上である場合と、微分回路8の出力電圧が低閾値Q(第2閾値)以下である場合とにおいて、ゲート切替信号として可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値を小さくするためのON信号を可変ゲート抵抗回路5に出力する。低閾値Qは、高閾値Pよりも低い値である。比較回路9は、微分回路8の出力電圧が低閾値Qよりも大きく且つ高閾値Pよりも小さい場合に、ゲート切替信号としてOFF信号を可変ゲート抵抗回路5に出力する。
【0038】
以上のような駆動回路装置1において、スイッチング素子2のターンオフ時には、
図3(a)に示されるように、スイッチング素子2のゲート電圧Vgが低下する。スイッチング素子2のゲート電圧Vgは、スイッチング素子2のゲート端子Gの電圧である。そして、時刻t1において、スイッチング素子2のゲート電圧Vgが規定電圧に到達すると、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsが上昇し始める。
【0039】
そして、時刻t2において、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsが高電圧源3の電圧に到達すると、スイッチング素子2のドレイン電流Idが低下し始めると共に、スイッチング素子2のゲート電圧Vgが低下する。その後、時刻t3において、スイッチング素子2のドレイン電流Idがゼロとなる。
【0040】
ここで、時刻t1から時刻t2までの期間A1では、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsが上昇している。つまり、期間A1では、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの傾きが正(+)である。このため、
図3(b)に示されるように、微分回路8の出力電圧が高くなる。
【0041】
このとき、微分回路8の出力電圧が高閾値Pよりも高いため、
図3(c)に示されるように、比較回路9から可変ゲート抵抗回路5にゲート切替信号としてON信号が出力される。これにより、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値が小さくなるため、期間A1が短くなり、スイッチング素子2のスイッチング損失が小さくなる。
【0042】
一方、スイッチング素子2のターンオン時には、
図4(a)に示されるように、時刻t4において、スイッチング素子2のゲート電圧Vgが上昇し始め、その後スイッチング素子2のドレイン電流Idが上昇し始める。そして、時刻t5において、スイッチング素子2のゲート電圧Vgが規定電圧に到達すると、スイッチング素子2のドレイン電流Idが一定になると共に、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsが低下し始める。そして、時刻t6において、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsがゼロになると共に、スイッチング素子2のゲート電圧Vgが上昇する。
【0043】
ここで、時刻t5から時刻t6までの期間B1では、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsが低下している。つまり、期間B1では、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの傾きが負(-)である。このため、
図4(b)に示されるように、微分回路8の出力電圧が低くなる。
【0044】
このとき、微分回路8の出力電圧が低閾値Qよりも低いため、
図4(c)に示されるように、比較回路9から可変ゲート抵抗回路5にゲート切替信号としてON信号が出力される。これにより、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値が小さくなるため、期間B1が短くなり、スイッチング素子2のスイッチング損失が小さくなる。
【0045】
図5は、比較例として一般的な駆動回路装置の一例の構成を示す回路図である。
図5において、本比較例の駆動回路装置50は、ゲートドライバ回路4と、このゲートドライバ回路4とスイッチング素子2のゲート端子Gとの間に接続されたゲート抵抗51とを備えている。ゲート抵抗51の抵抗値は、可変ではなく、一定値である。
【0046】
ところで、ゲート抵抗51の制約条件としては、スイッチング素子2の耐性及びスイッチング損失が挙げられる。ゲート抵抗51の抵抗値を小さくすると、スイッチング素子2のスイッチング損失は低下するが、スイッチング素子2のターンオン及びターンオフ時のオフサージやリカバリサージが大きくなる。ゲート抵抗51の抵抗値を大きくすると、スイッチング素子2のサージ電圧は小さくなるが、スイッチング素子2のスイッチング損失が大きくなる。このようにスイッチング損失とサージ電圧とは、トレードオフの関係となっている。
【0047】
このため、本比較例の駆動回路装置50では、スイッチング素子2の特性を最大限に活かすことができない。即ち、スイッチング損失を優先すると、スイッチング素子2のサージ電圧が大きくなるため、耐性が高いスイッチング素子2を選択する必要があり、コストアップ等につながる。サージ電圧を優先すると、スイッチング素子2のスイッチング損失が大きくなるため、スイッチング素子2の冷却性能を上げたり、より低損失のスイッチング素子2を選択する必要があり、やはりコストアップ等につながる。
【0048】
スイッチング損失を大きくせずに、サージ電圧を抑制する方法としては、例えばスイッチング素子を流れる電流の変化を電流経路の寄生インダクタンスによって検出し、負荷電流が大きいときのみ、ゲート抵抗の抵抗値を大きくすることが考えられる。
【0049】
具体的には、
図3に示される期間A1,A2及び
図4に示される期間B1,B2が長くなる程、スイッチング損失が大きくなる。一方、サージ電圧が発生する期間は、
図3に示される期間A2及び
図4に示される期間B2である。期間A2及び期間B2は、スイッチング素子2のドレイン電流Idが変化する期間である。期間A2及び期間B2が短くなる程、サージ電圧が大きくなる。
【0050】
そこで、サージ電圧を抑制するために、期間A2及び期間B2においてスイッチング素子を流れる電流の変化を検出し、その検出値に応じてゲート抵抗の抵抗値を変化させることが考えられる。しかし、この場合には、寄生インダクタンスに流れる電流を微小な電圧として検出することになるため、バラツキやノイズに対するロバスト性に課題がある。
【0051】
そのような課題に対し、本実施形態では、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsが検出される。そして、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの電圧変化がある期間(
図3に示される期間A1及び
図4に示される期間B1)のみ、可変ゲート抵抗回路5にゲート切替信号としてON信号が出力されることで、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値が小さくなる。従って、期間A1及び期間B1におけるスイッチング損失が低減する。
【0052】
そして、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの上昇が終了した直後の期間(
図3に示される期間A2)と、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの低下が開始される直前の期間(
図4に示される期間B2)とでは、可変ゲート抵抗回路5にゲート切替信号としてOFF信号が出力されることで、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値が大きくなる。つまり、期間A1及び期間B1におけるゲート抵抗の抵抗値を小さくした分だけ、期間A2及び期間B2におけるゲート抵抗の抵抗値が大きくなる。従って、期間A2及び期間B2におけるサージ電圧が抑制される。
【0053】
以上のように本実施形態によれば、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの規定量以上の電圧変化が検出されると、スイッチング素子2のゲート端子Gに接続された可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗(可変抵抗)の抵抗値が小さくなるように可変ゲート抵抗回路5が制御される。このようにスイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの規定量以上の電圧変化がある期間では、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値が小さくなるため、スイッチング素子2のスイッチング損失が低減される。従って、スイッチング素子2のサージ電圧を抑制するために、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの規定量以上の電圧変化がない期間において、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値を大きくすることができる。つまり、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの規定量以上の電圧変化がある期間において、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値を小さくすることで、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの規定量以上の電圧変化がない期間におけるスイッチング損失の増加分を許容することができる。このようにスイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの規定量以上の電圧変化がない期間では、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値を大きくすることで、スイッチング素子2のサージ電圧が抑制される。これにより、スイッチング素子2のスイッチング損失を増加させずに、スイッチング素子2のサージ電圧を抑制することができる。その結果、最適なスイッチング素子2を選択することで、コストダウン化を図ることが可能となる。また、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsを検出することにより、十分な検出電圧が得られる。これにより、バラツキやノイズに対するロバスト性を向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、微分回路8によりスイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsを微分することにより、簡単な回路構成でスイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの電圧変化を検出することができる。
【0055】
また、本実施形態では、比較回路9により微分回路8の出力電圧を閾値と比較することにより、簡単な回路構成で可変ゲート抵抗回路5を制御することができる。
【0056】
また、本実施形態では、スイッチング素子2のターンオフ時には、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの傾きが正となるため、微分回路8の出力電圧が大きくなる。この場合、微分回路8の出力電圧が高閾値P以上であるときに、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値が小さくなる。一方、スイッチング素子2のターンオン時には、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsの傾きが負となるため、微分回路8の出力電圧が小さくなる。この場合、微分回路8の出力電圧が低閾値Q以下であるときに、可変ゲート抵抗回路5のゲート抵抗の抵抗値が小さくなる。
【0057】
また、本実施形態では、分圧回路7によりスイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsを下げるように分圧することにより、高電圧で駆動されるスイッチング素子2が使用される場合でも、微分回路8及び比較回路9を適切に動作させることができる。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、分圧回路7が備えられているが、特にその形態には限られず、スイッチング素子2が微分回路8及び比較回路9と同じ電源電圧で使用される場合には、分圧回路7は無くてもよい。この場合には、スイッチング素子2のドレインソース間電圧Vdsが微分回路8により微分されることとなる。
【0059】
また、上記実施形態では、スイッチング素子2としてMOSFETが使用されているが、スイッチング素子2としては、特にそれには限られず、バイポーラトランジスタまたはIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等を使用してもよい。スイッチング素子2がバイポーラトランジスタである場合、上記のゲート端子はベース端子に相当し、上記のドレイン端子はコレクタ端子に相当し、上記のソース端子はエミッタ端子に相当する。スイッチング素子2がIGBTである場合、上記のゲート端子はゲート端子に相当し、上記のドレイン端子はコレクタ端子に相当し、上記のソース端子はエミッタ端子に相当する。
【符号の説明】
【0060】
1…駆動回路装置、2…スイッチング素子、5…可変ゲート抵抗回路(可変抵抗回路)、7…分圧回路(電圧変化検出回路)、8…微分回路(電圧変化検出回路)、9…比較回路(制御回路)、G…ゲート端子(制御端子)、S…ソース端子(第1端子)、D…ドレイン端子(第2端子)、P…高閾値(第1閾値)、Q…低閾値(第2閾値)。