(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155292
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】インナーロータに用いられる中間体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/278 20220101AFI20241024BHJP
H02K 1/2783 20220101ALI20241024BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H02K1/278
H02K1/2783
H02K15/03 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069903
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000229645
【氏名又は名称】日本パルスモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】佐山 幸治
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CB04
5H622DD02
5H622PP03
5H622PP14
5H622PP16
5H622PP19
5H622QB09
(57)【要約】
【課題】簡便に製造可能な、中間体を提供すること。
【解決手段】中間体は、ロータコアと、未着磁ロータ磁石と、円環状の一対のリング部材と、固着部材とから成る。ロータコアは、回転軸方向に延在し、所定の長さのコア長を持つ、円筒状をしている。未着磁ロータ磁石は、ロータコアの外周に周方向に配置された、2N×M(Nは2以上の整数、Mは1以上の整数)個の未着磁磁石から成る。各未着磁磁石はコア長と等しい磁石長を持つ。一対のリング部材は、ロータコアと未着磁ロータ磁石とを回転軸方向の両端から挟むように、ロータコアの回転軸方向の両コア端面と未着磁ロータ磁石の回転軸方向の両磁石端面とに接して設けられる。固着部材は、両コア端面を一対のリング部材の内壁面に固着させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸方向に延在し、所定の長さのコア長を持つ、円筒状のロータコアと、
該ロータコアの外周に周方向に配置された、2N×M(Nは2以上の整数、Mは1以上の整数)個の未着磁磁石から成る未着磁ロータ磁石であって、各未着磁磁石は前記コア長と等しい磁石長を持つ、未着磁ロータ磁石と、
前記ロータコアと前記未着磁ロータ磁石とを前記回転軸方向の両端から挟むように、前記ロータコアの前記回転軸方向の両コア端面と前記未着磁ロータ磁石の前記回転軸方向の両磁石端面とに接して設けられる、円環状の一対のリング部材と、
前記両コア端面を前記一対のリング部材の内壁面に固着させる固着部材と、
から成る中間体。
【請求項2】
前記一対のリング部材の各々の内径は、前記ロータコアの内径と実質的に等しく、
前記一対のリング部材の各々の外径は、前記未着磁ロータ磁石の外径と実質的に等しい、
請求項1に記載の中間体。
【請求項3】
前記2N×M個の未着磁磁石の各々は、前記回転軸方向と平行に延在し、かつ前記回転軸方向と直交する横断面が扇形をした略直方体形状をしており、前記回転軸方向の外側両端部に一対の切り欠き部を持ち、
前記一対のリング部材は、
前記両コア端面および前記両磁石端面を実質的に覆う、円板状の一対のリング本体と、
該一対のリング本体の外周端から内側に略直角に曲げられて、前記一対の切り欠き部に嵌入する、円筒状の一対の突出部と、
を有する、請求項1または2に記載の中間体。
【請求項4】
前記2N×M個の未着磁磁石の各々は、
前記ロータコアの外径と実質的に等しい磁石内径を持つ内周壁面と、
前記磁石内径より長い磁石外径を持つ外周壁面と、
径方向に延在して、前記内周壁面と前記外周壁面とを両側端で接続する一対の側壁面と、
を持つ、請求項3に記載の中間体。
【請求項5】
前記2N×M個の未着磁磁石は、
前記ロータコアの外周に周方向に(360/N)°の角度で間隔をあけて配置されたN個の未着磁主磁石と、
前記ロータコアの外周に周方向に隣接する未着磁主磁石間に(2M-1)個ずつ配置された(2N×M-N)個の未着磁補助磁石と、
から成り、
前記N個の未着磁主磁石と前記(2N×M-N)個の未着磁補助磁石とは、隣接する前記側壁面同士が接触した状態で、周方向に配置されている、
請求項4に記載の中間体。
【請求項6】
前記N個の未着磁主磁石は、実質的に同じ外形を持ち、
前記(2N×M-N)個の未着磁補助磁石は、実質的に同じ外形を持つ、
請求項5に記載の中間体。
【請求項7】
前記N個の未着磁主磁石は、周方向に同じ周長さを持ち、径方向に同じ厚さを持ち、
前記(2N×M-N)個の未着磁補助磁石は、周方向に同じ周長さを持ち、径方向に同じ厚さを持つ、
請求項6に記載に中間体。
【請求項8】
前記N個の未着磁主磁石の各々は、磁化容易軸方向が径方向に略一致するように構成された磁気異方性未着磁磁石から成り、
前記(2N×M-N)個の未着磁補助磁石は、磁化容易軸方向が前記径方向に対して実質的に(90/M)°ずつずれるように構成された磁気異方性未着磁磁石から成る、
請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の中間体。
【請求項9】
前記磁気異方性未着磁磁石は、希土類未着磁磁石から成る、請求項8に記載の中間体。
【請求項10】
前記希土類未着磁磁石は、ネオジム未着磁磁石から成る、請求項9に記載の中間体。
【請求項11】
前記ロータコアは、前記両コア端面に、周方向に沿って等角度間隔で形成された複数の雌螺子を持ち、
前記一対のリング部材は、前記複数の雌螺子と対応する位置に穿設された複数の貫通孔を持ち、
前記固着部材は、前記複数の貫通孔を介して前記複数の雌螺子に螺合される複数の雄螺子から成る、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の中間体。
【請求項12】
前記固着部材は、前記両コア端面を前記一対のリング部材の内壁面に固着する接着剤から成る、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の中間体。
【請求項13】
回転軸方向に延在し、所定の長さのコア長を持つ、筒状のロータコアの第1のコア端面を、円環状の第1のリング部材の第1の内壁面に、第1の固着部材を用いて固着する第1の固着工程と、
各々が前記コア長と等しい磁石長を持つ2N×M(Nは2以上の整数、Mは1以上の整数)個の未着磁磁石から成る未着磁ロータ磁石を、当該未着磁ロータ磁石の第1の磁石端面を前記第1のリング部材の前記第1の内壁面に接触させつつ、前記ロータコアの外周に周方向に沿って配置する配置工程と、
前記ロータコアの第2のコア端面を、円環状の第2のリング部材の第2の内壁面に、第2の固着部材を用いて固着して、中間体を得る第2の固着工程と、
を含む中間体の製造方法。
【請求項14】
前記2N×M個の未着磁磁石の各々は、前記回転軸方向と平行に延在し、かつ前記回転軸方向と直交する横断面が扇形をした略直方体形状をしており、前記回転軸方向の外側下端部および外側上端部に、それぞれ、第1および第2の切り欠き部を持ち、
前記第1のリング部材は、
前記第1のコア端面および前記第1の磁石端面を実質的に覆う、円板状の第1のリング本体と、
該第1のリング本体の外周端から上方へ略直角に曲げられた円筒状の第1の突出部と、を有し、
前記第2のリング部材は、
前記第2のコア端面および前記未着磁ロータ磁石の第2の磁石端面を実質的に覆う、円板状の第2のリング本体と、
該第2のリング本体の外周端から下方へ略直角に曲げられた円筒状の第2の突出部と、を有し、
前記配置工程は、前記第1の突出部を前記第1の切り欠き部に嵌入する第1の嵌入工程を含み、
前記第2の固着工程は、前記第2の突出部を前記第2の切り欠き部に嵌入する第2の嵌入工程を含む、
請求項13に記載の中間体の製造方法。
【請求項15】
前記未着磁ロータ磁石は、N個の未着磁主磁石と(2N×M-N)個の未着磁補助磁石とから成り、
前記配置工程は、前記N個の未着磁主磁石と前記(2N×M-N)個の未着磁補助磁石とを、前記ロータコアの外周に周方向に沿って配置する工程である、
請求項14に記載の中間体の製造方法。
【請求項16】
前記N個の未着磁主磁石の各々は、磁化容易軸方向が径方向に略一致するように構成された磁気異方性未着磁磁石から成り、
前記(2N×M-N)個の未着磁補助磁石は、磁化容易軸方向が前記径方向に対して実質的に(90/M)°ずつずれるように構成された磁気異方性未着磁磁石から成る、
請求項15に記載の中間体の製造方法。
【請求項17】
前記ロータコアは、
前記第1のコア端面に周方向に沿って等角度間隔で形成された複数の第1の雌螺子と、
前記第2のコア端面に周方向に沿って等角度間隔で形成された複数の第2の雌螺子と、を持ち、
前記第1のリング部材は、前記複数の第1の雌螺子と対応する位置に穿設された複数の第1の貫通孔を持ち、
前記第2のリング部材は、前記複数の第2の雌螺子と対応する位置に穿設された複数の第2の貫通孔を持ち、
前記第1の固着工程は、前記第1の固着部材としての複数の第1の雄螺子を、前記複数の第1の貫通孔を介して前記複数の第1の雌螺子に螺合する工程から成り、
前記第2の固着工程は、前記第2の固着部材としての複数の第2の雄螺子を、前記複数の第2の貫通孔を介して前記複数の第2の雌螺子に螺合する工程を含む、
請求項14から請求項16のいずれか一項に記載の中間体の製造方法。
【請求項18】
前記第1の固着工程は、前記第1の固着部材として接着剤を使用して、前記第1のコア端面を前記第1のリング部材の前記第1の内壁面に固着する工程から成り、
前記第2の固着工程は、前記第2の固着部材として接着剤を使用して、前記第2のコア端面を前記第2のリング部材の前記第2の内壁面に固着する工程を含む、
請求項14から請求項16のいずれか一項に記載の中間体の製造方法。
【請求項19】
請求項13から請求項18のいずれか一項に記載の製造方法によって得られた、前記中間体を着磁して、インナーロータを得る工程を含む、
インナーロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のインナーロータに用いられる中間体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、回転電動機(モータ)と発電機とに分類される。回転電動機(モータ)は、電気エネルギを機械的運動エネルギへと変換する。発電機は、機械的運動エネルギを電気エネルギへと変換する。このような回転電機は、ロータ(回転子)とステータ(固定子)とを含む。
【0003】
また、回転電機は、ロータがステータの外側に備えられる「アウターロータ型回転電機」と、ロータがステータの内側に備えられる「インナーロータ型回転電機」とに分類される。このように、ステータの外側に備えられるロータは「アウターロータ」と呼ばれ、ステータの内側に備えられるロータは「インナーロータ」と呼ばれる。インナーロータは、磁石をロータ表面に配置するSPM(Surface Permanent Magnet)方式と、磁石をロータの鉄心内部に組み込むIPM(Interior Permanent Magnet)方式とに分類される。
【0004】
本発明は、SPM方式のインナーロータに係る。SPM方式のインナーロータは、例えば、円柱形状のシャフトなどの被回転体に設けられる円筒形状のロータコアと、このロータコアの外周に配置されるロータ磁石とからなる。ロータ磁石は、ロータコアの外周に固定される複数の永久磁石からなる。このようなロータ磁石として、磁気特性のさらなる向上のために、いわゆる「ハルバッファ配列磁石」を用いることが提案されている。本発明は、特に、ロータ磁石としてハルバッファ配列磁石を用いる場合における、インナーロータの製造方法に関する。ハルバッファ配列磁石では、永久磁石の磁極を、例えば、90°ずつ回転させながら配列しているので、磁石配列の一方の側の磁場が弱まり、その磁石配列の他方の側では、その分磁場が強くなって、永久磁石の配列の片側に強い磁場を発生させることができる。
【0005】
ハルバッファ配列磁石では、一般的に、径方向に着磁された複数の主磁石と、周方向に着磁された複数の補助磁石とが周方向に交互に配置されている。しかしながら、着磁方向はこれに限定されない。
【0006】
上述したインナーロータを製造する場合、ロータコアの外周にロータ磁石(ハルバッファ配列磁石)を固定する必要がある。その固定方法は、従来から提案されている。
【0007】
特許文献1に開示された固定方法では、ロータコアの周囲に、全て永久磁石を接着剤で仮固定した後、ロータ磁石の両端部の切り欠き部に磁石固定用のリング部材を嵌めることで行っている。リング部材は、切り欠き部に対応する大きさに形成されている。
【0008】
ロータ磁石がハルバッファ配列磁石からなる場合、上述したように、一般的に、複数の主磁石と複数の補助磁石とを周方向に交互に配置させる必要がある。しかしながら、このような配置をする際、ハルバッファ配列磁石では、主磁石と補助磁石との間の吸引、反発作用等によって、位置ずれが発生し易く組み立てにくいという欠点がある。その結果、製造されたハルバッファ配列磁石に所望の特性が得られなくなる可能性がある。
【0009】
このような問題に対処する方法として、主磁石および補助磁石として予め着磁された永久磁石ブロックを使用する代わりに、未着磁の磁石ブロックを配列させて組立体を形成しておき、この組立体に対して、後から着磁処理を行うことが提案されている。
【0010】
例えば、特許文献2は、従来に比べて高い生産性を有する「ハルバッファ磁石の製造方法」を開示している。特許文献2に開示された製造方法は、磁化容易軸が所定の方向に配列された3つ以上の未着磁磁石素材を準備し、各未着磁磁石素材を相互に接着させて、組立体を構成する工程(組立工程)と、組立体に曲線状のパルス磁場を印加して、組立体を着磁させる工程(着磁工程)と、を有する。着磁工程により、各未着磁磁石素材は磁石ブロックとなり、少なくとも一組の、隣接する磁石ブロック同士の磁化方向のなす角度θ(ただし0≦θ≦180°とする)は、30°~120°の範囲となる。各未着磁磁石素材は、略直方体形状である。組立工程において、各未着磁磁石素材は直線状に配列される。
【0011】
また、特許文献3は、磁力が高く、モータのトルクを向上させることができる洗濯機の「ロータの製造方法」を開示している。特許文献3に開示された製造方法は、未着磁の主マグネットと未着磁の補助マグネットとを樹脂成型型において周方向に交互に配置して円環状または円弧状に並べるマグネット配置工程と、樹脂成型型に樹脂を充填して樹脂モールドする樹脂成型工程と、樹脂モールドされた主マグネットと補助マグネットを着磁する後着磁工程と、を備える。
【0012】
詳述すると、特許文献3は、主として、モータが、ロータがステータの外側に備えられたアウターロータ型誘導モータである場合について記載している。モータは、シャフトと、ロータ(回転子)と、ステータ(固定子)と、を有する。ステータのステータコイルに交流電流を流して回転磁界を発生させることにより、ロータが回転する。シャフトはロータに連結されており、ロータの回転に合わせて回転する。シャフトの回転軸は、洗濯機の回転槽の回転軸Oと一致する。ロータは、円筒状の周壁部と、ロータマグネットと、を有する。ロータマグネットは、複数の矩形板状の永久磁石からなり、周壁部の内面に固定されている。ロータマグネットは、主マグネットと補助マグネットとを有する。主マグネットと補助マグネットとは、周方向Cに交互に配置されている。主マグネットと補助マグネットとは、長手軸方向が平行になるように並んで配列されている。隣り合う主マグネットと補助マグネットとは、樹脂モールドされている。主マグネットと補助マグネットとは、磁気配向が異なる。主マグネットは、径方向Rに磁気配向された磁石である。補助マグネットは、周方向Cに磁気配向され、主マグネットの間に配置された磁石である。ロータマグネットは、いわゆるハルバッファ配列磁石である。
【0013】
次に、特許文献3に開示されているロータの製造方法について説明する。作業者は、未着磁の主マグネットと、未着磁の補助マグネットとを樹脂成形型に挿入する。作業者は、主マグネットと補助マグネットとを周方向Cに交互に配置し、円環状に並べる(マグネット配置工程)。作業者は、主マグネットと補助マグネットとを、長手方向が平行となるように並べて配列する。次に、作業者は樹脂成形型に樹脂を充填し、成形されたロータマグネットを取り出す(樹脂成型工程)。次に、作業者はロータマグネットを着磁装置に挿入して、主マグネットと補助マグネットとを着磁する(後着磁工程)。後着磁工程は、同極着磁工程と異極着磁工程とを有する。
【0014】
特許文献3に開示された着磁装置は、第一ないし第四着磁ヨークを有する。第一着磁ヨークと第二着磁ヨークとは対向して配置され、一個の主マグネットの板厚方向の両側に配置される。第一着磁ヨークは径方向Rの外側に配置され、第二磁極ヨークは径方向Rの内側に配置される。第三着磁ヨークと第四着磁ヨークとは対向して配置されている。第三着磁ヨークと第四着磁ヨークとは、第一着磁ヨークと第二着磁ヨークが挟み込む主マグネットの隣の主マグネットの板厚方向の両側に配置される。第三着磁ヨークは径方向Rの外側に配置され、第四着磁ヨークは径方向Rの内側に配置される。着磁装置は、例えば、全ての主マグネットと全ての補助マグネットを同時に着磁可能な個数の着磁ヨークを有してもよい。作業者は、まず同極着磁工程を実施する。作業者は、次に異極着磁工程を実施する。作業者は、同極着磁工程と異極着磁工程とを繰り返して、ロータマグネットをハルバッファ配列磁石にする。
【0015】
なお、特許文献3は、上記樹脂成形型の代わりに、円環状のコアを用いる製造方法も開示している。この場合、マグネット配置工程において、未着磁の主マグネットと未着磁の補助マグネットとを周方向に交互に配置して円環状のコアの内部に並べている。そのため、樹脂成型工程が不要となる。
【0016】
このようなロータの製造方法によれば、マグネット配置工程において、主マグネットおよび補助マグネットはどちらも未着磁であるため、互いに接触させた状態を維持できる。ロータはインナーロータであってもよい。また、特許文献3は、その
図30で変形例を開示している。この変形例において、補助マグネットは、異方性フェライト磁石である。補助マグネットは、磁化容易軸方向が周方向Cに略一致するように配置される。そのため、補助マグネットは周方向Cに着磁させやすい。主マグネットは、異方性フェライト磁石である。主マグネットは、磁化容易軸方向が径方向Rに略一致するように配置されている。そのため、主マグネットは径方向Rに着磁させやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2015-142484号公報
【特許文献2】特開2018-201018号公報
【特許文献3】特開2021-93899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述した特許文献2、3には、それぞれ、次に述べるような問題がある。
【0019】
特許文献2に開示された各未着磁磁石素材は、略直方体の形状をしている。そのため、特許文献2に開示された製造方法では、基本的に、直線状に配列された組立体しか得られない。よって、特許文献2によって製造されたハルバッファ配列磁石は、リニアモータにしか適用できず、本発明が対象としている回転電機には適用できない。また、特許文献2の組立工程では、各未着磁磁石素材を相互に接着させて、組立体を構成している。よって、組立体を構成するためには、各未着磁磁石素材を接着させる必要があるので、手間や時間がかかるという問題もある。
【0020】
一方、特許文献3に開示された製造方法では、樹脂成形型に未着磁の主マグネットと補助マグネットとを周方向に交互に配置するマグネット配置工程の後、樹脂成形型に樹脂を充填して樹脂モールドする樹脂成型工程が必須である。よって、ロータを製造するために手間や時間がかかるという問題がある。また、樹脂成形型の代わりに円環状のコアを使用した場合には、マグネット配置工程において、未着磁の主マグネットと未着磁の補助マグネットとを周方向に交互に配置して円環状のコアの内部に並べる必要がある。よって、マグネット配置工程に、手間や時間がかかってしまう。さらに、特許文献3に開示された製造方法では、後着磁工程において、同極着磁工程と異極着磁工程とを繰り返してロータマグネットをハルバッファ配列磁石にする必要がある。よって、後着磁工程に、非常に手間と時間がかかるという問題もある。なお、特許文献3は、「同時に着磁可能」なことも記載しているが、その場合に、具体的にどのように着磁ヨークを配置するのか、また、具体的にどのように同時に後着磁するのかについて何ら記載していない。
【0021】
したがって、本発明の目的は、簡便に製造可能な、中間体およびその製造方法を提供することにある。
【0022】
本発明の他の目的は、説明が進むにつれて明らかになるだろう。
【0023】
尚、本発明の説明で示される上方、上端、上部、上面の文言は、本発明に係る中間体(インナーロータ)における垂直方向(上下方向)のそれらを示し、下方、下端、下部、下面の文言は、本発明に係る中間体(インナーロータ)における垂直方向(上下方向)のそれらを示すものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の例示的な態様によれば、回転軸方向に延在し、所定の長さのコア長を持つ、円筒状のロータコアと;該ロータコアの外周に周方向に配置された、2N×M(Nは2以上の整数、Mは1以上の整数)個の未着磁磁石から成る未着磁ロータ磁石であって、各未着磁磁石は前記コア長と等しい磁石長を持つ、未着磁ロータ磁石と;前記ロータコアと前記未着磁ロータ磁石とを前記回転軸方向の両端から挟むように、前記ロータコアの前記回転軸方向の両コア端面と前記未着磁ロータ磁石の前記回転軸方向の両磁石端面とに接して設けられる、円環状の一対のリング部材と;前記両コア端面を前記一対のリング部材の内壁面に固着させる固着部材と;から成る中間体が得られる。
【0025】
上記中間体において、前記一対のリング部材の各々の内径は、前記ロータコアの内径と実質的に等しく、前記一対のリング部材の各々の外径は、前記未着磁ロータ磁石の外径と実質的に等しい、ことが好ましい。
【0026】
また、上記中間体において、前記2N×M個の未着磁磁石の各々は、前記回転軸方向と平行に延在し、かつ前記回転軸方向と直交する横断面が扇形をした略直方体形状をしており、前記回転軸方向の外側両端部に一対の切り欠き部を持つことが望ましい。この場合、前記一対のリング部材は、前記両コア端面および前記両磁石端面を実質的に覆う、円板状の一対のリング本体と;該一対のリング本体の外周端から内側に略直角に曲げられて、前記一対の切り欠き部に嵌入する、円筒状の一対の突出部と;を有する。また、前記2N×M個の未着磁磁石の各々は、前記ロータコアの外径と実質的に等しい磁石内径を持つ内周壁面と;前記磁石内径より長い磁石外径を持つ外周壁面と;径方向に延在して、前記内周壁面と前記外周壁面とを両側端で接続する一対の側壁面と;を持つ。
【0027】
さらに、上記中間体において、前記2N×M個の未着磁磁石は、前記ロータコアの外周に周方向に(360/N)°の角度で間隔をあけて配置されたN個の未着磁主磁石と、前記ロータコアの外周に周方向に隣接する未着磁主磁石間に(2M-1)個ずつ配置された(2N×M-N)個の未着磁補助磁石と、から成ってよい。この場合、前記N個の未着磁主磁石と前記(2N×M-N)個の未着磁補助磁石とは、隣接する前記側壁面同士が接触した状態で、周方向に配置される。前記N個の未着磁主磁石は、実質的に同じ外形を持ち、前記(2N×M-N)個の未着磁補助磁石は、実質的に同じ外形を持ってよい。前記N個の未着磁主磁石は、周方向に同じ周長さを持ち、径方向に同じ厚さを持ち、前記(2N×M-N)個の未着磁補助磁石は、周方向に同じ周長さを持ち、径方向に同じ厚さを持ってよい。
【0028】
また、上記中間体において、前記N個の未着磁主磁石の各々は、磁化容易軸方向が径方向に略一致するように構成された磁気異方性未着磁磁石から成り、前記(2N×M-N)個の未着磁補助磁石は、磁化容易軸方向が前記径方向に対して実質的に(90/M)°ずつずれるように構成された磁気異方性未着磁磁石から成ることが好ましい。この場合、前記磁気異方性未着磁磁石は、例えば、希土類未着磁磁石から成ってよい。前記希土類未着磁磁石は、ネオジム未着磁磁石から成ってよい。
【0029】
さらに、上記中間体において、前記ロータコアは、前記両コア端面に、周方向に沿って等角度間隔で形成された複数の雌螺子を持ち、前記一対のリング部材は、前記複数の雌螺子と対応する位置に穿設された複数の貫通孔を持ってよい。この場合、前記固着部材は、前記複数の貫通孔を介して前記複数の雌螺子に螺合される複数の雄螺子から成ってよい。その代わりに、前記固着部材は、前記両コア端面を前記一対の円環状のリング部材の内壁面に固着する接着剤から成ってよい。
【0030】
本発明の他の例示的な態様によれば、回転軸方向に延在し、所定の長さのコア長を持つ、筒状のロータコアの第1のコア端面を、円環状の第1のリング部材の第1の内壁面に、第1の固着部材を用いて固着する第1の固着工程と;各々が前記コア長と等しい磁石長を持つ2N×M(Nは2以上の整数、Mは1以上の整数)個の未着磁磁石から成る未着磁ロータ磁石を、当該未着磁ロータ磁石の第1の磁石端面を前記第1のリング部材の前記第1の内壁面に接触させつつ、前記ロータコアの外周に周方向に沿って配置する配置工程と;前記ロータコアの第2のコア端面を、円環状の第2のリング部材の第2の内壁面に、第2の固着部材を用いて固着して、中間体を得る第2の固着工程と;を含む中間体の製造方法が得られる。
【0031】
上記中間体の製造方法において、前記2N×M個の未着磁磁石の各々は、前記回転軸方向と平行に延在し、かつ前記回転軸方向と直交する横断面が扇形をした略直方体形状をしており、前記回転軸方向の外側下端部および外側上端部に、それぞれ、第1および第2の切り欠き部を持ち、前記第1のリング部材は、前記第1のコア端面および前記第1の磁石端面を実質的に覆う、円板状の第1のリング本体と;該第1のリング本体の外周端から上方へ略直角に曲げられた円筒状の第1の突出部と;を有し、前記第2のリング部材は、前記第2のコア端面および前記未着磁ロータ磁石の第2の磁石端面を実質的に覆う、円板状の第2のリング本体と;該第2のリング本体の外周端から下方へ略直角に曲げられた円筒状の第2の突出部と;を有することが好ましい。この場合、前記配置工程は、前記第1の突出部を前記第1の切り欠き部に嵌入する第1の嵌入工程を含み、前記第2の固着工程は、前記第2の突出部を前記第2の切り欠き部に嵌入する第2の嵌入工程を含む。
【0032】
また、上記中間体の製造方法において、前記未着磁ロータ磁石は、N個の未着磁主磁石と(2N×M-N)個の未着磁補助磁石とから成ってよい。この場合、前記配置工程は、前記N個の未着磁主磁石と前記(2N×M-N)個の未着磁補助磁石とを、前記ロータコアの外周に周方向に沿って配置する工程である。また、前記N個の未着磁主磁石の各々は、磁化容易軸方向が径方向に略一致するように構成された磁気異方性未着磁磁石から成り、前記(2N×M-N)個の未着磁補助磁石は、磁化容易軸方向が前記径方向に対して実質的に(90/M)°ずつずれるように構成された磁気異方性未着磁磁石から成ることが好ましい。
【0033】
上記中間体の製造方法において、前記ロータコアは、前記第1のコア端面に周方向に沿って等角度間隔で形成された複数の第1の雌螺子と;前記第2のコア端面に周方向に沿って等角度間隔で形成された複数の第2の雌螺子と;を持ち、前記第1のリング部材は、前記複数の第1の雌螺子と対応する位置に穿設された複数の第1の貫通孔を持ち、前記第2のリング部材は、前記複数の第2の雌螺子と対応する位置に穿設された第2の複数の貫通孔を持ってよい。この場合、前記第1の固着工程は、前記第1の固着部材としての複数の第1の雄螺子を、前記複数の第1の貫通孔を介して前記複数の第1の雌螺子に螺合する工程から成り、前記第2の固着工程は、前記第2の固着部材としての複数の第2の雄螺子を、前記複数の第2の貫通孔を介して前記複数の第2の雌螺子に螺合する工程を含む。その代わりに、前記第1の固着工程は、前記第1の固着部材として接着剤を使用して、前記第1のコア端面を前記第1のリング部材の前記第1の内壁面に固着する工程から成り、前記第2の固着工程は、前記第2の固着部材として接着剤を使用して、前記第2のコア端面を前記第2のリング部材の前記第2の内壁面に固着する工程を含んでよい。
【0034】
本発明のさらに他の例示的な態様によれば、上記に記載の製造方法によって得られた、前記中間体を着磁して、インナーロータを得る工程を含む、インナーロータの製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、簡便に製造可能な、中間体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る中間体の分解斜視図である。
【
図2】
図1に示した中間体に使用される、ロータコアの外周に未着磁ロータ磁石を配置した状態を示す平面図である。
【
図3】
図2に示した未着磁ロータ磁石を構成する、1個の未着磁主磁石の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図2に示した未着磁ロータ磁石を構成する、1個の未着磁補助磁石の外観を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る中間体の製造方法の流れを示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係るインナーロータの製造方法の流れを示す図である。
【
図7】
図2に示す状態において、20個の未着磁主磁石と20個の未着磁補助磁石とを同時に着磁する状態を示す平面図である。
【
図8】
図2に示す状態において、20個の未着磁主磁石と20個の未着磁補助磁石とを着磁した後の状態を示す平面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る中間体に使用される、ロータコアの外周に未着磁ロータ磁石を配置した状態を示す平面図である。
【
図10】
図9に示した未着磁ロータ磁石を構成する、1個の未着磁主磁石の外観を示す斜視図である。
【
図11】
図9に示した未着磁ロータ磁石を構成する、1個の第1の未着磁補助磁石の外観を示す斜視図である。
【
図12】
図9に示した未着磁ロータ磁石を構成する、1個の第2の未着磁補助磁石の外観を示す斜視図である。
【
図13】
図9に示した未着磁ロータ磁石を構成する、1個の第3の未着磁補助磁石の外観を示す斜視図である。
【
図14】
図9に示す状態において、20個の未着磁主磁石と60個の未着磁補助磁石とを同時に着磁する状態を示す平面図である。
【
図15】
図9に示す状態において、20個の未着磁主磁石と60個の未着磁補助磁石とを着磁した後の状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<第1の実施形態>
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る中間体10について説明する。本明細書中において、「中間体」とは、最終製品であるインナーロータを製造するために着磁(後着磁)する前の組立体を意味する。換言すれば、中間体(組立体)10を着磁(後着磁)することによって、インナーロータを製造することができる。中間体10の回転軸(中心軸)は、インナーロータの回転軸(中心軸)と一致する。着磁する前の磁石は「未着磁磁石」と呼ばれる。
【0038】
図1は中間体10の分解斜視図である。ここでは、
図1に示されるように、直交座標系(X,Y,Z)を使用している。
図1に図示した状態では、直交座標系(X,Y,Z)において、X軸方向は前後方向(奥行方向)であり、Y軸方向は左右方向(幅方向)であり、Z軸方向は上下方向(高さ方向;垂直方向;鉛直方向)である。これらの方向は、方向を説明するために用いるのであって、本発明を限定する趣旨ではない。また、インナーロータ(中間体10)の回転軸(中心軸)をPで示し、周方向をCで示し、径方向をRで示すことにする。
図1では、中間体10の回転軸(中心軸)Pは、鉛直方向Zに延びている。
【0039】
インナーロータは、ステータの内側に備えられ、インナーロータ型回転電機に用いられる。回転電機は、回転電動機(モータ)であっても、発電機であってもよい。
図1に示される中間体10は、磁石をロータの表面に配置するSPM(Surface Permanent Magnet)方式のインナーロータに用いられる中間体である。
【0040】
前述したように、SPM方式のインナーロータは、例えば、円柱形状のシャフトのような被回転体に設けられる円筒形状のロータコアと、このロータコアの外周に配置されるロータ磁石とからなる。ロータ磁石は、ロータコアの外周に固定される複数の永久磁石からなる。
図1に示す中間体10は、このロータ磁石の代わりに、後述するような未着磁ロータ磁石を用いる。したがって、中間体10の未着磁ロータ磁石を、後述するように着磁装置を用いて着磁(後着磁)することによって、SPM方式のインナーロータが製造される。
【0041】
図示の中間体10は、ロータコア12と、未着磁ロータ磁石14と、円環状の一対のリング部材16と、固着部材18とから成る。
【0042】
ロータコア12は、例えば、円柱形状のシャフト(図示せず)のような被回転体に設けられる部材である。シャフトの外径とロータコア12の内径とは等しい。ロータコア12は、回転軸P方向に延在している。ロータコア12は、所定の長さLのコア長を持つ。図示のロータコア12は、円筒状の強磁性体から成る。なお、図示のロータコア12では、その材質として強磁性体を用いているが、非磁性部材を用いてもよい。ロータコア12は、回転軸P方向に対して下側のコア下端面(
図1では図示せず)と、回転軸P方向に対して上側のコア上端面12Uと、を持つ。コア下端面は第1のコア端面とも呼ばれ、コア上端面12Uは第2のコア端面とも呼ばれる。
【0043】
但し、ロータコア12は、シャフト以外にも、客先の用途により色々なものに取付けられてよい。例えば、いわゆるビルトインモータとして、シャフトを介さずに、ロータコア12を客先の装置の主軸に直接組み込むようにしてもよい。また、ロータコア12の内側に、ボールスクリューのナット部やギヤを入れ込んでもよい。このように、シャフトに限らず、ユーザ(客先)が回転させたいもの(被回転体)を、ロータコア12の内側に固定することが可能である。
【0044】
未着磁ロータ磁石14は、ロータコア12の外周に周方向Cに配置される。未着磁ロータ磁石14は、2N×M個の未着磁磁石142から成る。ここで、Nは2以上の整数であり、Mは1以上の整数である。
図1に示す例では、Nは20に等しく、Mは1に等しい。すなわち、
図1に示す未着磁ロータ磁石14は、40個の未着磁磁石142から成る。各未着磁磁石142は、上記コア長Lと等しい磁石長を持つ。各未着磁磁石142の構造については、後で図面を参照して詳細に説明する。
【0045】
一対のリング部材16は、ロータコア12および未着磁ロータ磁石14の回転軸P方向の両端側(すなわち、下端側および上端側)に設けられる。下端側に設けられるリング部材16は下側リング部材16Lとも呼ばれ、上端側に設けられるリング部材は上側リング部材16Uとも呼ばれる。下側リング部材16Lと上側リング部材16Uとは、実質的に同一の形状をしている。また、下側リング部材16Lは第1のリング部材とも呼ばれ、上側リング部材16Uは第2のリング部材とも呼ばれる。
【0046】
一対のリング部材16は、ロータコア12と未着磁ロータ磁石14とを回転軸P方向の両端から挟むように構成される。すなわち、一対のリング部材16は、ロータコア12の回転軸P方向の両コア端面と未着磁ロータ磁石14の回転軸P方向の両磁石端面とに接して設けられる。一対のリング部材16の各々の内径は、ロータコア12の内径と実質的に等しい。また、一対のリング部材16の各々の外径は、未着磁ロータ磁石14の外径と実質的に等しい。一対のリング部材16の具体的な構造については、後で詳細に説明する。
【0047】
固着部材18は、ロータコア12の両コア端面を一対のリング部材16の内壁面に固着させるための部材である。固着部材18の具体例については、後で詳細に説明する。
【0048】
上述したように、本第1の実施形態に係る中間体10は、ロータコア12と未着磁ロータ磁石14とを、一対のリング部材16と固着部材18とを用いて固定するような構成をしているので、中間体10を簡便に製造することが可能である。
【0049】
40個の未着磁磁石142の各々は、回転軸P方向と平行に延在し、かつ回転軸Pと直交する横断面が扇形をした略直方体形状をしている。すなわち、40個の未着磁磁石142の各々は、内周壁面と、外周壁面と、一対の側壁面と、磁石下端面と、磁石上端面とを持つ。内周壁面は、ロータコア12の外径と実質的に等しい磁石内径を持つ。外周壁面は、この磁石内径より長い磁石外径を持つ。一対の側壁面は、径方向Rに延在して、内周壁面と外周壁面とを両側端で接続する。
【0050】
40個の未着磁磁石142の各々は、回転軸P方向の外側両端部(すなわち、外側下端部および外側上端部)に一対の切り欠き部144を持つ。一方、一対のリング部材16は、円板状の一対のリング本体162と、円筒状の一対の突出部164と、を有する。一対のリング本体162は、ロータコア12の両コア端面および未着磁ロータ磁石14の両磁石端面を実質的に覆う部材である。一対の突出部164は、一対のリング本体162の外周端から内側に略直角に曲げられて、上記一対の切り欠き部144に嵌入する部材である。
【0051】
詳述すると、各未着磁磁石142の外側下端部に形成された切り欠き部144は下側切り欠き部144Lとも呼ばれ、各未着磁磁石142の外側上端部に形成された切り欠き部144は上側切り欠き部144Uとも呼ばれる。下側切り欠き部144Lは第1の切り欠き部とも呼ばれ、上側切り欠き部144Uは第2の切り欠き部とも呼ばれる。
【0052】
下側リング部材(第1のリング部材)16Lは、円板状の下側リング本体162Lと、円筒状の下側突出部164Lと、を有する。下側リング本体162Lは、ロータコア12のコア下端面および未着磁ロータ磁石14の磁石下端面を実質的に覆う部材である。下側突出部164Lは、下側リング本体162Lの外周端から上方へ略直角に曲げられて、下側切り欠き部(第1の切り欠き部)144Lに嵌入する部材である。下側リング本体162Lは第1のリング本体とも呼ばれ、下側突出部164Lは第1の突出部とも呼ばれる。第1のリング本体162Lは第1の内壁面162Laを持つ。
【0053】
同様に、上側リング部材(第2のリング部材)16Uは、円板状の上側リング本体162Uと、円筒状の上側突出部164Uと、を有する。上側リング本体162Uは、ロータコア12のコア上端面および未着磁ロータ磁石14の磁石上端面を実質的に覆う部材である。上側突出部164Uは、上側リング本体162Uの外周端から下方へ略直角に曲げられて、上側切り欠き部(第2の切り欠き部)144Uに嵌入する部材である。上側リング本体162Uは第2のリング本体とも呼ばれ、上側突出部164Uは第2の突出部とも呼ばれる。第2のリング本体162Uは第2の内壁面(
図1では図示されない)を持つ。
【0054】
このように、本第1の実施形態に係る中間体10では、一対のリング部材16が40個の未着磁磁石142の一対の切り欠き部144に嵌入する一対の突出部164を備えているので、ロータコア12と未着磁ロータ磁石14とをより強固に固定することが可能である。
【0055】
次に、
図1に加えて
図2をも参照して、未着磁ロータ磁石14の構成について説明する。
図2は、ロータコア12の外周に未着磁ロータ磁石14を配置した状態を示す平面図である。
【0056】
本第1の実施形態においては、40個の未着磁磁石142は、ロータコア12の外周に周方向Cに18°の角度で間隔をあけて配置された20個の未着磁主磁石142Mと、ロータコア12の外周に周方向Cに隣接する未着磁主磁石142M間に1個ずつ配置された20個の未着磁補助磁石142Sと、から成る。20個の未着磁主磁石142Mと20個の未着磁補助磁石142Sとは、隣接する上記側壁面同士が接触した状態で、周方向Cに交互に配置されている。
【0057】
20個の未着磁主磁石142Mは、実質的に同じ外形を持つ。20個の未着磁補助磁石142Sも、実質的に同じ外形を持つ。詳述すると、20個の未着磁主磁石142Mは、周方向Cに同じ周長さを持ち、径方向Rに同じ厚さを持つ。同様に、20個の未着磁補助磁石142Sも、周方向Cに同じ周長さを持ち、径方向Rに同じ厚さを持つ。
【0058】
図3は1個の未着磁主磁石142Mの外観を示す斜視図であり、
図4は1個の未着磁補助磁石142Sの外観を示す斜視図である。本第1の実施形態において、未着磁主磁石142Mと未着磁補助磁石142Sとは、実質的に同じ外形をしている。それらの間の相違点は、後述するように、磁化容易軸方向にある。
【0059】
図3に示されるように、未着磁主磁石142Mは、磁化容易軸方向が径方向Rに略一致するように構成された磁気異方性未着磁磁石から成る。それに対して、
図4に示されるように、未着磁補助磁石142Sは、磁化容易軸方向が周方向Cに略一致するように構成された磁気異方性未着磁磁石から成る。換言すれば、20個の未着磁補助磁石142Sは、磁化容易軸方向が径方向Rに対して実質的に90°ずれるように構成された磁気異方性未着磁磁石から成る。本第1の実施形態では、磁気異方性未着磁磁石としてネオジム未着磁磁石を使用している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、磁気異方性未着磁磁石としてネオジム未着磁磁石以外の他の希土類未着磁磁石を用いてもよい。
【0060】
なお、ネオジム未着磁磁石のような希土類未着磁磁石は、フェライト未着磁磁石と比較して着磁しにくいが、着磁した後に、フェライト未着磁磁石よりも大きい磁力を得ることができる。
【0061】
図3に示されるように、未着磁主磁石142Mは、回転軸P方向と平行に延在し、かつ回転軸P方向と直交する横断面が扇形をした略直方体形状をしている。そして、未着磁主磁石142Mは、回転軸P方向の外側両端部(すなわち、外側下端部と外側上端部)に一対の切り欠き部144を持つ。なお、
図3から明らかにように、未着磁主磁石142Mの角部はすべて面取りされている。
【0062】
図4に示されるように、未着磁補助磁石142Sも、回転軸P方向と平行に延在し、かつ回転軸P方向と直交する横断面が扇形をした略直方体形状をしている。そして、未着磁補助磁石142Sも、回転軸P方向の外側両端部(すなわち、外側下端部と外側上端部)に一対の切り欠き部144を持つ。なお、
図4から明らかにように、未着磁補助磁石142Sの角部もすべて面取りされている。
【0063】
上述したように、未着磁主磁石142Mおよび未着磁補助磁石142Sの各々において、外側下端部に設けられた切り欠き部144は下側切り欠き部144Lとも呼ばれ、外側上端部に設けられた切り欠き部144は上側切り欠き部144Uとも呼ばれる。また、下側切り欠き部144Lは第1の切り欠き部とも呼ばれ、上側切り欠き部144Uは第2の切り欠き部とも呼ばれる。
【0064】
図3に示されるように、未着磁主磁石142Mは、主内周壁面142M2と、主外周壁面142M4と、一対の主側壁面142M6と、磁石下端面142Lと、磁石上端面142Uとを持つ。主内周壁面142M2は、ロータコア12の外径と実質的に等しい磁石内径を持つ。主外周壁面142M4は、磁石内径よりも長い磁石外径を持つ。一対の主側壁面142M6は、径方向Rに延在して、主内周側面142M2と主外周側面142M4とを両端側で接続する。
【0065】
図4に示されるように、同様に、未着磁補助磁石142Sは、補助内周壁面142S2と、補助外周壁面142S4と、一対の補助側壁面142S6と、磁石下端面142Lと、磁石上端面142Uとを持つ。補助内周壁面142S2は、ロータコア12の外径と実質的に等しい磁石内径を持つ。補助外周壁面142S4は、磁石内径よりも長い磁石外径を持つ。一対の補助側壁面142S6は、径方向Rに延在して、補助内周側面142S2と補助外周側面142S4とを両端側で接続する。
【0066】
したがって、
図2に示されるように、20個の未着磁主磁石142Mと20個の未着磁補助磁石142Sとをロータコア12の外周に周方向Cに交互に配置した際、互いに隣接する主側壁面142M6と補助側壁面142S6とが接触することが分かる。
【0067】
図1に戻って、本実施形態における固着部材18について詳細に説明する。
【0068】
ロータコア12は、両コア端面(すなわち、コア下端面およびコア上端面)に、周方向Cに沿って等角度間隔で形成された複数の雌螺子122を持つ。本第1の実施形態では、等角度間隔は90°間隔であるので、ロータコア12は、合計で、8つの雌螺子122を持つ。コア下端面に形成された4つの雌螺子122は4つの下側雌螺子(
図1には図示されず)とも呼ばれ、コア上端面に形成された4つの雌螺子122は4つの上側雌螺子122Uとも呼ばれる。また、4つの下側雌螺子は4つの第1の雌螺子とも呼ばれ、4つの上側雌螺子122Uは4つの第2の雌螺子とも呼ばれる。
【0069】
一対のリング部材16は、上記8つの雌螺子122と対応する位置に穿設された8つの貫通孔166を持つ。詳述すると、下側リング部材(第1のリング部材)16Lは、4つの下側雌螺子(4つの第1の雌螺子)と対応する位置に穿設された4つの下側貫通孔166Lを持つ。したがって、4つの下側貫通孔166Lも、回転軸Pを中心として周方向Cに沿って90°間隔に形成される。同様に、上側リング部材(第2のリング部材)16Uは、4つの上側雌螺子(4つの第2の雌螺子)122Uと対応する位置に穿設された4つの上側貫通孔166Uを持つ。したがって、4つの上側貫通孔166Uも、回転軸Pを中心として周方向Cに沿って90°間隔に形成される。4つの下側貫通孔166Lは4つの第1の貫通孔とも呼ばれ、4つの上側貫通孔166Uは4つの第2の貫通孔とも呼ばれる。
【0070】
本第1の実施形態では、固着部材18は、8つの貫通孔166を介して8つの雌螺子122に螺合される8つの雄螺子182から成る。詳述すると、固着部材18は、回転軸P方向に対して下側に設けられる下側固着部材18Lと、回転軸P方向に対して上側に設けられる上側固着部材18Uとから成る。下側固着部材18Lは4つの下側雄螺子182Lを有し、上側固着部材18Uは4つの上側雄螺子182Uを有する。下側固着部材18Lは第1の固着部材とも呼ばれ、上側固着部材18Uは第2の固着部材とも呼ばれる。4つの下側雄螺子182Lは4つの第1の雄螺子とも呼ばれ、4つの上側雄螺子182Uは4つの第2の雄螺子とも呼ばれる。4つの下側雄螺子(4つの第1の雄螺子)182Lは、4つの下側貫通孔(4つの第1の貫通孔)166Lを介して4つの下側雌螺子(4つの第1の雌螺子)に螺合される部材である。4つの上側雄螺子(4つの第2の雄螺子)182Uは、4つの上側貫通孔(4つの第2の貫通孔)166Uを介して4つの上側雌螺子(4つの第2の雌螺子)122Uに螺合される部材である。
【0071】
なお、8つの雄螺子182が8つの貫通孔166を介して8つの雌螺子122に螺合された際、8つの雄螺子182の螺子頭は、それぞれ、8つの貫通孔166内に嵌入される。よって、8つの雄螺子182の螺子頭が一対のリング部材16の主面よりも回転軸P方向の外側へ突出することはない。
【0072】
本第1の実施形態では、固着部材18として8つの雄螺子182を使用しているが、固着部材はこれに限定されない。例えば、本発明では、固着部材として接着剤を用いてもよい。この場合、ロータコア12の両コア端面(すなわち、コア下端面およびコア上端面12U)が、一対のリング部材16の内壁面に接着剤で固着される。詳述すると、ロータコア12のコア下端面(第1のコア端面)が、接着剤を使用して、下側リング部材(第1のリング部材)16Lの下側内壁面(第1の内壁面)162Laに固着される。同様に、ロータコア12のコア上端面(第2のコア端面)12Uが、接着剤を使用して、上側リング部材(第2のリング部材)16Uの上側内壁面(第2の内壁面)に固着される。
【0073】
固着部材として接着剤を使用する場合、8つの雌螺子122や8つの貫通孔166は不要である。
【0074】
なお、下側リング部材(第1のリング部材)16Lは、下側リング本体(第1のリング本体)162Lに、回転軸Pを中心として互いに対向した位置に形成された、2つの下側開口部168Lを持つ。2つの下側開口部168Lは、2つの第1の開口部とも呼ばれる。同様に、上側リング部材(第2のリング部材)16Uは、上側リング本体(第2のリング本体)162Uに、回転軸Pを中心として互いに対向した位置に形成された、2つの上側開口部168Uを持つ。2つの上側開口部168Uは、2つの第2の開口部とも呼ばれる。
【0075】
これら4つの開口部168L、168Uは、当該中間体10を後述するような着磁装置を用いて着磁(後着磁)する際に、中間体10の角度方向(周方向C)の位置を決めるために使用される孔である。詳述すると、着磁装置は、複数の着磁ヨークと、これら着磁ヨークの各々に巻き回された着磁コイルとを含む。着磁ヨークには、上記4つの開口部168L、168Uに嵌る4本のピンが設けられている。4本のピンと4つの開口部168L、168Uとを合わせることで、着磁コイルと未着磁磁石142とが所定の位置になるように設定される。
【0076】
(中間体の製造方法)
図5を参照して、中間体10を製造する製造方法について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る中間体10の製造方法の流れを示す図である。
【0077】
まず、ロータコア12の第1のコア端面(コア下端面)を、第1のリング部材16Lの第1の内壁面162Laに、第1の固着部材を用いて固着する(ステップS101:第1の固着工程)。
【0078】
詳述すると、このステップS101では、第1の固着部材として4つの第1の雄螺子182Lを、第1のリング部材16Lに形成された4つの第1の貫通孔166Lを介して、ロータコア12の第1のコア端面(コア下端面)に設けられている4つの第1の雌螺子に螺合する。このとき、4つの第1の雄螺子182Lの螺子頭は、4つの第1の貫通孔166Lに嵌入する。
【0079】
これにより、ロータコア12は、第1のリング部材16Lの第1の内壁面162La上に立設して固定されることになる。
【0080】
なお、この第1の固着工程では、第1の固着部材として、4つの第1の雄螺子182Lの代わりに、接着剤を用いてもよい。この場合、接着剤を使用して、ロータコア12の第1のコア端面(コア下端面)を第1のリング部材16Lの第1の内壁面162Laに固着する。
【0081】
引き続いて、治具(図示せず)を用いて、未着磁ロータ磁石14を、当該未着磁ロータ磁石14の磁石下端面142Lを第1のリング部材16Lの第1の内壁面162Laに接触させつつ、ロータコア12の外周に周方向Cに沿って所定の位置に配置する(ステップS102:配置工程)。
【0082】
詳述すると、このステップS102では、治具を用いて、20個の未着磁主磁石142Mと20個の未着磁補助磁石142Sとを、ロータコア12の外周に周方向Cに沿って交互に配置する。このとき、第1のリング部材16Lの第1の突出部164Lが、40個の未着磁磁石142の各々に形成されている第1の切り欠き部144Lに嵌入する。
【0083】
したがって、20個の未着磁主磁石142Mと20個の未着磁補助磁石142Sとを、ロータコア12の外周に周方向Cに沿って交互に容易に配置することが可能となる。
【0084】
これにより、
図2に示されるように、未着磁ロータ磁石14がロータコア12の外周に周方向Cに沿って配置される。
【0085】
最後に、ロータコア12の第2のコア端面(コア上端面)12Uを、第2のリング部材16Uの第2の内壁面に、第2の固着部材を用いて固着する(ステップS103:第2の固着工程)。
【0086】
詳述すると、このステップS103では、第2の固着部材として4つの第2の雄螺子182Uを、第2のリング部材16Uに形成された4つの第2の貫通孔166Uを介して、ロータコア12の第2のコア端面(コア上端面)12Uに設けられている4つの第2の雌螺子122Uに螺合する。このとき、4つの第2の雄螺子182Uの螺子頭は、4つの第2の貫通孔166Uに嵌入する。また、第2のリング部材16Uの第2の突出部164Uが、40個の未着磁磁石142の各々に形成されている第2の切り欠き部144Uに嵌入する。
【0087】
したがって、未着磁ロータ磁石14を、ロータコア12の外周に、確実に容易に強固に固定することが可能となる。
【0088】
なお、この第2の固着工程では、第2の固着部材として、4つの第2の雄螺子182Uの代わりに、接着剤を用いてもよい。この場合、接着剤を使用して、ロータコア12の第2のコア端面(コア上端面)12Uを第2のリング部材16Uの第2の内壁面に固着する。
【0089】
以上の工程によって、中間体10を簡便に製造することができる。
【0090】
(インナーロータの製造方法)
図6を参照して、インナーロータを製造する製造方法について説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態に係るインナーロータの製造方法の流れを示す図である。
【0091】
図5の工程によって製造された中間体10を、着磁装置(図示せず)に挿入して、20個の未着磁主磁石142Mと20個の未着磁補助磁石142Sとを着磁する(ステップS201:後着磁工程)。
【0092】
このステップS201によって、中間体10は、SPM方式のインナーロータに変化する。
【0093】
詳述すると、着磁装置は、未着磁ロータ磁石14よりも径方向R外側にのみ設けられた複数の着磁ヨークを備えている。本第1の実施形態では、着磁装置は20本の着磁ヨークを備えている。したがって、着磁装置は、ロータコア12よりも径方向R内側には、着磁ヨークを備えていない。各着磁ヨークは鉄心から成る。各着磁ヨークの鉄心には、着磁コイルが巻き回されている。中間体10を着磁装置に挿入する際、上述したように、着磁ヨークに設けられている4個のピンを、上記4つの開口部168L、168Uにそれぞれ嵌める。これにより、着磁コイルと未着磁磁石142とが所定の位置になるように設定される。このとき、着磁ヨークの鉄心が未着磁磁石142の所定の位置に当たる。
【0094】
上記特許文献3に記載されているような、未着磁磁石を樹脂でコーティングする場合とは異なり、本第1の実施形態では、20個の未着磁主磁石142Mおよび20個の未着磁補助磁石142Sは外部に露出している。よって、本第1の実施形態では、着磁ヨークの鉄心をできるだけ未着磁磁石142に近づけることが可能である。よって、着磁装置によって中間体10に対して強い磁場をかけることが可能となる。
【0095】
この状態において、着磁装置の着磁コイルに電流を流すことで、
図7に示すように、20個の未着磁主磁石142Mと20個の未着磁補助磁石142Sとを同時に着磁する。なお、
図7に示された矢印は、磁化方向を示している。すなわち、本第1の実施形態に係る後着磁工程は、着磁装置のすべての着磁コイルに電流を流すという、一回の工程である。
図7から、未着磁ロータ磁石14は、隣接する未着磁磁石142間で、磁化方向が実質的に90°ずつ異なる態様で着磁されることが分かる。
【0096】
この後着磁工程によって、
図2に示されている20個の未着磁主磁石142Mおよび20個の未着磁補助磁石142Sは、それぞれ、
図8に示されるような、20個の主磁石142MTおよび20個の補助磁石142STに変化する。すなわち、
図2に示された未着磁ロータ磁石14は、
図8に示されたようなロータ磁石14Tに変化する。
図8から明らかなように、ロータ磁石14Tはハルバッファ配列磁石である。なお、
図8から、ロータ磁石14Tは、周方向Cに18°毎に、磁極の向きが逆転していることに注意されたい。
【0097】
以上の説明から明らかなように、着磁装置を使用して、中間体10からSPM方式のインナーロータを製造することができる。
【0098】
<第2の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施形態に係る中間体20について説明する。本第2の実施形態に係る中間体20は、未着磁ロータ磁石の構成が後述するように相違する点を除いて、
図1に図示した第1の実施形態に係る中間体10と同様の構成を有する。したがって、未着磁ロータ磁石に24の参照符号を付している。以下では、第2の実施形態に係る中間体20において、上述した第1の実施形態に係る中間体10の構成要素と同一の機能を有するものには同一の参照符号を付し、説明の簡略化のために、それらの説明については省略する。
【0099】
よって、中間体20は、ロータコア12と、未着磁ロータ磁石24と、円環状の一対のリング部材16と、固着部材18とから成る。
【0100】
次に、
図9を参照して、未着磁ロータ磁石24の構成について説明する。
図9は、ロータコア12の外周に未着磁ロータ磁石24を配置した状態を示す平面図である。
【0101】
未着磁ロータ磁石24は、ロータコア12の外周に周方向Cに配置される。未着磁ロータ磁石24は、2N×M個の未着磁磁石242から成る。ここで、Nは2以上の整数であり、Mは1以上の整数である。
図9に示す例では、Nは20に等しく、Mは2に等しい。すなわち、
図9に示す未着磁ロータ磁石24は、80個の未着磁磁石242から成る。各未着磁磁石242は、上記コア長Lと等しい磁石長を持つ。
【0102】
80個の未着磁磁石242の各々は、回転軸P方向と平行に延在し、かつ回転軸Pと直交する横断面が扇形をした略直方体形状をしている。すなわち、80個の未着磁磁石242の各々は、内周壁面と、外周壁面と、一対の側壁面と、磁石下端面と、磁石上端面とを持つ。内周壁面は、ロータコア12の外径と実質的に等しい磁石内径を持つ。外周壁面は、この磁石内径より長い磁石外径を持つ。一対の側壁面は、径方向Rに延在して、内周壁面と外周壁面とを両側端で接続する。
【0103】
80個の未着磁磁石242の各々は、回転軸P方向の外側両端部(すなわち、外側下端部および外側上端部)に一対の切り欠き部244を持つ。一方、前述したように、一対のリング部材16は、円板状の一対のリング本体162と、円筒状の一対の突出部164と、を有する。一対のリング本体162は、ロータコア12の両コア端面および未着磁ロータ磁石24の両磁石端面を実質的に覆う。そして、一対の突出部164は、一対のリング本体162の外周端から内側に略直角に曲げられて、上記一対の切り欠き部244に嵌入する。
【0104】
詳述すると、各未着磁磁石242の外側下端部に形成された切り欠き部244は下側切り欠き部244Lとも呼ばれ、各未着磁磁石242の外側上端部に形成された切り欠き部244は上側切り欠き部244Uとも呼ばれる。下側切り欠き部244Lは第1の切り欠き部とも呼ばれ、上側切り欠き部244Uは第2の切り欠き部とも呼ばれる。
【0105】
本第2の実施形態においては、80個の未着磁磁石242は、ロータコア12の外周に周方向Cに18°の角度で間隔をあけて配置された20個の未着磁主磁石242Mと、ロータコア12の外周に周方向Cに隣接する未着磁主磁石242M間に3個ずつ配置された60個の未着磁補助磁石242Sと、から成る。20個の未着磁主磁石242Mと60個の未着磁補助磁石242Sとは、隣接する上記側壁面同士が接触した状態で、周方向Cに配置されている。
【0106】
詳述すると、60個の未着磁補助磁石242Sは、3種類に分類される。第1の種類の未着磁補助磁石242Sは第1の未着磁補助磁石242S-1と呼ばれ、第2の種類の未着磁補助磁石242Sは第2の未着磁補助磁石242S-2と呼ばれ、第3の種類の未着磁補助磁石242Sは第3の未着磁補助磁石242S-3と呼ばれる。したがって、60個の未着磁補助磁石242Sは、20個の第1の未着磁補助磁石242S-1と、20個の第2の未着磁補助磁石242S-2と、20個の第3の未着磁補助磁石242S-3と、から成る。
【0107】
20個の未着磁主磁石242Mは、実質的に同じ外形を持つ。60個の未着磁補助磁石242Sも、実質的に同じ外形を持つ。詳述すると、20個の未着磁主磁石242Mは、周方向Cに同じ周長さを持ち、径方向Rに同じ厚さを持つ。同様に、60個の未着磁補助磁石242Sも、周方向Cに同じ周長さを持ち、径方向Rに同じ厚さを持つ。
【0108】
図10は1個の未着磁主磁石242Mの外観を示す斜視図であり、
図11は1個の第1の未着磁補助磁石242S-1の外観を示す斜視図であり、
図12は1個の第2の未着磁補助磁石242S-2の外観を示す斜視図であり、
図13は1個の第3の未着磁補助磁石242S-3の外観を示す斜視図である。本第2の実施形態において、未着磁主磁石242Mと第1乃至第3の未着磁補助磁石242S-1~242S-3とは、実質的に同じ外形をしている。それらの間の相違点は、後述するように、磁化容易軸方向にある。
【0109】
図10に示されるように、未着磁主磁石242Mは、磁化容易軸方向が径方向Rに略一致するように構成された磁気異方性未着磁磁石から成る。それに対して、
図11乃至
図13に示されるように、60個の未着磁補助磁石242Sは、磁化容易軸方向が径方向Rに対して実質的に45°ずつずれるように構成された磁気異方性未着磁磁石から成る。詳述すると、第1の未着磁補助磁石242S-1は、
図11に示されるように、磁化容易軸方向が径方向Rに対して、平面視、反時計回りに実質的に45°傾くように構成された磁気異方性未着磁磁石から成る。第2の未着磁補助磁石242S-2は、
図12に示されるように、磁化容易軸方向が周方向Cに略一致するように構成された磁気異方性未着磁磁石から成る。第3の未着磁補助磁石242S-3は、
図13に示されるように、磁化容易軸方向が径方向Rに対して、平面視、時計回りに実質的に45°傾くように構成された磁気異方性未着磁磁石から成る。なお、本明細書において、「実質的に45°」とは、正確に45°だけでなく、例えば、35°~55°の範囲の角度を意味するとする。本第2の実施形態でも、磁気異方性未着磁磁石としてネオジム未着磁磁石を使用している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、磁気異方性未着磁磁石としてネオジム未着磁磁石以外の他の希土類未着磁磁石を用いてもよい。
【0110】
図10に示されるように、未着磁主磁石242Mは、回転軸P方向と平行に延在し、かつ回転軸P方向と直交する横断面が扇形をした略直方体形状をしている。そして、未着磁主磁石242Mは、回転軸P方向の外側両端部(すなわち、外側下端部と外側上端部)に一対の切り欠き部244を持つ。なお、
図10から明らかなように、未着磁主磁石242Mの角部はすべて面取りされている。
【0111】
図11乃至
図13に示されるように、第1乃至第3の未着磁補助磁石242S-1~242S-3の各々も、回転軸P方向と平行に延在し、かつ回転軸P方向と直交する横断面が扇形をした略直方体形状をしている。そして、第1乃至第3の未着磁補助磁石242S-1~242S-3の各々も、回転軸P方向の外側両端部(すなわち、外側下端部と外側上端部)に一対の切り欠き部244を持つ。なお、
図11乃至
図13から明らかなように、第1乃至第3の未着磁補助磁石242S-1~242S-3の各々の角部もすべて面取りされている。
【0112】
上述したように、未着磁主磁石242Mおよび第1乃至第3の未着磁補助磁石242S-1~242S-3の各々において、外側下端部に設けられた切り欠き部244は下側切り欠き部244Lとも呼ばれ、外側上端部に設けられた切り欠き部244は上側切り欠き部244Uとも呼ばれる。また、下側切り欠き部244Lは第1の切り欠き部とも呼ばれ、上側切り欠き部244Uは第2の切り欠き部とも呼ばれる。
【0113】
図10に示されるように、未着磁主磁石242Mは、主内周壁面242M2と、主外周壁面242M4と、一対の主側壁面242M6と、磁石下端面242Lと、磁石上端面242Uとを持つ。主内周壁面242M2は、ロータコア12の外径と実質的に等しい磁石内径を持つ。主外周壁面242M4は、磁石内径よりも長い磁石外径を持つ。一対の主側壁面242M6は、径方向Rに延在して、主内周側面242M2と主外周側面242M4とを両端側で接続する。
【0114】
図11乃至
図13に示されるように、同様に、第1乃至第3の未着磁補助磁石242S-1~242S-3の各々は、補助内周壁面242S2と、補助外周壁面242S4と、一対の補助側壁面242S6と、磁石下端面242Lと、磁石上端面242Uとを持つ。補助内周壁面242S2は、ロータコア12の外径と実質的に等しい磁石内径を持つ。補助外周壁面242S4は、磁石内径よりも長い磁石外径を持つ。一対の補助側壁面242S6は、径方向Rに延在して、補助内周側面242S2と補助外周側面242S4とを両端側で接続する。
【0115】
したがって、
図9に示されるように、20個の未着磁主磁石242Mと60個の未着磁補助磁石242Sとをロータコア12の外周に周方向Cに配置した際、互いに隣接する、主側壁面242M6および補助側壁面242S6や補助側壁面242S6同士が接触することが分かる。
【0116】
中間体20を製造する方法は、
図5を参照して説明した、中間体10の製造方法と同様であるので、その説明を省略する。よって、中間体20を簡便に製造することができる。
【0117】
中間体20からインナーロータを製造する方法も、
図6を参照して説明した方法と同様である。
【0118】
すなわち、着磁装置の着磁コイルに電流を流すことで、
図14に示すように、20個の未着磁主磁石242Mと60個の未着磁補助磁石242Sとを同時に着磁する。なお、
図14に示された矢印は、磁化方向を示している。すなわち、本第2の実施形態に係る後着磁工程も、着磁装置のすべての着磁コイルに電流を流すという、一回の工程である。
図14から、未着磁ロータ磁石24は、隣接する未着磁磁石242間で、磁化方向が実質的に45°ずつ異なる態様で着磁されることが分かる。
【0119】
この後着磁工程によって、
図9に示されている20個の未着磁主磁石242Mと60個の未着磁補助磁石242Sとは、それぞれ、
図15に示されるような、20個の主磁石242MTと60個の補助磁石242STとに変化する。60個の補助磁石242STは、20個の第1の補助磁石242ST-1と、20個の第2の補助磁石242ST-2と、20個の第3の補助磁石242ST-3と、から成る。すなわち、
図9に示された未着磁ロータ磁石24は、
図15に示されたようなロータ磁石24Tに変化する。
図15から明らかなように、ロータ磁石24Tはハルバッファ配列磁石である。なお、
図15から、ロータ磁石24Tも、周方向Cに18°毎に、磁極の向きが逆転していることに注意されたい。
【0120】
以上のように、着磁装置を使用して、中間体20からSPM方式のインナーロータを製造することができる。
【0121】
なお、このようにして製造されたSPM方式のインナーロータを備えたSPMモータは、上述した第1の実施形態において製造されたSPM方式のインナーロータを備えたSPMモータと比較して、磁石の枚数が増えるという不利益があるものの、コギングトルクが小さくなり、速度リップルも小さくなるという利点がある。よって、このようなSPMモータを、速度の精度が必要な装置、例えば、マイクロスコープの位置決めのためのXYステージ用モータとして使用することが可能となる。
【0122】
換言すれば、
図8に示したロータ磁石14Tと比較して、
図15に示したロータ磁石24Tは、周方向Cの磁束密度を連続的に測定したときに、測定した磁束密度分布を正弦波に近づけることができる。逆に言えば、測定した磁束密度分布が正弦波に近づくように、未着磁補助磁石242Sの磁化容易軸方向を35°~55°の範囲で調整すればよい。
【0123】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0124】
例えば、上述した第1および第2の実施形態では、未着磁ロータ磁石14および24を構成する未着磁磁石142および242の個数(2N×M)のMが、それぞれ、1および2である場合を例に挙げて説明したが、本発明において、Mは、一般的に、1以上の整数であればよい。その場合、2N×M個の未着磁磁石は、ロータコア12の外周に周方向Cに(360/N)°の角度で間隔をあけて配置されたN個の未着磁主磁石と、ロータコア12の外周に周方向Cに隣接する未着磁主磁石間に(2M-1)個ずつ配置された(2N×M-N)個の未着磁補助磁石と、から成る。そして、N個の未着磁主磁石と(2N×M-N)個の未着磁補助磁石とは、隣接する側壁面同士が接触した状態で、周方向Cに配置される。そして、N個の未着磁主磁石の各々は、磁化容易軸方向が径方向Rに略一致するように構成された磁気異方性未着磁磁石から成り、(2N×M-N)個の未着磁補助磁石は、磁化容易軸方向が径方向Rに対して実質的に(90/M)°ずつずれるように構成された磁気異方性未着磁磁石から成ることが好ましい。なお、Mの数が大きくなればなるほど、上述した測定した磁束密度分布をより正確に正弦波に近づけることができる。
【0125】
また、例えば、上述した第1および第2の実施形態では、最終的に製造すべきSPM方式のインナーロータのロータ磁石14Tおよび24Tがハルバッファ配列磁石である場合を例に挙げて説明したが、本発明は、ハルバッファ配列磁石に限定されない。例えば、製造されるべきロータ磁石は、通常のインナーロータに使用されているような、径方向Rに着磁された永久磁石であってもよい。この場合、中間体を構成する未着磁ロータ磁石の複数の未着磁磁石は、すべて、磁化容易軸方向が径方向Rに略一致するように構成された磁気異方性未着磁磁石から成る。
【符号の説明】
【0126】
10 中間体
12 ロータコア
12U 第2のコア端面(コア上端面)
122 雌螺子
122U 第2の雌螺子(上側雌螺子)
14 未着磁ロータ磁石
14T ロータ磁石
142 未着磁磁石
142M 未着磁主磁石
142M2 主内周壁面
142M4 主外周壁面
142M6 主側壁面
142MT 主磁石
142S 未着磁補助磁石
142S2 補助内周壁面
142S4 補助外周壁面
142S6 補助側壁面
142ST 補助磁石
142L 磁石下端面
142U 磁石上端面
144 切り欠き部
144L 第1の切り欠き部(下側切り欠き部)
144U 第2の切り欠き部(上側切り欠き部)
16 リング部材
16L 第1のリング部材(下側リング部材)
16U 第2のリング部材(上側リング部材)
162 リング本体
162L 第1のリング本体(下側リング部材)
162La 第1の内壁面
162U 第2のリング本体(上側リング本体)
164 突出部
164L 第1の突出部(下側突出部)
164U 第2の突出部(上側突出部)
166 貫通孔
166L 第1の貫通孔(下側貫通孔)
166U 第2の貫通孔(上側貫通孔)
168L 第1の開口部(下側開口部)
168U 第2の開口部(上側開口部)
18 固着部材
18L 第1の固着部材(下側固着部材)
18U 第2の固着部材(上側固着部材)
182 雄螺子
182L 第1の雄螺子(下側雄螺子)
182U 第2の雄螺子(上側雄螺子)
20 中間体
24 未着磁ロータ磁石
24T ロータ磁石
242 未着磁磁石
242M 未着磁主磁石
242M2 主内周壁面
242M4 主外周壁面
242M6 主側壁面
242MT 主磁石
242S 未着磁補助磁石
242S-1 第1の未着磁補助磁石
242S-2 第2の未着磁補助磁石
242S-3 第3の未着磁補助磁石
242S2 補助内周壁面
242S4 補助外周壁面
242S6 補助側壁面
242ST 補助磁石
242ST-1 第1の補助磁石
242ST-2 第2の補助磁石
242ST-3 第3の補助磁石
242L 磁石下端面
242U 磁石上端面
244 切り欠き部
244L 第1の切り欠き部(下側切り欠き部)
244U 第2の切り欠き部(上側切り欠き部)
P 回転軸(中心軸)
X 前後方向(奥行方向)
Y 左右方向(横方向)
Z 上下方向(高さ方向;垂直方向;鉛直方向)
C 周方向
R 径方向