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特開2024-155293樹脂製検査路の状態監視方法および樹脂製検査路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155293
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】樹脂製検査路の状態監視方法および樹脂製検査路
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20241024BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20241024BHJP
   E04G 21/18 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
E01D22/00 A
G01M99/00 Z
E04G21/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069905
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】間宮 聡
(72)【発明者】
【氏名】硲 昌也
(72)【発明者】
【氏名】大篠 正人
(72)【発明者】
【氏名】松村 信
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 篤史
【テーマコード(参考)】
2D059
2E174
2G024
【Fターム(参考)】
2D059EE10
2D059GG02
2D059GG39
2E174AA02
2E174DA40
2G024AD34
2G024CA04
2G024DA04
(57)【要約】
【課題】樹脂製検査路の状態監視を、目視に頼ることなく、簡単な方法・手段で定量的に行えるようにする。
【解決手段】樹脂製検査路の長手方向中央部の床材1の下面に、ひずみ測定手段としてのひずみゲージ6を幅方向に複数並ぶ状態で取り付け、各ひずみゲージ6に配線7を介してデータロガー8を接続して、ひずみゲージ6で測定されたひずみ値やそのひずみ値から算出されるたわみ量のデータをデータロガー8に記録し、記録したデータと予め設定した健全度判定基準とを比較して検査路の健全度を判定する構成とした。この構成によれば、検査路の状態を目視で確認する必要がなく、定量的な状態監視を簡単に行うことができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製検査路にひずみ測定手段を取り付け、前記ひずみ測定手段で測定されたひずみ値またはそのひずみ値から算出されるたわみ量に基づいて、予め設定した健全度判定基準を用いて前記樹脂製検査路の健全度を判定する樹脂製検査路の状態監視方法。
【請求項2】
前記樹脂製検査路を構成する床材に中空部が設けられており、前記ひずみ測定手段に接続される配線を前記床材の中空部に収納することを特徴とする請求項1に記載の樹脂製検査路の状態監視方法。
【請求項3】
前記ひずみ測定手段がひずみゲージであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂製検査路の状態監視方法。
【請求項4】
床材に中空部が設けられた樹脂製検査路において、ひずみ測定手段が取り付けられ、前記ひずみ測定手段に接続される配線が前記床材の中空部に収納されていることを特徴とする樹脂製検査路。
【請求項5】
前記配線に前記ひずみ測定手段で測定されたひずみ値のデータを外部に向けて発信するデータ発信手段が接続されており、前記データ発信手段が前記床材の中空部に設置されていることを特徴とする請求項4に記載の樹脂製検査路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等の保守点検を行うための樹脂製検査路の状態監視方法とその状態監視方法の対象となる樹脂製検査路に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や鉄道等の鋼製の橋梁は、一般に、表面の錆や疲労亀裂の発生の有無を目視で確認する点検作業を定期的に行い、必要に応じて補修することにより維持管理を行っている。また、橋梁の維持管理作業の効率化を図るため、疲労亀裂を継続的にモニタリングするシステムも提案されている。例えば、特許文献1で提案されている疲労亀裂モニタリングシステムでは、橋梁の亀裂が発生しやすい箇所に線状センサを取り付け、線状センサの両端に接続したデータロガーで線状センサに通電した際の抵抗値を測定し、その測定データを管理センタに送信して表示することにより、管理センタで橋梁の亀裂進展度合等の状態を遠隔監視できるようにしている。
【0003】
一方、橋梁の点検や補修を行うために橋梁に付設されている検査路は、従来は鋼製のものが多かったが、近年では、軽量化と耐腐食性を考慮して繊維強化樹脂(FRP)で製造することが多くなっている(例えば、特許文献2参照。)。そのFRP製検査路に代表される樹脂製検査路では、表面に錆や減肉が発生しないため、鋼製のものよりも外観で劣化を判断しにくいという問題がある。また、樹脂製検査路の状態監視を行うモニタリングシステムも、現状では見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-75301号公報
【特許文献2】特許第6915218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、樹脂製検査路の状態監視を、目視に頼ることなく、簡単な方法・手段で定量的に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の樹脂製検査路の状態監視方法は、樹脂製検査路にひずみ測定手段を取り付け、前記ひずみ測定手段で測定されたひずみ値またはそのひずみ値から算出されるたわみ量に基づいて、予め設定した健全度判定基準を用いて前記樹脂製検査路の健全度を判定する構成(構成1)を採用した。
【0007】
上記の構成1によれば、樹脂製検査路の状態を目視で確認する必要がなく、樹脂製検査路の任意の位置のひずみ値またはそのひずみ値から算出されるたわみ量に基づいて、定量的な状態監視を簡単に行うことができる。
【0008】
上記構成1において、前記樹脂製検査路を構成する床材に中空部が設けられている場合は、前記ひずみ測定手段に接続される配線を前記床材の中空部に収納する構成とすることにより(構成2)、その配線の損傷を生じにくくすることができる。
【0009】
上記構成1または2において、前記ひずみ測定手段としてはひずみゲージを用いることができる(構成3)。
【0010】
また、本発明の樹脂製検査路は、上記構成2の状態監視方法に対応して、床材に中空部が設けられた樹脂製検査路において、ひずみ測定手段が取り付けられ、前記ひずみ測定手段に接続される配線が前記床材の中空部に収納されているものとすることができる(構成4)。
【0011】
上記構成4の樹脂製検査路においては、前記配線に前記ひずみ測定手段で測定されたひずみ値のデータを外部に向けて発信するデータ発信手段が接続されており、前記データ発信手段が前記床材の中空部に設置されている構成とすることができる(構成5)。このようにすれば、データ発信手段を床材の中空部内で保護した状態で、そのデータ発信手段から発信されるひずみ値のデータを検査路の設置現場から離れた管理センタ等の事務所に送信し、そこで樹脂製検査路の状態を遠隔監視できるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上述したように、樹脂製検査路にひずみ測定手段を取り付け、ひずみ値またはそのひずみ値から算出されるたわみ量に基づいて、樹脂製検査路の状態監視を、目視に頼ることなく、簡単かつ定量的に行えるようにしたものであるから、樹脂製検査路の効率的な維持管理に大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の樹脂製検査路の側面図
図2図1のII-II線に沿った断面図(樹脂製検査路の状態監視方法の説明図)
図3図2の断面の付近を下方から見た斜視図
図4】第2実施形態の樹脂製検査路の状態監視方法の説明図
図5】ひずみゲージ取り付け位置の変形例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。図1乃至図3は、第1実施形態の樹脂製検査路とその状態監視方法を示す。この樹脂製検査路(以下、単に「検査路」とも称する。)は、橋梁等の建造物(図示省略)から張り出した支持架台(ブラケット)10に載置・固定される床材1と、床材1の両側部に間隔をおいて立設される支柱2と、支柱2に取り付けられる複数の手摺3と、床材1の両側部に沿って延びる爪先板4とを備えている。その支柱2は、手摺3が取り付けられる本体部2aと、本体部2aの下端部分に取り付けられる補強部2bとからなる。床材1、支柱2、手摺3および爪先板4はFRP製であるが、支柱2の補強部2bは強度・剛性を重視してステンレス鋼製もしくは防錆用途のメッキが施された鋼材製とされる場合もある。
【0015】
床材1は、図2および図3に示すように、上面部11と下面部12と両側面部13とからなる中空の板状をなし、その幅方向の複数箇所に上面部11と下面部12との間で長手方向に延びるリブ14を有する一体成形品(主桁と床版とを一体化したもの)である。床材1の下面部12には、床材1の側面部13と各支柱2との締結部の近傍にそれぞれ円形の取付孔15が設けられ、これらの取付孔15を利用して支柱2の床材1への締結が行えるようになっている。
【0016】
また、図1乃至図3に示すように、支柱2は、その本体部2aと補強部2bがいずれも2つの帯板部分からなる断面L字状の部材であり、それぞれの一方の帯板部分が、床材1の側面部13に、その側面部13の内側面から外向きに貫通するボルトとナットで固定され、他方の帯板部分どうしが互いを貫通するボルトとナットで固定されている。
【0017】
各手摺3は、丸パイプ状の部材であり、床材1の長手方向に並ぶ複数の支柱2の他方の帯板部分を貫通する状態で、その貫通位置の前後をそれぞれ固定具5で支柱2に固定されている。
【0018】
爪先板4は、その下向きの側端面を床材1の上面部11に当接させる状態で配置され、支柱2の本体部2aと補強部2bのそれぞれの一方の帯板部分にボルトとナットで固定されている。
【0019】
そして、この実施形態の検査路では、後述する状態監視を行うために、長手方向中央部の床材1の下面に、ひずみ測定手段としてのひずみゲージ6が幅方向に複数並ぶ状態で取り付けられている。各ひずみゲージ6は、それぞれ床材1の下面に接着剤で貼り付けられており、十分な防水性ならびに電気絶縁性が得られるように、ブチルゴム(東京測器(株)の商品名:SBテープ)とその上に重ねられるブチルテープ(東京測器(株)の商品名:VMテープ)で覆われている(図示省略)。ここで、ひずみゲージ6の貼り付け位置を検査路の長手方向中央部の床材1下面としたのは、この箇所が最も曲げ応力が高くなり、たわみ量が大きくなるからである。
【0020】
また、ひずみゲージ6に接続された配線7は、床材1下面の取付孔15から中空部に入り込んでその中空部に収納されており、ひずみゲージ6との接続端と反対側の端部が床材1の一端の開口近傍に配置されている。
【0021】
この検査路の状態監視方法は、図2に示すように、定期的に作業員が専用のハンドタイプのデータロガー8を携行して検査路設置現場(現地)へ赴き、そのデータロガー8を床材1の一端の開口から引き出した配線7に接続して、ひずみゲージ6で測定されたひずみ値やそのひずみ値から算出されるたわみ量のデータをデータロガー8に記録する。データロガー8は、記録したデータと予め設定した健全度判定基準とを比較し、検査路の健全度(検査路が、例えば、健全、経過観察、警告のような複数のレベルのいずれにあるか)を判定して表示する。これにより、作業員は検査路の状態を簡単に把握することができる。
【0022】
なお、検査路のたわみ量はダイヤルゲージを用いて直接測定することもできるが、検査路に取り付けたダイヤルゲージは天候や振動の影響で落下する危険性があるため、この実施形態では、ひずみゲージ6で測定されたひずみ値からたわみ量を算出するようにしている。ひずみゲージはダイヤルゲージに比べて軽量で検査路から離脱しにくく、安全性が高い。
【0023】
そして、作業員が検査路設置現場から離れた管理センタ等の事務所に戻った後、データロガー8に記憶したデータをパソコン9に保存して整理することにより、検査路の状態の経時変化を確認することもできる。
【0024】
この実施形態の検査路およびその状態監視方法は、上記の構成であり、検査路に取り付けたひずみゲージ6で測定されるひずみ値またはそのひずみ値から算出されるたわみ量に基づいて、検査路の状態監視を、目視に頼ることなく、簡単かつ定量的に行うことができる。そして、それによって検査路の余寿命を把握できるので、検査路の効率的な維持管理に貢献することができる。
【0025】
また、ひずみゲージ6に接続される配線7は、床材1の中空部に収納するようにしたので、作業員が踏みつけたりして損傷・切断する可能性が極めて低く、検査路を正常に状態監視し続けられるようになっている。
【0026】
図4は第2実施形態の樹脂製検査路の状態監視方法を示す。この実施形態は、第1実施形態をベースとして、検査路の配線7のひずみゲージ6との接続端と反対側の端部に、ひずみゲージ6で測定されたひずみ値のデータを外部に向けて発信するデータ発信手段としての無線通信子機21を接続し、この無線通信子機21から発信されるデータをLPWA(Low Power Wide Area)通信によって事務所の無線通信親機22に送り、送られてきたデータを無線通信親機22に接続したパソコン23で整理して、検査路の状態監視を行えるようにしたものである。
【0027】
また、図示は省略するが、床材1に熱電対を貼り付け、その熱電対の配線を上記の無線通信子機21に接続すれば、遠隔での床材1の温度計測も可能となる。また、温度計測したい箇所が熱電対を貼り付けにくければ、近接させるだけでもよく、少なくとも外気温は計測可能となる。
【0028】
ここで、検査路側の無線通信子機21は、天候等の影響で落下する危険性や防水性能を考慮して、配線7と同様に床材1の中空部に設置するようにしている。また、その設置位置は、アンテナ21aを外部に出すため、床材1の一端の開口近傍としている。
【0029】
この第2実施形態では、作業員が検査路設置現場(現地)へ赴く必要がなく、検査路の状態を連続的に遠隔で監視できるので、検査路の維持管理作業をさらに効率よく行うことができる。
【0030】
上述した各実施形態では、複数のひずみゲージ6を検査路の長手方向中央部の床材1下面に貼り付けたが、ひずみゲージ6の貼り付け位置や設置数は任意に設定することができる。例えば、床材1は支持架台10の周辺部にもひずみが集中しやすいので、図5に示すように、支持架台10の近傍の床材1下面にひずみゲージ6を貼り付けて検査路の状態監視を行うこともできる。そして、現場によっては、取り付け位置によらず、ひずみゲージ6の設置数を1個だけにしてもよい。
【0031】
また、床材の取付孔は、各実施形態では床材の下面に設けたが、床材の上面または側面に設けられることもある。その場合、ひずみ測定手段(ひずみゲージ)に接続される配線は、可能な限り、取付孔から側方へ取り出すことが望ましい。そして、各実施形態と異なり床材に中空部がない場合は、可能な限り、ひずみ測定手段および配線を床材の下面や側面に取り付けることが望ましい。
【0032】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
例えば、樹脂製検査路に取り付けるひずみ測定手段は、各実施形態のようなひずみゲージに限らず、検査路に簡単に取り付けられるものであればよい。
【符号の説明】
【0034】
1 床材
2 支柱
3 手摺
6 ひずみゲージ(ひずみ測定手段)
7 配線
8 データロガー
9 パソコン
10 支持架台
15 取付孔
21 無線通信子機
22 無線通信親機
23 パソコン
図1
図2
図3
図4
図5