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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155299
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20241024BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C11/00 B
B60C11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069912
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 弘基
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131AA04
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA36
3D131BA05
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC15
3D131BC31
3D131CB12
3D131DA01
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA46
3D131DA54
3D131EA03U
3D131EA08U
3D131EA10X
3D131EB18X
3D131EB22X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
(57)【要約】
【課題】グリップ性能への影響を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できるタイヤ2の提供。
【解決手段】タイヤ2はトレッド4とベルト14とを備える。トレッド4はキャップ層38と中間層40とベース層42とを備える。ベルト14は内側層34と外側層36とを備える。トレッド4に複数の周方向主溝52が刻まれ、軸方向に並列した少なくとも3本の陸部54が構成される。少なくとも3本の陸部54はショルダー陸部54sを含む。複数の周方向主溝52はショルダー周方向主溝52sを含む。ショルダー陸部54sに周方向に連続してのびる周方向細溝50が刻まれる。周方向細溝50の溝幅はショルダー周方向主溝52sの溝幅よりも狭い。周方向細溝50はショルダー周方向主溝52sと外側層36の端36eとの間に位置する。周方向細溝50は先細りである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接地するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備え、
前記トレッドが、キャップ層と、30℃での損失正接が前記キャップ層の30℃での損失正接よりも低い中間層と、30℃での損失正接が前記中間層の30℃での損失正接よりも低いベース層とを備え、
前記キャップ層が前記中間層の径方向外側に位置し、前記ベース層が前記中間層の径方向内側に位置し、
前記キャップ層の端が前記中間層の端の軸方向内側に位置し、前記ベース層の端が前記中間層の端の軸方向内側に位置し、
前記ベルトが、内側層と、前記内側層の径方向外側に位置する外側層とを備え、
前記外側層の端が前記内側層の端の軸方向内側に位置し、
前記トレッドに、周方向に連続してのびる複数の周方向主溝が刻まれ、軸方向に並列した少なくとも3本の陸部が構成され、
少なくとも3本の陸部が、軸方向において最も外側に位置する陸部である、ショルダー陸部を含み、
複数の周方向主溝が、前記ショルダー陸部に最も近い周方向主溝である、ショルダー周方向主溝を含み、
前記ショルダー陸部に周方向に連続してのびる周方向細溝が刻まれ、
前記周方向細溝の溝幅が前記ショルダー周方向主溝の溝幅よりも狭く、
前記周方向細溝が、軸方向において、前記ショルダー周方向主溝と、前記外側層の端との間に位置し、
前記周方向細溝が、溝口から溝底に向かって先細りである、
タイヤ。
【請求項2】
前記周方向細溝の溝口での溝幅の、前記トレッドの幅に対する比率が2.5%以上3.5%以下である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記周方向細溝の前記溝口での溝幅の、前記トレッドの幅に対する比率と、前記周方向細溝の溝深さの半分位置での溝幅の、前記トレッドの幅に対する比率との差が、0.5%以上1.5%以下である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記周方向細溝の溝深さの、前記トレッドの厚さに対する比率が、60%以上95%以下である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
路面と接地するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備え、
前記トレッドが、キャップ層と、30℃での損失正接が前記キャップ層の30℃での損失正接よりも低い中間層と、30℃での損失正接が前記中間層の30℃での損失正接よりも低いベース層とを備え、
前記キャップ層が前記中間層の径方向外側に位置し、前記ベース層が前記中間層の径方向内側に位置し、
前記キャップ層の端が前記中間層の端の軸方向内側に位置し、前記ベース層の端が前記中間層の端の軸方向内側に位置し、
前記ベルトが、内側層と、前記内側層の径方向外側に位置する外側層とを備え、
前記外側層の端が前記内側層の端の軸方向内側に位置し、
前記トレッドに、周方向に連続してのびる複数の周方向主溝が刻まれ、軸方向に並列した少なくとも3本の陸部が構成され、
少なくとも3本の陸部が、軸方向において最も外側に位置する陸部である、ショルダー陸部を含み、
複数の周方向主溝が、前記ショルダー陸部に最も近い周方向主溝である、ショルダー周方向主溝を含み、
前記ショルダー陸部に周方向に連続してのびる周方向細溝が刻まれ、
前記周方向細溝の溝幅が前記ショルダー周方向主溝の溝幅よりも狭く、
前記周方向細溝が、軸方向において、前記ショルダー周方向主溝と、前記外側層の端との間に位置し、
前記周方向細溝が、溝口から溝底に向かって先細りであり、
前記周方向細溝の溝口での溝幅の、前記トレッドの幅に対する比率が2.5%以上3.5%以下であり、
前記周方向細溝の前記溝口での溝幅の、前記トレッドの幅に対する比率と、前記周方向細溝の溝深さの半分位置での溝幅の、前記トレッドの幅に対する比率との差が、0.5%以上1.5%以下である、
タイヤ。
【請求項6】
前記ショルダー周方向主溝から前記周方向細溝までの軸方向距離の、前記ショルダー周方向主溝から前記外側層の端までの軸方向距離に対する比率が15%以上55%以下である、
請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。詳細には、本発明は乗用車に装着されるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
環境への配慮から、車両に装着されるタイヤにおいては、転がり抵抗の低減が求められている。そのために、タイヤを構成する要素の数を減らす、要素の厚さを低減する、要素を構成する材料に低発熱材料を採用する等の検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-120242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、グリップ性能への影響を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るタイヤは、路面と接地するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備える。前記トレッドは、キャップ層と、30℃での損失正接が前記キャップ層の30℃での損失正接よりも低い中間層と、30℃での損失正接が前記中間層の30℃での損失正接よりも低いベース層とを備える。前記キャップ層は前記中間層の径方向外側に位置し、前記ベース層は前記中間層の径方向内側に位置する。前記キャップ層の端は前記中間層の端の軸方向内側に位置し、前記ベース層の端は前記中間層の端の軸方向内側に位置する。前記ベルトは、内側層と、前記内側層の径方向外側に位置する外側層とを備える。前記外側層の端は前記内側層の端の軸方向内側に位置する。前記トレッドに、周方向に連続してのびる複数の周方向主溝が刻まれ、軸方向に並列した少なくとも3本の陸部が構成される。少なくとも3本の陸部は、軸方向において最も外側に位置する陸部である、ショルダー陸部を含む。複数の周方向主溝は、前記ショルダー陸部に最も近い周方向主溝である、ショルダー周方向主溝を含む。前記ショルダー陸部に周方向に連続してのびる周方向細溝が刻まれる。前記周方向細溝の溝幅は前記ショルダー周方向主溝の溝幅よりも狭い。前記周方向細溝は、軸方向において、前記ショルダー周方向主溝と、前記外側層の端との間に位置する。前記周方向細溝は、溝口から溝底に向かって先細りである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、グリップ性能への影響を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
図2】トレッドに設けられる溝を説明する図である。
図3】ショルダー陸部を示す断面図である。
図4】周方向細溝を示す断面図である。
図5】トレッド部の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0009】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内側には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。リムに組まれたタイヤはタイヤ-リム組立体とも呼ばれる。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0010】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と称される。
タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を230kPaに調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、標準状態と称される。
【0011】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの切断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。なお、正規リムにタイヤを組んだ状態で確認できないタイヤの構成は、前述の切断面において確認される。
【0012】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0013】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0014】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0015】
本発明において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の損失正接(tanδ)は、JIS K6394の規定に準拠して、粘弾性スペクトロメータを用いて測定される。測定条件は以下の通りである。
初期歪み=10%
動歪み=±1%
周波数=10Hz
モード=伸長モード
温度=30℃
この測定では、試験片(長さ40mm×幅4mm×厚さ1mm)はタイヤからサンプリングされる。試験片の長さ方向は、タイヤの周方向と一致させる。タイヤから試験片をサンプリングできない場合には、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)から試験片がサンプリングされる。
本発明において損失正接は、30℃での損失正接で表される。
【0016】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
トレッド部の中央部分はクラウン部分とも呼ばれる。トレッド部の端の部分はショルダー部分とも呼ばれる。
【0017】
[本発明の基礎となった知見]
トレッドはキャップ部とベース部とを備える。キャップ部は路面と接地する。通常キャップ部には、低発熱性よりもグリップ性能が重視される。ベース部はキャップ部の径方向内側に位置する。ベース部には路面との接地は考慮されない。ベース部には低発熱性の架橋ゴムが用いられる。
低発熱性を考慮した架橋ゴムをキャップ部に用いれば、タイヤは転がり抵抗を低減できる。しかし、グリップ性能が低下する。そこで、グリップ性能を重視した架橋ゴムでキャップ部の表面層を構成するととともに、この表面層の内側に、低発熱性を考慮した架橋ゴムで構成した中間層を設けること、すなわち、トレッドの三層化が検討されている。
ところでタイヤのトレッドでは、接地状態と非接地状態とが繰り返される。クラウン部分において外向きに膨らむようにトレッド面は湾曲する。非接地状態のトレッドでは、ショルダー陸部の陸面はクラウン陸部の陸面よりも径方向内側に位置する。トレッドが路面と接地すると、トレッドは路面に押し付けられる。これにより、トレッドは変形する。クラウン陸部は径方向内向きに動き、接地面は赤道から軸方向外向きに拡がる。そして、ショルダー陸部が接地する。接地状態においてトレッドは、トレッド面が逆向きに反りかえるように変形する。
本発明者は、転がり抵抗のさらなる低減を図るために、トレッドの三層化とともに、トレッドに生じる歪みに着目した検討を進めている。その中で、本発明者は、ショルダー陸部の表面付近において歪みが多く発生すること、ショルダー陸部に細溝を刻むことでこの歪みの発生を抑制できること、そして、三層化したトレッドにおいては、細溝の断面形状が歪や発熱の低減代に深く関わっていることを見出し、以下に説明する発明を完成するに至っている。
【0018】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係るタイヤは、路面と接地するトレッドと、前記トレッドの径方向内側に位置するベルトとを備え、前記トレッドが、キャップ層と、30℃での損失正接が前記キャップ層の30℃での損失正接よりも低い中間層と、30℃での損失正接が前記中間層の30℃での損失正接よりも低いベース層とを備え、前記キャップ層が前記中間層の径方向外側に位置し、前記ベース層が前記中間層の径方向内側に位置し、前記キャップ層の端が前記中間層の端の軸方向内側に位置し、前記ベース層の端が前記中間層の端の軸方向内側に位置し、前記ベルトが、内側層と、前記内側層の径方向外側に位置する外側層とを備え、前記外側層の端が前記内側層の端の軸方向内側に位置し、前記トレッドに、周方向に連続してのびる複数の周方向主溝が刻まれ、軸方向に並列した少なくとも3本の陸部が構成され、少なくとも3本の陸部が、軸方向において最も外側に位置する陸部である、ショルダー陸部を含み、複数の周方向主溝が、前記ショルダー陸部に最も近い周方向主溝である、ショルダー周方向主溝を含み、前記ショルダー陸部に周方向に連続してのびる周方向細溝が刻まれ、前記周方向細溝の溝幅が前記ショルダー周方向主溝の溝幅よりも狭く、前記周方向細溝が、軸方向において、前記ショルダー周方向主溝と、前記外側層の端との間に位置し、前記周方向細溝が、溝口から溝底に向かって先細りである。
【0019】
このようにタイヤを整えることにより、このタイヤは、グリップ性能への影響を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる。
【0020】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載のタイヤにおいて、前記周方向細溝の溝口での溝幅の、前記トレッドの幅に対する比率が2.5%以上3.5%以下である。
【0021】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載のタイヤにおいて、前記周方向細溝の前記溝口での溝幅の、前記トレッドの幅に対する比率と、前記周方向細溝の溝深さの半分位置での溝幅の、前記トレッドの幅に対する比率との差が、0.5%以上1.5%以下である。
【0022】
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載のタイヤにおいて、前記周方向細溝の溝深さの、前記トレッドの厚さに対する比率が、60%以上95%以下である。
【0023】
[構成5]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成4]のいずれかに記載のタイヤにおいて、前記ショルダー周方向主溝から前記周方向細溝までの軸方向距離の、前記ショルダー周方向主溝から前記外側層の端までの軸方向距離に対する比率が15%以上55%以下である。
【0024】
[本発明の実施形態の詳細]
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車用空気入りタイヤである。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面(以下、子午線断面)の一部を示す。図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
図1においてタイヤ2はリムRに組まれている。リムRは正規リムである。
【0025】
図1において符号PCで示される位置は、タイヤ2の外面2Gと赤道面との交点である。交点PCはタイヤ2の赤道とも称される。赤道面上に溝が位置する場合は、溝がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて赤道PCは特定される。赤道PCはタイヤ2の径方向外端でもある。
【0026】
図1において符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端である。模様や文字等の装飾が外面2Gにある場合、外端PWは、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。
図1において両矢印WAで示される長さはタイヤ2の断面幅(JATMA等参照)である。断面幅WAは、第一外端PWから第二外端PWまでの軸方向距離である。断面幅WAはタイヤ2の最大幅であり、外端PWはこのタイヤ2が最大幅WAを示す位置(以下、最大幅位置)である。断面幅WAは正規状態のタイヤ2において特定される。
【0027】
このタイヤ2は、要素として、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、インナーライナー18、一対のクッション20及び一対のインスレーション22を備える。
【0028】
トレッド4はカーカス12の径方向外側に位置する。トレッド4は路面と接地するトレッド面24を有する。トレッド面24は径方向外向きに凸な形状を有する。
【0029】
タイヤ2の外面2Gにおいて、トレッド面24にはサイド面26が連なる。タイヤ2の外面2Gは、トレッド面24と、一対のサイド面26とを備える。
子午線断面においてトレッド面24の輪郭は、軸方向に並ぶ複数の円弧を含む。複数の円弧のうち軸方向において外側に位置する円弧はショルダー円弧であり、最小の半径Rsを有する。このショルダー円弧にサイド面26の輪郭線が連なる。
符号PTで示される位置は、ショルダー円弧と、このショルダー円弧の隣に位置する円弧との境界である。直線LTは、境界PTでショルダー円弧と接する接線である。
符号PSで示される位置は、ショルダー円弧とサイド面26の輪郭線との境界である。直線LSは、境界PSでショルダー円弧と接する接線である。
符号TEは、接線LTと接線LSとの交点である。本発明においては、この交点TEがトレッド4の基準端である。両矢印WTで示される長さは、第一の基準端TEから第二の基準端TEまでの軸方向距離である。本発明においては、軸方向距離WTがトレッド4の幅である。トレッド4の幅WTは正規状態のタイヤ2において特定される。
このタイヤ2では、トレッド4の幅WTの、タイヤ2の断面幅WAに対する比率(WT/WA)は75%以上90%以下である。
【0030】
符号PHで示される位置はトレッド面24上の位置である。位置PHは、後述する基準接地面の軸方向外端に対応する。
位置PHを特定するための接地面は、例えば、接地面形状測定装置(図示されず)を用いて得られる。接地面は、この装置において、標準状態のタイヤ2のキャンバー角を0°とした状態で、正規荷重の70%の荷重を縦荷重としてこのタイヤ2に負荷して、平面からなる路面にこのタイヤ2を接触させて得られる。このタイヤ2では、このようにして得られる接地面が基準接地面である。基準接地面の軸方向外端に対応する、トレッド面24上の位置が、前述の位置PHであり、基準接地端PHとも呼ばれる。
【0031】
図1において両矢印WHで示される長さは基準接地面の軸方向幅である。軸方向幅WHは、一方の基準接地端PHから他方の基準接地端PHまでの軸方向距離である。基準接地面の軸方向幅WHは正規状態のタイヤ2において特定される。
基準接地端PHはトレッドの基準端TEの軸方向内側に位置する。言い換えれば、基準接地面の軸方向幅WHはトレッド4の幅WTよりも狭い。具体的には、軸方向幅WHの、トレッド4の幅WTに対する比率(WH/WT)は70%以上90%以下である。
【0032】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の径方向内側に位置する。サイドウォール6はカーカス12の軸方向外側に位置する。サイドウォール6は、耐カット性を考慮した架橋ゴムからなる。
【0033】
それぞれのクリンチ8はサイドウォール6の径方向内側に位置する。図1に示されるようにクリンチ8はリムRと接触する。クリンチ8は耐摩耗性が考慮された架橋ゴムからなる。
【0034】
それぞれのビード10はクリンチ8の軸方向内側に位置する。ビード10はサイドウォール6の径方向内側に位置する。
ビード10は、コア28と、エイペックス30とを備える。コア28は周方向にのびる。図示されないが、コア28はスチール製のワイヤーを含む。エイペックス30はコア28の径方向外側に位置する。エイペックス30は径方向外向きに先細りである。エイペックス30は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
【0035】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一対のビード10である第一ビード10と第二ビード10との間を架け渡す。カーカス12は少なくとも1枚のカーカスプライ32を含む。
【0036】
このタイヤ2のカーカス12は、転がり抵抗の低減が考慮され、1枚のカーカスプライ32で構成される。図示されないが、カーカスプライ32は並列された多数のカーカスコードを含む。カーカスコードはトッピングゴムで覆われる。カーカスコードは赤道面と交差する。このタイヤ2のカーカス12はラジアル構造を有する。このタイヤ2のカーカスコードは有機繊維からなるコード(以下、有機繊維コード)である。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0037】
カーカスプライ32は、プライ本体32aと、一対の第一折り返し部32bとを含む。プライ本体32aは第一ビード10と第二ビード10との間を架け渡す。それぞれの折り返し部32bは、プライ本体32aに連なりそれぞれのビード10で軸方向内側から外側に向かって折り返される。
【0038】
ベルト14はトレッド4の径方向内側に位置する。ベルト14はカーカス12に積層される。
図1において両矢印WRで示される長さはベルト14の軸方向幅である。軸方向幅WRはベルト14の第一端14eから第二端14eまでの軸方向距離である。ベルト14の軸方向幅WRは正規状態のタイヤ2において特定される。前述の赤道面は、ベルト14の軸方向幅WRの中心においてこのベルト14と交差する。
このタイヤ2では、ベルト14の軸方向幅WRは、トレッド4の幅WTの85%以上100%以下である。
【0039】
ベルト14は、内側層34と、外側層36とを備える。内側層34はプライ本体32aの径方向外側に位置し、プライ本体32aに積層される。外側層36は内側層34の径方向外側に位置し、内側層34に積層される。
このタイヤ2では、内側層34と外側層36との間に1又は2以上の層が設けられてもよい。軽量化の観点から、ベルト14は、内側層34及び外側層36からなる2枚の層で構成されるのが好ましい。
【0040】
図1に示されるように、外側層36の端36eは内側層34の端34eの軸方向内側に位置する。外側層36は内側層34よりも狭い。外側層36の端36eから内側層34の端34eまでの長さは3mm以上10mm以下である。内側層34の端34eがベルト14の端14eである。
【0041】
図示されないが、内側層34及び外側層36はそれぞれ、並列した多数のベルトコードを含む。これらベルトコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードが赤道面に対してなす角度(ベルトコードの傾斜角度)は10度以上35度以下である。内側層34に含まれるベルトコード(内側ベルトコード)の傾斜の向きは、外側層36に含まれるベルトコード(外側ベルトコード)の傾斜の向きと逆向きである。内側ベルトコードの傾斜角度と、外側ベルトコードの傾斜角度とは、同じである。このタイヤ2のベルトコードはスチールコードである。
【0042】
バンド16は、径方向においてトレッド4とベルト14との間に位置する。バンド16はベルト14に積層される。
図示されないが、バンド16は、らせん状に巻かれたバンドコードを含む。バンドコードはトッピングゴムで覆われる。バンドコードは実質的に周方向に延びる。詳細には、バンドコードが周方向に対してなす角度は、5°以下である。バンド16はジョイントレス構造を有する。このタイヤ2のバンドコードは、有機繊維コードである。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
バンド16の端16eはベルト14の端14eの軸方向外側に位置する。ベルト14の端14eからバンド16の端16eまでの長さは3mm以上7mm以下である。バンド16はベルト14の端14eを拘束する。
【0043】
このタイヤ2のバンド16はフルバンドである。バンド16は赤道面を挟んで相対する両端を有する。バンド16はベルト14全体を覆う。バンド16はベルト14全体を拘束する。バンド16は接地面の形状変化を抑制することに貢献できる。
このバンド16が、赤道面を挟んで軸方向に離して配置され、ベルト14の端14eの部分のみを覆うように構成された一対のエッジバンドであってもよい。この場合、このバンド16はタイヤ2の軽量化に貢献する。トレッド4の剛性を高めるために、このバンド16がフルバンドと一対のエッジバンドとで構成されてもよい。軽量化と接地面の安定化との観点から、このタイヤ2のバンド16は、図1に示されたバンド16のようにフルバンドで構成されるのが好ましい。
【0044】
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー18はタイヤ2の内面2Nを構成する。インナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0045】
それぞれのクッション20は、軸方向において離して配置される。クッション20は、ベルト14の端14eとカーカス12との間に位置する。クッション20は低い剛性を有する架橋ゴムからなる。このタイヤ2においてクッション20は必須の要素ではない。タイヤ2の仕様によってはこのクッション20は設けられなくてもよい。
【0046】
それぞれのインスレーション22は、カーカス12とインナーライナー18との間に位置する。インスレーション22の第一端22eaは、ベルト14の端14eの軸方向内側に位置する。インスレーション22の第二端22ebは最大幅位置PWの径方向内側に位置する。インスレーション22の第二端22ebはビード10の径方向外側に位置する。インスレーション22は接着性が考慮された架橋ゴムからなる。
このタイヤ2では、インスレーション22が設けられている部分においては、インスレーション22を介してインナーライナー18がカーカス12に接合される。第一のインスレーション22の第一端22eaと第二のインスレーション22(図示されず)の第一端22eaとの間の部分、及び、インスレーション22の第二端22ebから内側の部分のように、インスレーション22が設けられていない部分では、インナーライナー18は直接カーカス12に接合される。インナーライナー18全体がインスレーション22によってカーカス12に接合されてもよい。転がり抵抗の低減の観点から、図1に示されるように、軸方向において離間して配置される一対のインスレーション22が設けられ、それぞれのインスレーション22がベルト14の端14eと最大幅位置PWとの間のゾーンに配置されるのが好ましい。
【0047】
このタイヤ2のトレッド4は、キャップ層38、中間層40及びベース層42を備える。キャップ層38は中間層40の径方向外側に位置する。ベース層42は中間層40の径方向内側に位置する。キャップ層38が中間層40に積層され、中間層40がベース層42に積層される。前述のトレッド面24はキャップ層38に含まれる。
図1に示されるように、キャップ層38の端38eは中間層40の端40eの軸方向内側に位置し、ベース層42の端42eは中間層40の端40eの軸方向内側に位置する。
【0048】
キャップ層38、中間層40及びベース層42はそれぞれ、異なる発熱性を有する架橋ゴムからなる。中間層40の30℃での損失正接LTmはキャップ層38の30℃での損失正接LTcよりも低い。ベース層42の30℃での損失正接LTbは中間層40の30℃での損失正接LTmよりも低い。キャップ層38が最も発熱しやすく、ベース層42が最も発熱しにくい。中間層40は、キャップ層38の発熱性とベース層42の発熱性との間の発熱性を有する。
【0049】
ベース層42の30℃での損失正接LTbは、好ましくは0.11以下である。ベース層42が転がり抵抗の低減に効果的に寄与するからである。この観点から、損失正接LTbは0.10以下がより好ましく、0.09以下がさらに好ましい。ベース層42の損失正接LTbは小さいほど好ましいので、好ましい下限は設定されない。
【0050】
中間層40の30℃での損失正接Ltmは、好ましくは0.15以下である。中間層40が転がり抵抗の低減に効果的に寄与するからである。この観点から、損失正接Ltmは0.14以下がより好ましく、0.13以下がさらに好ましい。中間層40の30℃での損失正接Ltmは、好ましくは0.11以上である。中間層40が必要な剛性を確保でき、グリップ性能の向上に効果的に貢献できるからである。この観点から、損失正接LTmは0.12以上がより好ましい。
【0051】
キャップ層38の30℃での損失正接LTcは、好ましくは0.15以上である。キャップ層38がグリップ性能の向上に貢献できるからである。この観点から、損失正接LTcは0.16以上がより好ましく、0.17以上がさらに好ましい。キャップ層38は路面に接地する。グリップ性能の向上の観点では、損失正接LTcは高いほど好ましい。しかし高い損失正接LTcは、発熱を招く。熱を帯びたキャップ層38が中間層40の温度を想定以上に高めることが懸念される。トレッド4全体の温度状態を安定に保ち、低い転がり抵抗が維持できる観点から、キャップ層38の30℃での損失正接LTcは0.30以下が好ましく、0.28以下がより好ましく、0.27以下がさらに好ましい。
【0052】
このタイヤ2のトレッド4には溝44が刻まれる。トレッド4は溝44を有する。これにより、トレッドパターンが構成される。トレッド面24のうち溝44以外の部分は陸面46とも呼ばれる。
【0053】
図2は、トレッド4に刻まれる溝44の一例を示す。図2はこの溝44の断面を示す。図2に基づいて溝44の主たる構成が説明される。
【0054】
溝44は、溝口44Mを含む一対の壁面44Wと、溝底44Tを含む底面44Bとを有する。溝44の溝幅は、一対の壁面44Wである第一壁面44Wと第二壁面44Wとの間の距離、すなわち壁面間距離で表される。
図2において両矢印WGで示される長さは、溝口44Mにおける溝44の溝幅である。溝幅WGは、溝口44Mを構成する一対のエッジ44Eである第一エッジ44Eから第二エッジ44Eまでの最短距離で表される。
溝口44Mのエッジが面取りされ、溝44の溝口44Mにテーパー加工が施されている場合は、特に言及がない限り、壁面44Wの輪郭線の延長線と、陸面46の輪郭線の延長線との交点を仮想的にエッジとして、溝口44Mにおける溝幅WGが得られる。
溝底44Tは、溝口44Mを構成する一対のエッジ44Eを結ぶ線分の法線に沿って計測されるこの線分から底面44Bまでの距離が最大となる位置で表される。一対のエッジ44Eを結ぶ線分の法線に沿って計測される、この線分から溝底44Tまでの距離が、図2において両矢印DGで示される溝深さである。
例えば、溝44の位置、溝幅WG及び溝深さDGは、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0055】
図2のA部に示される溝44aは主溝である。主溝44aは溝口44Mにおいて1.5mm以上の溝幅WGを有する。主溝44aは広い溝幅を有する。主溝44aは、タイヤ2が路面と接地しても一対の壁面44Wが互いに接触することがない溝である。
本発明においては、1.5mm以上で、トレッド4の幅WTの4%を超える溝幅WGを有する溝44が主溝である。
図2のB部に示される溝44bは細溝である。細溝44bも溝口44Mにおいて1.5mm以上の溝幅WGを有する。細溝44bは、主溝44aに比べて狭い溝幅を有する。
本発明においては、1.5mm以上で、トレッド4の幅WTの4%以下の溝幅WGを有する溝44が細溝である。
図2のC部に示される溝44cはサイプである。サイプ44cは溝口44Mにおいて1.5mm未満の溝幅WGを有する。サイプ44cは細溝44bに比べてさらに狭い溝幅を有する。
本発明においては、1.5mm未満の溝幅WGを有する溝44がサイプである。
径方向においてタイプの異なる溝を組み合わせて、溝44を構成する場合は、溝口44Mを含む部分の溝に基づいて、溝44のタイプが特定される。
【0056】
図1に示されたタイヤ2の溝44は、周方向に連続して延びる溝として、周方向溝48を含む。このタイヤ2では、軸方向に並列した複数の周方向溝48がトレッド4に刻まれる。
複数の周方向溝48のうち、軸方向において最も外側に位置する周方向溝48が周方向細溝50である。周方向細溝50とは、周方向に連続してのびる細溝である。
複数の周方向溝48のうち、一対の周方向細溝50の間に位置する周方向溝48が周方向主溝52である。周方向主溝52とは、周方向に連続してのびる主溝である。
複数の周方向溝48は、軸方向に並列した複数の周方向主溝52と、軸方向において最も外側に位置する一対の周方向細溝50とを含む。
【0057】
図1に示されたタイヤ2のトレッド4には、4本の周方向主溝52が刻まれる。
4本の周方向主溝52のうち、軸方向において最も外側に位置する周方向主溝52がショルダー周方向主溝52sである。ショルダー周方向主溝52sの軸方向内側に位置する周方向主溝52がミドル周方向主溝52mである。
トレッド4に刻まれた4本の周方向主溝52は、一対のミドル周方向主溝52mと、一対のショルダー周方向主溝52sとを含む。
【0058】
図1において両矢印dで示される長さは周方向主溝52の溝深さである。符号wで示される長さは周方向主溝52の溝口での溝幅である。
周方向主溝52の溝深さdは、トレッド4の厚さの70%以上95%以下であることが好ましい。溝深さdを特定するためのトレッド4の厚さには、溝44がないと仮定して得られる仮想厚さが用いられる。この仮想厚さは、溝深さdの計測位置におけるトレッドの厚さと溝深さdとの和で表される。
周方向主溝52の溝幅wは、トレッド4の幅WTの5%以上15%以下であることが好ましい。
【0059】
複数の周方向主溝52をトレッド4に刻むことで、このトレッド4には、軸方向に並列した少なくとも3本の陸部54が構成される。複数の周方向主溝52は、少なくとも3本の陸部54をトレッド4に構成する。
【0060】
図1に示されたトレッド4には4本の周方向主溝52が刻まれ、5本の陸部54が構成される。これら陸部54の陸面はトレッド面24に含まれる。
5本の陸部54のうち、軸方向において最も外側に位置する陸部54がショルダー陸部54sである。前述のショルダー周方向主溝52sは、ショルダー陸部54sに最も近い周方向主溝52である。
ショルダー陸部54sの軸方向内側に位置する陸部54がミドル陸部54mである。ミドル陸部54mの軸方向内側に位置する陸部54、すなわち、軸方向に並列した5本の陸部54のうち、中央に位置する陸部54が、センター陸部54cである。このタイヤ2では、センター陸部54cは赤道PCを含む。前述のミドル周方向主溝52mはミドル陸部54mとセンター陸部54cとの間に位置する周方向主溝52である。
トレッド4に構成された5本の陸部54は、センター陸部54cと、一対のミドル陸部54mと、一対のショルダー陸部54sとを含む。
【0061】
ショルダー陸部54sの軸方向幅は、ショルダー周方向主溝52sとショルダー陸部54sの陸面との境界、すなわち、ショルダー周方向主溝52sの外側のエッジからトレッド4の基準端TEまでの軸方向距離で表される。
このタイヤ2では、ショルダー陸部54sの軸方向幅の、トレッド4の幅WTに対する比率は、15%以上30%以下であることが好ましい。
センター陸部54cやミドル陸部54mのように、2本の周方向主溝52の間に位置する陸部54の軸方向幅は、陸面の軸方向幅で表される。この軸方向幅は、トレッド4に刻まれる周方向主溝52の本数、溝幅w等が考慮され適宜決められる。
【0062】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4は、異なる発熱性を有する、キャップ層38、中間層40及びベース層42を備える。このタイヤ2では、陸部54の幅方向中心において、キャップ層38の厚さのトレッド4の厚さに対する比率は、好ましくは10%以上40%以下である。陸部54の幅方向中心において、中間層40の厚さのトレッド4の厚さに対する比率は、30%以上70%以下である。
【0063】
このタイヤ2のトレッド4のベース層42は、キャップ部及びベース部で構成される従来トレッドのベース部に相当し、このトレッド4のキャップ層38及び中間層40で構成される部分が従来トレッドのキャップ部に相当する。
このタイヤ2のトレッド4では、従来トレッドのキャップ部に相当する部分が、グリップ性能を考慮した架橋ゴムからなるキャップ層38以外に、中間層40を含む。
前述したように、中間層40は、キャップ層38の発熱性とベース層42の発熱性との間の発熱性を有する。言い換えれば、中間層40は、グリップ性能を僅かに犠牲にしながら低発熱性を考慮した架橋ゴムで構成される。
さらにこのトレッド4では、前述したように、キャップ層38の端38eは中間層40の端40eの軸方向内側に位置する。キャップ層38は中間層40全体ではなくこの中間層40の一部を覆う。このタイヤ2では、中間層40全体がキャップ層38で覆われたトレッドに比べて、転がり抵抗の増加をもたらすキャップ層38のボリュームが低減され、転がり抵抗の低減に寄与する中間層40のボリュームが増加する。
このトレッド4は、転がり抵抗の低減に貢献できる。
【0064】
トレッド4が摩耗すると中間層40が露出する。中間層40はグリップ性能を僅かに犠牲にしながら低発熱性を考慮した架橋ゴムで構成されるので、グリップ性能が低下するという懸念がある。
しかしトレッドは摩耗すると、体積が減少する。トレッドに力が作用した際の変形代が小さくなるため、路面に接地するトレッドの材質による違いがグリップ性能に反映されにくい。したがって、グリップ性能を僅かに犠牲にした架橋ゴムで中間層40を構成しているにも関わらず、トレッド4が摩耗し、中間層40が露出しても、このタイヤ2は従来タイヤと同じように良好なグリップ性能を維持できる。
【0065】
そしてこのトレッド4では、前述したように、ベース層42の端42eは中間層40の端40eの軸方向内側に位置する。図1に示されるように、中間層40はベース層42全体を覆う。タイヤ2の外面2Gとベース層42との間に十分な厚さを有する中間層40が位置するので、トレッド4とサイドウォール6との境界部分(以下、バットレス)において摩耗が発生するような、大きな慣性力の発生を伴う過酷な条件で車両が走行しても、ベース層42の露出が防止される。このトレッド4はその機能を安定に発揮できる。
【0066】
このようにこのタイヤ2は、キャップ層38、中間層40及びベース層42の三層でトレッド4を構成することで、グリップ性能への影響を抑制しながら、転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0067】
前述したように、本発明者は、転がり抵抗のさらなる低減を図るために、トレッドの三層化とともに、トレッドに生じる歪みに着目した検討を進めている。その中で、本発明者は、ショルダー陸部の表面付近(特に、ベルト14の外側層36の端36e付近)で、歪みが多く発生すること、ショルダー陸部に細溝を刻むことでこの歪みの発生を抑制できること、そして、三層化したトレッドにおいては、細溝の断面形状が歪や発熱の低減代に深く関わっていることを見出し、タイヤ2の転がり抵抗のさらなる低減を図っている。
【0068】
図3は、図1に示されたタイヤ2の一部を示す。図3は、トレッド部のショルダー陸部54sを示す。
このタイヤ2のショルダー陸部54sに周方向細溝50が刻まれる。前述したように、周方向細溝50は周方向に連続してのびる。周方向細溝50は内側陸部56と外側陸部58とをショルダー陸部54sに構成する。
【0069】
図3に示されるように、周方向細溝50の溝幅はショルダー周方向主溝52sの溝幅よりも狭い。周方向細溝50がショルダー陸部54sの剛性に与える影響は小さい。ショルダー陸部54sは必要な剛性を有する。このタイヤ2では、コーナリングフォースの低下が抑制される。
【0070】
周方向細溝50は、軸方向において、ショルダー周方向主溝52sと外側層36の端36eとの間に位置する。この周方向細溝50は、この周方向細溝50が刻まれていない従来のショルダー陸部で確認された、外側層36の端36e付近での歪みの発生を抑制することに貢献できる。歪みの発生が抑制されるので、このタイヤ2は、転がり抵抗をさらに低減できる。
【0071】
図3に示されるように、周方向細溝50は溝口50Mから溝底50Tに向かって先細りである。周方向細溝50の溝幅は、溝口50Mから溝底50Tに向かって途中で拡がることなく、漸減していく。この周方向細溝50は、V字状の断面形状を有する。前述したように、このタイヤ2のトレッド4は、キャップ層38、中間層40及びベース層42の三層で構成される。この周方向細溝50を刻んだ場合、向かい合う壁面が互いに平行関係にある周方向細溝、言い換えれば、U字状の断面形状を有する周方向細溝を刻んだ場合に比べて、キャップ層38のボリュームが減少し、中間層40のボリュームが増加する。このタイヤ2は、ショルダー陸部にU字状の断面形状を有する周方向細溝を刻んだ場合に比べて、転がり抵抗をよりさらに低減できる。
【0072】
このように、このタイヤ2のトレッド4では、従来トレッドのキャップ部に相当する部分が、グリップ性能を主に考慮したキャップ層38と、グリップ性能を僅かに犠牲にしながら低発熱性を考慮した中間層40とで構成される。さらに、このトレッド4のショルダー陸部54sには、ショルダー周方向主溝52sよりも狭い周方向細溝50が刻まれ、この周方向細溝50が、ショルダー周方向主溝52sと、外側層36の端36eとの間に配置される。そして、この周方向細溝50は、溝口50Mから溝底50Tに向かって先細りである。
このトレッド4は、グリップ性能の低下を小さく抑えながら、転がり抵抗を低減することに貢献できる。このタイヤ2は、グリップ性能への影響を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる。
【0073】
図3において両矢印DYで示される長さは、ショルダー周方向主溝52sから外側層36の端36eまでの軸方向距離である。両矢印DXで示される長さは、ショルダー周方向主溝52sから周方向細溝50までの軸方向距離である。軸方向距離DXは内側陸部56の陸面の軸方向幅である。
【0074】
ショルダー周方向主溝52sから周方向細溝50までの軸方向距離DXの、ショルダー周方向主溝52sから外側層36の端36eまでの軸方向距離DYに対する比率(DX/DY)は15%以上55%以下であるのが好ましい。
比率(DX/DY)が15%以上に設定されることにより、周方向細溝50とショルダー周方向主溝52sとが干渉しあうことが抑えられる。内側陸部56が必要な剛性を有するので、周方向細溝50が歪みの発生を抑制することに効果的に貢献できる。歪みの発生が抑制されるので、このタイヤ2は転がり抵抗の低減を図ることができる。この観点から、この比率(DX/DY)は、25%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、45%以上がさらに好ましい。
比率(DX/DY)が55%以下に設定されることにより、周方向細溝50が外側層36の端36eから適切な距離をあけて配置される。周方向細溝50と外側層36の端36eとが干渉しあうことが抑えられる。外側層36の端36eの部分に、ルースのような損傷が発生することが抑えられる。この場合においても、周方向細溝50は、歪みの発生抑制機能を安定にしかも十分に発揮できる。歪みの発生が抑制されるので、このタイヤ2は転がり抵抗の低減を図れる。この観点から、比率(DX/DY)は50%以下であるのがより好ましい。
【0075】
図4は、図3に示されたショルダー陸部54sの一部を示す。図3は、周方向細溝50が設けられている部分を示す。
【0076】
図4において符号LCで示される直線は、周方向細溝50の溝口50Mを構成する一対のエッジ50Eを結ぶ線分である。両矢印GXで示される長さは、周方向細溝50の溝口50Mでの溝幅である。この溝幅GXは線分LCの長さで表される。
実線LNは、周方向細溝50の溝底50Tを通る、前述の線分LCの法線である。符号NCで示される位置は、線分LCと法線LNとの交点である。
両矢印αで示される長さは周方向細溝50の溝深さである。溝深さαは、法線LNに沿って計測される交点NCから溝底50Tまでの距離で表される。
両矢印βで示される長さはトレッド4の厚さである。この厚さβは、溝深さαを示す線分に沿って計測される、交点NCからトレッド4の内面までの距離で表される。
【0077】
周方向細溝50の溝口50Mでの溝幅GXは、ショルダー周方向主溝52sの溝口での溝幅よりも狭い。溝幅GXが狭いほど、周方向細溝50がショルダー陸部54sの剛性に与える影響は低減される。しかし溝幅GXがトレッド4の幅WTの2.5%未満になると、周方向細溝50はサイプに近い形状を有し、周方向細溝50が細溝として機能できないおそれがある。この場合、周方向細溝50が歪みの発生を十分に抑制できなくなるという懸念がある。
【0078】
そのため、このタイヤ2では、周方向細溝50の溝幅GXの、トレッド4の幅WTに対する比率(GX/WT)が2.5%以上であるのが好ましい。これにより、周方向細溝50が歪みの発生を抑制することに効果的に貢献できる。歪みの発生が抑制されるので、このタイヤ2は転がり抵抗を低減できる。この観点から、比率(GX/WT)は2.8%以上であるのがより好ましい。
この比率(GX/WT)は3.5%以下であるのが好ましい。これにより、周方向細溝50によるショルダー陸部54sの剛性への影響が抑制される。このタイヤ2は良好なグリップ性能を維持できる。この観点から、比率(GX/WT)は3.2%以下であるのがより好ましい。
転がり抵抗の低減及びグリップ性能の維持の観点から、特に好ましくは、比率(GX/WT)は3.0%である。
【0079】
このタイヤ2では、周方向細溝50の溝深さαの、トレッド4の厚さβに対する比率(α/β)は60%以上95%以下であるのが好ましい。
比率(α/β)が60%以上に設定されることにより、周方向細溝50が歪みの発生を抑制することに効果的に貢献できる。歪みの発生が抑えられるので、このタイヤ2は転がり抵抗の低減を図ることができる。この観点から、比率(α/β)は75%以上であるのがより好ましく、85%以上であるのがさらに好ましい。
比率(α/β)が95%以下に設定されることにより、周方向細溝50の溝底50Tがバンド16から適正な距離をあけて配置される。このタイヤ2では、周方向細溝50の溝底50Tがバンド16に近接することで生じる外観不良の発生が防止される。この観点から、比率(α/β)は90%以下であるのがより好ましい。
【0080】
図4において両矢印GHで示される長さは、周方向細溝50の溝深さαの半分位置での溝幅である。この溝幅GHを表す線分は前述の溝幅GXを表す線分LCと平行である。
【0081】
このタイヤ2では、周方向細溝50の溝口50Mでの溝幅GXの、トレッド4の幅WTに対する比率(GX/WT)と、周方向細溝50の溝深さαの半分位置での溝幅GHの、トレッド4の幅WTに対する比率(GH/WT)との差((GX-GH)/WT)は、0.5%以上1.5%以下であるのが好ましい。これにより、溝深さ方向に先細りな周方向細溝50が転がり抵抗の低減により効果的に貢献できる。この観点から、差((GX-GH)/WT)は、0.8%以上1.2%以下であるのが好ましい。特に好ましくは、差((GX-GH)/WT)は1.0%である。
【0082】
このタイヤ2では、周方向細溝50はショルダー周方向主溝52sよりも浅い。このトレッド4のショルダー陸部54sには、ショルダー周方向主溝52sよりも浅い周方向細溝50が刻まれる。前述したように、このトレッド4のショルダー陸部54sには、ショルダー周方向主溝52sよりも狭い周方向細溝50が刻まれ、この周方向細溝50が、ショルダー周方向主溝52sと、外側層36の端36eとの間に配置され、そして、この周方向細溝50は、溝口50Mから溝底50Tに向かって先細りである。
このトレッド4は、グリップ性能の低下を小さく抑えながら、転がり抵抗を低減することに効果的に貢献できる。このタイヤ2は、グリップ性能への影響を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる。この観点から、周方向細溝50はショルダー周方向主溝52sよりも浅いのが好ましい。具体的には、周方向細溝50の溝深さαの、ショルダー周方向主溝52sの溝深さdに対する比(α/d)は、0.85以下であるのが好ましく、0.80以下であるのがより好ましい。周方向細溝50が歪みの発生を抑制することに効果的に貢献できる観点から、比(α/d)は0.65以上であるのが好ましく、0.70以上であるのがさらに好ましい。
【0083】
このタイヤ2の子午線断面において、周方向細溝50の壁面の輪郭線は直線である。前述の比率(GX/WT)が2.5%以上3.5%以下であり、前述の差((GX-GH)/WT)が0.5%以上1.5%以下であることをタイヤ2が満たすのであれば、キャップ層38のボリュームを低減し、中間層40のボリュームを確保できる観点から、周方向細溝50の壁面の輪郭線が内向きに凸な形状を有するように構成されてもよい。この場合、周方向細溝50の壁面の輪郭線全体が、内向きに湾曲するように構成された円弧で表されてもよく、周方向細溝50のエッジにおいて面取り加工を施すことで、壁面の輪郭線が整えられてもよい。
【0084】
前述したように、このタイヤ2のトレッド4のうち、キャップ層38及び中間層40からなる部分が、キャップ部及びベース部からなる従来タイヤのトレッドのキャップ部に相当する。このタイヤ2では、トレッド4がグリップ性能の向上と転がり抵抗の低減とに効果的に貢献できる観点から、30℃でのキャップ層38の損失正接LTcの、30℃での中間層40の損失正接LTmに対する比率(Ltc/Ltm)は110%以上250%以下が好ましい。この比率(Ltc/Ltm)は、130%以上がより好ましく、150%以上がさらに好ましい。この比率(Ltc/Ltm)は240%以下がより好ましく、230%以下がさらに好ましい。
【0085】
図5は、図1に示されたタイヤ2の一部を示す。図5はトレッド部の一部を示す。図5に示されるように、ベース層42の端42eは内側層34の端34eの軸方向内側に位置する。ベース層42の端42eの位置は、軸方向において、外側層36の端36eの位置とほぼ一致する。
図5において両矢印WBで示される長さはベース層42の軸方向幅である。この軸方向幅WBは、ベース層42の第一の端42eから第二の端42eまでの軸方向距離である。両矢印WSで示される長さは外側層36の軸方向幅である。この軸方向幅WSは、外側層36の第一の端36eから第二の端36eまでの軸方向距離である。
【0086】
走行中のタイヤでは、ショルダー陸部の部分は活発に動く。そのため、この部分には、転がり抵抗の増大因子である、様々な歪みが発生する。ベルトの端の部分に生じる歪みは、ベルト・エッジ・ルース(BEL)等の損傷発生の一因ともなる。
低発熱性の架橋ゴムからなるベース部のボリュームを確保し、転がり抵抗の低減を図るために、従来タイヤでは、ベース部の端はバンドの端の軸方向外側に配置され、ベルト及びバンド全体をベース部が覆うように、トレッドは構成される。
しかし低発熱性の架橋ゴムの強度は低い。そのため、前述した構成を有する従来のトレッドでは、BEL等の損傷が発生するリスクの存在は否めない。転がり抵抗の低減効果を、タイヤが安定して発揮し続けることができるよう、損傷リスクの低減を図れる技術の確立も求められている。
【0087】
このタイヤ2では、周方向細溝50をショルダー陸部54sの特定領域に刻むことで、転がり抵抗の増大因子である歪みの発生が抑えられる。そのため、ベース層42の端42eが内側層34の端34eの軸方向内側に位置するようにトレッド4を構成しても、タイヤ2の転がり抵抗を低減できる。ベルト14の端14eの部分を、ベース層42ではなく、中間層40で覆うことができるので、BEL等の損傷の発生リスクの低減が図れる。このタイヤ2は、転がり抵抗の低減効果を安定して発揮し続けることができる。このタイヤ2は車両の燃費性能の向上に貢献できる。中間層40にはグリップ性能を考慮した架橋ゴムが用いられるので、このタイヤ2は、良好なグリップ性能も発揮し続けることができる。この観点から、このタイヤ2では、ベース層42の端42eは内側層34の端34eの軸方向内側に位置するのが好ましい。
【0088】
損傷発生リスクの低減の観点から、ベース層42の端42eの位置は、軸方向において、外側層36の端36eの位置とほぼ一致するのが好ましい。具体的には、ベース層42の軸方向幅WBの、外側層36の軸方向幅WSに対する比率(WB/WS)が、95%以上105%以下であるのが好ましい。
比率(WB/WS)が95%以上に設定されることにより、トレッド4に占めるベース層42のボリュームが高まる。このトレッド4は転がり抵抗の低減に貢献できる。この観点から、この比率(WB/WS)は98%以上であるのがより好ましい。
比率(WB/WS)が105%以下に設定されることにより、ベルト14及びバンド16の端から十分に離してベース層42が配置される。このベース層42の配置は損傷の発生リスクの低減に貢献できる。この観点から、この(WB/WS)は102%以下がより好ましい。
【0089】
図5において両矢印WCで示される長さはキャップ層38の軸方向幅である。この軸方向幅WCは、キャップ層38の第一の端38eから第二の端38eまでの軸方向距離である。両矢印WMで示される長さは、中間層40の軸方向幅である。この軸方向幅WMは、中間層40の第一の端40eから第二の端40eまでの軸方向距離である。
【0090】
このタイヤ2では、グリップ性能の発揮にキャップ層38が効果的に貢献できる観点から、キャップ層38の軸方向幅WCの、タイヤ2の断面幅WAに対する比率(WC/WA)は70%以上であるのが好ましく、75%以上であるのがより好ましい。キャップ層38による転がり抵抗への影響が効果的に抑えられる観点から、この比率(WC/WA)は90%以下であるのが好ましく、85%以下いかであるのがより好ましい。
【0091】
このタイヤ2では、グリップ性能の向上の観点から、中間層40の軸方向幅WMとキャップ層38の軸方向幅WCとの差(WM-WC)は30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましい。転がり抵抗の低減を図ることができ、限界走行時におけるベース層42の露出防止に中間層40が効果的に貢献できる観点から、この差(WM-WC)は10mm以上が好ましい。このタイヤ2では、ベース層42の露出を防止しながら、転がり抵抗を効果的に低減できる観点から、この差(WM-WC)は10mmであるのが特に好ましい。
【0092】
制動時においてタイヤ2には、大きな荷重が作用する。これにより、タイヤ2の接地幅が広がる傾向にある。図1に示されるように、このタイヤ2では、キャップ層38の外端38eは軸方向において基準接地端PHの外側に位置する。制動時においても、キャップ層38が路面と十分に接地できる。このタイヤ2では、良好なグリップ性能が得られる。この観点から、軸方向において、キャップ層38の外端38eは基準接地端PHの外側に位置するのが好ましい。
【0093】
このタイヤ2では、好ましくは、キャップ層38の軸方向幅WCとトレッド4の幅WTとの差(WC-WT)は-10mm以上10mm以下である。言い換えれば、キャップ層38の軸方向幅WCはトレッド4の幅WTとほぼ同等であるのが好ましい。これにより、直進走行時だけでなく、大きな荷重が作用する制動時においても、キャップ層38が路面と十分に接地できる。このタイヤ2では、良好なグリップ性能が得られる。この観点から、この差(WC-WT)は-5mm以上であるのが好ましく、5mm以下であるのが好ましい。
【0094】
以上説明したように、本発明によれば、グリップ性能への影響を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる、タイヤ2が得られる。特に、本発明は、ショルダー陸部54sの軸方向幅の、トレッド4の幅WTに対する比率が15%以上30%以下である、乗用車用タイヤ2において、顕著な効果を奏する。
【実施例0095】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0096】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤの呼び=205/55R16 91V)を得た。
【0097】
周方向細溝の断面形状がV字状であることが表1の「形状」の欄に「V」で示されている。比率(DX/DY)は50%に設定された。比率(GX/WT)は3.0%、差((GX-GH)/WT)は1.0%であった。
【0098】
[比較例1]
周方向細溝を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。
【0099】
[比較例2]
周方向細溝の溝容積を変えることなく、断面形状をU字状とした他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。この比較例2は、溝口から溝底に向かって先細りでない周方向細溝を設けた場合に対応する。この比較例2の周方向細溝の溝幅は、溝口から溝底に向かって一様である。比率(GX/WT)は3.0%、差((GX-GH)/WT)は0.0%であった。
【0100】
[転がり抵抗]
転がり抵抗試験機を用い、試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定し、転がり抵抗係数の逆数を得た。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1の「RRC」の欄に示されている。数値が大きいほど、タイヤの転がり抵抗は低い。
リム:16×6.5J
内圧:210kPa
縦荷重:4.82kN
【0101】
[操縦安定性]
試作タイヤをリム(サイズ=16×6.5J)に組み、空気を充填して内圧を250kPaとした。このタイヤをフラットベルト式走行試験機に装着した。キャンバー角は0度に設定された。4.3kNの縦荷重をタイヤに負荷し、スリップ角を1.0度として、10km/hの速度で、このタイヤをベルト上で走行させ、コーナリングフォースを計測した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1の「CF」の欄に示されている。数値が大きいほど、コーナリングフォースは大きく、操縦安定性に優れる。
【0102】
[グリップ性能]
試作タイヤをリム(サイズ=16×6.5J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を250kPaに調整した。タイヤを試験車両(乗用車)に装着した。ドライ路面のテストコースで試験車両を走行させて、ラップタイムを計測した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1の「グリップ性能」の欄に示されている。数値が大きいほど、グリップ性能に優れる。
【0103】
[耐久性]
試作タイヤをリム(サイズ=16×6.5J)に組み、空気を充填して内圧を250kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着した。7.33kNの縦荷重をタイヤに負荷し、このタイヤを、100km/hの速度で、ドラム(半径=1.7m)の上で走行させた。タイヤに損傷(BEL)が確認されるまでの走行距離を測定した。その結果が比較例1を100とした指数で下記表1の「耐久性」の欄に示されている。数値が大きいほど、損傷が生じにくく、耐久性に優れる。
【0104】
[総合性能]
各評価項目で得た指数の合計を算出した。その結果が下記表1の「総合」の欄に示されている。数値が大きいほど、各性能がバランスよく整えられていることを表す。
【0105】
【表1】
【0106】
表1に示されているように、実施例では、グリップ性能への影響を抑制しながら、転がり抵抗の低減が達成されるとともに、転がり抵抗低減効果が持続的に発揮されることが確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上説明された、グリップ性能への影響を抑制しながら、転がり抵抗の低減を達成できる技術は種々のタイヤにも適用されうる。
【符号の説明】
【0108】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
10・・・ビード
12・・・カーカス
14・・・ベルト
16・・・バンド
24・・・トレッド面
34・・・内側層
36・・・外側層
38・・・キャップ層
40・・・中間層
42・・・ベース層
48・・・周方向溝
50・・・周方向細溝
52・・・周方向主溝
54・・・陸部
図1
図2
図3
図4
図5