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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015530
(43)【公開日】2024-02-05
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/38 20180101AFI20240129BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20240129BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20240129BHJP
【FI】
F24F11/38
F24F110:10
F24F140:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117625
(22)【出願日】2022-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】桑原 祥
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB06
3L260BA54
3L260CA12
3L260CB36
3L260DA10
3L260EA09
3L260GA17
3L260HA06
(57)【要約】
【課題】空調装置(10,20,30)の開閉弁(14,24,34)が閉まり切らない開故障の発生有無を正確に検知する。
【解決手段】基準温度取得条件(開閉弁が閉弁状態で、熱媒加熱装置または熱媒冷却装置が停止中であり、更に、熱媒温度か室温の少なくとも一方の変化速度が許容変化速度よりも小さい条件)を満たす場合には、熱媒温度センサ(15)で検出した熱媒温度を熱媒基準温度として記憶し、室温センサ(16)で検出した室温を基準室温として記憶する。そして、開閉弁が閉弁状態で熱媒温度センサを用いて検出した熱媒温度を、熱媒基準温度からの乖離温度(熱媒乖離温度)に変換し、室温センサを用いて検出した室温を、基準室温からの乖離温度(室温乖離温度)に変換して、熱媒乖離温度と室温乖離温度に基づいて、開閉弁の異常の有無を判断する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒を加熱する熱媒加熱装置または前記熱媒を冷却する熱媒冷却装置に接続されて、加熱または冷却された前記熱媒を空調端末の熱交換器に供給して空気と熱交換させることによって、前記空調端末が設置された部屋の空調を行う空調装置において、
前記熱媒加熱装置または前記熱媒冷却装置で加熱または冷却された前記熱媒を前記空調端末に供給し、前記空調端末から流出した前記熱媒を前記熱媒加熱装置または前記熱媒冷却装置に還流させる熱媒循環通路と、
前記熱媒循環通路に搭載されて、前記熱媒が前記熱媒循環通路を循環する開弁状態と前記熱媒が循環しない閉弁状態とに切換可能な開閉弁と、
前記開閉弁の開閉状態を切り換える制御部と、
前記熱媒循環通路に搭載されて、前記熱交換器の上流側または下流側での前記熱媒の温度である熱媒温度を検出する熱媒温度センサと、
前記空調を行う部屋の室温を検出する室温センサと
を備え、
前記制御部は、
前記開閉弁が前記閉弁状態に切り換えられると、前記閉弁状態での前記熱媒温度である閉弁時熱媒温度と、前記閉弁状態での前記室温である閉弁時室温とを繰り返して検出する閉弁時温度検出手段と、
前記開閉弁が前記閉弁状態に切り換えられており、且つ、前記熱媒加熱装置または前記熱媒冷却装置が動作を停止している状態で、更に、前記閉弁時熱媒温度の変化速度の大きさが所定の熱媒許容変化速度よりも小さいか、前記閉弁時室温の変化速度の大きさが所定の室温許容変化速度よりも小さいかの少なくとも一方の状態である基準温度取得条件を満たすか否かを判断する条件判断手段と、
前記基準温度取得条件を満たすと判断された場合には、前記閉弁時熱媒温度を熱媒基準温度として記憶し、前記閉弁時室温を基準室温として記憶する基準温度記憶手段と、
前記熱媒基準温度から前記閉弁時熱媒温度が乖離した温度である熱媒乖離温度と、前記基準室温から前記閉弁時室温が乖離した温度である室温乖離温度とを算出して、前記熱媒乖離温度および前記室温乖離温度に基づいて前記開閉弁の異常の有無を判断する異常判断手段と
を備えることを特徴とする空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空調装置において、
前記異常判断手段は、前記熱媒乖離温度と前記室温乖離温度との温度差が所定の閾値温度以上であった場合に、前記開閉弁が異常と判断する
ことを特徴とする空調装置。
【請求項3】
請求項1に記載の空調装置において、
前記異常判断手段は、
前記熱媒乖離温度と所定の熱媒乖離閾値とを比較すると共に、前記室温乖離温度と所定の室温乖離閾値とを比較して、
前記熱媒乖離温度は前記熱媒乖離閾値よりも大きいが前記室温乖離温度は前記室温乖離閾値よりも小さいか、前記熱媒乖離温度は前記熱媒乖離閾値よりも小さいが前記室温乖離温度は前記室温乖離閾値よりも大きい場合に、前記開閉弁が異常と判断する
ことを特徴とする空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱または冷却された熱媒を空調端末の熱交換器に供給して空気と熱交換させることによって、空調端末が設置された部屋の空調を行う空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱された熱媒を空調端末に供給して空気と熱交換させることにより、部屋を暖房する空調装置が知られている。また、冷却された熱媒を空調端末に供給して空気と熱交換させることによって、部屋を冷房することもできる。更には、複数の部屋に空調端末を設置しておき、それらの空調端末に加熱された熱媒(あるいは冷却された熱媒)を供給してやれば、複数の部屋を同時に暖房(あるいは冷房)することも可能となる。
【0003】
ここで、複数の部屋に空調端末が設置されている場合でも、それら全ての部屋で同時に暖房(あるいは冷房)する必要があるわけではなく、不必要な部屋まで暖房あるいは冷房したのではエネルギの無駄となる。そこで、空調端末の上流側あるいは下流側に開閉弁を搭載しておき、熱媒を供給する必要のない空調端末については開閉弁を閉弁状態とすることで、熱媒が供給されないようになっている。
【0004】
もっとも、閉弁状態にしても開閉弁が閉まり切らない故障(以下、開故障)が発生すると、不必要な空調端末に熱媒が供給されてしまう。そこで、開閉弁が閉弁状態の時に熱媒の温度と室温とを比較して、両者の温度差が所定値以上であった場合は、開閉弁で開故障が発生したものと判断する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-127877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した提案されている技術では、開閉弁で開故障が発生したことを、必ずしも正確に判断することができないという問題があった。この理由は次のようなものである。先ず、提案されている技術では、熱媒の温度と室温とを比較することで故障の有無を判断するので、熱媒の温度および室温を検出するための2つの温度センサが必要となる。また、温度センサには製造バラツキによる個体差で特性の違いが存在しており、同じ温度を計測した場合でも計測温度に差が出てしまう。このため、2つの温度センサで温度を計測して温度差を求めた場合、実際の温度差よりも大きな温度差を算出して、正常なのに開故障が発生したものと誤判断したり、実際の温度差よりも小さな温度差を算出して、開故障が発生しているのに正常と誤判断したりする場合があるためである。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、空調端末に熱媒が供給されるか否かを切り換える開閉弁で開故障が発生したことを、正確に検知することが可能な空調装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために本発明の空調装置は次の構成を採用した。すなわち、
熱媒を加熱する熱媒加熱装置または前記熱媒を冷却する熱媒冷却装置に接続されて、加熱または冷却された前記熱媒を空調端末の熱交換器に供給して空気と熱交換させることによって、前記空調端末が設置された部屋の空調を行う空調装置において、
前記熱媒加熱装置または前記熱媒冷却装置で加熱または冷却された前記熱媒を前記空調端末に供給し、前記空調端末から流出した前記熱媒を前記熱媒加熱装置または前記熱媒冷却装置に還流させる熱媒循環通路と、
前記熱媒循環通路に搭載されて、前記熱媒が前記熱媒循環通路を循環する開弁状態と前記熱媒が循環しない閉弁状態とに切換可能な開閉弁と、
前記開閉弁の開閉状態を切り換える制御部と、
前記熱媒循環通路に搭載されて、前記熱交換器の上流側または下流側での前記熱媒の温度である熱媒温度を検出する熱媒温度センサと、
前記空調を行う部屋の室温を検出する室温センサと
を備え、
前記制御部は、
前記開閉弁が前記閉弁状態に切り換えられると、前記閉弁状態での前記熱媒温度である閉弁時熱媒温度と、前記閉弁状態での前記室温である閉弁時室温とを繰り返して検出する閉弁時温度検出手段と、
前記開閉弁が前記閉弁状態に切り換えられており、且つ、前記熱媒加熱装置または前記熱媒冷却装置が動作を停止している状態で、更に、前記閉弁時熱媒温度の変化速度の大きさが所定の熱媒許容変化速度よりも小さいか、前記閉弁時室温の変化速度の大きさが所定の室温許容変化速度よりも小さいかの少なくとも一方の状態である基準温度取得条件を満たすか否かを判断する条件判断手段と、
前記基準温度取得条件を満たすと判断された場合には、前記閉弁時熱媒温度を熱媒基準温度として記憶し、前記閉弁時室温を基準室温として記憶する基準温度記憶手段と、
前記熱媒基準温度から前記閉弁時熱媒温度が乖離した温度である熱媒乖離温度と、前記基準室温から前記閉弁時室温が乖離した温度である室温乖離温度とを算出して、前記熱媒乖離温度および前記室温乖離温度に基づいて前記開閉弁の異常の有無を判断する異常判断手段と
を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる本発明の空調装置においては、基準温度取得条件(開閉弁が閉弁状態であり、熱媒加熱装置または熱媒冷却装置が動作を停止しており、熱媒温度か室温の少なくとも一方の変化速度の大きさが熱媒許容変化速度または室温許容変化速度よりも小さい条件)を満たす場合には、熱媒温度センサで検出した熱媒温度を熱媒基準温度として記憶しておき、室温センサで検出した室温を基準室温として記憶しておく。そして、熱媒温度センサで検出した熱媒温度(閉弁時熱媒温度)を、熱媒基準温度からの乖離温度(熱媒乖離温度)に変換し、室温センサで検出した室温(閉弁時室温)を、基準室温からの乖離温度(室温乖離温度)に変換する。そして、熱媒乖離温度と室温乖離温度に基づいて、開閉弁の異常の有無を判断する。
【0010】
熱媒温度センサと室温センサとは異なる位置で温度を検出するので、別々に温度センサを用意する必要が生じる。そして、温度センサのセンサ特性には、温度センサの製造誤差に起因するセンサ特性のバラツキがあるため、たとえ実際には熱媒温度と室温とが同じ温度であっても、熱媒温度センサで検出した熱媒温度と、室温センサで検出した室温とは一致しない。従って、熱媒温度センサで検出した熱媒温度と、室温センサで検出した室温との温度差を算出すると、得られた温度差にはセンサ特性のバラツキに起因した誤差が含まれる。そして、誤差の影響で、実際の温度差よりも大きな温度差が算出された場合は、開故障していないのに開故障したものと誤って判断する可能性が生じる。逆に、実際の温度差よりも小さな温度差が算出された場合は、開故障しているのに開故障していないものと誤って判断する可能性が生じる。これに対して、詳細な理由については後述するが、熱媒温度(閉弁時熱媒温度)を変換した熱媒乖離温度と、室温(閉弁時室温)を変換した室温乖離温度との温度差を算出してやれば、得られた温度差に含まれる(センサ特性のバラツキに起因した)誤差を抑制することができる。このため、開閉弁の開故障の有無を正確に判断することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明の空調装置においては、熱媒乖離温度と室温乖離温度との温度差が所定の閾値温度以上であった場合に、開閉弁が異常と判断しても良い。
【0012】
熱媒乖離温度および室温乖離温度は何れも開閉弁が閉弁状態で算出されるものであり、開閉弁が閉弁状態では熱媒が空調装置に供給されないから、熱媒温度と室温とは同じような温度となる筈である。従って、熱媒乖離温度と室温乖離温度との温度差も小さな値となる。このことから、熱媒乖離温度と室温乖離温度との温度差が閾値温度以上であった場合は、開閉弁に何らかの異常が発生していると考えて良い。例えば、開閉弁が閉弁状態となっているのも拘わらず、熱媒加熱装置で加熱された熱媒(あるいは熱媒冷却装置で冷却された熱媒)が閉弁状態の開閉弁を通過していることが考えられる。従って、熱媒乖離温度と室温乖離温度との温度差が閾値温度以上であれば、開閉弁が異常と判断してやれば、簡単に且つ正確に開閉弁の異常の有無を判断することができる。
【0013】
あるいは、上述した本発明の空調装置においては、次のようにして開閉弁の異常の有無を判断しても良い。すなわち、熱媒乖離温度を所定の熱媒乖離閾値と比較し、更に、室温乖離温度も所定の室温乖離閾値と比較する。そして、熱媒乖離温度は熱媒乖離閾値よりも大きいが、室温乖離温度は室温乖離閾値よりも小さい場合には、開閉弁が異常と判断しても良い。
【0014】
開閉弁が閉弁状態であっても、例えば浴槽への湯張りや使用者のシャワー使用などで室温が上昇すれば、上昇した室温で空調装置内の熱媒が暖められるので熱媒温度も上昇する。従って、熱媒乖離温度の上昇と室温乖離温度の上昇とは同時に起きると考えられ、熱媒乖離温度が熱媒乖離閾値よりも大きければ、室温乖離温度も室温乖離閾値より大きくなり、熱媒乖離温度が熱媒乖離閾値よりも小さければ、室温乖離温度も室温乖離閾値よりも小さくなっていると考えられる。逆に言えば、こうなっていない場合、すなわち、熱媒乖離温度は熱媒乖離閾値よりも大きいが、室温乖離温度は室温乖離閾値よりも小さい場合は、開閉弁が異常と考えられる。例えば、開閉弁が閉弁状態となっているにも拘わらず、熱媒加熱装置で加熱された熱媒(あるいは熱媒冷却装置で冷却された熱媒)が閉弁状態の開閉弁を通過していることが考えられる。従って、上述のような方法によれば、熱媒乖離温度を熱媒乖離閾値と比較し、室温乖離温度を室温乖離閾値と比較するだけで、熱媒乖離温度と室温乖離温度との温度差を算出しなくても、簡単に且つ正確に開閉弁の異常の有無を判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例の空調装置10,20,30を備える空調システム1についての説明図である。
図2】温度センサの特性のバラツキに起因して、開閉弁の開故障を検知できないことがある理由を示した説明図である。
図3】温度センサの特性のバラツキに起因して、開閉弁が開故障したものと誤検知することがある理由を示した説明図である。
図4】本実施例の空調装置10,20,30が開閉弁14,24,34の異常の有無を判断するために行う開閉弁異常判断処理の前半部分のフローチャートである。
図5】開閉弁異常判断処理の後半部分のフローチャートである。
図6】本実施例の開閉弁異常判断処理の中で基準温度取得条件が成立したか否かを判断する処理のフローチャートである。
図7】本実施例の開閉弁異常判断処理の中で開閉弁の開故障の発生有無を判断する処理のフローチャートである。
図8】本実施例の開閉弁異常判断処理では開閉弁の開故障を正確に検知可能となる理由を示した説明図である。
図9】本実施例の開閉弁異常判断処理では開閉弁の開故障を正確に検知可能となる理由を示した説明図である。
図10】変形例の開閉弁異常判断処理の中で実行される開故障判断処理のフローチャートである。
図11】変形例の開故障判断処理が開故障の発生有無を判断する方法の概要を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.装置構成 :
図1は、本実施例の空調装置10,20,30を備える空調システム1についての説明図である。図示した空調システム1は、熱源機2と、空調装置10と、空調装置20と、空調装置30とを備えており、これらの空調装置10,20,30と熱源機2とは循環通路5で接続されている。また、循環通路5は、熱源機2で生成した温水をこれらの空調装置10,20,30に供給する供給通路5aと、空調装置10,20,30から流出した温水を熱源機2に還流させる還流通路5bとを備えている。
【0017】
尚、熱源機2を冷凍機3に変更して、冷凍機3で生成した冷水を空調装置10,20,30に供給すると共に、空調装置10,20,30から流出した冷水を冷凍機3に還流させても良い。また、熱源機2の代わりに電気ヒータを用いて温水を生成しても良いし、水を加熱して温水を生成する代わりに、他の液体や気体(例えば、不凍液や、オイルや、ガスなど)を加熱して、加熱した液体や気体を循環通路5で循環させても良い。冷凍機3の場合も同様に、水を冷却して冷水を生成する代わりに、他の液体や気体(例えば、不凍液や、オイルや、ガスなど)を冷却して、冷却した液体や気体を循環通路5で循環させても良い。このように、循環通路5を循環させる流体は、温水に限らず冷水などとすることもできる。そこで、以下では、循環通路5を循環させる流体を単に「熱媒」と称することにする。
【0018】
本実施例の熱源機2は本発明における「熱媒加熱装置」に対応しており、本実施例の冷凍機3は本発明における「熱媒冷却装置」に対応する。尚、熱源機2または冷凍機3には制御部4が搭載されている。制御部4はいわゆるマイクロコンピュータであり、熱源機2または冷凍機3の動作を制御している。
【0019】
空調装置10は、床暖房パネル11や、制御部13や、開閉弁14や、熱媒温度センサ15や、室温センサ16を備えている。床暖房パネル11には、熱交換器12が内蔵されており、熱交換器12の一端側には供給通路5aが接続され、熱交換器12の他端側には還流通路5bが接続されている。このため、熱源機2から供給通路5aに熱媒を供給すると、供給通路5aに供給された熱媒が床暖房パネル11の熱交換器12を通過して還流通路5bに流出する。この時、熱交換器12内の熱媒と、床暖房パネル11に接する空気とが熱交換することによって、床暖房パネル11が設置された部屋の空気が暖められる。尚、供給通路5aから熱交換器12に供給される熱媒が冷水の場合は、部屋の空気が冷やされることになる。
【0020】
開閉弁14はいわゆる熱動弁であり、供給通路5aに搭載されている。開閉弁14が開弁状態になると熱交換器12を熱媒が通過するが、開閉弁14が閉弁状態になると熱交換器12を熱媒が通過しなくなる。熱媒温度センサ15は供給通路5aに搭載されており、熱交換器12に流入する熱媒の温度(以下、熱媒温度)を検出する。また、室温センサ16は、床暖房パネル11が設置された部屋の温度(以下、室温)を検出することができる。尚、図1では、開閉弁14および熱媒温度センサ15が供給通路5aに設けられているが、還流通路5bに設けられていても構わない。
【0021】
制御部13は、CPUやメモリやタイマなどを内蔵したいわゆるマイクロコンピュータであり、メモリに記憶された各種のプログラムを読み出して実行することができる。制御部13には、開閉弁14や、熱媒温度センサ15や、室温センサ16などが接続されている。また、床暖房パネル11が設置された部屋の壁には操作パネル13aが取り付けられており、操作パネル13aも制御部13に接続されている。ユーザが操作パネル13aを操作すると、その内容が制御部13に伝わる。そして、制御部13が熱媒温度センサ15で検出した熱媒温度や室温センサ16で検出した室温に応じて、開閉弁14を開閉することによって、床暖房パネル11が設置された部屋の空調運転が実行される。空調装置10の床暖房パネル11は、本発明における「空調端末」に対応する。
【0022】
空調装置20は、暖房パネル21や、開閉弁24や、熱媒温度センサ25や、室温センサ26を備えている。暖房パネル21には、熱交換器22や、制御部23、操作パネル23aが内蔵されている。空調装置20でも、熱交換器22の一端側には供給通路5aが接続され、熱交換器22の他端側には還流通路5bが接続されている。熱源機2から供給通路5aに熱媒を供給すると、暖房パネル21の熱交換器22を通過する熱媒が、暖房パネル21に接する空気とが熱交換することによって、暖房パネル21が設置された部屋の空調が開始される。尚、供給通路5aから熱交換器22に供給される熱媒が温水の場合は、部屋の暖房が開始されることになり、熱媒が冷水の場合は、部屋の冷房が開始されることになる。
【0023】
暖房パネル21には制御部23や操作パネル23aも搭載されている。制御部23はCPUやメモリやタイマなどを内蔵したいわゆるマイクロコンピュータであり、操作パネル23aはユーザによって操作されるパネルである。制御部23には開閉弁24や、熱媒温度センサ25や、室温センサ26や、操作パネル23aが接続されている。
【0024】
開閉弁24は供給通路5aに搭載された熱動弁であり、開閉弁24が開弁状態になると熱交換器22に熱媒が供給されるが、開閉弁24が閉弁状態になると熱交換器22に熱媒が供給されなくなる。熱媒温度センサ25は供給通路5aに搭載されており、熱交換器22に流入する熱媒の温度(熱媒温度)を検出する。室温センサ26は、暖房パネル21が設置された部屋の温度(室温)を検出する。尚、開閉弁24および熱媒温度センサ25についても、開閉弁14や熱媒温度センサ15と同様に、還流通路5bに設けられていても構わない。
【0025】
空調装置20でも、ユーザが操作パネル23aを操作すると、その内容が制御部23に伝わって、熱媒温度センサ25で検出した熱媒温度や室温センサ26で検出した室温に応じて、制御部23が開閉弁24を開閉する。その結果、暖房パネル21が設置された部屋の空調運転が実行される。尚、空調装置20の暖房パネル21は、本発明における「空調端末」に対応する。
【0026】
空調装置30は、いわゆる浴室暖房装置であり、ケーシング31内に、熱交換器32や、制御部33や、開閉弁34や、熱媒温度センサ35や、室温センサ36や、送風ファン37などが搭載されている。空調装置30でも、熱交換器32の一端側には供給通路5aが接続され、熱交換器32の他端側には還流通路5bが接続されており、熱源機2から供給通路5aに熱媒を供給すると、熱交換器32を通過して還流通路5bから流出する。この時、送風ファン37を回転させると、浴室内の空気がケーシング31の空気取入口31aから吸い込まれて、熱交換器32の間を通過する際に熱媒と熱交換し、その空気がケーシング31の空気吹出口31bから浴室内に吹き出されることによって、浴室の空調を行うことができる。尚、供給通路5aから熱交換器32に供給される熱媒が温水の場合は、浴室を暖房することができ、熱媒が冷水の場合は部屋を冷房することができる。
【0027】
制御部33はCPUやメモリやタイマなどを内蔵したいわゆるマイクロコンピュータであり、制御部33には開閉弁34や、熱媒温度センサ35や、室温センサ36や、ユーザによって操作される操作パネル33aが接続されている。空調装置30の開閉弁34も熱動弁であり、開閉弁34が開弁状態になると熱交換器32に熱媒が供給されるが、開閉弁34が閉弁状態になると熱交換器32に熱媒が供給されなくなる。熱媒温度センサ35は熱交換器32に流入する熱媒の温度(熱媒温度)を検出し、室温センサ36は、浴室の温度(室温)を検出する。尚、開閉弁34および熱媒温度センサ35については、還流通路5bに設けられていても構わない。
【0028】
空調装置30でも、ユーザが操作パネル33aを操作すると、その内容が制御部33に伝わって、熱媒温度センサ35で検出した熱媒温度や室温センサ36で検出した室温に応じて、制御部33が開閉弁34を開閉することにより、浴室の空調運転が実行される。尚、空調装置30は、本発明における「空調装置」であると同時に「空調端末」にも対応する。
【0029】
図1に示したように、空調装置10,20,30では、熱媒の循環通路5(供給通路5aおよび還流通路5b)や熱源機2(あるいは冷凍機3)が共有されているため、熱源機2(あるいは冷凍機3)で生成された熱媒は全ての空調装置10,20,30に供給される。しかし、必ずしも、全ての空調装置10,20,30が同時に空調運転されるとは限らない。そこで、それぞれの空調装置10,20,30には開閉弁14,24,34が取り付けられており、空調運転する空調装置の開閉弁は開弁させ、空調運転しない空調装置の開閉弁は閉弁させておくようになっている。こうすれば、開閉弁が閉弁状態となっている空調装置については熱媒が供給されないので、ユーザが使用していないのに無駄に空調されたり、ユーザが望んでいないのに空調が行われて、部屋の温度が上がり過ぎたり、下がり過ぎたりする事態を防止できる。
【0030】
ところが、開閉弁を閉弁させたにも拘わらず、完全には閉弁しない故障(以下、開故障)が発生することがある。開故障が発生すると、ユーザが意図せずに空調装置で空調運転が行われてしまう。そこで、従来は、開閉弁が閉弁している状態での温水の温度(熱媒温度)と部屋の温度(室温)とを比較することで、開閉弁の開故障を検知することが行われてきた。しかし、この従来の技術は、温度センサの特性のバラツキの影響で、開閉弁の開故障を正確に検知することができなくなることがあった。
【0031】
B.温度センサの特性のバラツキの影響で開閉弁の開故障を誤検知する理由 :
図2は、従来技術では温度センサの特性のバラツキの影響で、開閉弁の開故障を検知できないことがある理由についての説明図である。図2に示した例では、空調装置の開閉弁を閉弁させたまま、他の空調装置の開閉弁を開弁させた時に、開閉弁を閉弁させたままの空調装置の熱媒温度センサおよび室温センサで検出した温度が変化する様子が示されている。尚、閉弁させたままの開閉弁は開故障が発生しているものとしている。また、図2(a)には、熱媒温度センサおよび室温センサのセンサ特性がバラついていない場合が示されており、図2(b)には、熱媒温度センサおよび室温センサのセンサ特性がバラついている場合が示されている。
【0032】
図1を用いて前述したように、他の空調装置の開閉弁を開弁すると、熱源機2で熱媒が生成されて、循環通路5(供給通路5aおよび還流通路5b)を循環するようになる。また、開故障した開閉弁は完全には閉弁しないから、このように循環通路5を熱媒が循環すると、開閉弁が開故障した空調装置にも少しずつ熱媒が供給されるようになる。その結果、熱媒が温水の場合は熱媒温度センサで検出した温度が少しずつ上昇し、熱媒が冷水の場合は熱媒温度センサで検出した温度が少しずつ低下する。その一方で、開閉弁は開故障しているだけで開弁しているわけではないから、空調運転に必要な量の熱媒が供給されるわけではない。このため、室温センサで検出した温度はほとんど上昇しない。その結果、熱媒温度センサで検出した温度と、室温センサで検出した温度とで大きな温度差が生じるようになる。
【0033】
図2(a)には、循環通路5を循環する熱媒が温水であった場合に、熱媒温度センサで検出した温度と、室温センサで検出した温度とで大きな温度差が生じる様子が例示されている。このことから、次のようにすれば、開閉弁が開故障を検知することができる。すなわち、熱源機2(あるいは冷凍機3)や循環通路5を供給する全ての空調装置の開閉弁を閉弁させた状態で、開故障の有無を検知しようとする開閉弁(検知対象の開閉弁)ではない他の開閉弁を開弁させる。そして、検知対象の開閉弁を備える空調装置の熱媒温度センサおよび室温センサで熱媒温度および室温を計測して、熱媒温度と室温との間に大きな温度差が生じるようであれば、検知対象の開閉弁が開故障しているものと判断することができる。
【0034】
しかし、温度センサには製造バラツキによるセンサ特性のバラツキが存在する。また、センサ特性のバラツキには、ゲインのバラツキと、センサ出力が上下方向にシフトするバラツキとが存在する。ここで、ゲインのバラツキとは、単位量の温度変化に対してセンサ出力が変化する大きさ(ゲイン)のバラツキのことであり、センサ出力が上下方向にシフトするバラツキとは、ゲインはそのままでセンサ出力が上方あるいは下方にシフトするようなバラツキのことである。温度センサのセンサ特性のバラツキは、これら2種類のバラツキが組み合わさって現れる。そして、2種類のバラツキの組み合わせによっては、開閉弁の開故障を検知できない場合が生じる。
【0035】
図2(b)に示した例では、熱媒温度センサのセンサ特性は、センサ出力が下方にシフトしており、温度変化に対するセンサ出力の変化量(ゲイン)は小さい特性となっているのに対して、室温センサのセンサ特性は、センサ出力が上方にシフトしており、温度変化に対するセンサ出力の変化量(ゲイン)は大きい特性となっている場合が示されている。尚、図2(b)に示した例でも、熱媒は温水である。
【0036】
図2(b)に示したように、他の空調装置の開閉弁を開弁する前(従って、供給通路5aおよび還流通路5bに温水の流れが生じる前)では、室温センサで検出した温度の方が熱媒温度センサで検出した温度よりも高くなっている。これは、室温センサはセンサ出力が上方にシフトする方向にバラついており、熱媒温度センサはセンサ出力が下方にシフトする方向にバラついているためである。
【0037】
他の空調装置の開閉弁を開弁すると、循環通路5を熱媒(ここでは温水)が循環するようになる。これに伴って、開閉弁が開故障した空調装置にも少しずつ温水が供給されるようになり、熱媒温度センサで検出した温度が少しずつ上昇する。また、空調装置に温水が供給されるといっても、暖房運転に必要な量が供給されるわけではないから、室温センサで検出した温度は僅かにしか上昇しない。ここで、熱媒温度センサのセンサ特性はゲインが小さくなる方向にバラついているので、熱媒温度センサで検出した温度の上昇量は本当の温度上昇量に対して小さめとなる。これに対して室温センサのセンサ特性は、ゲインが大きくなる方向にバラついているので、室温センサで検出した温度の上昇量は本当の温度上昇量に対して大きめとなる。その結果、図2(b)に示したように、他の空調装置の開閉弁を開弁しても、熱媒温度センサで検出した熱媒温度と、室温センサで検出した室温との温度差が大きくならず、開閉弁が開故障していることを検知することができなくなる。
【0038】
以上では、温度センサのセンサ特性のバラツキによって、開閉弁の開故障を検知できない場合について説明したが、逆に、開故障していない開閉弁を開故障していると誤判断してしまう場合も起こり得る。
【0039】
図3は、従来技術では温度センサの特性のバラツキの影響で、開閉弁が開故障しているものと誤検知することがある理由についての説明図である。図3に示した例では、浴室暖房装置の開閉弁を閉弁させたままで入浴を開始した場合に、浴室暖房装置の熱媒温度センサおよび室温センサで検出した温度が変化する様子が示されている。尚、浴室暖房装置の開閉弁では開故障が発生していないものとしている。
【0040】
図3(a)には、熱媒温度センサおよび室温センサのセンサ特性がバラついていない場合が示されている。浴室暖房装置の開閉弁を閉じたままで(すなわち、浴室暖房を行わずに)入浴を開始すると、時間の経過とともに浴室内の空気が暖められていき、その空気に暖められて浴室暖房装置内の熱媒(ここでは温水)の温度も上昇していく。その結果、図3(a)に示すように、熱媒温度センサで検出した温度と室温センサで検出した温度とが同じように上昇していく。このような場合は、開閉弁が開故障したものと誤判断されることはない。
【0041】
図3(b)には、熱媒温度センサおよび室温センサのセンサ特性がバラついている場合が示されている。図3(b)に示した例では、熱媒温度センサのセンサ特性は、センサ出力が上方にシフトしており、温度変化に対するセンサ出力の変化量(ゲイン)が大きい特性となっているのに対して、室温センサのセンサ特性は、センサ出力が下方にシフトしており、温度変化に対するセンサ出力の変化量(ゲイン)が小さい特性となっている場合が示されている。
【0042】
図3(b)に示すように、入浴前は熱媒温度センサで検出した温度の方が、室温センサで検出した温度よりも少し高くなっている。この理由は、本当は温水の温度と室温とでほとんど差はないが(図3(a)参照)、熱媒温度センサはセンサ出力が上方にシフトする方向にバラついているのに対して、室温センサはセンサ出力が下方にシフトする方向にバラついているためである。また、入浴開始後は、時間の経過と共に、熱媒温度センサで検出した温度と、室温センサで検出した温度との温度差が大きくなっている。この理由は、本当は温水の温度と室温とでほとんど差はないが(図3(a)参照)、熱媒温度センサはゲインが大きくなる方向にバラついているのに対して、室温センサはゲインが小さくなる方向にバラついているためである。
【0043】
そして、図3(b)の温度変化と、図2(a)の温度変化とを比べると、どちらの場合も、開閉弁が閉弁したままで、ある時点を境として熱媒温度と室温との温度差が大きくなっている。このため、図3(b)の温度変化が得られた場合も、図2(a)の場合と同様に開閉弁が開故障しているものと誤って判断することになる。このように、従来の技術では、温度センサのセンサ特性のバラツキの影響で、開閉弁が開故障しているにも拘らず、開故障していないと誤判断したり(図2(b)参照)、開閉弁が開故障していないにも拘らず、開故障していると誤判断したり(図3(b)参照)する可能性がある。そこで、空調装置10,20,30は、次のような方法で開閉弁14,24,34の開故障を検知する。
【0044】
C.開閉弁異常判断処理
図4および図5は、本実施例の空調装置10,20,30が開閉弁14,24,34の開故障を検知するために行う開閉弁異常判断処理のフローチャートである。この処理は、空調装置10,20,30に搭載された制御部13,23,33によって実行される処理である。尚、以下では、空調装置30の開閉弁34について開故障を検知する場合を説明するが、空調装置10の開閉弁14や空調装置20の開閉弁24についても、全く同様にして開故障を検知することができる。
【0045】
制御部33は、開閉弁異常判断処理を開始すると、先ず初めに開閉弁34が閉弁状態となっているか否かを判断する(STEP1)。後述するように、開閉弁34の異常の有無は開閉弁34が閉弁状態の時に判断するので、開閉弁異常判断処理を開始すると先ず初めに、閉弁状態となっているか否かを判断するのである。その結果、開閉弁34が閉弁状態でなかった場合は(STEP1:no)、STEP1の判断を繰り返すことによって、開閉弁34が閉弁状態となるまで待機状態となる。
【0046】
そして、開閉弁34が閉弁状態になったと判断したら(STEP1:yes)、制御部33が熱媒温度センサ35および室温センサ36を用いて、熱媒温度および室温を検出する(STEP2)。尚、STEP2で検出する熱媒温度および室温は、開閉弁34が閉弁状態の時に検出する温度であるから、以下では、それぞれ「閉弁時熱媒温度」および「閉弁時室温」と称することにする。
【0047】
続いて、基準温度を取得するための条件(基準温度取得条件)を満足するか否かを判断する処理(基準温度取得条件判断処理)を開始する(STEP20)。ここで、基準温度とは次のようなものである。本実施例の開閉弁異常判断処理では、温度センサのセンサ特性のバラツキの影響で開閉弁の開故障を誤検知してしまう事態を抑制するために、熱媒温度および室温のそれぞれについて基準となる温度を設定しておき、熱媒温度センサや室温センサで検出した温度を基準の温度に対する乖離量(乖離温度)に変換する。そして、乖離温度に基づいて、開閉弁の開故障を検知している。こうすることで、センサ特性のバラツキの影響を抑制可能な理由については後述する。「基準温度」とは、熱媒温度および室温のそれぞれに設定された基準の温度のことである。また、センサ特性のバラツキの影響を抑制するためには、基準温度を適切に設定しておく必要がある。「基準温度取得条件」とは、熱媒温度センサや室温センサで検出した温度を、それぞれ基準温度として取得するために満足するべき条件のことである。基準温度取得条件および基準温度取得条件判断処理の詳細については、後ほど詳しく説明する。
【0048】
基準温度取得条件判断処理(STEP20)を終了したら、基準温度取得条件判断処理の中で、基準温度取得条件を満たすと判断されたか否かを判断する(STEP3)。その結果、基準温度取得条件を満たさないと判断した場合は(STEP3:no)、処理の先頭に戻って、開閉弁34が閉弁状態か否かを判断する(STEP1)。それに対して、基準温度取得条件を満たすと判断された場合は(STEP3:yes)、STEP2で検出した閉弁時熱媒温度を熱媒基準温度として記憶し(STEP4)、STEP2で検出した閉弁時室温を基準室温として記憶する(STEP5)。
【0049】
尚、本実施例では、基準温度取得条件が満足される度に、新たな基準温度に更新することができる。このため、季節の変化により基準温度とすべき温度が変化したり、温度センサのセンサ特性が経時変化したりした場合でも開閉弁の開故障を正確に検知することが可能となる。
【0050】
熱媒基準温度および基準室温を記憶したら(STEP4,STEP5)、熱源機または冷凍機が循環通路5に熱媒を循環させているか否かを判断する(STEP6)。このような判断をする理由は、開閉弁34の開故障を検知するためには、熱媒が循環通路5循環している必要があるためである。また、熱媒が循環通路5循環しているか否かは、次のような方法で判断することができる。すなわち、制御部33が、熱源機2または冷凍機3に搭載された制御部4と通信して、熱源機2または冷凍機3が熱媒を循環させているか否かに関する情報を取得することによって判断することができる。あるいは、制御部33が、熱源機2あるいは冷凍機3や循環通路5を共用している他の空調装置10,20の制御部13,23と通信することによって、他の空調装置10,20の開閉弁14,24の開閉状態についての情報を取得し、他の開閉弁14,24の中に開弁状態となっているものが存在すれば、熱源機2または冷凍機3が循環通路5に熱媒を循環させているものと判断することができる。更には、循環通路5に水流スイッチあるいは流量センサを搭載しておき、循環通路5を熱媒が流れているか否かを検知することによって判断しても良い。
【0051】
その結果、熱源機または冷凍機が循環通路5に熱媒を循環させていないと判断した場合は(STEP6:no)、開閉弁34の開故障の有無を判断できないので、STEP6の判断を繰り返すことによって、循環通路5に熱媒が循環されるまで待機状態となる。一方、循環通路5に熱媒が循環されていると判断した場合は(STEP6:yes)、閉弁時熱媒温度と閉弁時室温とを検出する(STEP7)。そして、STEP7で検出された閉弁時熱媒温度と、STEP4で記憶された熱媒基準温度との温度差(以下、熱媒乖離温度)を算出する(STEP8)。室温についても同様に、STEP7で検出された閉弁時室温と、STEP5で記憶された基準室温との温度差(以下、室温乖離温度)を算出する(STEP9)。そして、熱媒乖離温度と室温乖離温度とに基づいて、開閉弁で開故障が発生しているか否かを判断する処理(開故障判断処理)を実行する(STEP30)。開故障判断処理の詳細については後述する。また、開故障判断処理では、開閉弁で開故障が発生しているか否かを、熱媒乖離温度と室温乖離温度とに基づいて判断しているため、温度センサのセンサ特性のバラツキの影響で開故障を誤検知する事態を抑制することができる。この理由についても後述する。
【0052】
開故障判断処理(STEP30)を終了したら、その処理の中で開故障発生と判断されたか否かを判断する(STEP10)。その結果、開故障発生と判断されていない場合は(STEP10:no)、開閉弁異常判断処理の先頭に戻って、開閉弁が閉弁状態か否かを判断した後(図4のSTEP1)、前述した一連の処理を繰り返す。このため、開故障が発生していない間(STEP10で「no」判断されている間)は、STEP2およびSTEP7が何度も実行されて熱媒温度や室温が検出されることになる。これに対して、開故障発生と判断されていた場合は(STEP10:yes)、異常の発生および異常が開故障である旨を報知した後(STEP11)、開閉弁異常判断処理を終了する。
【0053】
D.基準温度取得条件判断処理 :
図6は、本実施例の開閉弁異常判断処理の中で実行される基準温度取得条件判断処理のフローチャートである。基準温度取得条件判断処理(STEP20)では、先ず初めに、熱源機2または冷凍機3が循環通路5に熱媒を循環させているか否かを判断する(STEP21)。この判断は、図4を用いて前述したSTEP6の判断と同様な方法を用いて実行することができる。すなわち、制御部33が熱源機2または冷凍機3の制御部4と通信して、熱源機2または冷凍機3が熱媒を循環させているか否かに関する情報を取得することによって判断することができる。あるいは、他の空調装置10,20の制御部13,23と通信することによって開開閉弁14,24の開閉状態についての情報を取得し、他の開閉弁14,24の中に開弁状態となっているものが存在すれば、熱源機2または冷凍機3が循環通路5に熱媒を循環させているものと判断することができる。更には、循環通路5に水流スイッチあるいは流量センサを搭載しておき、循環通路5を熱媒が流れているか否かを検知することによって判断しても良い。
【0054】
その結果、熱源機2または冷凍機3が循環通路5に熱媒を循環させている場合は(STEP21:yes)、基準温度取得条件を満たしていないと判断する(STEP27)。尚、このように判断する理由(熱媒が循環通路5を循環していると、基準温度取得条件を満たさないと判断する理由)は、熱源機2または冷凍機3が循環通路5に熱媒を循環させている状態で基準温度取得条件を満たすと判断してしまうと、万が一の確率ではあるが開閉弁34が開故障していた場合、正しい熱媒温度および室温を検出することができずに、誤った熱媒温度および室温を基準温度として記憶することになってしまうためである。そして、基準温度取得条件を満たしていないと判断(STEP27)した後は、図6の基準温度取得条件判断処理を終了して、前述した開閉弁異常判断処理に復帰する(図4参照)。
【0055】
これに対して、熱源機2または冷凍機3が循環通路5に熱媒を循環させていない場合は(STEP21:no)、閉弁時熱媒温度の変化速度を算出する(STEP22)。変化速度は次のようにして算出する。前述した開閉弁異常判断処理では、開閉弁34が閉弁状態と判断される度に(図4のSTEP1:yes)、閉弁時熱媒温度および閉弁時室温が検出されて(STEP2)、基準温度取得条件判断処理(STEP20)が開始される。従って、開閉弁34が閉弁状態の間は、閉弁時熱媒温度および閉弁時室温が繰り返して検出されている。そこで、前回に閉弁時熱媒温度を検出してから今回の閉弁時熱媒温度を検出するまでの経過時間を計測しておき、閉弁時熱媒温度の変化量を経過時間で割り算することによって変化速度を算出する。あるいは、経過時間は計測せずに、単に閉弁時熱媒温度の変化量を算出し、この変化量で変化速度を代用させも良い。
【0056】
続いて、こうして求めた閉弁時熱媒温度の変化速度の大きさが、予め設定しておいた熱媒許容変化速度よりも小さいか否かを判断する(STEP23)。その結果、変化速度の大きさが熱媒許容変化速度よりも小さくない場合は(STEP23:no)、基準温度取得条件を満たしていないと判断して(STEP27)、図6の基準温度取得条件判断処理を終了して、前述した開閉弁異常判断処理に復帰する(図4参照)。尚、熱源機2または冷凍機3が循環通路5に対する熱媒の供給を停止してから1時間程度の時間が経過すれば、閉弁時の熱媒温度の変化速度が、熱媒許容変化速度よりも小さくなることが一般的である。
【0057】
これに対して、閉弁時熱媒温度の変化速度の大きさが熱媒許容変化速度よりも小さいと判断した場合は(STEP23:yes)、今度は、閉弁時室温の変化速度を算出する(STEP24)。閉弁時室温の変化速度も、閉弁時熱媒温度の変化速度と同様にして算出することができる。すなわち、開閉弁34が閉弁状態の間は、閉弁時室温も繰り返して検出されているので、前回に閉弁時室温を検出してから今回の閉弁時室温を検出するまでの経過時間を計測しておき、閉弁時室温の変化量を経過時間で割り算することによって変化速度を算出する。あるいは、経過時間は計測せずに、単に閉弁時室温の変化量を算出し、この変化量で変化速度を代用させても良い。
【0058】
そして、閉弁時室温の変化速度の大きさが、予め設定しておいた室温許容変化速度よりも小さいか否かを判断する(STEP25)。その結果、変化速度の大きさが室温許容変化速度よりも小さくない場合は(STEP25:no)、基準温度取得条件を満たしていないと判断して(STEP27)、図6の基準温度取得条件判断処理を終了して、前述した開閉弁異常判断処理に復帰する(図4参照)。
【0059】
これに対して、閉弁時室温の変化速度の大きさが室温許容変化速度よりも小さいと判断した場合は(STEP25:yes)、基準温度取得条件を満たしていると判断して(STEP26)、図6の基準温度取得条件判断処理を終了して、前述した開閉弁異常判断処理に復帰する(図4参照)。そして、開閉弁異常判断処理のSTEP3では、上述した基準温度取得条件判断処理での判断結果に基づいて、基準温度取得条件を満たしているか否かを判断することになる。尚、熱源機2または冷凍機3が循環通路5に対する熱媒の供給を停止してから1時間程度の時間が経過すれば、閉弁時の室温の変化速度も、室温許容変化速度よりは小さくなることが一般的である。
【0060】
E.開故障判断処理 :
図7は、本実施例の開閉弁異常判断処理の中で実行される開故障判断処理のフローチャートである。この開故障判断処理(STEP30)は、前述した開閉弁異常判断処理の中で熱媒乖離温度および室温乖離温度を算出した後に実行される処理である(図4参照)。
【0061】
図7に示すように、開故障判断処理(STEP30)では、熱媒乖離温度と室温乖離温度との温度差を算出する(STEP31)。そして、算出した温度差が予め設定しておいた所定値よりも小さいか否かを判断し(STEP32)、温度差が所定の閾値温度よりも小さい場合は(STEP32:yes)、開故障は発生していないと判断する(STEP33)。これに対して、温度差が閾値温度よりも小さくなかった場合は(STEP32:no)、開故障が発生していると判断する(STEP34)。
【0062】
こうして、開故障の発生有無を判断したら、開故障判断処理を終了して、前述した開閉弁異常判断処理に復帰する(図5参照)。そして、開閉弁異常判断処理のSTEP10では、上述した開故障判断処理での判断結果に基づいて、開閉弁34が開故障しているか否かを判断することになる。このようにして開故障の有無を判断すれば、温度センサのセンサ特性のバラツキの影響で、開閉弁34の開故障の有無を誤って判断してしまう事態を抑制することが可能となる。この理由は、従来の方法では、開故障の有無を熱媒温度と室温との温度差に基づいて判断していたのに対して、本実施例の方法では、熱媒乖離温度(閉弁時熱媒温度と熱媒基準温度との温度差)と、室温乖離温度(閉弁時室温と室温基準温度との温度差)との温度差に基づいて判断しているためである。この点について具体的に説明する。
【0063】
図8は、熱媒乖離温度と室温乖離温度との温度差に基づいて判断することで、開閉弁の開故障を正確に検知することが可能な理由についての説明図である。図8(a)では、前述した図2(b)と同様に、開閉弁が開故障した空調装置の開閉弁を閉弁させたまま、他の空調装置の開閉弁を開弁させた場合を想定して、熱媒乖離温度および室温乖離温度が変化する様子が示されている。また、図8(b)は、参考として、前述した図2(b)の内容(すなわち、熱媒温度センサで検出した熱媒温度および室温センサで検出した室温の温度変化)を再掲したものである。
【0064】
図8(b)に示したように、他の空調装置の開閉弁を開弁する前の状態では、室温の方が熱媒温度よりも高くなっている。これは、温度センサのセンサ特性のバラツキで、室温センサはセンサ出力が上方にシフトしており、熱媒温度センサはセンサ出力が下方にシフトしているためである。
【0065】
これに対して、熱媒乖離温度および室温乖離温度は、図8(a)に示すように、他の空調装置の開閉弁を開弁する前の状態では、どちらもほとんど0(若しくは非常に小さな値)となっている。この理由は、次のようなものである。先ず、熱媒乖離温度は、開閉弁の閉弁時に検出した熱媒温度(閉弁時熱媒温度)が熱媒基準温度から乖離した大きさ(温度差)を表しており、熱媒基準温度は、基準温度取得条件を満足している状態で、閉弁時に検出された熱媒温度を表している。そして、他の空調装置の開閉弁を開弁する前の状態は、基準温度取得条件を満足している状態に比較的近いので、検出される熱媒温度は熱媒基準温度に近い温度となっている。このため、熱媒乖離温度を算出すると、ほとんど0(若しくは非常に小さな値)となる。室温乖離温度についても全く同様な理由から、他の空調装置の開閉弁を開弁する前の状態では、ほとんど0(若しくは非常に小さな値)となる。
【0066】
このように、他の空調装置の開閉弁を開弁する前の状態では、熱媒温度および室温に着目すると、温度センサのセンサ特性のバラツキの影響が大きく表れるが、熱媒乖離温度および室温乖離温度に着目すると、センサ特性のバラツキの影響はほとんど現れない。また、他の空調装置の開閉弁を開弁した後は、熱媒温度および室温に着目した場合と、熱媒乖離温度および室温乖離温度に着目した場合とで、次のような違いが生じる。
【0067】
先ず始めに、熱媒温度および室温に着目した場合について説明すると、図8(b)に示したように、他の空調装置の開閉弁を開弁した後は、熱媒温度および室温が上昇していく。ここで、図2(b)を用いて前述したように、熱媒温度センサはセンサ特性のゲインが小さくなる方向にバラついているので、熱媒温度センサで検出される熱媒温度の上昇量は実際の上昇量よりも小さくなる。また、室温センサはセンサ特性のゲインが大きくなる方向にバラついているので、室温センサで検出される室温の上昇量は実際の上昇量よりも大きくなる。但し、実際の温度は、熱媒温度は明確に上昇しているのに対して、室温は僅かに上昇するだけなので、センサ特性のゲインがバラついていた場合でも、熱媒温度の方が室温よりも温度の上昇量は大きくなっている。
【0068】
もっとも、前述したように、他の開閉弁が開弁する前の状態では室温の方が熱媒温度よりも高くなっているので、他の開閉弁が開弁することによって熱媒温度が室温よりも大きく上昇しても、低めに計測されていた熱媒温度が高めに計測されていた室温を追い抜くだけで、熱媒温度と室温との間に大きな温度差は生じていない。従って、熱媒温度と室温との温度差に基づいて開閉弁の開故障を検知しようとすると、実際には開故障しているにも拘らず、開故障していないと誤って判断してしまう事態が生じ得る。
【0069】
次に、熱媒乖離温度および室温乖離温度に着目した場合について説明すると、図8(a)に示すように、他の空調装置の開閉弁を開弁した後は、熱媒乖離温度と室温乖離温度との間に明確な温度差が現れる。この理由は次のようなものである。先ず、熱媒乖離温度は、閉弁状態で検出した熱媒温度(閉弁時熱媒温度)が熱媒基準温度から乖離した大きさだから、閉弁時熱媒温度の方が熱媒基準温度よりも大きいとすると、熱媒乖離温度は、
熱媒乖離温度=(閉弁時熱媒温度)-(熱媒基準温度)
で算出できる。ここで、閉弁時熱媒温度は、図8(b)に示した熱媒温度と同じものであるから、図8(a)に示した熱媒乖離温度の変化波形は、図8(b)の熱媒温度の変化波形を、熱媒基準温度だけ下方にシフトさせたものとなる。また、室温乖離温度についても同様に、図8(a)に示した室温乖離温度の変化波形は、図8(b)の室温の変化波形を、基準室温だけ下方にシフトさせたものとなっている。
【0070】
そして、前述したように、熱媒温度の変化波形および室温の変化波形には、温度センサのゲインのバラツキの影響が現れるから、それらの変化波形をシフトさせた熱媒乖離温度や室温乖離温度の変化波形にも、温度センサのゲインのバラツキの影響は現れる。その一方で、前述したように、熱媒乖離温度や室温乖離温度には、センサ出力が上方または下方にシフトするようなバラツキの影響は現れない。従って、本実施例のように、熱媒乖離温度と室温乖離温度との温度差に基づいて、開閉弁の開故障の有無を判断してやれば、温度センサのゲインのバラツキの影響は受けるものの、センサ出力が上方または下方にシフトするようなバラツキの影響を受けることなく判断することができる。その結果、開閉弁の開故障の有無を、正確に判断することが可能となる。
【0071】
図8では、開閉弁が開故障している場合に、本実施例の方法を用いれば開故障を正確に検知可能である理由について説明した。また、本実施例の方法を用いれば、開故障していないにも拘わらず、開故障しているものと誤検知する事態も防止することができる。
【0072】
図9は、熱媒乖離温度と室温乖離温度との温度差に基づいて判断することで、開閉弁の開故障を正確に検知することが可能な理由についての説明図である。図9(a)では、前述した図3(b)と同様に、開故障していない開閉弁を閉弁させたままで入浴を開始した場合に、熱媒乖離温度および室温乖離温度が変化する様子が示されている。また、図9(b)は、参考として、前述した図3(b)の内容(すなわち、熱媒温度センサで検出した熱媒温度および室温センサで検出した室温の温度変化)を再掲したものである。
【0073】
図9(b)に示したように、入浴を開始する前の状態では、熱媒温度の方が室温よりも高くなっている。これは、温度センサのセンサ特性のバラツキで、熱媒温度センサはセンサ出力が上方にシフトしており、室温センサはセンサ出力が下方にシフトしているためである。しかし、上述したように、熱媒乖離温度および室温乖離温度には、センサ出力が上下方向にシフトするようなセンサ特性のバラツキの影響は現れないので、図9(a)に示すように、入浴を開始する前の状態では、熱媒乖離温度と室温乖離温度との間の温度差は非常に小さくなっている。
【0074】
また、入浴を開始した後は、熱媒温度も浴室内の室温もゆっくりと上昇していく。ここで、図9(b)に示した例では、熱媒温度センサはセンサ特性のゲインが大きくなる方向にバラついているので、熱媒温度センサで検出される熱媒温度の上昇量は実際の上昇量よりも大きくなる。また、室温センサはセンサ特性のゲインが小さくなる方向にバラついているので、室温センサで検出される室温の上昇量は実際の上昇量よりも小さくなる。そして、上述したように、入浴を開始する前の状態では、熱媒温度センサで検出した熱媒温度の方が、室温センサで検出した室温よりも高くなっているので、入浴が開始されると、熱媒温度と室温との温度差は更に大きくなる。その結果、開閉弁の開故障の有無を、熱媒温度と室温との温度差に基づいて判断している場合には、実際には開故障していないにも拘わらず、開故障していると誤判断してしまう可能性がある。
【0075】
これに対して、熱媒乖離温度および室温乖離温度の場合は、図9(a)に示すように、入浴を開始した後も、熱媒乖離温度と室温乖離温度との間に明確な温度差は生じない。この理由は、図8を用いて前述したように、熱媒乖離温度や室温乖離温度には、センサ特性のゲインのバラツキの影響しか現れず、センサ出力が上下方向にシフトするようなセンサ特性のバラツキの影響は現れないからである。もちろん、センサ特性のゲインのバラツキの影響は現れるので、図9(a)に示されるように、入浴開始後の温度の上昇量は、熱媒乖離温度と室温乖離温度とで差が生じている。しかし、図9(b)のように、センサ特性のゲインのバラツキの影響と、センサ出力が上下方向にシフトするようなバラツキの影響とが重畳する場合に比べると、温度の上昇量の差は小さくなっている。このため、本実施例の方法を用いれば、開故障していないにも拘わらず、開故障しているものと誤検知する事態も防止することが可能となる。
【0076】
F.変形例 :
上述した本実施例では、開閉弁の閉弁時での熱媒乖離温度と室温乖離温度との温度差を算出することによって、開閉弁が開故障しているか否かを判断するものとして説明した。しかし、簡便には、温度差を算出することなく、開閉弁が開故障しているか否かを判断することも可能である。以下では、このような変形例について説明する。
【0077】
図10は、熱媒乖離温度と室温乖離温度との温度差を算出することなく、開閉弁が開故障しているか否かを判断する変形例の開故障判断処理のフローチャートである。この処理は、図4および図5を用いて前述した開閉弁異常判断処理の中で開故障判断処理(STEP30)の代わりに実行される処理である。
【0078】
変形例の開故障判断処理(STEP50)を開始すると、熱媒乖離温度が所定の熱媒乖離閾値よりも大きいか否かを判断する(STEP51)。その結果、熱媒乖離温度が熱媒乖離閾値よりも小さかった場合は(STEP51:no)、室温乖離温度に関わらず、開閉弁は開故障していないと判断して(STEP53)、変形例の開故障判断処理を終了する。
【0079】
一方、熱媒乖離温度が熱媒乖離閾値よりも大きかった場合は(STEP51:yes)、室温乖離温度が所定の室温乖離閾値よりも大きいか否かを判断する(STEP52)。その結果、室温乖離温度が室温乖離閾値よりも大きかった場合は(STEP52:yes)、開閉弁は開故障していないと判断した後(STEP53)、変形例の開故障判断処理を終了する。これに対して、室温乖離温度が室温乖離閾値よりも小さかった場合は(STEP52:no)、開閉弁で開故障が発生していると判断した後(STEP54)、変形例の開故障判断処理を終了する。
【0080】
図11は、変形例の開故障判断処理が、開閉弁が開故障しているか否かを判断する方法をまとめた説明図である。上述したように、変形例の開故障判断処理では、熱媒乖離温度と熱媒乖離閾値とを比較し、熱媒乖離温度が熱媒乖離閾値よりも大きかった場合には、更に、室温乖離温度と室温乖離閾値とを比較する。その結果、図11に示されるように、熱媒乖離温度が熱媒乖離閾値よりも大きいが、室温乖離温度は室温乖離閾値よりも小さい場合は、開故障が発生したと判断し、それ以外の場合は、開故障は発生していないと判断する。
【0081】
こうすれば、熱媒乖離温度と熱媒乖離閾値とを比較し、更に、室温乖離温度と室温乖離閾値とを比較するだけで、開閉弁で開故障が発生しているか否かを判断することができるので、簡単に判断することが可能となる。
【0082】
以上、本実施例および変形例の空調装置10,20,30について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0083】
例えば、上述した本実施例では、基準温度取得条件判断処理で、閉弁時熱媒温度の変化速度が熱媒許容変化速度よりも小さく、且つ、閉弁時室温の変化速度が室温許容変化速度よりも小さい場合に、基準温度取得条件を満たすと判断した。しかし、閉弁時熱媒温度の変化速度が熱媒許容変化速度よりも小さいか、閉弁時室温の変化速度が室温許容変化速度よりも小さい場合の何れかに該当する場合に、基準温度取得条件を満たすと判断しても良い。
【符号の説明】
【0084】
1…空調システム、 2…熱源機、 3…冷凍機、 4…制御部、
5…循環通路、 5a…供給通路、 5b…還流通路、 10…空調装置、
11…床暖房パネル、 12…熱交換器、 13…制御部、
13a…操作パネル、 14…開閉弁、 15…熱媒温度センサ、
16…室温センサ、 20…空調装置、 21…暖房パネル、
22…熱交換器、 23…制御部、 23a…操作パネル、 24…開閉弁、
25…熱媒温度センサ、 26…室温センサ、 30…空調装置、
31…ケーシング、 31a…空気取入口、 31b…空気吹出口、
32…熱交換器、 33…制御部、 33a…操作パネル、 34…開閉弁、
35…熱媒温度センサ、 36…室温センサ、 37…送風ファン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11