(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155310
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】包囲ケーブルによるドーム状部材網の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/32 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
E04B1/32 102H
E04B1/32 102B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069935
(22)【出願日】2023-04-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】516047061
【氏名又は名称】犬飼 八重子
(74)【代理人】
【識別番号】715009178
【氏名又は名称】犬飼 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 晴雄
(57)【要約】
【課題】
本発明は、ドーム状部材網の構築に関して、構築するドームの規模に関係なく、小規模から大規模までのドーム構築に適用出来る施工性と経済性を兼ね備えた新たな包囲ケーブルについて提案することを課題とする。
【解決手段】
本発明は、課題を解決するために、2本の包囲ケーブルAとBによって、放射状に配置された直線部材を半周ずつ包囲して、力学的には、張力が一定の理想的1本の包囲ケーブルと同等の効果を発揮できるようにしたものである。本発明の包囲ケーブル方法によって施工性と経済性の向上が図られる。
【選択図】
図7-5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の包囲ケーブル用いて直線部材による骨組み構造のドーム状部材網を構築する方法であって、内側を円形固定板に水平状に固定し、外側端部に保護フレームを取付けた直線部材を放射状に配置し、放射状に配置した前記直線部材の保護フレームaに包囲ケーブルAの一端を定着してから、左回り又は右回りで他の保護フレーム内を順次通して、半周目に位置する保護フレームbを通してから包囲ケーブルAを保持固定し、包囲ケーブルAが包囲した半周とは反対側の半周を包囲ケーブルBで包囲するために、包囲ケーブルBの一端を、包囲ケーブルAを保持固定している保護フレームbに定着し、包囲ケーブルAと同じ回りで他の保護フレーム内を順次通して、半周して、包囲ケーブルAを定着している保護フレームaを通してから包囲ケーブルBを保持固定することによって平面部材網を形成し、該平面部材網の中央部を持上げて凸状にして凸状部材網を形成し、包囲ケーブルAとBの保持固定を解除して、両ケーブルAとBの先端を構築するドーム状部材網の中心部に設置した巻取り機の巻取りローラの回転方向に合わせて定着し、人力、モータ等により所要の回転力で該巻取ローラを回転させることにより、包囲ケーブルAとBが巻取られ、両ケーブルAとBに張力が発生し、前記凸状部材網を構成している前記直線部材の外側端部に中心方向の圧縮力が作用し、前記凸状部材網が縮径されて、ドーム状部材網が構築されるドーム状部材網の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特許文献3及び4は、直線部材3を強制変形させてドーム状部材網を構築するもので、本発明では、2本の包囲ケーブルAとBによって小規模から大規模までのドームを経済的に構築する方法を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
ドーム又はドーム状構造体を構築する場合、現場で仮設足場、支保工、形枠を組みコンクリートを打設して構築する方法や、工期短縮、高所作業の軽減等をはかるため、事前に工場等で製作した各種部材を建設現場に運搬し、建設現場に仮設足場、支保工を組み、クレーン等により各種部材を持上げ、それらを接続・結合して構築する方法等が実施されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
このような従来の方法は、構築するドーム形状に合わせたコンクリート打設用形枠や、組み立て部材を製造・加工することが不可欠であるが、特許文献3及び特許文献4の方法はそれらとは全く異にして、直線状部材を現場でアーチ状に強制変形させてドーム状部材網を構築することにより、仮設足場、支保工、クレーン等の重機の使用や高所作業を大幅に減少させことが出来るものである。
【0004】
前記直線部材をアーチ状に強制変形させてドーム状部材網を構築するためには、放射状に配置した前記直線部材をそれぞれ縮径させることが必要であり、縮径するために必要な包囲ケーブルの引寄せ量や引寄せ張力は、構築するドームのスパンが大きくなるほど大きくなる。スパンの大きいドームの構築にも対応出来る包囲ケーブルが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-06200
【特許文献2】特開平10-06101
【特許文献3】特許第6063086号公報
【特許文献4】特許第6623331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特許文献3と特許文献4によるドーム状部材網の構築と同様に、放射状に配置された直線部材を縮径することによりドーム状部材網を構築するものである。縮径するために使用される包囲ケーブル(特許文献3の「包囲ワイヤ」を本文では「包囲ケーブル」と言い換えている)は上記直線部材の外側端部を包囲するように配置され、構築するドームのスパンまで縮径する。この縮径するために必要な引寄せ量は、半円形ドームではスパンの約1.5倍になる。又、引寄せるために必要な包囲ケーブルの張力はスパンが大きくなるほど大きくなる。従来、大きい引寄せ量と大きい張力に対応出来るような包囲ケーブルは殆ど検討されていなかった。本願では、従来には無かった大容量の引寄せ量と張力が実現できる包囲ケーブルを提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願では、放射状に配置された直線部材を1本の包囲ケーブルで包囲し張力を与えるのでなく、2本の包囲ケーブルで包囲し所要の張力を与える方法を提案する。即ち、放射状に配置された直線部材3の放射状円の半分を1本の包囲ケーブルAで包囲し、残りの放射状円の半分を包囲ケーブルBで包囲するものである。包囲ケーブルAとBの引寄せ量と張力を同一とすることで、包囲ケーブルAとBの2本の包囲ケーブルは、力学的には張力が一定の1本の理想的な包囲ケーブルと見なすことが出来る。
【0008】
特許文献3と特許文献4及び本願での直径Lのドーム状部材網の構築は、
図1と
図2の工程により構築される。
図1は直線部材3を基礎工1上に放射状に配置した平面部材網を示し、直線部材3の内側端部は直径Δ0の円形固定板2に水平状に固定され、直線部材3の外側端部は縁付き平滑板6に支持される。直線部材3の長さはS0/2で、S0は構築するドームの弧長である。直線部材3の外側端部には保護フレーム4(
図4-1と
図4-2)参照)が取り付けられ一体化されている。包囲ケーブル7は保護フレーム4の中を通過して多数の直線部材3を包囲している。
【0009】
ドーム状部材網の構築は
図2に示す工程により構築される。
図2-1は平面部材網(
図1参照)の側面を示し直線部材の全長はS0である。
図2-2は、平面部材網の外側に中心方向の力を加えてドーム状にするため、中央部を凸状にしておく必要があり、そのための凸状部材網の側面を示している。スパンはほぼS0である。凸状にするため中央部に架台を置く方法や上方から持上げる方法が採られる。
図2-3は、凸状部材網の外周に縮径水平力ΣHを加え、直線部材の全長S0を縮径してスパンLのドーム状部材網を構築する時の側面を示している。円形状ドーム(f=L/2)の場合,S0=1.48Lである。
【0010】
本願は、
図2-3に於いて凸状部材網の外周に縮径水平力ΣHを加えるために包囲ケーブル7を用いて行う方法を提案するものである。包囲ケーブル7には構築するドームのスパンLが大きくなるほど大きな縮径水平力ΣHが必要となり、包囲ケーブルの張力Twも大きくなり、通常PC鋼材が使用される。強度がPC鋼材より小さいワイヤはその径が大きく施工性を損なうことがある。
【0011】
通常、本願のドーム状部材網に使用される直線部材3には大きな圧縮力が作用するため、横方向の座屈に対する対策が必要になる。座屈耐力を確保するため十字形断面が採用され、強軸3aには高強度鋼が、弱軸3bには普通鋼が使用される(
図3参照)。
【0012】
直線部材の全長S0は、直径Lで高さ(ライズ)がfの弧長である。半円状のドーム(f=L/2)の場合S0は、S0=1.48Lである。従って直線部材全長S0を縮径してドームLを構築するための包囲ケーブルの所要引寄せ量Cdは、
Cd=π(S0-L)=1.50L 式a
上式より、例えば、L=50m、f=25mの円形状ドームでは、所要引寄せ量CdはスパンLの1.5倍の75mになる。又包囲ケーブルの張力Twは、計算上400kg以上になる。
【0013】
以上より、直線部材3の外側端部には包囲ケーブル7の引寄せを容易にするために
図4に示す保護フレーム4がその1例として採用される。保護フレーム4は直線部材3の端部の十字断面(強軸3aと弱軸3b)に強固に接続され十字断面と一体化している。
図4-1はその平面で、
図4-2はその側面で、縮径中の状態を示している。包囲ケーブル7は保護フレーム4の湾曲板4aに支持され滑動し易くなっている。
【0014】
従来の方法での、包囲ケーブルの引寄せを
図5の平面図で示す。引寄せ作業は4本の接続包囲ケーブル8でn=4台の引寄せ具9を接続して行う。引き寄せ作業N=1回の引寄せ量はΣδ=nδで、δは引寄せ具1台の引寄せ量で、所要引寄せ量Cdに達しない場合にはN=2回、3回と達成するまで繰り返へされる。Nが大きくなると施工性が損なわれるため、
図5では引寄せ作業をN=3回としている。
【0015】
従来の引寄せ具9の代表例を
図6に示す。
図6-1はターンバックル型引寄せ具9aで、一方が逆ねじ付きロッド9a2の中央ハンドル9a1を回転させることにより両方の接続包囲ケーブル8を引寄せるもので、1回の引寄せ具8の引寄せ量能力δaは、最大でもδa=2mほどである。
図6-2はレバー式ブロック型引寄せ具9bで、ハンドル9b1を左右に振ってチエ―ン9b2を引寄せるもので、チエ―ン9b2の長さが1回の引寄せ量能力δbで、ターンバックル型より大きいが、1回の引寄せ量能力δbは、最大でもδb=5mほどである。
【0016】
図6の引寄せ具9による引寄せ量能力δは、包囲ケーブル7に必要な所要引寄せ量Cdよりはるかに小さいため、これを補完するため1本の包囲ケーブル7を複数の引寄せ具9によって引寄せる方法が採られる。
図5ではn=4台の引寄せ具9が使用されている。
【0017】
複数の引寄せ具9による全引き寄せ量Σδは、
ターンバックル型ではΣδa=nδa=4×2=8m 式b
レバー式ブロック型ではΣδb=nδb=4×5=20m 式c
【0018】
上記2例の引寄せ具9を使用した場合の、構築可能なスパンLは以下となる。
N=Cd/Σδ=1.50L/Σδ (Cd:式a参照) 式d
ここで、N:包囲ケーブの引寄せ作業の回数=3(
図5参照)を代入
式dより L=N×Σδ/1.50 式e
N=3回の引寄せ作業によって構築できるドーム状部材網のスパンLは式eより
ターンバックル型(式bΣδa=8)では L=3×8/1.5=16m
小規模のドーム状部材網の構築に適応可能である。
レバー式ブロック型(式cΣδb=20)ではL=3×20/1.5=40m
中規模のドーム状部材網の構築に適応可能である。
【0019】
引き寄せ具9を用いた接続包囲ケーブル8による従来のドームの構築方法は、
全引き寄せ量Σδが小さいこと、また引寄せ張力Twも20~30kg程度と小さいこと(L=50mではTw>400kg以上必要)等から、中規模以下のものに限定されるため、本願では規模に関わらず、特に大規模ドームの構築に適用出来る方法を提案するものである。
【0020】
本願では、引寄せ具9使用する場合の短い接続包囲ケーブル8に代わって、長いロング包囲ケーブルAとロング包囲ケーブルBを、構築するドーム状部材網の中央部に設置したウインチ型巻取り機11により巻取り、ドーム状部材網を構築する方法を提案する。
【0021】
最初に直線部材3の端部に保護フレーム4を取付け一体化する。直線部材3の他端の内側を円形固定板2に水平状に固定し、直線部材3の保護フレーム4を縁付き平滑板6に据えて直線部材3を放射状に配置する(
図7-1参照)。放射状に配置した直線部材3の保護フレームaに包囲ケーブルAの一端を定着する。通常、ロング包囲ケーブルAには高張力材のPC鋼材が使用されるため、ロング包囲ケーブルAを固定するためにはクサビ止めの定着具12(
図8参照)が使用される。
【0022】
保護フレームaに定着したロング包囲ケーブルAを引き伸ばし、左回り又は右回りで次の保護フレーム4から順次保護フレーム4の中を通し半周目の保護フレームbを通してからロング包囲ケーブルAを保持固定する。保護フレームaとbに挟まれた複数の保護フレーム4が包囲ケーブルAにより包囲される。
【0023】
ロング包囲ケーブルAが包囲した半周とは反対側の半周をロング包囲ケーブルBで包囲する。包囲は、ロング包囲ケーブルBの一端を、ロング包囲ケーブルAを保持固定している保護フレームbに定着し、ロング包囲ケーブルBを引き伸ばし、包囲ケーブルAと同じ回りで次の保護フレーム4から順次保護フレーム4内を通し半周目の保護フレームaを通してからロング包囲ケーブルBを保持固定する。保護フレームaとbに挟まれた複数の保護フレーム4がロング包囲ケーブルBにより包囲される。
【0024】
ロング包囲ケーブルAとBにより、放射状に配置された直線部材3の全部の保護フレーム4が包囲され、直線部材による平面部材網が形成される(
図7-2参照)。
図7-3は平面部材網の側面図で2本の直線部材3の全長はS0である。平面部材網の状態で直線部材3の端部に縮径水平力ΣHを作用させ、全長S0の直線部材3をドーム状に変形させるためには、縮径水平力ΣHを作用させる前に全長S0の直線部材3を凸状状態にしておく必要がある。
【0025】
図7-4は、全長S0の直線部材の中央部を持上げ凸状にした凸状部材網の側面を示している。凸状にするために直線部材の全長S0の中間部に支持台を設置する方法や、中間部を持上げる方法がある(特許文献4参照)。凸状部材網の形成後、ロング包囲ケーブルAとBの保持固定を解除して縮径の準備をする。
【0026】
保持固定を解除したロング包囲ケーブルAとBの先端を、構築するドーム状部材網の中央部に設けたウインチ型の巻取り機11の巻取りロール11aに回転の方向を合わせて定着する(
図7-5の平面図と
図7-6の側面図参照)。人力、モータ等によって所要の回転力で巻取りロール11aを回転させてロング包囲ケーブルAとBを巻取り、巻き取りによりロング包囲ケーブルAとBには張力Twが発生する。
【0027】
ロング包囲ケーブルAが方向転換する保護フレームbにはロング包囲ケーブルBが定着されている(
図8参照)。保護フレームbはAとBの両ケーブルによる張力を受け、同時に、保護フレームaにも両ケーブルによる張力を受けるため、2本の包囲ケーブルAとBは、力学的には、張力が一定の理想的1本の包囲ケーブルと見なすことが出来る。
【0028】
直線部材3の保護フレーム4に中心方向の圧縮力ΣHが作用し、凸状部材網が縮径されてドーム状部材網が構築される(
図7-6)の側面図参照)。
【0029】
巻取り機11の1回の巻取り量が、ロング包囲ケーブル10の引寄せ量Cdより少ない場合には、縮径された直線部材3の端部の保護フレーム4を縁付き平滑板6に仮固定して、巻取りローラ10aを解除して、ロング包囲ケーブルAとBの先端を短縮してから、再度巻取りローラ10aに定着して、ロング包囲ケーブルAとBを巻取る。以上の操作の繰り返しを行い、所要の引寄せ量Cdまで引寄せ、所定スパンのドーム状部材網が構築される。
【0030】
ドーム状部材網の規模と巻取り能力によっては、1度の段取りで凸状部材網からドーム状部材網を構築することも可能であり、本願の2本のロング包囲ケーブルによる縮径方法が、ドーム状部材網の構築に極めて適していることがわかる。
【発明の効果】
【0031】
本願の2本のロング包囲ケーブルの引寄せ方式には、以下のような利点がある。
1.2本の包囲ケーブルにより、縮径時のケーブルの摩擦等による張力の損失が均等化され、包囲ケーブルの張力は一定化される。
2.大きい引寄せ量と引寄せ力に対応出来るため、引き寄せ作業の段取り変えが少なくて済む。
3.ロング包囲ケーブルが2本と少ないため、縮径作業が単純で容易である。
4.構築するドーム状部材網の中心位置に巻取り機を設置するため、相対する両サイドからのロング包囲ケーブルを安定的に引寄せることが出来る。
5.巻取り機に設けられた1本の巻取りロールで2本のロング包囲ケーブルAとBを巻き取るため、両ケーブルの巻取り速度や巻取り力は同一になり、均等な縮径が行われる
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】放射状に配置した直線部材による平面部材網の説明図である。
【
図5】接続包囲ケーブル使用の平面部材網の説明図である。
【
図6-1】ターンバックル型引寄せ具の説明図である。
【
図6-2】レバー式ブロック型引寄せ具の説明図である。
【
図7-2】平面部材網と凸状部材網の平面図による説明図である。
【
図9-1】実施例の平面部材網の平面による説明図である。
【
図9-2】実施例の構築過程の側面による説明図である。
【
図10-1】凸状部材網形成時の環状枠付き鉛直台の側面の説明図である。
【
図10-2】ドーム状部材網形成時の環状枠付き鉛直台の側面の説明図である。
【
図11-1】実施例の包囲ケーブルAとBの平面による説明図である。
【
図11-2】実施例の凸状部材網とドーム状部材網の側面による説明図である。
【
図11-3】実施例の1次ドーム状部材網の斜視図である。
【
図12-1】実施例の2次ドーム状部材網構築過程の斜視図である。
【
図12-2】実施例の完成時のドーム状部材網の斜視図で
【発明を実施するための形態】
【0033】
(実施例1)2本のロング包囲ケーブルAとBを用いてドーム状部材網3Cを構築する方法について、
図9~
図12用いて説明する。構築するドーム状部材網3Cは、中規模なドーム状部材網を想定する。
【0034】
ドーム状部材網3Cは1次と2次の2回の施工により構築される。1次施工では8本の直線部材3を用いてドーム状部材網3Cが構築され、2次施工では、1次施工で構築したドーム状部材網3Cを支保工として、新たに8本の直線部材33を補足して、16本の直線部材3と33によるドーム状部材網3Cが構築される。1次施工では
図3-1の断面の直線部材3が使用され、2次施工では、縮径水平力ΣHが小さくなるため、小断面の直線部材33が使用される(
図3-2参照)。
【0035】
本願の2本のロング包囲ケーブルAとBの縮径による構築方法は、1次施工時に適用される。2次施工は1次施工で構築したドーム状部材網3Cを支保工として構築する方法で行われる。
【0036】
ここで、ドーム状部材網3Cを構築するために使用される直線部材3と33は、構築するドーム状部材網3Cの弧長S0の半分の長さ、S0/2である。直線部材3と直線部材33は十字型断面で、強軸2aには、強度の高い鋼材が使用され、弱軸2bは剛性を大きくするためであり、通常、強度的には強軸2aの強度以下のものが使用される。この直線部材3と33の端部には保護フレーム4が一体的に結合されている。
【0037】
1次施工について説明する。直線部材3が放射状に配置され、その内側端部は円形固定板2に水平状に固定され、外側端部は縁付き平滑板6により、中央部は環状枠15付き鉛直台14(
図10-1と
図10-2参照)により横方向の変位が拘束される。直線部材3はこの3カ所の拘束により座屈が防止されている。
図10-1は凸状部材網3Bの持上げ時を、
図10-2はドーム状部材網3Cの縮径時の横方向変位の拘束を示す。
【0038】
放射状に配置された直線部材3の保護フレームaにロング包囲ケーブルAを定着し、右回りで順次保護フレーム4内を通し半周し、半周目の保護フレームbを通してからロング包囲ケーブルAを保持固定する。同様に、保護フレームbにロング包囲ケーブルBを定着し、引き伸ばして右回りで半周し、保護フレームaを通してからロング包囲ケーブルBを保持固定する。
【0039】
放射状に配置されていた直線部材3が、ロング包囲ケーブルAとBにより、包囲され平面部材網3Aが形成される(
図9-1参照)。
【0040】
直線部材3の全長S0の1/4地点に鉛直台14を配置する。
鉛直台14の上部に設置したジャッキ14aで平面部材網3Aの直線部材3を持上げると、直線部材3の全長に負の曲げが生じ、凸状部材網3Bが形成される(
図10-1参照)。持上げ量δuは持上げ点が破断しない範囲とする。形成された凸状部材網3Bの外側端部を縮径することによりドーム状部材網3C(
図11-2参照)を構築することが出来る。
【0041】
凸状部材網3Bの縮径は以下のようにして行われる。
保護フレームbに保持固定していたロング包囲ケーブルAと、保護フレームaに保持固定していたロング包囲ケーブルBの保持固定を解除する。解除されたロング包囲ケーブルAとBの先端を中心方向に伸ばし、中心部に設置されているウインチ型巻取り機11の巻取りロール11aに回転の方向を合わせて定着する(
図11-1参照)。定着後、巻取り機11を作動させると巻取りロール11aの回転によりロング包囲ケーブルAとBが巻き取られ、両ケーブルには張力Twが発生する。発生した張力Twによって直線部材3の保護フレーム4が中心方向に圧縮され、直線部材3は縮径され直線部材3は徐々にアーチ状に変形し、ドーム状部材網3Cが構築される(
図11-2参照)。縮径中の直線部材3は、環状枠15付き鉛直台14により横方向の変位が拘束されるため座屈が防止される(
図10-2参照)。
【0042】
アーチ状に変形した直線部材端部の保護フレーム4をドーム状部材網3Cの環状支承5に固定する(
図11-2参照)。
【0043】
構築されたドーム状部材網3Cの直線部材3の相互を、環状枠15に沿った幅止め鋼16で連結する。幅止め鋼16による直線部材3の連結後、環状枠15と鉛直台14は撤去される。同様に保護フレーム4に沿って、幅止め鋼16が接続され、包囲ケーブルAとBは撤去され、8本の直線部材3からなる1次のドーム状部材網3Cが構築される(
図11-3参照)。
【0044】
2次施工は1次ドーム状部材網3Cを支保工にして、直線部材33の内側端部を円形固定板2に水平状に固定し、中間の幅止め鋼16を受け台にして外側に張出す(
図12-1参照)。外側に張出した直線部材33の端部を環状支承5に引寄せると直線部材33はアーチ状になり、環状支承5に固定する。
【0045】
1次の直線部材3と2次の直線部材33を合わせて16本の直線部材を幅止め鋼17で接続固定する。1次施工時に設置した幅止め鋼16は撤去される。こうして16本の直線部材3と33からなるドーム状部材網3Cが構築される。
【符号の説明】
【0046】
1:基礎工
2:円形固定板
3:1次施工の直線部材
3a:強軸
3b:弱軸
33:2次施工の直線部材
3A:実施例の平面部材網
3B:実施例の凸状部材網
3C:実施例のドーム状部材網
4:保護フレーム
4a:湾曲板
5:環状支承
6:縁付き平滑板
7:包囲ケーブル
8:接続包囲ケーブル
9:引寄せ具
9a:ターンバックル型引寄せ具
9a1:中央ハンドル
9a2:逆ねじ付きロッド
9b:レバー式ブロック型引寄せ具
9b1:左右振りハンドル
9b2:チエ―ン
10:ロング包囲ケーブル
11:ウインチ型巻取り機
11a:巻取りロール
12:定着具
12a:支圧板
13:鉛直台の下部工
14:鉛直台
14a:鉛直台に設置のジャッキ
15:環状枠
16:1次施工時の幅止め鋼
17:2次施工時の幅止め鋼
A:半円周のロング包囲ケーブル2本のうちの1本
B:半円周のロング包囲ケーブル2本のうちの1本
a:ロング包囲ケーブルAを定着する保護フレーム
b:ロング包囲ケーブルBを定着する保護フレーム
L:ドーム状部材網のスパン
f:ドーム状部材網のライズ
S0:ドームの弧長=直線部材の全長
Δ0:円形固定板の直径
Δ1:鉛直台配置の直径
ΣH:縮径水平力
Tw:包囲ケーブルの張力
Cd:包囲ケーブルの所要引寄せ量
δa:ターンバックル型引寄せ具1回の引寄せ量
δb:レバー式ブロック型引寄せ具1回の引寄せ量
Σδ:全引き寄せ量
δu:凸状部材網の高さ
n:引寄せ具の配置数
N:包囲ケーブルの引寄せ作業の回数
【手続補正書】
【提出日】2023-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の包囲ケーブル用いて直線部材による骨組み構造のドーム状部材網を構築する方法であって、内側を円形固定板に水平状に固定し、外側端部に保護フレームを取付けた直線部材を放射状に配置し、放射状に配置した前記直線部材の保護フレームaに包囲ケーブルAの一端を定着してから、左回り又は右回りで他の保護フレーム内を順次通して、半周目に位置する保護フレームbを通してから包囲ケーブルAを保持固定し、包囲ケーブルAが包囲した半周とは反対側の半周を包囲ケーブルBで包囲するために、包囲ケーブルBの一端を包囲ケーブルAを保持固定している保護フレームbに定着し、包囲ケーブルAと同じ回りで他の保護フレーム内を順次通して、半周して、包囲ケーブルAを定着している保護フレームaを通してから包囲ケーブルBを保持固定することによって平面部材網を形成し、該平面部材網の中央部を持上げて凸状にして凸状部材網を形成し、包囲ケーブルAとBの保持固定を解除して、両ケーブルAとBの先端を構築するドーム状部材網の中心部に設置した巻取り機の巻取りローラの回転方向に合わせて定着し、人力、モータにより所要の回転力で該巻取りローラを回転させることにより、包囲ケーブルAとBが巻取られ、両ケーブルAとBに張力が発生し、前記凸状部材網を構成している前記直線部材の外側端部に中心方向の圧縮力が作用し、前記凸状部材網が縮径されて、ドーム状部材網が構築されるドーム状部材網の構築方法。