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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155311
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】緊締具およびフィルタシステム
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/157 20060101AFI20241024BHJP
   B01D 46/42 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20241024BHJP
   B01D 35/14 20060101ALI20241024BHJP
   B01D 27/10 20060101ALI20241024BHJP
   B25B 23/14 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B25B23/157 B
B01D46/42 Z
B01D46/00 C
B01D35/14
B01D27/10
B25B23/14 640K
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069938
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000232885
【氏名又は名称】株式会社ロキテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】小田 英明
(72)【発明者】
【氏名】海老原 崇紀
(72)【発明者】
【氏名】大野 富央
(72)【発明者】
【氏名】西山 巧
【テーマコード(参考)】
3C038
4D058
4D116
【Fターム(参考)】
3C038AA06
3C038BC01
3C038CA06
3C038CB03
3C038CD03
4D058JA02
4D058KC15
4D058KC81
4D058UA11
4D116AA22
4D116AA30
4D116BA01
4D116BC27
4D116BC45
4D116BC46
4D116BC47
4D116DD05
4D116DD06
4D116HH02C
4D116QA12A
4D116QA12F
4D116QB35
4D116QB36
(57)【要約】
【課題】適正な所定のトルクで締結することが可能な緊締具が求められている。
【解決手段】孔を有する底面を備え、中空空間を有するナット容器と、ナット容器の中空空間内にナット容器に対して底面に垂直な回転軸のまわりに回転自由に内蔵されるトルク制御機構と、を備える緊締具であって、ナット容器は回転軸の方向の深さが深い深部から回転軸の方向の深さが浅い浅部へと連なる複数のガイド斜面を回転軸のまわりに底面に有する斜面列を備え、トルク制御機構は、内面に螺刻を備え前記回転軸の方向に延在する雌螺子管であって、螺刻が前記ナット容器の孔から露出するように配置される雌螺子管と、雌螺子管と共に回転軸のまわりに回転可能であって、斜面列に向かっての付勢がなされているロック爪と、ロック爪を斜面列に向かって付勢するようにロック爪を支持する弾性部材と、を備える緊締具により解決する。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔を有する底面を備え、中空空間を有するナット容器と、
前記ナット容器の前記中空空間内に前記ナット容器に対して前記底面に垂直な回転軸のまわりに回転自由に内蔵されるトルク制御機構と、を備える緊締具であって、
前記ナット容器は前記回転軸の方向の深さが深い深部から前記回転軸の方向の深さが浅い浅部へと連なる複数のガイド斜面を前記回転軸のまわりに前記底面に有する斜面列を備え、
前記トルク制御機構は、
内面に螺刻を備え前記回転軸の方向に延在する雌螺子管であって、前記螺刻が前記ナット容器の前記孔から露出するように配置される雌螺子管と、
前記雌螺子管と共に前記回転軸のまわりに回転可能であって、前記斜面列に向かっての付勢がなされているロック爪と、
前記ロック爪は、前記斜面列の前記ガイド斜面に対応する摺動斜面を備え、
前記付勢により前記ロック爪は前記斜面列の前記深部と嵌合して前記トルク制御機構と前記ナット容器とは前記回転軸のまわりに共に回転を行い、前記ナット容器に前記回転軸のまわりに所定の回転トルクが付加されたときに前記ロック爪の前記摺動斜面が前記ガイド斜面に沿って前記ガイド斜面の前記深部から前記浅部へと移動して前記トルク制御機構と前記ナット容器との前記回転が解除される緊締具。
【請求項2】
請求項1に記載の緊締具であって、
前記所定の回転トルクは、前記ナット容器が前記雌螺子管に螺嵌可能なボルトと螺合して前記ボルトに沿って前記ナット容器の移動が規制された際に生じる回転トルクである緊締具。
【請求項3】
請求項1に記載の緊締具であって、
前記斜面列の隣接するガイド斜面において前記深部と前記浅部との境界面は前記回転軸に沿った方向に延在する崖面を形成し、
前記ロック爪は、前記摺動斜面と反対側に前記崖面と接触する係合面を備え、前記ロック爪が前記深部に位置するときに、前記崖面と前記係合面とが接触する緊締具。
【請求項4】
請求項1に記載の緊締具であって、
前記浅部は、前記回転軸の方向における任意の地点からの距離が前記底面と同じとなる面である緊締具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の緊締具であって、
さらに、前記ロック爪を支持する弾性部材と、を備え、
前記ロック爪の前記付勢は、前記弾性部材によりなされる緊締具。
【請求項6】
請求項5に記載の緊締具であって、
前記弾性部材はばねであって、
前記ばねのバネ定数は、前記所定の回転トルクが付加されるまでは前記ロック爪は前記ガイド斜面の前記浅部までは至らず、前記所定の回転トルクが付加された際に前記ロック爪が前記浅部に至るように前記ばねが収縮するように設定される緊締具。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の緊締具であって、
前記ロック爪が弾性部材であって、前記ロック爪の前記付勢は、前記ロック爪自身によりなされる緊締具。
【請求項8】
請求項7に記載の緊締具であって、
前記弾性部材はばねであって、
前記ばねのバネ定数は、前記所定の回転トルクが付加されるまでは前記ロック爪は前記ガイド斜面の前記浅部までは至らず、前記所定の回転トルクが付加された際に前記ロック爪が前記浅部に至るように前記ばねが収縮するように設定される緊締具。
【請求項9】
内部空間を有し、その内部空間にボルトを有するフィルタ容器と、
前記ボルトが挿入可能な中空部を備え、内部にフィルタエレメントを格納するフィルタカートリッジと、
前記ボルトと螺合することにより前記フィルタカートリッジを前記フィルタ容器の前記内部空間に固定する緊締具と、を備えるフィルタシステムであって、
前記緊締具は、
孔を有する底面を備え、中空空間を有するナット容器と、
前記ナット容器の前記中空空間内に前記ナット容器に対して前記底面に垂直な回転軸のまわりに回転自由に内蔵されるトルク制御機構と、を備える緊締具であって、
前記ナット容器は前記回転軸の方向の深さが深い深部から前記回転軸の方向の深さが浅い浅部へと連なる複数のガイド斜面を前記回転軸のまわりに前記底面に有する斜面列を備え、
前記トルク制御機構は、
内面に前記ボルトと螺嵌可能な螺刻を備え前記回転軸の方向に延在する雌螺子管であって、前記螺刻が前記ナット容器の前記孔から露出するように配置される雌螺子管と、
前記雌螺子管と共に前記回転軸のまわりに回転可能であって、前記斜面列に向かっての付勢がなされているロック爪と、を備え、
前記ロック爪は、前記斜面列の前記ガイド斜面に対応する摺動斜面を備え、
前記付勢により前記ロック爪は前記斜面列の前記深部と嵌合して前記トルク制御機構と前記ナット容器とは前記回転軸のまわりに共に回転を行い、前記ナット容器に前記回転軸のまわりに所定の回転トルクが付加されたときに前記ロック爪の前記摺動斜面が前記ガイド斜面に沿って前記ガイド斜面の前記深部から前記浅部へと移動して前記トルク制御機構と前記ナット容器との前記回転が解除されるフィルタシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のフィルタシステムであって、
前記所定の回転トルクは、前記ナット容器が前記雌螺子管に螺嵌可能なボルトと螺合して前記ボルトに沿って前記ナット容器の移動が規制された際に生じる回転トルクであるフィルタシステム。
【請求項11】
請求項9に記載のフィルタシステムであって、
前記斜面列の隣接するガイド斜面において前記深部と前記浅部との境界面は前記回転軸に沿った方向に延在する崖面を形成し、
前記ロック爪は、前記摺動斜面と反対側に前記崖面と接触する係合面を備え、前記ロック爪が前記深部に位置するときに、前記崖面と前記係合面とが接触するフィルタシステム。
【請求項12】
請求項9に記載のフィルタシステムであって、
前記浅部は、前記回転軸の方向における任意の地点からの距離が前記底面と同じとなる面であるフィルタシステム。
【請求項13】
請求項9に記載のフィルタシステムであって、
前記ボルトは、前記緊締具を螺嵌する側に螺刻を有しない無螺刻端部を備え、前記無螺刻端部の前記回転軸の方向に沿っての長さは、前記回転軸の方向に沿っての前記雌螺子管の長さより長いフィルタシステム。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか一項に記載のフィルタシステムであって、
さらに、前記ロック爪を支持する弾性部材と、を備え、
前記ロック爪の前記付勢は、前記弾性部材によりなされるフィルタシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のフィルタシステムであって、
前記弾性部材はばねであって、
前記ばねのバネ定数は、前記所定の回転トルクが付加されるまでは前記ロック爪は前記ガイド斜面の前記浅部までは至らず、前記所定の回転トルクが付加された際に前記ロック爪が前記浅部に至るように前記ばねが収縮するように設定されるフィルタシステム。
【請求項16】
請求項9から13のいずれか一項に記載のフィルタシステムであって、
前記ロック爪が弾性部材であって、前記ロック爪の前記付勢は、前記ロック爪自身によりなされるフィルタシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のフィルタシステムであって、
前記弾性部材はばねであって、
前記ばねのバネ定数は、前記所定の回転トルクが付加されるまでは前記ロック爪は前記ガイド斜面の前記浅部までは至らず、前記所定の回転トルクが付加された際に前記ロック爪が前記浅部に至るように前記ばねが収縮するように設定されるフィルタシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク制御機構を備える緊締具およびその緊締具を有するフィルタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フィルタは、内部が流路の一部となっているフィルタハウジング内に固定されるようなフィルタシステムの態様として使用される。フィルタをフィルタハウジング内に固定するフィルタシステムとしては、たとえば、フィルタハウジング内にボルトを配置し、貫通孔を有するフィルタの貫通孔にボルトに貫通させて取り付けるものがある。この形態では、特に、貫通孔を有するフィルタカートリッジにフィルタを内蔵して、ボルトをその貫通孔に通して、ボルトの端部に緊締具を螺嵌し、ハウジングベースと緊締具とでフィルタカートリッジを挟持するように緊締具でフィルタカートリッジをハウジングベースに締結するものである。フィルタカートリッジとハウジングベースとの接合部にはシール材が配置されていて、所定の圧力がシール材に付加されることによりフィルタカートリッジとハウジングベースとの接合部が密閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-8352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ボルトに緊締具を螺嵌してフィルタカートリッジをハウジングベースに締結するために、適正な所定のトルクを超えて緊締具を締め付けると、フィルタカートリッジやシール材に過剰な圧力が付加されることになる。この結果、想定しないフィルタカートリッジの変形や破損またはハウジングベースとの適切な接合および接合部での密閉度が損なわれる問題が生じる。一方で、不十分なトルクで緊締具を締め付けると、蓋とフィルタカートリッジ本体との接合部の密閉度が不足する。適正な所定のトルクで締結することが可能なトルク管理を行う緊締具が求められている。これにつき、たとえば特許文献1など、緊締具の締結においてトルク管理を行う場合、一般には工具によりトルク管理を行うことが多い。しかし、汎用のボルトおよびナットではなく、専用の緊締具自体によりトルク管理を行うものはない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
孔を有する底面を備え、中空空間を有するナット容器と、前記ナット容器の前記中空空間内に前記ナット容器に対して前記底面に垂直な回転軸のまわりに回転自由に内蔵されるトルク制御機構と、を備える緊締具であって、前記ナット容器は前記回転軸の方向の深さが深い深部から前記回転軸の方向の深さが浅い浅部へと連なる複数のガイド斜面を前記回転軸のまわりに前記底面に有する斜面列を備え、前記トルク制御機構は、内面に螺刻を備え前記回転軸の方向に延在する雌螺子管であって、前記螺刻が前記ナット容器の前記孔から露出するように配置される雌螺子管と、前記雌螺子管と共に前記回転軸のまわりに回転可能であって、前記斜面列に向かっての付勢がなされているロック爪と、を備え、前記ロック爪は、前記斜面列の前記ガイド斜面に対応する摺動斜面を備え、前記ロック爪は前記弾性部材により前記斜面列の前記深部に挿嵌されて前記トルク制御機構と前記ナット容器とは前記回転軸のまわりに共に回転を行い、前記ナット容器に前記回転軸のまわりに所定の回転トルクが付加されたときに前記ロック爪の前記摺動斜面が前記ガイド斜面に沿って前記ガイド斜面の前記深部から前記浅部へと移動して前記トルク制御機構と前記ナット容器との前記回転が解除される緊締具により解決する。
【0006】
内部空間を有し、その内部空間にボルトを有するフィルタ容器と、前記ボルトが挿入可能な中空部を備え、内部にフィルタエレメントを格納するフィルタカートリッジと、前記ボルトと螺合することにより前記フィルタカートリッジを前記フィルタ容器の前記内部空間に固定する緊締具と、を備えるフィルタシステムであって、前記緊締具は、孔を有する底面を備え、中空空間を有するナット容器と、前記ナット容器の前記中空空間内に前記ナット容器に対して前記底面に垂直な回転軸のまわりに回転自由に内蔵されるトルク制御機構と、を備える緊締具であって、前記ナット容器は前記回転軸の方向の深さが深い深部から前記回転軸の方向の深さが浅い浅部へと連なる複数のガイド斜面を前記回転軸のまわりに前記底面に有する斜面列を備え、前記トルク制御機構は、内面に前記ボルトと螺嵌可能な螺刻を備え前記回転軸の方向に延在する雌螺子管であって、前記螺刻が前記ナット容器の前記孔から露出するように配置される雌螺子管と、前記雌螺子管と共に前記回転軸のまわりに回転可能であって、前記斜面列に向かっての付勢がなされているロック爪と、を備え、前記ロック爪は、前記斜面列の前記ガイド斜面に対応する摺動斜面を備え、前記付勢により前記ロック爪は前記斜面列の前記深部と嵌合して前記トルク制御機構と前記ナット容器とは前記回転軸のまわりに共に回転を行い、前記ナット容器に前記回転軸のまわりに所定の回転トルクが付加されたときに前記ロック爪の前記摺動斜面が前記ガイド斜面に沿って前記ガイド斜面の前記深部から前記浅部へと移動して前記トルク制御機構と前記ナット容器との前記回転が解除されるフィルタシステムにより解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の緊締具により適正な所定のトルクでの締結が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本願発明の第1の実施の形態の緊締具およびそれを有するフィルタシステムの概略図である。
図1B】本願発明の第1の実施の形態の緊締具の部分を拡大した適用例の概略図である。
図2A】本願発明の第1の実施の形態の緊締具の内部構造を示した図である。
図2B】本願発明の第1の実施の形態の緊締具の内部構成の分解状態を示した図である。
図3A】本願発明の第1の実施の形態の緊締具の内部構成の概念的な断面図を示した図である。
図3B】本願発明の第1の実施の形態の緊締具の原理を示した説明図である。
図4A】本願発明の第2の実施の形態の緊締具の概念的な断面図を示した図である。
図4B】本願発明の第3の実施の形態の緊締具の概念的な断面図を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1Aから図3Bを参照して、本発明の実施の形態としての緊締具1およびそれを有するフィルタシステム10について説明する。図1Aは本願発明の第1の実施の形態である緊締具1によりフィルタカートリッジ2をフィルタ容器たるフィルタハウジング100の内部空間に固定に適用した例の概略図である。図1Bは本願発明の第1の実施の形態である緊締具1の部分の概略図である。図2Aは本願発明の第1の実施の形態の緊締具1の内部構造を分解図として示した図である。図2Bは、本願発明の第1の実施の形態の緊締具1の内部の構成品の分解状態を示した図である。図3Aは、本願発明の第1の実施の形態の緊締具1の内部構成の概念的な断面図を示した図である。図3Bは、本願発明の第1の実施の形態の緊締具1の原理を示した説明図である。
【0010】
本願の緊締具1はナット類似構造を有していて、ボルト構造を有する取付目的物に、任意の固定対象物を締結するための装置である。ここでは、代表的な例として、緊締具1によりフィルタカートリッジ2をフィルタ容器たるフィルタハウジング100の内部に取り付けて固定するフィルタシステム10の例で説明する。フィルタシステム10は、フィルタ容器たるフィルタハウジング100と、緊締具1と、フィルタ素材たるフィルタエレメント2dを格納したフィルタカートリッジ2と、を備える。フィルタカートリッジ2は、濾過すべき流体の流路の一部を形成するフィルタ容器たるフィルタハウジング100の内部であって外部から隔絶された密閉の中空部に配置される。この形態である限り、フィルタ容器であるフィルタハウジング100は自由な形態を採用することができる。フィルタエレメント2dはフィルタカートリッジ2に格納されている形態とすることができる。この場合には、緊締具1による固定対象物はフィルタカートリッジ2であり、取付目的物はフィルタハウジング100である。ここで、本願発明の緊締具1は独立した部材と画定してもよいし、緊締具1を、フィルタカートリッジ2を構成する部品と画定することもできる。また、緊締具1はボルト構造を有する取付目的物に固定対象物を締結するものであれば固定対象物および取付目的物に適用の制限は無く、必ずしも固定対象物としてのフィルタカートリッジ2および取付目的物としてのフィルタハウジング100に限定されず、固定対象物および取付目的物は固定が必要な部材に広く適用することができる。
【0011】
たとえば、フィルタ容器たるフィルタハウジング100は、ハウジングベース101とハウジングカバー102とからなるように構成することができる。ハウジングベース101とハウジングカバー102とが組み合ってフィルタハウジング100が形成され、この状態でフィルタハウジング100には内部空間たる中空部が形成される。フィルタカートリッジ2は、この内部空間に配置される。フィルタカートリッジ2とフィルタハウジング100の構成は代表的には以下のとおりである。ここでは本発明の適用の例示として示したものであって、ここに記載した態様に限定されない。フィルタカートリッジ2は、外形が円筒形の部材であって、円筒の中心軸に沿って、貫通穴2cを有している。フィルタカートリッジ2は、円筒の中心軸に沿って所定の剛性を有していて、円筒の中心軸に沿った荷重に対する縮みは小さい。フィルタカートリッジ本体2aは断面がドーナッツ形状であって、貫通穴2cが断面のドーナッツ形状の孔に対応する。フィルタカートリッジ本体2aは内部に中空の格納部を有し、その格納部にフィルタエレメント2dが格納されていて、フィルタカートリッジ本体2aの両端は蓋2bにより閉鎖されている。
【0012】
ハウジングベース101はフィルタカートリッジ2を受容する台座101cを有している。ハウジングベース101は濾過すべき流体が流れる第1管路101aおよび第2管路101bを備える。第1管路101aと第2管路101bとの一方は流体の上流管路として他方は流体の下流管路として機能する。ハウジングベース101にフィルタカートリッジ2が取り付けられた際に、上流管路から流れた流体がフィルタカートリッジ2を通過して、下流管路への流れ出る構造である。ハウジングベース101の台座構造にはボルト3が取り付けられている。ボルト3はフィルタハウジング100の内部空間たる中空部に対応する位置のハウジングベース101に配置される。ボルト3は、一端が台座構造に固定される固定端部であり、その反対側の端部たる他端が開放されている開放端部として画定されている。ボルト3は、長さがフィルタカートリッジ2の長さより長く、開放端部側にボルト3の外周面に螺刻3bを有する。開放端部の末端は螺刻を有しない無螺刻端部3aを備える。
【0013】
フィルタカートリッジ2をハウジングベース101に取り付ける際には、フィルタカートリッジ2の貫通穴2cにハウジングベース101のボルト3が挿入され、フィルタカートリッジ2の一端がハウジングベース101の台座101cに接触するように、載置される。ボルト3の螺刻3bは、フィルタカートリッジ2が台座101cに載置された状態で、台座101cに接触している側と反対側のフィルタカートリッジ2の端部の位置に、フィルタカートリッジ2は、貫通穴2cに一部が隠れ、その他の部分がフィルタカートリッジ2の貫通穴2cから現れるように、配置される。
【0014】
緊締具1は、ボルト3の開放端部から挿入されて、緊締具1がボルト3の螺刻3bに回転しながら螺嵌され、フィルタカートリッジ2を緊締具1とハウジングベース101の台座101cとで挟持することで、フィルタカートリッジ2をハウジングベース101に固定する。無螺刻端部3aのボルト3の方向に沿っての長さは、緊締具1の長さ(後述する雌螺子管131の長さ)より長く設定することができる。これにより、緊締具1とボルト3の螺刻3bとの螺合が解除された状態でも、緊締具1はボルト3に挿入されている状態が保たれて、緊締具1とボルト3との螺合が解除された状態でも、ボルト3から脱落することを防ぐことができる。
【0015】
ハウジングベース101とハウジングカバー102とは、たとえば、それぞれ一端に開口を有する。また、ハウジングベース101とハウジングカバー102とは、少なくとも一方にそれぞれの開口に連通する一定の空間を有する。このそれぞれの開口が接合するようにハウジングベース101とハウジングカバー102とが組み合うことで、内部空間たる中空部を内部に有するフィルタ容器たるフィルタハウジング100が形成される。本実施の形態では、フィルタハウジング100はハウジングベース101とハウジングカバー102との2個の部材が組み合ってフィルタ容器が形成される例として説明しているが、分割なくフィルタハウジング100のみでフィルタ容器が構成され、または3個以上の部材が組み合ってフィルタ容器が形成されてもよい。外部と隔絶された内部空間を有するようなフィルタ容器としてのフィルタハウジング100が形成される限り、フィルタハウジング100の構成部材は自由に選択することができる。フィルタカートリッジ2はフィルタハウジング100の内部空間たる中空部内にフィルタカートリッジ2が位置するように取り付けられる。たとえば、ハウジングカバー102の開口側にハウジングカバーフランジ102aを備え、ハウジングベース101はハウジングカバーフランジ102aと接触する位置に取付フランジ101dを備える。ハウジングベース101とハウジングカバー102とが組み合った際に、ハウジングカバー102のハウジングカバーフランジ102aとハウジングベース101の取付フランジ101dとが当接し、ハウジングカバー102のハウジングカバーフランジ102aとハウジングベース101の取付フランジ101dとを挟持部材103で挟持して密閉固定して、ハウジングベース101とハウジングカバー102とを接合する。これにより、挟持部材103でハウジングベース101とハウジングカバー102とが密着して接合されると、内部が外界と隔絶されフィルタ容器としてのフィルタハウジング100が形成される。
【0016】
濾過すべき流体の流路である第1管路101aと第2管路101bとの間にフィルタハウジング100が位置するように、第1管路101aと第2管路101bとはフィルタハウジング100に接続される。フィルタ容器としてのフィルタハウジング100の内部空間たる中空部は濾過すべき流体の流路の一部を形成する。代表的には、本実施の形態のように、第1管路101aおよび第2管路101bはハウジングベース101に接続されるように構成することができる。しかし、第1管路101aおよび第2管路101bはハウジングベース101に以外に接続させてもよい。たとえば、第1管路101aおよび第2管路101bの少なくとも一方をハウジングカバー102に接続するように構成させてもよい。第1管路101aおよび第2管路101bは、フィルタ容器としてのフィルタハウジング100の内部空間に流体的に連通する限り、第1管路101aおよび第2管路101bとフィルタハウジング100の内部空間との接続箇所は、自由に選択することができる。これにより、フィルタカートリッジ2は第1管路101aおよび第2管路101bとの間に位置し、第1管路101aからフィルタハウジング100の内部空間のフィルタカートリッジ2を介して第2管路101bへと至る濾過すべき流体の流路、または第2管路101bからフィルタハウジング100の内部空間のフィルタカートリッジ2を介して第1管路101aへと至る濾過すべき流体の流路が形成される。
【0017】
続いて、緊締具1の構成,構造および機能について説明する。緊締具1は、ナット容器12と、トルク制御機構13を備える。ナット容器12は底面12bを備え、内部に中空空間を有する円筒形状または多角柱形状である。ナット容器12は、代表的には、底面12bと反対側に開口を備え、開口は蓋11により閉鎖するように構成することができる。
【0018】
蓋11は、ナット容器12が円筒形状の場合には円板形状と、多角注形状の場合には多角形の板形状と、することができる。蓋11は中央部に蓋孔11aを備える。底面12bにはナット容器12の内部空間と外部とを連通する底孔12cを備える。ナット容器12はボルト3の軸周りに回転して螺嵌されるものであるので、蓋孔11aの中心と底孔12cの中心とを結ぶ線が、ナット容器12の回転軸であり、これは緊締具1の回転軸として画定される。この回転軸が延在する方向はボルト3が延在する方向と一致する。ナット容器12の外周面には、ナット容器12を回転軸のまわりに回転させる補助手段を備える。補助手段は、たとえば、回転軸と垂直な方向にナット容器12の外周から突出して延在する一以上のハンドルアーム12aとすることができる。
【0019】
トルク制御機構13はナット容器12の内部の中空空間内に配置される。トルク制御機構13は、ナット容器12に対して底面12bに垂直な回転軸のまわりに回転自由に内蔵される。ナット容器12は中空空間の側の底面12bに回転軸のまわりに形成される斜面列121を有している。斜面列121は、複数のガイド斜面121aからなる。ガイド斜面121aは、回転軸の方向の深さが深い深部から回転軸の方向の深さが浅い浅部へと連なるように構成される斜面である。ガイド斜面121aの浅部は、たとえば、回転軸の方向における任意の地点からの距離が底面12bと同じとなる面位置である。
【0020】
斜面列121のうち、隣接するガイド斜面121aにおいて、ガイド斜面121aの深部とその隣のガイド斜面121aの浅部とは、境界面として崖面121bを備える。崖面121bは回転軸に沿った方向に延在する面である。すなわち、任意のガイド斜面121aの深部と、その隣のガイド斜面121aの浅部とは、崖面121bをもって、連結される。
【0021】
言い換えれば、斜面列121において、ガイド斜面121aは、底面12bと同じ面位置である浅部から回転軸の方向に沿って徐々に深くなって深部に至り、そこが崖面121bの最下部になり、崖面121bの最上部がガイド斜面121aの浅部となっている。
【0022】
トルク制御機構13は、雌螺子管131と、ロック爪136と、弾性部材135と、を備える。雌螺子管131は、中心軸が画定される管状形状であって、その内面に螺刻131aを備える。雌螺子管131は、ナット容器12の中空空間内に、ナット容器12の回転軸の方向に延在するように取り付けられる。雌螺子管131は、ナット容器12に対して回転自由に支持され、雌螺子管131の中心軸は雌螺子管131の回転軸となる。雌螺子管131は、代表的には蓋孔11aと底孔12cとからナット容器12の外側に露出するように配置することができる。または、雌螺子管131は、ナット容器12の外側に露出しなくとも、少なくとも、雌螺子管131の内面の螺刻131aが蓋孔11aと底孔12cとから露出するように配置される。雌螺子管131は、雌螺子管131の回転軸がナット容器12の回転軸に沿うように延在する。
【0023】
ロック爪136は、回転軸のまわりの方向については雌螺子管131に対して固定される。ロック爪136は、少なくとも1個以上、複数個を配置することができる。たとえば、回転軸周りに90度ごとに4個のロック爪136(136a,136b,136c,136d)を、配置することができる。
【0024】
ロック爪136は、回転軸の方向について、雌螺子管131に沿って、移動が可能なように保持される。弾性部材135は、雌螺子管131に対して回転軸の方向の移動が規制される固定点と、雌螺子管131に対して回転軸の方向の移動が許容される可動点と、を有する。弾性部材135は、代表的にはばねである。ばねとしては、たとえば、つるまきばね、または板ばねとすることができる。弾性部材135は、ロック爪136の個数に対応させた数だけ配置する。たとえば、4個のロック爪136(1361,1362,1363,1364)を配置する場合には、対応するように4個の弾性部材135(135a,135b,135c,135d)を配置する。
【0025】
雌螺子管131には、雌螺子管131の中心軸に対して垂直に延在するような固定板132が取り付けられている。固定板132は、雌螺子管131と一体成型で形成されている態様、またはそれぞれを異なる部材とした上で緊締具や接着などにより固定板132が雌螺子管131に対して移動しないように雌螺子管131に固定される態様であってもよい。弾性部材135の一端を固定板132に固定することで、固定板132における弾性部材135の取り付け点を、雌螺子管131の中心軸に沿った方向の雌螺子管131の位置に対して弾性部材135の一端が移動しない固定点とすることができる。たとえば、固定板132は円板とすることができる。または、固定板132のような板状でなく、雌螺子管131の中心軸に対して垂直に延在するように、放射状に延在する棒状体とすることもできる。
【0026】
雌螺子管131には、固定板132と対向して固定板132に対して平行に延在するように支持板133が取り付けられている。支持板133は、たとえば中央部に貫通穴133aを備え、雌螺子管131が貫通穴133aを貫通して、雌螺子管131に対して雌螺子管131の中心軸方向に支持板133が可動となるように取り付けられる。すなわち、固定板132と支持板133との距離は所定の基準距離D1を最大の距離として、雌螺子管131の中心軸に沿っての固定板132と支持板133との距離が基準距離Dから縮まる方向に可変となるように、支持板133は雌螺子管131に対して可動に取り付けられている。弾性部材135は、支持板133が固定板132との間が最大で基準距離Dとなるように可動となるように以下の様に配置されて機能する。
【0027】
固定板132には、留め部134(134a,134b,134c,134d)が配置される。たとえば、留め部134(134a,134b,134c,134d)は、雌螺子管131の中心軸からの距離が一定の仮想の円周上に、所定の角度ごとに所定の個数が固定板132の面から雌螺子管131の中心軸に沿って延在するように配置される突起である。たとえば、弾性部材135がつるまきばねの場合には、留め部134がつるまきばねの内径に合致した外径をもっていて、つるまきばねの一端(固定点)の輪の内径が留め部134(134a,134b,134c,134d)と嵌合して固定されことで弾性部材135の一端が固定板132に固定される態様ととることができる。一方、留め部134に固定された弾性部材135たるつるまきばね一端と反対側の他端は、弾性部材135の一端に対して伸縮するように移動可能な可動点として画定される。
【0028】
弾性部材135の可動点にはロック爪136が取り付けられる。ロック爪136は支持板133と連動するように取り付けられ、固定板132と支持板133との距離が所定の基準距離Dから縮むように弾性部材135が縮んだ際には、固定板132と支持板133との距離が基準距離Dに戻ろうとするように、雌螺子管131の中心軸の方向に沿って弾性部材135が付勢される。これにしたがい、可動点である弾性部材135の他端に取り付けられているロック爪136も、固定板132と支持板133との距離が所定の基準距離Dから縮んだ際にはロック爪136が固定板132に向かって退行するとともに、雌螺子管131の中心軸の方向に沿って固定板132と支持板133との距離が基準距離Dに戻る方向に付勢される。
【0029】
弾性部材135の長さは、固定板132と支持板133とが可動な距離において、弾性部材135の収縮長さと付勢負荷(力)とが線形で変化する弾性領域となるように設定される。また、弾性部材135の弾性係数は、臨界負荷Fsを超えたときに、弾性部材135の変形(収縮)が開始するように設定される。すなわち固定板132と支持板133との距離が最大の基準距離Dから縮み始めるように設定される。支持板133は、固定板132と支持板133との距離を基準距離Dに保つとともに、固定板132と支持板133との距離を基準距離Dに保たれているときに、ロック爪136が斜面列121に挿入されて、常に力がかかるように付勢される。
【0030】
弾性部材135が板ばねの場合には、たとえば、板バネの両端(固定点)を雌螺子管131に対して固定し、両端の間の任意の中間部(可動点)にロック爪136を取り付けることができる。ロック爪136を回転軸のまわりの方向に雌螺子管131に対して固定し、回転軸の方向に雌螺子管131に沿って可動に支持するように、固定板132と並行に、雌螺子管131の中心軸に対して垂直に延在するような支持板133を配置することもできる。支持板133も、固定板と同様に、代表的には円板とすることができるが、板状ではなく雌螺子管131の中心軸に対して垂直に延在するように放射状に延在する棒状体とすることもできる。この場合であっても、弾性部材135の弾性係数は、臨界負荷Fsを超えたときに弾性部材135の変形(湾曲)が開始するように設定される。
【0031】
続いて、ロック爪136が、斜面列121のガイド斜面121aと係合する部分について、ロック爪1362を参照して説明する。他のロック爪1361,1363,1364についてもこれと同様である。ロック爪1362は、ガイド斜面121aに対応する摺動斜面1362cを備える。ロック爪1362は、たとえば、円柱棒状であって、ロック爪1362の一端の取付端部1362aは、つるまきばねである弾性部材135bの内部に収納され固定される。
【0032】
ロック爪136の他端には、ガイド斜面121aに対応する摺動斜面1362cを備える。ロック爪136は、回転軸周りの方向の摺動斜面1362cと反対側に、斜面列121の崖面121bと接触する係合面1362dを備える。ロック爪136がガイド斜面121aの深部に挿入深さdだけ挿入されているときに、斜面列121の崖面121bと係合面1362dとが接触する。この位置で、固定板132と支持板133との距離が基準距離Dになっているように設定される。
【0033】
ロック爪136は、弾性部材135により、斜面列121に向かって付勢されているので、通常状態において、ロック爪136は、深部に挿嵌されている。この状態では、ロック爪136の摺動斜面1362cがガイド斜面121aに接し、ロック爪1362の係合面1362dが崖面121bと接触している。ロック爪136が斜面列121と係合しているので、トルク制御機構13はナット容器12と回転軸のまわりに共に回転する。ナット容器12に所定の回転トルクが付加されるまでは、ロック爪136は斜面列121と係合して、トルク制御機構13がナット容器12と共に回転する。この状態においても、固定板132と支持板133との距離が基準距離Dとして確保されている。
【0034】
ナット容器12に対して、回転軸のまわりに所定の臨界回転トルク以上のトルクが付加されたときには、ロック爪1362の摺動斜面1362cがガイド斜面121aに沿って移動し、ロック爪1362がガイド斜面121aの深部に挿入深さdだけ挿入されている状態から浅部へと移動する。ロック爪1362のガイド斜面121aへの挿入深さdがゼロとなる浅部にまで移動を完了した時には、固定板132と支持板133との距離は基準距離D-dとなり、ロック爪136とナット容器12の底面12bとの係合は解除される。この状態では、トルク制御機構13とナット容器12とは一緒に回転せず、それまでのトルク制御機構13とナット容器12との回転は解除される。
【0035】
ここで、ロック爪136がガイド斜面121aの深部から浅部へと移動するようになる所定の臨界回転トルクTcrは、ナット容器12が雌螺子管131に螺嵌可能なボルト3と螺合してボルト3に沿ってナット容器12の移動が規制された際に生じる臨界回転トルクTcrを意味する。
【0036】
図3Bを参照して、緊締具1において、臨界回転トルクTcrまではトルク制御機構13とナット容器12とが一緒に回転し、臨界回転トルクTcrを超えるとトルク制御機構13とナット容器12とが一緒に回転しなくなる原理を説明する。緊締具1をボルト3の螺刻3bに螺合させて、緊締具1を回転すると、緊締具1がフィルタカートリッジ2に接触するまではナット容器12に付加されるトルクはボルト3の螺刻3bと雌螺子管131の螺刻131aとの摩擦力に抗するほぼゼロに近い一定の値で推移する。この段階では、ロック爪136は斜面列121と係合しているので、トルク制御機構13を内蔵するナット容器12は、トルク制御機構13とともに回転し、ナット容器12はボルト3の螺刻にしたがって、ボルト3の軸方向に回転しながら移動する。ここでロック爪136に付加される回転トルクTはほぼゼロである。
【0037】
その後、緊締具1がフィルタカートリッジ2に接触すると、フィルタカートリッジ2が円筒の中心軸に沿って所定の剛性を有しているので、中心軸に沿って方向への収縮が制限され、これによりナット容器12のボルト3の軸方向への移動が制限されはじめる。これに伴って、ナット容器12においてナット容器12とトルク制御機構13に付加される回転トルクT、すなわちロック爪136に付加される回転トルクTが増加しはじめる。ナット容器12内では、回転トルクTの増加とともに、回転軸まわりの方向の回転トルクTを分解したときの回転軸に沿った方向の力成分であるガイド斜面121aからロック爪136が受ける力成分の負荷Fも増加する。この負荷Fが弾性部材135が変形を開始する前述の臨界負荷Fsに到達すると、弾性部材135が徐々に変形(収縮)して、ロック爪136がガイド斜面121aの深部から浅部へと移動する。
これは回転軸の方向に弾性部材135が縮み、それによりロック爪136の位置も回転軸の方向に退行していることになる。このとき、支持板133は、固定板132と支持板133との距離が基準距離Dから徐々に減少するが、依然としてロック爪136は斜面列121に対して常に力がかかるように付勢されている。
【0038】
そして、ロック爪136に付加される回転トルクTが所定の臨界回転トルクTcrに至ると、ロック爪136がガイド斜面121aの浅部へと完全に移動し、ロック爪136はナット容器12の底面12bとは係合しないので、トルク制御機構13とナット容器12とは一緒に回転せず、ナット容器12の回転に伴ったトルク制御機構13の回転は解除される。弾性部材135のばねのバネ定数は、所定の臨界回転トルクTcrが付加されるまではロック爪136がガイド斜面121aの浅部までは至らず、所定の臨界回転トルクTcrが付加された際にロック爪136が浅部に完全に至るようにばねが収縮するように設定する。
【0039】
続いて、図4Aを参照して、ここまで説明してきた第1実施の形態を変形した形態としての第2の実施の形態の緊締具1について説明する。図4Aは、本願発明の第2の実施の形態の緊締具1の内部の断面図を示した図である。第1実施の形態では、つるまきばねを弾性部材135としていたが、つるまきばねは代表例であって、弾性部材135は、つるまきばねに限られない。たとえば、板バネ137とすることができる。第2の実施の形態は、板バネ137を適用したものである。第2の実施の形態では、第1実施の形態における弾性部材135をつるまきばねとしていたものを板バネ137とすること以外は、第1の実施の形態と同じである。ここでは、第1実施の形態における弾性部材135をつるまきばねとしていたものを板バネ137とした点の違いについてのみ説明し、それ以外は第1の実施の形態と同様であるので説明は割愛する。
【0040】
第1の実施の形態において、つるまきばねたる4個の弾性部材135(135a,135b,135c,135d)が配置される位置に、板バネ137をそれぞれ配置する。板バネ137は、たとえば、板バネ137の両端が支持板133に固定される。固定されている板バネ137の両端の中間点の板バネの腹の部分には、ロック爪136であるロック爪1362の取付端部1362aが固定され、ナット容器12の底面12bに形成される斜面列121に向かって付勢されている。ロック爪1362は、ガイド斜面121aに対応する摺動斜面1362cと、係合面1362dと、を備える。これにより、第1の実施の形態と同様に、緊締具1がフィルタカートリッジ2に接触するまでは、ナット容器12に付加されるトルクはほぼゼロに近い一定の値で推移し、ナット容器12のボルト3の軸方向への移動が制限されはじめ、ナット容器12においてナット容器12とトルク制御機構13に付加される回転トルクT、すなわちロック爪136に付加される回転トルクTが増加しはじめる。これに対抗し、ナット容器12内では、回転トルクTの増加とともに、回転軸まわりの方向の回転トルクTの回転軸の方向の力成分であるガイド斜面121aからロック爪136が受ける力を分解したときの回転軸に沿った方向の力成分であるガイド斜面121aからロック爪136が受ける力成分の負荷Fも増加する。この力成分に対応する負荷Fが、弾性部材135が変形を開始する前述の臨界負荷Fsに到達すると、弾性部材135が徐々に縮んで、ロック爪136がガイド斜面121aの深部から浅部へと移動し、やがてロック爪136とガイド斜面121aとの係合が解除される。
【0041】
この実施の形態でも、ロック爪136に付加される回転トルクTが所定の臨界回転トルクTcrに至ると、ロック爪136がガイド斜面121aの浅部へと完全に移動し、ロック爪136はナット容器12の底面12bとは係合しないので、トルク制御機構13とナット容器12とは一緒に回転せず、ナット容器12の回転に伴ったトルク制御機構13の回転は解除される。弾性部材135のばねのバネ定数は、所定の臨界回転トルクTcrが付加されるまではロック爪136がガイド斜面121aの浅部までは至らず、所定の臨界回転トルクTcrが付加された際にロック爪136が浅部に完全に至るようにばねが収縮するように設定する。
【0042】
続いて、図4Bを参照して、第1実施の形態および第2の実施の形態を変形した形態としての第3の実施の形態の緊締具1について説明する。図4Bは、本願発明の第3の実施の形態の緊締具1の内部の断面図を示した図である。第1実施の形態および第2の実施の形態では、ロック爪136とは別に弾性部材135を用意して、弾性部材135の弾性力によって、ガイド斜面121aの深部から浅部への位置関係に対するロック爪136の位置の相対的な位置関係を変更して、ロック爪136とガイド斜面121aとの係合を解除するものであった。
【0043】
これに対し、第3の実施の形態では、ロック爪136と別に弾性部材135を用意するのではなく、第3の実施の形態のロック爪138自体が弾性を有する弾性部材であって、ロック爪138自身により、ナット容器12の底面12bに形成される斜面列121に向かっての付勢がなされる。ここでは、第1実施の形態および第2の実施の形態との違いについてのみ説明し、第1の実施の形態および第2の実施の形態と同様の部分についての説明は割愛する。
【0044】
たとえば、ロック爪138は板バネであって、一端が片持ち状態で支持板133に固定される。ロック爪138の固定されている端と反対側の自由端は、ガイド斜面121aに向かって延在し、ガイド斜面121aに沿って移動可能なガイド斜面121aの傾きに対応する摺動斜面たるロック爪先端部138aを形成する。つまり、緊締具1がフィルタカートリッジ2に接触するまでは、ロック爪138は斜面列121と係合しており、トルク制御機構13を内蔵するナット容器12は、トルク制御機構13とともに回転し、ナット容器12はボルト3の螺刻にしたがって、ボルト3の軸方向に回転しながら移動する。緊締具1がフィルタカートリッジ2に接触すると、ナット容器12内で、回転トルクTの増加とともに、回転軸まわりの方向の回転トルクTの回転軸の方向の力成分であるガイド斜面121aからロック爪138のロック爪先端部138aが受ける力を分解したときの回転軸に沿った方向の力成分であるガイド斜面121aからロック爪138が受ける力成分の負荷Fも増加する。この負荷Fが、弾性部材135が変形を開始する前述の臨界負荷Fsに到達すると、ロック爪138が徐々に変形して、ロック爪138のガイド斜面121aの深部から浅部へと移動し、やがてロック爪136とガイド斜面121aとの係合が解除される。
【0045】
この実施の形態では、ロック爪138の弾性係数は、ナット容器12にかかる負荷がロック爪138とガイド斜面121aとの係合が解除されるべき所定の臨界回転トルクTcrに達するまではロック爪138の剛性でロック爪138は変形せず、ナット容器12にかかる負荷が所定の臨界回転トルクTcrに達した後に、ロック爪138が浅部に完全に至るようにロック爪138が変形するように設定する。
【0046】
この実施の形態でも、ロック爪138に付加される回転トルクTが所定の臨界回転トルクTcrに至ると、ロック爪138がガイド斜面121aの浅部へと完全に移動し、ロック爪138はナット容器12の底面12bとは係合しないので、トルク制御機構13とナット容器12とは一緒に回転せず、ナット容器12の回転に伴ったトルク制御機構13の回転は解除される。弾性部材135のばねのバネ定数は、所定の臨界回転トルクTcrが付加されるまではロック爪138がガイド斜面121aの浅部までは至らず、所定の臨界回転トルクTcrが付加された際にロック爪138が浅部に完全に至るようにばねが収縮するように設定する。
【符号の説明】
【0047】
1 緊締具
2 フィルタエレメント
3 ボルト
10 フィルタシステム
11 蓋
12 ナット容器
13 トルク制御機構
100 フィルタハウジング(フィルタ容器)
101 ハウジングベース
102 ハウジングカバー
121 斜面列
131 雌螺子管
134 留め部
135 弾性部材
136,138 ロック爪
137 板バネ
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B