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特開2024-155316モータ駆動装置、空気調和機、及びモータ駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155316
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】モータ駆動装置、空気調和機、及びモータ駆動方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20241024BHJP
   F24F 11/37 20180101ALI20241024BHJP
   F24F 11/88 20180101ALI20241024BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20241024BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241024BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20241024BHJP
【FI】
H02P27/08
F24F11/37
F24F11/88
F24F11/64
H02M7/48 E
F24F140:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069945
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】國廣 亮人
(72)【発明者】
【氏名】久保 聖弘
(72)【発明者】
【氏名】杉野 友啓
【テーマコード(参考)】
3L260
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
3L260AB02
3L260BA53
3L260CB24
3L260CB79
3L260DA10
3L260EA07
3L260EA12
3L260FB01
3L260HA01
5H505AA04
5H505BB06
5H505CC05
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE49
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ17
5H505LL01
5H505LL24
5H505LL25
5H505LL54
5H505MM01
5H505MM12
5H770BA04
5H770CA02
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770FA01
5H770GA19
5H770HA03W
5H770HA03Z
5H770HA07Z
(57)【要約】
【課題】信頼性の高いモータ駆動装置等を提供する。
【解決手段】モータ駆動装置100は、平滑コンデンサ20の直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路40と、インバータ回路40を制御する制御部60と、を備え、インバータ回路40の出力側の交流電圧は、ファンF1に連結されたモータM1に印加され、制御部60は、電力供給が止まった後、直流電圧の検出値が所定範囲に含まれている場合、モータM1を駆動させずに待機し、ファンF1の空転に伴うモータM1の誘起電圧又は回転速度が高いほど、所定範囲の上限値及び下限値が高くなるように設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路を制御する制御部と、を備え、
前記インバータ回路の出力側の前記交流電圧は、ファンに連結されたモータに印加され、
前記制御部は、電力供給が止まった後、前記直流電圧の検出値が所定範囲に含まれている場合、前記モータを駆動させずに待機し、
前記ファンの空転に伴う前記モータの誘起電圧又は回転速度が高いほど、前記所定範囲の上限値及び下限値が高くなるように設定されている、モータ駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、電力供給が止まった後、前記直流電圧の検出値が前記所定範囲に含まれている状態が所定時間以上継続した場合、前記モータを駆動させずに待機すること
を特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、電力供給が止まった後、前記直流電圧の検出値が前記所定範囲に含まれている場合、リモコンから運転指令があったときでも、前記モータを駆動させずに待機すること
を特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記モータを駆動させずに待機している場合において、前記リモコンから前記運転指令があったとき、当該リモコンに所定のエラー表示を行わせること
を特徴とする請求項3に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記制御部は、電力供給が止まった後、前記直流電圧の検出値が前記所定範囲に含まれていない場合、前記モータを駆動させること
を特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記制御部は、電力供給が止まった後、前記直流電圧の検出値が前記所定範囲に含まれていない場合において、リモコンからの運転指令があったとき、前記モータを駆動させること
を特徴とする請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のモータ駆動装置を備えるとともに、
圧縮機と、室外熱交換器と、前記室外熱交換器の付近に設置される室外ファンと、膨張弁と、室内熱交換器と、前記室内熱交換器の付近に設置される室内ファンと、を備え、
前記室外ファンは、前記モータに連結される前記ファンであること
を特徴とする空気調和機。
【請求項8】
直流電源の直流電圧をインバータ回路が交流電圧に変換し、ファンに連結されたモータに前記交流電圧を印加する際のモータ駆動方法であって、
電力供給が止まった後、前記直流電圧の検出値が所定範囲に含まれている場合、前記モータを駆動させずに待機し、
前記ファンの空転に伴う前記モータの誘起電圧又は回転速度が高いほど、前記所定範囲の上限値及び下限値を高くする、モータ駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ駆動装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの制御に関して、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、「電動機始動時より第1の所定時間経過後、前記回転数判定手段による回転数が、基準値以下を第2の所定時間継続した場合に、電動機の欠相と判断し電動機動作を停止させる」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-253196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、電力の供給がない状態で、室外機や換気扇のファンが外風によって回転すると、ファンに連結されたモータが発電機として機能する。仮に、モータの駆動中に停電等で電源喪失の状態になり、さらに、外風に伴うモータの発電電力でマイコンが起動した場合、電源が復旧したのか、それとも、外風の影響でファンが回転して発電電力が生じているのかをマイコンが判別することが困難になる。その結果、電源が復旧していないにもかかわらず、モータを含むシステムをマイコンが起動させてしまう可能性がある。特許文献1では、このような新規な課題には着目されておらず、モータを制御する際の信頼性をさらに高める余地がある。
【0005】
そこで、本開示は、信頼性の高いモータ駆動装置等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本開示に係るモータ駆動装置は、直流電源の直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路を制御する制御部と、を備え、前記インバータ回路の出力側の前記交流電圧は、ファンに連結されたモータに印加され、前記制御部は、電力供給が止まった後、前記直流電圧の検出値が所定範囲に含まれている場合、前記モータを駆動させずに待機し、前記ファンの空転に伴う前記モータの誘起電圧又は回転速度が高いほど、前記所定範囲の上限値及び下限値が高くなるように設定されていることとした。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、信頼性の高いモータ駆動装置等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るモータ駆動装置を含む構成図である。
図2】第1実施形態に係るモータ駆動装置の詳細を示す構成図である。
図3】第1実施形態に係るモータ駆動装置において、モータが発電機として機能した場合の回生電流の流れを示す説明図である。
図4】第1実施形態に係るモータ駆動装置が備えるマイクロコントローラの機能ブロック図である。
図5】第1実施形態に係るモータ駆動装置において、モータの回生電圧の理論値の算出に関する説明図である。
図6】第1実施形態に係るモータ駆動装置のマイクロコントローラの処理を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態に係るモータ駆動装置において、平滑コンデンサの両端の直流電圧が所定範囲に含まれているか否かの判定に関する説明図である。
図8】第2実施形態に係る空気調和機の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
<モータ駆動装置の構成>
図1は、第1実施形態に係るモータ駆動装置100を含む構成図である。
なお、図1では、後記するモータドライバIC70(図2参照)やレギュレータ81,82(図2参照)等の図示を省略している。
図1に示すモータ駆動装置100は、モータM1を駆動させる装置である。モータM1は、例えば、永久磁石同期モータであってもよく、また、他の種類のモータであってもよい。モータM1は、固定子(図示せず)及び回転子(図示せず)を備え、回転軸M1aを介してファンF1に連結されている。回転軸M1aは、モータM1の回転子(図示せず)と一体で回転する軸である。そして、モータM1の駆動に伴って、ファンF1が回転するようになっている。ファンF1は、例えば、空気調和機の室外ファンであってもよく、また、換気扇のファンであってもよい。
【0010】
図1に示すように、モータ駆動装置100は、コンバータ回路10と、平滑コンデンサ20と、直流電圧検出部30と、インバータ回路40と、誘起電圧検出部50と、制御部60と、を備えている。コンバータ回路10は、三相の交流電源E1から印加される交流電圧を直流電圧(脈流状の直流電圧)に変換する電力変換器である。このようなコンバータ回路10として、例えば、全波整流を行うダイオードブリッジ回路が用いられるが、これに限定されるものではない。その他にもコンバータ回路10として、スイッチング方式やトランス方式のものが用いられてもよい。
【0011】
平滑コンデンサ20は、コンバータ回路10から印加される脈流状の直流電圧を平滑化するコンデンサであり、コンバータ回路10に並列接続されている。このような平滑コンデンサ20として、例えば、電解コンデンサが用いられる。
【0012】
直流電圧検出部30は、平滑コンデンサ20の直流電圧を検出するものである。直流電圧検出部30の検出値は、マイクロコントローラ61の処理に用いられる。例えば、平滑コンデンサ20の両端の直流電圧を複数の抵抗素子の直列接続体(図示せず)で分圧し、その分圧比や所定の抵抗素子の両端電圧に基づいて、マイクロコントローラ61が平滑コンデンサ20の直流電圧を算出するようにしてもよい。
【0013】
インバータ回路40は、平滑コンデンサ20から印加される直流電圧を交流電圧に変換する電力変換器である。言い換えると、インバータ回路40は、「直流電源」の直流電圧を交流電圧に変換する機能を有している。図1の例では、前記した「直流電源」は、交流電源E1、コンバータ回路10、及び平滑コンデンサ20を含んで構成されている。なお、「直流電源」として、一次電池や二次電池(バッテリ)が用いられてもよい。
【0014】
インバータ回路40は、スイッチング素子S1,S2を含む第1レグと、スイッチング素子S3,S4を含む第2レグと、スイッチング素子S5,S6を含む第3レグと、が並列接続された構成になっている。前記した第1レグにおいて、スイッチング素子S1,S2の接続点は、配線U1を介して、モータM1のU相巻線Lu1(図2参照)に接続されている。なお、残りの第2レグや第3レグについても同様である。
【0015】
図1では、インバータ回路40のスイッチング素子S1~S6として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いる例を示している。第1レグについて説明すると、上アームのスイッチング素子S1のエミッタと、下アームのスイッチング素子S2のコレクタとが接続されている。また、上アームのスイッチング素子S1のコレクタは、配線K1を介して、平滑コンデンサ20の正極に接続されている。下アームのスイッチング素子S2のエミッタは、別の配線K2を介して、平滑コンデンサ20の負極に接続されている。なお、残りの第2レグや第3レグについても同様である。
【0016】
また、転流によるスイッチング素子S1の破壊を防止するために、スイッチング素子S1に対して還流ダイオードD1が逆並列に接続されている。同様に、スイッチング素子S2~S6にも、還流ダイオードD2~D6が逆並列に接続されている。なお、スイッチング素子S1~S6が寄生ダイオードを有している場合には、寄生ダイオードが還流ダイオードとして機能するため、還流ダイオードを別途設ける必要は特にない。
【0017】
誘起電圧検出部50は、モータM1の誘起電圧を検出するものである。例えば、誘起電圧検出部50は、図1に示す配線U1,V1の線間電圧、配線V1,W1の線間電圧、及び配線W1,U1の線間電圧のうちの少なくとも一つを検出する。誘起電圧検出部50で検出された誘起電圧は、制御部60に出力される。そして、マイクロコントローラ61が、この誘起電圧の値に基づいて、外風でファンF1が回転した場合のモータM1の回転速度を算出するようにしている。なお、モータM1に電力が供給されていない状態で、外風によってファンF1が回転することを、ファンF1の「空転」ともいう。
【0018】
制御部60は、インバータ回路40を制御する機能を有している。図1に示すように、制御部60は、マイクロコントローラ61と、制御回路62と、を備えている。マイクロコントローラ61は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。
【0019】
マイクロコントローラ61は、直流電圧検出部30の検出値等に基づいて、制御回路62に所定のPWM信号(Pulse Width Modulation)を出力する。なお、直流電圧検出部30の検出値の他、交流電源E1の電圧検出値やインバータ回路40の直流側の電流検出値、モータM1の各巻線の電流検出値もPWM信号の生成に適宜に用いられる。
【0020】
制御回路62は、図示はしないが、ドライバ回路や保護回路を含んで構成されている。そして、マイクロコントローラ61から入力されるPWM信号に基づいて、制御回路62がスイッチング素子S1~S6のオン・オフを所定に切り替えるようになっている。これによって、インバータ回路40の出力側の交流電圧が、ファンF1に連結されたモータM1に印加され、モータM1が駆動される。
【0021】
図2は、モータ駆動装置100の詳細を示す構成図である。
モータ駆動装置100は、前記した各構成の他に、図2に示すモータドライバIC70と、レギュレータ81,82と、コンデンサ91,92と、を備えている。モータドライバIC70は、インバータ回路40や制御回路62やレギュレータ82が実装された集積回路(Integrated Circuit:IC)である。このようなモータドライバIC70として、例えば、インテリジェントパワーモジュール(Intelligent Power Module:IPM)が用いられる。
【0022】
レギュレータ81は、平滑コンデンサ20の両端の直流電圧を所定に降圧(例えば、15[V]に降圧)する回路である。別のレギュレータ82は、レギュレータ81で降圧された直流電圧をさらに降圧(例えば、5[V]に降圧)する回路であり、配線K3を介してレギュレータ81に接続されている。そして、レギュレータ82で降圧された所定の直流電圧が、配線K4を介してマイクロコントローラ61に印加されるようになっている。なお、図2では、モータドライバIC70にレギュレータ82が内蔵される構成を示しているが、モータドライバIC70の外側にレギュレータ82が設けられるようにしてもよい。
【0023】
コンデンサ91は、レギュレータ81から別のレギュレータ82に印加される電圧のリプルを吸収する素子であり、配線K3に接続されている。別のコンデンサ92は、レギュレータ82からマイクロコントローラ61に印加される電圧のリプルを吸収する素子であり、配線K4に接続されている。
【0024】
図2に示すように、マイクロコントローラ61とモータドライバIC70とは電気的に接続されている。そして、モータM1の誘起電圧値を含む情報がモータドライバIC70からマイクロコントローラ61に入力されるようになっている。また、直流電圧検出部30の検出値(直流電圧Edc)もマイクロコントローラ61の処理に用いられる。次に、モータM1が発電機として機能した場合の誘起電圧や回生電流について、図3を用いて説明する。
【0025】
図3は、モータM1が発電機として機能した場合の回生電流の流れを示す説明図である。
なお、図3では、回生電流の流れを破線矢印で示している。また、図3では、停電等で交流電源E1(図1参照)からの電力供給がない状態であるものとする。電力供給がない状態でファンF1が外風によって空転すると、ファンF1に連結されたモータM1が発電機として機能する。その結果、モータM1の三相巻線に所定の誘起電圧v,v,vが生じ、インバータ回路40や平滑コンデンサ20を介して所定の回生電流(図3の破線矢印を参照)が流れる。
【0026】
前記したように、電力供給がない状態であるため、スイッチング素子S1~S6は全てオフ状態になっている。したがって、例えば、U相巻線Lu1から配線U1を介してインバータ回路40に向かう回生電流は、図3の破線矢印で示すように、還流ダイオードD1、配線K1、平滑コンデンサ20、配線K2を順次に介して、V相巻線Lv1やW相巻線Lw1に戻る。なお、配線K2を介して流れる回生電流は、還流ダイオードD4,D6に分流する。還流ダイオードD4に分流した回生電流は、配線V1を介してV相巻線Lv1に戻る。また、別の還流ダイオードD6に分流した回生電流は、配線W1を介してW相巻線Lw1に戻る。
【0027】
なお、モータM1の回転子(図示せず)の回転角(機械角)の変化に伴って、回生電流の経路も所定に切り替わる。また、ファンF1の回転速度が大きいほど、モータM1の誘起電圧も大きくなる。
【0028】
例えば、モータM1の駆動中に停電等で電力の供給が止まって、電源喪失の状態になった場合、平滑コンデンサ20の放電が進み、平滑コンデンサ20の直流電圧が低下する。その結果、マイクロコントローラ61に所定の電圧が印加されなくなり、マイクロコントローラ61も停止状態になる。
【0029】
その後、外風によるファンF1の空転でモータM1の誘起電圧が生じると、回生電流が流れて、平滑コンデンサ20の充電が進み、平滑コンデンサ20の直流電圧が徐々に上昇する。そして、平滑コンデンサ20の直流電圧が所定値に達すると、平滑コンデンサ20からレギュレータ81,82で順次に降圧された電圧によって、マイクロコントローラ61が再び起動する。
【0030】
これまでの技術では、電源喪失の状態になった後にマイクロコントローラ61が再び起動した場合、電源の復旧によって起動したのか、それとも、ファンF1の空転に伴う誘起電圧で起動したのかを判別することが困難であった。仮に、電源喪失の状態でマイクロコントローラ61がシステム(例えば、空気調和機や換気扇)を起動させた場合、停電等で電力が供給されていない不安定な状態でシステムが起動されることになる。
【0031】
そこで、第1実施形態では、平滑コンデンサ20の直流電圧の検出値と、モータM1の誘起電圧と、に基づいて、電源が復旧したのか、それとも、ファンF1の空転に伴う誘起電圧が生じているのかをマイクロコントローラ61が判別するようにしている。これによって、電源が復旧していない不安定な状態でシステムが起動されることを防止できる。
【0032】
図4は、マイクロコントローラ61の機能ブロック図である。
図4に示すように、マイクロコントローラ61は、記憶部61aと、回転速度演算部61bと、電源喪失判定部61cと、を備えている。記憶部61aには、所定のプログラムが予め格納されている他、モータM1(図3参照)の誘起電圧定数Ke等のデータが予め格納されている。誘起電圧定数Keは、モータM1が発電機として機能した場合の回生電圧(平滑コンデンサ20の直流電圧)の理論値をマイクロコントローラ61が算出する際に用いられる。
【0033】
回転速度演算部61bは、モータドライバIC70(図3参照)から入力される誘起電圧値に基づいて、モータM1の回転速度Fを算出する。具体的には、回転速度演算部61bは、以下の式(1)に基づいて、モータM1の回転速度F[min-1]を算出する。なお、式(1)に含まれるf[Hz]は、モータM1の誘起電圧の周波数(電気角での周波数)であり、PはモータM1の極数である。誘起電圧の周波数fは、モータM1の誘起電圧の検出値に基づいて算出される。また、モータM1の極数Pは既知であり、記憶部61aに予め格納されている。
【0034】
【数1】
【0035】
電源喪失判定部61cは、平滑コンデンサ20(図3参照)の直流電圧Edcの検出値、回転速度演算部61bによって算出されるモータM1の回転速度Fと、に基づいて、電源喪失の状態が継続しているか、それとも、電源が復旧したかを判定する。電源喪失判定部61cの判定結果は、モータドライバIC70(図3参照)の制御回路62に出力される。
【0036】
なお、電源喪失判定部61cの処理には、モータM1の誘起電圧に基づいて、回生電圧(平滑コンデンサ20の直流電圧)の理論値を算出する処理が含まれている。この回生電圧の理論値の算出について、図5を用いて説明する。
【0037】
図5は、モータの回生電圧の理論値の算出に関する説明図である。
なお、図5に示す還流ダイオードD1~D6は、インバータ回路40(図3参照)が備える整流素子である。停電等で電源喪失の状態になってからマイクロコントローラ61がシステムを起動させるまでは、インバータ回路40(図示せず)は駆動されず、スイッチング素子S1~S6はオフ状態になっている。したがって、図5では、スイッチング素子S1~S6(図3参照)の図示を省略している。また、図5に示す負荷X1は、平滑コンデンサ20(図3参照)に対応している。
【0038】
外風でファンF1(図3参照)が空転した場合にモータM1の三相巻線に生じる誘起電圧v,v,vは、以下の式(2)~(4)で表される。なお、式(2)~(4)に含まれるVはモータM1の誘起電圧のピーク値であり、θtは誘起電圧の位相である。
【0039】
【数2】
【0040】
【数3】
【0041】
【数4】
【0042】
この場合において、負荷X1(つまり、平滑コンデンサ20:図3参照)の平均的な直流電圧Edc(時々刻々と変動する直流電圧の平均値)は、以下の式(5)で表される。
【0043】
【数5】
【0044】
また、モータM1の回転速度Fや誘起電圧定数Keを用いると、モータM1の誘起電圧のピーク値Vは、以下の式(6)で表される。
【0045】
【数6】
【0046】
したがって、式(5)及び式(6)に基づいて誘起電圧のピーク値Vを消去すると、以下の式(7)が成り立つ。
【0047】
【数7】
【0048】
なお、式(7)に含まれる「1.65」は、式(8)の近似に基づく値である。
【0049】
【数8】
【0050】
式(7)に示すように、モータM1の回転速度Fの検出値と、誘起電圧定数Keと、に基づいて、平均的な直流電圧Edc(つまり、回生電圧の理論値)が算出される。マイクロコントローラ61は、平均的な直流電圧Edc(つまり、回生電圧の理論値)が所定範囲内に入っているか否かに基づいて、電源喪失の状態が続いているか否かを判定する。なお、この判定処理の詳細については後記する。
【0051】
図6は、マイクロコントローラの処理を示すフローチャートである(適宜、図3も参照)。
なお、図6の「START」時には、交流電源E1(図1参照)から供給される電力でモータM1が駆動しているものとする。
ステップS101においてマイクロコントローラ61は、電源喪失が発生したか否かを判定する。ステップS101において電源喪失が発生していない場合(S101:No)、マイクロコントローラ61の処理はステップS102に進む。
ステップS102においてマイクロコントローラ61は、通常運転を継続する。
【0052】
また、ステップS101において電源喪失が発生した場合(S101:Yes)、マイクロコントローラ61の処理はステップS103に進む。例えば、モータM1の駆動中に停電が生じた場合の他、子ども等が誤ってコンセントからプラグを引き抜いた場合でも、電源喪失の状態になる。なお、モータM1の駆動中に電源喪失で停止したことを示す所定のエラー情報が記憶部61a(図4参照)に格納されるようにしてもよく、また、エラー情報が格納されないようにしてもよく、いずれであってもよい。
【0053】
ステップS103においてマイクロコントローラ61は、自身が起動したか否かを判定する。つまり、マイクロコントローラ61は、平滑コンデンサ20からレギュレータ81,82を介して所定の電圧が印加されることで、自身が起動したか否かを判定する。ステップS103においてマイクロコントローラ61が起動していない場合(S103:No)、ステップS103の処理が繰り返される。また、ステップS103においてマイクロコントローラ61が起動した場合(S103:Yes)、マイクロコントローラ61の処理はステップS104に進む。
【0054】
ステップS104においてマイクロコントローラ61は、平滑コンデンサ20の直流電圧を検出するとともに、モータM1の回転速度を算出する。前記したように、平滑コンデンサ20の直流電圧は、直流電圧検出部30によって検出される。また、モータM1の回転速度は、前記した式(1)に基づいて、回転速度演算部61b(図4参照)によって算出される。
【0055】
ステップS105においてマイクロコントローラ61は、平滑コンデンサ20の直流電圧が所定範囲内であるか否かを電源喪失判定部61cによって判定する。なお、ステップS105における「所定範囲」は、電源喪失の状態が継続しているか、それとも、電源が復旧したかの判定に用いられる直流電圧の範囲である。詳細については後記するが、この「所定範囲」の上限値・下限値は、マイクロコントローラ61によって繰り返し算出される。
【0056】
ステップS105において平滑コンデンサ20の直流電圧が所定範囲内である場合(S105:Yes)、マイクロコントローラ61の処理はステップS106に進む。
ステップS106においてマイクロコントローラ61は、平滑コンデンサ20の直流電圧が所定範囲内である状態の継続時間が所定時間以上であるか否かを電源喪失判定部61cによって判定する。この「所定時間」は、電源喪失の状態であるか否かの判定基準となる時間の閾値であり、予め設定されている。ステップS106において平滑コンデンサ20の直流電圧が所定範囲内である状態の継続時間が所定時間以上である場合(S106:Yes)、マイクロコントローラ61の処理はステップS107に進む。
【0057】
ステップS107においてマイクロコントローラ61は、電源喪失判定部61cによって、電源喪失状態であると判定する。つまり、マイクロコントローラ61は、平滑コンデンサ20の所定の電圧は、ファンF1が外風で空転したことに伴うモータM1の誘起電圧によるものであり、電源はまだ復旧していないと判定する。
【0058】
次に、ステップS108においてマイクロコントローラ61は、電源の復旧まで待機する。このように、マイクロコントローラ61(制御部60)は、電力供給が止まった後(S101:Yes)、平滑コンデンサ20の直流電圧の検出値が所定範囲に含まれている状態が所定時間以上継続した場合(S105:Yes、S106:Yes)、モータM1を駆動させずに待機する(S108)。ステップS108の処理を行った後、マイクロコントローラ61の処理はステップS105に戻る。
【0059】
なお、電力供給が止まった後(S101:Yes)、平滑コンデンサ20の直流電圧の検出値が所定範囲に含まれている場合(S105:Yes)、リモコン(図示せず)から運転指令があったときでも、マイクロコントローラ61(つまり、制御部60)がモータM1を駆動させずに待機することが好ましい。これによって、電源が復旧していない不安定な状態で、リモコンの操作によってシステムが起動されることを防止できる。
【0060】
また、モータM1を駆動させずに待機している場合(S108)において、リモコン(図示せず)から運転指令があったとき、マイクロコントローラ61(制御部60)が、リモコンに所定のエラー表示を行わせるようにするとよい。このようなエラー表示は、例えば、「電源復旧を待ってから運転ボタンを再び押してください」といったメッセージであってもよいし、所定のエラー番号であってもよい。これによって、運転ボタンを押したにもかかわらず、空気調和機等が起動しないことへのユーザの不安感を低減できる。
【0061】
また、ステップS106において平滑コンデンサ20の両端の直流電圧が所定範囲内である状態の継続時間が所定時間に達していない場合(S106:No)、マイクロコントローラ61の処理はステップS105に戻る。
【0062】
また、ステップS105において平滑コンデンサ20の直流電圧が所定範囲外である場合(S105:No)、マイクロコントローラ61の処理はステップS109に進む。
ステップS109においてマイクロコントローラ61は、電源喪失判定部61cによって、電源が復旧したと判定する。
次に、ステップS110においてマイクロコントローラ61は、システム(空気調和機や換気扇)を起動させる。このように、マイクロコントローラ61(制御部60)は、電力供給が止まった後(S101:Yes)、平滑コンデンサ20の直流電圧の検出値が所定範囲に含まれていない場合(S105:No)、モータM1を駆動させる。
【0063】
なお、電力供給が止まった後(S101:Yes)、平滑コンデンサ20の直流電圧の検出値が所定範囲に含まれていない場合において(S105:No)、リモコン(図示せず)からの運転指令があったとき、マイクロコントローラ61(制御部60)がモータM1を駆動させるようにしてもよい。これによって、電源が復旧した後、システムを起動させる際のユーザの意思を反映させることができる。また、リモコンからの運転指令の有無にかかわらず、マイクロコントローラ61がシステムを起動させるようにしてもよい。ステップS110の処理を行った後、マイクロコントローラ61は一連の処理を終了する(END)。
【0064】
図7は、平滑コンデンサの両端の直流電圧Edcが所定範囲に含まれているか否かの判定に関する説明図である(適宜、図3も参照)。
なお、図7の紙面上側のグラフの横軸は時刻であり、縦軸は平滑コンデンサ20の両端の直流電圧Edcである。図7における「カウンタ」のタイムチャートは、マイクロコントローラ61の電源喪失判定部61c(図4参照)が備えるカウンタ(図示せず)の値の変化を示している。また、図7における「電源喪失状態フラグ」は、電源喪失状態になっているか否かを示すフラグの変化を示している。
【0065】
図7の紙面上側のグラフにおいて太い実線で示す「Edc」は、平滑コンデンサ20の両端の直流電圧の検出値である。また、グラフの縦軸における値Eは、マイクロコントローラ61が起動する否かの基準となる、平滑コンデンサ20の直流電圧の値である。つまり、停電等で電源喪失の状態になった後、平滑コンデンサ20の直流電圧が値Eに達した場合、マイクロコントローラ61が起動するようになっている。
【0066】
図7の紙面上側のグラフに示す2本の破線は、平滑コンデンサ20の直流電圧Edcの検出値が「所定範囲」に含まれているか否かの判定(図6のS105)に用いられる上限値・下限値の推移を示している。具体的には、平滑コンデンサ20の直流電圧Edc(回生電圧の理論値)に関する「所定範囲」は、以下の式(9)で表される。
【0067】
【数9】
【0068】
なお、式(9)に含まれるFはモータM1の回転速度であり、KeはモータM1の誘起電圧定数である。また、ΔKeは誘起電圧定数Keの正側のばらつきを示す値であり、ΔKeは誘起電圧定数Keの負側のばらつきを示す値である。例えば、誘起電圧定数Keの正側のばらつきが+20%であり、負側のばらつきが-15%である場合には、ΔKe=0.2、ΔKe=0.15に設定される。また、Vはインバータ回路40が備える還流ダイオードD1~D6(図3参照)の1つ当たりの順方向電圧である。
【0069】
例えば、外風でファンF1が空転した場合、2つの還流ダイオード(図3の破線矢印の経路では還流ダイオードD4,D6)を順次に介して回生電流が流れる。したがって、式(9)の下限値に「-2V」の項を含めるようにしている。なお、式(9)に含まれる誘起電圧定数Keの他、ΔKeやΔKeや順方向電圧Vの値は既知であり、記憶部61a(図4参照)に予め格納されている。
【0070】
式(9)は、ファンF1の空転に伴ってモータM1で誘起電圧が生じた場合に、平滑コンデンサ20の両端に生じ得る直流電圧Edcの範囲を示している。以下の説明では、式(9)で特定される範囲(図7の2本の破線で挟まれる範囲)を単に「所定範囲」という。平滑コンデンサ20の両端の直流電圧Edcが所定範囲内であれば、電源がまだ復旧しておらず、外風でファンF1が空転して、モータM1に所定の誘起電圧が生じている可能性が高い。
【0071】
図7の2本の破線で示すように、モータM1の回転速度Fの変化(つまり、誘起電圧の変化)に伴って、直流電圧Edcに関する所定範囲の上限値・下限値も時々刻々と変化する。具体的には、ファンF1の空転に伴うモータM1の誘起電圧又は回転速度が高いほど、所定範囲の上限値及び下限値が高くなるように設定されている。言い換えると、マイクロコントローラ61(制御部60)は、ファンF1の空転に伴うモータM1の誘起電圧又は回転速度が高いほど、所定範囲の上限値及び下限値を高くする。
【0072】
図7の例では、平滑コンデンサ20の直流電圧Edcが時刻t1に所定範囲(2本の破線で挟まれる範囲)に入った状態が所定時間Δtだけ継続したとき(時刻t2)、電源喪失状態フラグがONに切り替わっている(図6のS105:Yes、S106:Yes、S107)。この場合においてマイクロコントローラ61は、電源はまだ復旧しておらず、モータM1の電源喪失状態が続いていると判定する。
【0073】
このように電源喪失状態フラグがONになっている期間は、リモコン(図示せず)の操作で運転指令が入力された場合でも、マイクロコントローラ61はシステムを起動させずに待機する。これによって、電源が復旧していない不安定な状態でシステムが起動されることを防止できる。
【0074】
また、図7の例では、時刻t3において平滑コンデンサ20の直流電圧Edcが所定範囲(2本の破線で挟まれる範囲)から下側に外れている。この場合には、誘起電圧に伴う回生電流が流れている可能性は低いため、電源喪失状態フラグがOFFに切り替わっている(図6のS106:No、S109)。この場合においてマイクロコントローラ61は、電源が復旧したと判定して、システムを起動させる(図6のS109、S110)。これによって、交流電源E1から安定的に電力が供給されている状態でシステムを起動させることができる。
【0075】
図7の例では、平滑コンデンサ20の直流電圧Edcが時刻t4に再び所定範囲(2本の破線で挟まれる範囲)に入った状態が所定時間Δtだけ継続したとき(時刻t5)、電源喪失状態フラグが再びONに切り替わっている。なお、図7は一例であり、電源喪失状態フラグの切替りのパターンはこれに限定されるものではない。例えば、電源喪失の状態でも、台風で非常に強い風が吹いているときにはファンF1が高速で回転し、平滑コンデンサ20の直流電圧Edcが所定範囲の上限値を超えることもある。
【0076】
<効果>
第1実施形態によれば、停電等で電源喪失の状態になった後、平滑コンデンサ20の直流電圧が上昇してマイクロコントローラ61が起動した場合、外風でファンF1が空転しているのか、それとも電源が復旧したのかをマイクロコントローラ61が適切に判別できる。したがって、電源が復旧していない不安定な状態でシステムが起動されることを防止できる。これによって、モータ駆動装置100の信頼性を高めることができる。また、モータ駆動装置100は、ファンF1が空転しているのか、それとも電源が復旧したのかを判定するための専用の回路を設ける必要が特になく、比較的簡素な構成であるため、製造コストを削減できる。
【0077】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、モータ駆動装置100(図1参照)を備える空気調和機1000(図8参照)について説明する。なお、モータ駆動装置100の構成や処理については、第1実施形態(図1図7)と同様であるから、説明を省略する。
【0078】
図8は、第2実施形態に係る空気調和機1000の構成図である。
なお、図8の実線矢印は、暖房サイクルにおける冷媒の流れを示している。
また、図8の破線矢印は、冷房サイクルにおける冷媒の流れを示している。
空気調和機1000は、冷房運転や暖房運転等の空調を行う機器である。図8に示すように、空気調和機1000は、室外機200に設けられる構成として、圧縮機93と、室外熱交換器94と、ファンF1(室外ファン)と、膨張弁95と、四方弁98と、を備えている。また、空気調和機1000は、室内機300に設けられる構成として、室内熱交換器96と、室内ファン97と、を備えている。その他、空気調和機1000は、ユーザによって操作されるリモコン99も備えている。
【0079】
圧縮機93は、低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する機器である。なお、図8では図示を省略しているが、冷媒を気液分離するためのアキュムレータが圧縮機93の吸込側に接続されている。
室外熱交換器94は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、ファンF1(室外ファン)から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。ファンF1は、室外熱交換器94に外気を送り込むプロペラファンである。ファンF1は、駆動源であるモータM1に連結され、室外熱交換器94の付近に設置されている。なお、モータM1は、第1実施形態と同様に、モータ駆動装置100(図1参照)によって駆動される。
【0080】
膨張弁95は、「凝縮器」(室外熱交換器94及び室内熱交換器96のうちの一方)で凝縮した冷媒を減圧する弁である。膨張弁95で減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器94及び室内熱交換器96のうちの他方)に導かれる。
室内熱交換器96は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室内ファン97から送り込まれる室内空気(空調室の空気)と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。室内ファン97は、室内熱交換器96に室内空気を送り込むファンである。室内ファン97は、駆動源である室内ファンモータ97aを備え、室内熱交換器96の付近に設置されている。
【0081】
四方弁98は、空気調和機1000の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。例えば、冷房運転時(図8の破線矢印を参照)には、圧縮機93、室外熱交換器94(凝縮器)、膨張弁95、及び室内熱交換器96(蒸発器)を順次に介して冷媒が循環する。また、暖房運転時(図8の実線矢印を参照)には、圧縮機93、室内熱交換器96(凝縮器)、膨張弁95、及び室外熱交換器94(蒸発器)を順次に介して冷媒が循環する。そして、室内熱交換器96を通流する冷媒との間で熱交換した空気が、室内機300から空調室に吹き出されるようになっている。
【0082】
<効果>
第2実施形態によれば、停電等で電源喪失の状態になった後、電源が復旧した後に空気調和機1000が再び起動される。したがって、電力が供給されていない不安定な状態で空気調和機1000が起動されることを防できるため、空気調和機1000の信頼性を高めることができる。
【0083】
≪変形例≫
以上、本開示に係るモータ駆動装置100やモータ駆動方法や空気調和機1000について各実施形態で説明したが、これらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、第1実施形態では、スイッチング素子S1~S6(図1参照)の種類がIGBTである場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)といった他の種類のスイッチング素子が用いられてもよい。
【0084】
また、第1実施形態では、電源喪失の状態になった後、平滑コンデンサ20の直流電圧の検出値が所定範囲外である場合にマイクロコントローラ61がシステムを起動する処理について説明したが、これに限らない。例えば、電源喪失の状態になった後、平滑コンデンサ20の直流電圧が所定範囲外である状態の継続時間が所定時間に達した場合、マイクロコントローラ61がシステムを起動させるようにしてもよい。また、平滑コンデンサ20の直流電圧の高さの他、他の付加的な条件が適宜に追加されてもよい。
【0085】
また、第1実施形態では、電力供給が止まった後、平滑コンデンサ20の直流電圧の検出値が所定範囲に含まれている状態が所定時間以上継続した場合、マイクロコントローラ61がモータM1を駆動させずに待機する処理について説明したが、これに限らない。例えば、前記した状態の継続時間が所定時間に達したか否かの判定が適宜に省略されてもよい。要するに、電力供給が止まった後、平滑コンデンサ20の直流電圧の検出値が所定範囲に含まれている場合、マイクロコントローラ61(制御部60)がモータM1を駆動させずに待機するようにするとよい。
【0086】
また、第1実施形態では、モータM1の誘起電圧に基づいて、ファンF1の空転に伴うモータM1の回転速度をマイクロコントローラ61が算出する場合について説明したが、これに限らない。例えば、モータM1の回転速度がレゾルバ(図示せず)によって検出され、この回転速度の検出値がマイクロコントローラ61に入力されるようにしてもよい。
【0087】
また、第1実施形態では、モータM1を駆動源とするファンF1の例として、空気調和機の室外ファンや換気扇を挙げたが、これに限定されるものではない。すなわち、外風が吹き込むことで回転(空転)するファンを備えた機器であれば、第1実施形態を適用可能である。
また、第2実施形態で説明した空気調和機1000(図8参照)の構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、業務用エアコンやビル用マルチエアコンの他、一体型エアコンにも、モータ駆動装置100(図1参照)の制御を適用可能である。
【0088】
また、モータ駆動装置100の処理(モータ駆動方法)が、コンピュータの所定のプログラムとして実行されるようにしてもよい。前記したプログラムは、通信線を介して提供できる他、CD-ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0089】
また、本開示は、各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、各実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0090】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0091】
10 コンバータ回路(直流電源)
20 平滑コンデンサ(直流電源)
30 直流電圧検出部
40 インバータ回路
50 誘起電圧検出部
60 制御部
61 マイクロコントローラ
61a 記憶部
61b 回転速度演算部
61c 電源喪失判定部
62 制御回路
70 モータドライバIC
93 圧縮機
94 室外熱交換器
95 膨張弁
96 室内熱交換器
97 室内ファン
98 四方弁
99 リモコン
100 モータ駆動装置
F1 ファン(室外ファン)
M1 モータ
1000 空気調和機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8