IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 河野 久米彦の特許一覧 ▶ 株式会社 横河システム建築の特許一覧

<>
  • 特開-日除け装置 図1
  • 特開-日除け装置 図2
  • 特開-日除け装置 図3
  • 特開-日除け装置 図4
  • 特開-日除け装置 図5
  • 特開-日除け装置 図6
  • 特開-日除け装置 図7
  • 特開-日除け装置 図8
  • 特開-日除け装置 図9
  • 特開-日除け装置 図10
  • 特開-日除け装置 図11
  • 特開-日除け装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155317
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】日除け装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/28 20060101AFI20241024BHJP
【FI】
E04H15/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069948
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】517064843
【氏名又は名称】河野 久米彦
(71)【出願人】
【識別番号】502410196
【氏名又は名称】株式会社 横河システム建築
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 久米彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 隆
(72)【発明者】
【氏名】村岡 真
(72)【発明者】
【氏名】今井 卓司
(72)【発明者】
【氏名】大関 信彦
【テーマコード(参考)】
2E141
【Fターム(参考)】
2E141AA01
2E141AA09
2E141BB03
2E141CC03
2E141DD11
2E141HH01
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち日除けと雨除けの機能を備えつつ簡易な構造で強風を受け流すことを可能とする日除け装置を提供することである。
【解決手段】本願発明の日除け装置は、主幹の上部から放射状に複数の膜体が配置される展開状態とすることで膜体の下方を覆うもので、主幹と膜体、下弦策材を備えたものである。膜体は2本のフレームとフレームに取り付けられる複数の膜材を有し、下弦策材は複数の膜材のうち先端側に配置される先端側膜材と主幹とを連結する。2本のフレームは先端側が下方へ位置するように弾性変形し、支軸側膜材の先端側の外縁を含む鉛直面において外側膜材の略中間が先端側膜材の両端部と支軸側膜材の先端側の外縁よりも下方に離間し、支軸側膜材と先端側膜材とが上下に重なる部分に通気孔が形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主幹の上部から放射状に複数の膜体が配置される展開状態とすることで該膜体の下方を覆う日除け装置であって、
前記主幹と、
前記主幹に取り付けられる2本のフレームと、該フレームに取り付けられる複数の膜材と、を有する前記膜体と、
複数の前記膜材のうち先端側に配置される先端側膜材と、前記主幹と、を連結する下弦策材と、を備え、
2本の前記フレームは、先端側の一部区間又は全区間が可撓性を有する材料により弾性変形可能に構成され、
複数の前記膜材は、前記フレームの先端側から前記主幹に近い支軸側に向かうように前記フレームに並んで配置され、
前記展開状態において、
前記先端側膜材は、同一の前記膜体の中で該先端側膜材より前記支軸側に位置する支軸側膜材の下側に重なるように突出する重複突出部を有し、
前記下弦策材は、前記主幹を中心とする円周方向において2本の前記フレームが離間する角度範囲内の中間または略中間に位置するようにして前記重複突出部に接続され、前記膜材の下側を経由して前記主幹に連結され、
2本の前記フレームは先端側が下方へ位置するように弾性変形し、該弾性変形によって2本の前記フレームよりも下側を前記下弦策材が経由し、該下弦策材によって前記先端側膜材を前記支軸側に引張する張力を生じさせ、
前記支軸側膜材の先端側の外縁を含む鉛直面において前記先端側膜材の中間又は略中間が該先端側膜材の両端部と前記支軸側膜材の先端側の前記外縁よりも下方に離間し、
前記支軸側膜材と前記先端側膜材とが上下に重なる部分に通気孔が形成される、
ことを特徴とする日除け装置。
【請求項2】
前記展開状態において、1の前記膜体における前記フレームの1つは、隣に位置する他の前記膜体の前記フレームの1つと略同一の方向側を向き、各々の前記フレームが隣に位置する他の前記フレームとは別に前記主幹に回動可能に取り付けられ、
1の前記膜体を構成する前記フレームの一部区間または全区間が、前記隣に位置する他の前記膜体を構成する前記フレームの一部区間または全区間に対して上下方向側または水平方向側に移動することで隣り合う2つの前記膜体の境界部分に隙間を形成可能とした、
ことを特徴とする請求項1に記載の日除け装置。
【請求項3】
前記円周方向に離間して配置される第1グループの前記膜体と、
前記第1グループの前記膜体の間に配置される第2グループの前記膜体と、
前記第1グループの前記膜体の各々について、前記第2グループの前記膜体を挟んで前記円周方向に連続し、前記第1グループの前記膜体どうしを連結する第1連結部材と、
前記第2グループの前記膜体の各々について、前記第1グループの前記膜体を挟んで前記円周方向に連続し、前記第2グループの前記膜体どうしを連結する第2連結部材と、をさらに備え、
前記展開状態において、前記第1グループの前記膜体の1つは、前記第1連結部材によって連結された前記第1グループの別の前記膜体により前記円周方向における移動が制限され、前記第2グループの前記膜体の1つは、前記第2連結部材によって連結された前記第2グループの別の前記膜体により前記円周方向における移動が制限され、
前記展開状態に対して前記フレームが所定の仰角に傾斜した傾斜状態においては、前記第1連結部材による前記展開状態での移動制限が解除されて前記展開状態より前記円周方向における移動が許容され、前記第2連結部材による前記第2グループの前記展開状態での移動制限も解除されて前記展開状態より前記円周方向における移動が許容される、
ことを特徴とする請求項2に記載の日除け装置。
【請求項4】
1の前記膜体に対して、一端側が一方の前記フレームまたは一方の前記フレームに近い前記膜材の一部に設けられる接続点に接続され、他端側が他方の前記フレームまたは他方の前記フレームに近い前記膜材の一部に設けられる接続点又は通過点まで連続する第1区間と、該第1区間と前記主幹とを連結する第2区間と、を含む上弦策材と、
一方の前記フレームまたは他方の前記フレームのいずれか又は両方を前記円周方向に回動可能に支持する円周側回動機構と、
前記上弦策材の前記第2区間を前記支軸側へ引張する張力を生じさせる引張手段と、をさらに備え、
前記傾斜状態において、前記引張手段によって前記第2区間を前記支軸側へ引張する張力が、前記第1区間の両端側に位置する2つの前記接続点の距離または前記接続点と前記通過点との距離を接近させるように作用し、前記円周側回動機構によって前記フレームが前記円周方向に回動することで一方の前記フレームと他方の前記フレームとが接近して前記膜体が折り畳まれる、
ことを特徴とする請求項3に記載の日除け装置。
【請求項5】
複数の前記膜体の前記フレームが鉛直面又は略鉛直面内で回動可能に取り付けられる支持体と、
前記主幹の一部として設けられ、前記支持体を支持する内軸材と、
前記主幹の一部として設けられ、前記内軸材と前記支持体と前記膜体との一部又は全部を内側に収容可能な筒状の外筒材と、
前記支持体と前記外筒材とを相対的に上下方向側に移動させる動作機構と、
前記外筒材の上部に設けられるフレーム支持部と、をさらに備え、
前記支持体の一部又は全部が前記外筒材の上端部より上方側に位置することにより前記展開状態をとり、前記展開状態において前記フレームの下側部分が前記フレーム支持部に接触して支持されることで前記フレームの下方側への移動が制限され、前記フレーム支持部に前記フレームが支持されたままで前記外筒材に対して前記支持体が下方側へ相対移動することにより前記フレームが起立して前記外筒材の内側に前記膜体が収容された収容状態とする、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の日除け装置。
【請求項6】
前記内軸材に対して前記支持体を上下方向側に移動する支持体動作機構と、
前記外筒材の一部を構成する可動外筒体と、
前記可動外筒体を上下方向側に移動する外筒材動作機構と、をさらに備え、
前記展開状態に対して、前記外筒材動作機構により前記可動外筒体が上方側へ移動し、前記支持体動作機構により前記支持体が下方側へ移動することにより前記外筒材の内側に前記膜体が収容される、
ことを特徴とする請求項5に記載の日除け装置。
【請求項7】
前記内軸材に対して前記支持体を上下方向側に移動する支持体動作機構と、
前記下弦策材の前記支軸側が取り付けられる下弦取付体と、
前記支持体の動作範囲のうち上側の一部区間を除いて前記支持体とともに前記下弦取付体を上下方向側に移動する取付体動作機構と、をさらに備え、
前記収容状態から前記展開状態へと移行する場合において、前記外筒材に対して前記支持体が上方側へ移動しても前記フレームが起立した状態を維持しようとした場合に、前記下弦取付体が前記支持体より先に停止することにより前記下弦策材を通じて前記フレームの先端側に、前記主幹の中心軸から離間する径方向外側へ前記フレームの先端側を変形させる力を付与し、該フレームの変形分によって前記径方向外側へ前記フレームが傾倒しようとするトルクを増大することで前記展開状態への移行が可能に構成される、
ことを特徴とする請求項5に記載の日除け装置。
【請求項8】
前記フレーム支持部のうち前記展開状態において前記フレームの下側部分に接触する展開時接触部より下側にて前記外筒材の内側に向けて突出する突出部を有し、前記内軸材を中心にして回動可能に設けられる回動体と、
前記回動体が回動する駆動力を付与する駆動機構と、をさらに備え、
前記外筒材の内側に前記膜体が収容される場合において、前記突出部が前記膜材に接触し、前記駆動機構による前記回動体の回動動作に伴い前記突出部が回動することで前記膜材が前記内軸材の外側に巻き付けられた状態とする、
ことを特徴とする請求項5に記載の日除け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、公園や広場、屋外のイベント会場等に設置可能な日除け装置に関する技術であり、より具体的には、日除けと雨除けの機能を備えつつ、突風などの強い風を受け流すことが可能な日除け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に伴って全国的に気温が上昇し、夏季に30度を超える真夏日となる日が多く、35度以上の猛暑日となる日も増加傾向にある。この気温上昇に伴い、夏場には熱中症に特に注意する必要がある。熱中症は、体温上昇によって、体温調節機能が働かなくなり、めまいや痙攣、頭痛などの症状を起こす病気である。毎年多くの人が熱中症で救急搬送され、最悪の場合には死に至ることもある。
【0003】
このため屋外のイベントを企画する際に熱中症対策は欠かせない。来場者には涼しい服装や日傘・帽子の利用、水分や塩分の補給等によって熱中症の予防を依頼する。そして会場には、タープテントなどの仮設の日除けを設置し、来場者が日陰に入って休息できる場所を確保するようにしている。
【0004】
仮設の日除けとして、例えば特許文献1ではタープテントとして利用可能な四角形の屋根構造体のコーナー部分にフレームを立設し、複数本のフレームで屋根構造体を支持するものが提案されている。また、特許文献2では傘型の屋根を大型にし、中央の主幹を地面に設置することで主幹の周囲が屋根部分で覆われるようにしたものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3202050号公報
【特許文献2】実用新案登録第3175362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1のタープテントのように屋根構造体の周囲の複数箇所に支持用のフレームが設けられる構造では、日陰部分に入るためにフレームを避けて通らなければならないという問題点がある。またタープテントの中央部分はフレームのない空間となるため自身と他人とを仕切るものがなく、屋外のイベントで面識のない人同士は1つのタープテントに入ることに抵抗感を覚える可能性があるという問題もある。
【0007】
一方、特許文献2の傘型屋根構造体を用いた場合、中央部分に主幹が設けられるため日陰部分にいずれの方向からも進入できることは好ましいものの、強風や突風が吹いた場合には、屋根部分を中央の主幹のみで支持する構造のため風の影響を大きく受け易い。このため風の影響を十分に考慮した屋根構造としなければならず、構造が複雑化し易いという問題がある。
【0008】
本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち日除けと雨除けの機能を備えつつ簡易な構造で強風を受け流すことを可能とする日除け装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、2本のフレームに複数の膜材を配置し、フレームの先端側で下側に位置する膜材を支軸側に引張することで、風を通過させることが可能な通気孔を形成できる、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0010】
本願発明の日除け装置は、主幹の上部から放射状に複数の膜体が配置される展開状態とすることで膜体の下方を覆うものであり、主幹と膜体、下弦策材を備えたものである。なお、膜体は主幹に取り付けられる2本のフレームとフレームに取り付けられる複数の膜材を有している。また下弦策材は複数の膜材のうち先端側に配置される先端側膜材と主幹とを連結する。2本のフレームは先端側の一部区間又は全区間が可撓性を有する材料により弾性変形可能に構成される。複数の膜材はフレームの先端側から主幹に近い支軸側に向かうようにフレームに並んで配置される。展開状態において、先端側膜材は、同一の膜体の中で先端側膜材より支軸側に位置する支軸側膜材の下側に重なるように突出する重複突出部を有している。また下弦策材は主幹を中心とする円周方向において2本のフレームが離間する角度範囲内の中間または略中間に位置するようにして重複突出部に接続され、膜材の下側を経由して主幹に連結される。そして2本のフレームは先端側が下方へ位置するように弾性変形し、弾性変形によって2本のフレームよりも下側を下弦策材が経由し、この下弦策材によって先端側膜材を支軸側に引張する張力を生じさせる。支軸側膜材の先端側の外縁を含む鉛直面においては、先端側膜材の中間又は略中間が先端側膜材の両端部と支軸側膜材の先端側の外縁よりも下方に離間し、支軸側膜材と先端側膜材とが上下に重なる部分に通気孔が形成される。
【0011】
本願発明の日除け装置は、展開状態において、1の膜体におけるフレームの1つが、隣に位置する他の膜体のフレームの1つと略同一の方向側を向くものとすることもできる。これらフレームは隣に位置する他のフレームとは別に主幹に回動可能に取り付けられる。1の膜体を構成するフレームの一部区間または全区間が、隣に位置する他の膜体を構成するフレームの一部区間または全区間に対して上下方向側または水平方向側に移動することで、隣り合う2つの膜体の境界部分に隙間を形成することができる。
【0012】
本願発明の日除け装置は、第1グループの膜体と第2グループの膜体、第1連結部材、第2連結部材を、さらに備えたものとすることもできる。第1グループの膜体は、円周方向に離間して配置され、第1グループの膜体の間に第2グループの膜体が配置される。第1連結部材は、第1グループの膜体の各々について、第2グループの膜体を挟んで円周方向に連続し、第1グループの膜体どうしを連結する。第2連結部材は、第2グループの膜体の各々について、第1グループの膜体を挟んで円周方向に連続し、第2グループの膜体どうしを連結する。展開状態において、第1グループの膜体の1つは、第1連結部材によって連結された第1グループの別の膜体により円周方向における移動が制限される。第2グループの膜体の1つは、第2連結部材によって連結された第2グループの別の膜体により円周方向における移動が制限される。そして展開状態に対してフレームが所定の仰角に傾斜した傾斜状態においては、第1連結部材による展開状態での移動制限が解除されて展開状態より円周方向における移動が許容される。また第2連結部材による展開状態での移動制限も解除されて展開状態より円周方向における移動が許容される。
【0013】
本願発明の日除け装置は、上弦策材と円周側回動機構を、さらに備えたものとすることもできる。上弦策材は第1区間と第2区間を含んでいる。第1区間は、1の膜体に対して、一端側が一方のフレームまたは一方のフレームに近い膜材の一部に設けられる接続点に接続され、他端側が他方のフレームまたは他方のフレームに近い膜材の一部に設けられる接続点又は通過点まで連続する。第2区間は、第1区間と主幹とを連結する。円周側回動機構は、一方のフレームまたは他方のフレームのいずれか又は両方を円周方向に回動可能に支持する。引張手段は、上弦策材の第2区間を支軸側へ引張する張力を生じさせる。そして傾斜状態において、引張手段によって第2区間を支軸側へ引張する張力が、第1区間の両端側に位置する2つの接続点の距離または接続点と通過点との距離を接近させるように作用し、円周側回動機構によってフレームが円周方向に回動することで一方のフレームと他方のフレームとが接近して膜体が折り畳まれる。
【0014】
本願発明の日除け装置は、支持体と内軸材、外筒材、動作機構、フレーム支持部を、さらに備えたものとすることもできる。支持体は、複数の膜体のフレームが鉛直面又は略鉛直面内で回動可能に取り付けられる部材である。内軸材は、主幹の一部として設けられ、支持体を支持し、外筒材は、主幹の一部として設けられ、内軸材と支持体と膜体との一部又は全部を内側に収容可能な筒状に構成される。動作機構は、支持体と外筒材とを相対的に上下方向側に移動させる。フレーム支持部は外筒材の上部に設けられる。支持体の一部又は全部が外筒材の上端部より上方側に位置することにより展開状態をとる。展開状態においてフレームの下側部分がフレーム支持部に接触して支持されることでフレームの下方側への移動が制限される。フレーム支持部にフレームが支持されたままで外筒材に対して支持体が下方側へ相対移動することによりフレームが起立して外筒材の内側に膜体が収容された収容状態とすることができる。
【0015】
本願発明の日除け装置は、支持体動作機構と可動外筒体、外筒材動作機構を、さらに備えたものとすることもできる。支持体動作機構は、内軸材に対して支持体を上下方向側に移動する機構である。外筒材動作機構は、外筒材の一部を構成する可動外筒体を上下方向側に移動する機構である。そして展開状態に対して、外筒材動作機構により可動外筒体が上方側へ移動し、支持体動作機構により支持体が下方側へ移動することにより外筒材の内側に膜体が収容される。
【0016】
本願発明の日除け装置は、支持体動作機構と下弦取付体、可動外筒体、取付体動作機構を、さらに備えたものとすることもできる。支持体動作機構は、内軸材に対して支持体を上下方向側に移動する機構である。下弦取付体は、下弦策材の支軸側が取り付けられる。取付体動作機構は、支持体の動作範囲のうち上側の一部区間を除いて支持体とともに下弦取付体を上下方向側に移動する機構である。そして収容状態から展開状態へと移行する場合において、外筒材に対して支持体が上方側へ移動してもフレームが起立した状態を維持しようとする場合がある。この場合には、下弦取付体が支持体より先に停止することにより下弦策材を通じてフレームの先端側に、主幹の中心軸から離間する径方向外側へフレームの先端側を変形させる力を付与する。このフレームの変形分によって径方向外側へフレームが傾倒しようとするトルクが増大されるので、展開状態への移行が可能となる。
【0017】
本願発明の日除け装置は、回動体と駆動機構を、さらに備えたものとすることもできる。回動体は、フレーム支持部のうち展開状態においてフレームに接触する展開時接触部より下側にて外筒材の内側に向けて突出する突出部を有し、内軸材を中心にして回動可能に設けられる。駆動機構は回動体が回動する駆動力を付与する機構である。そして外筒材の内側に膜体が収容される場合において、突出部が膜材に接触し、駆動機構による回動体の回動動作に伴い突出部が回動することで膜材が内軸材の外側に巻き付けられた状態とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本願発明の日除け装置には、次のような効果がある。
(1)2本のフレームに複数の膜材を配置し、下側に位置する膜材を下弦策材で主幹に連結するという簡易な構造によって風を通過させるための通気孔を形成することができるため、フレーム強度を確保し易くしながらも、日除けと雨除けの機能に加えて強風に対抗し得る対風機能を備えることができる。
(2)複数の膜材が風を受けることにより風の強さに応じて膜体を構成する2本のフレームが弾性変形することとなるため、あたかも木陰を形成する枝の先端部分が風に揺られながら、木の葉の間を風が通過するかのような見栄えを実現することができ、日除け装置の利用者に対して自然の中にいるような心が落ち着きやすい印象を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は本願発明の日除け装置の一例を示した正面図、(b)は収容状態の日除け装置を示した正面図。
図2】(a)は1つの膜体に取り付けられる複数の膜材を示す平面図、(b)は展開状態の複数の膜体を示す平面図。
図3】(a)は下弦策材が取り付けられた膜体を示す底面図、(b)は下弦策材により主幹に連結された膜体を模式的に示す断面図、(c)は下弦策材により通気孔が形成された膜体を示す斜視図。
図4】(a)は2つの膜体を示す平面図、(b)は上下方向側の隙間が境界部分に形成された2つの膜体を示す斜視図。
図5】第1グループの膜体と第2グループの膜体を示す平面図。
図6】(a)は傾斜状態の膜体を模式的に示す平面図、(b)は傾斜状態の日除け装置を模式的に示す正面図。
図7】(a)は折畳推進機構を模式的に示す断面図、(b)は展開状態のフレームと上弦策材を示す平面図、(c)は仰角45度のフレームと上弦策材を示す平面図、(d)は仰角60度のフレームと上弦策材を示す平面図、(e)は別形態の上弦策材を示す平面図。
図8】フレームの支持機構を模式的に示す平面図。
図9】(a)は主幹を模式的に示す平面図、(b)は展開状態における主幹の動作機構を模式的に示す鉛直断面図、(c)は収容状態における主幹の動作機構を模式的に示す鉛直断面図。
図10】(a)は仰角20度の傾斜状態におけるフレームの支持構造を模式的に示す鉛直断面図、(b)は仰角70度の傾斜状態におけるフレームの支持構造を模式的に示す鉛直断面図。
図11】(a)は展開状態への移行を開始する前のフレームと下弦策材を模式的に示す鉛直断面図、(b)は展開状態への移行が促進されたフレームと下弦策材を模式的に示す鉛直断面図。
図12】(a)は花弁状回動体を示す平面図、(b)は収容状態への移行途中における花弁状回動体と膜体を模式的に示す鉛直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本願発明の日除け装置の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0021】
1.全体概要
図1は、本願発明の日除け装置100の一例を模式的に示した図であり、(a)は展開状態とした日除け装置100の正面図、(b)は収容状態の日除け装置100の正面図である。
【0022】
日除け装置100は、図1(a)に示すように、主幹200の上部から放射状に複数の膜体300が配置される展開状態とすることで、膜体300の下方を覆うことができる装置である。日除け装置100は、日除けと雨除けの機能を備えるものであり、また展開状態において膜体300に多数の通気孔VTを形成することによって対風機能を備えるものとしている。なお本願発明の日除け装置100は、図1(a)に示す展開状態と図1(b)に示す収容状態とを切り替えることができるものであり、以下の説明においては、まず展開状態における膜体300に関する構成を説明し、その後、展開状態から収容状態へ切り替える動作機構などの主幹200に関する構成について説明する。
【0023】
本願発明の日除け装置100は、主幹200と膜体300、下弦策材510(図3参照)を含んで構成され、さらに第1連結部材610と第2連結部材620(図5参照)、上弦策材520を含んで構成することもできる。なお便宜上ここでは、主幹200に近い側を「支軸側」といい、主幹200から離れる側を「先端側」ということとする。また主幹200から離れる方向を「径方向」といい、主幹200を中心とした円周方向を「円周方向」といい、主幹200が立設される方向を「上下方向」ということとする。また以下の説明においては、まず膜体300について説明し、その後、膜体300に関する構成として、下弦策材510、第1連結部材610と第2連結部材620、上弦策材520について順に説明する。
【0024】
2.膜体
図2(a)は1つの膜体300に取り付けられる3つの膜材400を示す平面図、図2(b)は展開状態の複数の膜体300を示す平面図である。また図3(a)は下弦策材510が取り付けられた膜体300を示す底面図、図3(b)は下弦策材510により主幹200に連結された膜体300を模式的に示す断面図、図3(c)は下弦策材510により通気孔VTが形成された膜体300を示す斜視図である。
【0025】
膜体300は、図2(b)に示すように2本のフレーム310と複数の膜材400を含んで構成される。2本のフレーム310は、主幹200に対して支軸側が片持ち状に支持されるようにして主幹200に取り付けられる。フレーム310は、膜材400を支持する骨組構造を構成するものであり、断面寸法に比して軸方向寸法(長さ)が卓越したいわゆる軸材である。フレーム310は、可撓性を有する材料により弾性変形可能に構成され、鋼管や金属棒、カーボンファイバー製のロッドなどが利用できる。
【0026】
なおフレーム310は、全体が一定の断面形状を有するようにして弾性変形可能としてもよいが、支軸側よりも先端側において曲率半径が小さくなるように先端側の断面寸法を徐々に小さくしたり、先端側に弾性係数が小さく変形が容易な材料を使用することができる。これにより図1(a)に示すように支軸側から水平方向に連続した膜体300が、先端側ほど下方に湾曲することで、日陰を作る樹木のような見栄えを実現できる。フレーム310の断面形状は、円柱状や円筒状、あるいは上下方向を厚み方向とする薄板帯状など種々の形状とすることができ、支軸側に近づくほど板厚の大きな材料としたり上下に重なる板枚数を増やして構成してもよい。
【0027】
複数の膜材400は、フレーム310に対して支軸側から先端側に複数並ぶようにして取り付けられる。図2(b)には、内側膜材410、中間膜材420、外側膜材430の3つが取り付けられる例を示している。1つの膜体300に対しては、1つの膜材400を取り付けることもできるが、複数の膜材400を取り付けるのが好ましく、4つ以上の膜材400を取り付けてもよい。また、円周方向に並んで配置される複数の膜体300に対して必ずしも同一数の膜材400を取り付ける構成とする必要はなく、異なる数の膜材400が取り付けられた膜体300が隣に並ぶようにしてもよく、例えば、3つの膜材400を取り付けた膜体300の隣に2つの膜材400を取り付けた膜体300を配置してもよい。
【0028】
内側膜材410は、図2(a)に示すように略三角形状とされ、支軸側が先細りした尖形で、支軸側から先端側(図の右側)に行くに従い、次第に幅広に形成される。膜材400の支軸側(図の左側)は尖形に限らず、他の形状としてもよく、例えば円弧状に形成してもよいし、直線状に先端部分が切除された形状(すなわち、膜材400が全体として略台形状)に形成してもよい。また図2(b)には全ての膜体300に対して共通(形状及び大きさが同一)の複数の膜材400を取り付ける例を示しているが、必ずしも共通の膜材400を取り付ける必要はなく、異なる形状や大きさの膜材400が取り付けられた膜体300を含むようにしてもよく、例えば円周方向の角度が12.5度の膜体300の隣に円周方向の角度が25度の膜体300を配置してもよい。
【0029】
膜材400のうち外側膜材430の先端側の外縁431は、幅方向(図2(a)の上下方向)の中央部分の長さが短く両端側へ近付くほど長い矢羽根形状とし、内側膜材410の先端側の外縁411と、中間膜材420の先端側の外縁421は直線状に形成されている。各膜材400の先端側の外縁形状は、これに限らず他の形状としてもよく、先端側が2種以上の異なる形とした膜材400が隣り合う膜体300に設けられる構成としてもよい。また複数の膜体300の径方向の長さは同一とし、複数の膜体300を組み合わせた場合における先端側の外周形状(外側膜材430の先端側の外縁431が連続してできる外周形状)が全体として略円形状となる例を示しているが、これに限らず、複数の膜体300の径方向の長さや外側膜材430の外縁431の形状などを異ならせることで楕円形状や長方形状など他の外周形状とすることもできる。
【0030】
膜材400は、図2(a)に示すように径方向に沿った方向を長さ方向、径方向に直交する方向を幅方向とした場合において、幅方向(図2(a)の上下方向)の両端側の縁部分が袋状に形成され、その袋状部分にフレーム310を差し込むことでフレーム310に膜材400を取り付けることができる。フレーム310への膜材400の取り付けは、袋状部分への差込構造に限らず、これに代えて、またはこれに加えて、接着などの他の方法を用いてもよい。膜材400の生地部分の材料には、例えばポリエステルやナイロンなどの樹脂を利用することができ、コットンなどの他の材料を利用することもできる。膜材400には、紐状のロープや金属製のワイヤを含むようにして構成することもでき、例えば膜材400の先端側の外縁に袋状部分を形成してロープを内包してもよい。
【0031】
中間膜材420は、略台形形状の基部422(図2(a)における二点鎖線より右側の範囲)と、基部422の一端側(支軸側)から略三角形状に突出する重複突出部(中間膜材突出部423)を有するようにして構成される。中間膜材420の基部422は、図2(b)に示すように展開状態において上側に別の膜材400(内側膜材410と外側膜材430)が重ならない部位である。中間膜材突出部423は、支軸側に隣り合って位置する他の膜材400(内側膜材410)の下側に重なる部位である。外側膜材430は、中間膜材420と同様、基部432と重複突出部(外側膜材突出部433)を有するようにして構成される。
【0032】
重複突出部(中間膜材突出部423と外側膜材突出部433)は、通気孔VTの形成に利用される部位であり、下弦策材510と組み合わせることで膜体300に通気孔VTを形成できる。なお重複突出部の長さは、隣に位置する1つの膜材400の下側に重なる長さに制限されるものでなく、2つ以上の膜材400の下側に重なる長さに形成してもよく、例えば内側膜材410の下側に重なる程度に外側膜材突出部433の長さが設定されてもよい。また重複突出部の外縁部分にはワイヤなどの策材を内包できる袋状にして内部に策材(中間突出部策材423A,外側突出部策材433A)を配索し、この策材をフレーム310の挿入部分(例えば、図3(a)の端部435,436)まで連続させてフレーム310と連結し、この策材に下弦策材510を取り付けることで、下弦策材510からの引張力を策材によってフレーム310に伝達できて好ましい。また外側膜材突出部433の径方向先端側(両端部435,436の位置)は図3の例示よりも更にフレーム310の先端側に位置するように構成することも好ましく、これにより下弦策材510からの引張力でフレーム310が全体的に湾曲するように演出することができる。
【0033】
なお1つの膜体300を構成する複数の膜材400は緑色や黄色など樹木の葉の色を基本とした色調を用いて形成することが好ましく、これにより日除け装置100を樹木のような見栄えとすることができる。また1つの膜体300を構成する複数の膜材400は単一の色でなく、外側膜材430と中間膜材420、内側膜材410が順に濃い色に見えるなど、支軸側と先端側とで異なる色や柄を用いて構成することも好ましい。また主幹200の外面や下弦策材510には、樹木の幹や枝に近い茶系や白系の色を用いて構成することも好ましい。
【0034】
3.下弦策材を用いた対風機能
下弦策材510は、図3(a)に示すように膜材400の下側を経由して主幹200に連結される部材である。下弦策材510の先端側は、外側膜材突出部433における支軸側の端部に取り付けられる。また下弦策材510は、図3(a)に示すように円周方向において2本のフレーム310が離間する角度(以下、「展開膜体角度AE」という。)の範囲内の略中間(図の一点鎖線)に位置するようにして外側膜材突出部433に接続される。また下弦策材510は、支軸側と先端側との間部分にて、中間膜材突出部423にも接続される。
【0035】
下弦策材510による主幹200と重複突出部(中間膜材突出部423と外側膜材突出部433)の連結構造として、図3(b)には1本の下弦策材510を用いる例を示している。下弦策材510は、支軸側から中間膜材突出部423に接続された接続部分を経由して外側膜材突出部433に接続されている。なお1つの膜体300において複数本の下弦策材510を用いてもよく、例えば支軸側と中間膜材突出部423を連結する下弦策材510とは別の下弦策材510によって、支軸側と外側膜材突出部433を連結してもよい。
【0036】
下弦策材510等は、例えば金属製のワイヤや紐、ロープを用いて構成することができる。膜材400に対しては、例えば金属製の環状リング(例えばハトメ)を取り付けて下弦策材510を接続固定することができる。下弦策材510の主幹200の側の連結構造については、図11を参照して後述する。
【0037】
日除け装置100は、下弦策材510によって主幹200と外側膜材430が連結される構造を備えることで、図1(a)に示すように多数の通気孔VTを形成する。1つの膜体300について見ると、図3(b)に示すようにフレーム310は先端側が下方へ位置する曲線状に弾性変形している。この弾性変形は、膜材400の重量がフレーム310に作用することや下弦策材510による主幹200の側への張力によって生成される。フレーム310が弾性変形することで、下弦策材510は、図3(b)に示すようにフレーム310よりも下方に離間した位置において略直線状となるように設置することができる。
【0038】
図3(c)に示すように中間膜材420における先端側の外縁421を含む鉛直面PLにおいては、外側膜材430の中間434(外側膜材430の幅方向の中間位置を示す一点鎖線と、鉛直面PLにおける外側膜材430の形状を示す二点鎖線の交点)が外側膜材430の幅方向における両端部435,436よりも下方に離間して位置し、中間膜材420と外側膜材430とが上下に重なる部分に通気孔VTが形成される。
【0039】
展開状態の日除け装置100に対し、風の作用によってフレーム310が形状変化する場合に、下側に湾曲したフレーム310が直線状に復元しようとすると、支軸側からフレーム310の先端までの直線距離が長くなる。しかし下弦策材510が外側膜材430の先端側への移動を阻止するように作用し、フレーム310の直線状への形状変化を制限することができるので、通気孔VTは形成し続けることができて風の影響を少なくできる。
【0040】
一方、フレーム310がさらに湾曲するように弾性変形する場合は、フレーム310の支軸側から先端側までの直線距離は短くなるため、下弦策材510による外側膜材430の移動制限はなくフレーム310の湾曲は許容される。フレーム310がさらに湾曲する場合でも、通気孔VTは形成され続けることとなり、通気孔VTを風が通過できて風の影響を少なくできる。
【0041】
なお通気孔VTのサイズは、下弦策材510が主幹200の側へ外側膜材430を引張する張力の大きさによって変化させることができる。このため膜材400の重量やフレーム310の弾性率などによって展開状態における下弦策材510の長さや張力の設定を適宜調整することで、適切な大きさの通気孔VTを形成可能な仕様とすることができる。また通気孔VTは、内側膜材410と中間膜材420との間にも同様に形成され、そこからも風を通過させることができる。
【0042】
このように、日除け装置100は、下弦策材510によって主幹200と外側膜材430及び中間膜材420が連結される構造を備えることで、風が吹いた場合に複数の膜体300に通気孔VTを形成し続けることができる。このため複数の膜体300を利用して、日除けと雨除けの機能だけでなく、対風機能を有するようにした日除け装置100を実現することができる。またフレーム310には、通気孔VTを設けるための構造は不要であって直線状の軸材を利用できるので、フレーム強度を確保し易くしながらも対風機能を付加することができる。
【0043】
なお膜材400の単体形状として、図2(a)に示すように外側膜材430の基部432のうち外側膜材突出部433が位置する支軸側の幅寸法(図の二点鎖線の長さ)は、支軸側に隣り合って位置する中間膜材420の先端側の外縁421の幅寸法より長く設定されることが好ましい。この長さ差を大きく設定することで、上下方向の隙間幅が大きな通気孔VTを形成できる。また中間膜材420の基部422の支軸側の幅寸法(図の二点鎖線の長さ)と内側膜材410の外縁411についても、同様に長さ差を設定して構成することが好ましい。
【0044】
また1つの膜体300において、通気孔VTが2箇所に形成される例を示したが、通気孔VTは1箇所にのみ形成されてもよいし、3箇所以上に形成されてもよい。3箇所以上とする場合は、4以上の膜材400を用いて3箇所以上に重複突出部を設ければよい。また支軸側と先端側とに並んで設けられる2つの膜材400の境界部分に必ず通気孔VTが形成される構成とする必要はなく、例えば外側膜材突出部433を省略して中間膜材突出部423のみを設け、3つの膜材400を備えた1つの膜体300に1つの通気孔VTのみが形成される構成としてもよいし、1つの膜体300では支軸側に通気孔VTが形成され、隣に位置する他の膜体300では先端側に通気孔VTが形成されるなど、通気孔VTの位置が異なる膜体300が隣り合って並ぶように構成してもよい。
【0045】
4.フレーム構造を用いた対風機能
次に、図4を参照して、膜体300のフレーム構造を用いた対風機能について説明する。図4(a)は2つの膜体300を示す平面図、図4(b)は上下方向側の隙間が境界部分に形成された2つの膜体300を示す斜視図である。
【0046】
膜体300には、それぞれ2本のフレーム310が設けられている。このため図4(a)に示すように膜体300と膜体300とが隣り合う部分は、2本のフレーム310が略同一の方向側を向いて2つ並んだ状態となる。
【0047】
フレーム310は、各々のフレーム310が他のフレーム310とは別に主幹200に取り付けられ、各々のフレーム310が、個別に弾性変形可能に構成される。このため、各々のフレーム310は、隣の膜体300を構成する他のフレーム310に対して部分的に(フレーム310の一部区間において)上下方向や水平方向に相対的に移動することができ、隣の膜体300との境界部分に上下方向や水平方向の隙間を形成できる。隣の膜体300との境界部分の隙間は、フレーム310の先端部分に限らず、途中部分に形成することも許容され、第1連結部材610(図5参照)で膜体300の先端側の移動が制限されていてもフレーム310の途中部分(例えば長さ方向の中間部分など)に隙間を形成することができる。
【0048】
日除け装置100が風を受けた場合、各膜体300に対しては、向きや大きさが異なる力が作用する。この力の作用により各々の膜体300を構成するフレーム310には異なる向きや大きさの力が作用し、その分、膜体300ごとに上下方向の移動量が異なることとなる。
【0049】
膜体300ごとの移動量が相違することで、1つの膜体300のフレーム310が、隣に位置する他の膜体300のフレーム310に対して上下方向側へ移動する量が異なることとなる。これにより図4(b)に示すように隣り合う2つの膜体300の境界部分に上下方向の段差が生じ、その段差によって略同一方向側を向いて並んで配置されていた2本のフレーム310の間に隙間を形成することができる。膜体300の境界部分の隙間は風が通過可能となるので、フレーム構造を利用した対風機能とすることができる。なお膜体300のフレーム310は、隣の膜体300のフレーム310に対して水平方向にも部分的に離間することができるので、風の影響を受けて膜体300の境界部分に水平方向の隙間を形成することもできる。
【0050】
なお、詳細は後述するが、フレーム310は、略鉛直面内において回動可能に主幹200に取り付けられる。このため、各膜体300を、他の膜体300に対して先端側から支軸側までの全区間において上下方向側に移動可能に構成することもできる。この場合には、強風を受けたとき、隣り合う2つの膜体300の境界部分において、上下方向の段差が大きく生じるような移動を可能とし、2つの膜体300の先端側に幅広の隙間を形成することもできる。この隙間によっても風を通過させることができ、日除け装置100の対風機能とすることができる。
【0051】
5.膜体の連結構造
次に、図5及び図6を参照して、複数のグループに区分した膜体300の連結構造について説明する。図5は第1グループの膜体300(膜体300A)と第2グループの膜体300(膜体300B)を示す平面図であり、図6(a)は傾斜状態の日除け装置100を模式的に示す平面図、図6(b)は傾斜状態の日除け装置100を模式的に示す正面図である。
【0052】
日除け装置100は、第1連結部材610と第2連結部材620を用いた膜体300どうしを連結する構造を備え、1つの膜体300や一部の膜体300が他の膜体300と大きく離れた位置まで移動できないようにすることで一体感のある見栄えを実現している。また複数のグループに膜体300を区分し、各々のグループ毎に第1連結部材610と第2連結部材620で膜体300を連結する構造とすることで、展開状態から膜体300の先端側が上方側へ移動した傾斜状態においても統一感のある見栄えを実現している。
【0053】
以下においては、日除け装置100として、図5に示すように90度の角度区間に4個の膜体300を配置し、図示しないが360度の全周に16個の膜体300が配置される場合について説明する。16個の膜体300は8個ずつの第1グループと第2グループに区分することができ、各グループに属する膜体300どうしは、図5に示すように第1連結部材610と第2連結部材620で各々連結することができる。なお膜体300の全数は、16個に限らず、12個や24個などの他の数に設定してもよく、またグループの数も3以上に設定することもできるが、グループ数の倍数となるように膜体300の全数を設定することで各グループに属する膜体300の数を同一とすることができて好ましい。
【0054】
第1連結部材610と第2連結部材620は、各々の膜体300が円周方向に移動可能な範囲(角度)を制限する部材である。1つの膜体300(例えば膜体300A)は、別グループの膜体300(例えば膜体300B)を1つ挟んで近くに位置する他の膜体300(例えば膜体300A)によって円周方向への移動が制限される。以下において第1連結部材610の構成について主に説明し、第2連結部材620において共通する構成の説明は省略する。
【0055】
第1連結部材610は、展開状態において略直線状となってピンと張った長さに設定し、膜体300の先端側に張力を付与することができる。この張力はフレーム310の先端側が湾曲した状態から元の直線状に復元しようとする力によって生成することができる。展開状態での膜体300の張力は、仮に水平面に複数の膜体300を並べて拡げた場合では第1連結部材610の長さが不足するようにして生じさせることができ、張力の強度(大きさ)は不足する長さの長短により調整できる。これにより1つの膜体300や一部の膜体300が風の影響を受けても、他の膜体300から大きく離れた位置まで移動することがなくなり、一体感のある見栄えの日除け装置100とすることができる。
【0056】
第1グループの膜体300Aと第2グループの膜体300Bは、主幹200を中心とした円周方向(図5の時計回り方向)に交互に配置することができる。この場合、第1グループの膜体300Aどうしはフレーム310の先端側にて円周方向に直線状に連続する第1連結部材610によって連結する。第2グループの膜体300Bどうしも第1グループと同様に第2連結部材620によって連結する。第1連結部材610と第2連結部材620には、金属製のワイヤや紐、ロープ等を用いることができる。
【0057】
第1連結部材610と第2連結部材620は、いずれも膜体300の上側を経由し、両端の固定点を、膜体300の端部に固定することができる。固定方法としては、例えば膜体300の膜材400の部分に環状リングを取り付け、開閉できるゲート構造のついた金属リング(例えばカラビナ)で固定することができる。また、第1連結部材610を、第2連結部材620より先端側や支柱側にズレて配置することもでき、これにより第1連結部材610と第2連結部材620の取付作業を容易化できる。第1連結部材610と第2連結部材620は、膜体300の上側を経由させることで、下方に膜体300の一部(膜材400)が垂下して膜体300が折り畳まれるような変形を許容することができて好ましい。また1つの膜体300に対して支軸側と先端側との複数箇所に第1連結部材610や第2連結部材620を設けてもよい。
【0058】
次に展開状態に対してフレーム310が上昇することで傾斜状態となった場合における膜体300の連結構造について図6を主に参照して説明する。なお図6(a)及び(b)には第1グループの膜体300Aと第1連結部材610の連結構造を模式的に示し、第2グループの膜体300Bと第2連結部材620の図示は省略している。また、フレーム310が水平より上側に傾斜した角度(以下、「仰角」という。)を45度とした傾斜状態の膜体300(膜体300A)を実線で示し、展開状態の膜体300を一点鎖線で示している。
【0059】
日除け装置100は、傾斜状態においては、展開状態での第1連結部材610と第2連結部材620による膜体300どうしの移動制限やフレーム310の移動制限を解除できるものとしている。図6(a)及び(b)には、第1連結部材610による展開状態での第1グループの膜体300Aどうしの移動制限が解除されることで、膜体300がヤシの葉のように斜め上方に広がる樹木状の形態をとる例を示している。この樹木状の形態を実現するため、日除け装置100は、円周側回動機構710と折畳推進機構720を備えたものとすることができる。
【0060】
円周側回動機構710は、支軸側を中心にしてフレーム310を円周方向に回動可能に支持するための機構である。円周側回動機構710の構成例は図8を参照して後述するが、円周側回動機構710を設けることにより、図6(a)の右側に示すように、1つの膜体300Aに取り付けられる2本のフレーム310がなす角度(以下、「フレーム間角度AF」という。)を、展開状態における角度(展開膜体角度AE)と、傾斜状態における角度とで異ならせることができる。円周側回動機構710は膜体300を構成する2本のフレーム310の両方に設けてもよいし、片方のフレーム310のみに設けてもよい。
【0061】
傾斜状態においては、図6(b)に示すように各々の膜体300Aはフレーム310により支えられる円周方向の両側部が上側に位置し、中央部分が自重により下方に垂下した状態をとる。このため展開状態で円周方向に展張されていた各膜体300は、側面視において支軸側が先細りした略三角形状となるようにして折り畳まれる。展開状態から傾斜状態へ移行するようにフレーム310の仰角を拡大することで、膜体300は自然と2つ折りに折り畳まれるのである。
【0062】
折畳推進機構720は、膜体300を積極的に折り畳むための機構である。折畳推進機構720の構成例は図7を参照して後述するが、第1連結部材610と第2連結部材620により移動が制限される範囲内でフレーム間角度AFが最小となるよう、2本のフレーム310が互いに近づく方向への引張力が、折畳推進機構720によって膜体300に付与される。
【0063】
傾斜状態にて、折畳推進機構720によりフレーム間角度AFを最小にできると、図6(a)の右側に実線で示す膜体300Aのように円周方向において隣に位置する膜体300Bとの隙間幅(図6(a)の長さDTの隙間部分)を最大に拡大することができる。膜体300どうしの隙間幅は対風機能として利用でき、展開状態のままでは日除け装置100の破損が心配な強風の状況では傾斜状態に切り替えることでも対風機能を高めて安全性を高めることができる。
【0064】
ここで傾斜状態は、図6(b)に示すように第1グループの膜体300Aが主幹200を中心として展開状態から斜め上方側に傾斜するように移行した状態である。図6(a)に示すように平面視において、第1連結部材610は、展開状態(一点鎖線の状態)よりも傾斜状態(実線の状態)において主幹200の側に接近する。このため、展開状態では第1連結部材610がピンと張られていることで膜体300Aどうしやフレーム310の相対移動が制限されていたものの、仰角が発生すると、第1連結部材610の円周方向の長さ(周長)は半径の減少により周長が短くなるため弛みを生じ、この弛み分、膜体300どうしの移動制限やフレーム310の移動制限が解除され、膜体300Aやフレーム310の移動が許容される。
【0065】
展開状態で直線状となるよう設定した第1連結部材610は、傾斜状態では、展開膜体角度AEの角度範囲内から円周方向の外側に一部分(図の長さDTの部分)が突出することのできる長さ(以下、「突出可能長さDT」という。)に設定されていることとなる。突出可能長さDTが設定される傾斜状態では、その長さ分、第1連結部材610によって第1グループの膜体300Aどうしの円周方向においての移動制限としては、展開状態での移動制限(例えば1cm程度の僅かな移動のみを許容する移動制限)は解除されることとなって、展開状態より膜体300Aやフレーム310の移動が許容されるのである。突出可能長さDTは、展開状態から仰角が拡大されるにつれて長くなって、仰角を略60度としたときに第1連結部材610の長さと概ね一致する(図7(d)参照)。
【0066】
突出可能長さDTの長さ分は、折畳推進機構720を利用して膜体300を積極的に折り畳むことができる。図6(a)及び(b)には仰角45度の状況で折畳推進機構720によってフレーム間角度AFが最小となるように折り畳まれた膜体300Aを実線で模式的に示している。傾斜状態において折り畳まれた膜材400の形態は、あたかもヤシの葉のように円周方向に断続的に膜材400が配列され、先端側が斜め上方に連続した形態をとる。風が吹けば膜材400の垂下した中央部分が揺らいで、あたかもヤシの葉が揺らぐような形態をとる。すなわち傾斜状態とすることにより多数の葉を模した膜材400が揺らぐ樹木状の日除け装置100とすることができる。
【0067】
6.膜体の折畳推進機構
次に、折畳推進機構720の構造例について説明する。図7は折畳推進機構720の説明図であり、図7(a)は折畳推進機構720を模式的に示す断面図、図7(b)から図7(d)は平面視におけるフレーム310と上弦策材520を示している。なお図7(b)は展開状態、図7(c)は仰角45度の傾斜状態、図7(d)は仰角60度の傾斜状態を示し、図7(e)は別形態の上弦策材540を示している。
【0068】
折畳推進機構720は、重錘体721と上弦策材520を備えたものとすることができる。上弦策材520は、膜体300の上側に配策される策材であり、例えば金属製のワイヤや紐、ロープなどを用いて構成することができる。
【0069】
上弦策材520は、第1区間521と第2区間522を含み、第1区間521により1つの膜体300を構成する2つのフレーム310が連結され、第1区間521と主幹200とが第2区間522によって連結される。
【0070】
第1区間521は、1つの膜体300(図7(b)の上下に並んで示した2つの膜体300のうち下側の膜体300)に対して、一端(図7(b)の接続点523)が一方のフレーム310に接続固定され、他端(図7(b)の接続点524)が他方のフレーム310に接続固定される。フレーム310の軸方向(径方向)に対しては、フレーム310の両端(支柱側端と先端側端)から離れた中間位置に接続点523,524が設定される。第1区間521の略中間に位置する接続点525には、第2区間522の一端(図7(b)の右端)が接続される。なお上弦策材520や折畳推進機構720は、展開状態で日陰部分を生成する膜体300全体の大きさを異ならせた複数種類の日除け装置100に対して共通の部品を使用することができる。例えば日陰円の大きさを半径6メートルと半径4メートルの2種類で設定する場合、フレーム310の径方向において支柱側から2メートル程度の位置に接続点523,524を設定することでフレーム310をバランス良く移動することができて好ましい。
【0071】
上弦策材520の第2区間522における支軸側には、重錘体721が設けられる。重錘体721には、主幹200の蓋状ガイド231によって鉛直下方へ向かうように配索された上弦策材520の一端が接続される。重錘体721は、上弦策材520に対して第2区間522を支軸側へ引き込む(引張する)張力を生じさせる引張手段を構成する。展開状態においては、重錘体721による張力に抵抗するように第1連結部材610と第2連結部材620(図5参照)が膜体300の移動を制限することで折畳推進機構720は機能せず、膜体300は展開膜体角度AEに展張された状態をとる。
【0072】
重錘体721による第2区間522を支軸側へ引張する張力が第1区間521に対して作用すると、上弦策材520の第1区間521が、図7(c)に示すように「く」の字状に屈曲し、その屈曲した分、接続点523が接続点524に接近するようにフレーム310が移動する。すなわち第1区間521の両端側に位置する2つの接続点523,524の距離を接近させるように、第2区間522からの張力が第1区間521に作用するのである。この結果、1つの膜体300Aを構成する2本のフレーム310が接近することとなって膜体300が折り畳まれる。
【0073】
傾斜状態においては仰角が大きくなるほど突出可能長さDTが長くなる。図7(c)に示すように仰角45度の状況で、上弦策材520が取り付けられた2本のフレーム310が展開状態より接近する。図7(d)に示すように仰角が略60度となると2本のフレーム310が更に接近して接触し、概ね同一方向側を向いて並んだ状態をとる。仰角60度を超えて膜体300(フレーム310)が起立している状況では、重錘体721と上弦策材520による折畳推進機構720によって膜体300が完全に折り畳まれた状態が維持される。
【0074】
また第1区間521の略中間に位置する接続点525として、第1区間521の中間から僅かにずらした位置(例えば図8の子フレーム312の側に10mm程度ずらした位置)に設定してもよく、この場合、フレーム310までの距離が短く設定された片方のフレーム310(例えば図8の子フレーム312)を他方のフレーム310(例えば図8の親フレーム311)に優先して上方側へ移動させることができる。2本のフレーム310を傾斜状態から更に直立させて主幹200の内側へと膜体300を収容する場合、径方向に2つのフレーム310がズレる(例えば、親フレーム311に対して20mm内側に子フレーム312が位置する)ようにして直立することとなるため、フレーム310を支持する支持体220(図9参照)を小型に設定し易くすることができ、主幹200を小型化することができる。なお主幹200へ膜体300を収容する構造については図9を参照して後述する。また主幹200の径を少し大きく設定したり、フレーム310を細径とすることで、全てのフレーム310を同一円周上に配置することもでき、この場合は、第1区間521の真中間点に接続点525を設定すればよい。
【0075】
また第2区間522を支軸側へ引張する張力を生じさせる引張手段は、重錘体721に限らず、他の機構により構成することもでき、例えばモータで上弦策材520を回転させて巻き取る駆動機構を用いて構成してもよい。
【0076】
また図7(e)に示すように、上記した上弦策材520とは別形態の上弦策材540を利用することもできる。上弦策材540は、第1区間541を展開状態において直線状となるように配索し、第1区間541の一端(図7(e)の接続点543)はフレーム310に接続固定する。第1区間541の他端(図7(e)の通過点544)には、環状体(例えば膜材400に環状リング)を取り付け、上弦策材540が通過点544の内側を通過するように構成する。そして第1区間541と第2区間542とが連続するように構成することで、第2区間542を支柱側に引張する張力が、第1区間541の両端側に位置する接続点543と通過点544との距離を接近させるように作用する。よって上弦策材540を用いた折畳推進機構720でも、2本のフレーム310を積極的に接近させて膜材400を折り畳むことができる。
【0077】
7.フレームの支持機構
次に図8を参照してフレーム310の支持機構について説明する。図8は、フレーム310の支持機構を模式的に示す平面図である。なお図8に示す4つの膜体300のうち一番下側に示した1つの膜体300のフレーム310については、突出可能長さDTの長さ分、フレーム310が回動して膜材400が折り畳まれた状態を示している。
【0078】
1つの膜体300は、円周方向の両端部分に2本のフレーム310が位置するようにして構成することができ、2本のフレーム310のいずれか又は両方が、円周側回動機構710を有するものとすることができる。図8には、1つの膜体300が、円周側回動機構710を有しないフレーム310(以下、「親フレーム311」という。)と、円周側回動機構710を有するフレーム310(以下、「子フレーム312」という。)を備えた例を示している。
【0079】
親フレーム311と子フレーム312は支軸側にて略鉛直面(鉛直面を含む)内での回動を可能とする軸支構造によって支持される。例えば水平方向を回動中心軸とするピン結合によって主幹200に設けられる支持体220に連結される。
【0080】
子フレーム312は、先端側を円周方向側に回動させることのできる円周側回動機構710を有している。円周側回動機構710は、子フレーム312が軸支される軸穴部分をリング状に構成し、軸穴の内径をピン外径に対して隙間を有するように設定した機構により構成できる。なお円周側回動機構710は、別の機構によって構成することもでき、例えば、子フレーム312の支軸側部分において、支柱側とと先端側との2分割構造にした構造部分を設けて、支軸ピンを中心として子フレーム312の先端側を円周方向側に回動可能に連結する機構によって構成してもよい。子フレーム312の支軸側部分に、円周方向へのフレーム310の先端側の移動を許容する弾性変形可能な部位を設けて構成することもでき、例えば鉛直面内に位置するような板バネを子フレーム312の支軸側部分に設けて円周側回動機構710を構成してもよい。
【0081】
8.主幹と動作機構
次に、日除け装置100の主幹200と動作機構210の構成について図9を参照して説明する。図9(a)は主幹200を模式的に示す平面図、図9(b)は展開状態における主幹200の動作機構210を示す鉛直断面図、図9(c)は収容状態における主幹200の動作機構210を示す鉛直断面図である。なお図9(b)及び(c)には動作機構210に関する構成を模式的に示し、また上下方向における途中部分の図示を省略している。
【0082】
本願発明の日除け装置100は、支持体220と主幹200を備えたものとすることができる。また主幹200は、内軸材230と外筒材240、動作機構210、フレーム支持部250を含むものとすることができる。
【0083】
支持体220には、複数の膜体300のフレーム310が、略鉛直面(鉛直面を含む)内での回動を可能とするようにして取り付けられる。支持体220によって複数の膜体300が一体化され、この支持体220と、主幹200の上端部分(詳細には外筒材240の上端部分とフレーム支持部250)の相対的な高さ位置を調整することで、展開状態、傾斜状態および収容状態が切り替えられる。支持体220を、主幹200の上端部分に対して最大限に下側に位置させることで主幹200の内部に膜体300が完全に収容された収容状態(図9(c)の状態)となる。
【0084】
ここで、展開状態、傾斜状態および収容状態への切替えは、主幹200の上端部分に対して支持体220を相対的に上下方向側に移動させれば実現でき、図9には支持体220を上下動させる支持体動作機構211と、主幹200の上端部分を上下動させる外筒材動作機構212を備えた例を示している。なお支持体220と主幹200の上端部分のうち、いずれか一方だけを上下動させる動作機構210であっても各状態を切り替えることができるが、両方を上下動させることで、展開状態においては水平方向に展張される膜体300の高さを低く設定可能とし、且つ収容状態では膜体300を主幹200の内部に完全に収容することができる。
【0085】
支持体220は、図9(a)に示すように平面視において多数のフレーム310を円周方向に配列させることが可能な環状に形成される。支持体220は、図9(b)に示すように内軸材230に接触して支持される環状の本体部221と、本体部221から上方に延びて上端部分にフレーム310が取り付けられる軸支部222を備えたものとすることができる。図9(a)には、親フレーム311と子フレーム312が直径の異なる2つの同心円状に別々に配列される例を示しているが、1つの円状に全てのフレーム310を配列することもできるし、3つ以上の同心円状にフレーム310を配列することもできる。
【0086】
内軸材230は、主幹200の中央に位置して鉛直方向に連続する軸材により構成され、ボールねじを用いた動作機構210(支持体動作機構211)によって支持体220が上下に移動可能に支持される。支持体動作機構211は、内軸材230と支持体220とモータMTとを組み合わせて構成することができる。内軸材230の外面には雄ネジが上下方向の広範囲に螺設され、内軸材230が接触する支持体220の内周部分には雌ネジが螺設される。支持体220には、内軸材230の周りを回転しないようにするための回転防止機構が設けられ、例えば支持体220の外面と内管244の内面に設けられる回転防止リブ223により構成でき、突出部分を溝部分の内側に位置させることで実現できる。内軸材230の下側にはモータMTが設けられ、モータMTの駆動力で内軸材230が回動することによって、回動方向に対応した上方または下方へと支持体220が移動する。
【0087】
外筒材240は、内軸材230と支持体220、膜体300を内側に収容可能な筒状の部材である。外筒材240は、収容状態において、膜体300の全部を内側に収容するのに十分な上下長さに設定することが好ましいが、上方側に膜体300の一部が突出するような上下長さに設定することもできる。
【0088】
図9(b)に示すように、外筒材240は、可動外筒体241と化粧カバー242、内管244を含むものとすることができる。可動外筒体241と化粧カバー242、内管244は、いずれも縦長円筒状の部材であり、内軸材230が中心側に位置するようにして同心円状に配置される。化粧カバー242は外側に設置され、その内側に可動外筒体241が設置され、更に内側に内管244が設置される。収容状態をとるように可動外筒体241が上方側へ移動しても、化粧カバー242と内管244が元の位置に静止する。これにより外筒材240を、展開状態よりも収容状態の方が縦長の筒状体とすることができる。なお外筒材240は、化粧カバー242を省略して構成することもできるし、可動外筒体241を省略することもできる。例えば、展開状態の膜体300の高さを収納時の頂部の高さレベルに設定する場合、フレーム支持部250を支えられる高さままで内管244を上方に伸長して構成すればよい。
【0089】
化粧カバー242は、可動外筒体241が上昇したときに動作機構210の一部(例えばボールねじの支軸243など)が外部に露出しないようにする部材である。化粧カバー242は必ずしも円筒状に構成する必要はなく、可動外筒体241が最下部に位置した通常時は下部に畳まれていて、可動外筒体241が上昇するにつれてその下部をカバーできるような蛇腹管でもよい。またベース体260の周り部分を、人が腰掛け可能なベンチにして高めの背もたれを配すこともでき、この場合はベース体260の上側に露出される機構部分だけを隠す高さの函状体であってもよい。
【0090】
可動外筒体241は1つのみでなく複数を用いて構成することもでき、図9(c)には、2つの可動外筒体241(上側可動外筒体241Aと下側可動外筒体241B)が上下に連なって移動することで、主幹200の高さを、展開状態に比べて収容状態が2倍以上に長く設定できる例を示している。上側可動外筒体241Aのみに上方側への駆動力を付与し、上側可動外筒体241Aが一定量上昇することで下側可動外筒体241Bの上部に接触し、その後は、上側可動外筒体241Aと下側可動外筒体241Bが一体となって上方へ移動するように構成できる。
【0091】
可動外筒体241は、ボールねじを用いた動作機構210(外筒材動作機構212)によって上下に移動可能に構成される。外筒材動作機構212は、上側可動外筒体241Aと支軸243とモータMTと内管244とを組み合わせて構成される。円周方向における複数箇所(図9には3箇所の場合を例示しているが、2箇所でもよい)に、外周面に雄ねじが設けられた支軸243が配置される。内管244は縦長筒状の部材であり、その外面には、上側可動外筒体241Aを上下方向に円滑に移動可能とするためのローラ245と、位置決めリブ246が設けられる。上側可動外筒体241Aの内周側の下端部には、支軸243の雄ネジ部分に螺合する雌ネジ部が内周に形成された連動部材247が取り付けられる。
【0092】
3つ或いは2つの支軸243の下側には、それぞれモータMTが設けられ、モータMTを制御し、モータMTの駆動力で3箇所或いは2箇所の支軸243を同期して回動させることにより、上側可動外筒体241AがモータMTの回動方向に対応した上方または下方へ移動する。この移動に際しては、内管244の外側に設けられるローラ245が可動外筒体241の内面側を支持し、内管244と可動外筒体241に設けられる位置決めリブ246が円周方向側における相対移動を制限する。これにより傾きが生じず安定した状態で上側可動外筒体241Aを上下方向に移動させることができる。なお支軸243の各々に対して必ずしもモータMTを別々に設ける必要はなく、ギヤ機構を用いて1つのモータMTの駆動力で複数の支軸243を回動させてもよい。
【0093】
動作機構210を構成するモータMTは、主幹200の下部に設けられる箱状のベース体260の内部に収容されている。ベース体260は、金属や樹脂を用いて円筒状に形成することができる。ベース体260によって日除け装置100を一体化することができ、日除け装置100を容易に搬送可能とすることができる。なお、ベース体260には、図1に示すように地面に接する部分を大径に構成した土台部分を含めてもよい。
【0094】
フレーム支持部250は、外筒材240の上部に設けられ、図9(b)に示すようにフレーム310の下側部分に接触することでフレーム310を支持する部位である。フレーム支持部250は、全てのフレーム310の下側に接触可能なリング状の部材を用いて構成され、展開状態や傾斜状態においてフレーム310の下側に接触することで、各状態に対応して設定した角度に全てのフレーム310が傾斜した状態が維持される。
【0095】
なおフレーム支持部250は、各状態に対応した角度にフレーム310を支持できればよく、リング状の部材に限らず、他の形状にして構成してもよい。またフレーム支持部250におけるフレーム310の接触部分に回転ローラを設けてもよい。図9にはフレーム支持部250として、高さと内径を異ならせた2つのリング状の部材を用いた例を示しており、詳細は図12を参照して後述する。
【0096】
日除け装置100は、動作機構210の動作を制御することにより展開状態と傾斜状態、収容状態を切り替えることができる。展開状態とする場合は、図9(b)に示すように支持体220の上端部分(軸支部222の一部)が外筒材240の上端部より上方側に位置するように、支持体220と、外筒材240(詳細には、上側可動外筒体241A)の位置を制御する。展開状態においては、フレーム310の下側部分がフレーム支持部250に接触して支持され、各フレーム310の先端側の下方側への移動が制限される。
【0097】
傾斜状態とする場合は、フレーム支持部250にフレーム310が支持されたままで外筒材240に対して支持体220を下方側へ移動する。これによりフレーム310が徐々に傾斜することとなり、フレーム310が傾斜した傾斜状態とすることができる。
【0098】
収容状態とする場合は、傾斜状態に対して、上側可動外筒体241Aを上方へ移動し、支持体220は更に下方側へ移動するように制御する。これにより、図9(c)に示すように外筒材240にフレーム310の全体が収容され、膜体300も外筒材240に収容された収容状態とすることができる。
【0099】
なお日除け装置100は、動作機構210を制御するための中央処理装置(CPU)や制御プログラム、シーケンサーなどを用いた制御装置を含めて構成してもよいし、動作機構210を動作させるためのバッテリー電源を備えてもよく、これらはベース体260に収容してもよい。また動作機構210は、ボールねじを用いた機構に限らず、チェーン機構などの他の機構を用いてもよいし、ボールねじの数やモータMTの数などの仕様についても、別の仕様としてもよい。また日除け装置100に風力発電機構や太陽光発電機構を設けて電源の一部として利用してもよい。
【0100】
支持体220や内軸材230、外筒材240などの各部位は、膜体300の数や大きさ等に応じて必要な強度を備える材料やサイズといった仕様を決定すればよく、金属や樹脂を用いて構成することができる。また日除け装置100の大きさとしては、例えば膜体300は展開状態で半径4メートルから6メートル程度となるサイズとし、主幹200の外径は30センチから40センチ程度、主幹200の高さは展開状態で3メートルから4メートル程度、収容状態では6メートルから7メートル程度のサイズとすることができる。
【0101】
9.上弦策材の主幹側引張構造
次に上弦策材520を主幹200の側に引張する構造例について、図10を参照して説明する。図10(a)は仰角20度の傾斜状態におけるフレーム310の支持構造を模式的に示す鉛直断面図、図10(b)は仰角70度の傾斜状態におけるフレーム310の支持構造を模式的に示す鉛直断面図である。
【0102】
上弦策材520は、傾斜状態において支軸側へ引張する張力を生じさせることで膜体300を積極的に折り畳む折畳推進機構720を構成する部材である。上弦策材520は、主幹200の内軸材230の内側に収容された重錘体721に接続されている。上弦策材520が膜体300の数分ある場合は、全ての膜体300に設けられる上弦策材520が重錘体721に接続される。全ての膜体300は略同一の仰角で上昇するもので、この上昇過程において略同一の角度分、膜体300が折り畳まれるように重錘体721による引張力が作用する。よって膜体300を収容する場合や展開させる場合において全体として統一感のある見栄えとすることができる。
【0103】
内軸材230は円筒状の部材であり、鉛直方向に連続した中空状の内部空間が中央に形成され、その内部空間内に重錘体721が収容される。内軸材230の上部には、重錘体721の上側が接触可能な蓋状ガイド231が取り付けられる。
【0104】
展開状態からフレーム310の先端側が上昇すると、重錘体721が下方に下がり始める。図10(b)に示すように仰角70度では、蓋状ガイド231から下方に離間した所定位置まで重錘体721が下降する。一定範囲の仰角(例えば仰角0度から仰角60度)の区間は、重錘体721と上弦策材520による折畳推進機構720によって膜体300が積極的に折り畳まれる区間(折畳区間)であり、折畳区間では重錘体721の重量分だけで上弦策材520を引張する。これにより膜体300を折り畳むための引張力を過度に高めず、予め設定した適切な引張力によって膜体300を折り畳むことができる。
【0105】
直立状態に近い仰角(例えば仰角70度程度)よりもフレーム310が起立し、収容状態(図の一点鎖線で示したフレーム310と上弦策材520の位置)に近くなるとフレーム310と上弦策材520が略鉛直方向を向いて並んだ状態をとる。この状態でも、フレーム310には重錘体721の負荷が過度にかからず、膜体300を円滑に主幹200の内側へと収容でき、また展開開始の際も主幹200の内側から膜体300を容易に押し出すことができる。
【0106】
なお仰角が略90度となった後、膜体300の下部が内軸材230の周りに少し巻き付けられるタイミングで上弦策材520が水平になる位置(例えばフレーム310の回転中心から先端側へ約2mの位置)に、上弦策材520の取り付け位置を設定してもよく、これによりフレーム310を強い力で中央に引き寄せることができる。また上弦策材520の第1区間521(図7参照)の屈曲部分は内軸材230の内側に引き込まれないよう、内軸材230の上端部分(蓋状ガイド231)より少し上方(例えば約40cm上方)の高さ位置から上弦策材520を引き下げてもよい。その後、支持体220を下降し、且つ外筒材240を上昇させながら花弁状回動体810(図12参照)を回転させると、内軸材230の周りに膜材400をスムーズに巻き付けることができる。花弁状回動体810を用いた膜体巻付機構730の詳細は図12を参照して後述する。
【0107】
10.下弦策材を用いた展開促進機構
次に、下弦策材510を用いた膜体300(フレーム310)の展開促進機構について、図11を参照して説明する。図11(a)は展開状態への移行を開始する前のフレーム310と下弦策材510を模式的に示す鉛直断面図、図11(b)は展開状態への移行が促進されたフレーム310と下弦策材510を模式的に示す鉛直断面図である。なお図11(b)には、一点鎖線で示すフレーム310により展開状態としてフレーム310の先端側が5度下側を向く例を示しているが、これに限らず展開状態でのフレーム310の角度を別角度(例えば水平方向を向く角度)に設定してもよい。
【0108】
日除け装置100は、下弦取付体270と取付体動作機構280を備えたものとすることができる。下弦取付体270は、下弦策材510の支軸側が取り付けられる部材である。下弦取付体270に対して下弦策材510は、図11(a)に示すように収容状態における起立した姿勢のフレーム310よりも主幹200の中心軸CXから離間した径方向外側に取り付けられる。下弦策材510は支持体220に直接取り付けてもよいが、下弦取付体270を設けることで収容状態から展開状態への移行を促進する展開促進機構を付加することができる。
【0109】
取付体動作機構280は、支持体220の動作範囲のうち上側の一部区間を除いて支持体220とともに下弦取付体270を上下方向側に移動する機構である。取付体動作機構280は、支持体220の支持軸224とストッパ部232、付勢バネ(図示せず)を含めたものとすることができる。
【0110】
下弦取付体270は、付勢バネによって支持体220に対して上方側へ付勢された状態にして支持体220の支持軸224に取り付けられる。下弦取付体270は、支持体220の一部(軸支部222の下端)に付勢バネで接触した状態(図11(a)の状態)をとることができ、その状態では支持体220とともに下弦取付体270が上下方向側に移動する。支持体220が最下部に位置する収容状態から、下弦取付体270がストッパ部232に当接するまで上昇する区間において、下弦取付体270が支持体220とともに移動する。支持体220が上方側へ移動することで下弦取付体270がストッパ部232に当接すると(図11(a)の状態)、それ以降は下弦取付体270は上方側へ移動できず、支持体220だけが更に上方側へと移動する。なお支持軸224は支持体220の本体部221と軸支部222とを接続する軸材により構成することができ、ストッパ部232は内軸材230の外周を囲う筒状体を蓋状ガイド231の下側に固定して構成することができる。また軸支部222と支持軸224との間に円環状のプレート225を設け、プレート225の下側に支持軸224を接続して構成することができ、支持軸224は円周方向に3本程度の設定とすることが好ましい。
【0111】
展開促進機構は、収容状態から展開状態へ移行させるために支持体220がフレーム310を上方側へと押し出すように移動した場合に、起立していたフレーム310が展開状態に向けて傾倒していくことを促進する機構である。図11(a)に示すようにフレーム310が鉛直上方を向いたまま外筒材240から上方側へと押し出されても、フレーム310が倒れて展開状態へと移行する径方向外側への力はフレーム310や膜体300に対して作用しない。このため支持体220が上方側へ移動する過程においてはフレーム310は起立した状態(図11(a)の状態)を維持しようとする。
【0112】
展開促進機構を備えた本願発明の日除け装置100によれば、収容状態から展開状態へと移行する場合、下弦取付体270がストッパ部232に当接するまでの区間では、外筒材240に対して支持体220と下弦取付体270がともに上方側へと移動する。その後、図11(a)に示すように下弦取付体270がストッパ部232に当接して支持体220より先に停止すると、フレーム310が取り付けられた支持体220だけが上方側へ移動する。
【0113】
下弦取付体270が停止すると下弦策材510の下端は上方側へ移動できなくなり、下弦策材510によりフレーム310の先端側の移動は制限されることとなって、フレーム310が次第に弾性変形する。図11(b)に示すようにフレーム310の先端側には主幹200の中心軸CXから離間する径方向外側へ湾曲させる変形力が付与される。
【0114】
フレーム310の先端側が径方向外側へ変形すると、その変形分によって径方向外側へフレーム310が傾倒しようとするトルクが増大する。フレーム310の先端側が径方向外側へ変形することで、フレーム310の回転支点と先端側を引張する作用点がズレることとなるためである。フレーム310が傾倒しようとするトルクが増大すると、フレーム310が回転支点を中心に傾倒し易くなって、展開状態への移行が促進される。
【0115】
展開状態への移行が開始された後は、膜体300の重量がフレーム310に作用し、フレーム支持部250に接触することとなる位置までフレーム310が傾倒する。このため図11(b)に示す展開促進機構が機能した後の支持体220の高さ位置は展開状態(図の一点鎖線)における高さ位置として設定でき、これにより展開状態へ確実に移行させることのできる日除け装置100を提供することができる。また対風機能を備えるために用いた下弦策材510を、展開促進機構としても利用するため、コスト増を抑えつつ展開促進機構を付加することができる。
【0116】
なお下弦取付体270とストッパ部232との当接位置によって、展開状態への移行開始を促進するタイミングや強度を調整できる。また重錘体721はフレーム310の傾倒速度を低減するブレーキとしても利用でき、重錘体721の重量を調整したり重錘体721の移動可能速度をダンパーにより調整することでブレーキの強度を調整することもできる。
【0117】
11.膜体巻付機構
次に、図12を参照して膜体巻付機構730について説明する。図12(a)は花弁状回動体810を示す平面図、図12(b)は収容状態への移行途中における花弁状回動体810と膜体300を模式的に示す鉛直断面図である。
【0118】
日除け装置100は、膜体巻付機構730を備えたものとすることができる。膜体巻付機構730は、傾斜状態から収容状態へ移行して主幹200の内側に膜体300が収容されるときに、膜材400が内軸材230の外側に巻き付けられた状態とする機構である。膜体巻付機構730は、花弁状回動体810と駆動機構820を用いて構成することができる。
【0119】
花弁状回動体810は、フレーム支持部250と突出部811を含むものとすることができる。フレーム支持部250は、リング状に成形した棒状体を利用することができ、複数段(例えば上下2段)にして下側が縮小された形状に構成できる。突出部811は、図12(a)に示すように、主幹200の中心軸CXから径方向に放射状に配列された複数の弧状体812の一部により構成できる。突出部811は、フレーム支持部250のうち展開状態においてフレーム310の下側部分に接触する部分(展開時接触部251)より下側に設けることができ、膜体300が外筒材240に収容される過程において膜材400に接触可能な位置まで主幹200の中心側に突出する仕様とされる。
【0120】
弧状体812は、図12(b)に示すように2つのフレーム支持部250に接続され、多数の弧状体812とフレーム支持部250とが一体化されている。2つのフレーム支持部250と弧状体812によって、花弁状回動体810は、上方側の環状部分が大きく開口し、下側にいくに従い次第に内径が縮小される花弁状に形成することができる。弧状体812は、展開状態においてフレーム310からズレた位置に配置されるように構成数と配置位置が設定される。なお弧状体812の数は、膜体300の数と同数に設定し、膜体300を構成するフレーム310(例えば、図8の親フレーム311)が円周方向に移動しないように円周方向においてフレーム310と弧状体812の一部が接触可能な配置とすることもでき、これにより各フレーム310の根元部分を安定的に支持できて好ましい。
【0121】
フレーム支持部250と弧状体812は、膜体300を支持するのに十分な強度を有するように材料とサイズを選定する。例えばステンレス棒を用いて構成してもよく、弧状体812はフレーム310と衝突しにくいようにフレーム支持部250より細径のステンレス棒を用いてもよい。
【0122】
花弁状回動体810は、環状のベアリング813を介して外筒材240の上に取り付けられ、外筒材240に対して円周方向に回動可能に支持される。また花弁状回動体810の下部には、駆動機構820の駆動力を入力する入力部814(例えば、ギヤ)が一体化される。
【0123】
駆動機構820は、花弁状回動体810を回動させる駆動力を出力する機構であり、例えば動力源としてのモータとギヤを用いて構成することができる。駆動機構820のギヤを花弁状回動体810の入力部814に噛合することで、駆動機構820により花弁状回動体810を回動させることができる。
【0124】
外筒材240に膜体300が収容される場合においては、駆動機構820の動作を制御して花弁状回動体810を回動させる。突出部811が膜材400に接触したまま花弁状回動体810が回動すると、その回動動作によって円周方向に突出部811が回動し、膜材400の弛緩した部分が突出部811に押されていく。これにより膜材400の弛緩した部分は内軸材230の外側に巻き付けられることとなるので、膜体巻付機構730を用いることで、膜体300を整然とした状態にして主幹200の内側に収容することができる。
【0125】
なお膜体巻付機構730は、必ずしもフレーム支持部250を含むものとする必要はなく、フレーム支持部250と、突出部811を形成する回動体とを別部品により構成し、回動体を駆動機構820により回動させて膜体巻付機構730を構成してもよい。また突出部811は、フレーム310の下側部分を支持するフレーム支持部250が複数箇所(図8には2カ所)に設けられる場合において、それらの全てより下側に設ける必要はなく、展開状態においてフレーム310の下側部分に接触する展開時接触部251より下側にあればよく、突出部811より下側にもフレーム支持部250を設けて構成することもできる。また駆動機構820の電源は、駆動機構820を収容する筐体にバッテリー電源をまとめて収容してもよいし、日除け装置100の下部に設けられるベース体260(図1参照)からケーブルを介して入力してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本願発明の日除け装置は、屋外のイベントでの利用に限らず、公園や学校など様々な場所や状況で利用することができる。本願発明が、熱中症対策として期待できるだけでなく、利用者の心を落ち着かせる印象を与えうることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0127】
100 本願発明の日除け装置
200 (日除け装置の)主幹
210 (主幹の)動作機構
211 (主幹の)支持体動作機構
212 (主幹の)外筒材動作機構
220 (主幹の)支持体
221 (支持体の)本体部
222 (支持体の)軸支部
223 (支持体の)回転防止リブ
224 (支持体の)支持軸
225 (支持体の)プレート
230 (主幹の)内軸材
231 (主幹の)蓋状ガイド
232 (主幹の)ストッパ部
240 (主幹の)外筒材
241 (外筒材の)可動外筒体
241A (外筒材の)上側可動外筒体
241B (外筒材の)下側可動外筒体
242 (外筒材の)化粧カバー
243 (外筒材の)支軸
244 (外筒材の)内管
245 (外筒材の)ローラ
246 (外筒材の)位置決めリブ
250 (主幹の)フレーム支持部
251 (フレーム支持部の)展開時接触部
260 (主幹の)ベース体
270 (主幹の)下弦取付体
280 (主幹の)取付体動作機構
300 (日除け装置の)膜体
310 (膜体の)フレーム
311 (膜体の)親フレーム
312 (膜体の)子フレーム
400 (膜体の)膜材
410 (膜体の)内側膜材
411 (内側膜材の)外縁
420 (膜体の)中間膜材
421 (中間膜材の)外縁
422 (中間膜材の)基部
423 (中間膜材の)中間膜材突出部
423A (中間膜材の)中間突出部策材
430 (膜体の)外側膜材
431 (外側膜材の)外縁
432 (外側膜材の)基部
433 (外側膜材の)外側膜材突出部
433A (外側膜材の)外側突出部策材
434 (外側膜材の)中間
435,436 (外側膜材の)端部
510 (日除け装置の)下弦策材
520 (日除け装置の)上弦策材
521 (上弦策材の)第1区間
522 (上弦策材の)第2区間
523~525 (上弦策材の)接続点
540 (日除け装置の)別形態の上弦策材
541 (別形態の上弦策材の)第1区間
542 (別形態の上弦策材の)第2区間
543 (別形態の上弦策材の)接続点
544 (別形態の上弦策材の)通過点
610 (日除け装置の)第1連結部材
620 (日除け装置の)第2連結部材
710 (日除け装置の)円周側回動機構
720 (日除け装置の)折畳推進機構
721 (折畳推進機構の)重錘体
730 (日除け装置の)膜体巻付機構
810 (日除け装置の)花弁状回動体
811 (花弁状回動体の)突出部
812 (花弁状回動体の)弧状体
813 (花弁状回動体の)ベアリング
814 (花弁状回動体の)入力部
820 (花弁状回動体の)駆動機構
AE (膜体の)展開膜体角度
AF (膜体の)フレーム間角度
CX (主幹の)中心軸
MT (日除け装置の)モータ
PL (膜体の)鉛直面
VT (膜体の)通気孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12