(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155320
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G16Z 99/00 20190101AFI20241024BHJP
【FI】
G16Z99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069955
(22)【出願日】2023-04-21
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】319004663
【氏名又は名称】株式会社Smart119
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】山尾 恭生
(72)【発明者】
【氏名】栃木 洋子
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049DD01
5L049DD02
(57)【要約】
【課題】
救急隊の救急出動要請を予測し、その予測結果に基づいて適切な救急隊の配置をシミュレーション可能な情報処理システム1を提供することを目的とする。
【解決手段】
救急隊の出動を予測する情報処理システム1であって、情報処理システム1は、救急要請データの入力を受け付けて救急隊の救急出動要請の予測を行うための学習モデルを生成する学習処理部10と、救急出動要請の予測を行う日付と時間区分と、学習モデルとを用いて、救急出動要請を予測する予測処理部11と、予測処理部11で予測した救急出動要請を用いて、救急隊の稼働状況または配置についてのシミュレーション処理を行うシミュレーション処理部12と、を有する情報処理システム1である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
救急隊の出動を予測する情報処理システムであって、
前記情報処理システムは、
救急要請データの入力を受け付けて救急隊の救急出動要請の予測を行うための学習モデルを生成する学習処理部と、
救急出動要請の予測を行う日付と時間区分と、前記学習モデルとを用いて、救急出動要請を予測する予測処理部と、
前記予測処理部で予測した救急出動要請を用いて、救急隊の稼働状況または配置についてのシミュレーション処理を行うシミュレーション処理部と、
を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記シミュレーション処理部は、
前記予測処理部で予測した救急出動要請に対応する、サンプルとする救急出動発生地点および日時とを特定し、
前記救急出動発生地点と救急隊のいる消防署との距離を用いて、前記救急出動発生地点ごとに救急出動する救急隊の優先順位を割り当て、
前記サンプルとする救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位を用いて割り当て、
前記割り当てた救急隊について、前記救急出動発生地点までのルートおよび/または所要時間を算出することで、前記救急隊の稼働状況をシミュレーション処理する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記シミュレーション処理部は、
対象地域をあらかじめ定めた大きさごとに区切った各メッシュにおいて、前記予測処理部で予測した救急出動要請に対応する、サンプルとする救急出動発生地点および日時とを含むサンプルのデータセットを生成し、
前記サンプルのデータセットにおける救急出動発生地点と、前記救急隊のいる消防署との距離を用いて、前記救急出動発生地点ごとに近接する救急隊から優先順位を割り当て、
前記サンプルのデータセットにおける救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位を用いて割り当て、
前記割り当てた救急隊について、前記救急出動発生地点までのルートおよび/または所要時間を算出することで、前記救急隊の稼働状況をシミュレーション処理する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記シミュレーション処理部は、
前記サンプルとする救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位と、前記救急要請データにおける救急隊の時間および/または距離とを用いて割り当てる、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記予測処理部は、
前記学習モデルを用いて、異なる日付と時間区分についての救急出動要請の予測処理を行い、
前記シミュレーション処理部は、
それぞれの日付と時間区分において、前記予測処理部で予測した救急出動要請の結果を用いて、救急出動発生地点までの時間および/または距離の基準値がもっとも短いパターンの救急隊を特定し、
特定した救急隊のうち、頻出する救急隊を増隊する救急隊として特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記シミュレーション処理部は、
それぞれの日付と時間区分について、
あらかじめ定めた回数について、
任意の消防署に救急隊を増隊配置し、
サンプルとする救急出動発生地点および日時とを特定し、
前記救急出動発生地点と救急隊のいる消防署との距離を用いて、前記救急出動発生地点ごとに、救急出動する救急隊に優先順位を割り当て、
前記サンプルとする救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位を用いて割り当て、
前記割り当てた救急隊の前記救急出動発生地点までの到着時間および/または走行距離の基準値を算出する、
処理を実行し、
前記各処理における救急隊の到着時間および/または走行距離の基準値のもっとも短いパターンにおける救急隊を特定する、
処理を実行し、
前記特定した救急隊のうち頻出する救急隊を増隊する救急隊として特定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記シミュレーション処理部は、
それぞれの日付と時間区分について、
あらかじめ定めた回数について、
任意の消防署に救急隊を増隊配置し、
対象地域をあらかじめ定めた大きさごとに区切った各メッシュにおいて、前記予測処理部で予測した救急出動要請に対応する、サンプルとする救急出動発生地点および日時とを含むサンプルのデータセットを生成し、
前記サンプルのデータセットにおける救急出動発生地点と、前記救急隊のいる消防署との距離を用いて、前記救急出動発生地点ごとに近接する救急隊から優先順位を割り当て、
前記サンプルのデータセットにおける救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位を用いて割り当て、
前記割り当てた救急隊の前記救急出動発生地点までの到着時間および/または走行距離の基準値を算出する、
処理を実行し、
前記各処理における救急隊の到着時間および/または走行距離の基準値のもっとも短いパターンにおける救急隊を特定する、
処理を実行し、
前記特定した救急隊のうち頻出する救急隊を増隊する救急隊として特定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記予測処理部は、
前記学習モデルを用いて、異なる日付と時間区分についての救急出動要請の予測処理を行い、
前記シミュレーション処理部は、
それぞれの日付と時間区分において、前記予測処理部で予測した救急出動要請の結果を用いて、救急出動発生地点までの時間および/または距離の基準値がもっとも短いパターンの救急隊を特定し、
特定した救急隊のうち、頻出する救急隊とその移動先の消防署として特定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記シミュレーション処理部は、
それぞれの日付と時間区分について、
あらかじめ定めた回数について、
任意の消防署の救急隊を他の消防署に移動配置し、
サンプルとする救急出動発生地点および日時とを特定し、
前記救急出動発生地点と救急隊のいる消防署との距離を用いて、前記救急出動発生地点ごとに、救急出動する救急隊に優先順位を割り当て、
前記サンプルとする救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位を用いて割り当て、
前記割り当てた救急隊の前記救急出動発生地点までの到着時間および/または走行距離の基準値を算出する、
処理を実行し、
前記各処理における救急隊の到着時間および/または走行距離の基準値のもっとも短いパターンにおける救急隊と移動先の消防署を特定する、
処理を実行し、
前記特定した救急隊のうち頻出する救急隊と移動先の消防署として特定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記シミュレーション処理部は、
それぞれの日付と時間区分について、
あらかじめ定めた回数について、
対象地域をあらかじめ定めた大きさごとに区切った各メッシュにおいて、前記予測処理部で予測した救急出動要請に対応する、サンプルとする救急出動発生地点および日時とを含むサンプルのデータセットを生成し、
前記サンプルのデータセットにおける救急出動発生地点と、前記救急隊のいる消防署との距離を用いて、前記救急出動発生地点ごとに近接する救急隊から優先順位を割り当て、
前記サンプルのデータセットにおける救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位を用いて割り当て、
前記割り当てた救急隊の前記救急出動発生地点までの到着時間および/または走行距離の基準値を算出する、
処理を実行し、
前記各処理における救急隊の到着時間および/または走行距離の基準値のもっとも短いパターンにおける救急隊と移動先の消防署を特定する、
処理を実行し、
前記特定した救急隊のうち頻出する救急隊と移動先の消防署として特定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の情報処理システム。
【請求項11】
前記学習処理部は、
前記救急要請データ、気象データ、地域データの入力を受け付け、
対象地域をあらかじめ定めた大きさごとに区切った各メッシュにおいて、時間区分ごとに、救急出動要請件数をカウントし、
前記メッシュごとに、カウントした救急出動要請件数を時系列化し、
前記メッシュごとに、前記救急要請当日の気象データと、地域データとを追加し、
前記救急出動要請件数、気象データおよび地域データを含むテーブルを用いて機械学習を行い、前記学習モデルを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項12】
前記予測処理部は、
救急出動要請の予測を行う日付と時間区分と前記日付の天気予報データとを含むデータを入力値として、前記学習モデルに入力をすることで、前記日付の前記時間区分における救急出動要請を予測する、
ことを特徴とする請求項1または請求項11に記載の情報処理システム。
【請求項13】
コンピュータを、
救急要請データの入力を受け付けて救急隊の救急出動要請の予測を行うための学習モデルを生成する学習処理部、
救急出動要請の予測を行う日付と時間区分と、前記学習モデルとを用いて、救急出動要請を予測する予測処理部、
前記予測処理部で予測した救急出動要請を用いて、救急隊の稼働状況または配置についてのシミュレーション処理を行うシミュレーション処理部、
として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、救急隊の救急出動件数を予測し、その予測結果に基づいて適切な救急隊の配置をシミュレーション可能な情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、救急出動の増加もあり、救急隊の重要性が高まっている。一方、救急隊は、救急車の台数および救急隊員の人数などの制約もあり、効率的に救急隊を稼働させるため、救急隊を効率的に配置することが求められている。
【0003】
たとえば下記特許文献1、非特許文献1乃至非特許文献3には、救急隊を効率的に配置するために、救急出動の発生数を予測するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】中山公介、”救急ビッグデータを用いた救急自動車最適運用システムの有効性を確認-リアルタイムな救急需要予測等による救急車の搬送時間短縮をめざす”、NTT技術ジャーナル 2019.4、p.70-p.72、[online]、インターネット<URL:https://journal.ntt.co.jp/wp-content/uploads/2020/06/JN20190470.pdf>
【非特許文献2】片岡源宗、吉井稔雄、二神透、大口敬「救急救命搬送需要予測手法の構築」、土木計画学研究・論文集 第32巻 2015年71巻5号 p. I_407-I_414
【非特許文献3】中井哲也、佐伯幸郎、中村匡秀「救急出動記録を活用した熱中症に関連する救急需要の分析と予測」一般社団法人電子情報通信学会 信学技報、BSE2020-11、SC2020-15、[online]、インターネット<URL:https://cs27.org/achieve/data/pdf/1413.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1、非特許文献1乃至非特許文献3の技術を用いることによって、救急出動の発生数を予測することはでき、それによって、救急隊の効率的な配置の一助とすることはできる。しかし、配置した救急隊が実際にどのように稼働するか、配置した後の処理まで想定をすることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、上記課題に鑑み、救急隊の救急出動件数を予測し、その予測結果に基づいて適切な救急隊の配置を出力する情報処理システムを発明した。
【0008】
第1の発明は、救急隊の出動を予測する情報処理システムであって、前記情報処理システムは、救急要請データの入力を受け付けて救急隊の救急出動要請の予測を行うための学習モデルを生成する学習処理部と、救急出動要請の予測を行う日付と時間区分と、前記学習モデルとを用いて、救急出動要請を予測する予測処理部と、前記予測処理部で予測した救急出動要請を用いて、救急隊の稼働状況または配置についてのシミュレーション処理を行うシミュレーション処理部と、を有する情報処理システムである。
【0009】
本発明の情報処理システムを用いることで、予測した救急出動要請を用いて、救急隊の稼働状況、配置についてシミュレーション処理を行うことができる。そのため、救急隊が効率的に稼働させるために、救急隊の稼働状況や配置を検討することができる。
【0010】
上述の発明において、前記シミュレーション処理部は、前記予測処理部で予測した救急出動要請に対応する、サンプルとする救急出動発生地点および日時とを特定し、前記救急出動発生地点と救急隊のいる消防署との距離を用いて、前記救急出動発生地点ごとに救急出動する救急隊の優先順位を割り当て、前記サンプルとする救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位を用いて割り当て、前記割り当てた救急隊について、前記救急出動発生地点までのルートおよび/または所要時間を算出することで、前記救急隊の稼働状況をシミュレーション処理する、情報処理システムのように構成することができる。
【0011】
上述の発明において、前記シミュレーション処理部は、対象地域をあらかじめ定めた大きさごとに区切った各メッシュにおいて、前記予測処理部で予測した救急出動要請に対応する、サンプルとする救急出動発生地点および日時とを含むサンプルのデータセットを生成し、前記サンプルのデータセットにおける救急出動発生地点と、前記救急隊のいる消防署との距離を用いて、前記救急出動発生地点ごとに近接する救急隊から優先順位を割り当て、前記サンプルのデータセットにおける救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位を用いて割り当て、前記割り当てた救急隊について、前記救急出動発生地点までのルートおよび/または所要時間を算出することで、前記救急隊の稼働状況をシミュレーション処理する、情報処理システムのように構成することができる。
【0012】
上述の発明において、前記シミュレーション処理部は、前記サンプルとする救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位と、前記救急要請データにおける救急隊の時間および/または距離とを用いて割り当てる、情報処理システムのように構成することができる。
【0013】
これらの発明のように構成することで、救急隊の稼働状況のシミュレーション処理を行うことができる。
【0014】
上述の発明において、前記予測処理部は、前記学習モデルを用いて、異なる日付と時間区分についての救急出動要請の予測処理を行い、前記シミュレーション処理部は、それぞれの日付と時間区分において、前記予測処理部で予測した救急出動要請の結果を用いて、救急出動発生地点までの時間および/または距離の基準値がもっとも短いパターンの救急隊を特定し、特定した救急隊のうち、頻出する救急隊を増隊する救急隊として特定する、情報処理システムのように構成することができる。
【0015】
本発明のように構成することで、救急隊を増隊するときのシミュレーション処理を行うことができ、どこに救急隊を増隊したらよいかを特定することができる。
【0016】
上述の発明において、前記シミュレーション処理部は、それぞれの日付と時間区分について、あらかじめ定めた回数について、任意の消防署に救急隊を増隊配置し、サンプルとする救急出動発生地点および日時とを特定し、前記救急出動発生地点と救急隊のいる消防署との距離を用いて、前記救急出動発生地点ごとに、救急出動する救急隊に優先順位を割り当て、前記サンプルとする救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位を用いて割り当て、前記割り当てた救急隊の前記救急出動発生地点までの到着時間および/または走行距離の基準値を算出する、処理を実行し、前記各処理における救急隊の到着時間および/または走行距離の基準値のもっとも短いパターンにおける救急隊を特定する、処理を実行し、前記特定した救急隊のうち頻出する救急隊を増隊する救急隊として特定する、情報処理システムのように構成することができる。
【0017】
上述の発明において、前記シミュレーション処理部は、それぞれの日付と時間区分について、あらかじめ定めた回数について、任意の消防署に救急隊を増隊配置し、対象地域をあらかじめ定めた大きさごとに区切った各メッシュにおいて、前記予測処理部で予測した救急出動要請に対応する、サンプルとする救急出動発生地点および日時とを含むサンプルのデータセットを生成し、前記サンプルのデータセットにおける救急出動発生地点と、前記救急隊のいる消防署との距離を用いて、前記救急出動発生地点ごとに近接する救急隊から優先順位を割り当て、前記サンプルのデータセットにおける救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位を用いて割り当て、前記割り当てた救急隊の前記救急出動発生地点までの到着時間および/または走行距離の基準値を算出する、処理を実行し、前記各処理における救急隊の到着時間および/または走行距離の基準値のもっとも短いパターンにおける救急隊を特定する、処理を実行し、前記特定した救急隊のうち頻出する救急隊を増隊する救急隊として特定する、情報処理システムのように構成することができる。
【0018】
救急隊を増隊するときのシミューレション処理には各種の方法があるが、これらの発明のような処理を行うことが好ましい。
【0019】
上述の発明において、
前記予測処理部は、前記学習モデルを用いて、異なる日付と時間区分についての救急出動要請の予測処理を行い、前記シミュレーション処理部は、それぞれの日付と時間区分において、前記予測処理部で予測した救急出動要請の結果を用いて、救急出動発生地点までの時間および/または距離の基準値がもっとも短いパターンの救急隊を特定し、特定した救急隊のうち、頻出する救急隊とその移動先の消防署として特定する、情報処理システムのように構成することができる。
【0020】
本発明のように構成することで、救急隊を移動配置するときのシミュレーション処理を行うことができ、どの救急隊をどの消防署に移動して配置したらよいかを特定することができる。
【0021】
上述の発明において、前記シミュレーション処理部は、それぞれの日付と時間区分について、あらかじめ定めた回数について、任意の消防署の救急隊を他の消防署に移動配置し、サンプルとする救急出動発生地点および日時とを特定し、前記救急出動発生地点と救急隊のいる消防署との距離を用いて、前記救急出動発生地点ごとに、救急出動する救急隊に優先順位を割り当て、前記サンプルとする救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位を用いて割り当て、前記割り当てた救急隊の前記救急出動発生地点までの到着時間および/または走行距離の基準値を算出する、処理を実行し、前記各処理における救急隊の到着時間および/または走行距離の基準値のもっとも短いパターンにおける救急隊と移動先の消防署を特定する、処理を実行し、前記特定した救急隊のうち頻出する救急隊と移動先の消防署として特定する、情報処理システムのように構成することができる。
【0022】
上述の発明において、前記シミュレーション処理部は、それぞれの日付と時間区分について、あらかじめ定めた回数について、対象地域をあらかじめ定めた大きさごとに区切った各メッシュにおいて、前記予測処理部で予測した救急出動要請に対応する、サンプルとする救急出動発生地点および日時とを含むサンプルのデータセットを生成し、前記サンプルのデータセットにおける救急出動発生地点と、前記救急隊のいる消防署との距離を用いて、前記救急出動発生地点ごとに近接する救急隊から優先順位を割り当て、前記サンプルのデータセットにおける救急出動の日時の時系列順に、前記救急出動発生地点に救急出動する救急隊を、前記優先順位を用いて割り当て、前記割り当てた救急隊の前記救急出動発生地点までの到着時間および/または走行距離の基準値を算出する、処理を実行し、前記各処理における救急隊の到着時間および/または走行距離の基準値のもっとも短いパターンにおける救急隊と移動先の消防署を特定する、処理を実行し、前記特定した救急隊のうち頻出する救急隊と移動先の消防署として特定する、情報処理システムのように構成することができる。
【0023】
救急隊を移動配置するときのシミューレション処理には各種の方法があるが、これらの発明のような処理を行うことが好ましい。
【0024】
上述の発明において、前記学習処理部は、前記救急要請データ、気象データ、地域データの入力を受け付け、対象地域をあらかじめ定めた大きさごとに区切った各メッシュにおいて、時間区分ごとに、救急出動要請件数をカウントし、前記メッシュごとに、カウントした救急出動要請件数を時系列化し、前記メッシュごとに、前記救急要請当日の気象データと、地域データとを追加し、前記救急出動要請件数、気象データおよび地域データを含むテーブルを用いて機械学習を行い、前記学習モデルを生成する、情報処理システムのように構成することができる。
【0025】
学習モデルを生成するには、本発明のような処理を実行することが好ましい。
【0026】
上述の発明において、前記予測処理部は、救急出動要請の予測を行う日付と時間区分と前記日付の天気予報データとを含むデータを入力値として、前記学習モデルに入力をすることで、前記日付の前記時間区分における救急出動要請を予測する、情報処理システムのように構成することができる。
【0027】
第1の発明は、本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで、実現することができる。すなわち、コンピュータを、救急要請データの入力を受け付けて救急隊の救急出動要請の予測を行うための学習モデルを生成する学習処理部、救急出動要請の予測を行う日付と時間区分と、前記学習モデルとを用いて、救急出動要請を予測する予測処理部、前記予測処理部で予測した救急出動要請を用いて、救急隊の稼働状況または配置についてのシミュレーション処理を行うシミュレーション処理部、として機能させる情報処理プログラムである。
【発明の効果】
【0028】
本発明の情報処理システムを用いることで、救急隊の救急出動要請を予測し、その予測結果に基づいて適切な救急隊の配置をシミュレーション可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の情報処理システムのシステム構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【
図2】本発明の情報処理システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の情報処理システムにおける学習処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の情報処理システムにおける予測処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の情報処理システムにおけるシミュレーション処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の情報処理システムにおけるシミュレーション処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の情報処理システムにおけるシミュレーション処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】学習処理部における学習処理で用いるテーブルの一例を示す図である。
【
図9】予測処理部における予測処理の際に、予測する日付、時間区分を入力する画面の一例である。
【
図10】学習処理部における予測処理で出力した、救急出動要請の予測件数の一例を示す画面の一例である。
【
図11】実施例2におけるシミュレーション処理の出力結果を示す画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の情報処理システム1のシステム構成の一例を
図1のブロック図に示す。また、本発明の情報処理システム1で用いるコンピュータ2のハードウェア構成の一例を
図2に示す。
【0031】
情報処理システム1は、コンピュータ2を用いる。コンピュータ2は、サーバやパーソナルコンピュータ、可搬型通信端末などの各種の電子計算機であればよい。コンピュータ2は、プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と、情報を記憶するRAMやROM、ハードディスク、SSDなどの記憶装置71と、ディスプレイなどの表示装置72と、情報の入力を行う入力装置73と、演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報の通信を行う通信装置74とを有している。
【0032】
なお、コンピュータ2がタッチパネルディスプレイを備えている場合には、入力装置73と表示装置72とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは、タブレット型コンピュータやスマートフォンなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが、それに限定するものではない。なお、タッチパネルディスプレイは、そのディスプレイ上で、直接、所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力が行える点で、表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0033】
コンピュータ2は一台でその機能が実現されていてもよいし、その機能が複数台によって実現されていてもよい。その場合のコンピュータ2として、たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0034】
さらに、本発明の情報処理システム1における各手段は、その機能が論理的に区別されているのみであって、物理上あるいは事実上は同一の領域を為していてもよい。
【0035】
コンピュータ2は、本発明の情報処理システム1の各機能を実現する。コンピュータ2は、学習処理部10と予測処理部11とシミュレーション処理部12とを有する。
【0036】
学習処理部10は、救急要請データ、気象データ、地域データなどのデータの入力を受け付け、所定の機械学習を行うことで、予測処理部11における予測処理で用いる学習モデルを生成する。
【0037】
救急要請データとは、救急通報などにより救急隊が出動したときのデータであって、たとえば通報日時、出動現場の位置情報(たとえば緯度、経度情報)、救急出動した救急隊の消防署から出動現場までの走行距離、出動現場への到着日時、出動現場から帰署した日時のデータなどがある。救急要請データは、救急隊の出動が要請された際のデータであればこれらに限るものではなく、後述の予測処理部11における予測処理で用いる学習モデルに必要なデータであれば、適宜、取捨選択することができる。救急要請データは、消防庁、学習処理の対象とする地域の行政機関、消防本部、消防署、救急隊など、必要なデータを管理している行政機関から取得できる。
【0038】
気象データとは、救急要請がなされた当日の救急出動の出動現場を含む地域の気象に関するデータであって、たとえば気温、相対湿度、風速、風向、不快指数、天候などのデータがある。気象データは、たとえば気象庁や気象情報提供会社などから取得できる。
【0039】
地域データは、救急出動の出動現場、救急隊の所属する消防署などがある地域の人口動態統計などのデータであって、たとえば人口総数、世帯総数、所定年齢以上の人口総数(たとえば65歳以上人口総数)、年代ごとの人口総数、男女別の人口総数などのデータがある。これらの人口動態統計のデータは、国勢調査などで取得され公開されているデータから取得できる。
【0040】
学習処理部10は、救急要請データ、気象データ、地域データなどのデータの入力を受け付ける。そしてそれらのデータに基づいて、所定の大きさ、たとえば2km四方のメッシュごと、所定の時間区分(たとえば4時間ごと)ごとの救急出動の件数、気象データ、地域データを入力値として機械学習を実行する。この場合、機械学習の方法としては、勾配ブースティングによる機械学習方法を用いることが好ましいが、深層学習(ディープラーニング)などの機械学習方法を用いてもよい。このメッシュは、救急出動の出動現場、救急隊の所属する消防署などがある地域、たとえば都道府県、市区町村などの行政単位の領域を一定の大きさごとにメッシュ化すればよい。またメッシュは、メッシュを構成する頂点の緯度・経度などの位置情報を用いて領域が特定可能であり、それぞれのメッシュを識別する情報が付されており、メッシュが識別可能となっている。
【0041】
学習処理部10は、以上のような処理によって、救急出動の件数を予測する学習モデルを生成する。
【0042】
予測処理部11は、救急出動の予測をしたい日付、時間区分、気象データなどを入力値として、学習処理部10で生成した学習モデルに入力し、メッシュごとの救急出動の予測件数を出力する。
【0043】
シミュレーション処理部12は、予測処理部11で予測した救急出動の予測件数に基づいて、各種のシミュレーション処理を実行する。たとえば、予測処理部11で予測した救急出動件数の予測件数に基づく、各救急隊の出動ルート、所要時間のシミュレーション処理(実施例1)、救急隊を増隊した場合のシミュレーション処理(実施例2)、救急隊を移動配置した場合のシミュレーション処理(実施例3)などを実行する。
【0044】
なお、対象地域のどこに消防署が配置されているか、救急隊はどの消防署に配置されているか、などの情報は、あらかじめ記憶されており、シミュレーション処理部12は、これらのシミュレーション処理の際にこれらの情報を用いる。
【実施例0045】
つぎに本発明の情報処理システム1を用いた処理の一例を
図3乃至
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
コンピュータ2の学習処理部10は、対象地域の救急要請データの入力を受け付ける。たとえば、救急要請データとして、通報日時、救急出動現場の位置情報(たとえば緯度・経度)、救急出動した救急隊の消防署から出動現場までの走行距離、出動現場への到着日時のデータの入力を受け付ける(S100)。また、同様に、学習処理部10は、対象地域の気象データとして気温、相対湿度、風速、風向、不快指数、天候などのデータ、対象地域の地域データとして、人口総数、世帯総数、65歳以上の人口総数などのデータ、の入力を受け付ける(S100)。
【0047】
そして、学習処理部10は、学習モデルの生成対象とする対象地域についてあらかじめ所定の大きさ、たとえば2km四方のメッシュごとに区切り、メッシュごとに、救急要請データにおける通報日時、救急出動現場の位置情報を用いて、あらかじめ設定した時間区分、たとえば4時間ごとの救急出動件数をカウントする(S110)。そしてメッシュごとの救急出動要請件数を時系列に並び替える(S120)。すなわち、メッシュごとに、日付、時間区分ごとの救急出動件数を対応づけてテーブル化する。
【0048】
そして、当該テーブルにおいて、メッシュごとに、救急要請当時の気象データを追加する(S130)。また、当該テーブルにおいて、メッシュごとに、地域データを追加する(S140)。
【0049】
S110からS140で生成したテーブルでは、日付および時間区分ごとに救急出動要請件数、気象データ、地域データが対応づけられているので、年、月、日、曜日、時、祝祭日、土日、時間帯(早朝、日中、夜間、深夜)などを独立変数として追加する(S150)。このテーブルの一例を
図8に示す。なお、独立変数は、任意に追加することができる。
【0050】
学習処理部10は、以上のようなテーブルの時系列データを用いて、所定の機械学習の学習方法により、学習を行う。たとえば勾配ブースティングによる機械学習を実行して学習モデルを生成する(S160)
【0051】
なお、学習の際に、
図8のテーブルでは、多くの異なる地域のメッシュの救急出動要請の件数が連なるため、予測精度を向上させるため、メッシュごとにテーブル化をするなど、適切なデータに変換を行ってもよい。たとえば、データ変換としては、以下のような処理を施すことができる。
【0052】
救急出動要請は、すべてのメッシュについて必ず発生するわけではない。むしろ、救急出動の要請がないメッシュも多い。一方、メッシュに繁華街などを含む場合にはその地域に救急出動が集中して発生することもある。そのため、多くのメッシュの救急出動要請件数は「0」、わずかのメッシュの救急出動要請件数が「1」以上となり、学習するデータに偏りが生じる可能性がある。このようなデータを用いてそのまま学習をすると、精度悪化の原因となる。そこで、アンダーサンプリングと対数変換を用いて調整すると好ましい。
【0053】
たとえばアンダーサンプリングとしては、対象地域におけるメッシュでは多くのメッシュの救急出動要請件数は「0」であり、ごく一部のメッシュについて救急出動要請件数が「1」以上となる。そこで、救急出動要請件数が「1」以上であってメッシュの数をカウントする。そして、救急出動要請件数が「0」であるメッシュのうち、カウントした数と同数または同程度(あらかじめ定めた所定範囲にある数)のメッシュをサンプリングして学習データとして用いる。そしてサンプリングしなかったメッシュについては学習対象から除外をする。
【0054】
またごく一部のメッシュの救急出動要請件数が突出するような場合、たとえば、対象地域に歌舞伎町のような繁華街を含む場合、繁華街を領域に含むメッシュのみ救急出動要請件数が突出し、学習精度の悪化の原因となる。そこで、メッシュごとの救急出動要請件数については対数変換処理をした値を学習対象のデータとしてもよい。
【0055】
機械学習に用いるメッシュごとの救急要請件数のデータのデータ変換については、対象地域ごとの救急出動要請件数の特性に応じて、メッシュに対するアンダーサンプリング処理と対数変換処理は、双方を行ってもよいし、いずれか一方を行ってもよいし、また行わなくてもよい。
【0056】
以上のような処理を実行することで、救急出動要請の件数を予測するための学習モデルの生成ができる。
【0057】
そして、つぎに救急出動要請の件数の予測を行う場合には、
図9に示す画面から、予測したい日付とその時間区分の入力をし、それらの入力を受け付ける(S200)。そして「予測する」などのボタンの押下がなされると、予測処理部11で予測処理を行う指示と予測したい日付と時間区分とを受け付ける。
【0058】
予測処理部11は、予測処理を行う指示と予測したい日付と時間区分とを受け付けると、あらかじめ所定のタイミングで取得している天気予報データのデータベースから、当該日付と時間区分における気象データ、たとえば気温、相対湿度、風速、風向、不快指数、天候などを取得する(S210)。なお、天気予報データはあらかじめ気象庁や気象情報提供会社のコンピュータ2システムから取得していてもよいし、予測処理を行う指示を受け付けることで、気象庁や気象情報提供会社のコンピュータ2システムから取得をしてもよい。
【0059】
そして予測処理部11は、予測したい日付、時間区分、取得した天気予報データを入力値として、S160で生成した学習モデルに入力をして予測処理を実行する(S220)。この予測処理によって、対象地域における全メッシュに対する予測処理が実行され、予測処理部11は、メッシュごとに予測した救急出動件数を、地図上に表示をする。この際に、救急出動件数に応じて色を変化させるヒートマップによって表示を行ってもよい。この一例を
図10に示す。なお、
図10では、予測処理部11は、地図上にメッシュごとにヒートマップによって救急出動件数を可視化して表示する場合を示しているが、それ以外の表示方法によって表示をしてもよい。
【0060】
つぎに予測処理部11で出力した救急出動要請の予測件数を用いてシミュレーション処理部12におけるシミュレーション処理を行う場合を説明する。
【0061】
シミュレーション処理部12は、S100で入力を受け付けている救急要請データにおける通報から現場到着時間、通報から帰署までの時間を用いて、救急隊ごとの現場到着時間と、帰署時間の中央値または平均値などの基準値を算出する(S300)。以下では、基準値として平均値を用いる場合を説明するが、中央値でも同様に処理ができる。
【0062】
そしてシミュレーション処理部12は、予測処理部11が出力をした救急出動の予測件数を用いて、メッシュごとに予測された救急出動の要請件数分について、そのメッシュ内での救急出動要請の現場の位置情報をランダムにサンプルとして特定する。すなわち、メッシュの領域内において、予測した救急出動の要請件数分の位置情報をランダムに特定し、それらの位置情報を、救急出動の現場のサンプルとして特定する(S310)。たとえばあるメッシュのある時間区分において3件の救急出動要請の予測件数がある場合には、そのメッシュの領域内においてランダムに3地点の位置情報を特定し、各地点を救急出動要請の現場のサンプルとする。
【0063】
さらに、シミュレーション処理部12は、予測処理部11の際に用いた時間区分において、救急出動の要請件数分の時刻をランダムに特定し、救急出動要請のあった時刻のサンプルとする(S320)。
【0064】
S310で特定した救急出動の現場のサンプルと、S320で特定した救急出動要請の時刻のサンプルとをそれぞれ対応づけて、救急出動要請のサンプル地点の位置情報とサンプル日時のデータセットを作成する(S330)。なお、サンプル地点とサンプル日時の組み合わせをサンプルデータとする。
【0065】
そして、シミュレーション処理部12は、救急出動要請のサンプル地点の位置情報と、各救急隊が所属する消防署の位置情報とを用いて、サンプル地点の位置情報と消防署の直線距離を算出し、各救急隊に、サンプル地点に近接する順番に優先順位を割りあてる(S340)。またサンプル地点にもっとも近い救急隊、すなわち優先順位1位の救急隊を「本来最優先救急隊」として、その救急隊の所在地を記録する(S350)。
【0066】
そして、S330で作成したデータセットでは、サンプルデータとして、救急出動要請のサンプル地点とサンプル日時とが対応づけられているので、サンプル日時の時系列順に、サンプルデータごとの救急出動する救急隊を割りあてる(S360)。この場合、優先順位1位の救急隊から順次、救急出動する救急隊を割りあてる。なお、救急出動が割りあてられた救急隊は、当該サンプルデータにおけるサンプル日時(救急要請のあったサンプルの時刻)にS300で算出した帰署時間の平均値を加算した時刻までは、再度、救急出動を割りあてることはできない。このときにサンプル日時に帰署時間の平均値に加え、所定の時間(たとえば休憩時間などの任意の時間)を加算してもよい。そして、優先順位のもっとも高い救急隊が出動できない場合には、次の優先順位の救急隊(サンプル地点の位置情報に次に近い救急隊)を割りあてる。これを、救急出動が可能な救急隊が割りあてられるまで反復して出動する救急隊を特定する。
【0067】
そして、S330で作成したデータセットにおける各サンプルデータに救急出動する救急隊が割りあてられると、救急隊が出動する消防署から当該サンプルデータにおけるサンプル地点までのルート(道のり)と所要時間を用いて導出する(S370)。そしてシミュレーション処理部12は、算出したルートと所要時間を地図情報表示を行う。
【0068】
以上のような処理を行うことで、ある日時のある時間区分における救急出動要請の予測件数と、それに対して、各救急隊の移動するルート、所要時間などの救急隊の稼働状況をシミュレーションすることができる。
つぎに、シミュレーション処理部12で、救急隊を増隊した場合のシミュレーション処理を行う場合を説明する。学習処理部10における学習処理、予測処理部11における予測処理は実施例1と同様である。
対象地域の消防署に救急隊を任意に増隊する(仮想的に消防署に救急隊を増隊して配置する)。たとえば対象地域にある10の消防署に20の救急隊がある場合、ある消防署に21番目の救急隊を増隊したとする(救急隊を1つ増隊する)(S400、S410)。増隊は、シミュレーション処理部12が自動的に行ってもよいし、操作者が特定の消防署に増隊の設定をしてもよい。
そして、S300と同様に、シミュレーション処理部12は、S100で入力を受け付けている救急要請データにおける通報から現場到着時間、通報から帰署までの時間を用いて、救急隊ごとの現場到着時間と、帰署時間の中央値または平均値としての基準値を算出する(S420)。なお、増隊した救急隊は、全救急隊の現場到着時間、帰署時間の中央値または平均値を算出して、その値を用いてもよいし、あるいは、同一の消防署にすでに配置されている救急隊がいる場合にはその値を用いてもよい。また、上述のように時間を用いるほか走行距離を用いてもよい。この場合、救急要請データにおける通報から現場までの走行距離、出動から帰署までの走行距離を用いて、救急隊ごとの現場までの走行距離と、帰署までの走行距離の中央値または平均値としての基準値を算出してもよい。この場合、増隊した救急隊は、全救急隊の現場までの走行距離、帰署までの走行距離の中央値または平均値を算出して、その値を用いてもよいし、あるいは、同一の消防署にすでに配置されている救急隊がいる場合にはその値を用いてもよい。
まずシミュレーション処理部12は、予測処理部11が出力をした救急出動の予測件数を用いて、メッシュごとに予測された救急出動の要請件数分について、そのメッシュ内での救急出動要請の現場の位置情報をランダムにサンプルとして特定する。すなわち、メッシュの位置情報内において、予測した救急出動の要請件数分の位置情報をランダムに特定し、それらの位置情報を、救急出動の現場のサンプルとして特定する(S430)。
さらに、シミュレーション処理部12は、予測処理部11の際に用いた時間区分において、救急出動の要請件数分の時刻をランダムに特定し、救急出動要請のあった時刻のサンプルとして特定する(S440)。
S430で特定した救急出動の現場のサンプルと、S440で特定した救急出動要請の時刻のサンプルとをそれぞれ対応づけて、救急出動要請のサンプル地点とサンプル日時のデータセットを作成する(S450)。
そして、シミュレーション処理部12は、救急出動要請のサンプル地点の位置情報と、各救急隊が所属する消防署の位置情報とを用いて、サンプル地点の位置情報と消防署の直線距離を算出し、各救急隊に、サンプル地点に近接する順番に優先順位を割りあてる(S460)。またサンプル地点にもっとも近い救急隊、すなわち優先順位1位の救急隊を「本来最優先救急隊」として、その救急隊の所在地を記録する(S470)。
そして、S450で作成したデータセットでは、サンプルデータとして、救急出動要請のサンプル地点とサンプル日時とが対応づけられているので、サンプル日時の時系列順に、サンプルデータごとに救急出動する救急隊を割りあてる(S480)。この場合、優先順位1位の救急隊から順次、救急出動する救急隊を割りあてる。なお、実施例1と同様に、救急出動が割りあてられた救急隊は、当該サンプルデータにおけるサンプル日時(救急要請のあったサンプルの時刻)にS420で算出した帰署時間の平均値を加算した時刻までは、再度、救急出動を割りあてることはできない。その場合、次の優先順位の救急隊(サンプル地点の位置情報に次に近い救急隊)を割りあてる。これを、救急出動が可能な救急隊が割りあてられるまで反復して出動する救急隊を特定する。
そして、S450で作成したデータセットにおける各サンプルデータに救急出動する救急隊が割りあてられると、救急隊が出動する消防署から当該サンプルデータにおけるサンプル地点までの所要時間または走行距離を導出する(S490)。
そしてS490で算出した各サンプルに割りあてた救急隊の所要時間または走行距離に基づいて、消防署からサンプル地点までの平均到着時間または平均走行距離を算出する(S500)。
以上のような処理を実行することで、ある消防署に救急隊を増隊した場合の平均到着時間または平均走行距離を算出したので、シミュレーション処理部12は、S410と同様に、別の消防署に救急隊を増隊して、S410以降の処理を再度実行する。
このような処理を、複数回、たとえばすべての消防署について、救急隊を増隊した場合のシミュレーション処理を実行した結果(S400)、S500で算出した平均到着時間または平均走行距離がもっとも短いシミュレーションのパターンを特定し、そのときの増隊された救急隊を特定、記憶する(S510)。
S510で特定した、増隊された救急隊は、予測処理部11で入力した日付、時間区分に基づく最適な救急隊であるので、予測処理部11における予測する日付および時間区分として、異なる日付、時間区分を入力値として、実施例1と同様の予測処理部11における予測処理およびその出力結果に基づくシミュレーション処理部12におけるシミュレーション処理を、あらかじめ定めた十分な回数、たとえば100回などを自動的に実行する(S520、S530)。
なお、平均到着時間で増隊する救急隊を決定するか、平均走行距離で増隊する救急隊を決定するかは選択可能となっているとよい。また、双方が表示可能となっていてもよい。