IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社モリタ製作所の特許一覧

特開2024-155326データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム
<>
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図1
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図2
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図3
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図4
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図5
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図6
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図7
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図8
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図9
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図10
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図11
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図12
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図13
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図14
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図15
  • 特開-データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155326
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】データ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/05 20060101AFI20241024BHJP
   G16H 30/40 20180101ALI20241024BHJP
【FI】
A61C19/05
G16H30/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069964
(22)【出願日】2023-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍛治 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英基
(72)【発明者】
【氏名】西村 巳貴則
【テーマコード(参考)】
4C052
5L099
【Fターム(参考)】
4C052NN02
4C052NN03
4C052NN15
4C052NN16
5L099AA26
(57)【要約】
【課題】顎運動中における上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係に応じて上下歯列の接触位置を確認することができる技術を提供する。
【解決手段】データ生成装置1は、上顎の歯列の三次元の形状を示す上顎歯列データ、下顎の歯列の三次元の形状を示す下顎歯列データ、および顎運動を示す顎運動データが入力される入力インターフェース14と、上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データに基づき、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を示す指標を付加した上顎歯列データおよび下顎歯列データのうちの少なくとも1つの動画データを生成する演算装置11とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画データを生成するデータ生成装置であって、
上顎の歯列の三次元の形状を示す上顎歯列データ、下顎の歯列の三次元の形状を示す下顎歯列データ、および顎運動を示す顎運動データが入力される入力部と、
前記上顎歯列データ、前記下顎歯列データ、および前記顎運動データに基づき、前記顎運動に伴って変化する前記上顎の歯列と前記下顎の歯列との位置関係を示す指標を付加した前記上顎歯列データおよび前記下顎歯列データのうちの少なくとも1つの動画データを生成する生成部とを備える、データ生成装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記顎運動の動画の各フレームに前記指標を付加する、請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記上顎の歯列を構成する点群の各点と前記下顎の歯列を構成する点群の各点との間の距離に応じて、前記指標を異ならせる、請求項1または請求項2に記載のデータ生成装置。
【請求項4】
前記距離は、前記上顎の歯列を構成する所定の点と、前記所定の点を起点にして前記顎運動の方向に沿った方向に存在する前記下顎の歯列を構成する点との間の第1距離、前記上顎の歯列を構成する前記所定の点と、前記下顎の歯列を構成する点群のうちの前記所定の点に最も近い点との間の第2距離、または、前記上顎の歯列を構成する前記所定の点と、複数の平面モデルのうち、ユーザによって選択された平面モデルの平面に対する概垂直方向に存在する前記下顎の歯列を構成する点との間の第3距離である、請求項3に記載のデータ生成装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記第1距離および前記第2距離のうち、ユーザによって選択された距離に応じて前記指標を異ならせる、請求項4に記載のデータ生成装置。
【請求項6】
前記生成部は、前記上顎の歯列を構成する点群に基づき生成される上顎側メッシュと前記下顎の歯列を構成する点群に基づき生成される下顎側メッシュとの間の距離に応じて、前記指標を異ならせる、請求項1または請求項2に記載のデータ生成装置。
【請求項7】
前記上顎側メッシュは、前記上顎の歯列を構成する点群の各々を頂点にした三角形の平面を有し、
前記下顎側メッシュは、前記下顎の歯列を構成する点群の各々を頂点にした三角形の平面を有し、
前記距離は、前記上顎側メッシュの頂点と前記下顎側メッシュの頂点との間の距離、前記上顎側メッシュの平面上の任意の点と前記下顎側メッシュの平面上の任意の点との間の距離、前記上顎側メッシュの頂点と前記下顎側メッシュの平面上の任意の点との間の距離、または前記上顎側メッシュの平面上の任意の点と前記下顎側メッシュの頂点との間の距離である、請求項6に記載のデータ生成装置。
【請求項8】
前記上顎側メッシュの平面上の任意の点は、前記上顎の歯列を構成する点群の各々を頂点にした三角形の重心、内心、または外心を含み、
前記下顎側メッシュの平面上の任意の点は、前記下顎の歯列を構成する点群の各々を頂点にした三角形の重心、内心、または外心を含む、請求項7に記載のデータ生成装置。
【請求項9】
前記生成部は、前記指標として、前記上顎の歯列を構成する点群の各点および前記下顎の歯列を構成する点群の各点、または、前記上顎の歯列を構成する点群に基づき生成されるメッシュおよび前記下顎の歯列を構成する点群に基づき生成されるメッシュに対して、前記距離に応じて異なる色を付加する、請求項3に記載のデータ生成装置。
【請求項10】
前記生成部は、前記指標として、前記上顎の歯列を構成する点群および前記下顎の歯列を構成する点群のうちのユーザによって指定された点、または、前記上顎の歯列を構成する点群に基づき生成されるメッシュおよび前記下顎の歯列を構成する点群に基づき生成されるメッシュのうちの前記ユーザによって指定されたメッシュに対して、前記距離を付加する、請求項3に記載のデータ生成装置。
【請求項11】
前記生成部は、前記指標として、前記上顎の歯列を構成する点群および前記下顎の歯列を構成する点群のうちの前記距離が閾値を超える点に対応する部分を特定可能な情報を付加する、請求項3に記載のデータ生成装置。
【請求項12】
前記顎運動の動画は、前記上顎の歯列および前記下顎の歯列を側面側から見た場合の動画と、前記上顎の歯列および前記下顎の歯列を前記上顎の咬合面側または前記下顎の咬合面側から見た場合の動画とのうちの少なくとも1つを含む、請求項1または請求項2に記載のデータ生成装置。
【請求項13】
前記上顎歯列データは、三次元スキャナによって取得される前記上顎の歯列の表面を構成する点群の各点の位置情報を含む三次元データと、前記上顎の歯列をコンピュータ断層撮影することによって得られる三次元データとのうちの少なくとも1つを含み、
前記下顎歯列データは、前記三次元スキャナによって取得される前記下顎の歯列の表面を構成する点群の各点の位置情報を含む三次元データと、前記下顎の歯列を前記コンピュータ断層撮影することによって得られる三次元データとのうちの少なくとも1つを含む、請求項1または請求項2に記載のデータ生成装置。
【請求項14】
前記顎運動データは、顎運動測定装置によって測定される前記顎運動を示すデータと、前記上顎歯列データおよび前記下顎歯列データに基づき前記顎運動をシミュレーションすることによって得られるデータとのうちの少なくとも1つを含む、請求項1または請求項2に記載のデータ生成装置。
【請求項15】
前記生成部は、前記顎運動の動画において、前記顎運動に伴って変化する顎関節の位置関係を示す前記指標を付加する、請求項1または請求項2に記載のデータ生成装置。
【請求項16】
前記生成部は、前記上顎の歯列および前記下顎の歯列のうちの少なくとも1つの断面を示す前記顎運動の動画に前記指標を付加する、請求項1または請求項2に記載のデータ生成装置。
【請求項17】
動画データをコンピュータによって生成するデータ生成方法であって、
前記コンピュータが実行する処理として、
上顎の歯列の三次元の形状を示す上顎歯列データ、下顎の歯列の三次元の形状を示す下顎歯列データ、および顎運動を示す顎運動データを取得するステップと、
前記上顎歯列データ、前記下顎歯列データ、および前記顎運動データに基づき、前記顎運動に伴って変化する前記上顎の歯列と前記下顎の歯列との位置関係を示す指標を付加した前記上顎歯列データおよび前記下顎歯列データのうちの少なくとも1つの動画データを生成するステップとを含む、データ生成方法。
【請求項18】
顎運動の動画データを生成するためのデータ生成プログラムであって、
コンピュータに、
上顎の歯列の三次元の形状を示す上顎歯列データ、下顎の歯列の三次元の形状を示す下顎歯列データ、および前記顎運動を示す顎運動データを取得するステップと、
前記上顎歯列データ、前記下顎歯列データ、および前記顎運動データに基づき、前記顎運動に伴って変化する前記上顎の歯列と前記下顎の歯列との位置関係を示す指標を付加した前記上顎歯列データおよび前記下顎歯列データのうちの少なくとも1つの動画データを生成するステップとを実行させる、データ生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動画データを生成するデータ生成装置、データ生成方法、およびデータ生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科の臨床上、上下歯列が咬合するときの早期接触位置を知ることは重要である。上下歯列は、上顎の歯列と下顎の歯列とを含み、上下歯列が開口状態である場合、上顎の歯列と下顎の歯列とが離れた状態になり、上下歯列が咬合状態である場合、上顎の歯列の少なくとも一部と下顎の歯列の少なくとも一部とが接触した状態になる。早期接触位置とは、上下歯列が咬合状態であるときに上顎の歯列と下顎の歯列とが最初に接触する位置である。上下歯列の早期接触位置に偏りが存在する場合、早期接触位置で咀嚼する頻度が高くなるため、顎が歪んだり身体のバランスが崩れたりして、健康に悪影響が生じる可能性がある。歯科分野においては、上顎の歯列全体と下顎の歯列全体とをバランスよく同時に接触させるために、早期接触位置を削るなどの治療が行われている。
【0003】
早期接触位置を確認するための技術として、特許文献1には、上下歯列の三次元データに対して、咬合紙を用いて検出した咬合状態における上下歯列の接触位置を対応させることで、三次元データ上で早期接触位置を示す方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第115546405号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法によれば、三次元データ上で早期接触位置を示すことができるが、上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係は顎運動によって変化するため、上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を考慮しながら上下歯列の接触位置を確認することができれば、歯科医師などの術者がより正確に治療計画を立てることができる。しかしながら、特許文献1に開示された方法においては、顎運動に関して何ら考慮されていないため、顎運動中における上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係に応じて上下歯列の接触位置を術者が確認することができなかった。
【0006】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、顎運動中における上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係に応じて上下歯列の接触位置を確認することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例に従えば、動画データを生成するデータ生成装置が提供される。データ生成装置は、上顎の歯列の三次元の形状を示す上顎歯列データ、下顎の歯列の三次元の形状を示す下顎歯列データ、および顎運動を示す顎運動データが入力される入力部と、上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データに基づき、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を示す指標を付加した上顎歯列データおよび下顎歯列データのうちの少なくとも1つの動画データを生成する生成部とを備える。
【0008】
本開示の一例に従えば、動画データをコンピュータによって生成するデータ生成方法が提供される。データ生成方法は、コンピュータが実行する処理として、上顎の歯列の三次元の形状を示す上顎歯列データ、下顎の歯列の三次元の形状を示す下顎歯列データ、および顎運動を示す顎運動データを取得するステップと、上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データに基づき、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を示す指標を付加した上顎歯列データおよび下顎歯列データのうちの少なくとも1つの動画データを生成するステップとを含む。
【0009】
本開示の一例に従えば、顎運動の動画データを生成するためのデータ生成プログラムが提供される。データ生成プログラムは、コンピュータに、上顎の歯列の三次元の形状を示す上顎歯列データ、下顎の歯列の三次元の形状を示す下顎歯列データ、および顎運動を示す顎運動データを取得するステップと、上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データに基づき、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を示す指標を付加した上顎歯列データおよび下顎歯列データのうちの少なくとも1つの動画データを生成するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を示す指標を付加した上顎歯列データまたは下顎歯列データの動画データが生成されるため、ユーザは、顎運動中における上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係に応じて上下歯列の接触位置を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るデータ生成装置の適用例を示す図である。
図2】実施の形態1に係るデータ生成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係るデータ生成装置によって生成される動画データのフレームの一例を説明するための図である。
図4】上顎の歯列を構成する所定の点と下顎の歯列を構成する所定の点との間の距離に応じた色の付加を説明するための図である。
図5】上顎の歯列を構成する所定の点と下顎の歯列を構成する所定の点との間の距離の算出を説明するための図である。
図6】実施の形態1に係るデータ生成装置によって生成される動画データの各フレームの一例を説明するための図である。
図7】実施の形態1に係るデータ生成装置によって生成される動画データの各フレームの一例を説明するための図である。
図8】実施の形態1に係るデータ生成装置によって生成される動画データの各フレームの一例を説明するための図である。
図9】実施の形態1に係るデータ生成装置によって再生される動画に関する設定の一例を説明するための図である。
図10】実施の形態1に係るデータ生成装置が実行するデータ生成処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図11】実施の形態2に係るデータ生成装置によって動画データに付加される指標の一例を説明するための図である。
図12】実施の形態3に係るデータ生成装置によって動画データに付加される指標の一例を説明するための図である。
図13】実施の形態4に係るデータ生成装置によって動画データに付加される指標の一例を説明するための図である。
図14】実施の形態5に係るデータ生成装置によって動画データに付加される指標の一例を説明するための図である。
図15】実施の形態6に係るデータ生成装置によって動画データに付加される指標の一例を説明するための図である。
図16】実施の形態7に係るデータ生成装置によって動画データに付加される指標の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
本開示の実施の形態1について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[適用例]
図1を参照しながら、実施の形態1に係るデータ生成装置1の適用例を説明する。図1は、実施の形態1に係るデータ生成装置1の適用例を示す図である。
【0014】
歯科の臨床上、上下歯列が咬合するときの早期接触位置を知ることは重要である。上下歯列の早期接触位置に偏りが存在する場合、早期接触位置で咀嚼する頻度が高くなるため、顎が歪んだり身体のバランスが崩れたりして、健康に悪影響が生じる可能性がある。歯科分野においては、上顎の歯列全体と下顎の歯列全体とをバランスよく同時に接触させるために、早期接触位置を削るなどの治療が行われている。
【0015】
上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係は顎運動によって変化するため、上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を考慮しながら上下歯列の接触位置を確認することができれば、歯科医師などの術者がより正確に治療計画を立てることができる。そこで、実施の形態1に係るデータ生成装置1は、顎運動中における上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係に応じて上下歯列の接触位置をユーザが確認することができるように構成されている。なお、データ生成装置1のユーザは、歯科医師などの術者に限らず、歯科助手、歯科大学の先生または生徒、歯科技工士などを含む。また、データ生成装置1による早期接触位置の確認対象となる対象者は、歯科医院の患者、歯科大学における被験者などを含む。
【0016】
図1に示すように、データ生成装置1は、対象者の上顎の歯列の三次元の形状を示す上顎歯列データ、下顎の歯列の三次元の形状を示す下顎歯列データ、および顎運動を示す顎運動データを取得する。
【0017】
上顎歯列データは、上顎の歯列の表面を構成する点群の各点の位置情報を含む三次元データである。下顎歯列データは、下顎の歯列の表面を構成する点群の各点の位置情報を含む三次元データである。ユーザは、図示しない三次元スキャナ(光学スキャナ)を用いて対象者の口腔内をスキャンすることによって、上顎歯列データおよび下顎歯列データを取得することができる。三次元スキャナは、共焦点法または三角測量法などによって対象者の口腔内を光学的に撮像可能ないわゆる口腔内スキャナ(IOS:Intra Oral Scanner)である。三次元スキャナは、口腔内の物体をスキャンすることによって、三次元データ(IOSデータ)として、予め定められた横方向(X軸方向)、縦方向(Y軸方向)、および高さ方向(Z軸方向)におけるスキャン対象(たとえば、上顎の歯列および下顎の歯列)の表面形状を示す点群(複数の点)の各点の座標(X,Y,Z)を取得する。
【0018】
すなわち、上顎歯列データは、ある座標空間上に置かれた上顎の歯列に含まれる少なくとも1つの歯牙の表面を構成する点群の各点の位置情報を含む。下顎歯列データは、ある座標空間上に置かれた下顎の歯列に含まれる少なくとも1つの歯牙の表面を構成する点群の各点の位置情報を含む。なお、上顎歯列データは、上顎の歯列に含まれる少なくとも1つの歯牙に限らず、当該少なくとも1つの歯牙の周辺に位置する歯肉の表面を構成する点群の各点の位置情報も含み得る。また、下顎歯列データは、下顎の歯列に含まれる少なくとも1つの歯牙に限らず、当該少なくとも1つの歯牙の周辺に位置する歯肉の表面を構成する点群の各点の位置情報も含み得る。
【0019】
また、上顎歯列データは、上述したIOSデータに限らず、上顎の歯列をコンピュータ断層撮影することによって得られる三次元データであってもよい。下顎歯列データは、上述したIOSデータに限らず、下顎の歯列をコンピュータ断層撮影することによって得られる三次元データであってもよい。ユーザは、図示しないCT(Computed Tomography)撮像装置を用いて対象者の顔をコンピュータ断層撮影することによって、上顎歯列データおよび下顎歯列データを取得することができる。CT撮像装置は、放射線の一種であるX線の送信器および受信器を患者の顔の周囲で回転させることで、患者の上顎および下顎をコンピュータ断層撮影するX線撮像装置である。CT撮像装置は、対象者の上顎および下顎をコンピュータ断層撮影することによって、三次元データ(CTデータ)として、スキャン対象(たとえば、上顎および下顎)の三次元の体積(ボクセル)データを取得する。
【0020】
顎運動データは、図示しない顎運動測定装置によって測定される顎運動中における上顎および下顎の位置を示すデータである。たとえば、顎運動データは、咬合状態から開口状態へと顎が運動する場合における時系列の上顎および下顎の位置情報、または開口状態から咬合状態へと顎が運動する場合における時系列の上顎および下顎の位置情報を含む。具体的には、後述する図5で示すように、顎運動データは、上顎と下顎とが上下方向に閉じたり開いたりする場合における時系列の上顎および下顎の位置情報を含む。顎運動データは、顔の左右方向に沿って上顎および下顎が互いに異なる方向へと運動する場合における時系列の上顎および下顎の位置情報を含む。顎運動データは、顔の前後方向に沿って上顎および下顎が互いに異なる方向へと運動する場合における時系列の上顎および下顎の位置情報を含む。ユーザは、図示しない顎運動測定装置を対象者の顔に取り付けて、対象者に様々な方向へと上顎および下顎を動かして貰うことで、対象者の顎運動を示す顎運動データを取得することができる。
【0021】
なお、顎運動データは、上顎歯列データおよび下顎歯列データに基づきユーザが顎運動をシミュレーションすることによって得られるデータであってもよい。具体的には、後述する図5で示すように、ユーザは、自身の入力に基づくシミュレーションによって、上顎および下顎の三次元データにおける位置情報を上下方向に変更することで、上顎と下顎とが上下方向に閉じたり開いたりするような顎運動データを生成することができる。ユーザは、自身の入力に基づくシミュレーションによって、上顎および下顎の三次元データにおける位置情報を顔の左右方向に変更することで、顔の左右方向に沿って上顎および下顎が互いに異なる方向へと運動するような顎運動データを生成することができる。ユーザは、自身の入力に基づくシミュレーションによって、上顎および下顎の三次元データにおける位置情報を顔の前後方向に変更することで、顔の前後方向に沿って上顎および下顎が互いに異なる方向へと運動するような顎運動データを生成することができる。
【0022】
データ生成装置1は、上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データを取得すると、取得した上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データに基づき、顎運動に伴って変化する上顎の歯列および上顎の歯列の各々の位置を示す動画を再生するための動画データを生成する。
【0023】
動画データに基づき再生される動画は、時系列で連続する複数のフレーム(静止画像)によって構成され、各フレームにおいては、上顎の歯列および上顎の歯列の各々の三次元形状を示すレンダリング画像(外観画像)が示される。レンダリング画像とは、あるデータに対して処理または編集を施すことによって生成される画像である。たとえば、データ生成装置1は、三次元スキャナによって取得された上下歯列の三次元データに対して処理または編集を施すことによって、所定の視点から見た二次元の上下歯列を示すレンダリング画像を生成することができる。さらに、データ生成装置1は、所定の視点を多方向にわたって変化させることによって、多方向から見た二次元の上下歯列を示す複数のレンダリング画像を生成することができる。あるいは、データ生成装置1は、CT撮像装置によって取得された上顎および下顎の体積データに対して処理または編集を施すことによって、所定の視点から見た二次元の上顎および下顎(CTデータによって示すことが可能な上顎および下顎の部分)を示すレンダリング画像を生成することができる。さらに、データ生成装置1は、所定の視点を多方向にわたって変化させることによって、多方向から見た二次元の上顎および下顎(CTデータによって示すことが可能な上顎および下顎の部分)を示す複数のレンダリング画像を生成することができる。
【0024】
また、詳しくは後述するが、データ生成装置1は、動画データを生成する際、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を示す指標を顎運動の動画に付加する。さらに、データ生成装置1は、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係に応じて、指標を異ならせる。
【0025】
たとえば、図1に示すように、データ生成装置1は、時系列(この例では、t1、t2、t3)で顎運動中の上下歯列の動画データを生成する。図1の例では、データ生成装置1は、三次元スキャナによって取得された上下歯列の三次元データを用いて生成したレンダリング画像と、CT撮像装置によって取得された上顎および下顎の体積データを用いて生成したレンダリング画像とを合成させることで、顎運動中の上下歯列の動画データの各フレームを生成する。なお、データ生成装置1は、三次元スキャナによって取得された上下歯列の三次元データを用いて生成したレンダリング画像のみを用いて顎運動中の上下歯列の動画データの各フレームを生成してもよい。あるいは、データ生成装置1は、CT撮像装置によって取得された上顎および下顎の体積データを用いて生成したレンダリング画像のみを用いて顎運動中の上下歯列の動画データの各フレームを生成してもよい。さらに、データ生成装置1は、動画データに基づき再生される動画の各フレームにおいて、指標として、上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係に応じて異なる色を付加する。たとえば、データ生成装置1は、指標として、上顎の歯列を構成する点群の各点および下顎の歯列を構成する点群の各点に対して、上顎の歯列を構成する点群の各点と下顎の歯列を構成する点群の各点との間の距離に応じて異なる色を付加する。
【0026】
このように、データ生成装置1は、動画の各フレームにおいて、上顎の歯列を構成する点群の各点および下顎の歯列を構成する点群の各点に対して、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係に応じて異なる色を付加することで、時系列で顎運動が行われている間に、上顎の歯列を構成する点群の各点と下顎の歯列を構成する点群の各点との間の距離が変化する様子を、色を用いたヒートマップ形式でユーザに見せることができる。この場合、データ生成装置1は、上下歯列のレンダリング画像を動かさずに静止させて色を用いたヒートマップのみを変化させてユーザに見せてもよい。
【0027】
これにより、ユーザは、上下歯列が咬合状態である場合または開口状態である場合に限らず、咬合状態から開口状態へと顎が運動したり、開口状態から咬合状態へと顎が運動したりといったような、顎運動の途中であっても、上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を容易に確認することができる。したがって、術者などのユーザは、上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を考慮しながら顎運動の動きの中で上下歯列の接触位置を適宜確認することができるため、矯正治療および補綴治療などの治療計画を正確に立てることができる。
【0028】
[識別装置のハードウェア構成]
図2を参照しながら、実施の形態1に係るデータ生成装置1のハードウェア構成を説明する。図2は、実施の形態1に係るデータ生成装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。データ生成装置1は、たとえば、汎用コンピュータで実現されてもよいし、専用コンピュータで実現されてもよい。
【0029】
図2に示すように、データ生成装置1は、主なハードウェア要素として、演算装置11と、メモリ12と、記憶装置13と、入力インターフェース14と、ディスプレイインターフェース15と、周辺機器インターフェース16と、記憶媒体インターフェース17と、通信装置18とを備える。
【0030】
演算装置11は、各種のプログラムを実行することで、各種の処理を実行する演算主体(コンピュータ)であり、「生成部」の一例である。演算装置11は、たとえば、CPU(central processing unit)またはMPU(Micro-processing unit)などのプロセッサで構成されている。なお、演算装置11の一例であるプロセッサは、プログラムを実行することによって各種の処理を実行する機能を有するが、これらの機能の一部または全部を、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェア回路を用いて実装してもよい。「プロセッサ」は、CPUまたはMPUのようにストアードプログラム方式で処理を実行する狭義のプロセッサに限らず、ASICまたはFPGAなどのハードワイヤード回路を含み得る。このため、演算装置11の一例である「プロセッサ」は、コンピュータ読み取り可能なコードおよび/またはハードワイヤード回路によって予め処理が定義されている、処理回路(processing circuitry)と読み替えることもできる。なお、演算装置11は、1チップで構成されてもよいし、複数のチップで構成されてもよい。さらに、プロセッサおよび関連する処理回路は、ローカルエリアネットワークまたは無線ネットワークなどを介して、有線または無線で相互接続された複数のコンピュータで構成されてもよい。プロセッサおよび関連する処理回路は、入力データに基づきリモートで演算し、その演算結果を離れた位置にある他のデバイスへと出力するような、クラウドコンピュータで構成されてもよい。
【0031】
メモリ12は、演算装置11が各種のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードまたはワークメモリなどを一時的に格納する揮発性の記憶領域(たとえば、ワーキングエリア)を含む。メモリ12の一例としては、DRAM(dynamic random access memory)およびSRAM(static random access memory)などの揮発性メモリ、または、ROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリなどの不揮発性メモリが挙げられる。
【0032】
記憶装置13は、演算装置11が実行する各種のプログラムまたは各種のデータなどを記憶する。記憶装置13は、1または複数の非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)であってもよいし、1または複数のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(computer readable storage medium)であってもよい。記憶装置13の一例としては、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)などが挙げられる。
【0033】
記憶装置13は、データ生成プログラム30を格納する。データ生成プログラム30は、演算装置11が顎運動中の上下歯列の動画データを生成するためのデータ生成処理の内容が記述されている。
【0034】
入力インターフェース14は、「入力部」の一例である。入力インターフェース14は、上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データを取得する。上述したように、データ生成装置1においては、ユーザが三次元スキャナを用いて取得した対象者の上下歯列の表面を構成する点群の各点の位置情報を含む三次元データが上顎歯列データおよび下顎歯列データとして入力インターフェース14から入力される。また、データ生成装置1においては、ユーザがCT撮像装置を用いて取得した対象者の上顎および下顎の三次元の体積(ボクセル)データが上顎歯列データおよび下顎歯列データとして入力インターフェース14から入力されてもよい。さらに、データ生成装置1においては、ユーザが顎運動測定装置を用いて取得した対象者の顎運動中における上顎および下顎の位置を示すデータが顎運動データとして入力インターフェース14から入力される。なお、データ生成装置1においては、ユーザがシミュレーションによって生成した対象者の顎運動中における上顎および下顎の位置を示すデータが顎運動データとして入力インターフェース14から入力されてもよい。
【0035】
なお、入力インターフェース14は、上顎歯列データとして、三次元スキャナによって取得される上顎の歯列の三次元データと、CT撮像装置によって取得される上顎の三次元の体積(ボクセル)データとのうちの少なくとも1つを取得してもよい。また、入力インターフェース14は、下顎歯列データとして、三次元スキャナによって取得される下顎の歯列の三次元データと、CT撮像装置によって取得される下顎の三次元の体積(ボクセル)データとのうちの少なくとも1つを取得してもよい。
【0036】
ディスプレイインターフェース15は、ディスプレイ40を接続するためのインターフェースである。ディスプレイインターフェース15は、データ生成装置1とディスプレイ40との間のデータの入出力を実現する。たとえば、データ生成装置1は、ディスプレイインターフェース15を介して、生成した動画データに基づく動画をディスプレイ40に表示させる。
【0037】
周辺機器インターフェース16は、キーボード61およびマウス62などの周辺機器を接続するためのインターフェースである。周辺機器インターフェース16は、データ生成装置1と周辺機器との間のデータの入出力を実現する。たとえば、ユーザは、キーボード61およびマウス62などの周辺機器を用いることで、周辺機器インターフェース16を介して所望の指令を入力することができ、当該指令に基づきデータ生成装置1に動画データを生成および編集させることができる。
【0038】
記憶媒体インターフェース17は、リムーバブルディスクなどの記憶媒体20に格納されている各種のデータを読み出したり、各種のデータを記憶媒体20に書き出したりする。たとえば、データ生成装置1は、記憶媒体インターフェース17を介して記憶媒体20からデータ生成プログラム30を取得してもよいし、記憶媒体インターフェース17を介して動画データを記憶媒体20に書き出してもよい。記憶媒体20は、1または複数の非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)であってもよいし、1または複数のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(computer readable storage medium)であってもよい。なお、データ生成装置1が記憶媒体インターフェース17を介して記憶媒体20から上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データを取得する場合、記憶媒体インターフェース17は、「入力部」の一例に成り得る。
【0039】
通信装置18は、有線通信または無線通信を介して、外部装置との間でデータを送受信する。たとえば、データ生成装置1は、通信装置18を介して外部装置からデータ生成プログラム30を受信してもよいし、通信装置18を介して動画データを外部装置に送信してもよい。なお、データ生成装置1が通信装置18を介して外部装置から上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データを取得する場合、通信装置18は、「入力部」の一例に成り得る。
【0040】
[動画データの一例]
図3図9を参照しながら、実施の形態1に係るデータ生成装置1によって生成される動画データの一例を説明する。図3は、実施の形態1に係るデータ生成装置1によって生成される動画データのフレームの一例を説明するための図である。
【0041】
図3に示すように、ユーザは、データ生成装置1によって生成される動画データを用いることで、様々な視点から見た上下歯列の動画を確認することができる。図3の例では、データ生成装置1は、上下歯列を側面側から見た場合の動画の1フレーム(側面側のフレーム41)、上顎の歯列を下顎の咬合面側から見た場合の動画の1フレーム(上顎側のフレーム42)、および下顎の歯列を上顎の咬合面側から見た場合の動画の1フレーム(下顎側のフレーム43)をディスプレイ40に表示している。なお、図3に示す側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43は、三次元スキャナによって取得された上下歯列の三次元データを用いて生成されたレンダリング画像と、CT撮像装置によって取得された上顎および下顎の体積データを用いて生成されたレンダリング画像とを合成させた画像である。
【0042】
なお、図3に示す側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43は、同一タイミングで同じ上下歯列を様々な視点から見た動画のフレームであり、上顎の歯列と下顎の歯列とが一部で離れた状態(開口状態)を示している。さらに、側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43の各々においては、上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係に応じて異なる色が付加されている。なお、データ生成装置1は、フレーム41のレンダリング画像およびヒートマップについては顎運動の動画とともに変化させる一方で、フレーム42のレンダリング画像およびフレーム43のレンダリング画像については動かさずに静止させてヒートマップのみを変化させてユーザに見せてもよい。
【0043】
上述したように、データ生成装置1は、入力インターフェース14を介して取得した上顎歯列データおよび下顎歯列データに基づき、対象者の上下歯列の表面を構成する点群の各点の位置情報(X,Y,Z)を認識することができる。そこで、データ生成装置1は、上下歯列の表面を構成する点群の各点の位置情報に基づき、上顎の歯列を構成する所定の点と下顎の歯列を構成する所定の点との間の距離を算出し、算出した距離に応じて、上顎の歯列を構成する所定の点および下顎の歯列を構成する所定の点の各々に対して色を付加する。
【0044】
図4は、上顎の歯列を構成する所定の点と下顎の歯列を構成する所定の点との間の距離に応じた色の付加を説明するための図である。図4に示すように、データ生成装置1は、上顎の歯列を構成する所定の点と下顎の歯列を構成する所定の点との間の距離が0mm、すなわち上顎の歯列を構成する所定の点と下顎の歯列を構成する所定の点とが接触している場合は、距離の算出対象となった上下歯列における所定の点に赤色を付加する。データ生成装置1は、上顎の歯列を構成する所定の点と下顎の歯列を構成する所定の点との間の距離が0mmを超えかつ1mm未満である場合は、距離の算出対象となった上下歯列における所定の点に黄色を付加する。データ生成装置1は、上顎の歯列を構成する所定の点と下顎の歯列を構成する所定の点との間の距離が1mm以上でありかつ2mm未満である場合は、距離の算出対象となった上下歯列における所定の点に緑色を付加する。データ生成装置1は、上顎の歯列を構成する所定の点と下顎の歯列を構成する所定の点との間の距離が2mm以上でありかつ3mm未満である場合は、距離の算出対象となった上下歯列における所定の点に青色を付加する。データ生成装置1は、上顎の歯列を構成する所定の点と下顎の歯列を構成する所定の点との間の距離が3mm以上である場合は、距離の算出対象となった上下歯列における所定の点に色を付加しない。
【0045】
なお、上述した上顎の歯列と下顎の歯列との間の2点間距離と、付加される色との関係は、ユーザによって適宜設定可能である。たとえば、ユーザは、キーボード61およびマウス62を用いて、上顎の歯列と下顎の歯列との間の2点間距離に対する色を設定することができる。データ生成装置1は、ユーザの設定に基づき、上顎の歯列と下顎の歯列との間の2点間距離に応じて異なる色を動画の各フレームに付加する。
【0046】
図5は、上顎の歯列を構成する所定の点と下顎の歯列を構成する所定の点との間の距離の算出を説明するための図である。図5に示すように、データ生成装置1は、上顎の歯列と下顎の歯列との間の2点間距離を算出する際、顎運動の運動方向に沿った2点間距離と、最近傍の2点間距離とのうち、いずれかを選択可能である。
【0047】
たとえば、データ生成装置1は、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離として、上顎の歯列を構成する所定の点と、当該所定の点を起点にして顎運動の方向に沿った方向に存在する下顎の歯列を構成する点との間の距離を算出する。すなわち、データ生成装置1は、下顎の歯列を構成する点群のうち、上顎の歯列を構成する所定の点を起点にして顎運動の方向に沿った方向に存在する点を選択し、選択した下顎の歯列の点と、上顎の歯列の当該所定の点との間の距離を算出する。
【0048】
具体的には、データ生成装置1は、入力インターフェース14を介して取得した顎運動データに基づき、顎運動の方向を認識することができる。上顎および下顎とが上下方向(咬合状態から開口状態への顎運動方向,開口状態から咬合状態への顎運動方向)に運動する場合、データ生成装置1は、顎運動データに基づき、上顎および下顎とが上下方向に運動する間、時系列の上顎および下顎の位置を認識することができる。データ生成装置1は、時系列で認識した上顎および下顎の位置に基づき、顎運動の方向に沿って、上顎の歯列を構成する所定の点と下顎の歯列を構成する所定の点との間の距離を算出する。
【0049】
また、データ生成装置1は、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離として、上顎の歯列を構成する所定の点と、下顎の歯列を構成する点群のうちの当該所定の点に最も近い点との間の距離を算出する。すなわち、データ生成装置1は、下顎の歯列を構成する点群のうち、上顎の歯列を構成する所定の点に最も近い点を選択し、選択した下顎の歯列の点と、上顎の歯列の当該所定の点との間の距離を算出する。
【0050】
このように、データ生成装置1は、上顎の歯列と下顎の歯列との間の2点間距離として、運動方向に沿った2点間距離と最近傍の2点間距離とのうち、いずれかを算出してもよい。
【0051】
なお、上述した上顎の歯列と下顎の歯列との間の2点間距離の基準は、ユーザによって適宜設定可能である。たとえば、ユーザは、キーボード61およびマウス62を用いて、運動方向に沿った2点間距離と最近傍の2点間距離とのうち、いずれかを選択することができる。データ生成装置1は、ユーザの選択に基づき、上顎の歯列と下顎の歯列との間の2点間距離を算出し、算出した距離に応じて異なる色を動画の各フレームに付加する。
【0052】
また、データ生成装置1は、上顎の歯列を構成する所定の点と、所定の平面モデルの平面に対する垂直方向に存在する下顎の歯列を構成する点との間の距離を算出することで、上顎の歯列と下顎の歯列との間の2点間距離を算出してもよい。たとえば、平面モデルとしては、顔を正面から見た場合に鼻の穴と耳の穴とが水平状態になるカンペル平面と、目と耳の穴とが水平状態(すなわち、顎を引いた状態)になるフランクフルト平面と、切歯点(下顎左右中切歯の近心隅角間の中点)と下顎左右第二大臼歯の遠心頬側咬頭頂の3点を結んでできる咬合平面とがある。さらに、データ生成装置1は、これら複数の平面モデルのうち、ユーザによって選択された平面モデルを用いて、上顎の歯列を構成する所定の点と、当該所定の点を通り当該平面モデルの平面に対する概垂直方向に存在する下顎の歯列を構成する点または当該方向の直線から最も近い下顎の歯列を構成する点との間の距離を算出してもよい。
【0053】
図3に戻り、データ生成装置1によって色づけされた側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43の各々においては、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離に応じて色が異なるように、上下歯列がヒートマップ形式で表示されている。たとえば、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離が比較的近い点には赤色または黄色が付加され、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離が比較的遠い点には緑色または青色が付加される。つまり、データ生成装置1は、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離が遠いほど、第1の色の系統(たとえば、寒色)が濃くなり、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離が近いほど、第2の色の系統(たとえば、暖色)が濃くなるように、ディスプレイ40に各フレームを表示する。これにより、ディスプレイ40に表示されたフレームを見た術者は、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離を認識することができる。これにより、ユーザは、顎運動中における上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係、すなわち、上顎の歯列と下顎の歯列とが近い部分、および上顎の歯列と下顎の歯列とが遠い部分を、ヒートマップを用いて容易に確認することができる。
【0054】
図6図8は、実施の形態1に係るデータ生成装置1によって生成される動画データの各フレームの一例を説明するための図である。なお、図6図8に示す側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43は、三次元スキャナによって取得された上下歯列の三次元データを用いて生成されたレンダリング画像と、CT撮像装置によって取得された上顎および下顎の体積データを用いて生成されたレンダリング画像とを合成させた画像である。図6図8においては、上顎の歯列と下顎の歯列とが接触した状態(咬合状態)から上顎の歯列と下顎の歯列とが一部で離れている状態(開口状態)になり、その後再び、上顎の歯列と下顎の歯列とが接触した状態(咬合状態)になるまでの顎運動の動画の各フレームが時系列(t1~t6)で示されている。このとき、データ生成装置1は、フレーム41のレンダリング画像およびヒートマップについては顎運動の動画とともに変化させる一方で、フレーム42のレンダリング画像およびフレーム43のレンダリング画像については動かさずに静止させてヒートマップのみを変化させる。
【0055】
たとえば、図6に示すように、t1(たとえば、0msec)においては、上顎の歯列と下顎の歯列とが接触した状態(咬合状態)における、側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43がディスプレイ40に表示される。t2(たとえば、0msec~30msec)においては、上顎の歯列と下顎の歯列とが一部で少し離れた状態における、側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43がディスプレイ40に表示される。
【0056】
図7に示すように、t3(たとえば、30msec~60msec)およびt4(たとえば、60msec~90msec)については、上顎の歯列と下顎の歯列とが一部でさらに離れた状態(開口状態)における、側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43がディスプレイ40に表示される。
【0057】
図8に示すように、t5(たとえば、90msec~120msec)においては、上顎の歯列と下顎の歯列とが一部で少し離れた状態における、側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43がディスプレイ40に表示される。t6(たとえば、120msec~150msec)においては、上顎の歯列と下顎の歯列とが接触した状態(咬合状態)における、側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43がディスプレイ40に表示される。各タイミングt1~t6において、データ生成装置1は、t1からの経過時間、上顎の歯列と下顎の歯列との間の予想距離の数値、またはインジケータ50などを同じ画面に表示してもよい。このような画面が表示されたディスプレイ40を見た術者は、適切な時間感覚および距離感覚を得ることができる。
【0058】
さらに、図6図8に示すように、t1~t6の各フレームにおいては、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離が比較的近い点には赤色または黄色が付加され、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離が比較的遠い点には緑色または青色が付加されるといったように、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離に応じて色が異なるように、上下歯列がヒートマップ形式で表示されている。
【0059】
たとえば、図6のt1および図8のt6においては、上顎の歯列と下顎の歯列とが接触した状態(咬合状態)にあるため、側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43の各フレームで示される歯列においては、比較的、赤色または黄色が付加された部分が多い。一方、図7のt3およびt4においては、上顎の歯列と下顎の歯列とが一部で離れた状態(開口状態)にあるため、側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43の各フレームで示される歯列においては、比較的、緑色または青色が付加された部分が多い。
【0060】
このように、データ生成装置1は、動画の各フレームにおいて、上顎の歯列および下顎の歯列に対して、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係に応じて異なる色を付加するため、時系列で顎運動が行われている間に、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離が変化する様子を、色を用いたヒートマップ形式でユーザに見せることができる。これにより、ユーザは、顎運動中における上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を容易に確認することができる。
【0061】
なお、データ生成装置1は、動画データを用いて動画を再生する間、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離を時系列で算出し、算出した距離に応じた色を、当該時系列で各フレームを表示する際に当該各フレームに付加してもよい。あるいは、データ生成装置1は、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離に応じた色を各フレームに付加して色付きの動画データを予め生成しておき、予め生成していた動画データを用いて動画を再生してもよい。また、図6図8に例示される各フレームは、図示された開口運動に限らず、左側方運動、右側方運動、前方運動、または咀嚼運動など、任意の顎運動を表示してもよい。
【0062】
図9は、実施の形態1に係るデータ生成装置1によって再生される動画に関する設定の一例を説明するための図である。なお、図9に示す側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43は、三次元スキャナによって取得された上下歯列の三次元データを用いて生成されたレンダリング画像と、CT撮像装置によって取得された上顎および下顎の体積データを用いて生成されたレンダリング画像とを合成させた画像である。図9に示すように、データ生成装置1は、動画データの各フレームにおいて、ユーザが顎運動をシミュレーションするための設定欄45を表示してもよい。
【0063】
たとえば、設定欄45は、ユーザがキーボード61またはマウス62を用いて操作可能なアイコン401~407およびシークバー408~412を含む。
【0064】
アイコン401は、咬頭嵌合位に上下歯列を位置させるためのアイコンである。ユーザがアイコン401をクリックすると、ディスプレイ40に表示された側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、下顎が動くことによって上下歯列が咬頭嵌合位に位置する。なお、咬頭嵌合位とは、上下歯列が最も多くの箇所で接触して、安定した状態にあるときの顎の位置である。
【0065】
アイコン402は、自然咬合位に上下歯列を位置させるためのアイコンである。ユーザがアイコン402をクリックすると、ディスプレイ40に表示された側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、下顎が動くことによって上下歯列が自然咬合位に位置する。なお、自然咬合位とは、上下歯列が自然に接触した状態にあるときの顎の位置である。
【0066】
アイコン403は、上下歯列が左側方運動を行うことを示す動画を再生させるためのアイコンである。ユーザがアイコン403をクリックすると、ディスプレイ40に表示された側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、上下歯列が左側方運動を行うことを示す動画が再生される。シークバー408は、上下歯列が左側方運動を行うことを示す動画において、ユーザが所望のタイミングのフレームを表示させるためのシークバーである。なお、左側方運動とは、下顎が左側方に移動する運動である。
【0067】
アイコン404は、上下歯列が右側方運動を行うことを示す動画を再生させるためのアイコンである。ユーザがアイコン404をクリックすると、ディスプレイ40に表示された側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、上下歯列が右側方運動を行うことを示す動画が再生される。シークバー409は、上下歯列が右側方運動を行うことを示す動画において、ユーザが所望のタイミングのフレームを表示させるためのシークバーである。なお、右側方運動とは、下顎が右側方に移動する運動である。
【0068】
アイコン405は、上下歯列が前方運動を行うことを示す動画を再生させるためのアイコンである。ユーザがアイコン405をクリックすると、ディスプレイ40に表示された側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、上下歯列が前方運動を行うことを示す動画が再生される。シークバー410は、上下歯列が前方運動を行うことを示す動画において、ユーザが所望のタイミングのフレームを表示させるためのシークバーである。なお、前方運動とは、下顎が前方に移動する運動である。
【0069】
アイコン406は、上下歯列が開口運動を行うことを示す動画を再生させるためのアイコンである。ユーザがアイコン406をクリックすると、ディスプレイ40に表示された側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、上下歯列が開口運動を行うことを示す動画が再生される。シークバー411は、上下歯列が開口運動を行うことを示す動画において、ユーザが所望のタイミングのフレームを表示させるためのシークバーである。なお、開口運動とは、下顎が動くことによって上下歯列が開口する運動である。
【0070】
アイコン407は、上下歯列が咀嚼運動を行うことを示す動画を再生させるためのアイコンである。ユーザがアイコン407をクリックすると、ディスプレイ40に表示された側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、上下歯列が咀嚼運動を行うことを示す動画が再生される。シークバー412は、上下歯列が咀嚼運動を行うことを示す動画において、ユーザが所望のタイミングのフレームを表示させるためのシークバーである。なお、咀嚼運動とは、下顎が動くことによって上下歯列が咀嚼する運動である。
【0071】
このように、データ生成装置1は、設定欄45を用いて入力された指令に基づき、ディスプレイ40に表示された側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、上下歯列を様々な位置に移動させたり、上下歯列を様々な方向に運動させたりすることができる。これにより、ユーザは、顎運動を自由にシミュレーションすることができる。
【0072】
さらに、データ生成装置1は、動画データの各フレームにおいて、予め設定された視点を基準にしてユーザが顎運動をシミュレーションするための設定欄46を表示してもよい。
【0073】
設定欄46は、ユーザがキーボード61またはマウス62を用いて入力可能な入力欄413と、ユーザがキーボード61またはマウス62を用いて操作可能なシークバー414およびアイコン415を含む。
【0074】
入力欄413は、予め設定された視点を基準にして上下歯列の位置を移動させるための移動量をユーザが直接的に入力するための欄である。
【0075】
シークバー414は、予め設定された視点を基準にして上下歯列の位置を移動させるための移動量をユーザが設定するためのシークバーである。
【0076】
たとえば、基準として咬合平面が予め設定されている場合、ユーザが入力欄413に直接的に入力した移動量またはシークバー414を用いて設定した移動量に基づいて、咬合平面に対して垂直方向に上下歯列が移動する。
【0077】
アイコン415は、入力欄413に入力された移動量およびシークバー414を用いて設定された移動量をリセットするためのアイコンである。
【0078】
このように、データ生成装置1は、入力欄413に入力された移動量およびシークバー414を用いて設定された移動量に基づき、ディスプレイ40に表示された側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、上下歯列を様々な位置に移動させることができる。これにより、ユーザは、顎運動を自由にシミュレーションすることができる。
【0079】
[データ生成処理]
図10を参照しながら、実施の形態1に係るデータ生成装置1が実行するデータ生成処理を説明する。図10は、実施の形態1に係るデータ生成装置1が実行するデータ生成処理の一例を説明するためのフローチャートである。図10に示す各STEP(以下、「S」で示す。)は、データ生成装置1の演算装置11がデータ生成プログラム30を実行することで実現される。
【0080】
図10に示すように、データ生成装置1は、上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データを取得する(S1)。データ生成装置1は、取得した上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データに基づき、動画データを生成する(S2)。データ生成装置1は、動画データを生成する際、図6図8に示すように、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を示す指標を顎運動の動画に付加する。データ生成装置1は、生成した動画データを記憶装置13に記憶する(S3)。
【0081】
このように、データ生成装置1は、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を示す指標を付加した上顎歯列データまたは下顎歯列データの動画データを生成するため、ユーザは、顎運動中における上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係に応じて上下歯列の接触位置を確認することができる。具体的には、図6図8に示すように、ユーザは、時系列で顎運動が行われている間に、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離が変化する様子を、色を用いたヒートマップを用いて容易に確認することができる。
【0082】
これにより、術者などのユーザは、上下歯列における早期接触位置を、上顎の歯列および下顎の歯列が動作する動画の中で容易に確認することができるため、上顎の歯列および下顎の歯列におけるどの部分を治療して、噛み合わせを調整すればよいか、容易に把握することができる。
【0083】
<実施の形態2>
図11を参照しながら、実施の形態2に係るデータ生成装置1を説明する。なお、実施の形態2に係るデータ生成装置1においては、実施の形態1に係るデータ生成装置1と異なる部分のみを説明し、実施の形態1に係るデータ生成装置1と同じ部分については、同一符号を付してその説明を繰り返さない。
【0084】
図11は、実施の形態2に係るデータ生成装置1によって動画データに付加される指標の一例を説明するための図である。図11に示すように、データ生成装置1は、指標として、上顎の歯列を構成する点群および下顎の歯列を構成する点群のうちのユーザによって指定された点に対して、上顎の歯列を構成する点群の各点と下顎の歯列を構成する点群の各点との間の距離を表示してもよい。
【0085】
たとえば、データ生成装置1は、側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、上顎の歯列を構成する点群および下顎の歯列を構成する点群のうち、ユーザが所望の点を指定すると、ユーザによって指定された点(たとえば、下顎の歯列における点)に対して、ユーザによって指定された点(たとえば、下顎の歯列における点)と対向する点(たとえば、上顎の歯列における点)との間の距離を付加してもよい。さらに、データ生成装置1は、側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、ユーザによって指定された点に対応する歯を特定可能な情報(たとえば、歯の番号)を付加してもよい。
【0086】
これにより、ユーザは、上顎の歯列を構成する点群および下顎の歯列を構成する点群のうち、所望の点を指定することで、指定した点に対応する歯を特定することができるとともに、指定した点と当該点に対向する点との間の距離を容易に確認することができる。
【0087】
<実施の形態3>
図12を参照しながら、実施の形態3に係るデータ生成装置1を説明する。なお、実施の形態3に係るデータ生成装置1においては、実施の形態1に係るデータ生成装置1と異なる部分のみを説明し、実施の形態1に係るデータ生成装置1と同じ部分については、同一符号を付してその説明を繰り返さない。
【0088】
図12は、実施の形態3に係るデータ生成装置1によって動画データに付加される指標の一例を説明するための図である。図12に示すように、データ生成装置1は、指標として、上顎の歯列を構成する点群および下顎の歯列を構成する点群のうち、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離が閾値を超える点に対応する部分を特定可能な情報を付加してもよい。なお、閾値は、たとえば、0mmまたは1mmなど、ユーザによって設定可能であってもよい。
【0089】
たとえば、データ生成装置1は、開口状態から咬合状態へと顎が運動する場合において、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離が縮まって当該距離が閾値を超える(たとえば、1mm以下となる)と、当該点に対して当該点に対応する部分の歯の位置および歯の番号などを付加してもよい。そして、顎運動によって上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離が縮まることに従って、当該距離が閾値を超える点が多くなると、データ生成装置1は、閾値を超える点に対して当該点に対応する部分の歯の位置および歯の番号などを順番に付加してもよい。
【0090】
これにより、ユーザは、顎運動中において、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離が閾値を超える点の部分を容易に確認することができるとともに、早期接触位置および接触する順番も容易に把握することができる。これにより、術者などのユーザは、上顎の歯列および下顎の歯列におけるどの部分をどの順番で治療して、噛み合わせを調整すればよいか、適切に把握することができる。
【0091】
<実施の形態4>
図13を参照しながら、実施の形態4に係るデータ生成装置1を説明する。なお、実施の形態4に係るデータ生成装置1においては、実施の形態1に係るデータ生成装置1と異なる部分のみを説明し、実施の形態1に係るデータ生成装置1と同じ部分については、同一符号を付してその説明を繰り返さない。
【0092】
図13は、実施の形態4に係るデータ生成装置1によって動画データに付加される指標の一例を説明するための図である。図13に示すように、データ生成装置1は、上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データに基づき、上顎の歯列および下顎の歯列のうちの少なくとも1つの断面を示す顎運動の動画に指標を付加してもよい。
【0093】
たとえば、データ生成装置1は、CT撮像装置によって得られた上顎および下顎の三次元の体積(ボクセル)データに基づき、上下歯列を上方側から見た場合の上下歯列の横断面、上下歯列を前面側から見た場合の上下歯列の縦断面、および上下歯列を側面側から見た場合の上下歯列の縦断面などを示す動画データを生成し、各断面の各フレームにおいて、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離に応じて異なる色を付加してもよい。
【0094】
これにより、ユーザは、上顎の歯列および下顎の歯列のうちの少なくとも1つの断面を示す顎運動の動画によって、顎運動中における上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を容易に確認することができる。
【0095】
なお、データ生成装置1は、CT撮像装置によって得られた上顎および下顎の三次元の体積(ボクセル)データに基づき上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離を算出する場合、たとえば、上顎を表すボクセルの中心と、下顎を表すボクセルの中心との間の距離を算出することで、上顎の歯列と下顎の歯列との間の距離を算出すればよい。
【0096】
<実施の形態5>
図14を参照しながら、実施の形態5に係るデータ生成装置1を説明する。なお、実施の形態5に係るデータ生成装置1においては、実施の形態1に係るデータ生成装置1と異なる部分のみを説明し、実施の形態1に係るデータ生成装置1と同じ部分については、同一符号を付してその説明を繰り返さない。
【0097】
図14は、実施の形態5に係るデータ生成装置1によって動画データに付加される指標の一例を説明するための図である。図14に示すように、データ生成装置1は、上顎歯列データ、下顎歯列データ、および顎運動データに基づき、顎運動に伴って変化する顎関節の位置関係を示す指標を付加してもよい。
【0098】
たとえば、データ生成装置1は、CT撮像装置によって得られた上顎および下顎の三次元の体積(ボクセル)データに基づき、左側面側から見た顎運動中の頭蓋骨を示す動画データを生成し、各フレームにおいて、側頭骨における下顎窩と下顎骨における下顎頭との間の距離に応じて異なる色を付加してもよい。また、データ生成装置1は、左側面側から見た顎運動中の頭蓋骨に限らず、右側面側から見た顎運動中の頭蓋骨においても、動画データの各フレームにおいて、側頭骨における下顎窩と下顎骨における下顎頭との間の距離に応じて異なる色を付加してもよい。さらに、データ生成装置1は、左側面側における顎関節と、右側面側における顎関節との位置関係(たとえば、両者のズレ)を示すように、指標を付加してもよい。
【0099】
これにより、ユーザは、顎運動の動画によって、顎運動に伴って変化する顎関節の位置関係を容易に確認することができる。
【0100】
<実施の形態6>
図15を参照しながら、実施の形態6に係るデータ生成装置1を説明する。なお、実施の形態6に係るデータ生成装置1においては、実施の形態1に係るデータ生成装置1と異なる部分のみを説明し、実施の形態1に係るデータ生成装置1と同じ部分については、同一符号を付してその説明を繰り返さない。
【0101】
図15は、実施の形態6に係るデータ生成装置1によって動画データに付加される指標の一例を説明するための図である。図15に示すように、データ生成装置1は、上顎歯列データおよび下顎歯列データに基づき、上顎の歯列および下顎の歯列の各々を構成する少なくとも1つのメッシュを生成してもよい。たとえば、データ生成装置1は、予め決められた範囲内に存在する3つ以上の点を直線で結び付けることによって1つのメッシュを生成する。なお、図15の例では、データ生成装置1は、3つの点を直線で結び付けることによって1つの三角形のメッシュを生成しているが、4つの点を直線で結び付けることによって1つの四角形のメッシュを生成してもよいし、5つ以上の点を直線で結び付けることによって1つのメッシュを生成してもよい。
【0102】
さらに、データ生成装置1は、上顎の歯列を構成する点群に基づき生成される上顎側のメッシュおよび下顎の歯列を構成する点群に基づき生成される下顎側のメッシュに対して、指標を付加してもよい。たとえば、データ生成装置1は、図6図8に示すように、指標として、上顎側のメッシュ(たとえば、三角形の平面)および下顎側のメッシュ(たとえば、三角形の平面)に対して、上顎側のメッシュと下顎側のメッシュとの間の距離に応じて異なる色を付加してもよい。
【0103】
たとえば、上顎側のメッシュは、上顎の歯列を構成する点群の各々を頂点にした三角形の平面を有する。下顎側のメッシュは、上顎の歯列を構成する点群の各々を頂点にした三角形の平面を有する。データ生成装置1は、上顎側のメッシュの頂点と下顎側のメッシュの頂点との間の距離を算出し、算出した距離に応じて異なる色を、上顎側のメッシュおよび下顎側のメッシュに対して付加してもよい。
【0104】
なお、データ生成装置1は、上顎側のメッシュの平面上の任意の点と下顎側のメッシュの平面上の任意の点との間の距離を算出し、算出した距離に応じて異なる色を、上顎側のメッシュおよび下顎側のメッシュに対して付加してもよい。また、データ生成装置1は、上顎側のメッシュの頂点と下顎側メッシュの平面上の任意の点との間の距離を算出し、算出した距離に応じて異なる色を、上顎側のメッシュおよび下顎側のメッシュに対して付加してもよい。さらに、データ生成装置1は、上顎側のメッシュの平面上の任意の点と下顎側のメッシュの頂点との間の距離を算出し、算出した距離に応じて異なる色を、上顎側のメッシュおよび下顎側のメッシュに対して付加してもよい。
【0105】
また、上顎側のメッシュの平面上の任意の点は、上顎の歯列を構成する点群の各々を頂点にした三角形の重心、内心、または外心であってもよい。さらに、下顎側メッシュの平面上の任意の点は、下顎の歯列を構成する点群の各々を頂点にした三角形の重心、内心、または外心であってもよい。
【0106】
なお、データ生成装置1は、図11に示すように、指標として、側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、ユーザによって指定されたメッシュに対して、上顎側のメッシュと下顎側のメッシュとの間の距離および当該点に対応する歯を特定可能な情報(たとえば、歯の番号)を付加してもよい。さらに、データ生成装置1は、図12に示すように、指標として、側面側のフレーム41、上顎側のフレーム42、および下顎側のフレーム43において、上顎側のメッシュと下顎側のメッシュとの間の距離が閾値以下となる点に対応する部分を特定可能な情報を付加してもよい。
【0107】
<実施の形態7>
図16を参照しながら、実施の形態7に係るデータ生成装置1を説明する。なお、実施の形態7に係るデータ生成装置1においては、実施の形態1に係るデータ生成装置1と異なる部分のみを説明し、実施の形態1に係るデータ生成装置1と同じ部分については、同一符号を付してその説明を繰り返さない。
【0108】
図16は、実施の形態7に係るデータ生成装置によって動画データに付加される指標の一例を説明するための図である。図16に示すように、データ生成装置1は、顎運動に伴って変化する顎関節の位置関係を示す指標を、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係を示す指標とともに、顎運動の動画に付加してもよい。
【0109】
これにより、術者などのユーザは、顎運動に伴って変化する上顎の歯列と下顎の歯列との位置関係とともに、顎運動に伴って変化する顎関節の位置関係も同時に確認することができる。
【0110】
なお、上述した実施の形態1~7の各々に係るデータ生成装置1は、互いの構成および機能を単独または組み合わせて備えていてもよい。
【0111】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。なお、本実施の形態で例示された構成および変形例で例示された構成は、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0112】
1 データ生成装置、11 演算装置、12 メモリ、13 記憶装置、14 入力インターフェース、15 ディスプレイインターフェース、16 周辺機器インターフェース、17 記憶媒体インターフェース、18 通信装置、20 記憶媒体、30 データ生成プログラム、40 ディスプレイ、41 側面側のフレーム、42 上顎側のフレーム、43 下顎側のフレーム、45,46 設定欄、50 インジケータ、61 キーボード、62 マウス、401,402,403,404,405,406,407,415 アイコン、408,409,410,412,414 シークバー、413 入力欄。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16