(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155328
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241024BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/302 101R
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069972
(22)【出願日】2023-04-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴司
(72)【発明者】
【氏名】松丸 郁子
(72)【発明者】
【氏名】上松 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 志郎
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004CA04
5F004DA22
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA09
5F131CA18
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB14
5F131EB18
5F131EB54
5F131EB57
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】対象物に気体が勢いよく当たることを抑制できる保持装置を提供する。
【解決手段】ウェハWを保持する第1表面S1と、第1の方向において第1表面S1の反対側に位置する第2表面S2と、第1表面S1と第2表面S2とに通じ気体が流通する基板側ガス流路12と、を有するセラミック基板10と、基板側ガス流路12に配される多孔部70と、を備え、多孔部70は、疎領域71と、疎領域71よりも低い気孔率である密領域75と、を備え、密領域75は、第1の方向において、疎領域71と第1表面S1との間に配される表面部76と、第1の方向と直交する方向である第2の方向において、疎領域71とセラミック基板10との間に配される中間部77と、を備える、保持装置100。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する第1表面と、第1の方向において前記第1表面の反対側に位置する第2表面と、前記第1表面と前記第2表面とに通じ気体が流通するガス流路と、を有する板状部材と、
前記ガス流路に配される多孔部と、を備え、
前記多孔部は、
疎領域と、
前記疎領域よりも低い気孔率である密領域と、を備え、
前記密領域は、
前記第1の方向において、前記疎領域と前記第1表面との間に配される表面部と、
前記第1の方向と直交する方向である第2の方向において、前記疎領域と前記板状部材との間に配される中間部と、を備える、保持装置。
【請求項2】
前記密領域は、前記板状部材に接触している、請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記密領域と前記板状部材とを接着する接着部を備える、請求項1に記載の保持装置。
【請求項4】
前記第1の方向の断面視にて、前記密領域の前記表面部は、前記疎領域に対しアーチ状に接している、請求項1または請求項2に記載の保持装置。
【請求項5】
前記表面部は、前記疎領域に接する面が平坦状をなしている、請求項1または請求項2に記載の保持装置。
【請求項6】
前記多孔部において前記第1表面側に臨む面が、前記第1表面よりも前記第2表面側に位置している、請求項1または請求項2に記載の保持装置。
【請求項7】
前記疎領域は、前記第1の方向において、前記中間部と前記第2表面との間に配され、前記ガス流路に接した片部を備える、請求項1または請求項2に記載の保持装置。
【請求項8】
前記ガス流路は、
前記第1の方向に延び、前記多孔部が配された縦ガス流路と、
前記縦ガス流路と前記第2表面との間に配され、前記縦ガス流路に対し交差する形で接続した横ガス流路と、を備える、請求項1または請求項2に記載の保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保持装置として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の保持装置(静電チャック)は、裏面とチャック面とを有するチャック本体と、裏面とチャック面との間で伸びた複数の管路と、を備え、各管路が、その内部にチャック本体と一体化された多孔領域を備える。チャック面に保持されたウェハのプラズマ処理等を行う際には、チャック面の温度制御性を高めるため、熱伝導流体であるヘリウムガス等のガスが、管路を通じて、裏面から多孔領域を通ってチャック面に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、管路を通った気体(ガス)が対象物(ウェハ)に対して勢いよく当たった場合、対象物が持ち上がってしまう可能性がある。一方、多孔部(多孔領域)について、チャック本体との接合強度の向上が望まれる。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成された技術であって、対象物に気体が勢いよく当たることを抑制できる保持装置を提供することを目的の一つとする。また、多孔部の接合強度を向上できる保持装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、対象物を保持する第1表面と、第1の方向において前記第1表面の反対側に位置する第2表面と、前記第1表面と前記第2表面とに通じ気体が流通するガス流路と、を有する板状部材と、前記ガス流路に配される多孔部と、を備え、前記多孔部は、疎領域と、前記疎領域よりも低い気孔率である密領域と、を備え、前記密領域は、前記第1の方向において、前記疎領域と前記第1表面との間に配される表面部と、前記第1の方向と直交する方向である第2の方向において、前記疎領域と前記板状部材との間に配される中間部と、を備える、保持装置である。
【0007】
上記構成において、前記密領域は、前記板状部材に接触していてもよい。
【0008】
上記構成において、保持装置は、前記密領域と前記板状部材とを接着する接着部を備えていてもよい。
【0009】
上記構成において、前記第1の方向の断面視にて、前記密領域の前記表面部は、前記疎領域に対しアーチ状に接していてもよい。
【0010】
上記構成において、前記表面部は、前記疎領域に接する面が平坦状をなしていてもよい。
【0011】
上記構成では、前記多孔部において前記第1表面側に臨む面が、前記第1表面よりも前記第2表面側に位置していてもよい。
【0012】
上記構成において、前記疎領域は、前記第1の方向において、前記中間部と前記第2表面との間に配され、前記ガス流路に接した片部を備えていてもよい。
【0013】
上記構成において、前記ガス流路は、前記第1の方向に延び、前記多孔部が配された縦ガス流路と、前記縦ガス流路と前記第2表面との間に配され、前記縦ガス流路に対し交差する形で接続した横ガス流路と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、対象物に気体が勢いよく当たることを抑制できる保持装置の提供が可能となる。また、多孔部の接合強度を向上できる保持装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係る保持装置の概略構成を模式的に表した説明図
【
図4】基板側ガス流路に多孔部を押し込む態様を示す断面図
【
図9】実施形態6に係る保持装置の内部構造を模式的に表した断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本開示の実施形態1を
図1から
図4によって説明する。本開示は以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。尚、各図において、Z軸方向を、保持装置の上下方向(第1の方向)とし、X軸方向及びY軸方向を、保持装置の水平方向(第1の方向に直交する第2の方向)とする。
【0017】
図1及び
図2に示すように、保持装置100は、対象物(例えば、半導体ウェハW)を所定の処理温度(例えば、50℃~400℃)に加熱しながら、静電引力によって吸着し保持する静電チャックである。静電チャックは、例えば減圧されたチャンバー内でプラズマを用いてエッチングを行うプロセスにおいて、ウェハWを載置するテーブルとして使用される。
【0018】
保持装置100は、円板状のセラミック基板(板状部材)10と、セラミック基板10の下側に配され、円板状のベース部材20と、を備える。ベース部材20の径は、セラミック基板10よりも大きく、例えばセラミック基板10が直径300mm×厚み3mmの円板状をなす場合、ベース部材20は直径340mm×厚み20mmの円板状とすることができる。セラミック基板10とベース部材20は、接合材30によって接合されている。
【0019】
セラミック基板10は、保持装置100の上面の一部を構成した略円形状をなし、ウェハWを吸着し保持する吸着面である第1表面S1と、上下方向において第1表面S1の反対側に位置する面であって、ベース部材20に対向する略円形状の第2表面S2と、を備える。ベース部材20は、第2表面S2に対向する略円形状の第3表面S3と、上下方向において第3表面S3の反対側に位置する略円形状の第4表面S4と、を備える。接合材30は、セラミック基板10の第2表面S2とベース部材20の第3表面S3との間で挟まれつつ、層状に広がった状態となっている。
【0020】
セラミック基板10は、絶縁性の基板とされ、その材料として、例えば、アルミナ(Al2O3)を主成分とするセラミックスにより形成されている。尚、主成分とは、材料全体のうち含有割合(重量割合)の最も多い成分とする。
【0021】
また、セラミック基板10は、第1表面S1と第2表面S2とに通じる形で上下方向に延びた貫通孔とされ、気体としての不活性ガス(例えば、熱伝導流体であるヘリウムガス)が流通する複数の基板側ガス流路(ガス流路)12を備える。基板側ガス流路12は、気体を流すための流路60の一部を構成する。基板側ガス流路12は、セラミック基板10の内部に形成される。基板側ガス流路12は、セラミック基板10の第2表面S2に開口した入口12Aと、第1表面S1に開口した出口12Bと、を備える。出口12Bは、流路60全体の出口をなす。入口12Aから不活性ガスが供給されると、不活性ガスは、基板側ガス流路12を通って出口12Bから外部に排出される。
【0022】
セラミック基板10において第1表面S1の外周縁部10Bは、それよりも内側の部分10Aと比べて僅かに上方に突出しつつ、円環状に形成されている。そのため、第1表面S1にウェハWが吸着保持されると、
図2に示されるように、ウェハWと第1表面S1の内側の部分10Aとの間に隙間(ギャップ)Gが形成される。基板側ガス流路12の出口12Bは、第1表面S1(内側の部分10A)において複数設けられている。
【0023】
また、セラミック基板10は、チャック電極40、ヒータ電極(不図示)を備える。チャック電極40は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により層状(平面状)に形成される。チャック電極40は、セラミック基板10の内部において、第1表面S1側に配されている。チャック電極40に電源(不図示)から直流高電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが、セラミック基板10の第1表面S1に吸着固定される。尚、チャック電極40には、図示されない周知の給電用端子が電気的に接続されている。
【0024】
ベース部材20は、例えば、金属(アルミニウム、アルミニウム合金等)、金属とセラミックスの複合体(Al-SiC)、又はセラミックス(SiC)を主成分として構成される。
【0025】
ベース部材20の内部には、冷媒流路21が設けられている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体、水等)が流されることで、プラズマ熱の冷却が行われる。また、冷媒流路21に冷媒が流されると、ベース部材20が冷却され、接合材30を介したベース部材20とセラミック基板10との間の伝熱(熱引き)により、セラミック基板10が冷却される。その結果、セラミック基板10の第1表面S1で保持されたウェハWが冷却される。冷媒流路21における冷媒の流量を適宜、調整することにより、第1表面S1で保持されたウェハWの温度を制御することができる。
【0026】
ベース部材20の内部には、第3表面S3と第4表面S4とに通じる形で上下方向に延びた貫通孔とされ、気体が流通する複数のベース側ガス流路22が設けられている。ベース側ガス流路22は、流路60の一部を構成している。ベース側ガス流路22は、ベース部材20の第4表面S4に開口した入口22Aと、第3表面S3に開口した出口22Bとを備える。入口22Aは、保持装置100に設けられた流路60全体の入口をなす。
【0027】
接合材30は、例えば、シリコーン系の有機接合剤、無機接合剤、又はAl系の金属接着剤を含むボンディングシート等により構成される。接合材30としては、セラミック基板10及びベース部材20の双方に対して高い接着力を備えつつ、高い耐熱性及び熱伝導性を備えるものが好ましい。接合材30にも、流路60の一部を構成する接合側ガス流路31が形成されている。接合側ガス流路31は、層状の接合材30を厚み方向に貫通する孔からなる。
【0028】
流路60は、保持装置100の第1表面S1側に、不活性ガスを供給する。流路60は、上述したように、ベース側ガス流路22と、接合側ガス流路31と、基板側ガス流路12と、を備える。流路60の各入口22Aから不活性ガスが供給されると、その不活性ガスは、ベース側ガス流路22、接合側ガス流路31及び基板側ガス流路12を順次通過し、最終的に、第1表面S1に設けられた複数の出口12Bから排出される。ベース側ガス流路22の出口22Bは、接合側ガス流路31の下側(ベース部材20側)の開口部と接続する。また、接合側ガス流路31の上側(セラミック基板10側)の開口部は、基板側ガス流路12の入口12Aと接続する。
【0029】
図3に示されるように、保持装置100は、基板側ガス流路12により構成される円柱状の内部空間に配される多孔部70を備える。多孔部70は、絶縁性のセラミックスを主成分とするガス透過性の部材である。本実施形態では、多孔部70は、アルミナ(Al
2O
3)を主成分とする。本実施形態では、多孔部70のセラミックスと、セラミック基板10のセラミックスとが、互いに同じ種類のセラミックスからなる。多孔部70は、全体的には円柱状をなしている。
【0030】
多孔部70は、内部に複数の空隙を有することで、不活性ガスを通過させる通気経路が網目状に形成されてなるものとされる。多孔部70の空隙の形状・寸法・配置は、特に限定されるものではなく、様々な大きさで不定形状の空隙がランダムに配置されていてもよい。多孔部70において空隙が占める割合を、気孔率と呼ぶ。この気孔率は、例えば多孔部70の断面の電子顕微鏡画像を解析し、単位面積あたりに占める空隙の面積に基づいて算出可能とされる。
【0031】
多孔部70は、疎領域71と、疎領域71よりも低い気孔率である密領域75と、を備える。疎領域71の気孔率は、65%以上90%以下としてもよく、70%以上85%以下としてもよい。密領域75の気孔率は、60%以上80%以下としてもよく、65%以上75%以下としてもよく、68%以上73%以下としてもよい。密領域75の気孔率は、疎領域71の気孔率に対し、0.67倍以上0.92倍以下でもよく、0.76倍以上0.87倍以下でもよい。
【0032】
疎領域71は、密領域75の内側に配されており、上下方向を高さ方向とする円柱状をなしている。疎領域71は、セラミック基板10の基板側ガス流路12に接触していない。疎領域71の下面71Cは、円形状であって平坦状をなしており、第2表面S2に対し面一となっている。密領域75は、上下方向の断面視(第1方向の断面視)にて門型をなし、疎領域71の上面71A及び側面71Bを覆う形(上面71A及び71Bに接触した形)をなしている。密領域75の側面75Bは、基板側ガス流路12に接触しており、互いに固相接合により一体化されている。本実施形態では、密領域75の側面75Bは、基板側ガス流路12に対して、接着剤(例えば、シリコーン系接着剤)を使用せずに固定されている。
【0033】
密領域75は、上下方向において、疎領域71と第1表面S1との間に配される表面部76と、水平方向において、疎領域71とセラミック基板10の基板側ガス流路12との間に配される中間部77と、を備える。表面部76は、上下方向を高さ方向とする円柱状をなしている。表面部76の上面76Aは、円形状であって平坦状をなしており(
図1参照)、第1表面S1に対し面一となっている。表面部76の上面76Aは、基板側ガス流路12の出口12Bに接触している。表面部76の下面76Cは、疎領域71の上面71Aに接触する面とされ、円形状であって平坦状をなしている。
【0034】
中間部77は、上下方向を高さ方向とする円管状をなしている。中間部77の内面77Aは、疎領域71の側面71Bに接触しており、互いに固相接合により一体化されている。中間部77の下面77Cは、円環状であって平坦状をなしており、第2表面S2及び疎領域71の下面71Cに対して面一となっている。中間部77の下面77Cは、基板側ガス流路12の入口12Aに接触している。
【0035】
表面部76の上下方向における長さは、疎領域71の上下方向における長さに比して短い。これにより、多孔部70に対し入口12Aから入る気体が、疎領域71と表面部76とを通って出口12Bに向かって流れ易い。中間部77の水平方向における厚みは、疎領域71の水平方向における厚みよりも薄い。これにより、多孔部70を通る気体の流れを妨げ難く、中間部77と基板側ガス流路12との接合強度を向上可能な構造とすることができる。
【0036】
本実施形態の多孔部70を備える保持装置100の製造方法は、特に限定されないが、例えば、
図4(A)に示すように、セラミック基板10に基板側ガス流路12を形成する工程と、基板側ガス流路12に、疎領域71Eと、疎領域71Eよりも低い気孔率である密領域75Eと、を備える多孔体(多孔部)70Eを、入口12A側から押し込む工程と、を含む方法を例示することができる。基板側ガス流路12に多孔体70Eを押し込む工程では、多孔体70Eを、入口12Aに対し疎領域71Eよりも密領域75Eが先に接触するように、多孔体70Eを押し込む。基板側ガス流路12に押し込む多孔体70Eとしては、密領域75Eのうち疎領域71Eに接触する下面75E1が、上下方向における断面視にて、下方にアーチ状となる形(下方に凸となる形)をなしたものを使用する。また、基板側ガス流路12に押し込む多孔体70Eとしては、その直径(Y軸方向における長さ)が、基板側ガス流路12の直径よりも大きいものを使用する。
【0037】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、ウェハWを保持する第1表面S1と、上下方向において第1表面S1の反対側に位置する第2表面S2と、第1表面S1と第2表面S2とに通じ気体が流通する基板側ガス流路12と、を有するセラミック基板10と、基板側ガス流路12に配される多孔部70と、を備え、多孔部70は、疎領域71と、疎領域71よりも低い気孔率である密領域75と、を備え、密領域75は、上下方向において、疎領域71と第1表面S1との間に配される表面部76と、上下方向と直交する方向である水平方向において、疎領域71とセラミック基板10との間に配される中間部77と、を備える、保持装置100を示した。
【0038】
このような保持装置100によると、疎領域71と第1表面S1との間に、密領域75の一部である表面部76が配されているので、気体が基板側ガス流路12を通り疎領域71に素早く充満した場合であっても、この気体が、疎領域71よりも低い気孔率である表面部76を通って第1表面S1に向かうことで、ウェハWに対して勢いよく当たることを抑制できる。これにより、基板側ガス流路12に流す気体の流量を十分に確保しつつ、気体が勢いよく当たってウェハWが持ち上がることを抑制できる。また、多孔部70のうち、第1表面S1側の部分(表面部76)において、強度を向上させることができる。さらに、疎領域71とセラミック基板10との間に、密領域75の一部である中間部77が配されているので、多孔部70とセラミック基板10の接合面積を中間部77によって稼いで多孔部70の接合強度を向上させることができる。
【0039】
密領域75は、セラミック基板10に接触している。
【0040】
このような保持装置100によると、多孔部70とセラミック基板10の接合強度をより向上させることができる。
【0041】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2を
図5によって説明する。尚、本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0042】
多孔部270は、疎領域271と、疎領域271よりも低い気孔率である密領域275と、を備える。疎領域271は、密領域275の内側に配されている。疎領域271は、上下方向を高さ方向とする円柱状をなした円柱部272と、円柱部の上側に配され、円柱部と直径(Y軸方向における長さ)が等しい半球状(上方に膨出した形)をなした半球部273と、を備える。半球部273の上面273Aは、上方に膨出した曲面をなしており、上下方向における断面視にて、アーチ状(上方に凸となる形)をなしている。
【0043】
密領域275は、半球部273の外側(表面側)に配される表面部276と、水平方向において、円柱部272とセラミック基板10の基板側ガス流路12との間に配され、円管状をなした中間部277と、を備える。表面部276は、上下方向の断面視にて、疎領域271の半球部273に対しアーチ状に接している。具体的には、表面部276の下面276Cは、半球部273の上面273Aに接触した面であって、上方に膨出した曲面をなしており、上下方向における断面視にて、アーチ状(上方に凸となる形)をなしている。表面部276は、水平方向における中央部分から外側に向かうほど、上下方向における長さが長くなる形をなしている。表面部276は、内側部278と、内側部278の水平方向における外側に配された外側部279と、を備える。外側部279は、内側部278に比して、上下方向における長さが長い。
【0044】
本実施形態の多孔部270を備える保持装置200の製造方法は、特に限定されないが、例えば、
図4(B)に示すように、セラミック基板10に基板側ガス流路12を形成する工程と、基板側ガス流路12に、疎領域271Eと、疎領域271Eよりも低い気孔率である密領域275Eと、を備える多孔体(多孔部)270Eを、入口12A側から押し込む工程と、を含む方法を例示することができる。基板側ガス流路12に押し込む多孔体270Eとしては、密領域275Eのうち疎領域271Eに接触する下面275E1が、水平方向に平坦状をなしており、上下方向における断面視にて、直線状となる形をなしたものを使用する。
【0045】
<実施形態3>
次に、本開示の実施形態3を
図6によって説明する。尚、本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0046】
多孔部370は、疎領域371と、疎領域371よりも低い気孔率である密領域375と、を備える。疎領域371は、上下方向を高さ方向とする円柱状をなした第1円柱部372と、上下方向を高さ方向とする円柱状をなし、第1円柱部372の下側に配され、第1円柱部372よりも直径(Y軸方向における長さ)が大きい第2円柱部374と、第1円柱部372の上側に配された半球部373と、を備える。
【0047】
密領域375は、半球部373の外側(表面側)に配される表面部376と、水平方向において、第1円柱部372とセラミック基板10の基板側ガス流路12との間に配され、円環状をなした中間部377と、を備える。表面部376は、上下方向の断面視にて、半球部373に対しアーチ状に接している。中間部377の下面377Cは、上下方向において、第2表面S2よりも上方(第1表面S1側)に配されている。
【0048】
疎領域371の第2円柱部374は、上下方向に延びた円柱状の内側部374Aと、内側部374Aの水平方向における外側に配され、上下方向に延びた円管状の外側部(片部)374Bと、を備える。外側部374Bは、上下方向において、中間部377と第2表面S2との間に配されている。また、外側部374Bは、セラミック基板10の基板側ガス流路12、及び中間部377の下面377Cに接している。
【0049】
このような保持装置300によると、第2表面S2から基板側ガス流路12を通る気体が、外側部374Bを含む疎領域371から素早く多孔部370に流入することができる。これにより、基板側ガス流路12を通る気体の流量を十分に確保することと、中間部377によって接合強度を向上させることが可能となる。尚、基板側ガス流路12に接した外側部374B、とは、外側部374Bがセラミック基板10に接触している場合と、外側部374Bとセラミック基板10との間に接着層が介在している場合と、を含むものとする。
【0050】
<実施形態4>
次に、本開示の実施形態4を
図7によって説明する。尚、本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0051】
保持装置400において、セラミック基板410は、第1表面S1と第2表面S2とに通じる形で上下方向に延びた貫通孔とされ、気体が流通する複数の基板側ガス流路(ガス流路)412を備える。基板側ガス流路412は、上下方向に延びた円柱状の内部空間を有し、この内部空間に、上記実施形態2における多孔部270が配された第1ガス流路413と、第1ガス流路413の上側に配され、第1ガス流路413に連通した第2ガス流路414と、を備える。第1ガス流路413は、セラミック基板410の第2表面S2に開口した入口413Aを備える。
【0052】
多孔部270の上面276A(多孔部270において第1表面S1側に臨む面)は、第1表面S1よりも下方(第2表面S2側)に位置している。第1表面S1と上面276Aとの間には、セラミック基板410の一部(介在部)411が介在している。介在部411には、第2ガス流路414が上下方向に延びる形で貫通形成されている。
【0053】
第2ガス流路414は、複数のガス流路414A,414Bを備える。複数のガス流路414A,414Bは、内側ガス流路414Aと、内側ガス流路414Aの水平方向における外側に配された外側ガス流路414Bと、を含む。複数のガス流路414A,414Bは、それぞれ、セラミック基板410の第1表面S1に開口した出口414Cを備える。内側ガス流路414Aは、表面部276における内側部278の上側に配されている。内側ガス流路414Aの下端部は、内側部278に接触している。外側ガス流路414Bは、表面部276における外側部279の上側に配されている。外側ガス流路414Bの下端部は、外側部279に接触している。
【0054】
このような保持装置400によると、多孔部270が第1表面S1から離れる構造となるので、例えば多孔部270に他部材が接触し、多孔部270が削れることを抑制できる。
【0055】
<実施形態5>
次に、本開示の実施形態5を
図8によって説明する。尚、本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0056】
保持装置500において、セラミック基板510は、第1表面S1と第2表面S2とに通じる形で延びた貫通孔とされ、気体が流通する複数の基板側ガス流路(ガス流路)512を備える。基板側ガス流路512は、ベース側ガス流路22及び接合側ガス流路31と共に、気体としての不活性ガスを流すための流路560を構成する。基板側ガス流路512は、セラミック基板510の内部に形成される。
【0057】
基板側ガス流路512は、上下方向に延びた縦ガス流路513と、水平方向に延び、縦ガス流路513に対し交差する形で接続した横ガス流路514と、を備えている。縦ガス流路513は、第1縦ガス流路515と、第1縦ガス流路515の上方に配された第2縦ガス流路516と、を備える。第1縦ガス流路515は、セラミック基板510の第2表面S2に開口し、接合側ガス流路31の上側の開口部に接続した入口515Aを備える。横ガス流路514は、第2表面S2と第2縦ガス流路516との間であって、第1縦ガス流路515と第2縦ガス流路516との間に配されている。横ガス流路514は、第1縦ガス流路515と複数の第2縦ガス流路516(
図8では1つの第2縦ガス流路516のみを示している)とを接続する形で水平方向に延びている。第2縦ガス流路516は、第1表面S1に開口した出口516Bを備える。第2縦ガス流路516は、上下方向に延びた円柱状の内部空間を有し、この内部空間に、上記実施形態2における多孔部270が配されている。
【0058】
このような構成によると、多孔部270が配された第2縦ガス流路516に対して、交差する形で接続した横ガス流路514を、保持装置500が備えることにより、第2縦ガス流路516が複数存在する場合でも、気体を効率よく各縦ガス流路516に通して多孔部270へ流すことができる。
【0059】
本実施形態では、保持装置500は、多孔部270の密領域275とセラミック基板510(より具体的には、基板側ガス流路512の第2縦ガス流路516)とを接着する接着部580を備える。密領域275の側面275Bは、第2縦ガス流路516に対して、接着部580を介して接着している。接着部580の材料としては、例えば、シリコーン系接着剤を採用することができる。このような保持装置500によると、多孔部270とセラミック基板510の接合強度をより向上させることができる。
【0060】
<実施形態6>
次に、本開示の実施形態6を
図9によって説明する。尚、本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0061】
保持装置600において、ベース部材620の内部には、第3表面S3と第4表面S4とに通じる形で延びた貫通孔とされ、気体が流通する複数のベース側ガス流路622が設けられている。ベース側ガス流路622は、流路660の一部を構成している。ベース側ガス流路622は、上下方向に延びたベース側縦ガス流路623,625と、水平方向に延び、ベース側縦ガス流路623,625に対して交差する形で接続したベース側横ガス流路624と、を備える。ベース側縦ガス流路623,625は、ベース側横ガス流路624の下方に配された第1縦ガス流路623と、ベース側横ガス流路624の上方に配された複数の第2縦ガス流路625と、を備える。ベース側横ガス流路624は、冷媒流路21よりもセラミック基板10側に配されている。第1縦ガス流路623は、ベース部材620の第4表面S4に開口した入口623Aを備える。入口623Aは、保持装置600に設けられた流路660全体の入口をなす。複数の第2縦ガス流路625は、それぞれ、第3表面S3に開口した出口625Aを備える。複数の出口625Aは、それぞれ、接合側ガス流路31に接続する。出口625Aの数は、入口623Aの数よりも多い。流路660の入口623Aから不活性ガスが供給されると、その不活性ガスは、ベース側ガス流路622によって分岐され、複数の接合側ガス流路31及び複数の基板側ガス流路12を順次通過し、最終的に、第1表面S1に設けられた複数の出口12Bから排出される。
【0062】
<実施形態7>
次に、本開示の実施形態7を
図10によって説明する。尚、本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0063】
保持装置700において、多孔部770は、疎領域771と、疎領域771よりも低い気孔率である密領域775と、を備える。疎領域771は、上下方向を高さ方向とする円管状をなした円管部772と、円管部772の上側に配され、上方に向かうほど当該疎領域771の水平方向における中央部分に向かってラウンド状をなす形で上方に膨出した膨出部773と、円管部772及び膨出部773の水平方向における中央部分において上下方向に貫通する貫通部774と、を備える。貫通部774は、上下方向を高さ方向とする円柱状の内部空間を構成している。
【0064】
密領域775は、膨出部773の外側(表面側)に配される表面部276と、水平方向において、円管部772とセラミック基板10の基板側ガス流路12との間に配され、円管状をなした中間部277と、上下方向において表面部276(より具体的には、内側部278)の下側の位置であって貫通部774に配される貫通内側部778と、を備える。貫通内側部778は、上下方向を高さ方向とする円柱状をなしている。貫通内側部778において水平方向を向く側面778Cは、貫通部774に接触しており、互いに固相接合により一体化されている。貫通内側部778は、基板側ガス流路12に対し疎領域771及び中間部277によって水平方向に隔てられており、基板側ガス流路12に接触していない。貫通内側部778の下面778Aは、円形状であって平坦状をなしている。下面778Aは、疎領域771の下面771A及び中間部277の下面277Aに対して面一となっている。
【0065】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0066】
(1)上記実施形態1のように、上下方向に延びた基板側ガス流路に配された多孔部において、当該多孔部の下面(第2表面側に臨む面)は、第2表面よりも上方(第1表面側)に位置していてもよい。
【0067】
(2)上記実施形態以外にも、保持装置の各部材を形成する材料は適宜変更可能である。
【0068】
(3)本開示は、上記実施形態で例示した静電チャックに限定されず、セラミック基板の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、加熱装置等)にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10,410,510…セラミック基板(板状部材)、12,412,512…基板側ガス流路(ガス流路)、514…横ガス流路、516…第2縦ガス流路(縦ガス流路)、70,270,370,770…多孔部、71,271,371,771…疎領域、374B…外側部(片部)、75,275,375,775…密領域、76,276,376…表面部、77,277,377…中間部、100,200,300,400,500,600,700…保持装置、580…接着部、S1…第1表面、S2…第2表面、W…ウェハ(対象物)
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する第1表面と、第1の方向において前記第1表面の反対側に位置する第2表面と、前記第1表面と前記第2表面とに通じ気体が流通するガス流路と、を有する板状部材と、
前記ガス流路に配される多孔部と、を備え、
前記多孔部は、
疎領域と、
前記疎領域よりも低い気孔率である密領域と、を備え、
前記密領域は、
前記第1の方向において、前記疎領域と前記第1表面との間に配される表面部と、
前記第1の方向と直交する方向である第2の方向において、前記疎領域と前記板状部材との間に配される中間部と、を備え、
前記疎領域は、前記第1の方向において、前記中間部と前記第2表面との間に配され、前記ガス流路に接した片部を備える、保持装置。
【請求項2】
前記密領域は、前記板状部材に接触している、請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記密領域と前記板状部材とを接着する接着部を備える、請求項1に記載の保持装置。
【請求項4】
前記第1の方向の断面視にて、前記密領域の前記表面部は、前記疎領域に対し上方に凸となる形のアーチ状に接している、請求項1または請求項2に記載の保持装置。
【請求項5】
前記表面部は、前記疎領域に接する面が平坦状をなしている、請求項1または請求項2に記載の保持装置。
【請求項6】
前記多孔部において前記第1表面側に臨む面が、前記第1表面よりも前記第2表面側に位置している、請求項1または請求項2に記載の保持装置。
【請求項7】
前記ガス流路は、
前記第1の方向に延び、前記多孔部が配された縦ガス流路と、
前記縦ガス流路と前記第2表面との間に配され、前記縦ガス流路に対し交差する形で接続した横ガス流路と、を備える、請求項1または請求項2に記載の保持装置。