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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024155329
(43)【公開日】2024-10-31
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20241024BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/302 101R
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069973
(22)【出願日】2023-04-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴司
(72)【発明者】
【氏名】松丸 郁子
(72)【発明者】
【氏名】上松 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 志郎
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004AA16
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004CA04
5F004DA22
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA09
5F131CA18
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB14
5F131EB18
5F131EB54
5F131EB57
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】対象物に気体が勢いよく当たることを抑制できる保持装置を提供する。
【解決手段】ウェハWを保持する第1表面S1と、第1の方向において第1表面S1の反対側に位置する第2表面S2と、第1表面S1と第2表面S2とに通じ気体が流通する基板側ガス流路12と、を有するセラミック基板10と、基板側ガス流路12に配される多孔部70と、を備え、多孔部70は、疎領域71と、疎領域71よりも低い気孔率である密領域75と、を備え、疎領域71は、第1の方向に貫通する貫通部72を備え、密領域75は、第1の方向において疎領域71と第1表面S1との間に配される表面部76と、貫通部72に配される内側部77と、を備える、保持装置100。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する第1表面と、第1の方向において前記第1表面の反対側に位置する第2表面と、前記第1表面と前記第2表面とに通じ気体が流通するガス流路と、を有する板状部材と、
前記ガス流路に配される多孔部と、を備え、
前記多孔部は、
疎領域と、
前記疎領域よりも低い気孔率である密領域と、を備え、
前記疎領域は、前記第1の方向に貫通する貫通部を備え、
前記密領域は、
前記第1の方向において前記疎領域と前記第1表面との間に配される表面部と、
前記貫通部に配される内側部と、を備える、保持装置。
【請求項2】
前記多孔部において前記第1表面側に臨む面が、前記第1表面よりも前記第2表面側に位置している、請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記ガス流路は、
前記第1表面の方向に延び、前記多孔部が配された縦ガス流路と、
前記縦ガス流路と前記第2表面との間に配され、前記縦ガス流路に対し交差する形で接続した横ガス流路と、を備える、請求項1または請求項2に記載の保持装置。
【請求項4】
前記第1の方向の断面視にて、前記貫通部の前記表面部に接する縁部がラウンド状をなしている、請求項1または請求項2に記載の保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保持装置として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の保持装置(静電チャック)は、裏面とチャック面とを有するチャック本体と、裏面とチャック面との間で伸びた複数の管路と、を備え、各管路が、その内部にチャック本体と一体化された多孔領域を備える。チャック面に保持されたウェハのプラズマ処理等を行う際には、チャック面の温度制御性を高めるため、熱伝導流体であるヘリウムガス等のガスが、管路を通じて、裏面から多孔領域を通ってチャック面に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4959905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、管路を通った気体(ガス)が対象物(ウェハ)に対して勢いよく当たった場合、対象物が持ち上がってしまう可能性がある。一方、各管路が多孔部(多孔領域)で詰まっている場合、チャック本体や多孔部の乾燥や脱脂時に、気化した物質の逃げ道が無いため、多孔部が膨らんで変形する可能性がある。この場合、保持装置の使用時に異常放電が生ずることが懸念される。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成された技術であって、対象物に気体が勢いよく当たることを抑制できる保持装置を提供することを目的の一つとする。また、異常放電が抑制できる保持装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、対象物を保持する第1表面と、第1の方向において前記第1表面の反対側に位置する第2表面と、前記第1表面と前記第2表面とに通じ気体が流通するガス流路と、を有する板状部材と、前記ガス流路に配される多孔部と、を備え、前記多孔部は、疎領域と、前記疎領域よりも低い気孔率である密領域と、を備え、前記疎領域は、前記第1の方向に貫通する貫通部を備え、前記密領域は、前記第1の方向において前記疎領域と前記第1表面との間に配される表面部と、前記貫通部に配される内側部と、を備える、保持装置である。
【0007】
上記構成では、前記多孔部において前記第1表面側に臨む面が、前記第1表面よりも前記第2表面側に位置していてもよい。
【0008】
上記構成において、前記ガス流路は、前記第1の方向に延び、前記多孔部が配された縦ガス流路と、前記縦ガス流路と前記第2表面との間に配され、前記縦ガス流路に対し交差する形で接続した横ガス流路と、を備えていてもよい。
【0009】
上記構成において、前記第1の方向の断面視にて、前記貫通部の前記表面部に接する縁部がラウンド状をなしていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、対象物に気体が勢いよく当たることを抑制できる保持装置の提供が可能となる。また、異常放電が抑制できる保持装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る保持装置の概略構成を模式的に表した説明図
図2】保持装置の内部構造を模式的に表した断面図
図3】多孔部付近の断面図
図4】実施形態2に係る多孔部付近の断面図
図5】実施形態3に係る多孔部付近の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本開示の実施形態1を図1から図3によって説明する。本開示は以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。尚、各図において、Z軸方向を、保持装置の上下方向(第1の方向)とし、X軸方向及びY軸方向を、保持装置の水平方向(第1の方向に直交する第2の方向)とする。
【0013】
図1及び図2に示すように、保持装置100は、対象物(例えば、半導体ウェハW)を所定の処理温度(例えば、50℃~400℃)に加熱しながら、静電引力によって吸着し保持する静電チャックである。静電チャックは、例えば減圧されたチャンバー内でプラズマを用いてエッチングを行うプロセスにおいて、ウェハWを載置するテーブルとして使用される。
【0014】
保持装置100は、円板状のセラミック基板(板状部材)10と、セラミック基板10の下側に配され、円板状のベース部材20と、を備える。ベース部材20の径は、セラミック基板10よりも大きく、例えばセラミック基板10が直径300mm×厚み3mmの円板状をなす場合、ベース部材20は直径340mm×厚み20mmの円板状とすることができる。セラミック基板10とベース部材20は、接合材30によって接合されている。
【0015】
セラミック基板10は、保持装置100の上面の一部を構成した略円形状をなし、ウェハWを吸着し保持する吸着面である第1表面S1と、上下方向において第1表面S1の反対側に位置する面であって、ベース部材20に対向する略円形状の第2表面S2と、を備える。ベース部材20は、第2表面S2に対向する略円形状の第3表面S3と、上下方向において第3表面S3の反対側に位置する略円形状の第4表面S4と、を備える。接合材30は、セラミック基板10の第2表面S2とベース部材20の第3表面S3との間で挟まれつつ、層状に広がった状態となっている。
【0016】
セラミック基板10は、絶縁性の基板とされ、その材料として、例えば、アルミナ(Al)を主成分とするセラミックスにより形成されている。尚、主成分とは、材料全体のうち含有割合(重量割合)の最も多い成分とする。
【0017】
セラミック基板10において第1表面S1の外周縁部10Bは、それよりも内側の部分10Aと比べて僅かに上方に突出しつつ、円環状に形成されている。そのため、第1表面S1にウェハWが吸着保持されると、図2に示されるように、ウェハWと第1表面S1の内側の部分10Aとの間に隙間(ギャップ)Gが形成される。
【0018】
また、セラミック基板10は、チャック電極40、ヒータ電極(不図示)を備える。チャック電極40は、導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により層状(平面状)に形成される。チャック電極40は、セラミック基板10の内部において、第1表面S1側に配されている。チャック電極40に電源(不図示)から直流高電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWが、セラミック基板10の第1表面S1に吸着固定される。尚、チャック電極40には、図示されない周知の給電用端子が電気的に接続されている。
【0019】
また、図3に示すように、セラミック基板10は、第1表面S1と第2表面S2とに通じる形で延びた貫通孔とされ、気体としての不活性ガス(例えば、熱伝導流体であるヘリウムガス)が流通する複数の基板側ガス流路(ガス流路)12を備える。基板側ガス流路12は、気体を流すための流路60の一部を構成する。基板側ガス流路12は、セラミック基板10の内部に形成される。
【0020】
基板側ガス流路12は、上下方向に延びた縦ガス流路13と、水平方向に延び、縦ガス流路13に対し交差する形で接続した横ガス流路14と、を備えている。縦ガス流路13は、第1縦ガス流路15と、第1縦ガス流路15の上方に配された第2縦ガス流路16と、を備える。第1縦ガス流路15は、セラミック基板10の第2表面S2に開口し、接合側ガス流路31の上側の開口部に接続した入口15Aを備える。横ガス流路14は、第2表面S2と第2縦ガス流路16との間であって、第1縦ガス流路15と第2縦ガス流路16との間に配されている。横ガス流路14は、第1縦ガス流路15と複数の第2縦ガス流路16(図3では、便宜上、1つの第2縦ガス流路16のみを示している)とを接続する形で水平方向に延びている。第2縦ガス流路16は、横ガス流路14に開口した入口16Aと、第1表面S1に開口した出口16Bと、を備える。出口16Bは、第1表面S1(内側の部分10A)において複数設けられている(図1参照)。出口16Bは、流路60全体の出口をなす。第1縦ガス流路15の入口15Aから不活性ガスが供給されると、不活性ガスは、基板側ガス流路12において、第1縦ガス流路15、横ガス流路14、及び第2縦ガス流路16を順次通過し、第2縦ガス流路16の出口16Bから外部に排出される。
【0021】
セラミック基板10は、第1層10Qと、第1層10Qの上面に対し図示しない接着剤を介して接着した第2層10Pと、が積層した積層体であってもよい。図3では、第1層10Qと第2層10Pの境界を鎖線Lで示している。この場合、第1層10Qは、第1縦ガス流路15及び横ガス流路14等を備えている。第2層10Pは、第2縦ガス流路16等を備えている。
【0022】
図1及び図2に示すように、ベース部材20は、例えば、金属(アルミニウム、アルミニウム合金等)、金属とセラミックスの複合体(Al-SiC)、又はセラミックス(SiC)を主成分として構成される。
【0023】
ベース部材20の内部には、冷媒流路21が設けられている。冷媒流路21に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体、水等)が流されることで、プラズマ熱の冷却が行われる。また、冷媒流路21に冷媒が流されると、ベース部材20が冷却され、接合材30を介したベース部材20とセラミック基板10との間の伝熱(熱引き)により、セラミック基板10が冷却される。その結果、セラミック基板10の第1表面S1で保持されたウェハWが冷却される。冷媒流路21における冷媒の流量を適宜、調整することにより、第1表面S1で保持されたウェハWの温度を制御することができる。
【0024】
ベース部材20の内部には、第3表面S3と第4表面S4とに通じる形で上下方向に延びた貫通孔とされ、気体が流通する複数のベース側ガス流路22が設けられている。ベース側ガス流路22は、流路60の一部を構成している。ベース側ガス流路22は、ベース部材20の第4表面S4に開口した入口22Aと、第3表面S3に開口した出口22Bとを備える。入口22Aは、保持装置100に設けられた流路60全体の入口をなす。
【0025】
接合材30は、例えば、シリコーン系の有機接合剤、無機接合剤、又はAl系の金属接着剤を含むボンディングシート等により構成される。接合材30としては、セラミック基板10及びベース部材20の双方に対して高い接着力を備えつつ、高い耐熱性及び熱伝導性を備えるものが好ましい。接合材30にも、流路60の一部を構成する接合側ガス流路31が形成されている。接合側ガス流路31は、層状の接合材30を厚み方向に貫通する孔からなる。
【0026】
流路60は、保持装置100の第1表面S1側に、不活性ガスを供給する。流路60は、上述したように、ベース側ガス流路22と、接合側ガス流路31と、基板側ガス流路12と、を備える。流路60の各入口22Aから不活性ガスが供給されると、その不活性ガスは、ベース側ガス流路22、接合側ガス流路31及び基板側ガス流路12を順次通過し、最終的に、第1表面S1に設けられた複数の出口12Bから排出される。ベース側ガス流路22の出口22Bは、接合側ガス流路31の下側(ベース部材20側)の開口部と接続する。また、接合側ガス流路31の上側(セラミック基板10側)の開口部は、第1縦ガス流路15の入口15Aと接続する。
【0027】
図3に示すように、保持装置100は、基板側ガス流路12の第2縦ガス流路16により構成される円柱状の内部空間に配される多孔部70を備える。多孔部70は、絶縁性のセラミックスを主成分とするガス透過性の部材である。本実施形態では、多孔部70は、アルミナ(Al)を主成分とする。本実施形態では、多孔部70のセラミックスと、セラミック基板10のセラミックスとが、互いに同じ種類のセラミックスからなる。多孔部70は、全体的には、上下方向を高さ方向とする円柱状をなしている。
【0028】
多孔部70は、内部に複数の空隙を有することで、不活性ガスを通過させる通気経路が網目状に形成されてなるものとされる。多孔部70の空隙の形状・寸法・配置は、特に限定されるものではなく、様々な大きさで不定形状の空隙がランダムに配置されていてもよい。多孔部70において空隙が占める割合を、気孔率と呼ぶ。この気孔率は、例えば多孔部70の断面の電子顕微鏡画像を解析し、単位面積あたりに占める空隙の面積に基づいて算出可能とされる。
【0029】
多孔部70は、疎領域71と、疎領域71よりも低い気孔率である密領域75と、を備える。疎領域71の気孔率は、65%以上90%以下としてもよく、70%以上85%以下としてもよい。密領域75の気孔率は、60%以上80%以下としてもよく、65%以上75%以下としてもよく、68%以上73%以下としてもよい。密領域75の気孔率は、疎領域71の気孔率に対し、0.67倍以上0.92倍以下でもよく、0.76倍以上0.87倍以下でもよい。
【0030】
疎領域71は、上下方向を高さ方向とする円管状をなしている。疎領域71は、上下方向に貫通する貫通部72を備える。貫通部72は、上下方向を高さ方向とする円柱状の内部空間を構成している。貫通部72は、第2縦ガス流路16内において(多孔部70において)、水平方向における中央部分に位置している。疎領域71の上面71Bは、円環状であって水平方向に平坦状をなしている。疎領域71の下面71Aは、円環状であって水平方向に平坦状をなしており、横ガス流路14に臨んでいる。下面71Aは、横ガス流路14の上側の内壁14Bと面一をなしており、第2縦ガス流路16の入口16Aに接触している。疎領域71において水平方向における外側を向く外面(側面)71Cは、第2縦ガス流路16に接触しており、互いに固相接合により一体化されている。本実施形態では、外面71Cは、第2縦ガス流路16に対して、接着剤(例えば、シリコーン系接着剤)を使用せずに固定されている。
【0031】
密領域75は、上下方向の断面視(第1方向の断面視)にてT字状をなしている。密領域75は、上下方向において、疎領域71の上面71Bと第1表面S1との間に配される表面部76と、上下方向において表面部76の下側の位置であって貫通部72に配される内側部77と、を備える。表面部76は、上下方向を高さ方向とする円柱状をなしている。表面部76の上面76Bは、円形状であって平坦状をなしており(図1参照)、第1表面S1に対し面一となっている。表面部76の上面76Bは、第2縦ガス流路16の出口16Bに接触している。表面部76の下面76Aは、水平方向に平坦状をなしており、疎領域71の上面71Bに接触し、互いに固相接合により一体化されている。
【0032】
内側部77は、上下方向を高さ方向とする円柱状をなしている。内側部77において水平方向を向く側面77Cは、疎領域71の貫通部72に接触しており、互いに固相接合により一体化されている。内側部77は、第2縦ガス流路16に対し疎領域71によって水平方向に隔てられており、第2縦ガス流路16に接触していない。内側部77の下面77Aは、円形状であって平坦状をなしており、横ガス流路14に臨んでいる。下面77Aは、横ガス流路14の上側の内壁14B及び疎領域71の下面71Aに対して面一となっている。下面77Aは、第2縦ガス流路16の入口16Aに接触していない。
【0033】
内側部77の上下方向における長さは、表面部76の上下方向における長さに比して長く、疎領域71の上下方向における長さに等しい。内側部77の直径(Y軸方向における長さ)は、表面部76の直径に比して小さく、疎領域71の直径に比して小さい。表面部76の上下方向における長さは、特に限定されないが、例えば100μm以上としてもよい。このような構成によれば、気体が多孔部70を通過し易く、また、多孔部70の強度を向上することが可能となる。
【0034】
本実施形態の多孔部70を備える保持装置100の製造方法は、特に限定されないが、例えば、第1層10Qと第2層10Pをそれぞれ準備する工程と、第1層10Qに第1縦ガス流路15と横ガス流路14を形成し、第2層10Pに第2縦ガス流路16を形成する流路形成工程と、第2縦ガス流路16に疎領域71を形成する疎領域形成工程と、第1層10Qの上面に対し接着剤を介して第2層10Pを接着する接着工程と、第2縦ガス流路16に密領域75を形成する密領域形成工程と、を含む方法を例示することができる。疎領域形成工程では、第2縦ガス流路16に疎領域71の材料を押し込んだ後に、貫通部72を貫通形成する。接着工程では、第1層10Qの上面に接着剤を塗布して第2層10Pを圧着した後に、この接着剤や疎領域71の材料に含まれる溶剤等を気化させて、第1層10Qと第2層10Pとを接着する。密領域形成工程では、密領域75の材料を第1表面S1側から第2縦ガス流路16に押し込んだ後に、密領域75の材料に含まれる溶剤を気化させて、密領域75を形成する。
【0035】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、ウェハWを保持する第1表面S1と、第1の方向において第1表面S1の反対側に位置する第2表面S2と、第1表面S1と第2表面S2とに通じ気体が流通する基板側ガス流路12と、を有するセラミック基板10と、基板側ガス流路12に配される多孔部70と、を備え、多孔部70は、疎領域71と、疎領域71よりも低い気孔率である密領域75と、を備え、疎領域71は、第1の方向に貫通する貫通部72を備え、密領域75は、第1の方向において疎領域71と第1表面S1との間に配される表面部76と、貫通部72に配される内側部77と、を備える、保持装置100を示した。
【0036】
このような保持装置100によると、疎領域71と第1表面S1との間に、密領域75の一部である表面部76が配されているので、気体が基板側ガス流路12を通り疎領域71に素早く充満した場合であっても、この気体が、疎領域71よりも低い気孔率である表面部76を通って第1表面S1に向かうことで、ウェハWに対して勢いよく当たることを抑制できる。これにより、基板側ガス流路12に流す気体の流量を十分に確保しつつ、気体が勢いよく当たってウェハWが持ち上がることを抑制できる。また、多孔部70のうち、第1表面S1側の部分(表面部76)において、強度を向上させることができる。さらに、疎領域71は、貫通部72を備えるので、セラミック基板10や疎領域71の乾燥や脱脂時に、気化した物質が貫通部72を通って保持部材の外部に逃げることができる。これにより、多孔部70が膨らんで変形することを防ぎ、異常放電を抑制できる保持装置100とすることができる。上記乾燥や脱脂後は、貫通部72に内側部77が配された構成とすることで、実用的な保持装置100とすることができる。
【0037】
基板側ガス流路12は、第1の方向に延び、多孔部70が配された第2縦ガス流路16と、第2縦ガス流路16と第2表面S2との間に配され、第2縦ガス流路16に対し交差する形で接続した横ガス流路14と、を備えている。
【0038】
このような構成によると、多孔部70が配された第2縦ガス流路16に対して、交差する形で接続した横ガス流路14を、保持装置100が備えることにより、第2縦ガス流路16が複数存在する場合でも、気体を効率よく各第2縦ガス流路16に通して多孔部70へ流すことができる。
【0039】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2を図4によって説明する。本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。尚、図4は、保持装置200の多孔部270付近において、上下方向における断面視(第1方向の断面視)を示した図である。
【0040】
保持装置200において、多孔部270は、疎領域271と、疎領域271よりも低い気孔率である密領域275と、を備える。疎領域271は、上下方向を高さ方向とする円管状をなしている。疎領域271は、上下方向に貫通する貫通部272を備える。貫通部272は、上下方向を高さ方向とする円柱状の内部空間を構成している。貫通部272は、上側に臨む開口を構成する縁部273であって、密領域275の表面部276に接する縁部273を備える。縁部273は、上方に向かうほど水平方向に曲がったラウンド状をなしている。密領域275の内側部277における上部は、上方に向かうほど直径(Y軸方向における長さ)が長くなる拡径状をなしている。このような保持装置200によると、貫通部272と表面部276(及び内側部277)を強固に接合させ、多孔部270の強度を向上させることができる。
【0041】
<実施形態3>
次に、本開示の実施形態3を図5によって説明する。尚、本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0042】
保持装置300において、セラミック基板310の基板側ガス流路312は、上下方向に延びた縦ガス流路313を備えている。縦ガス流路313は、第1縦ガス流路15と、第1縦ガス流路15の上方に配された第2縦ガス流路316と、を備える。第2縦ガス流路316は、上下方向に延びた円柱状の内部空間を有し、この内部空間に、上記実施形態1における多孔部70が配された下側ガス流路317と、下側ガス流路317の上側に配され、下側ガス流路317に連通した上側ガス流路318と、を備える。下側ガス流路317は、横ガス流路14に開口した入口317Aを備える。
【0043】
多孔部70の上面76B(多孔部70において第1表面S1側に臨む面)は、第1表面S1よりも下方(第2表面S2側)に位置している。第1表面S1と上面76Bとの間には、セラミック基板310の一部(介在部)311が介在している。介在部311には、上側ガス流路318が上下方向に延びる形で貫通形成されている。
【0044】
上側ガス流路318は、複数のガス流路318A,318Bを備える。複数のガス流路318A,318Bは、内側ガス流路318Aと、内側ガス流路318Aの水平方向における外側に配された外側ガス流路318Bと、を含む。複数のガス流路318A,318Bは、それぞれ、セラミック基板310の第1表面S1に開口した出口318Cを備える。内側ガス流路318Aは、密領域75における内側部77の上方に配されている。内側ガス流路318Aの下端部は、表面部76に接触している。外側ガス流路318Bは、疎領域71の上方に配されている。外側ガス流路318Bの下端部は、表面部76に接触している。
【0045】
このような保持装置300によると、多孔部70が第1表面S1から離れる構造となるので、例えば多孔部70に他部材が接触し、多孔部70が削れることを抑制できる。
【0046】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0047】
(1)上記実施形態以外にも、ガス流路の形は適宜変更可能である。例えば、ガス流路は、第2縦ガス流路が第2表面に至るまで上下方向に延びた形をなしており、横ガス流路や第1縦ガス流路を備えていなくてもよい。
【0048】
(2)貫通部及び内側部の水平方向における位置や形は適宜変更可能である。例えば、貫通部及び内側部は、第2縦ガス流路において、Y軸方向における一方側、又はX軸方向における一方側に偏った位置に配されていてもよい。貫通部及び内側部は、三角柱状や四角柱状等の角柱状であってもよい。
【0049】
(3)多孔部は、接着部を介して第2縦ガス流路に接着されていてもよい。このような接着部の材料としては、例えば、シリコーン系接着剤を採用することができる。
【0050】
(4)上記実施形態以外にも、保持装置の各部材を形成する材料は適宜変更可能である。
【0051】
(5)本開示は、上記実施形態で例示した静電チャックに限定されず、セラミック基板の表面上に対象物を保持する他の保持装置(例えば、加熱装置等)にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10,310…セラミック基板(板状部材)、12,312…基板側ガス流路(ガス流路)、14…横ガス流路、16,316…第2縦ガス流路(縦ガス流路)、70,270…多孔部、71,271…疎領域、72,272…貫通部、273…縁部、75,275…密領域、76,276…表面部、77,277…内側部、100,200,300…保持装置、S1…第1表面、S2…第2表面、W…ウェハ(対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を保持する第1表面と、第1の方向において前記第1表面の反対側に位置する第2表面と、前記第1表面と前記第2表面とに通じ気体が流通するガス流路と、を有する板状部材と、
前記ガス流路に配される多孔部と、を備え、
前記多孔部は、
疎領域と、
前記疎領域よりも低い気孔率である密領域と、を備え、
前記疎領域は、前記第1の方向に貫通する貫通部を備え、
前記密領域は、
前記第1の方向において前記疎領域と前記第1表面との間に配される表面部と、
前記貫通部に配される内側部と、を備え
前記貫通部は、前記密領域の前記表面部に接する縁部を備え、前記第1の方向と直交する方向を第2の方向と定義した場合に、前記縁部は、前記第1の方向の断面視にて、前記第1表面に向かうほど前記第2の方向に曲がったラウンド状をなしている、保持装置。
【請求項2】
前記多孔部において前記第1表面側に臨む面が、前記第1表面よりも前記第2表面側に位置している、請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記ガス流路は、
前記第1表面の方向に延び、前記多孔部が配された縦ガス流路と、
前記縦ガス流路と前記第2表面との間に配され、前記縦ガス流路に対し交差する形で接続した横ガス流路と、を備える、請求項1または請求項2に記載の保持装置